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JP6009769B2 - シリンダー錠 - Google Patents

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JP6009769B2
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Description

本発明は、クラッチ機構を備えたシリンダー錠に関する。
従来、屋外に設置される扉等には、シリンダー錠が取り付けられている。このシリンダー錠は、例えば、鍵穴を有するプラグと、鍵穴への鍵の挿入方向においてプラグの奥側に配置されるテールピースと、を備えている。そして、鍵穴に合鍵が挿入された状態でプラグが回転すると、この回転がテールピースに伝達されてテールピースが回転し、テールピースに接続された施解錠機構が作動して、扉が施解錠されるようになっている。
このようなシリンダー錠として、特許文献1には、プラグ等の部品を交換することなく合鍵を変更することが可能なシリンダー錠が開示されている。この従来技術では、合鍵での操作時にプラグ(「内筒19」参照)とテールピースがクラッチ片(「コア部材64」参照)を介して接続される一方、合鍵変更用の鍵(以下、「変更用鍵」と称する。)による操作時にはプラグとテールピースの接続が解除されるようになっている。
特許第4629523号公報
近年、屋外に設置される扉のシリンダー錠においては、プラグの鍵穴に叩き込んだマイナスドライバーを回転させることでプラグ及びテールピースを回転させ、扉を不正に解錠する行為が行われる場合がある。この点、特許文献1に記載の技術では、変更用鍵での操作時以外にはプラグとテールピースがクラッチ片を介して常に接続されており、鍵穴に挿入されているのが合鍵であるかマイナスドライバー等の合鍵以外のものであるかに関わらず、プラグの回転に伴ってテールピースが回転してしまう。そのため、上記した扉の不正解錠行為を十分に防止することが困難であった。
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、合鍵以外のものによってプラグが回転された場合に扉が解錠されるのを防止することで、防犯性を高めることを目的とする。
本発明に係るシリンダー錠は、鍵穴を有するプラグと、前記鍵穴への鍵の挿入方向において前記プラグの奥側に設けられ、施解錠機構に接続されるテールピースと、前記プラグと前記テールピースを接続するクラッチ機構と、を備えたシリンダー錠であって、前記クラッチ機構は、前記プラグに係合すると共に前記テールピースとの係合が解除されるプラグ側接続解除位置と、前記プラグ及び前記テールピースの両方に係合する接続位置と、の間でスライドするクラッチ片と、該クラッチ片を前記プラグ側接続解除位置に付勢する付勢部材と、を備え、前記鍵穴に合鍵が挿入されると、該合鍵が前記クラッチ片を押圧し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ片が前記プラグ側接続解除位置から前記接続位置までスライドすることを特徴とする。
このような構成を採用することで、マイナスドライバー等の合鍵以外のものがプラグの鍵穴に挿入されたとしても、クラッチ片が押圧されない限りプラグとテールピースの接続解除状態が維持される。そのため、合鍵以外のものによってプラグが回転された場合にテールピースが回転するのを抑制することができ、扉の不正解錠を防止することが可能となる。
本発明に係るシリンダー錠は、前記クラッチ片は、前記プラグとの係合が解除されると共に前記テールピースに係合するテールピース側接続解除位置までスライド可能に設けられ、前記挿入方向の長さが前記合鍵よりも長い変更用鍵が前記鍵穴に挿入されると、前記変更用鍵が前記クラッチ片を押圧し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ片が前記プラグ側接続解除位置から前記テールピース側接続解除位置までスライドしても良い。
このような構成を採用することで、変更用鍵が鍵穴に挿入された場合には、プラグとテールピースの接続を解除して合鍵の変更作業を行うことが可能となる。
