JP6083459B1 - リチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液及びそれを用いたリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタ - Google Patents
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Abstract
Description
特に地球温暖化防止のため、CO2排出量を削減することが急務となっており、リチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタからなる蓄電装置を搭載した環境対応車の中でも、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の早期普及が求められている。自動車は移動距離が長いため、熱帯の非常に暑い地域から極寒の地域まで幅広い温度範囲の地域で使用される可能性がある。従って、特にこれらの車載用のリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタは、高温から低温まで幅広い温度範囲で使用しても電気化学特性が低下しないことが要求されている。
尚、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
このような非水溶媒を含む非水電解液を高温から極低温まで幅広い温度範囲で使用する場合、高温環境下において揮発しやすく引火点が低いこと、極低温環境下において凍結することが課題として挙げられる。非水電解液の引火点が低いと高温保存時の膨れの要因となり、膨れにより電池の望ましい電気化学的反応が阻害される。また、非水電解液が一部でも凍結すると、電池の電気化学反応が著しく低下してしまう。従って、これらの課題についての改善が求められている。
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタは、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、サイクル特性の低下を生じることが分かっている。また、非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすくなる。
更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池やリチウムイオンキャパシタは、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。また、これらの負極材料の微粉化や非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすくなる。
また特許文献2には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとプロピオン酸メチルを容積比で3:3:3:1で混合した溶媒に、LiPF6を1Mになるように溶解し、ビニレンカーボネートを2質量%添加した非水電解液を用いたリチウム二次電池において、−30℃での出力特性が向上することが開示されている。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、前記非水電解液の引火点が20℃以上であることにより、電気伝導度が非常に高いながらも、高温環境下において比較的溶媒が揮発し難い。しかも、各種カーボネートと、エステル(−COO−)の両端に2つのエチル基を有するエチルプロピオネートと、を特定の比率で含有する混合溶媒を用いることにより、該混合溶媒が初回充放電時等に還元分解することにより負極上に熱安定性が高い被膜を形成でき、これにより、高温から低温まで幅広い温度範囲でリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタの電気化学特性、特にリチウム電池の電気化学特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。なお、このような作用効果は、前記特許文献1および前記特許文献2の技術では全くなしえなかったものであり、また、前記特許文献1および前記特許文献2にはまったく示唆されていないものである。
(1)非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、
前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、
前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、
前記非水電解液の引火点が20℃以上であることを特徴とするリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液。
本発明の非水電解液は、非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、
前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、
前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、
前記非水電解液の引火点が20℃以上であることを特徴とするリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液である。
本発明に使用されるリチウム塩としては、下記のものが好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、Li2PO3F、LiBF4、LiClO4等の無機リチウム塩、LiN(SO2F)2〔LiFSI〕、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF2)2(SO2)2NLi、(CF2)3(SO2)2NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩等が好適に挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が好適に挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、及びLiN(SO2F)2〔LiFSI〕から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、LiPF6を用いることがもっとも好ましい。リチウム塩の濃度は、前記の非水溶媒に対して、1.1M(mol/L)以上であり、1.15M以上が好ましく、1.2M以上がより好ましい。またその上限は、1.5M以下であり、1.45M以下が好ましく、1.4M以下がより好ましい。
また、これらの電解質塩の好適な組み合わせとしては、LiPF6を含み、更にLiPO2F2、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2F)2〔LiFSI〕から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましく、LiPF6以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上であると、広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が発揮されやすく、0.3M以下であると広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が低下する懸念が少ないので好ましい。好ましくは0.01M以上、特に好ましくは0.03M以上、最も好ましくは0.04M以上である。その上限は、好ましくは0.3M以下、さらに好ましくは0.25M以下、特に好ましくは0.2M以下である。
シュウ酸骨格を有するリチウム塩及びS=O基を有するリチウム塩の具体例としては、リチウム ビス(オキサラト)ボレート〔LiBOB〕、リチウム ジフルオロ(オキサラト)ボレート〔LiDFOB〕、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート〔LiTFOP〕、及びリチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート〔LiDFOP〕から選ばれる少なくとも一種のシュウ酸骨格を有するリチウム塩、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート〔LiTFMSB〕、リチウム ペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート〔LiPFMSP〕、リチウム メチルサルフェート〔LMS〕、リチウムエチルサルフェート〔LES〕、リチウム 2,2,2−トリフルオロエチルサルフェート〔LFES〕、及びFSO3Liから選ばれる1種以上のS=O基を有するリチウム塩が好適に挙げられ、LiBOB、LiDFOB、LiTFOP、LiDFOP、LiTFMSB、LMS、LES、LFES、及びFSO3Liから選ばれるリチウム塩を含むことがより好ましい。
