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JP6028285B2 - ナトリウム二次電池正極材料、該ナトリウム二次電池用正極材料の製造方法、該ナトリウム二次電池用正極材料を用いるナトリウム二次電池用電極、該ナトリウム二次電池用電極を備える非水系ナトリウム二次電池、及び該非水系ナトリウム二次電池を用いる電気機器 - Google Patents

ナトリウム二次電池正極材料、該ナトリウム二次電池用正極材料の製造方法、該ナトリウム二次電池用正極材料を用いるナトリウム二次電池用電極、該ナトリウム二次電池用電極を備える非水系ナトリウム二次電池、及び該非水系ナトリウム二次電池を用いる電気機器 Download PDF

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JP6028285B2 JP2012038037A JP2012038037A JP6028285B2 JP 6028285 B2 JP6028285 B2 JP 6028285B2 JP 2012038037 A JP2012038037 A JP 2012038037A JP 2012038037 A JP2012038037 A JP 2012038037A JP 6028285 B2 JP6028285 B2 JP 6028285B2
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孝志 向井
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哲男 境
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章博 吉澤
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Description

本発明は、充放電容量と容量維持率に優れたナトリウム二次電池正極材料、該ナトリウム二次電池用正極材料の製造方法、該ナトリウム二次電池用正極材料を用いるナトリウム二次電池用電極、該ナトリウム二次電池用電極を備える非水系ナトリウム二次電池、及び該非水系ナトリウム二次電池を用いる電気機器に関する。
リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を有する二次電池であることから、携帯電話やノートパソコン等の小型電源や、電気自動車等の大型電源としても実用化されており、今後もさらに需要の拡大が期待される。
しかしながら、電荷担体であるリチウムは希少金属であり、またその資源が南米や中国に偏在しているため、原料価格が高く、原料の安定供給にも不安がある。
そのリチウム二次電池に代わる次世代二次電池として、ナトリウム二次電池の検討がなされている。ナトリウムは海水中に豊富に含まれ、地球上で6番目に多い元素であり、安価で、入手しやすい元素でもある。つまり、リチウム資源に恵まれない我が国では、非常に魅力的な元素といえる。また、負極の集電体は、リチウムイオン電池では銅箔であるが、ナトリウムイオン電池では安価なアルミニウム箔が使用できるというメリットもある。また、ナトリウムは、リチウムと同様のアルカリ金属元素であり、性質が似ており、ナトリウムイオン電池の理論自体は、古くから検討されている。
ナトリウム二次電池正極活物質として、特許文献1にはNaLi2±αの化学式で示される正極と、負極にナトリウム金属を用いたナトリウム二次電池が開示されている。
特許文献2には、リチウム含有複合酸化物から電気化学的にリチウムを脱離した正極と負極にナトリウム金属を用いたナトリウム二次電池が開示されている。
しかし、ナトリウムイオンはリチウムイオンと比較して、イオン半径が約1.3倍大きいため、充放電に伴う正極材料の体積膨張・収縮変化が大きく、ナトリウムイオンの吸蔵量も少なくなる。従って、これら従来のナトリウム二次電池においては、十分な充放電容量と、十分な容量維持率が得られていないのが現状である。
特開2007−287661号公報 特開2007−073424号公報 特開2006−12613号公報
Chemistry of Materials,2001,13,2951 第52回電池討論会要旨集、2B10 Journal of Solid State Chemistry,1981, 81, 203
本発明は、上記従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、従来に比し、充放電容量と容量維持率に優れるナトリウム二次電池を提供することにある。
本発明のナトリウム二次電池正極材料は、空間群R−3m(No.166)の結晶構造を有する遷移金属酸化物固溶体であって、格子定数が2.80Å≦a≦3.00Å、16.0Å≦c≦16.6Åであり、(003)面と(104)面の回折ピークが1.1≦I(104)/I(003)≦1.3である。
本発明のナトリウム二次電池正極材料は、組成式1:Na(MnM1)Oで表され、前記組成式1のNa原子の数Aが0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、Mn原子の数BとM1原子の数Cとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
別の態様によれば、本発明のナトリウム二次電池正極材料は、組成式2:Na(MnM1M2)Oで表され、前記組成式2のNa原子の数Aが0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
別の態様によれば、本発明のナトリウム二次電池正極材料は、組成式3:Na(MnM1M2)Oで表され、前記組成式3のNa原子の数Aが0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2、F原子の数Gが0.01〜0.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
別の態様によれば、本発明のナトリウム二次電池正極材料は、組成式4:NaLi(MnM1)Oで表され、前記組成式4のLi原子の数Jが0〜0.4、Li原子の数JとNa原子の数Aとの和が0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、Mn原子の数BとM1原子の数Cとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池正極材料によれば、従来のナトリウム二次電池に比して、充放電容量と容量維持率に優れるナトリウム二次電池を提供することができる。
本発明のナトリウム二次電池正極材料は、さらにNa(POを含むことができる。これにより、ナトリウム二次電池のインピーダンスを低下させ、結果として、レート特性を向上させることができる。
本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法は、請求項2乃至6記載のナトリウム二次電池正極材料の製造方法であって、高リチウム含有遷移金属酸化物から、リチウムを電気化学的あるいは化学的に脱離させ、次いでナトリウム吸蔵させるナトリウム二次電池用正極材料の製造方法である。
本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法において、高リチウム含有遷移金属酸化物が、組成式5:Li(MnM1)Oで表され、前記組成式5のLi原子の数Kが1.0〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、Mn原子の数BとM1原子の数Cとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
別の態様によれば、本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法において、高リチウム含有遷移金属酸化物が、組成式6:Li(MnM1M2)Oで表され、前記組成式6のLi原子の数Kが1.0〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
別の態様によれば、本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法において、高リチウム含有遷移金属酸化物が、組成式7:Li(MnM1M2)Oで表され、前記組成式7のLi原子の数Kが1.0〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2、F原子の数Gが0.01〜0.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法は、前記高リチウム含有遷移金属酸化物を正極、Li金属を負極として第1半電池を作製し前記第1半電池を充電することによりLiを前記第1半電池の前記正極から脱離させる工程と、このLiが脱離した前記第1半電池の前記正極を正極、Na金属を負極として第2半電池を作製し前記第2半電池を放電することによりNaを前記第2半電池の前記正極に吸蔵させる工程とを備えることが好ましい。
