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JP6079210B2 - 液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及び化合物 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及び化合物 Download PDF

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JP6079210B2 JP2012277253A JP2012277253A JP6079210B2 JP 6079210 B2 JP6079210 B2 JP 6079210B2 JP 2012277253 A JP2012277253 A JP 2012277253A JP 2012277253 A JP2012277253 A JP 2012277253A JP 6079210 B2 JP6079210 B2 JP 6079210B2
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Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及び化合物に関し、特に垂直配向型液晶表示素子の製造に好適に用いることができる液晶配向剤等に関する。
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されており、例えばTN型やSTN型、VA型、MVA型、面内スイッチング型(IPS型)、FFS型、光学補償ベンド型(OCB型)等の各種液晶表示素子が知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリオルガノシロキサンなどの重合体が使用され、中でも、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
液晶配向膜に求められる特性としては、駆動方式に応じた所望のプレチルト角を発現できることがその一つとして挙げられ、例えばVA型やMVA型などの垂直配向型液晶表示素子に適用する場合には、高いプレチルト角(例えば87度以上のプレチルト角)を発現できることが要求されている。また、液晶配向膜による液晶分子の配向制御を行う方法としては、従来、液晶配向剤に含まれる重合体成分の側鎖に長鎖アルキル基やステロイド骨格を導入したり、あるいはフェニレン基やシクロヘキシル基などの環状基が複数個連結された構造を導入したりすることが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ところで、近年、液晶表示素子は、従来のようにパーソナルコンピュータ等の小型の表示端末に使用されるだけでなく、例えば大画面の液晶テレビやインフォメーションディスプレイ等といった大型の表示装置にも使用されている。また、用途の拡大により基板が大型化するのに伴い、液晶表示素子の製造技術として液晶滴下方式(ODF方式)が注目を集めている。ODF方式は、液晶配向膜が形成された一対の基板のうち、一方の基板上に液晶分子を滴下し、真空中でもう一方の基板を貼り合わせることによってパネル全面に液晶分子を充填する方法である。この方法によれば、従来用いられている真空注入方式に比べて、液晶充填工程のプロセス時間を大幅に短縮できるといったメリットがある。
国際公開第2008/117759号 国際公開第2008/117760号 特開2001−305549号公報
ODF方式では、上記メリットがある反面、垂直配向型の液晶表示素子を製造する場合に、「ODFムラ」と呼ばれる表示ムラが生じやすく、液晶表示素子の表示品位の低下を招くことがある。このような表示ムラは、液晶配向膜による液晶分子の配向性能が不足していることが一因であると考えられている。したがって、ODF方式を採用した場合にも液晶表示素子の表示品位を良好にするには、従来のものよりも更に優れた液晶配向性を発現できる液晶配向膜が求められている。
また、液晶配向膜の製造工程では、液晶配向剤を用いて基板上に形成された塗膜にピンホールや塗膜ムラ等の欠陥が生じることがある。塗膜に欠陥が生じた場合、基板から塗膜を剥離して基板を再利用することがあるが、このようなリワークでは、基板から塗膜を容易に剥離できる(剥離性が良好である)ことが求められる。
また、各種液晶表示素子の動作原理は、透過型と反射型に大別される。このうち、透過型では、素子背面からのバックライト光源により表示を行うため、液晶配向膜がバックライト光源からの光に長時間曝されることになる。一方、反射型では、バックライト用光源を使用せず太陽光等の外部からの光の反射光により表示を行うため、透過型に比べ消費電力が少ないといった利点がある反面、強い紫外線に曝されることになる。よって、液晶表示素子では、いずれの動作原理でも優れた耐光性が求められる。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、優れた液晶配向性を発現でき、しかも基板に対する剥離性及び耐光性が良好な塗膜を形成することができる液晶配向剤を提供することを主たる目的とする。また、優れた液晶配向性、耐光性及び基板に対する良好な剥離性を兼ね備えた液晶配向膜及び該液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討した結果、液晶配向剤に含有される重合体の少なくとも一部として、特定構造を側鎖に有する重合体を含有させることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子、並びにそれらの製造に用いる化合物及び重合体が提供される。
本発明は一つの側面において、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含む液晶配向剤であって、前記重合体として、下記式(0)で表される基を有する重合体(P1)を含有する液晶配向剤を提供する。
Figure 0006079210
(式(0)中、Ac及びAcは、それぞれ独立に、シクロヘキサン環又はベンゼン環であり、これらは置換基を有していてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。Xは、酸素原子、+−CO−O−、+−O−CO−、+−O−CH−、+−CH−O−、+−CO−S−、+−S−CO−、+−CONH−又は+−NHCO−(但し、「+」はフェニレン基との結合手を示す。)である。nは1又は2であり、nは0又は1である。但し、nが2の場合、複数のAcはそれぞれ独立して上記定義を有する。mは1〜3の整数である。「*」は結合手を示す。)
本発明の液晶配向剤によれば、重合体成分として上記重合体(P1)を少なくとも一部に含有することにより、優れた液晶配向性を発現できる液晶配向膜を形成することができる。また、本発明の液晶配向剤によれば、基板から容易に剥離可能であって、かつ耐光性が良好な液晶配向膜を形成することができる。
本発明の液晶配向剤において、重合体(P1)は、テトラカルボン酸二無水物及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、下記式(1)で表される化合物を含むジアミンと、を反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。上記式(0)で表される基を有するジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより、上記式(0)で表される基を側鎖に有する重合体を比較的容易に合成することができる。
Figure 0006079210
(式(1)中、Ac、Ac、R、X、n、n、n及びmは、上記式(0)と同義である。)
本発明の液晶配向剤において、重合体(P1)としては、上記nと上記nとの和が2又は3であることが好ましく、上記nと上記nとの和が2であることがより好ましい。また、上記Xとしては、酸素原子、+−COO−又は+−O−CO−(但し、「+」はフェニレン基との結合手を示す。)であることが好ましい。この場合、液晶表示素子の電圧保持率を一層高めることができる。
