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JP6090552B1 - 炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法、炭化珪素半導体装置の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置 - Google Patents

炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法、炭化珪素半導体装置の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置 Download PDF

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秀之 土井
洋典 伊東
洋典 伊東
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Abstract

炭化珪素層を形成する工程において、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属する。第1座標は、(0.05,6.5×10-4)である。第2座標は、(0.05,4.5×10-3)である。第3座標は、(0.22,1.2×10-2)である。第4座標は、(0.22,1.3×10-1)である。炭化珪素層を形成する工程後において、炭化珪素層のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である。

Description

本開示は、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法、炭化珪素半導体装置の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置に関する。本出願は、2015年9月29日に出願した日本特許出願である特願2015−191489号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
特開2014−170891号公報(特許文献1)には、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素層をエピタキシャル成長させる方法が開示されている。
特開2014−170891号公報
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は以下の工程を備えている。炭化珪素単結晶基板が反応室内に配置される。反応室に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給することにより、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素層が形成される。炭化珪素単結晶基板の最大径は、100mm以上である。炭化珪素層を形成する工程において、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属する。第1座標は、(0.05,6.5×10-4)である。第2座標は、(0.05,4.5×10-3)である。第3座標は、(0.22,1.2×10-2)である。第4座標は、(0.22,1.3×10-1)である。炭化珪素層20を形成する工程後において、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である。
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置は、反応室と、ガス供給部と、制御部とを備えている。反応室は、炭化珪素単結晶基板を加熱可能に構成されている。ガス供給部は、反応室に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給可能に構成されている。制御部は、ガス供給部から反応室に供給される混合ガスの流量を制御可能に構成されている。制御部は、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値が、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属するように、シランの流量、アンモニアの流量および水素の流量を制御可能に構成されている。第1座標は、(0.05,6.5×10-4)である。第2座標は、(0.05,4.5×10-3)である。第3座標は、(0.22,1.2×10-2)である。第4座標は、(0.22,1.3×10-1)である。
図1は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置の構成を示す一部断面模式図である。 図2は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法における、SiH流量/H流量(%)と、NH流量(sccm)との関係を示す図である。 図3は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法を概略的に示すフローチャートである。 図4は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法の第1工程を示す断面模式図である。 図5は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法の第2工程を示す断面模式図である。 図6は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を概略的に示すフローチャートである。 図7は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1工程を示す断面模式図である。 図8は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2工程を示す断面模式図である。 図9は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第3工程を示す断面模式図である。 図10は、評価サンプルに係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法における、SiH流量/H流量(%)と、NH流量(sccm)との関係を示す図である。
[本開示の実施形態の概要]