上記製造方法においては、充電が4.6〜5.0V(vs.Li/Li)に達するまで行われ、放電が1〜2V(vs.Na/Na)に達するまで行われることが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法によれば、上記した結晶構造を有するナトリウム二次電池正極材料が得られるので、従来のナトリウム二次電池に比して、充放電容量と容量維持率に優れるナトリウム二次電池を提供することができる。
本発明のナトリウム二次電池用電極は、活物質として、上記ナトリウム二次電池用正極材料、又は上記ナトリウム二次電池用正極材料の製造方法で得られたナトリウム二次電池用正極材料を用いる。
本発明のナトリウム二次電池用電極は、導電助剤及びバインダーをさらに含み、活物質と導電助剤とバインダーとの合計を100重量%とした場合、バインダーを1〜25重量%含み、バインダーはカルボキシメチルセルロース(CMC)であることが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池用電極のバインダーがさらに、CMC100重量%に対してアクリル樹脂を10〜50重量%含有することが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池用電極によれば、従来のナトリウム二次電池に比して、充放電容量と容量維持率に優れるナトリウム二次電池を提供することができる。
本発明の非水系ナトリウム二次電池は、上記ナトリウム二次電池用電極からなる正極を備える。
本発明の非水系ナトリウム二次電池はさらに、硫化スズ負極と、六フッ化リン酸ナトリウムが溶解したEC系電解液とを備えることが好ましい。
本発明の非水系ナトリウム二次電池によれば、従来のナトリウム二次電池に比して、充放電容量と容量維持率に優れるナトリウム二次電池を提供することができる。
本発明の非水系ナトリウム二次電池は電気機器に用いることができる。
本発明によれば、上記空間群や格子定数で定義される構造をとる遷移金属酸化物固溶体であるナトリウム二次電池正極材料であることにより、従来に比して充放電容量と容量維持率に優れるナトリウム二次電池を提供することができる。
Li1.2(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O、及び電気化学的に作製したNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)OのXRDパターンである。 電気化学的に作製したNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oの充放電特性である。 NaLi(MnM1)Oの各J量におけるXRDパターンである。 バインダーの違いによる60℃におけるサイクル寿命の変化を表すグラフである。 ポリアクリル樹脂をバインダーに用いた電極の60℃における充放電曲線である。 遷移金属酸化物固溶体に5質量% Na(POを添加した正極の各レートにおける充放電曲線である。 遷移金属酸化物固溶体に0,5,10,20質量% Na(POを添加した正極のレート特性を示すグラフである。 各電解液における正極のレート特性を示すグラフである。
以下、本発明のナトリウム二次電池正極材料、該ナトリウム二次電池用正極材料の製造方法、該ナトリウム二次電池用正極材料を用いるナトリウム二次電池用電極、該ナトリウム二次電池用電極を備える非水系ナトリウム二次電池、及び該非水系ナトリウム二次電池を用いる電気機器の実施形態について説明する。
本発明のナトリウム二次電池正極材料は、空間群R−3m(No.166)の結晶構造を有する遷移金属酸化物固溶体であって、格子定数が2.80Å≦a≦3.00Å、16.0Å≦c≦16.6Åであり、(003)面と(104)面の回折ピークが1.1≦I(104)/I(003)≦1.3であるナトリウム二次電池正極材料である。
この正極材料を活物質として用いることにより、従来に比して充放電容量と容量維持率に優れるナトリウム二次電池とすることができる。
格子定数や回折ピークの比が、この範囲を外れるナトリウム二次電池正極材料を正極活物質としてナトリウム二次電池を構成すると、充放電容量が小さくなってしまい、また放電サイクルを繰り返すと放電容量が下降してしまい容量維持率が悪化するため、好ましくない。
本発明のナトリウム二次電池正極材料は、組成式1:Na(MnM1)Oで表され、前記組成式1のNa原子の数Aが0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、Mn原子の数BとM1原子の数Cとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上である二次電池正極材料であることが好ましい。
或いは、組成式2:Na(MnM1M2)Oで表され、前記組成式2のNa原子の数Aが0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上であるナトリウム二次電池正極材料であることが好ましい。
これら元素M2は、組成式1:Na(MnM1)Oで表される遷移金属酸化物固溶体の結晶中において、主として、元素M1の一部と置換してM1サイトに存在するものである。このため、M1イオンサイズに近いイオンサイズの元素が好ましい。
M2とM1の総モル数に対するM2のモル数の原料組成における比をTとし、T=M2/(M2+M1)とすると、Tが0.01〜0.1の範囲であることが好ましい。
或いは、組成式3:Na(MnM1M2)Oで表され、前記組成式3のNa原子の数Aが0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2、F原子の数Gが0.01〜0.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上であるナトリウム二次電池正極材料であることが好ましい。
上記組成式において、フッ素元素Fは、組成式2:Na(MnM1M2)Oの結晶中に存在するOの一部と置換してOサイトに存在するものであり、フッ素元素Fが置換した遷移金属酸化物固溶体は、初期の充放電容量は若干低下するものの、充放電サイクル特性が約5〜10%向上し、同時に、放電電圧が0.02〜0.1V程度上昇する。但し、フッ素元素Fの置換量が多くなるとNaとF間の結合エネルギーが強まり、Naイオンの挿入・脱離が起こりにくいため、正極容量が低下する。
フッ素元素Fの置換量であるGは0.01≦G≦0.2の範囲であればよいが、フッ素元素Fの置換効果を十分に発揮させるためには、0.01≦G≦0.05の範囲であることが好ましい。
或いは、組成式4:NaLi(MnM1)Oで表され、前記組成式4のLi原子の数Jが0〜0.4、Li原子の数JとNa原子の数Aとの和が0.7〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、Mn原子の数BとM1原子の数Cとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であるナトリウム二次電池正極材料であることが好ましい。
尚、Na原子の数A(或いはLi原子の数JとNa原子の数Aとの和)が1.2を超えると、Na含有遷移金属酸化物固溶体の基本骨格構造が不安定なものとなりやすく、安定した充放電特性が得られにくい。
一方、Na原子の数A(或いはLi原子の数JとNa原子の数Aとの和)が0.7未満であると、吸蔵及び放出可能なナトリウムイオン(及びリチウムイオン)の量が少なくなり、高い充放電容量を得ることができないため、好ましくない。
本発明のナトリウム二次電池用材料は、さらにリン酸バナジウムナトリウム(Na(PO)を含むことができる。
これにより、レート特性を向上させることができる。
<正極材料の製造方法>
次に、本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法について説明する。
本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法は、高リチウム含有遷移金属酸化物(本発明の正極材料の出発物質)から、リチウムを電気化学的あるいは化学的に脱離させ、次いでナトリウム吸蔵させるナトリウム二次電池用正極材料の製造方法である。
本発明のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法において、「電気化学的に」とは、物質間の電子の授受とそれに付随する諸現象によるものを言い、「化学的に」とは、物質間の化学反応によるものを言う。
例えば、電気化学的に製造される方法としては、非特許文献1ではLiFePOを正極とし、対極をLi箔とした半電池を作製し、充電することによりLiを脱離し、その後、充電後の正極と対極をNa箔とした半電池を作製しNaを挿入する方法などが挙げられる。化学的に製造される方法としては、特許文献3や非特許文献2および3に記載されるように、NOBF、NOPFまたはMoFを溶解したアセトニトリル溶液中にリチウム化合物を分散させ、化合物中からリチウムを脱離し、その後ヨウ化リチウム等の溶解したアセトニトリル溶液中でリチウムを挿入する方法などが挙げられる。