本発明は一つの側面において、上記に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を提供する。さらに、本発明は別の一つの側面において、上記液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供する。
本発明は他の一つの側面において、テトラカルボン酸二無水物及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、上記式(1)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られる重合体を提供する。また、上記式(1)で表される化合物を提供する。
以下に、本発明の液晶配向剤について詳細に説明する。
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体成分として、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する。また特に、当該重合体として、下記式(0)で表される基を有する重合体(P1)を含む。
Figure 0006079210
(式(0)中、Ac、Ac、R、X、n、n、n、m及び「*」は、上記と同義である。)
上記式(0)において、Rにおける炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。
としては、中でも、炭素数3〜12の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数3〜7の直鎖状のアルキル基がより好ましい。
Xとしては、液晶表示素子の電圧保持率を高くできる点において、酸素原子、+−CO−O−又は+−O−CO−であることが好ましく、酸素原子が特に好ましい。
Ac及びAcは、共にシクロヘキサン環であっても、共にベンゼン環であってもよく、あるいはシクロヘキサン環とベンゼン環との組み合わせであってもよい。中でも、液晶配向性や溶剤に対する溶解性などの観点から、Ac及びAcが共にシクロヘキサン環であることが好ましい。なお、Ac及びAcがシクロヘキサン環である場合、1,4−シクロヘキシレン基のシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体であることが好ましい。
Ac及びAcのそれぞれは置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子や、炭素数1〜5のアルキル基、フルオロアルキル基又はアルコキシ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
及びnとしては、nが1又は2であり、かつnが0又は1であれば、その組み合わせは特に限定しない。中でも、nとnとの和(n+n)が2又は3であることが好ましく、(n+n)が2であることがより好ましい。すなわち、n及びnの組み合わせとしては、n=1かつn=2、n=1かつn=1、又はn=2かつn=0であることが好ましく、n=1かつn=1、又はn=2かつn=0であることがより好ましい。
上記式(0)で表される基は、環Acと環Acとの間に、炭素数2,4又は6のアルキレン基を有する。重合体の側鎖において、環Acと環Acとの間に(n=0の場合は環Acとベンゼン環との間に)当該アルキレン基を有することにより、液晶配向膜の液晶分子の配向性を一層高くできる点で好ましい。当該アルキレン基としては、炭素数2又は4のものが好ましく、炭素数2のものが特に好ましい。
上記式(0)で表される基の具体例としては、例えば下記式(0−1)〜(0−10)のそれぞれで表される基等を挙げることができ、これらのうち、下記式(0−1)〜(0−6)のそれぞれで表される基であることが好ましい。
Figure 0006079210
(式中、R及び「*」は、上記式(0)と同義である。)
<重合体(P1):ポリアミック酸>
本発明における重合体(P1)の一つとしては、上記式(0)で表される基を有するポリアミック酸が挙げられる。当該ポリアミック酸は、例えば、[I]上記式(0)で表される基を有するテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させる方法;[II]テトラカルボン酸二無水物と、上記式(0)で表される基を有するジアミンとを反応させる方法;によって得ることができる。これらのうち、製造容易である点において、方法[II]を用いることが好ましい。以下、上記式(0)で表される基を有するポリアミック酸について、方法[II]を用いて合成する場合を一例に挙げて説明する。
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明におけるポリアミック酸を合成するのに用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、
脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;
それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。なお、上記テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸を合成するのに用いるテトラカルボン酸二無水物としては、溶剤に対する溶解性や透明性が良好である点において、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであるのが好ましい。中でも、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種(以下、「特定テトラカルボン酸二無水物」とも言う。)を含むことがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが更に好ましい。
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、上記の特定テトラカルボン酸二無水物を、合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全体量に対して、20モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、80モル%以上含むものであることが更に好ましい。
[ジアミン]
・特定ジアミン(D)
本発明におけるポリアミック酸の合成に使用するジアミンは、上記式(0)で表される基を有するジアミン(以下、特定ジアミン(D)とも言う。)を含んでいる。特定ジアミン(D)は、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等のいずれであってもよい。特定ジアミン(D)としては、中でも芳香族ジアミンが好ましく、具体的には下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0006079210
(式(1)中、Ac、Ac、R、X、n、n及びmは、上記式(0)と同義である。)
式(1)において、Ac、Ac、R、X、n、n及びmのそれぞれの好ましい具体例は、上記式(0)の説明をそのまま適用することができる。
ジアミノフェニル基における2つの1級アミノ基は、Xに対して2,4−位又は3,5−位にあるのが好ましい。これらの結合位置のうちいずれがより好ましいかは、ジアミノフェニル基に結合するXの種類によって相違し、例えばXが酸素原子の場合には、Xに対して2,4−位又は3,5−位にあるのが好ましく、Xが「+−O−CO−」又は「+−CO−O−」である場合には、Xに対して3,5−位にあるのが好ましい。
上記の特定ジアミン(D)の具体例としては、例えば下記式(1−1)〜(1−10)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