本発明に係るシリンダー錠は、前記プラグ及び前記テールピースは、前記クラッチ片の奥側に嵌合部を有する外筒に対して回転可能に設けられ、前記クラッチ機構は、前記挿入方向において前記クラッチ片の奥側且つ前記嵌合部の手前側に配置されて前記テールピースと一体に回転する補助クラッチ片を備え、前記変更用鍵が前記鍵穴に挿入されると、前記クラッチ片が前記補助クラッチ片を押圧し、該補助クラッチ片が前記挿入方向奥側にスライドして前記嵌合部に嵌合し、前記補助クラッチ片及び前記テールピースの前記外筒に対する回転が規制されても良い。
このような構成を採用することで、鍵穴に挿入された変更用鍵が回転した際に、変更用鍵からクラッチ片に伝達されるトルクによってテールピースが回転するのを防止することが可能となる。
本発明に係るシリンダー錠は、前記クラッチ片は、クラッチ片側係合部を備えて回転可能に設けられ、前記補助クラッチ片は、前記クラッチ片側係合部に係合する補助クラッチ片側係合部を備え、該補助クラッチ片側係合部には、前記クラッチ片の回転方向に対して傾斜する傾斜部が設けられ、前記プラグ側接続解除位置で前記クラッチ片が回転すると、該クラッチ片が前記傾斜部を押圧して前記補助クラッチ片が前記挿入方向奥側にスライドし、前記クラッチ片側係合部と前記補助クラッチ片側係合部の係合が解除されても良い。
このような構成を採用することで、プラグ側接続解除位置でクラッチ片が回転した場合にクラッチ片から補助クラッチ片への回転の伝達が防止され、これに伴って扉の不正解錠を確実に防止することが可能となる。
本発明のシリンダー錠によれば、合鍵以外のものによってプラグが回転された場合に扉が解錠されるのを防止することで、防犯性を高めることが可能となる。
本発明の一実施形態に係るシリンダー錠の断面図である。 図1のA−A断面図である。 本発明の一実施形態に係るシリンダー錠の背面図である。 本発明の一実施形態に係るシリンダー錠のクラッチ機構において、(a)は、クラッチ片の背面図であり、(b)はクラッチ片の底面図である。 本発明の一実施形態に係るシリンダー錠のクラッチ機構において、(a)は、補助クラッチ片の正面図であり、(b)は補助クラッチ片の底面図である。 本発明の一実施形態に係るシリンダー錠のクラッチ機構において、(a)は、クラッチ片が回転する前の状態を示す断面図であり、(b)は、クラッチ片が回転を開始した直後の状態を示す断面図であり、(c)は、(b)の状態からクラッチ片が更に回転した状態を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るシリンダー錠において、(a)は、合鍵が鍵穴に挿入された状態を示す断面図であり、(b)は変更用鍵が鍵穴に挿入された状態を示す断面図である。
以下、図1〜図7に基づき、本発明の一実施形態に係るシリンダー錠について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシリンダー錠の断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係るシリンダー錠の背面図である。図4は、本発明の一実施形態に係るシリンダー錠のクラッチ機構において、(a)は、クラッチ片の背面図であり、(b)はクラッチ片の底面図である。図5は、本発明の一実施形態に係るシリンダー錠のクラッチ機構において、(a)は、補助クラッチ片の正面図であり、(b)は補助クラッチ片の底面図である。図6は、本発明の一実施形態に係るシリンダー錠のクラッチ機構において、(a)は、クラッチ片が回転する前の状態を示す断面図であり、(b)は、クラッチ片が回転を開始した直後の状態を示す断面図であり、(c)は、(b)の状態からクラッチ片が更に回転した状態を示す断面図である。図7は、本発明の一実施形態に係るシリンダー錠において、(a)は、合鍵が鍵穴に挿入された状態を示す断面図であり、(b)は変更用鍵が鍵穴に挿入された状態を示す断面図である。
なお、シリンダー錠1の各部の位置関係は、シリンダー錠1の設置角度によって変化するが、本実施形態では説明の便宜上、図1における左側、右側、奥側、手前側を、それぞれシリンダー錠1の正面側(前側)、背面側(後側)、左側、右側とする。本実施形態では、シリンダー錠1の前側が鍵の挿入方向手前側であり、シリンダー錠1の後側が鍵の挿入方向奥側である。
図2は、下側からの断面図であるため、図面上の上側が実際の右側であり、図面上の下側が実際の左側である。図3は、背面図であるため、図面上の左右関係と実際の左右関係が逆転している。
以下、各部材について、シリンダー錠1の中心軸線(図1のA−A線参照)から近い部分を「内側(又は内周)」と称し、シリンダー錠1の中心軸線から離れた部分を「外側(又は外周)」と称する。