高リチウム含有遷移金属酸化物としては、組成式5:Li(MnM1)Oで表され、前記組成式5のLi原子の数Kが1.0〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、Mn原子の数BとM1原子の数Cとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上である高リチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。
また、高リチウム含有遷移金属酸化物として、組成式6:Li(MnM1M2)Oで表され、前記組成式6のLi原子の数Kが1.0〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上である高リチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。
また、高リチウム含有遷移金属酸化物として、組成式7:Li(MnM1M2)Oで表され、前記組成式7のLi原子の数Kが1.0〜1.2、Mn原子の数Bが0.4〜0.6、M2原子の数Eが0.01〜0.1、Mn原子の数BとM1原子の数CとM2原子の数Eとの和が0.7〜1.0、O原子の数Dが1.8〜2.2、F原子の数Gが0.01〜0.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上である高リチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。
上記高リチウム含有遷移金属酸化物を出発物質とすることにより、本発明のナトリウム二次電池正極材料を得ることができる。
以下、本発明のナトリウム二次電池正極材料の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.Liの脱離
まず、高リチウム含有遷移金属酸化物からリチウムを脱離させる(引き抜く)。その一例として以下の方法が挙げられる。
まず、高リチウム含有遷移金属酸化物を正極、Li金属を負極として第1半電池を作製する。この第1半電池を充電することにより、Liを正極から脱離させることができる。
この充電は、4.6〜5.0V(vs.Li/Li)まで行われることが好ましい。
これにより、高リチウム含有遷移金属酸化物中のリチウムを多く脱離させることができ、高リチウム含有遷移金属酸化物中にリチウムが残留してしまうことを防止することができる。
本発明の組成式4:NaLi(MnM1)Oで表されるナトリウム二次電池正極材料において、リチウムの原子数Jが大きい、つまりリチウム残存量が多いほど、初期放電容量が小さくなる。
よって、出発物質である高リチウム含有遷移金属酸化物中のリチウムは、出来る限り脱離させることが好ましい。
第1半電池の電解液としては、Liイオンを含有する溶液を用いることができ、リチウムイオン電池で使用される電解液を好適に用いることができる。例えば、電解液の支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiTiF、LiVF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CSON、LiB(C、LiB10Cl10、LiB12Cl12、LiCFCOO、Li、LiNO、LiSO、LiPF(C、LiB(C、およびLi(CFSOCなどの塩を用いることができる。なお、上記塩のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。溶媒としては、特に限定されないが、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネートのような環状カーボネート系、テトラヒドロフランなどのエーテル系、ヘキサンなどの炭化水素系、γ−ブチルラクトンなどのラクトン系、などを用いることができる。
2.電池の解体、電極の洗浄
Liが脱離した正極は周りにLiイオンが付着しているので、これを洗浄により除去することが好ましい。洗浄は第1半電池の電解液と同じ溶媒を用いることが好ましいが、電解質を溶解できる溶媒であれば特に制限はない。
3.Naの吸蔵
次いで、上記工程によりLiが脱離した第1半電池の正極を正極とし、Na金属を負極として第2半電池を作製する。この第2半電池を放電することにより、Naを第2半電池の正極に吸蔵させることができる。
この放電は、カットオフ電位1〜2V(vs.Na/Na)の範囲内であることが好ましい。
放電時のカットオフ電位が小さいほど、吸蔵させるナトリウムの原子数を多くすることができ、充放電容量の大きな正極とすることができる。但し、カットオフ電位が1V(vs.Na/Na)未満であると、Na含有遷移金属酸化物固溶体の基本骨格に留まらない余剰のナトリウムが電極表面に析出しやすくなるため、電池を組み立てた時に短絡する可能性がある。
一方、放電時のカットオフ電位が2V(vs.Na/Na)以上であると、吸蔵するナトリウムの原子数が小さくなり、十分な放電容量を有する本発明の正極材料を得ることができない。
従って、放電時のカットオフ電位は、1〜2V(vs.Na/Na)の範囲内まで行われることにより、電池を組み立てた時に短絡することなく、十分な充放電容量を得るこ
第2半電池の電解液としては、Naイオンを含有する溶液を用いることができ、Naイオン電池で使用される電解液を好適に用いることができる。例えば、電解液の支持塩としては、NaPF、NaBF、NaClO、NaTiF、NaVF、NaAsF、NaSbF、NaCFSO、Na(CSON、NaB(C、NaB10Cl10、NaB12Cl12、NaCFCOO、Na、NaNO、NaSO、NaPF(C、NaB(C、およびNa(CFSOCなどの塩を用いることができる。なお、上記塩のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。溶媒としては、特に限定されないが、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネートのような環状カーボネート系、テトラヒドロフランなどのエーテル系、ヘキサンなどの炭化水素系、γ−ブチルラクトンなどのラクトン系、などを用いることができる。
以上の工程を経ることにより、出発物質である高リチウム含有遷移金属酸化物からリチウムを脱離させ、ナトリウムを吸蔵させることができる。これにより、本発明のナトリウム二次電池正極材料を得ることができる。
本発明のナトリウム二次電池用材料を活物質とし、本発明のナトリウム二次電池用電極とすることができる。
また、本発明のナトリウム二次電池正極材料は、負極としてナトリウムを吸蔵した炭素系材料あるいは合金を用いることにより、高リチウム含有遷移金属酸化物中のリチウムを脱離させた状態のものを用いることができる。
<正極の製造方法>
本発明のナトリウム二次電池用電極は、本発明のナトリウム二次電池正極活物質及びバインダー、必要に応じて導電助剤を含むことができる。
例えば、上記正極活物質に加えてバインダーおよび必要に応じて添加される導電助剤等を含有させた混合物(正極合剤)に、適当な溶剤(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水、アルコール、キシレン、トルエン等)を加えて十分に混練して得られる正極活物質合剤ペースト組成物、正極活物質合剤スラリー等を、集電体表面に塗布、乾燥し、更にプレスすることで、集電体表面に正極活物質含有層を形成し、第一半電池の正極とすることができる。
第一半電池の正極は、活物質とバインダーと必要に応じて添加される導電助剤との合計を100重量%とした場合、バインダーを1〜25%含むことが好ましい。
バインダーの材料としては、通常使用されるものであれば制約はないが、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride;PVDF)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸共重合体(EVA)等の材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
通常、正極用のバインダーに水を溶媒とするバインダー(以降、水系バインダーと記載する)を用いると、出発材料のリチウムが水に溶けるため、リチウムイオン電池では、実用量の低下を招くとされるが、本発明では、予めリチウムを電気化学的に引き抜き、次いでナトリウムを吸蔵させるため、水系バインダーを採用しても実用量の低下という問題が生じることはない。
上記の水系バインダーのうち、CMCが好適に用いられる。CMCをバインダーとして用いると、正極の高温耐久性が向上するだけでなく、出力特性も改善される。
これは、CMCは高温の電解液中で膨潤しないため、電極抵抗の上昇を抑えるとともに、結合力が弱まらないからであると考えられる。
水系バインダーは、さらにアクリル樹脂を含有することがより好ましい。
水系バインダーのみでも、十分な正極特性は得られるが、アクリル樹脂を含有させることで、充放電にともなう体積膨張・収縮を抑制し、正極のサイクル寿命特性が向上する。
しかし、アクリル樹脂の含有量が多すぎると、イオン導電性と電子伝導性が乏しくなり、十分なレート特性が得られなくなる。また、少なすぎると、十分な結着力を得られない。
従って、アクリル樹脂を含有する場合、CMC100重量%に対して10〜50重量%含有することが好ましく、15〜30重量%含有することがさらに好ましい。