Figure 0006079210
(式中、Rは上記式(0)と同義である。)
上記特定ジアミン(D)としては、これらの中でも、下記式(1−1)〜(1−6)のそれぞれで表される化合物が好ましく、下記式(1−1)〜(1−4)のそれぞれで表される化合物がより好ましい。
・特定ジアミンの合成
上記の特定ジアミン(D)は、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより合成することができる。その一例としては、例えば上記式(0)で表される基を有するジニトロベンゼンを合成し、その後、得られたジニトロ体のニトロ基を適当な還元系を用いて水素化してアミノ基とすることにより合成することができる。
ここで、上記ジニトロ体は、例えば、「X」が酸素原子である場合には、対応するアルキルシクロへキシルフェノール類と、ジニトロクロロベンゼンやジニトロフルオロベンゼン等のジニトロ基含有のハロゲン化物とを、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ存在下で反応させることにより合成することができる。あるいは、対応するアルキルシクロへキシル構造を有するハロゲン化物と、ジニトロフェノール等のジニトロ基含有の水酸基誘導体とをアルカリ存在下で反応させることによって合成することもできる。
「X」が「+−O−CH−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシルフェノール類と、ジニトロベンジルクロリド等のジニトロ基含有のハロゲン化物とをアルカリ存在下で反応させることにより合成することができる。
「X」が「+−CH−O−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシル構造を有するハロゲン化物と、ジニトロフェノール等のジニトロ基含有の水酸基誘導体とをアルカリ存在下で反応させることによって合成することができる。
「X」が「+−O−CO−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシルフェノール類と、ジニトロ塩化ベンゾイルやジニトロ臭化ベンゾイル等のジニトロ基含有のカルボン酸ハロゲン化物とを、例えばトリエチルアミンなどの適当な塩基の存在下で反応させることにより合成することができる。
「X」が「+−CO−O−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシル構造を有するカルボン酸ハロゲン化物と、ジニトロフェノール等のジニトロ基含有の水酸基誘導体とを適当な塩基の存在下で反応させることにより合成することができる。
「X」が「+−S−CO−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシル構造を有するチオール化合物と、ジニトロ塩化ベンゾイル等のジニトロ基含有のカルボン酸ハロゲン化物とを、例えばトリエチルアミンなどの適当な塩基の存在下で反応させることにより合成することができる。
「X」が「+−CO−S−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシル構造を有するカルボン酸ハロゲン化物と、ジニトロチオフェノール等のジニトロ基含有のチオール誘導体とを適当な塩基の存在下で反応させることにより合成することができる。
「X」が「+−NHCO−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシル構造を有するアミノ基置換体と、ジニトロ塩化ベンゾイル等のジニトロ基含有のカルボン酸ハロゲン化物とを適当な塩基の存在下で反応させることにより合成することができる。
「X」が「+−CONH−」である場合には、対応するアルキルシクロへキシル構造を有するカルボン酸ハロゲン化物と、ジニトロアニリン等のジニトロ基含有のアミノ基置換体とを適当な塩基の存在下で反応させることにより合成することができる。
上記ジニトロ体を得るための反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。このときの反応温度は−20℃〜180℃が好ましく、0〜120℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。有機溶媒としては、置換反応に際し通常用いられる化合物を使用することができ、具体的には、例えばアルコール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどを挙げることができる。
上記ジニトロ体の還元反応は、有機溶媒中において、例えば亜鉛、水酸化アルミニウムリチウム、パラジウム触媒−水素系等を用いて実施することができる。有機溶媒としては、還元反応に際し通常用いられる化合物を使用することができ、具体的には、例えばテトラヒドロフラン、アルコールなどを挙げることができる。反応温度は、−20℃〜180℃が好ましく、10〜120℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜72時間が好ましく、0.5〜48時間がより好ましい。ただし、特定ジアミン(D)の合成方法は上記方法に限定されるものではない。
・その他のジアミン
本発明におけるポリアミック酸を合成するために使用するジアミンとしては、上記特定ジアミン(D)のみを使用してもよいし、特定ジアミン(D)とともにその他のジアミンを併用してもよい。
ここで使用することができるその他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、3,5−ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、及び下記式(A−1)
Figure 0006079210
(式中、XI及びXIIは、それぞれ、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは、炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;
それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。その他のジアミンとしては、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記式(A−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」の具体例としては、上記式(0)のRにおける炭素数1〜20のアルキル基として例示した基を挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−3)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
Figure 0006079210
特定ジアミン(D)の含有比率は、ポリアミック酸の合成に使用するジアミンの全量に対して、1モル%以上であることが好ましく、1〜50モル%であることがより好ましい。当該含有比率を1モル%以上とすることにより、当該液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜のプレチルト角をより高くすることができる。当該含有比率として、特に好ましくは5〜30モル%である。
[分子量調節剤]
ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを;それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
<ポリアミック酸の合成>