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、広い温度範囲で電気化学特性が相乗的に向上するという観点より、環状カーボネート、鎖状カーボネート、及び鎖状エステルを含有する混合溶媒を用いる。
エチレンカーボネートの含有量は、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、5体積%以上、好ましくは7体積%以上、より好ましくは9体積%以上である。また、エチレンカーボネートの含有量の上限としては、凝固点を低くするという観点より、非水溶媒全体に対して、20体積%以下、好ましくは17体積%以下、より好ましくは15体積%以下である。
プロピレンカーボネートの含有量は、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、5体積%以上、好ましくは7体積%以上、より好ましくは9体積%以上である。また、プロピレンカーボネートの含有量の上限としては、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、25体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは17体積%以下、更に好ましくは15体積%以下である。
更に、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの合計含有量は、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、20体積%以上、好ましくは22体積%以上である。また、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの合計含有量の上限としては、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、30体積%以下、好ましくは27体積%以下である。
メチルエチルカーボネートの含有量は、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、30体積%以上、好ましくは33体積%以上である。また、メチルエチルカーボネートの含有量の上限としては、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、40体積%以下、好ましくは37体積%以下である。
ジメチルカーボネートの含有量は、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、非水溶媒全体に対して、20体積%以上、好ましくは23体積%以上である。また、ジメチルカーボネートの含有量の上限としては、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、30体積%以下、好ましくは27体積%以下である。
エチルプロピオネートの含有量は、電気伝導率向上の観点より、非水溶媒全体に対して、10体積%以上、好ましくは12体積%以上である。また、エチルプロピオネートの含有量の上限としては、高温環境下での電気化学特性向上の観点より、20体積%以下、好ましくは18体積%以下である。
その他の添加剤の具体例としては、以下の(A)S=O基含有化合物又は(B)リチウム塩化合物が好適に挙げられる。
[Li2(POP)]2+[(PO2F2)−]2 (2)
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記のリチウム塩及び該非水電解液にその他の添加剤を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える添加剤は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
さらに、本発明の非水電解液は、上記各成分を上記した割合にて含有するものであるため、凝固点が好ましくは−45℃以下であり、より好ましくは−48℃以下、更に好ましくは−50℃以下であり、低温環境下における電気特性にも優れたものである。
加えて、本発明の非水電解液は、上記各成分を上記した割合にて含有するものであるため、25℃におけるイオン伝導率が好ましくは9mS/cm以上であり、より好ましくは9.1mS/cm以上、更に好ましくは9.3mS/cm以上であり、イオン伝導にも優れたものである。
そのため、本発明の非水電解液は、リチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタの非水電解液として、特に、幅広い温度範囲使用されるリチウム二次電池又はリチウムイオンキャパシタの非水電解液として、好適に用いられるものである。
本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極及び非水溶媒にリチウム塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiCo1−xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuから選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1−xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、Li2MnO3とLiMO2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi1/2Mn3/2O4から選ばれる1種以上が好適に挙げられ、2種以上がより好適である。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように併用してもよい。
特にNiを含む正極活物質の場合にNiの触媒作用により正極表面での非水溶媒の分解が起き、電池の抵抗が増加しやすい傾向にある。特に高温環境下での電気化学特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができるので好ましい。特に、正極活物質中の全遷移金属元素の原子濃度に対するNiの原子濃度の割合が、10atomic%を超える正極活物質を用いた場合に上記効果が顕著になるので好ましく、20atomic%以上が更に好ましく、30atomic%以上が特に好ましい。具体的には、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2等が好適に挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W、及びZrから選ばれる一種又は二種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO4又はLiMnPO4が好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm3以上であり、より好ましくは、3g/cm3以上であり、更に好ましくは、3.6g/cm3以上である。なお、その上限としては、4g/cm3以下が好ましい。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することがより好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが更に好ましい。
特に複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合又は結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、鱗片状天然黒鉛を球形化処理した粒子、を用いることが好ましい。