導電助剤は、通常用いられているもの、例えばアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、カーボンファイバー、カーボンチューブ、グラフェン、非晶質炭素等の炭素材料を、一種単独で用いてもよいし、または二種以上を併用してもよい。より好ましくは、上記炭素材料の導電助剤に、導電性の3次元網目構造を形成できるもの(例えば、フレーク状の導電材(フレークアルミニウム粉、フレークステンレス粉等)、カーボンファイバー、カーボンチューブ、非晶質炭素等)が添加されていることが好ましい。導電性の3次元網目構造が形成されていれば、十分な集電効果が得られるとともに、Na吸蔵・放出時の電極の体積膨張を効果的に抑制できる。
集電体は、電子伝導性を有し、保持した負極材料に通電し得る材料であれば特に限定されない。例えば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、集電体としてはC、Al、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からAl等が好ましい。
集電体の形状には、特に制約はないが、箔状基材、三次元基材などを用いることができる。ただし、三次元基材(発泡メタル、メッシュ、織布、不織布、エキスパンド等)を用いると、集電体との密着性に欠けるようなバインダーであっても高い容量密度の電極が得られる。加えて、高率充放電特性も良好になる。
なお、箔状の集電体であっても、予め、集電体表面上にプライマー層を形成することで高容量化を図ることができる。プライマー層は、活物質層と集電体との密着性が良好で、且つ導電性を有しているものであればよい。例えば、炭素系導電助剤を混ぜ合わせた結着材を集電体上に0.1μm〜50μmの厚みで塗布することでプライマー層を形成できる。
プライマー層用の導電助剤は、炭素粉末が好ましい。金属系の導電助剤であると、容量密度を上げることは可能だが、入出力特性が悪くなる。導電助剤が炭素系であればCMCを用いて容量密度を上げることが可能であり、且つ入出力特性がよくなる。炭素系導電助剤としては、KB、AB、VGCF、グラファイト、グラフェン、カーボンチューブ等が挙げられ、これらの一種を用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。このうち、導電性とコストの観点から、KBまたはABが好ましい。
プライマー層用の結着剤は、炭素系導電助剤を結着できるものであれば、その種類は問わない。ただし、PVA、CMC、アルギン酸ナトリウム等の水系バインダーを用いてプライマー層を形成すると、活物質層を形成する際に、プライマー層が溶け、効果が顕著に発揮されないことが多い。そのため、このような水系バインダーを用いる際は、予めプライマー層を架橋するとよい。架橋材としては、ジルコニア化合物、ホウ素化合物、チタン化合物などが挙げられ、プライマー層用スラリー形成時にバインダー量に対して0.1〜20質量%添加するとよい。
このようにして作製されたプライマー層は、箔状の集電体で、CMCを用いて容量密度を上げることが可能なだけでなく、高い電流で充放電を行っても、分極が小さくなり高率充放電特性が良好になる。
なお、プライマー層は箔状の集電体だけに効果があるのではなく、三次元基材でも同様の効果がある。
上述の工程で製造した電極によれば、ナトリウム二次電池用の正極として機能する。
<負極>
本発明のナトリウム二次電池用正極に組み合わせる負極は、ナトリウムイオン電池で使用される負極であればよく、ナトリウムの吸蔵および放出が可能な負極活物質を含有する電極であればよい。
例えば、ハードカーボン、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、PbおよびBiから選択される一種以上の元素、これらの元素を用いた合金或いは酸化物、ハロゲン化物、カルコゲン化物などであればよい。
なかでも、ナトリウムの吸蔵および放出が可能な負極活物質(Y)、Naαβおよびバインダーを含有するものであることが好ましい。ただし、Xは、F、Cl、Br、I、O、S、SeおよびTeから選択される一種以上の元素、αは1〜2、βは1〜5である。
ここで、ナトリウムの吸蔵および放出が可能な負極活物質(Y)は、初期の充電においてナトリウムイオンを吸蔵することができ、且つ、その後の充放電時においてナトリウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定はされない。例えば、Na、ハードカーボン、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、PbおよびBiから選択される一種以上の元素、これらの元素を用いた合金が好ましい。
負極活物質(Y)は、放電プラトーの領域が0〜1V(対ナトリウム電位)の範囲内に観測でき、且つその放電容量が高いことが好ましく、上記の例のうち、Sn、Ge、Sb等が好ましく、合金としては、A1−Ge、Si−Ge、Si−Sn、Zn−Sn、Ge−Ag、Ge−Sn、Ge−Sb、Ag−Sn、Ag−Ge、Sn−Sb、Sn−CuおよびSn−Ni等の各組み合わせ等が好ましい。なお、負極活物質(Y)は2種以上使用しても何ら問題ない。
Naαβは、初期の充電(ナトリウムイオン吸蔵の過程)で、ナトリウム化合物となり、その後の充放電過程で電気化学的に反応しないもの、すなわち、ナトリウム還元され、バッファ層に分解した化合物である。このバッファ層は、ナトリウムイオンの吸蔵・放出の過程で、負極材料の体積変化を抑制する働きをするものである。バッファ層としては、ナトリウムイオン導電性を有する物質が好ましい。
上記の目的を達成できる材料であれば、特に制約はないが、Naαβとしては、ハロゲン化ナトリウム(NaF、NaCl、NaBr、NaIなど)、カルコゲンナトリウム(NaO、Na、Na、NaS、NaSe、NaTeなど)、チッ化ナトリウム(NaN)、チッ化リン酸ナトリウム(NaPON)、シュウ酸ナトリウム(Na)、NaC1O、NaA1Cl、NaSO、NaNO、NaPO、NaSiO、NaVO、NaGeO、NaSiO、NaZrO、NaMoO、NaA1F、NaNi、NaBF、NaCFSO等が挙げられ、これらの一種以上を使用することができる。しかし、チッ化ナトリウム(NaN)、チッ化リン酸ナトリウム(NaPON)、シュウ酸ナトリウム(Na)、NaC1O、NaA1Cl、NaSO、NaNO、NaPO、NaSiO、NaVO、NaGeO、NaZrO、NaMoO、NaA1F、NaNi、NaBF、NaCFSO等はかさ密度が大きいため、電池容量密度の向上が難しい。そのため、Naαβは、ハロゲン化ナトリウム(NaF、NaCl、NaBr、NaIなど)、カルコゲンナトリウム(NaO、Na、Na、NaS、NaSe、NaTeなど)が好ましい。
また、上記の目的を達成できる材料の放電プラトーは0.2〜0.6Vで、ハードカーボン負極の0V付近の放電プラトーと比べて高い。負極の放電プラトーが高くなると、電池全体のエネルギー密度が低下するが、一方で、ナトリウムの析出電位以上の電位で充放電ができるため、デンドライド析出する可能性が低くなり安全性の面で好ましい。
ナトリウムの吸蔵および放出が可能な負極活物質(Y)と、Naαβは単に混ぜ合わせただけの状態で存在していることよりも、分子レベルで混合されていることが好ましい。
ここで、「YとNaαβが分子レベルで均一に混合されている」とは、Yαβをナトリウム還元すると、YとNaαβに分解され、YとNaαβが均一に混合された状態を意味する。
YとNaαβが分子レベルで均一に混合していることで、充放電によるYの膨張・収縮応力を効果的に緩和できる。
本発明に係るナトリウム二次電池用の負極は、上記の負極活物質およびNaαβに加え、バインダーを含む。バインダーの種類は特に制約はなく、例えば、PVdFなどの一般によく利用されているバインダーを採用することができるが、二次電池の放電容量を向上させる観点からは、ポリイミドを含むバインダーを用いるのが好ましい。本発明に係るナトリウム二次電池用の負極には、上記のほか、導電性を向上するため、必要に応じて導電助剤を含んでもよい。導電助剤の種類は特に制約はなく、例えば、KB、AB、グラファイト、VGCF、Cu粉、Al粉、Ni粉等の一般によく利用されている導電助剤を含有させてもよい。
本発明に係るナトリウム二次電池用の負極においては、下記(1)式で求められるTが0.10〜0.85の範囲であることが好ましい。Tがこの範囲にある負極であれば、放電容量が良好であり、サイクル寿命も良好である。Tの下限は、0.40とするのがより好ましく、さらに好ましいのは0.50である。Tの上限は、0.75とするのが好ましく、さらに好ましいのは0.70である。
T=M/(M+M) (1)
ただし、(1)式中の各記号の意味は下記の通りである。
:負極活物質(Y)のモル数(mol)
:Naαβのモル数(mol)
なお、Tが0.50以上の場合、活物質質量当たりの放電容量を200〜400mAh/g程度の良好な範囲としつつ、長寿命の負極が得られる。一方、Tが0.50未満の場合、サイクル寿命が若干劣るものの、活物質質量当たりの放電容量が300〜500mAh/gと高い負極が得られる。