本発明におけるポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;上記フェノール系溶媒として、例えば、フェノール、m−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;上記ケトンとして、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;上記エステルとして、例えば、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレートなどを;
上記エーテルとして、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジイソペンチルエーテルなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;上記炭化水素として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを;それぞれ挙げることができる。
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される一種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
<重合体(P1):ポリアミック酸エステル>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(P1)としては、上記式(0)で表される基を有するポリアミック酸エステルが挙げられる。当該ポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸を、水酸基含有化合物又はエーテル化合物を用いてエステル化することにより合成する方法、[II]テトラカルボン酸ジエステル化合物と、上記特定ジアミン(D)を含むジアミン化合物と、を反応させる方法、によって得ることができる。ここで、方法[II]におけるテトラカルボン酸ジエステル化合物としては、上記テトラカルボン酸二無水物の前駆体であるテトラカルボン酸のジエステル化合物が挙げられ、具体的には、例えばテトラカルボン酸ジエステルジクロリド、2つのカルボキシル基を有するテトラカルボン酸ジエステル等を挙げることができる。また、方法[II]において使用するジアミンとしては、上記特定ジアミン(D)と共に上記その他のジアミンを用いてもよい。なお、重合体(P1)としてのポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
<重合体(P1):ポリイミド>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(P1)の他の形態として、上記式(0)で表される基を有するポリイミドが挙げられる。当該ポリイミドは、上記の如くして合成された上記式(0)で表される基を有するポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
上記ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましく、60〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
以上のようにして得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜500,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましい。
<重合体(P1):ポリオルガノシロキサン>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(P1)の他の形態として、上記式(0)で表される基を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリオルガノシロキサンは、例えば、(I)エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物(s1)、又は当該シラン化合物(s1)とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合して得られる重合体と、上記式(0)で表される基を有するカルボン酸と、を反応させる方法;(II)上記式(0)で表される基を有する加水分解性のシラン化合物(s2)、又は当該シラン化合物(s2)とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合させる方法; などによって得ることができる。なお、上記(I)及び(II)の方法に際しては、有機化学の定法を適宜組み合わることによって行えばよい。
ポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、1,000〜50,000であることが更に好ましい。
本発明の液晶配向剤は、重合体(P1)として、上記のポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される重合体を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて含有する。本発明の液晶配向剤において、重合体(P1)の全体量に対する各重合体の含有割合は、使用する用途や環境によって適宜選択することができるが、本発明の効果をより好適に得る観点からすると、重合体(P1)としてポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、重合体(P1)としてポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、重合体(P1)がポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種であることが更に好ましい。
重合体(P1)としてポリアミック酸及びポリイミドの少なくともいずれかを含む場合、その合計の含有量は、液晶配向剤に含有される重合体(P1)の全体量に対して、1〜100重量%であることが好ましく、5〜100重量%であることがより好ましい。なお、重合体(P1)としては、上記に示す重合体の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、2種以上を組み合わせて使用する場合、主骨格が同じ重合体の組み合わせであってもよいし、主骨格が異なる重合体の組み合わせであってもよい。
<溶剤>
本発明の液晶配向剤は、上記重合体が好ましくは有機溶媒中に溶解されて構成される。
本発明の液晶配向剤の調製に使用される溶剤は、液晶配向剤に含有される重合体の種類により異なる。具体的には、本発明の液晶配向剤が重合体として、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくともいずれかの重合体を単独で、又は当該ポリアミック酸等の重合体とポリオルガノシロキサンとを含む場合、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
一方、本発明の液晶配向剤が重合体としてポリオルガノシロキサンのみを含む場合、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ等のアルコール;ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル;酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸イソアミル等のエステルなどを挙げることができる。
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、上記特定重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体としては、例えばポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンのうち上記式(0)で表される基を有さない重合体、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、該組成物中の全重合体量に対して50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