まず本開示の実施形態について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上に”−”(バー)を付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
(1)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法は以下の工程を備えている。炭化珪素単結晶基板10が反応室201内に配置される。反応室201に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給することにより、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層20が形成される。炭化珪素単結晶基板10の最大径は、100mm以上である。炭化珪素層を形成する工程において、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属する。第1座標は、(0.05,6.5×10-4)である。第2座標は、(0.05,4.5×10-3)である。第3座標は、(0.22,1.2×10-2)である。第4座標は、(0.22,1.3×10-1)である。炭化珪素層20を形成する工程後において、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である。なお、流量の単位「sccm(standard cc/minute)」は、標準状態(0℃、101.3kPa)における流量「cc/分」を示す。
炭化珪素半導体装置の製造に用いられる炭化珪素エピタキシャル基板には、平均キャリア濃度を炭化珪素半導体装置として必要とされる一定の範囲に維持しつつ、キャリア濃度の良好な面内均一性および炭化珪素層の表面の良好な平坦性を実現することが求められている。近年では、上記特性の実現に加え、炭化珪素層の成長速度の高速化が求められている。
しかしながら、炭化珪素層の成長速度を単に増加させると、炭化珪素層の表面の平坦性が悪化する場合がある。また炭化珪素層の表面の平坦性を良好に維持しようとすると、炭化珪素層の平均キャリア濃度が、パワーデバイスとして必要とされる範囲を満たすことができない場合がある。つまり、炭化珪素層の平均キャリア濃度を炭化珪素半導体装置として必要とされる一定の範囲に維持しつつ、炭化珪素層の高速成長と、炭化珪素層の表面の良好な平坦性と、キャリア濃度の良好な面内均一性とを実現することは非常に困難であった。発明者らは、上記の要求を満たす炭化珪素エピタキシャル基板を製造する方策について鋭意研究の結果、以下の知見を得て本開示の一態様を見出した。
具体的には、原料ガスとしてシランを使用し、キャリアガスとして水素を使用し、ドーパントガスとしてアンモニアを使用した上で、シラン流量/水素流量と、アンモニア流量とを一定の範囲内に制御することにより、上記の要求を満たす炭化珪素エピタキシャル基板を実現可能であることを見出した。具体的には、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値が、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属するように、シランの流量と、水素の流量と、アンモニアの流量とが制御される。これにより、炭化珪素層の表面の平坦性およびキャリア濃度の面内均一性を向上しつつ、炭化珪素層の高速成長を実現可能である。
(2)上記(1)に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法において、反応室201は、炭化珪素単結晶基板10上の第1加熱領域213と、第1加熱領域213よりも上流側に位置する第2加熱領域214とを含んでいてもよい。炭化珪素層20を形成する工程において、第2加熱領域214の温度は、アンモニアの分解温度以上であってもよい。これにより、炭化珪素単結晶基板の上流側でアンモニアを熱分解することができるので、キャリア濃度の面内均一性を向上することができる。
(3)上記(2)に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法において、混合ガスの流れ方向において、第2加熱領域214の長さは、60mm以上である。これにより、広い領域でアンモニアを熱分解することができるので、キャリア濃度の面内均一性を向上することができる。
(4)本開示に係る炭化珪素半導体装置300の製造方法は以下の工程を備えている。上記(1)〜上記(3)のいずれかに記載の方法で製造された炭化珪素エピタキシャル基板が準備される。炭化珪素エピタキシャル基板が加工される。
(5)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、反応室201と、ガス供給部235と、制御部245とを備えている。反応室201は、炭化珪素単結晶基板10を加熱可能に構成されている。ガス供給部235は、反応室201に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給可能に構成されている。制御部245は、ガス供給部235から反応室201に供給される混合ガスの流量を制御可能に構成されている。制御部245は、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値が、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属するように、シランの流量、アンモニアの流量および水素の流量を制御可能に構成されている。第1座標は、(0.05,6.5×10-4)である。第2座標は、(0.05,4.5×10-3)である。第3座標は、(0.22,1.2×10-2)である。第4座標は、(0.22,1.3×10-1)である。これにより、炭化珪素層の平均キャリア濃度を1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下に維持しつつ、炭化珪素層の高速成長と、炭化珪素層の表面の良好な平坦性と、キャリア濃度の良好な面内均一性とを実現することができる。
(6)上記(5)に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200において、反応室201は、炭化珪素単結晶基板10が配置される領域上の第1加熱領域213と、第1加熱領域213よりも上流側に位置する第2加熱領域214とを含んでいてもよい。第2加熱領域214は、アンモニアの分解温度以上の温度に加熱可能に構成されていてもよい。これにより、炭化珪素単結晶基板の上流側でアンモニアを熱分解することができるので、キャリア濃度の面内均一性を向上することができる。