本発明のナトリウム二次電池用の負極に用いる集電体としては、特に限定されないが、例えば、Cu、Al、Ni、Cr、TiもしくはFeまたはこれらの合金を用いることができる。このうち、コストまたは製造の容易性などを考慮すると、Cu、Al、Feもしくはこれらの合金を用いるのが好ましい。但し、負極材料として、S、F、Cl、Br、Iなどを含有させると、熱処理によって集電体を腐食するため、耐腐食性の強いAlもしくはAl合金またはステンレス鋼を用いるのが好ましい。例えば、SnSを負極活物質とする場合、集電体にCuを使用すると、熱処理により硫化銅が生成し、集電体の強度が極端に低下し、電極として機能しない場合がある。
本発明に係るナトリウムイオン電池に用いられる負極は、例えば、下記の(1)〜(3)の工程を経て製造することができる。
(1)Yαβ〔但し、YはSnまたはGeの一種または二種、XはF、Cl、Br、I、O、S、SeおよびTeから選択される一種以上の元素、αは1〜2、βは1〜5〕と、バインダーとを含むスラリーを得る工程、
(2)前記スラリーをアルミニウム集電体に塗布し、これに熱処理を行って負極前駆体を得る工程、および、
(3)前記負極前駆体の活物質層上に金属ナトリウムを圧着した後、20〜150℃の温度で1時間以上保持する熱処理を行う工程。
ここで、Yαβとしては、初期の充電の過程で、上記のようなバッファ層のみに分解する化合物よりも、バッファ層に加えてナトリウムイオンを吸蔵・放出することができる物質に分解する化合物がより好ましい。このため、Yαβとしては、例えば、SnO、SnO、SnCなどの酸化物、SnS、SnSなどのカルコゲン化物、SnF、SnCl、SnI、SnIなどのハロゲン化物、SnSeなどのセレン化物、SnTeなどのテルル化物等が挙げられる。中でもSnのフッ化物および硫化物の一方または両方を用いるのが好ましい。また、βが大きいと、放電容量を大きくできるとともに、サイクル寿命を向上させることができる。よって、βは2以上とすることが好ましい。中でも、サイクル寿命が特に良好であるのは、SnS、SnSおよびSnFである。
αβは、特に、Sn化合物であることが好ましい。具体的には、SnO、SnO、SnS、SnS、SnSe、SnSe、SnTe、SnTe、SnF、SnCl、SnBr、SnI、などが挙げられる。これは、初期の充電時にNa還元され、分子レベルで均一に混合した活物質(Y)とバッファ層(Naαβ)が構築され、さらにバッファ層(Naαβ)がイオン導電性に優れるため、サイクル寿命が良好であるという理由による。
ここで、負極活物質前躯体として、Yαβを用いた場合は、初期不可逆容量が大きくなるという問題がある。この初期不可逆容量が大きいと、全電池を作製しても正常に動作しないことがある。そのため、負極にはあらかじめナトリウムをドープし、容量補償していることが好ましい。ナトリウムのドープ方法としては、特に制限されないが、例えば、(i)負極集電体上の本発明の負極材料がない部分に金属ナトリウムを貼り付け、注液することでローカルセルを形成し、負極活物質中にナトリウムをドープする方法、(ii)本発明の負極材料上に蒸着やスパッタにより金属ナトリウムを成膜し、固相反応で本発明の負極材料中にナトリウムをドープする方法、(iii)電池構成前の負極に、電解液中で電気化学的にナトリウムをドープする方法、(iv)本発明で使用する複合粉末の作製の際に金属ナトリウムを加え混合処理することで、本発明の負極材料中にナトリウムをドープする方法、等の方法が挙げられる。
ただし、上記(i)では、局部的に金属ナトリウムが存在するため、負極全域に均一にナトリウムイオンが拡散しにくい。上記(ii)では、蒸着装置やスパッタ装置等の大掛かりな装置が必要となり、生産性に改善の余地がある。上記(iii)では、予めナトリウムドープ用の電池を構成する必要がある。上記(iv)では、得られる負極材料がナトリウム化しているため、軟らかく取り扱いが困難であり、また通常雰囲気中(湿度のある空気中)でスラリーを作製できない傾向がある。
このような問題点を解消するためには、スラリーをアルミニウム集電体に塗布し、これに熱処理を行って得た負極前駆体の活物質層上に直接、金属ナトリウム箔を圧着した後、熱処理するのが有効である。これにより、特殊な装置を用いることなく、負極全域に均一にナトリウムイオンをドープすることができる。なお、金属ナトリウム箔の厚さは、取り扱いの容易さと均一にナトリウムイオンをドープできることを考慮し、金属ナトリウム箔は1〜30μmのものを用いることが好ましく、5〜20μmのものを用いることがより好ましい。
ナトリウムイオンをドープするための熱処理の条件としては、低温でも本発明の負極材料にナトリウムドープすることは可能であるが、反応速度が遅いため、20〜150℃で、少なくとも1時間以上とすることが好ましい。この熱処理は、電解液中で行うのが良い。加熱温度をこの条件とすれば、電極自身にダメージを与えず、また電解液を蒸発させずに、ナトリウムイオンをドープすることができる。なお、熱処理温度の下限は、30℃とするのが好ましく、上限は90℃とするのが好ましい。
上述の構成の電極によれば、ナトリウム二次電池用の負極として機能する。
<電池>
本発明のナトリウム二次電池用電極からなる正極を用い、本発明の非水系ナトリウム二次電池とすることができる。
本発明の非水系ナトリウム二次電池は、上記正極と、上記負極を用いることができる。
電解液は、電解液の溶媒としては、特に限定されないが、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネートのような環状カーボネート系、テトラヒドロフランなどのエーテル系、ヘキサンなどの炭化水素系、γ−ブチルラクトンなどのラクトン系、などを用いることができる。このうち、レート特性の観点から、EC系電解液を備えることが好ましい。
通常、ECは常温では固体であるため、EC単独では電解液としての機能を果たさない。しかし、PC、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などとの混合溶媒とすることで、常温でも使用可能な電解液として機能する。
EC系の電解液の溶媒としては、EC(エチレンカーボネート)‐DEC(ジエチレンカーボネート)、EC‐DMC(ジメチルカーボネート)が好適に用いられ、特にEC‐DECが好適に用いられる。
電解液の支持塩としては、特に限定されないが、ナトリウム二次電池に一般的に使用される塩を用いることができる。例えば、NaPF、NaBF、NaClO、NaTiF、NaVF、NaAsF、NaSbF、NaCFSO、Na(CSON、NaB(C、NaB10Cl10、NaB12Cl12、NaCFCOO、Na、NaNO、NaSO、NaPF(C、NaB(C、およびNa(CFSOCなどの塩を用いることができる。なお、上記塩のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
このうち、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、四フッ化ホウ酸ナトリウム(NaBF)などが好適に用いられ、特にNaPFが好適に用いられる。NaPFを塩として用いることで、正極の放電容量とサイクル寿命を改善し、負極のサイクル寿命を改善する効果が高まる。また、電解液の濃度(溶媒中の塩の濃度)は、特に限定されないが、0.1〜3mol/Lであることが好ましく、0.5〜2mol/Lであることが更に好ましい。
ナトリウム二次電池の構造としては、特に限定されないが、積層式電池、捲回式電池などの既存の電池形態・構造に適用できる。
上述の構造のナトリウム二次電池によれば、以下の化学式(1)〜(3)に示す充放電反応により、二次電池として機能する。以下の化学式(1)は、本発明の正極の主な充放電反応を示す。次に、化学式(2)および(3)は、本発明の負極の主な充放電反応を示す。
本発明の非水系ナトリウム二次電池は、移動体通信機器や携帯用電子機器などの電気機器に用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<電気化学的手法によるNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oの合成>
1.Liの脱離
Li1.2(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oを正極、Li金属を負極、支持塩として1mol/L LiPFを含有したEC‐DECを電解液として用いた半電池を作製し、4.6V(vs.Li/Li)まで充電した。
2.電池の解体、電極の洗浄
Liが脱離した状態の正極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、電極に付着しているLi電解質を除去した。
3.Naの吸蔵
洗浄後の電極を正極に、Na金属を負極に、支持塩として1mol/L NaPFを含有したEC‐DECを電解液に用いた半電池を作製し、1V(vs.Na/Na)まで放電した。また2V(vs.Na/Na)まで放電した場合も行った。
上記工程により、固溶体系の結晶構造を維持したナトリウム含有化合物が得られた。
<電気化学的手法により合成されたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)OのX線回折>
