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JP6015919B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主として変圧器や電気機器の鉄心材料に用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板の鉄損を低減する方法の一つに、磁区細分化処理がある。例えば、特許文献1には、インヒビタを含む珪素鋼素材に熱間圧延した後、1回または中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して最終製品板厚とした後、最終仕上焼鈍を施すまでの間において、鋼板表面に局所的なエッチング処理を施して溝を形成する方向性電磁鋼板の磁区細分化処理方法が開示されている。このようなエッチング処理方法としては、化学的エッチングと電解エッチングとが知られているが、溝深さのコントロールが容易である点で、電解エッチングが有利である。
また、特許文献2には、最終冷間圧延後、鋼板表面にエッチングレジストを塗布・焼付け、連続または非連続の線状の非塗布部領域を残存させ、電解エッチングを施して鋼板表面に線状溝を形成する方法が提案されている。この電解エッチングの方法は、予め鋼板表面にエッチングレジスト材(エッチングマスク)としてインキ等の絶縁材を塗布、焼付けた後、電解エッチングを施し、その後に絶縁材を除去するのが一般的であり、すでに工業的に実用化されている。
この方法において、良好な磁気特性を得るためには、溝の断面形状(溝幅、溝深さ)を適切に制御することが重要であり、溝深さが浅い場合には、磁区細分化の効果が不足し、鉄損低減効果が得られず、逆に、溝深さが深くなり過ぎた場合には、磁束の流れが妨げられ、Bで表される磁束密度が低下してしまう。
したがって、この溝形状を適切に制御することが重要であり、そのための技術が、これまでにも幾つか提案されている。
例えば、特許文献3には、電解エッチング槽内の電極を板幅方向に多分割して、エッチング槽出側で板幅方向の溝深さを測定し、その測定値に基づいて板幅方向における溝深さが均一化するように、分割した各電極に通電する電流値を制御して均一な溝深さを得る方法が提案されている。また、特許文献4には、電解エッチング時の鋼帯の電気抵抗、電解液の電気抵抗等の変化によるエッチング溝深さのばらつきを低減するため、鋼帯の電気抵抗や電解液の電気抵抗に応じて設定電圧を補正して電解エッチングを行う方法が提案されている。
しかし、上記2つの方法は、電解エッチング過程でのばらつきを低減するには有効ではあるものの、必ずしも十分な効果が得られないことが多い。その理由は、溝形状不良の原因は、電解エッチング過程のみにあるわけではなく、レジスト塗布過程での塗布状態も大きく影響するためである。例えば、通常の冷延板には圧延歪が残留しているため、鋼板形状は必ずしも平坦ではない。このような鋼板にレジストを塗布した場合、レジスト液の濡れ拡がり挙動が変化し、本来、レジスト液が塗布されてはいけない非塗布部領域にまでレジスト液が塗布されてしまったり、非塗布部領域の寸法に変化が生じたりして、エッチング後の溝寸法が変化してしまうという問題が生じる。
このような問題を解決する方法としては、特許文献5には、レジスト塗布時に鋼板をロール表面に巻き掛け、鋼板形状を矯正した状態でエッチングレジストを塗布する方法が提案されている。
特開昭63−042332号公報 特開平04−088121号公報 特開平07−331332号公報 特開平09−316698号公報 特開平06−108300号公報
しかしながら、特許文献5に開示の従来技術を用いたエッチング法を用いた場合でも、工業的な量産過程においては、完全に溝形状のばらつきを低減することはできなかった。そのため、得られる方向性電磁鋼板(製品板)の鉄損や磁束密度のばらつきが大きく、安定した品質を確保することはできないという問題があった。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄損低減効果を安定して享受することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた、その結果、電解エッチングする前の冷延板の表面粗さを適正に調整することが有効であることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、方向性電磁鋼板用の鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延して最終板厚とした冷延板の表面にレジストを塗布し、エッチング処理を施して線状溝を形成した後、レジストを除去し、一次再結晶焼鈍し、仕上焼鈍する方向性電磁鋼板の製造方法において、前記エッチング処理前の冷延板の表面粗さを算術平均粗さRaで0.3μm以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記冷間圧延における最終パスのワークロールに、ロール表面粗さが算術平均粗さRaで0.2μm以下のものを用いることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記冷間圧延における最終パスのワークロールに、弾性率が300GPa以上のものを用いることを特徴とする。
本発明によれば、電解エッチング処理によって、冷延鋼板の表面に幅、深さが安定した線状溝を形成することができるので、磁区細分化処理による鉄損低減効果が安定化し、低鉄損でかつバラツキの小さい方向性電磁鋼板を製造することが可能となる。