(7)上記(6)に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200において、混合ガスの流れ方向において、第2加熱領域214の長さは、60mm以上であってもよい。これにより、広い領域でアンモニアを熱分解することができるので、キャリア濃度の面内均一性を向上することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」とも記す)について説明する。ただし本実施形態はこれらに限定されるものではない。
(炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置)
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200の構成について説明する。
図1に示されるように、製造装置200は、たとえばホットウォール方式の横型CVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。製造装置200は、反応室201と、ガス供給部235と、制御部245と、発熱体203、石英管204、断熱材205、誘導加熱コイル206とを主に有している。
発熱体203は、たとえば筒状の形状を有しており、内部に反応室201を形成している。発熱体203は、たとえば黒鉛製である。断熱材205は、発熱体203の外周を取り囲んでいる。断熱材205は、石英管204の内周面に接するように石英管204の内部に設けられている。誘導加熱コイル206は、たとえば石英管204の外周面に沿って巻回されている。誘導加熱コイル206は、外部電源(図示せず)により、交流電流が供給可能に構成されている。これにより、発熱体203が誘導加熱される。結果として、反応室201が発熱体203により加熱される。
反応室201は、発熱体203に取り囲まれて形成された空間である。反応室201内には、炭化珪素単結晶基板10が配置される。反応室201は、炭化珪素単結晶基板10を加熱可能に構成されている。炭化珪素単結晶基板の最大径は100mm以上である。反応室201には、炭化珪素単結晶基板10を保持するサセプタプレート210が設けられている。サセプタプレート210は、回転軸212の周りを自転可能に構成されている。
製造装置200は、ガス導入口207およびガス排気口208をさらに有している。ガス排気口208は、図示しない排気ポンプに接続されている。図1中の矢印は、ガスの流れを示している。ガスは、ガス導入口207から反応室201に導入され、ガス排気口208から排気される。反応室201内の圧力は、ガスの供給量と、ガスの排気量とのバランスによって調整される。
製造装置200は、ガス導入口207および発熱体203の間に位置する加熱部211をさらに有していてもよい。加熱部211は、発熱体203よりも上流側に位置している。発熱体203は、たとえば1100℃から1350℃程度に加熱されるように構成されていてもよい。
ガス供給部235は、反応室201に、シランとアンモニアと水素および炭素原子を含むガスとを含む混合ガスを供給可能に構成されている。具体的には、ガス供給部235は、第1ガス供給部231と、第2ガス供給部232と、第3ガス供給部233と、キャリアガス供給部234とを含んでもよい。
第1ガス供給部231は、炭素原子を含む第1ガスを供給可能に構成されている。第1ガス供給部231は、たとえば第1ガスが充填されたガスボンベである。第1ガスは、たとえばプロパン(C38)ガスである。第1ガスは、たとえばメタン(CH4)ガス、エタン(C26)ガス、アセチレン(C22)ガス等であってもよい。
第2ガス供給部232は、シランガスを含む第2ガスを供給可能に構成されている。第2ガス供給部232は、たとえば第2ガスが充填されたガスボンベである。第2ガスは、たとえばシラン(SiH4)ガスである。第2ガスは、シランガスと、シラン以外の他のガスとの混合ガスでもよい。
第3ガス供給部233は、アンモニアガスを含む第3ガスを供給可能に構成されている。第3ガス供給部233は、たとえば第3ガスが充填されたガスボンベである。第3ガスは、N(窒素原子)を含むドーピングガスである。アンモニアガスは、三重結合を有する窒素ガスに比べて熱分解されやすい。アンモニアガスを用いることにより、キャリア濃度の面内均一性の向上が期待できる。
キャリアガス供給部234は、たとえば水素などのキャリアガスを供給可能に構成されている。キャリアガス供給部234は、たとえば水素が充填されたガスボンベである。
制御部245は、ガス供給部235から反応室201に供給される混合ガスの流量を制御可能に構成されている。具体的には、制御部245は、第1ガス流量制御部241と、第2ガス流量制御部242と、第3ガス流量制御部243と、キャリアガス流量制御部244とを含んでいてもよい。各制御部は、たとえばMFC(Mass Flow Controller)であってもよい。制御部245は、ガス供給部235とガス導入口207との間に配置されている。言い換えれば、制御部245は、ガス供給部235とガス導入口207とを繋ぐ流路に配置されている。
製造装置200において、反応室201は、炭化珪素単結晶基板10が配置される領域上の第1加熱領域213と、第1加熱領域213よりも上流側に位置する第2加熱領域214とを含んでいる。図1に示されるように、第2加熱領域214は、混合ガスの流れ方向(反応室201の軸方向)において、断熱材205と発熱体203との上流側の境界から、上流側の炭化珪素単結晶基板10が配置される領域の端部までの領域である。第2加熱領域214と第1加熱領域213との境界部は、サセプタプレート210に設けられた凹部の上流側の側面であってもよい。第1加熱領域213の下流側の端部は、断熱材205と発熱体203との下流側の境界であってもよい。
反応室201の軸方向において、誘導加熱コイル206の巻き密度を変化させてもよい。巻き密度[回/m]とは、装置の軸方向の単位長さあたりのコイルの周回数である。たとえば、上流側でアンモニアを効果的に熱分解させるために、第2加熱領域214において、上流側の誘導加熱コイル206の巻き密度は、下流側の誘導加熱コイル206の巻き密度よりも高くてもよい。
