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JP6087745B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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JP6087745B2 JP2013130451A JP2013130451A JP6087745B2 JP 6087745 B2 JP6087745 B2 JP 6087745B2 JP 2013130451 A JP2013130451 A JP 2013130451A JP 2013130451 A JP2013130451 A JP 2013130451A JP 6087745 B2 JP6087745 B2 JP 6087745B2
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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性に優れ、さらには、耐熱変色性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気・電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、各種携帯端末、プリンター、複写機等の電気・電子機器やOA・情報機器等の部材として好適に使用されている。
なかでもリン酸エステル系難燃剤によって難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、リン酸エステル化合物の可塑化効果により成形性に優れるため幅広く使用されている。
しかしながらリン酸エステル化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性と耐熱性が著しく低下するという欠点があった。また湿熱安定性が悪く、耐熱変色を引き起こしやすいために、照明機器、電光表示器具、プロジェクター等の光源を有し、比較的高い熱が加わるような部材には使用することができなかった。
これに対し、芳香族ホスファゼン化合物を用いて難燃化する手法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、このようなポリカーボネート樹脂組成物では、UL94規格において取得できる難燃性のレベルが、1.5〜2.5mmの厚みでV−0であり、十分に満足のいくレベルではなかった。
また、特許文献4では、ポリカーボネート樹脂に対し、難燃剤として特定のシロキサン系難燃剤と芳香族ホスファゼン化合物とスルホン酸金属塩とポリテトラフルオロエチレンを配合し、さらに酸化チタンとシロキサン系表面処理剤を配合した組成物が提案されている。しかしながら、上述のような組成物は、難燃剤を高配合化してあるために難燃性レベルが向上するものの、色相や耐熱変色性に劣るという致命的な欠点を有していた。
このように、照明機器、電光表示器具、プロジェクター等の高い熱が加わる電子機器用の部材に特に好適な、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性及び耐熱変色性のバランスを満足するポリカーボネート樹脂組成物は未だ得られておらず、このようなポリカーボネート樹脂組成物が強く望まれていた。
特開2011−178873号公報 特開2012−1580号公報 特開2013−1801号公報 特開2004−67881号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて創案されたもので、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性、さらには耐熱変色性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に、特定の2種のホスファゼン化合物からなる環状芳香族ホスファゼン化合物と、フルオロポリマー及び酸化チタンを、それぞれ特定量含有するポリカーボネート樹脂組成物が、驚くべきことに、難燃剤の含有量が極めて少ないのにも関わらず、高い難燃性を発現させることができ、さらには耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性、耐熱変色性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂成形品及びポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムを提供する。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、下記式(1)で表されるヘキサフェノキシトリシクロホスファゼン(B1)と下記式(2)で表されるオクタフェノキシテトラシクロホスファゼン(B2)を75/25〜95/5の質量比で含有する環状芳香族ホスファゼン化合物(B)1.3〜8質量部、フルオロポリマー(C)0.01〜2質量部および酸化チタン(D)0.5〜30質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]ISO75−1に準拠し、1.8MPaの条件で測定した荷重たわみ温度の値が、105℃以上であることを特徴とする上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品。
[4]照明器具部材であることを特徴とする上記[3]に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
[5]電光表示器具筐体であることを特徴とする上記[3]に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
[6]プロジェクター筐体であることを特徴とする上記[3]に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
[7]上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤の含有量が極めて少ないのにも関わらず、高い難燃性を発現させることができ、さらには耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性、耐熱変色性にも優れる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[概要]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、前記式(1)で表されるヘキサフェノキシトリシクロホスファゼン(B1)と前記式(2)で表されるオクタフェノキシテトラシクロホスファゼン(B2)を75/25〜95/5の質量比で含有する環状芳香族ホスファゼン化合物(B)1.3〜8質量部、フルオロポリマー(C)0.01〜2質量部および酸化チタン(D)0.5〜30質量部を含有することを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂の種類に制限はなく、ポリカーボネート樹脂は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、下記一般式で表される、炭酸結合を有する基本構造の重合体である。
式中、Xは一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;
等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
・ポリカーボネート樹脂の製造方法
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち、特に好適なものについて具体的に説明する。
・・界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限はないが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−ヒドロキシ安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