シリンダー錠1は、例えば屋外に設置される自動販売機の扉等に後述するハンドルロック(図示せず)と共に取り付けられて、錠前を構成している。図2に最も良く示されるように、シリンダー錠1は、円筒状の外筒2と、この外筒2の内周に装着されるプラグ3と、プラグ3の左側(図2では下側)に配置されるロックバー4と、プラグ3の後側に配置されるテールピース5と、プラグ3とテールピース5の間に配置されるクラッチ機構6と、外筒2の前部外周に装着される化粧リング7と、化粧リング7の前部内周に装着されるキーガイド8と、を主体として構成されている。以下、これらの部材について順番に説明する。
図1、図2に示されるように、外筒2の前部外周には環状突起10が設けられ、この環状突起10の前方に円環状の化粧リング装着部11が形成されている。化粧リング装着部11には止め輪用装着凹部12が設けられ、止め輪用装着凹部12には止め輪13が外側部分を突出させた状態で装着されている。外筒2の内部空間には、前端部から後部に亘ってプラグ装着部14が形成されている。図2に示されるように、プラグ装着部14の左端(図2では下端)には、ロックバー挿入溝15が設けられている。
図1、図2に示されるように、外筒2には、プラグ装着部14の後方にこのプラグ装着部14よりも小径なテールピース装着部16が形成されている。外筒2には、テールピース装着部16の後方にこのテールピース装着部16よりも小径な連通穴17が形成されており、この連通穴17を介してテールピース装着部16と外筒2の後方の空間とが連通している。図3に示されるように、連通穴17は背面視略円形を成している。連通穴17の外周には、左側(図3では右側)に回転規制溝18が形成されている。連通穴17の外周の上部と下部には、それぞれ嵌合部としての嵌合溝19が形成されている。
図2に示されるように、プラグ3は、外筒2のプラグ装着部14に回転可能に装着されている。プラグ3は、第1プラグ片20と、第1プラグ片20の左側(図2では下側)に配置される第2プラグ片21と、を備えている。
第1プラグ片20は、前後方向に長い形状を成している。第1プラグ片20の内周部には鍵穴22が前後方向に形成されている。第1プラグ片20の内周部には、鍵穴22と連通する第1係合溝23が、前後に所定の間隔を介して複数個設けられている。各第1係合溝23には第1タンブラー24が係合し、各第1タンブラー24には、鍵穴22と対応する位置に挿通穴25が形成されている。各第1タンブラー24には、第1歯列部(図示せず)が設けられている。
図1、図2に示されるように、第1プラグ片20の後面には、鍵穴22と連通する縦長直方体状のクラッチ片用挿入溝26が設けられている。図2に示されるように、第1プラグ片20の左側部(図2では下部)には、第2プラグ片用装着部27が設けられている。第1プラグ片20の前面には、嵌合突起28が前方に向かって突設されている。
第2プラグ片21は、前後方向に長い形状を成しており、第1プラグ片20の第2プラグ片用装着部27に装着されている。第2プラグ片21の外周部には、ロックバー挿入溝30が設けられている。ロックバー挿入溝30の前端部と後端部には、それぞれバネ装着凹部31が形成されている。第2プラグ片21の内周部には、第2係合溝32が前後に所定の間隔を介して複数個設けられ、各第2係合溝32には、第2タンブラー33が係合している。各第2タンブラー33の下部には、ロックバー用係合溝34が凹設されている。各第2タンブラー33には第2歯列部(図示せず)が設けられ、この第2歯列部が各第1タンブラー24の第1歯列部(図示せず)に噛合することで、第1タンブラー24と第2タンブラー33が連結され、シリンダー錠1の軸線方向(本実施形態では前後方向)と垂直な方向に一体にスライドするようになっている。
ロックバー4は、前後方向に長い形状を成している。ロックバー4の内側部分は、第2プラグ片21に設けられたロックバー挿入溝30に挿入されている。ロックバー4の内側部分の前後両端には、バネ受け部35が突設されている。バネ受け部35と第2プラグ片21のバネ装着凹部31の間にはコイルバネ36が介装されており、このコイルバネ36によってロックバー4が外側に付勢されている。ロックバー4の内周部は、各第2タンブラー33の外周部と当接又は近接しており、これによってロックバー4の内側への移動が規制されている。