第2加熱領域214は、アンモニアの分解温度以上の温度に加熱可能に構成されていてもよい。アンモニアの分解温度は、たとえば500℃である。第2加熱領域214の温度は、たとえば放射温度計により測定可能である。第2加熱領域214を構成する発熱体203の部分の温度は、たとえば1580℃である。混合ガスの流れ方向において、第2加熱領域214の長さ222は、60mm以上であってもよいし、70mm以上であってもよいし、80mm以上であってもよく、100mm以下が好ましい。100mmを超えるとアンモニアの分解が進み過ぎ、キャリア濃度の面内均一性が悪化する可能性がある。混合ガスの流れ方向において、第1加熱領域213の長さ221は、第2加熱領域214の長さ222よりも大きくてもよい。
図2に示されるように、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(第1値)をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)をY軸とする。制御部245は、第1値(%)および第2値(sccm)が、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域(図2においてハッチングで示した領域)内に属するように、シランの流量、アンモニアの流量および水素の流量を制御可能に構成されている。第1座標(X1,Y1)は、(0.05,6.5×10-4)である。第2座標(X2,Y2)は、(0.05,4.5×10-3)である。第3座標(X3,Y3)は、(0.22,1.2×10-2)である。第4座標(X4,Y4)は、(0.22,1.3×10-1)である。
制御部245は、たとえば、キャリアガス(水素)の流量が100slmとなるように制御可能に構成されたキャリアガス流量制御部244と、第2ガス(シランガス)の流量が150sccmとなるように制御可能に構成された第2ガス流量制御部242と、第3ガス(アンモニアガス)の流量が1.1×10-2sccmとなるように制御可能に構成された第3ガス流量制御部243とを含む。この場合、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値は、0.15%である。そのため、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(第1値)と、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)とは、図2においてハッチングで示した領域内に属する。
(炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法)
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素単結晶基板を反応室内に配置する工程(S1:図3)が実施される。たとえば昇華法により、ポリタイプ6Hの炭化珪素単結晶が製造される。次に、たとえばワイヤーソーによって、炭化珪素単結晶をスライスすることにより、炭化珪素単結晶基板10が準備される(図4参照)。炭化珪素単結晶基板10は、第1主面41と、第1主面41と反対側の第2主面42とを有する。当該炭化珪素単結晶のポリタイプは、たとえば4H−SiCである。4H−SiCは、電子移動度、絶縁破壊電界強度等において他のポリタイプより優れている。炭化珪素単結晶基板10は、たとえば窒素などのn型不純物を含んでいる。炭化珪素単結晶基板10の導電型は、たとえばn型である。
第1主面41は、たとえば{0001}面もしくは{0001}面から8°以下の角度だけ傾斜した面である。具体的には、第1主面41は、(0001)面もしくは(0001)面から8°以下の角度だけ傾斜した面であってもよいし、(000−1)面もしくは(000−1)面から8°以下の角度だけ傾斜した面であってもよい。第1主面41が{0001}面から傾斜している場合、第1主面41の法線の傾斜方向は、たとえば<11−20>方向である。{0001}面からの傾斜角(オフ角)は、1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、7°以下であってもよいし、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
炭化珪素単結晶基板10の第1主面41の最大径(直径)は、100mm以上である。直径は150mm以上でもよいし、200mm以上でもよいし、250mm以上でもよい。直径の上限は特に限定されないが、直径の上限はたとえば300mmであってもよい。次に、炭化珪素単結晶基板10が反応室201内に配置される。図1に示されるように、炭化珪素単結晶基板10は、サセプタプレート210の凹部内に配置される。
次に、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素層を形成する工程(S2:図3)が実施される。具体的には、上述した製造装置200を用いて、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層20がエピタキシャル成長によって形成される。たとえば反応室201の圧力が大気圧から1×10-6Pa程度に低減された後、炭化珪素単結晶基板10の昇温が開始される。昇温の途中において、キャリアガス供給部234からキャリアガスである水素(H2)ガスは反応室201に導入される。水素ガスの流量は、キャリアガス流量制御部244により調整される。
炭化珪素単結晶基板10の温度がたとえば1600℃程度になった後、反応室201に、原料ガス、ドーパントガスおよびキャリアガスが供給される。具体的には、反応室201に、シランとアンモニアと水素とプロパンとを含む混合ガスを供給することにより、それぞれのガスが熱分解され、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層20が形成される。混合ガスのC/Si比は、たとえば1.0であってもよい。
図2に示されるように、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(第1値)をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)をY軸とする。炭化珪素層を形成する工程において、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域(図2においてハッチングで示した領域)内に属する。第1座標(X1,Y1)は、(0.05,6.5×10-4)である。第2座標(X2,Y2)は、(0.05,4.5×10-3)である。第3座標(X3,Y3)は、(0.22,1.2×10-2)である。第4座標(X4,Y4)は、(0.22,1.3×10-1)である。