・・溶融エステル交換法
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
・ポリカーボネート樹脂に関するその他の事項
ポリカーボネート樹脂の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは16000以上、より好ましくは17000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは24000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
また、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83 から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これによりポリカーボネート樹脂の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
[環状芳香族ホスファゼン化合物(B)]
本発明に用いる環状芳香族ホスファゼン化合物は、下記式(1)で表されるホスファゼン化合物(B1)および下記式(2)で表されるホスファゼン化合物(B2)を、B1/B2=75/25〜95/5の質量比で含有することを特徴とする。
このホスファゼン化合物(B1)は、耐熱性が高く、ポリカーボネート樹脂への相溶性が良好である点で難燃効果に優れるが、一方で成形品の色相が悪化しやすいという欠点を有している。これに対し、ホスファゼン化合物(B1)よりもわずかに融点の低い上記ホスファゼン化合物(B2)を、B1/B2=75/25〜95/5の質量比で含有することで、成形品の色相悪化や耐熱変色性の問題が解決することが見出され、そして、これと酸化チタン(D)を併せて含有することで、驚くべきことに、さらに難燃性が向上し、また耐熱性と耐衝撃性と遮光性が向上することが見出された。
このため、環状芳香族ホスファゼン(B)は、ホスファゼン化合物(B1)とホスファゼン化合物(B2)を、B1/B2の質量比が75/25〜95/5の範囲で含有することが必要であり、好ましくはB1/B2=77/23〜95/5であり、80/20〜93/7であることがより好ましい。
環状芳香族ホスファゼン(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、1.3〜8質量部であり、好ましくは1.4質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また好ましくは7質量部以下である。
[フルオロポリマー(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、フルオロポリマー(C)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜2質量部含有する。このようにフルオロポリマー(C)を含有することで、ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を効果的に高めることができる。
フルオロポリマー(C)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
フルオロポリマー(C)としては、例えば、フルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体である。具体例としてはジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル共重合樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくはテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が挙げられる。
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、「テフロン(登録商標)640J」、ダイキン工業社製「ポリフロンF201L」、「ポリフロンF103」、「ポリフロンFA500B」、「ポリフロンFA500H」などが挙げられる。さらに、フルオロエチレン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)31−JR」、ダイキン工業社製「フルオンD−1」等が挙げられる。
さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も使用することができ、このようなフルオロエチレン重合体としては、ポリスチレン−フルオロエチレン複合体、ポリスチレン−アクリロニトリル−フルオロエチレン複合体、ポリメタクリル酸メチル−フルオロエチレン複合体、ポリメタクリル酸ブチル−フルオロエチレン複合体等が挙げられ、具体例としては三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス449」等が挙げられる。
なお、フルオロポリマーは、1種を配合してもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合しても良い。
フルオロポリマー(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部以上であるが、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また2質量部以下であって、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.75質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。
[酸化チタン(D)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、酸化チタン(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5〜30質量部含有する。このように酸化チタン(D)を前記環状芳香族ホスファゼン化合物(B)及びフルオロポリマー(C)と併せて含有することで、驚くべきことに、さらに難燃性が向上し、また耐熱性と耐衝撃性と遮光性が向上する難燃性を効果的に高めることができる。
酸化チタンは、その製造方法、結晶形態および平均粒子径などは、特に限定されるものではない。酸化チタンの製造方法には硫酸法および塩素法があるが、硫酸法で製造された酸化チタンは、これを添加した組成物の白度が劣る傾向があるため、塩素法で製造されたものが好適である。
酸化チタンの結晶形態には、ルチル型とアナターゼ型があるが、耐光性の観点からルチル型の結晶形態のものが好適である。酸化チタン系添加剤の平均粒子径は、通常0.1〜0.7μm、好ましくは0.1〜0.4μmである。平均粒子径が0.1μm未満では成形品の光線遮蔽性に劣り、0.7μmを超える場合は、成形品表面に肌荒れを起こしたり、成形品の機械的強度が低下したりする。なお本発明においては平均粒径の異なる酸化チタンを2種類以上混合して使用してもよい。
なお、酸化チタンは、後記するようにオルガノシロキサン系等の表面処理剤で表面処理することが好ましいが、その前にはアルミナ系表面処理剤で前処理するのが好ましい。アルミナ系表面処理剤としてはアルミナ水和物が好適に用いられる。さらにアルミナ水和物とともに珪酸水和物で前処理しても良い。前処理する方法は特に限定されるものではなく、任意の方法によることが出来る。アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物による前処理は、酸化チタンに対して1〜15重量%の範囲で行なうのが好ましい。