ロックバー4の外側部分は、外筒2に設けられたロックバー挿入溝15に挿入されている。これにより、ロックバー4の外筒2に対する回転が規制されると共に、プラグ3の外筒2に対する回転も規制されている。
テールピース5は、支柱部37と、この支柱部37から後方に向かって突出する突起部38と、を備えている。
支柱部37は、略円柱状を成している。支柱部37は、外筒2のテールピース装着部16に回転可能に装着されている。これにより、テールピース5が外筒2に対して回転可能となっている。
図1、図2に示されるように、支柱部37の前面には、縦長直方体形状の補助クラッチ片用挿入溝40が、第1プラグ片20のクラッチ片用挿入溝26に臨むようにして設けられている。補助クラッチ片用挿入溝40の後側には、スプリング装着部41が設けられている。図3に示されるように、支柱部37の後端外周には、外筒2の連通穴17と係合する環状係合部43が形成されている。環状係合部43の外周には回転規制突起44が外側に向かって突設され、この回転規制突起44が外筒2の回転規制溝18に係合することで、テールピース5の外筒2に対する回転角度が90度に規制されている。
クラッチ機構6は、第1プラグ片20とテールピース5を接続している。図1、図2に示されるように、クラッチ機構6は、クラッチ片45と、クラッチ片45の後側に配置される補助クラッチ片46と、補助クラッチ片46の後側に配置される付勢部材としてのコイルスプリング47と、を備えている。
クラッチ片45は、第1プラグ片20のクラッチ片用挿入溝26に相対回転不能に挿入されている。図4に示されるように、クラッチ片45は、縦長四角柱状を成している。クラッチ片45の上下両端面には、凹溝48が前端から後端まで設けられている。クラッチ片45の上部と下部には、クラッチ片側係合部としての貫通穴50が、前面から後面まで貫通している。各貫通穴50は、横長直方体形状を成している。
図1に示されるように、補助クラッチ片46は、クラッチ片45と共に外筒2の嵌合溝19の前側に配置されている。補助クラッチ片46は、テールピース5の補助クラッチ片用挿入溝40に相対回転不能な状態で挿入されており、テールピース5と一体に回転するようになっている。補助クラッチ片46は、縦長平板状の本体板51と、この本体板51の上下両端から後方に向かって屈曲される嵌合板52と、を備えており、断面略コ字状を成している。
図5に示されるように、補助クラッチ片46の前面の上部と下部には、補助クラッチ片側係合部としての凸部53が設けられている。各凸部53は、正面視矩形状を成しており、各凸部53の前面には傾斜部54が形成されている。各傾斜部54は、シリンダー錠1の軸線方向と垂直な面に対して傾斜している。図1に示されるように、各凸部53は、クラッチ片45の各貫通穴50に挿入されている。
コイルスプリング47は、テールピース5のスプリング装着部41と補助クラッチ片46の本体板51の後面との間に介装されており、クラッチ片45及び補助クラッチ片46を前方に付勢している。
化粧リング7は、外筒2の化粧リング装着部11の外周に装着されており、化粧リング7の後端部は、外筒2の環状突起10に当接している。化粧リング7の後部内周には止め輪用挿入凹部55が形成され、この止め輪用挿入凹部55に止め輪13の外側部分が挿入されることで、外筒2と化粧リング7の分離が規制されている。なお、化粧リング7は、外筒2に対して回転可能であっても良いし、回転不能であっても良い。
化粧リング7の前部内周には正面視円形のキーガイド装着穴56が形成されている。キーガイド装着穴56の前後方向中央付近には段差部57が設けられており、段差部57よりも前側の部分の内径は段差部57よりも後側の部分の内径よりも小さくなっている。
キーガイド8は、化粧リング7のキーガイド装着穴56に装着されている。キーガイド8の後部外周には、円環状のフランジ部58が突設されており、このフランジ部58が化粧リング7の段差部57に当接することで、キーガイド8の前方への移動が規制されている。図2に示されるように、キーガイド8の後面は第1プラグ片20の前面に当接しており、これにより、キーガイド8の後方への移動が規制されている。キーガイド8と第1プラグ片20の間には、スペーサー60が介装されている。スペーサー60には嵌合溝61が設けられ、この嵌合溝61に第1プラグ片20の嵌合突起28が嵌合している。