電解エッチングで形成された線状溝の外観写真である。 電解エッチングで形成された線状溝不良部近傍の3次元粗さ測定結果を示す図である。
前述したように、従来技術のエッチング法を用いる場合、工業的な量産過程においては、溝形状(幅、深さ)のばらつきを低減することは難しいという問題があった。図1は、グラビア印刷でエッチングレジストを塗布した後、電解エッチングで溝を形成した鋼板表面の溝形成部近傍を拡大した写真である。この写真の例では、圧延方向に3mmピッチで、板幅方向から圧延方向に10°傾いて線状溝が形成されているが、圧延方向の溝幅が変動しており、場所によっては完全に溝が途切れている箇所も認められる。このような溝が形成されると、鉄損や磁束密度のばらつきが大きくなり、安定した品質(磁気特性)の方向性電磁鋼板を得ることはできなくなる。
発明者らは、上記のような溝形状のばらつきの原因について調査した結果、エッチングレジストを塗布する冷延板の表面粗さが、レジストの塗布状態に大きく影響していることを突き止めた。図2は、溝形状不良が発生した部分の近傍の表面凹凸分布を、触針式の3次元粗さ計を用いて測定し、表面の凹凸を白黒2色のコンター図(濃淡図)で示したものであり、黒色ほど凹んでいることを示している。この図から、溝の途切れが発生している部分は、その周辺部より鋼板表面が相対的に凹んでいることがわかる。塗布されたレジスト液は、鋼板表面の凹んだ部分に流入することから、溝形状不良の原因は、本来、非塗布部となるべき場所にレジスト液が流入して塗布されてしまったことによるものと推察された。したがって、このような問題を解決するには、鋼板表面の凹凸を小さくすることが有効であると考えられた。この結果に基き、発明者らは、種々の実験を重ねた結果、上記問題点の解決には、エッチング前の鋼板表面における圧延方向に対して直角方向の粗さを、Raで0.3μm以下とすることが有効であることを見出した。ここで、上記Raは、JIS B0601(2001)に規定された算術平均粗さのことである。(以降、同様)
一方、冷延板の表面粗さは、冷間圧延における最終パスによって大きく影響されることが知られている。したがって、鋼板の表面粗さRaを0.3μm以下に制御するためには、最終パス条件を適切に管理する必要がある。通常、冷延板の表面粗さは、冷間圧延時のワークロール表面粗さの転写と、オイルピットによってほぼ決定される。上記オイルピットとは、圧延時の荷重低減のために使用される潤滑油が、ワークロールと鋼板表面の界面に封入されることによって鋼板表面に形成される微小な凹み部のことであり、界面に導入される潤滑油量が多くなるほど増加し、鋼板表面の粗さが大きくなる。また、圧延機のワークロールの表面粗さは、経時的な摩耗などによって変化し、通常、初期の粗さが小さい場合には、圧延長の増加に伴い、次第に大きくなっていく。したがって、冷間圧延後の鋼板表面粗さをRaで0.3μm以下となるようにするためには、オイルピットやワークロールの表面粗さの変化を考慮した上で、最終パスの圧延条件を決定しなければならない。
そこで、発明者らは、まず、ワークロールの表面粗さの経時変化の影響について、種々の実験を重ねて検討した結果、最終パスのワークロールの初期表面粗さを、算術平均粗さRaで0.2μm以下に管理することで、冷延後の鋼板表面粗さをRaで0.3μm以下に安定して制御できることを見出した。ここで、上記ロール表面の粗さRaは、ロール胴長方向の粗さである。
また、発明者らは、オイルピットによる悪影響を低減することを検討した。ワークロールの表面粗さが圧延後の鋼板表面に及ぼす影響、すなわち、転写率は、ワークロールの材質によっても影響されることが知られている。そこで、発明者らは種々の材質のワークロールを使用して、その影響を調査した。その結果、弾性率が300GPa以上のワークロールを用いることが有効であることを見出した。
その理由について、発明者らは以下のように考えている。弾性率の高いワークロールを用いると、圧延荷重によるロール扁平量を小さくできるため、実際の圧延時のロール径とも言える扁平ロール径を小さくすることができる。また、圧延時にロールと鋼板の界面に封入される潤滑油量は、ロール径が小さいほど少なくなる。したがって、弾性率が高いワークロールを用いるほど、オイルピットの形成は抑制されると考えられる。
通常、冷間圧延用のワークロール素材としては、Crを2〜10mass%程度含有する鋼が用いられており、その弾性率は205GPa程度でしかない。これに対して、現在、冷間圧延用のワークロールとして使用可能な高弾性率の材料としては、窒化珪素(Si)やサイアロン(Si−Al−O−N)、超硬合金(WC−Co)等があり、それらの弾性率は、300〜540GPa程度である。したがって、これらを素材としたワークロールを用いることで、オイルピットを効果的に低減でき、鋼板の表面粗さを安定して小さくすることが可能となる。
本発明は、上記の知見に基づき開発したものである。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板は、所定の成分組成に調整した方向性電磁鋼板用の鋼スラブを熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、鋼板表面に溝を形成して磁区細分化処理を施した後、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍を兼ねることもある)し、焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、最終仕上焼鈍した後、上塗コ−ティング(絶縁被膜)を被成する工程を経て製造する、通常公知の方法で製造することができる。