たとえば、キャリアガス流量制御部244を用いて、反応室201に供給されるキャリアガス(水素)の流量が100slmとなるように調整される。第2ガス流量制御部242を用いて、反応室201に供給される第2ガス(シランガス)の流量が150sccmとなるように調整される。第3ガス流量制御部243を用いて、第3ガス(アンモニアガス)の流量が1.1×10-2sccmとなるよう調整される。この場合、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値は、0.15%である。そのため、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(第1値)と、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)とは、図2においてハッチングで示した領域内に属する。
アンモニアの流量(sccm)は、6.5×10-4以上であってもよいし、4.5×10-3以上であってもよいし、1.1×10-2以上であってもよいし、1.2×10-2以上であってもよい。アンモニアの流量(sccm)は、たとえば1.3×10-1以下であってもよい。シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(%)は、0.05以上であってもよいし、0.15以上であってもよい。シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(%)は、たとえば0.22以下であってもよい。シランの流量は、たとえば30sccm以上200sccm以下であってもよい。水素の流量は、たとえば80slm以上140slm以下であってもよい。
炭化珪素層20の成長速度は、8μm/h以上であってもよいし、15μm/h以上であってもよいし、25μm/h以上であってもよいし、33μm/h以上であってもよい。炭化珪素層20の成長速度は、50μm/h以下であってもよい。炭化珪素層20の成長速度は、シランの流量に対する水素の流量により決定され得る。シランは原料ガスであるため、シランの流量が多い程、炭化珪素層の成長速度は高くなる。一方、水素は、炭化珪素をエッチングする性質を有するため、水素の流量が多い程、炭化珪素層の成長速度が低くなる。
上述のように、反応室201は、炭化珪素単結晶基板10上の第1加熱領域213と、第1加熱領域213よりも上流側に位置する第2加熱領域214とを含んでいてもよい。炭化珪素層20を形成する工程において、第2加熱領域214の温度は、アンモニアの分解温度以上であってもよい。混合ガスの流れ方向において、第2加熱領域214の長さは、60mm以上であってもよい。
上述のように、シラン、プロパン、アンモニアおよび水素の混合ガスが反応室201に供給されることで、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層20が形成される。なお、プロパンの代わりに、メタン(CH4)、エタン(C26)、アセチレン(C22)等が用いられてもよい。混合ガスが反応室201に供給されている間、炭化珪素単結晶基板10は、回転軸212の周りを回転していてもよい。以上により、炭化珪素単結晶基板10と、炭化珪素層20とを含む炭化珪素エピタキシャル基板100(図5参照)が製造される。炭化珪素層20は、炭化珪素単結晶基板10に接する第4主面44と、第4主面44と反対側の第3主面43とを有する。
上記方法で製造された炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値をある濃度範囲に維持しながら、炭化珪素層20中のキャリア濃度の面内均一性を向上し、かつ炭化珪素層20の表面の二乗平均平方根偏差(Sq)を低減することができる。
具体的には、炭化珪素層20を形成する工程後において、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である。キャリア濃度の面内均一性は、たとえば6%以下である。キャリア濃度の面内均一性は、キャリア濃度の標準偏差をキャリア濃度の平均値で除した値の百分率表記である。キャリア濃度は、たとえば水銀プローブ方式のC−V測定装置により測定され得る。具体的には、炭化珪素層20の第3主面43に一方のプローブが配置され、炭化珪素単結晶基板10の第2主面42に他方のプローブが配置される。一方のプローブの面積は、たとえば0.01cm2である。一方のプローブと他方のプローブとの間に電圧が印加され、一方のプローブと他方のプローブとの間のキャパシタンスが測定される。縦軸を1/C(キャパシタンスの二乗の逆数)とし、横軸をV(電圧)とし、測定データの直線の傾きから、キャリア濃度が求められる。キャリア濃度の測定深さは、印加電圧によって調整される。本実施形態においては、第3主面43から第2主面42に向かって10μm程度以内である炭化珪素層20の領域におけるキャリア濃度が測定される。
第3主面43の二乗平均平方根偏差(Sq)は、たとえば0.4nm以下である。二乗平均平方根偏差(Sq)は、二乗平均平方根粗さ(Rq)を3次元に拡張したパラメータである。二乗平均平方根偏差(Sq)は、たとえば白色干渉顕微鏡により測定可能である。二乗平均平方根偏差(Sq)の測定領域は、一辺が250μmの正方形領域とすることができる。
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置300の製造方法について説明する。
本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は、エピタキシャル基板準備工程(S10:図6)と、基板加工工程(S20:図6)とを主に有する。
まず、エピタキシャル基板準備工程(S10:図6)が実施される。具体的には、前述した炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によって、炭化珪素エピタキシャル基板100が準備される(図5参照)。
次に、基板加工工程(S20:図6)が実施される。具体的には、炭化珪素エピタキシャル基板を加工することにより、炭化珪素半導体装置が製造される。「加工」には、たとえば、イオン注入、熱処理、エッチング、酸化膜形成、電極形成、ダイシング等の各種加工が含まれる。すなわち基板加工ステップは、イオン注入、熱処理、エッチング、酸化膜形成、電極形成およびダイシングのうち、少なくともいずれかの加工を含むものであってもよい。