キーガイド8の内周には、第1プラグ片20の鍵穴22と連通する鍵用挿入穴62が設けられている。鍵用挿入穴62の後端部は、回転式のシャッター63によって閉止されている。シャッター63は、ねじりコイルバネ64によって閉止方向に付勢されており、鍵用挿入穴62への鍵の挿入に伴って、ねじりコイルバネ64の付勢力に抗してシャッター63が後方に回転し、鍵用挿入穴62が開放されるようになっている。(図2の二点鎖線参照)。
以上のような構成のシリンダー錠1は、例えば自動販売機の扉等に取り付けられるハンドルロック(図示せず)に取り付けられている。このハンドルロックは、シリンダー錠を収容する把手部と、この把手部を収容するハンドルロック本体と、上記把手部を前方に付勢するコイルスプリング等の付勢バネと、上記把手部を上記ハンドルロック本体に係止する係止手段と、を備えており、この係止手段がシリンダー錠1のテールピース5に接続されている。シリンダー錠1のテールピース5が回転していない状態では、上記付勢バネの付勢力に抗して上記係止手段が上記把手部を上記ハンドルロック本体に係止しており、ハンドルロック本体に把手部が収容された状態が維持されている。一方で、シリンダー錠1のテールピース5が回転すると、この回転が上記係止手段に伝達されて上記把手部と上記ハンドルロック本体の係止が解除され、上記付勢バネの付勢力によって上記把手部が上記ハンドルロック本体から前方に突出して上記把手部の回転操作が可能となり、この回転操作に伴って扉が解錠されるようになっている。
上記の如く構成されたものにおいて、鍵穴22に鍵が挿入されていない状態では、図6(a)に示されるように、コイルスプリング47によってクラッチ片45及び補助クラッチ片46が前側(図6では左側)に付勢されることで、クラッチ片45の全体が第1プラグ片20のクラッチ片用挿入溝26に挿入されている。即ち、クラッチ片45は、第1プラグ片20にのみ係合しており、テールピース5との係合は解除されている。この時のクラッチ片45の位置を、「プラグ側接続解除位置」と称する。
この状態で、第1プラグ片20に設けられた鍵穴22にマイナスドライバー等の合鍵以外のもの(図示せず)が挿入されてプラグ3が回転されると、図6(a)に白抜き矢印で示される方向にクラッチ片45が回転する。これに伴って、図6(b)に示されるように、クラッチ片45の貫通穴50の開口縁が補助クラッチ片46の凸部53に設けられた傾斜部54を押圧する。この押圧により、コイルスプリング47の付勢力に抗して補助クラッチ片46が後側にスライドする。
プラグ3が更に回転されると、クラッチ片45の貫通穴50の開口縁が補助クラッチ片46の凸部53に設けられた傾斜部54を更に押圧する。この押圧により、図6(c)に示されるように、凸部53がクラッチ片45の後面に乗り上げて、貫通穴50と凸部53の係合が解除される。そのため、プラグ3及びクラッチ片45がテールピース5及び補助クラッチ片46に対して空転し、テールピース5は回転しない。従って、テールピース5に接続されたハンドルロック(図示せず)は作動せず、扉(図示せず)の施錠状態が維持される。
一方、扉を解錠するには、図7(a)に示されるように、合鍵65を鍵穴22に前後方向に沿って挿入する。この挿入により、合鍵65の先端がクラッチ片45を押圧し、コイルスプリング47の付勢力に抗してクラッチ片45及び補助クラッチ片46が後方にスライドする。これに伴って、第1プラグ片20のクラッチ片用挿入溝26とテールピース5の補助クラッチ片用挿入溝40に跨る位置までクラッチ片45が移動する。即ち、クラッチ片45が第1プラグ片20とテールピース5の両方に係合する。この時のクラッチ片45の位置を、「接続位置」と称する。
また、上記のように鍵穴22に合鍵65が挿入されると、各第1タンブラー24及び各第2タンブラー33がシリンダー錠1の軸線方向と垂直な方向にスライドし、各第2タンブラー33のロックバー用係合溝34とロックバー4の位置が一致して、ロックバー4の内側への移動規制が解除される。これに伴って、プラグ3が外筒2に対して回転可能となる。
この状態で、鍵穴22に挿入された合鍵65が施錠位置から解錠位置まで回転されると、プラグ3が外筒2に対して回転する。このプラグ3の回転は、クラッチ片45を介してテールピース5に伝達され、テールピース5が回転する。これに伴って、テールピース5に接続されたハンドルロック(図示せず)が作動し、扉を解錠可能となる。なお、この時には、プラグ3とテールピース5が一体に回転するため、プラグ3の外筒2に対する回転角度は、テールピース5の外筒2に対する回転角度である90度に規制される。