[エポキシ基含有化合物]
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性や電気特性を向上させるために使用することができる。ここで、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。
その他、エポキシ基含有化合物の例としては、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンも用いることができる。
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性の向上を目的として使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
なお、その他の成分としては、上記のほか、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物や酸化防止剤などを使用することができる。
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができない。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。当該液晶表示素子の動作モードは特に限定しないが、VA型やMVA型などの垂直配向型であることが特に好ましい。
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明するとともに、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。なお、以下では、VA型液晶表示素子の製造方法を一例に挙げて説明する。
[工程(1):塗膜の形成]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、それら基板における透明導電膜の形成面上にそれぞれ、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。ポストベーク温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
液晶配向剤を塗布した後の加熱によって有機溶媒を除去することにより、配向膜となる塗膜が形成される。このとき、本発明の液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、ポリアミック酸エステルであるか又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
[工程(2):液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。
液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法(真空注入方式)である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造する。第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニタ、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
合成例における各重合体溶液の溶液粘度及びポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度[mPa・s]は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調製した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1a)で示される式によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−A/A×α)×100 …(1a)
(数式(1a)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
<特定ジアミン(D)の合成>
[合成例1:化合物(D−1)の合成]
下記スキーム1に従って、化合物(D−1)を合成した。
Figure 0006079210
温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、上記式(1−1−1A)で表される化合物(但し、1,4−シクロヘキシレン基のシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体)35.7g、2,4−ジニトロクロロベンゼン20.3g、炭酸カリウム15.2g及びN,N−ジメチルアセトアミド300mLを加えて100℃で4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1L、テトラヒドロフラン500mL 1M塩酸水 1Lを加えて水層を除去し、水で3回洗浄した。次に、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、濃縮して析出した結晶を回収、乾燥させることで、上記式(1−1−1B)で表される化合物の淡黄色結晶を36.6g得た。
続いて、温度計及び窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコに、上記式(1−1−1B)で表される化合物36.6g、パラジウムカーボン1.83g、テトラヒドロフラン350mL、エタノール350mL及び80%ヒドラジン1水和物水溶液39.4gを加えて室温で20時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1Lを加えて水で3回洗浄した後、有機層を濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで、上記式(1−1−1)で表される化合物(D−1)の淡褐色結晶を25.9g得た。
[合成例2:化合物(D−2)の合成]
下記スキーム2に従って、化合物(D−2)を合成した。
Figure 0006079210
滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、上記式(1−1−1A)で表される化合物(但し、1,4−シクロヘキシレン基のシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体)35.7g、テトラヒドロフラン200mL及びトリエチルアミン11.13gを加えて5℃以下に氷冷した。次に、3,5−ジニトロ塩化ベンゾイル23.0gをテトラヒドロフラン100mLに溶かした溶液を30分かけてゆっくりと滴下し、室温に戻して1時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル500mL及び1M塩酸水溶液500mLを加えて分液し、有機層を更に水で3回分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで、上記式(1−2−1B)で表される化合物の淡黄色結晶49.6gを得た。
続いて、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの三口フラスコに、上記式(1−2−1B)49.6g、5%パラジウムカーボン粉末2.48g、テトラヒドロフラン300mL及びエタノール300mLを加えた後、80%ヒドラジン1水和物水溶液51gをゆっくりと加えて室温で1時間攪拌し、70℃に加熱して更に2時間反応させた。反応終了後、ろ過によりパラジウムカーボンを除いて得られたろ液を約200mLまで濃縮し、酢酸エチル500mLを加えて水で3回分液洗浄を行った後、有機層を濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで、上記式(1−2−1)で表される化合物(D−2)の白色結晶を39.8g得た。