以下では、炭化珪素半導体装置の一例としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の製造方法を説明する。基板加工工程(S20:図6)は、イオン注入工程(S21:図6)、酸化膜形成工程(S22:図6)、電極形成工程(S23:図6)およびダイシング工程(S24:図6)を含む。
まず、イオン注入工程(S21:図6)が実施される。開口部を有するマスク(図示せず)が形成された第3主面43に対して、たとえばアルミニウム(Al)等のp型不純物が注入される。これにより、p型の導電型を有するボディ領域132が形成される。次に、ボディ領域132内の所定位置に、たとえばリン(P)等のn型不純物が注入される。これにより、n型の導電型を有するソース領域133が形成される。次に、アルミニウム等のp型不純物がソース領域133内の所定位置に注入される。これにより、p型の導電型を有するコンタクト領域134が形成される(図7参照)。
炭化珪素層20において、ボディ領域132、ソース領域133およびコンタクト領域134以外の部分は、ドリフト領域131となる。ソース領域133は、ボディ領域132によってドリフト領域131から隔てられている。イオン注入は、炭化珪素エピタキシャル基板100を300℃以上600℃以下程度に加熱して行われてもよい。イオン注入の後、炭化珪素エピタキシャル基板100に対して活性化アニールが行われる。活性化アニールにより、炭化珪素層20に注入された不純物が活性化し、各領域においてキャリアが生成される。活性化アニールの雰囲気は、たとえばアルゴン(Ar)雰囲気でもよい。活性化アニールの温度は、たとえば1800℃程度でもよい。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度でもよい。
次に、酸化膜形成工程(S22:図6)が実施される。たとえば炭化珪素エピタキシャル基板100が酸素を含む雰囲気中において加熱されることにより、第3主面43上に酸化膜136が形成される(図8参照)。酸化膜136は、たとえば二酸化珪素(SiO2)等から構成される。酸化膜136は、ゲート絶縁膜として機能する。熱酸化処理の温度は、たとえば1300℃程度でもよい。熱酸化処理の時間は、たとえば30分程度でもよい。
酸化膜136が形成された後、さらに窒素雰囲気中で熱処理が行なわれてもよい。たとえば、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)等の雰囲気中、1100℃程度で1時間程度、熱処理が実施されてもよい。さらにその後、アルゴン雰囲気中で熱処理が行なわれてもよい。たとえば、アルゴン雰囲気中、1100〜1500℃程度で、1時間程度、熱処理が行われてもよい。
次に、電極形成工程(S23:図6)が実施される。第1電極141は、酸化膜136上に形成される。第1電極141は、ゲート電極として機能する。第1電極141は、たとえばCVD法により形成される。第1電極141は、たとえば不純物を含有し導電性を有するポリシリコン等から構成される。第1電極141は、ソース領域133およびボディ領域132に対面する位置に形成される。
次に、第1電極141を覆う層間絶縁膜137が形成される。層間絶縁膜137は、たとえばCVD法により形成される。層間絶縁膜137は、たとえば二酸化珪素等から構成される。層間絶縁膜137は、第1電極141と酸化膜136とに接するように形成される。次に、所定位置の酸化膜136および層間絶縁膜137がエッチングによって除去される。これにより、ソース領域133およびコンタクト領域134が、酸化膜136から露出する。
たとえばスパッタリング法により当該露出部に第2電極142が形成される。第2電極142はソース電極として機能する。第2電極142は、たとえばチタン、アルミニウムおよびシリコン等から構成される。第2電極142が形成された後、第2電極142と炭化珪素エピタキシャル基板100が、たとえば900〜1100℃程度の温度で加熱される。これにより、第2電極142と炭化珪素エピタキシャル基板100とがオーミック接触するようになる。次に、第2電極142に接するように、配線層138が形成される。配線層138は、たとえばアルミニウムを含む材料から構成される。
次に、第2主面42に第3電極143が形成される。第3電極143は、ドレイン電極として機能する。第3電極143は、たとえばニッケルおよびシリコンを含む合金(たとえばNiSi等)から構成される。
次に、ダイシング工程(S24:図6)が実施される。たとえば炭化珪素エピタキシャル基板100がダイシングラインに沿ってダイシングされることにより、炭化珪素エピタキシャル基板100が複数の半導体チップに分割される。以上より、炭化珪素半導体装置300が製造される(図9参照)。
上記において、MOSFETを例示して、本開示に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を説明したが、本開示に係る製造方法はこれに限定されない。本開示に係る製造方法は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、SBD(Schottky Barrier Diode)、サイリスタ、GTO(Gate Turn Off thyristor)、PiNダイオード等の各種炭化珪素半導体装置に適用可能である。
(評価)
(サンプル準備)
上述した炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法を用いて、サンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板が製造された。サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.05%であり、NH流量は6.5×10-4±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は8μm/hである。サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.05%であり、NH流量は4.5×10-3±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は8μm/hである。サンプル3に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.22%であり、NH流量は1.2×10-2±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は50μm/hである。サンプル4に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.22%であり、NH流量は1.3×10-1±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は50μm/hである。サンプル5に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.15%であり、NH流量は1.1×10-2±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は33μm/hである。