Li1.2(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O(試料)と、上記電気化学的手法により合成されたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O(試料)を、X線回折測定器(MAC Science社製、CuKα線λ=1.54056Å)を用いてX線回折測定を行い、結晶性を評価した。試料A,B夫々のXRDパターンを図1に示す。

試料Aにおいて18°付近で観察された(003)面のピークが、試料Bでは16°付近において観察された。すなわち、ピークの低角度へのシフトが、Li1.2(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oの格子定数が大きくなることを意味している。ナトリウムはリチウムと比べてイオンサイズが大きいため、LiとNaが置換されていることがわかる。
また、この(104)面のピーク強度は層間に存在するナトリウム量に依存するため、ナトリウム量が多いほど16°付近において観察される(003)面に比して相対強度が大きくなる。
試料Bにおいて、I(104)/I(003)は1.2であった。
この図1のXRDパターンから、試料A,Bの格子定数を求めた。結果を下記表1に示す。
得られたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oの充放電特性を測定した。
正極組成は、活物質90質量%、AB5質量%およびPVdFバインダー5質量%を混合してスラリー状の合剤を調製し、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布・乾燥後、ロールプレス機により、アルミニウム箔と塗膜とを密着接合させ、次いで、加熱処理(減圧中、180℃、1時間以上)した。対極として、試験電極計算容量の約50倍の容量を有している金属ナトリウム箔を用い、セパレータとしてガラスフィルタ、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)を具備したコインセル(CR2032)を作製した。
図2は、電気化学的に作製したNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oの充放電特性である。下の図はカットオフ電位2−4.2V(Na/Na)、上の図はカットオフ電位1−4.2V(Na/Na)の場合である。
カットオフ電位2−4.2V(Na/Na)の場合、初期放電容量は252mAh/gであり、放電容量から計算される挿入されたNaの原子数Aは0.83であった。
カットオフ電位1−4.2V(Na/Na)の場合、初期放電容量は275mAh/gであり、放電容量から計算される挿入されたNaの原子数Aは0.91であった。
この結果から、放電時のカットオフ電位が低いほど、吸蔵されるNaの原子の数が増加し、初期放電容量も増加することがわかる。
次に、ナトリウム含有遷移金属酸化物中のリチウム量が放電特性に及ぼす影響を調べた。
上記電気化学的手法によるNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oの合成方法において、第一半電池でのLi脱離時のカットオフ電位を4.1、4.0、3.8、3.6、3.3V(Li/Li)とすることにより、NaLi(MnM1)Oで表されるナトリウム含有遷移金属酸化物中のLi原子の数Jが夫々0.13,0.16,0.27,0.43,0.59である化合物を得た。
図3は、NaLi(MnM1)Oの各J量におけるXRDパターンである。
このXRDパターンより、リチウム量J=0〜0.4において結晶構造は単一相であり、0.4を超えると結晶構造は二相となることがわかった。
正極組成を活物質:AB:PVdF=90:5:5 質量%、対極としてNa箔、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)、集電体としてAl箔(20μm)を用い、カットオフ電位2−4.2V(Na/Na)で充放電し、NaLi(MnM1)Oの各J量における初期放電容量を測定した。
その結果を、下記表2に示す。
表2の結果より、活物質中のリチウム残存量が多いほど、初期放電容量が小さくなり、特にリチウム原子の数が0.4を超えると初期放電容量が小さくなることがわかる。また、リチウム原子の数J=0〜0.4において結晶構造は単一相であり、0.4を超えると結晶構造は二相となることがわかる。
次いで、バインダーの違いによるナトリウム二次電池の高温特性(60℃)の変化を調べた。
バインダーは、PVdF、CMC(カルボキシメチルセルロース)、及びCMCにアクリル樹脂を加えた3種類について調べた。
上記電気化学的手法(4.6V充電(vs.Li/Li)後、2V放電(vs.Na/Na))により得られたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oを活物質とし、正極組成は、活物質90質量%、AB5質量%およびバインダー5質量%を混合してスラリー状の合剤を調製し、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布・乾燥後、ロールプレス機により、アルミニウム箔と塗膜とを密着接合させ、次いで、加熱処理(減圧中、180℃、1時間以上)した。対極として、試験電極計算容量の約50倍の容量を有している金属ナトリウム箔を用い、セパレータとしてガラスフィルタ、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)を具備したコインセル(CR2032)を作製し、カットオフ電位2−4.2V(Na/Na)で60サイクルまで充放電を行った。
図4は、バインダーの違いによるサイクル寿命の変化を表すグラフであり、下記表3はそれを数値で表したものである。
図5は、アクリル樹脂をバインダーに用いた電極の60℃環境下における充放電曲線である。
この結果から、バインダーとしてCMC及びポリアクリルを用いると、高温環境下の高サイクルにおいても、従来より用いられているPVdFに比べ放電容量を維持できていることがわかる。特にポリアクリルをバインダーとして用いることにより、容量維持率が向上することがわかる。
次いで、正極にNa(POを添加したときの充放電特性を調べた。
上記電気化学的手法(4.6V充電(vs.Li/Li)後、2V放電(vs.Na/Na))により得られたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oを活物質とし、正極組成は、活物質90質量%、AB5質量%およびPVdFバインダー5質量%を混合してスラリー状の合剤を調製し、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布・乾燥後、ロールプレス機により、アルミニウム箔と塗膜とを密着接合させ、次いで、加熱処理(減圧中、180℃、1時間以上)した。対極として、試験電極計算容量の約50倍の容量を有している金属ナトリウム箔を用い、セパレータとしてガラスフィルタ、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)を具備したコインセル(CR2032)を作製し、放電レート0.05C〜1Cで15サイクルまで充放電を行った。
図6は、遷移金属酸化物固溶体に5質量% Na(POを添加した正極の充放電曲線であり、下記表4はそれを数値で表したものである。
図7は、遷移金属酸化物固溶体に0,5,10,20質量% Na(POを添加した正極のレート特性を示すグラフである。
放電レート1Cにおいて、Na(POを正極材料に添加していないものに比べ、Na(POを5〜20質量%添加したものは容量維持率に優れていることがわかる。
従って、Na(POを正極材料に添加することにより、レート特性が向上することがわかる。
次いで、正極の充放電特性に及ぼす電解液の溶媒と支持塩の影響を調べた。
電解液は、下記表5の組み合わせを用いた。
上記電気化学的手法4.6V充電(vs.Li/Li)後2V放電(vs.Na/Na))により得られたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oを活物質とし、正極組成は、活物質90質量%、AB5質量%およびPVdFバインダー5質量%を混合してスラリー状の合剤を調製し、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布・乾燥後、ロールプレス機により、アルミニウム箔と塗膜とを密着接合させ、次いで、加熱処理(減圧中、180℃、1時間以上)した。対極として、試験電極計算容量の約50倍の容量を有している金属ナトリウム箔を用い、セパレータとしてガラスフィルタ、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)を具備したコインセル(CR2032)を作製し、放電レート0.05C〜1Cで12サイクルまで充放電を行った。
図8は、各電解液における正極のレート特性を示すグラフであり、下記表5はそれを数値で表したものである。
この結果から、初期放電容量は、電解液4>電解液2>電解液1>電解液3であり、レート特性は、電解液4≒電解液2≒電解液1>電解液3であることがわかる。