アルミナ水和物で、必要に応じて更に珪酸水和物で前処理された酸化チタンは、更にその表面をオルガノシロキサン系の表面処理剤で表面処理することによって、熱安定性を大幅に改善することが出来る他、ポリカーボネート樹脂組成物中での均一分散性および分散状態の安定性を向上させるので好ましい。オルガノシロキサン系の表面処理剤としては、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン化合物が好ましい。
酸化チタンのオルガノシロキサン系の表面処理剤による表面処理法には湿式法と乾式法とがある。湿式法は、オルガノシロキサン系の表面処理剤と溶剤との混合物に、アルミナ水和物、さらに必要に応じて珪酸水和物で前処理された酸化チタンを加え、撹拌した後に脱溶媒を行い、更にその後100〜300℃で熱処理する方法である。乾式法は、上記と同様に前処理された酸化チタンとポリオルガノハイドロジェンシロキサン類とをヘンシェルミキサーなどで混合する方法、前処理された酸化チタンにポリオルガノハイドロジェンシロキサン類の有機溶液を噴霧して付着させ、100〜300℃で熱処理する方法などが挙げられる。シロキサン系の表面処理剤の量は、特に制限されるものではないが、酸化チタンの反射性、樹脂組成物の成形性などを勘案すると、酸化チタンに対し、通常1〜5重量%の範囲である。
酸化チタン(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5〜30質量部の範囲である。酸化チタンの含有量が0.5質量部未満の場合は、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、遮光性の改良効果が不十分となり、30質量部を超える場合は樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となる。酸化チタンの好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1質量部以上、特に好ましくは2質量部以上であり、好ましくは28質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。なお、酸化チタン系添加剤の質量は、アルミナ水和物、珪酸水和物、オルガノシロキサン系の表面処理剤によって表面処理されている場合は、これらの処理剤も含めた全質量を意味する。
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記(A)〜(D)成分以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
・その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;
ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂;各種のエラストマー等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
・樹脂添加剤
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、離形剤、滑材、充填材、他の難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
・・リン系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じてリン系安定剤を含有することが好ましい。リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
リン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・・フェノール系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、フェノール系安定剤を含有することも好ましい。フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
フェノール系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、フェノール系安定剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・・滑剤
また、必要により、滑剤を含有することも好ましい。滑剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した滑剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
滑剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。滑剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、滑剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
・・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM−40」、BASF社製「ユビヌルMS−40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN−35」、「ユビヌルN−539」等が挙げられる。
トリアジン化合物としては、例えば1,3,5−トリアジン骨格を有する化合物等が挙げられ、このようなトリアジン化合物としては、具体的には例えば、ADEKA社製「LA−46」、BASF社製「チヌビン1577ED」、「チヌビン400」、「チヌビン405」、「チヌビン460」、「チヌビン477−DW」、「チヌビン479」等が挙げられる。
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
マロン酸エステル化合物としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR−25」、BASF社製「B−CAP」等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・・染顔料
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
染顔料の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。染顔料の含有量が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法に特に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、ポリカーボネート樹脂(A)、環状芳香族ホスファゼン化合物(B)、フルオロポリマー(C)及び酸化チタン(D)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、製造することもできる。また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによってポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、荷重たわみ温度(ISO75−1に準拠し、1.8MPaの条件で測定)が、好ましくは105℃以上の値を示し、耐熱性に優れる。
[成形方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、シートやフィルム、異型押出成形品、ブロー成形品あるいは射出成形品等にすることもできる。
成形方法の例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。
[成形品]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性に優れ、さらには、耐熱変色性にも優れるので、特に使用時に高温状態に置かれる各種の機器、器具等の部品や部材等に好適に使用される。