サンプル6に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.03%であり、NH流量は8×10-4±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は2μm/h程度である。サンプル7に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.37%であり、NH流量は7×10-2±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は90μm/hである。サンプル8に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程のおける、SiH流量/H流量は0.12%であり、NH流量は9×10-2±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は25μm/hである。サンプル9に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程における、SiH流量/H流量は0.12%であり、NH流量は1×10-3±20%(sccm)であり、炭化珪素層の成長速度は25μm/hである。サンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法において、H流量は120slmとし、SiH流量を変化させることで、SiH流量/H流量を変化させた。
(測定)
サンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の炭化珪素層20のキャリア濃度が水銀プローブ方式のC−V測定装置により測定された。第3主面43の中心から半径60mm以内の領域において、キャリア濃度が測定された。キャリア濃度の測定箇所は、第3主面43の中心を通り径方向に平行な直線と、当該直線に対して垂直な直線上において、ほぼ等間隔に配置された複数の位置である。具体的には、キャリア濃度の測定位置は、第3主面43の中心と、当該中心から径方向に10mm、20mm、30mm、40mm、50mmおよび60mm離れた位置である。キャリア濃度の測定箇所は、計25箇所である。キャリア濃度の面内均一性は、キャリア濃度の標準偏差をキャリア濃度の平均値で除することにより計算された。なお水銀側のプローブの面積は、たとえば0.01cmである。
白色干渉顕微鏡を用いて、第3主面43の中央領域における二乗平均平方根偏差(Sq)が測定された。二乗平均平方根偏差の測定領域は、一辺が250μmの正方形領域である。二乗平均平方根偏差の測定位置は、第3主面43の中心と、当該中心から径方向に50mm離れた位置である。二乗平均平方根偏差の測定箇所は、計2箇所である。表1においては、Sqの範囲が示されている。
(結果)
図10は、サンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程におけるSiH/HをX軸とし、NHをY軸として、XY平面座標にプロットした図である。座標101〜109は、それぞれサンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法に対応している。
Figure 0006090552
表1に示されるように、サンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板の炭化珪素層中のキャリア濃度の面内均一性は、それぞれ、6%未満、6%未満、3%未満、3%未満、2%未満、7%程度、3%未満、2%未満および6%未満であった。サンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板の炭化珪素層の第3表面の二乗平均平方根偏差(Sq)は、それぞれ、0.1〜0.4nm、0.1〜0.4nm、0.1〜0.4nm、0.1〜0.4nm、0.1〜0.4nm、0.1〜0.4nm、0.8nm超、0.1〜0.4nmおよび0.1〜0.4nmであった。サンプル1〜9に係る炭化珪素エピタキシャル基板の炭化珪素層中の平均キャリア濃度は、1×1015cm-3、2×1016cm-3、1×1015cm-3、2×1016cm-3、3×1015cm-3、3×1015cm-3、3×1015cm-3、3×1016cm-3超および1×1015cm-3未満であった。
表1に示されるように、サンプル1〜5に係る炭化珪素エピタキシャル基板は、平均キャリア濃度が1×1015cm−3以上2×1016cm−3以下であり、キャリア濃度均一性の値が6%以下であり、成長速度は8μm/h以上であり、かつ二乗平均平方根偏差(Sq)が0.4nm以下であった。サンプル6に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造条件では、成長速度が2μm/hであり、高速成長を実現することができなかった。またサンプル6に係る炭化珪素エピタキシャル基板は、キャリア濃度の面内均一性の値が7%程度であり、キャリア濃度は面内において十分に均一ではなかった。サンプル7に係る炭化珪素エピタキシャル基板は、二乗平均平方根偏差(Sq)が0.8nmよりも大きく、平坦性が十分高くなかった。サンプル8に係る炭化珪素エピタキシャル基板においては、平均キャリア濃度が2×1016cm−3より大きくなり、パワーデバイスで要求される平均キャリア濃度の範囲を実現することができなかった。サンプル9に係る炭化珪素エピタキシャル基板においては、平均キャリア濃度が1×1015cm−3より小さくなり、パワーデバイスで要求される平均キャリア濃度の範囲を実現することができなかった。