一方、合鍵65の変更を行うには、これまで使用していた合鍵65を施錠位置で鍵穴22から引き抜き、図7(b)に示されるように、前後方向の長さが合鍵65よりも長い変更用鍵67を鍵穴22に前後方向に沿って挿入する。この挿入により、変更用鍵67の先端がクラッチ片45を押圧し、コイルスプリング47の付勢力に抗してクラッチ片45及び補助クラッチ片46が後側にスライドする。これに伴って、クラッチ片45が第1プラグ片20のクラッチ片用挿入溝26から離脱し、テールピース5の補助クラッチ片用挿入溝40に挿入される。即ち、クラッチ片45は、第1プラグ片20との係合が解除され、テールピース5にのみ係合する。この時のクラッチ片45の位置を、「テールピース側接続解除位置」と称する。
また、上記した補助クラッチ片46の後側へのスライドに伴って、補助クラッチ片46の嵌合板52が外筒2の嵌合溝19に嵌合する。この嵌合により、補助クラッチ片46及びテールピース5の外筒2に対する回転が規制される。
また、このように変換用鍵67が鍵穴22に挿入された状態では、プラグ3は、合鍵65が鍵穴22に挿入された時と同様に、外筒2に対して回転可能となっている。この状態で、鍵穴22に挿入された変更用鍵67が回転されると、プラグ3が外筒2に対して回転する。このようにプラグ3が回転しても、クラッチ片45が第1プラグ片20のクラッチ片用挿入溝26から離脱しているため、プラグ3の回転がクラッチ片45に伝達されない。そのため、プラグ3がクラッチ片45、補助クラッチ片46及びテールピース5に対して空転する。
また、このように変換用鍵67が鍵穴22に挿入された状態では、テールピース5の外筒2に対する回転角度(90度)を超えてプラグ3を回転させることが可能となっており、この回転に伴って、第1タンブラー24の第1歯列部(図示せず)と第2タンブラー33の第2歯列部(図示せず)の噛合が解除される。この状態で、変換用鍵67を鍵穴22から引き抜き、これまで使用していた合鍵65とは異なる形状の新たな合鍵65を鍵穴22に挿入する。これに伴って、新たな合鍵65の形状に対応した位置に各第1タンブラー24と各第2タンブラー33が配列される。その後、施錠位置まで新たな合鍵65を回転させると、新たな合鍵65の形状に対応した位置で第1タンブラー24の第1歯列部(図示せず)と第2タンブラー33の第2歯列部(図示せず)が噛合する。これにより、合鍵65の変更作業が完了する。
本実施形態では、鍵穴22に鍵(合鍵65や変更用鍵67)が挿入されていない状態では、コイルスプリング47によってクラッチ片45をプラグ側接続解除位置に付勢し、鍵穴22に合鍵65が挿入されると、合鍵65がクラッチ片45を押圧してクラッチ片45がプラグ側接続解除位置から接続位置までスライドするようになっている。このような構成を採用することで、マイナスドライバー等の合鍵65以外のものが鍵穴22に挿入されたとしても、クラッチ片45が押圧されない限りプラグ3とテールピース5の接続解除状態が維持される。そのため、合鍵65以外のものによってプラグ3が回転された場合にテールピース5が回転するのを抑制することができ、扉の不正解錠を防止することが可能となる。
また、変更用鍵67が鍵穴22に挿入されると、変更用鍵67がクラッチ片45を押圧し、クラッチ片45がプラグ側接続解除位置からテールピース側接続解除位置までスライドするようになっている。このような構成により、変更用鍵67が鍵穴22に挿入された状態で、プラグ3とテールピース5の接続を解除して合鍵65の変更作業を行うことが可能となる。
また、変更用鍵67が鍵穴22に挿入されると、補助クラッチ片46の嵌合板52が外筒2の嵌合溝19に嵌合して、補助クラッチ片46及びテールピース5の外筒2に対する回転が規制されるようになっている。このような構成を採用することで、鍵穴22に挿入された変更用鍵67が回転した際に、変更用鍵67からクラッチ片45に伝達されるトルクによってクラッチ片45と一体化されたテールピース5が回転するのを防止することが可能となる。
また、プラグ側接続解除位置でクラッチ片45が回転すると、クラッチ片45が凸部53の傾斜部54を押圧して補助クラッチ片46が後側にスライドし、貫通穴50と凸部53の係合が解除されるようになっている。このような構成を採用することで、プラグ側接続解除位置でクラッチ片45が回転した場合にクラッチ片45から補助クラッチ片46への回転の伝達が防止され、これに伴って扉の不正解錠を確実に防止することが可能となる。