従って、支持塩としてはPF>ClO であり、溶媒としてはEC‐DEC≒EC‐DMC>PCであることがわかる。
<全電池試験>
上記電気化学的手法(4.6V充電(vs.Li/Li)後2V放電(vs.Na/Na))により得られたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)Oを活物質とし、正極組成は、活物質90質量%、AB5質量%、CMCバインダー4質量%、アクリル樹脂1質量%を混合してスラリー状の合剤を調製し、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布・乾燥後、ロールプレス機により、アルミニウム箔と塗膜とを密着接合させ、次いで、加熱処理(減圧中、180℃、1時間以上)した。
対極として、SnSを負極活物質前躯体として用い、負極活物質前躯体80質量%、KB5質量%、PIバインダー15質量%を混合してスラリー状の合剤を調製し、厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布・乾燥後、ロールプレス機により、アルミニウム箔と塗膜とを密着接合させ、次いで、加熱処理(減圧中、230℃、1時間以上)した。続いて、負極活物質層上に10μmの金属ナトリウム箔を圧着した後、50℃の電解液(1mol/LのNaPF/EC:DEC(50:50vol%))中で2時間熱処理し、不可逆容量分のナトリウムをドープした。
上記正極、負極および電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)を用いて、ナトリウムイオン全電池(公称容量2.25mAh)のコインセルを作製し、60℃環境下でカットオフ電位1−4.2Vで100サイクルまで試験を行った。
また、ハードカーボンを負極活物質とする負極を作製し、同様に全電池試験を行った。条件は、SnSをハードカーボンに変更した他同様である。
表6にNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O正極とナトリウムがドープされたSnS負極またはハードカーボン負極とを組み合わせたナトリウムイオン全電池の60℃環境下におけるサイクル寿命試験結果を示す。
表6から明らかなように、SnS負極であっても、ハードカーボン負極であっても可逆的に電池として動作することがわかる。
<電気化学的手法によるNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O1.980.02の合成>
1.Liの脱離
Li1.2(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O1.980.02を正極、Li金属を負極、支持塩として1mol/L LiPFを含有したEC‐DECを電解液として用いた半電池を作製し、4.6V(vs.Li/Li)まで充電した。
2.電池の解体、電極の洗浄
Liが脱離した状態の正極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、電極に付着しているLi電解質を除去した。
3.Naの吸蔵
洗浄後の電極を正極に、Na金属を負極に、支持塩として1mol/L NaPFを含有したEC‐DECを電解液に用いた半電池を作製し、2V(vs.Na/Na)まで放電した場合も行った。
上記工程により、固溶体系の結晶構造を維持したNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O1.980.02が得られた。
得られたNa(Ni0.10Mn0.45Co0.25)O1.980.02の充放電特性を測定した。
正極組成は、活物質:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVdF)=90:5:5 質量%、対極としてNa箔、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)、集電体としてAl箔(20μm)を用いた。
結果として、初期放電容量は243mAh/gであり、放電容量から計算される挿入されたNaの原子数Aは0.80であった。
<電気化学的手法によるNa(Mn0.45Ni0.35)Oの合成>
1.Liの脱離
Li1.2(Mn0.45Ni0.35)Oを正極、Li金属を負極、支持塩として1mol/L LiPFを含有したEC‐DECを電解液として用いた半電池を作製し、4.6V(vs.Li/Li)まで充電した。
2.電池の解体、電極の洗浄
Liが脱離した状態の正極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、電極に付着しているLi電解質を除去した。
3.Naの吸蔵
洗浄後の電極を正極に、Na金属を負極に、支持塩として1mol/L NaPFを含有したEC‐DECを電解液に用いた半電池を作製し、2V(vs.Na/Na)まで放電した場合も行った。
上記工程により、固溶体系の結晶構造を維持したNa(Mn0.45Ni0.35)Oが得られた。
得られたNa(Mn0.45Ni0.35)Oの充放電特性を測定した。
正極組成は、活物質:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVdF)=90:5:5 質量%、対極としてNa箔、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)、集電体としてAl箔(20μm)を用いた。
結果として、初期放電容量は237mAh/gであり、放電容量から計算される挿入されたNaの原子数Aは0.78であった。
<電気化学的手法によるNa(Mn0.45Fe0.35)Oの合成>
1.Liの脱離
Li1.2(Mn0.45Fe0.35)Oを正極、Li金属を負極、支持塩として1mol/L LiPFを含有したEC‐DECを電解液として用いた半電池を作製し、4.6V(vs.Li/Li)まで充電した。
2.電池の解体、電極の洗浄
Liが脱離した状態の正極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、電極に付着しているLi電解質を除去した。
3.Naの吸蔵
洗浄後の電極を正極に、Na金属を負極に、支持塩として1mol/L NaPFを含有したEC‐DECを電解液に用いた半電池を作製し、2V(vs.Na/Na)まで放電した場合も行った。
上記工程により、固溶体系の結晶構造を維持したNa(Mn0.45Fe0.35)Oが得られた。
得られたNa(Mn0.45Fe0.35)Oの充放電特性を測定した。
正極組成は、活物質:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVdF)=90:5:5 質量%、対極としてNa箔、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)、集電体としてAl箔(20μm)を用いた。
結果として、初期放電容量は228mAh/gであり、放電容量から計算される挿入されたNaの原子数Aは0.75であった。
<電気化学的手法によるNa(Mn0.45Co0.30.05)Oの合成>
1.Liの脱離
Li1.2(Mn0.45Co0.30.05)Oを正極、Li金属を負極、支持塩として1mol/L LiPFを含有したEC‐DECを電解液として用いた半電池を作製し、4.6V(vs.Li/Li)まで充電した。
2.電池の解体、電極の洗浄
Liが脱離した状態の正極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、電極に付着しているLi電解質を除去した。
3.Naの吸蔵
洗浄後の電極を正極に、Na金属を負極に、支持塩として1mol/L NaPFを含有したEC‐DECを電解液に用いた半電池を作製し、2V(vs.Na/Na)まで放電した場合も行った。
上記工程により、固溶体系の結晶構造を維持したNa(Mn0.45Co0.30.05)Oが得られた。
得られたNa(Mn0.45Co0.30.05)Oの充放電特性を測定した。
正極組成は、活物質:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVdF)=90:5:5 質量%、対極としてNa箔、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)、集電体としてAl箔(20μm)を用いた。
結果として、初期放電容量は236mAh/gであり、放電容量から計算される挿入されたNaの原子数Aは0.77であった。
<電気化学的手法によるNa(Mn0.45Ni0.05Co0.25Ti0.03Zr0.02)Oの合成>
1.Liの脱離
Li1.2(Mn0.45Ni0.05Co0.25Ti0.03Zr0.02)Oを正極、Li金属を負極、支持塩として1mol/L LiPFを含有したEC‐DECを電解液として用いた半電池を作製し、4.6V(vs.Li/Li)まで充電した。
2.電池の解体、電極の洗浄
Liが脱離した状態の正極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、電極に付着しているLi電解質を除去した。
3.Naの吸蔵