[合成例3:化合物(D−3)の合成]
下記スキーム3に従って、化合物(D−3)を合成した。
Figure 0006079210
温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、上記式(1−3−1A)で表される化合物(但し、1,4−シクロヘキシレン基のシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体)35.7g、2,4−ジニトロクロロベンゼン20.3g、炭酸カリウム15.2g及びN,N−ジメチルアセトアミド300mLを加えて100℃で4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1L、テトラヒドロフラン500mL 1M塩酸水 1Lを加えて水層を除去し、水で3回洗浄した。次に、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、濃縮して析出した結晶を回収、乾燥させることで、上記式(1−3−1B)で表される化合物の淡黄色結晶を35.8g得た。
続いて、温度計及び窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコに、上記式(1−3−1B)で表される化合物35.8g、パラジウムカーボン1.83g、テトラヒドロフラン350mL、エタノール350mL及び80%ヒドラジン1水和物水溶液39.4gを加えて室温で20時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1Lを加えて水で3回洗浄した後、有機層を濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで、上記式(1−3−1)で表される化合物(D−3)の淡褐色結晶を25.0g得た。
[合成例4:化合物(D−4)の合成]
下記スキーム3に従って、化合物(D−4)を合成した。
Figure 0006079210
滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、上記式(1−3−1A)で表される化合物(但し、1,4−シクロヘキシレン基のシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体)35.7g、テトラヒドロフラン200mL及びトリエチルアミン11.13gを加えて5℃以下に氷冷した。次に、3,5−ジニトロ塩化ベンゾイル23.0gをテトラヒドロフラン100mLに溶かした溶液を30分かけてゆっくりと滴下し、室温に戻して1時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル500mL及び1M塩酸水溶液500mLを加えて分液し、有機層を更に水で3回分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで、上記式(1−4−1B)で表される化合物の淡黄色結晶49.0gを得た。
続いて、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの三口フラスコに、上記式(1−4−1B)で表される化合物49.0g、5%パラジウムカーボン粉末2.48g、テトラヒドロフラン300mL及びエタノール300mLを加えた後、80%ヒドラジン1水和物水溶液51gをゆっくりと加えて室温で1時間攪拌し、70℃に加熱して更に2時間反応させた。反応終了後、ろ過によりパラジウムカーボンを除いて得られたろ液を約200mLまで濃縮し、酢酸エチル500mLを加えて水で3回分液洗浄を行った後、有機層を濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで、上記式(1−4−1)で表される化合物(D−4)の白色結晶を38.8g得た。
<重合体(P1)の合成>
[重合例1:ポリイミド(PI−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン(PDA)7.5g(0.07モル)、化合物(D−1)13.8g(0.03モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)175gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は78mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP406gを追加し、ピリジン11.8g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作によって脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約62%のポリイミド(PI−1)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は44mPa・sであった。
[重合例2:ポリイミド(PI−2)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.5g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA7.6g(0.07モル)、化合物(D−2)14.8g(0.03モル)をNMP179gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は88mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP416gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約65%のポリイミド(PI−2)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は49mPa・sであった。
[重合例3:ポリイミド(PI−3)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA7.5g(0.07モル)、化合物(D−3)13.8g(0.03モル)をNMP175gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は89mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP406gを追加し、ピリジン11.8g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約67%のポリイミド(PI−3)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は49mPa・sであった。
[重合例4:ポリイミド(PI−4)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.5g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA7.6g(0.07モル)、化合物(D−4)14.8g(0.03モル)をNMP179gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は70mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP416gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約63%のポリイミド(PI−4)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は45mPa・sであった。
[重合例5:ポリイミド(PI−5)の合成]