以上のように、本実施形態のクラッチ機構6は、クラッチ片45と補助クラッチ片46を備えたダブルクラッチの構造になっている。そして、合鍵65以外のものでプラグ3が回転されてプラグ3に過剰なトルクが加わった場合には、上記のダブルクラッチの作用によりプラグ3とテールピース5の接続を解除し、プラグ3をテールピース5に対して空転させて、不正解錠行為を防止できるようになっている。
本実施形態では、貫通穴50によってクラッチ片側係合部を構成する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、クラッチ片45を貫通しない凹部によってクラッチ片側係合部を構成しても良い。
本実施形態では、屋外に設置される扉等にシリンダー錠1が取り付けられる場合について説明したが、屋内に設置される扉等に本発明のシリンダー錠を取り付けることも、勿論可能である。また、本発明のシリンダー錠は、建築建物用の扉に限らず、例えば自動販売機の扉等、あらゆる種類の扉に適用することが可能である。
本実施形態では、ハンドルロックを施解錠機構として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、ハンドルロック以外の施解錠機構を用いても良い。
1 シリンダー錠
2 外筒
3 プラグ
5 テールピース
6 クラッチ機構
19 嵌合溝(嵌合部)
22 鍵穴
45 クラッチ片
46 補助クラッチ片
47 コイルスプリング(付勢部材)
50 貫通穴(クラッチ片側係合部)
53 凸部(補助クラッチ片側係合部)
54 傾斜部
65 合鍵
67 変更用鍵

Claims (4)

  1. 鍵穴を有するプラグと、前記鍵穴への鍵の挿入方向において前記プラグの奥側に設けられ、施解錠機構に接続されるテールピースと、前記プラグと前記テールピースを接続するクラッチ機構と、を備えたシリンダー錠であって、
    前記クラッチ機構は、
    前記プラグに係合すると共に前記テールピースとの係合が解除されるプラグ側接続解除位置と、前記プラグ及び前記テールピースの両方に係合する接続位置と、の間でスライドするクラッチ片と、
    該クラッチ片を前記プラグ側接続解除位置に付勢する付勢部材と、を備え、
    前記鍵穴に合鍵が挿入されると、該合鍵が前記クラッチ片を押圧し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ片が前記プラグ側接続解除位置から前記接続位置までスライドすることを特徴とするシリンダー錠。
  2. 前記クラッチ片は、前記プラグとの係合が解除されると共に前記テールピースに係合するテールピース側接続解除位置までスライド可能に設けられ、
    前記挿入方向の長さが前記合鍵よりも長い変更用鍵が前記鍵穴に挿入されると、前記変更用鍵が前記クラッチ片を押圧し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ片が前記プラグ側接続解除位置から前記テールピース側接続解除位置までスライドすることを特徴とする請求項1に記載のシリンダー錠。
  3. 前記プラグ及び前記テールピースは、前記クラッチ片の奥側に嵌合部を有する外筒に対して回転可能に設けられ、
    前記クラッチ機構は、前記挿入方向において前記クラッチ片の奥側且つ前記嵌合部の手前側に配置されて前記テールピースと一体に回転する補助クラッチ片を備え、
    前記変更用鍵が前記鍵穴に挿入されると、前記クラッチ片が前記補助クラッチ片を押圧し、該補助クラッチ片が前記挿入方向奥側にスライドして前記嵌合部に嵌合し、前記補助クラッチ片及び前記テールピースの前記外筒に対する回転が規制されることを特徴とする請求項2に記載のシリンダー錠。
  4. 前記クラッチ片は、クラッチ片側係合部を備えて回転可能に設けられ、
    前記補助クラッチ片は、前記クラッチ片側係合部に係合する補助クラッチ片側係合部を備え、該補助クラッチ片側係合部には、前記クラッチ片の回転方向に対して傾斜する傾斜部が設けられ、
    前記プラグ側接続解除位置で前記クラッチ片が回転すると、該クラッチ片が前記傾斜部を押圧して前記補助クラッチ片が前記挿入方向奥側にスライドし、前記クラッチ片側係合部と前記補助クラッチ片側係合部の係合が解除されることを特徴とする請求項3に記載のシリンダー錠。
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