洗浄後の電極を正極に、Na金属を負極に、支持塩として1mol/L NaPFを含有したEC‐DECを電解液に用いた半電池を作製し、2V(vs.Na/Na)まで放電した場合も行った。
上記工程により、固溶体系の結晶構造を維持したNa(Mn0.45Ni0.05Co0.25Ti0.03Zr0.02)Oが得られた。
得られたNa(Mn0.45Ni0.05Co0.25Ti0.03Zr0.02)Oの充放電特性を測定した。
正極組成は、活物質:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVdF)=90:5:5 質量%、対極としてNa箔、電解液として1mol/L NaPF(EC:DEC=1:1 vol.%)、集電体としてAl箔(20μm)を用いた。
結果として、初期放電容量は241mAh/gであり、放電容量から計算される挿入されたNaの原子数Aは0.79であった。
本発明は、移動体通信機器、携帯用電子機器、電動自転車、電動二輪車、電気自動車等の主電源に好適に利用されるものである。

Claims (18)

  1. 空間群R−3m(No.166)の結晶構造を有する遷移金属酸化物固溶体であって、
    格子定数が2.80Å≦a≦3.00Å、16.4Å≦c≦17Åであり、(003)面と(104)面の回折ピークが1.1≦I(104)/I(003)≦1.3であるとともに、
    組成式1:Na(MnM1)Oで表され、
    前記組成式1の数Aが0.7〜1.2、数Bが0.4〜0.6、数Bと数Cとの和が0.7〜1.0、数Dが1.8〜2.2であり、M1は、Fe、Co、Ni、Nbからなる群から選択される一種以上である、
    ことを特徴とするナトリウム二次電池正極材料。
  2. 空間群R−3m(No.166)の結晶構造を有する遷移金属酸化物固溶体であって、
    格子定数が2.80Å≦a≦3.00Å、16.4Å≦c≦17Åであり、(003)面と(104)面の回折ピークが1.1≦I(104)/I(003)≦1.3であるとともに、
    組成式2:Na(MnM1M2)Oで表され、
    前記組成式2の数Aが0.7〜1.2、数Bが0.4〜0.6、数Eが0.01〜0.1、数B、数C及び数Eの和が0.7〜1.0、数Dが1.8〜2.2であり、M1は、Fe、Co、Ni、Nbからなる群から選択される一種以上、M2は、Ti、V、Zrからなる群から選択される一種以上である、
    ことを特徴とするナトリウム二次電池正極材料。
  3. 空間群R−3m(No.166)の結晶構造を有する遷移金属酸化物固溶体であって、
    格子定数が2.80Å≦a≦3.00Å、16.4Å≦c≦17Åであり、(003)面と(104)面の回折ピークが1.1≦I(104)/I(003)≦1.3であるとともに、
    組成式3:Na(MnM1M2)Oで表され、
    前記組成式3の数Aが0.7〜1.2、数Bが0.4〜0.6、数Eが0.01〜0.1、数B、数C及び数Eの和が0.7〜1.0、数Dが1.8〜2.2、数Gが0.01〜0.2であり、M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上、M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上である、
    ことを特徴とするナトリウム二次電池正極材料。
  4. 空間群R−3m(No.166)の結晶構造を有する遷移金属酸化物固溶体であって、
    格子定数が2.80Å≦a≦3.00Å、16.4Å≦c≦17Åであり、(003)面と(104)面の回折ピークが1.1≦I(104)/I(003)≦1.3であるとともに、
    組成式4:NaLi(MnM1)Oで表され、
    前記組成式4の数Jが0〜0.4、数Jと数Aとの和が0.7〜1.2、数Bが0.4〜0.6、数Bと数Cとの和が0.7〜1.0、数Dが1.8〜2.2であり、M1は、Fe、Co、Ni、Nbからなる群から選択される一種以上である、
    ことを特徴とするナトリウム二次電池正極材料。
  5. (POを含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載のナトリウム二次電池正極材料。
  6. 活物質として、請求項1乃至5のうちいずれかひとつに記載のナトリウム二次電池用正極材料を含むことを特徴とするナトリウム二次電池用電極。
  7. 導電助剤及びバインダーをさらに含み、前記活物質と前記導電助剤と前記バインダーとの合計を100重量%とした場合、前記バインダーを1〜25重量%含み、前記バインダーがカルボキシメチルセルロース(CMC)であることを特徴とする請求項記載のナトリウム二次電池用電極。
  8. 前記バインダーがさらに、CMC100重量%に対してアクリル樹脂を10〜50重量%含有することを特徴とする請求項記載のナトリウム二次電池用電極。
  9. 請求項6乃至8のうちいずれか一つに記載のナトリウム二次電池用電極からなる正極を備えることを特徴とする非水系ナトリウム二次電池。
  10. 化スズ負極と、六フッ化リン酸ナトリウムが溶解したエチレンカーボネート(EC)を含む電解液とを備えることを特徴とする請求項記載の非水系ナトリウム二次電池。
  11. 負極が硫化スズを含有する合金化合物であることを特徴とする請求項10記載の非水系ナトリウム二次電池。
  12. 請求項10又は11に記載の非水系ナトリウム二次電池を用いることを特徴とする電気機器。
  13. 請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載のナトリウム二次電池正極材料の製造方法は、
    出発物質として高リチウム含有遷移金属酸化物を用い、
    前記高リチウム含有遷移金属酸化物から、リチウムを電気化学的あるいは化学的に脱離させ、次いでナトリウム吸蔵させることからなる
    ことを特徴とするナトリウム二次電池用正極材料の製造方法。
  14. 組成式5:Li (Mn M1 )O で表され、前記組成式5の数Kが1.0〜1.2、数Bが0.4〜0.6、数Bと数Cとの和が0.7〜1.0、数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nbからなる群から選択される一種以上である高リチウム含有遷移金属酸化物を出発物質とし、
    前記高リチウム含有遷移金属酸化物から、リチウムを電気化学的あるいは化学的に脱離させ、次いでナトリウム吸蔵させる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法。
  15. 組成式6:Li (Mn M1 M2 )O で表され、前記組成式6の数Kが1.0〜1.2、数Bが0.4〜0.6、数Eが0.01〜0.1、数B、数C及び数Eの和が0.7〜1.0、数Dが1.8〜2.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nbからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Zrからなる群から選択される一種以上である高リチウム含有遷移金属酸化物を出発物質とし、
    前記高リチウム含有遷移金属酸化物から、リチウムを電気化学的あるいは化学的に脱離させ、次いでナトリウム吸蔵させる、
    ことを特徴とする請求項2に記載のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法。
  16. 組成式7:Li (Mn M1 M2 )O で表され、前記組成式7の数Kが1.0〜1.2、数Bが0.4〜0.6、数Eが0.01〜0.1、数B、数C及び数Eの和が0.7〜1.0、数Dが1.8〜2.2、数Gが0.01〜0.2であって、前記M1は、Fe、Co、Ni、Nb、Moからなる群から選択される一種以上であって、前記M2は、Ti、V、Cr、Zr、Wからなる群から選択される一種以上である高リチウム含有遷移金属酸化物を出発物質とし、
    前記高リチウム含有遷移金属酸化物から、リチウムを電気化学的あるいは化学的に脱離させ、次いでナトリウム吸蔵させる、
    ことを特徴とする請求項3に記載のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法。
  17. 前記高リチウム含有遷移金属酸化物を正極、Li金属を負極として第1半電池を作成し前記第1半電池を充電することによりLiを前記第1半電池の前記正極から脱離させる工程と、このLiが脱離した前記第1半電池の前記正極を正極、Na金属を負極として第2半電池を作成し前記第2半電池を放電することによりNaを前記第2半電池の前記正極に吸蔵させる工程とを備えることを特徴とする請求項13乃至16のうちいずれかひとつに記載のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法。
  18. 前記充電が4.6〜5.0V(vs.Li/Li)に達するまで行われ、前記放電が1〜2V(vs.Na/Na)に達するまで行われることを特徴とする請求項17記載のナトリウム二次電池用正極材料の製造方法。
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