負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm3以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、ピーク強度の比I(110)/I(004)の上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、広い温度範囲での電気化学特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することができる。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって低温もしくは高温における電気化学特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では広い温度範囲での電気化学特性が良好となる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm3以上であり、より好ましくは1.7g/cm3以上である。なお、その上限としては、2g/cm3以下が好ましい。
電池用セパレータとしては、特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
本発明のリチウムイオンキャパシタは、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6等のリチウム塩が含まれる。
〔非水電解液の物性測定〕
<引火点の測定>
表1、表2に記載の非水電解液の引火点をタグ密閉式の引火点試験機(田中科学機器製作株式会社製;型式ATG−7)を用いてJIS K−2265の規格に基づき測定した。
<凝固点の測定>
表1、表2に記載の非水電解液の凝固点を自動凝固点計(株式会社電気化学システムズ製;型式CP−2BX)を用いてJIS K−0065の規格に基づき測定した。
<電気伝導率の測定>
表1、表2に記載の非水電解液の電気伝導率を電気伝導率計(東亜ディーケーケー株式会社製;型式CM−30R)を用いて25℃の環境下で測定した。
各物性値を表1〜2に示す。
LiNi0.33Mn0.33Co0.34O2;93質量%、アセチレンブラック(導電剤);4質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm3であった。また、ケイ素(単体);5質量%、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質);85質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.6g/cm3であった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1、表2に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート電池を作製した。
<初期の放電容量>
上記の方法で作製したラミネート電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.35Vまで3時間充電し、−20℃に恒温槽の温度を下げ、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の−20℃の放電容量を求めた。
<高温充電保存試験>
次に、このコイン電池を60℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、4.35Vに保持した状態で14日間保存を行った。14日間の保存後、恒温槽から取り出した直後に電池膨れの有無を確認した。具体的には、保存前のラミネート電池の厚みを100%とした場合に保存後の厚みが110%以上を膨れ有りとした。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電した。
<高温充電保存後の放電容量>
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の−20℃の放電容量を求めた。
<高温充電保存後の低温特性>
高温充電保存後の低温特性を下記の−20℃放電容量の維持率より求めた。
高温充電保存後の−20℃放電容量維持率(%)=(高温充電保存後の−20℃の放電容量/初期の−20℃の放電容量)×100
電池特性を表1〜2に示す。
なお、表1〜3中、「EC」はエチレンカーボネート、「PC」はプロピレンカーボネート、「DMC」はジメチルカーボネート、「EP」はエチルプロピオネート、「MEC」はメチルエチルカーボネート、「MP」はメチルプロピオネート、「VC」はビニレンカーボネート、「FEC」は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、「TCDD」はテトラヒドロ−4H−シクロペンタ[d][1,3,2]ジオキサチオール−2,2−ジオキシド、「TOD錯体」はビス(ジフルオロホスホリル)(2,5,8,11−テトラオキサドデカン)ジリチウムの略称である。
〔リチウムイオンキャパシタの作製〕
比表面積600〜3000m2/gの活性炭粉末;92重量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製した。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cm3であった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。上記のように作成得られた正極と負極を加熱真空乾燥した後、負極については、負極活物質の単位重量あたり372mAh/gの電気量となるリチウムイオンを、電気化学的に吸蔵させた。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表3に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート電池を作製した。
<初期の放電容量>
上記の方法で作製したコイン電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで3時間充電し、−20℃に恒温槽の温度を下げ、10Cの定電流下終止電圧3Vまで放電して、初期の−20℃のセル容量を求めた。
<高温充電保存試験>
次に、このコイン電池を60℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.3Vまで3時間充電し、4.3Vに保持した状態で7日間保存を行った。14日間の保存後、恒温槽から取り出した直後に電池膨れの有無を確認した。具体的には、保存前のラミネート電池の厚みを100%とした場合に保存後の厚みが110%以上を膨れ有りとした。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦10Cの定電流下終止電圧3Vまで放電した。
<高温充電保存後の放電容量>
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の−20℃のセル容量を求めた。
<高温充電保存後の低温特性>
高温充電保存後の低温特性を下記の−20℃セル容量の維持率より求めた。
高温充電保存後の−20℃セル容量維持率(%)=(高温充電保存後の−20℃のセル容量/初期の−20℃のセル容量)×100
キャパシタ特性を表3に示す。
また、実施例9〜12と比較例9〜16の対比からリチウムキャパシタを用いた場合にも同様な効果であることが判明した。
Claims (4)
- 非水溶媒にリチウム塩が1.1〜1.5M(mol/L)の量にて溶解されている非水電解液において、
前記非水溶媒が、非水溶媒全体に対して、5〜20体積%のエチレンカーボネート、5〜25体積%のプロピレンカーボネート、20〜30体積%のジメチルカーボネート、10〜20体積%のエチルプロピオネート、および30〜40体積%のメチルエチルカーボネートを含有し、
前記非水溶媒中における、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計含有量が20〜30体積%であり、ジメチルカーボネートとエチルプロピオネートとの合計含有量が30〜40体積%であり、
前記非水電解液の引火点が20℃以上であることを特徴とするリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液。 - 前記非水電解液の凝固点が−45℃以下である請求項1に記載のリチウム二次電池用又はリチウムイオンキャパシタ用非水電解液。
- 正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウム二次電池において、該非水電解液が請求項1又は2に記載の非水電解液であることを特徴とするリチウム二次電池。
- 正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウムイオンキャパシタにおいて、該非水電解液が請求項1又は2に記載の非水電解液であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
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