以上の結果より、サンプル1〜5に係る炭化珪素エピタキシャル基板は、平均キャリア濃度が1×1015cm−3以上2×1016cm−3以下であることを維持しつつ、良好なキャリア濃度の面内均一性と、高い成長速度と、良好な平坦性とを実現することができた。言い換えれば、炭化珪素エピタキシャル基板の製造工程において、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(第1値)およびアンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)が、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域(図2においてハッチングで示した領域)内に属するように、シランの流量、水素の流量およびアンモニアの流量を制御することにより、良好なキャリア濃度の面内均一性と、高い成長速度と、良好な平坦性とを有する炭化珪素エピタキシャル基板が製造可能であることが実証された。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 炭化珪素単結晶基板、20 炭化珪素層、41 第1主面、42 第2主面、43 第3主面、44 第4主面、100 炭化珪素エピタキシャル基板、131 ドリフト領域、132 ボディ領域、133 ソース領域、134 コンタクト領域、136 酸化膜、137 層間絶縁膜、138 配線層、141 第1電極、142 第2電極、143 第3電極、200 製造装置、201 反応室、203 発熱体、204 石英管、205 断熱材、206 誘導加熱コイル、207 ガス導入口、208 ガス排気口、210 サセプタプレート、211 加熱部、212 回転軸、213 第1加熱領域、214 第2加熱領域、221,222 長さ、231 第1ガス供給部、232 第2ガス供給部、233 第3ガス供給部、234 キャリアガス供給部、235 ガス供給部、241 第1ガス流量制御部、242 第2ガス流量制御部、243 第3ガス流量制御部、244 キャリアガス流量制御部、245 制御部、300 炭化珪素半導体装置。

Claims (7)

  1. 炭化珪素単結晶基板を反応室内に配置する工程と、
    前記反応室に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給することにより、前記炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素層を形成する工程とを備え、
    前記炭化珪素単結晶基板の最大径は、100mm以上であり、
    前記炭化珪素層を形成する工程において、前記シランの流量を前記水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、前記アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、前記第1値および前記第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属し、
    前記第1座標は、(0.05,6.5×10-4)であり、
    前記第2座標は、(0.05,4.5×10-3)であり、
    前記第3座標は、(0.22,1.2×10-2)であり、
    前記第4座標は、(0.22,1.3×10-1)であり、
    前記炭化珪素層を形成する工程後において、前記炭化珪素層のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
  2. 前記反応室は、前記炭化珪素単結晶基板上の第1加熱領域と、前記第1加熱領域よりも上流側に位置する第2加熱領域とを含み、
    前記炭化珪素層を形成する工程において、前記第2加熱領域の温度は、アンモニアの分解温度以上である、請求項1に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
  3. 前記混合ガスの流れ方向において、前記第2加熱領域の長さは、60mm以上である、請求項2に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の方法で製造された炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程と、
    前記炭化珪素エピタキシャル基板を加工する工程とを備える、炭化珪素半導体装置の製造方法。
  5. 炭化珪素単結晶基板を加熱可能に構成された反応室と、
    前記反応室に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給可能に構成されたガス供給部と、
    前記ガス供給部から前記反応室に供給される前記混合ガスの流量を制御可能に構成された制御部とを備え、
    前記制御部は、前記シランの流量を前記水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、前記アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、前記第1値および前記第2値が、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標および第4座標に囲まれた四角形の領域内に属するように、前記シランの流量、前記アンモニアの流量および前記水素の流量を制御可能に構成されており、
    前記第1座標は、(0.05,6.5×10-4)であり、
    前記第2座標は、(0.05,4.5×10-3)であり、
    前記第3座標は、(0.22,1.2×10-2)であり、
    前記第4座標は、(0.22,1.3×10-1)である、炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置。
  6. 前記反応室は、前記炭化珪素単結晶基板が配置される領域上の第1加熱領域と、前記第1加熱領域よりも上流側に位置する第2加熱領域とを含み、
    前記第2加熱領域は、アンモニアの分解温度以上の温度に加熱可能に構成されている、請求項5に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置。
  7. 前記混合ガスの流れ方向において、前記第2加熱領域の長さは、60mm以上である、請求項6に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置。
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