上記重合例1と同じ組成及び同じ条件にて、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は75mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP406gを追加し、ピリジン13.4g及び無水酢酸17.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約76%のポリイミド(PI−5)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は55mPa・sであった。
[重合例6:ポリイミド(PI−6)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物(BODA)25.0g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA7.6g(0.07モル)、化合物(D−2)14.7g(0.03モル)をNMP189gに溶解し、60℃で8時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は36mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP439gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約64%のポリイミド(PI−6)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は30mPa・sであった。
[重合例7:ポリイミド(PI−7)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてBODA18.9g(0.075モル)及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)4.9g(0.025モル)、ジアミンとしてPDA7.6g(0.07モル)、化合物(D−2)14.8g(0.03モル)をNMP185gに溶解し、60℃で8時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP429gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.4gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約66%のポリイミド(PI−7)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は29mPa・sであった。
[重合例8:ポリイミド(PI−8)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.3g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA5.4g(0.05モル)、化合物(D−2)24.4g(0.05モル)をNMP209gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は55mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP484gを追加し、ピリジン7.9g及び無水酢酸10.2gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のポリイミド(PI−8)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は36mPa・sであった。
[比較重合例1:ポリイミド(PI−9)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA7.6g(0.07モル)、4−オクタデシルオキシ−1,3−ジアミノベンゼン11.3g(0.03モル)をNMP165gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は99mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP384gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約69%のポリイミド(PI−9)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は67mPa・sであった。
[比較重合例2:ポリイミド(PI−10)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA7.6g(0.07モル)、1,3−ジアミノ−4−{4−[トランス−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェノキシ}ベンゼン13.0g(0.03モル)をNMP172gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は59mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP400gを追加し、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約62%のポリイミド(PI−10)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。
[比較重合例3:ポリイミド(PI−11)の合成]
上記比較重合例10と同じ組成及び同じ条件にて、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は62mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP400gを追加し、ピリジン13.5g及び無水酢酸17.4gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約74%のポリイミド(PI−11)を22重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は42mPa・sであった。
<液晶配向剤の調製及び評価>
[実施例1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体としてポリイミド(PI−1)を含有する溶液に、エポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(E−1)を、上記溶液に含有されるポリイミド(PI−1)100重量部に対して5重量部加え、更に溶剤としてNMP及びエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(BC)を加え、溶剤組成がNMP:BC=60:40(重量比)、固形分濃度3.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤(S−1)を調製した。
(2)垂直配向性評価用の液晶表示素子の製造
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、液晶配向剤(S−1)をスピンナーにより塗布し、ホットプレートで80℃、1分間、プレベークを行い、200℃で60分間加熱することにより、膜厚0.08μmの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.4mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間、超音波洗浄を行い、次いで200℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、ラビング処理を施した液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次いで上記一対の基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面がアンチパラレルとなるように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止して液晶セルとし、さらにこの液晶セルの外側両面に偏光板を貼り合わせることにより、垂直配向性評価用の液晶表示素子を製造した。