ただし、上記の製造工程における磁区細分化処理は、以下の条件を満たして行う必要がある。通常、冷間圧延後の鋼板に対する磁区細分化処理は、例えば、最終冷間圧延して製品板厚とした冷延板の表面に、グラビアオフセット印刷によって、エポキシ系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキを、圧延方向に3〜10mm程度のピッチで、非塗布部領域の圧延方向の幅が0.05〜0.2mm程度で、板幅方向から圧延方向に0〜10°程度の傾きとなるように塗布し、温度200℃×30秒間程度で焼き付けた後、NaCl電解浴中で電解処理して所定の幅、深さの線状溝を形成し、その後、アルカリ液中に浸積してエッチングレジストを除去することでなされる。
ここで、本発明において重要なことは、磁区細分化処理前の最終冷間圧延において、圧延後の鋼板表面の粗さを算術平均粗さRaで0.3μm以下に制御することである。冷延板の表面粗さは、前述した通り、主に最終パス圧延時のワークロールの表面粗さと、オイルピットによって決定される。したがって、鋼板の表面粗さをRaで0.3μm以下に制御するためには、ワークロールの表面粗さをRaで0.2μm以下に管理するとともに、窒化珪素(Si)やサイアロン(Si−Al−O−N)、超硬合金(WC−Co)等、弾性率が300GPa以上のセラミックス系のワークロールを用いてオイルピットを低減することが有効である。
C:0.06mass%、Si:3.1mass%、Mn:0.15mass%、Al:0.021mass%、N:0.007mass%、S:0.003mass%およびSe:0.022mass%を含有する鋼スラブを常法に準じて熱間圧延して得た熱延板を、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって最終板厚0.22mm×板幅1160mmの冷延板(冷延コイル)とした。なお、上記冷間圧延は、ワークロール径が80mmφのリバースミルを用いて行い、最終パスのワークロールの材質および表面粗さを、表1に示したように変えることによって、最終冷延板の表面粗さを変化させた。なお、上記冷延板の表面粗さは、冷間圧延後のコイルの先端部、中間部および尾端部の3箇所からサンプルを採取し、触針式粗さ計を用いて、圧延方向と直角方向の算術平均粗さRaを板幅方向に15点(合計45点)測定し、それらのばらつき(標準偏差σ)を求めた。
その後、この冷延板の片表面に、グラビアオフセット印刷によりエッチングレジストを塗布した後、電解エッチング処理し、目標幅が0.1mm、目標深さが20μmの線状溝を、圧延方向に3mm間隔で板幅方向に対し10°の傾きを持たせて形成した。なお、上記エッチングレジストには、エポキシ系樹脂を主成分とするインキを用い、電解エッチングは、NaCl電解浴中で、電流密度10A/dm×30秒の条件で行った。上記エッチング処理を施した冷延板は、その後、アルカリ液中に浸積してエッチングレジストを除去した後、コイルの先端部、中間部および尾端部から再度、サンプルを採取し、板幅方向に約200mmピッチで5分割した合計15枚の試験片について、各試験片3箇所ずつ、合計45箇所の溝形状(溝幅、溝深さ)を、触針式粗さ計を用いて測定し、それらのばらつき(標準偏差σ)を求めた。
その後、上記冷延板に脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍を施した後、絶縁被膜をコーティングし、方向性電磁鋼板の製品板(コイル)とした。
斯くして得られた製品コイルの先端部、中間部および尾端部の3箇所からサンプルを採取し、板幅方向に約200mmピッチで5分割した位置(合計15箇所)から幅30mm×長さ280mmのエプスタイン試片を採取し、800℃×5hrの歪取焼鈍を施した後、鉄損W17/50を測定し、そのばらつき(標準偏差σ)を求めた。
上記の結果を、冷間圧延の最終パスに用いたワークロールの仕様と併せて表1に示した。この表から、本発明に適合する条件においては、溝形状のばらつきが低減され、鉄損のばらつきも大きく低減していることがわかる。
Figure 0006015919

Claims (3)

  1. 方向性電磁鋼板用の鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延して最終板厚とした冷延板の表面にレジストを塗布し、エッチング処理を施して線状溝を形成した後、レジストを除去し、一次再結晶焼鈍し、仕上焼鈍する方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記エッチング処理前の冷延板の表面粗さを算術平均粗さRaで0.3μm以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記冷間圧延における最終パスのワークロールに、ロール表面粗さが算術平均粗さRaで0.2μm以下のものを用いることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記冷間圧延における最終パスのワークロールに、弾性率が300GPa以上のものを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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