その例としては、LED、蛍光ランプ、白熱電球又は有機EL等を用いた照明器具におけるカバー、ランプシェード、浴室灯、シャンデリア、スタンド、ブラケット、行燈、シーリングライト、ペンダント型ライト、ガレージライト、軒下灯、門柱灯、ポーチライト、ガーデンライト、エントランスライト、足元灯、階段灯、誘導灯、防犯灯、ダウンライト、ベースライト、車両用灯具カバー等の各種照明器具用の部材;
LCDで代表されるフラットパネル型表示器具、パソコン、OA機器、テレビ、内照式電飾パネル、ネオンサイン等の表示器具、LEDライトガイド、広告表示看板、道路標識、照明付きゲーム機、の電光表示器具用の筺体;
プロジェクター(液晶プロジェクタを含む)等の筺体等が好ましく挙げられる。
また、フイルムまたはシートとして、光反射や光拡散用等の用途等にも好適に使用することができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において[部]とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
(実施例1〜5、8〜11、参考例6〜7、比較例1〜7)
実施例及び比較例に使用した各成分は、以下の表1に記載の通りである。
[樹脂ペレットの製造]
上記表1に記した各成分を、表3〜5に記した割合(質量比)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製射出成型機(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[試験片の作製]
上記製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所社製のJ55型射出成形機を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.0mmのUL試験用試験片を射出成形した。
また、上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機(サイキャップM−2、型締め力75T)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、ISO多目的試験片(3mm厚、4mm厚)を射出成形した。
また、上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所社製のJ55型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、厚み3mm部と2mm部を併せ持つ2段プレートを射出成形した。
[難燃性の評価:UL難燃性(1mm厚)]
各ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、上記方法で得られたUL試験用試験片(1.0mm厚)を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表2に示す基準を満たすことが必要となる。
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。
[耐衝撃性評価:ノッチ有りシャルピー耐衝撃強度]
耐衝撃性評価として、上述の方法で得られたISO多目的試験片(3mm厚)を用い、ISO179に準拠し、R=0.25のVノッチを入れ、23℃の条件で、ノッチ有りシャルピー耐衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
[耐熱性評価:荷重たわみ温度]
耐熱性評価として、上述の方法で得られたISO多目的試験片(4mm厚)を用い、ISO75−1に準拠し、荷重1.8MPaの条件で、荷重たわみ温度(DTUL、単位:℃)を測定した。
[色相評価:初期色相]
色相評価として、日本電色工業社製分光色差計SE6000を用い、光源をC光源、視野を2°に設定し、上述の方法で得られた2段プレートの3mm厚部の中央部のYI(Yellow Index)を測定した。YIが小さい程、色相が優れることを意味している。
[全光線透過率]
日本電色工業社製ヘーズメーターNDH4000を用い、JIS K7361−1に準拠し、2段プレートの2mm厚部の全光線透過率を測定した。全光線透過率が小さい程遮光性が優れることを意味している。
[耐熱変色性評価]
上述の方法で得られた2段プレートを115℃のオーブンで500時間エージングし、エージング前後の2段プレートの3mm厚部の中央部のYIを上述の方法で測定し、エージング後のYIからエージング前のYIを引いた値を、エージング前のYIで除し、その値に100を乗じた値を耐熱変色性(単位:%)と定義した。耐熱変色性が小さい程耐熱変色性に優れることを意味している。
以上の評価結果を以下の表3〜表5に示す。
上記表3及び表4より、ホスファゼン化合物(B1)とホスファゼン化合物(B2)を本発明で規定する範囲で含有する環状芳香族ホスファゼン化合物(B)と、フルオロポリマー(C)および酸化チタン(D)をそれぞれ所定の量で含有する本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性に優れ、さらには、耐熱変色性にも優れることが分かる。
一方、表5からは以下のことが明らかとなる。比較例1は、環状芳香族ホスファゼン化合物(B)の含有量が少ないため、難燃性が悪く、環状芳香族ホスファゼン化合物(B)の含有量が規定の量を超える比較例4では、耐熱性が悪くなっている。
また、ホスファゼン化合物(B1)とホスファゼン化合物(B2)の割合が本発明の規定を外れるホスファゼン化合物を用いた比較例2は、難燃性が悪くまた色相も悪くなり、比較例3のように、その含有量を多くすると難燃性は良くなるものの、色相がさらに悪化する。
さらに、比較例5のように、酸化チタンの含有量が少なすぎると、難燃性がV−2まで悪くなり、また耐熱変色性も悪化してしまい、逆に酸化チタンの含有量が多すぎる比較例6では、耐衝撃性が悪くなる。難燃剤として、リン酸エステル化合物を用いた場合には、耐衝撃性は極めて悪く、耐熱変色性も悪いことが分かる。
したがって、上記の実施例及び比較例から、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性に優れ、さらには、耐熱変色性にも優れるという効果は、本発明の構成によりはじめて得られるものであることが確認された。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、色相、遮光性に優れ、さらには、耐熱変色性にも優れるポリカーボネート樹脂材料であるので、産業上の利用性は高いものがある。

Claims (6)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、下記式(1)で表されるヘキサフェノキシトリシクロホスファゼン(B1)と下記式(2)で表されるオクタフェノキシテトラシクロホスファゼン(B2)を75/25〜95/5の質量比で含有する環状芳香族ホスファゼン化合物(B)1.3〜3.5質量部、フルオロポリマー(C)0.01〜2質量部および酸化チタン(D)0.5〜30質量部を含有し、
    ISO75−1に準拠して1.8MPaの条件で測定した荷重たわみ温度の値が116℃以上、1mm厚でのUL94難燃性がV−0であり、3mm厚での初期色相が4.2以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品。
  3. 照明器具部材であることを特徴とする請求項に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
  4. 電光表示器具筐体であることを特徴とする請求項に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
  5. プロジェクター筐体であることを特徴とする請求項に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
  6. 請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂シートまたはフィルム。
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