(3)垂直配向性の評価
上記の垂直配向性評価用の液晶表示素子について、結晶回転角法によってプレチルト角を測定した。評価は、プレチルト角が87°以上の場合を垂直配向性「良好」、87°未満の場合を垂直配向性「不良」として行った。その評価結果を下記表1に示す。
なお、垂直配向性評価用の液晶表示素子を製造する際において、基板上に形成した塗膜に対してラビング処理を行ったが、このラビング処理は、液晶配向膜の垂直配向規制力を減殺する効果があることが知られている。したがって、ラビング処理を施したにもかかわらず87°以上のプレチルト角を示す場合には、その液晶配向膜は、液晶分子の垂直配向性が極めて優れていると言える。また、かかる結果を与える液晶配向剤は、ODF方式による垂直配向型液晶表示素子の製造に用いた場合にも、表示ムラ(ODFムラ)が殆ど発生しないことが経験的に明らかになっている。
(4)電圧保持率評価用の液晶表示素子の製造
形成された塗膜に対してラビング処理並びにこれに引き続く洗浄及び乾燥処理を施さなかった以外は、垂直配向性評価用の液晶表示素子を製造する場合と同様の方法により、電圧保持率評価用の液晶表示素子を製造した。
(5)電圧保持率の評価
上記製造した電圧保持率評価用の液晶表示素子に対し、60℃において1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、1670マイクロ秒のスパンで印加した後、電圧印加の解除から1670ミリ秒後の電圧保持率VHR[%]を測定した。測定は、東陽テクニカ製VHR−1を用いて行った。その測定結果を下記表1に示す。
(6)液晶配向膜のリワーク性の評価
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITOからなる透明導電膜上に、液晶配向剤(S−1)をスピンナーにより塗布し、ホットプレート上100℃にて90秒間のプレベークを行い、膜厚約80nmの塗膜を形成した。この操作を繰り返し、塗膜付きの基板を2枚作成した。次に、得られた2枚の基板を窒素雰囲気下25℃の暗室に保管した。保管開始から12時間後及び48時間後に、それぞれ1枚の基板を取り出し、40℃に調温されたNMPの入ったビーカーに2分間浸漬した後、超純水で数回洗浄し、エアブローにて表面の水滴を取り去った。この基板につき、光学顕微鏡によって観察して塗膜の残滓の有無を調べることにより、液晶配向膜の基板からの剥離容易性(リワーク性)を評価した。評価は、保管開始から48時間後に取り出した基板であっても、NMP浸漬後に塗膜の残滓が観察されなかった場合をリワーク性「優良」、48時間後の基板には塗膜の残滓が観察されたが12時間後の基板には観察されなかった場合をリワーク性「良好」、12時間後の基板において塗膜の残滓が観察された場合をリワーク性「不良」として行った。その評価結果を下記表1に示す。
(7)耐光性の評価
上記で製造した液晶表示素子に、電圧保持率の評価と同様の条件で初期の電圧保持率を測定した。その後、100ワット型白色蛍光灯下5cmの距離に配置し、500時間光を照射してから再度上記と同条件で電圧保持率を測定した。初期値と比較した電圧保持率の低下率が1%以下であった場合を耐光性「A」、1%を超えて2%以下であった場合を「B」、2%を超えた場合を耐光性「C」とした。
[実施例2〜10、比較例1〜4]
重合体の種類及びエポキシ化合物の含有量をそれぞれ下記表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶配向剤(S−2)〜(S−14)をそれぞれ調製するとともに、垂直配向性、電圧保持率、リワーク性及び耐光性の各評価を行った。それらの結果を下記表1に示す。
Figure 0006079210
表1に示すように、実施例の液晶配向剤ではいずれも、形成した液晶配向膜においてプレチルト角が87°以上と高い値を示し、液晶分子の垂直配向性に優れていた。なお、実施例のものでは、基板上に形成した塗膜に対してラビング処理を施したにもかかわらずプレチルト角が高かったことから、ODF方式によって垂直配向型の液晶表示素子を製造した場合にも、表示ムラの発生を好適に抑制できると言える。また、実施例のものでは、耐光性が良好であるとともに、リワーク性について、液晶配向剤中にエポキシ化合物を含有する場合にも良好であった。
また、実施例のものでは電圧保持率についても良好であり、中でも、重合体成分としてポリイミド(PI−1)、(PI−3)又は(PI−5)を含む実施例1,3,5,10では、98.0%以上の高い電圧保持率を示した。
これに対し、比較例1〜3では、リワーク性は良好であったものの、垂直配向性及び耐光性が不良であった。また、比較例4では、垂直配向性及び耐光性は良好であったものの、リワーク性が不良であった。

Claims (7)

  1. テトラカルボン酸二無水物及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、下記式(1)で表される化合物を含むジアミンと、を反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種である重合体(P1)を含有することを特徴とする液晶配向剤。
    Figure 0006079210
    (式(1)中、Ac 及びAc は、それぞれ独立に、シクロヘキサン環又はベンゼン環であり、これらは置換基を有していてもよい。R は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。Xは酸素原子である。n は1又は2であり、n は0又は1である。但し、n が2の場合、複数のAc はそれぞれ独立して上記定義を有する。mは1〜3の整数である。)
  2. 前記nと前記nとの和が2又は3である請求項に記載の液晶配向剤。
  3. 前記nと前記nとの和が2である請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
  4. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
  5. 請求項に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
  6. テトラカルボン酸二無水物及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、下記式(1)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られる重合体。
    Figure 0006079210
    (式(1)中、Ac及びAcは、それぞれ独立に、シクロヘキサン環又はベンゼン環であり、これらは置換基を有していてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。Xは、酸素原子である。nは1又は2であり、nは0又は1である。但し、nが2の場合、複数のAcはそれぞれ独立して上記定義を有する。mは1〜3の整数である。)
  7. 下記式(1)で表される化合物。
    Figure 0006079210
    (式(1)中、Ac及びAcは、それぞれ独立に、シクロヘキサン環又はベンゼン環であり、これらは置換基を有していてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。Xは、酸素原子である。nは1又は2であり、nは0又は1である。但し、nが2の場合、複数のAcはそれぞれ独立して上記定義を有する。mは1〜3の整数である。)
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