以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、第1実施形態に係る電子線照射装置の縦断面図である。図1に示される第1実施形態に係る電子線照射装置1aは、照射対象物への電子線EBの照射によって当該照射対象物の乾燥、殺菌又は表面改質等を行うために使用される。なお、以下、電子線照射装置1aによって電子線EBが照射される側である電子線出射側(電子線出射窓11側)を前側として説明する。
電子線照射装置1aは、電子銃2と、真空容器3と、ガイド部10と、電子線出射窓11と、制御部12と、調整用電磁コイル13と、集束用電磁コイル14と、を備える。電子銃2は、低エネルギー電子線である電子線EBを発生させる電子線発生部である。電子銃2は、ケース4と、絶縁ブロック5と、コネクタ6と、フィラメント7と、グリッド部8と、内部配線9a,9bと、導電性部材16と、を有する。
ケース4は、金属等の導電性材料により形成されている。ケース4は、絶縁ブロック5を収容する。ケース4は、真空容器3の内部の真空空間Z(後述)へ繋がる開口4aと、電子線照射装置1aの外側へ繋がる開口4bとを有する。開口4aは、内部配線9a,9bを通すための円形の開口である。開口4bは、コネクタ6を取り付けるための円形の開口である。
絶縁ブロック5は、絶縁性材料(例えばエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂やセラミック等)により形成されている。絶縁ブロック5は、電子銃2の内部配線9a,9bと他の部分(例えばケース4等)とを絶縁する。絶縁ブロック5は、基部5aと、該基部5aから突出した凸部5bとを有する。基部5aは、ケース4内の殆どを占めるようにケース4内に収容されている。凸部5bは、基部5aから開口4aを通って前側に突出してケース4から露出している。
コネクタ6は、電子線照射装置1aの外部から電源電圧の供給を受けるための高耐電圧型のコネクタ(レセプタクル)である。コネクタ6は、ケース4の側面に取り付けられている。コネクタ6は、ケース4の側壁を貫通するように開口4bに配置されている。コネクタ6においてケース4の内部に位置する部分6aは、絶縁ブロック5の基部5aに埋め込まれて固定されている。コネクタ6は、絶縁ブロック5とケース4とを強固に固定する。このコネクタ6には、図示しない電源装置から延びる外部配線の先端を保持した電源用プラグが挿入される。なお、外部電源からコネクタ6を介して必要な高電圧の供給を受けるのではなく、絶縁ブロック5内に昇圧回路を含む高電圧発生部を収容することで、絶縁ブロック5内で必要な高電圧を発生させてもよい。
フィラメント7は、電子線EBとなる電子を放出するための電子放出部材である。フィラメント7は、タングステンを主成分とした材料により形成されている。フィラメント7は、絶縁ブロック5の凸部5b(本実施形態では、凸部5bの先端付近)の前側に配置されている。フィラメント7の両端は、コネクタ6からフィラメント7へ延びる内部配線9a及び9bにそれぞれ接続されている。従って、コネクタ6に電源用プラグが挿入されると、フィラメント7の両端は、外部配線を介して電源装置と電気的に接続される。フィラメント7は、数アンペアの電流を流されることにより、2500℃程度に加熱され、さらに別の電源装置からマイナス数10kV〜マイナス数100kVといった高い負電圧が印加されることにより、電子を放出する。フィラメント7は、電子を引き出すとともに拡散を抑制するための電界を形成するグリッド部8に覆われている。グリッド部8には、図示しない配線を介して所定の電圧が印加される。従って、フィラメント7から放出された電子は、グリッド部8の一部に形成された孔から電子線EBとして出射される。
内部配線9a,9bは、高電圧が電源装置から印加される高電圧部である。内部配線9a,9bは、絶縁ブロック5の内部に埋め込まれることにより、ケース4との絶縁が確保されている。
導電性部材16は、絶縁ブロック5の表面のうち、ケース4との間に隙間があいた表面を覆う導電性の部材である。導電性部材16としては、導電性のフィルム、或いは導電性のテープ等の薄い部材が用いられている。導電性部材16は、絶縁ブロック5のうちケース4に密着していない部分を完全に覆うように当該絶縁ブロック5に貼付されている。なお、導電性部材16は、導電性塗料や導電性膜等であってもよい。
真空容器3は、電子銃2を収容する真空空間Zを構成する筐体部である。真空容器3は、金属等の導電性材料により形成されている。真空容器3は、電子線EBの出射方向に沿って延びる円筒状に形成されている。真空容器3は、電子銃2のフィラメント7、グリッド部8、及び絶縁ブロック5の凸部5bを収容して気密に封止する。真空容器3において電子銃2の前側に対向する部分には、通過孔3bが形成されている。通過孔3bは、電子銃2で発生させた電子線EBを通過させる円形の貫通孔である。通過孔3bは、ガイド部10の内部と連通する。真空容器3には、排気通路3dを介して真空ポンプ50が接続されている。真空ポンプ50により、真空容器3の内部の排気を簡易に行うことができる。
ガイド部10は、電子銃2で発生させた電子線EBをガイドする電子線ガイド部である。ガイド部10の内部は、中空となっており、その内部空間は、電子銃2で発生させた電子線EBが通過する空間を構成する。本実施形態では、ガイド部10は、その全長に亘って均一な内径を有する円筒状となっている。ガイド部10は、基端部10a及びロッド部10bを備えている。
基端部10aは、ガイド部10の基端側であって、真空容器3に接続されており、ガイド部10の内部空間を真空空間Zと連通させる。ロッド部10bは、ガイド部10の先端側であって、後述するように、容器であるボトルBの口部Baを介してボトルB内に挿入可能に構成されている。ロッド部10bは、その外径が真空容器3よりも小径な長尺の筒状部材(ここでは、細長の円筒状部材)である。具体的には、基端部10aは、ガイド部10の内部空間が真空容器3の通過孔3bと連続するように固定されている。ロッド部10bは、基端部10aと連通し、電子銃2の電子線EBの出射方向に沿って真空容器3から離間するように延出する。なお、本実施形態においては、基端部10aとロッド部10bとは、その外径が真空容器3よりも小径の長尺の筒状部材として一体に構成されている。
電子線出射窓11は、ガイド部10の内部を通過した電子線EBを透過させて、当該電子線EBを外部に向けて出射する。電子線出射窓11は、ガイド部10の先端側に設けられている。具体的には、電子線出射窓11は、ロッド部10bの前側の端部(電子銃2側と反対側の端部)である先端部の開口を真空封止するように設けられている。電子線出射窓11は、薄膜状の部材であり、電子線EBを透過する材料(例えばベリリウム、チタン、アルミニウム等)から成る。電子線出射窓11は、例えば15μm以下の厚さに形成されている。ここでの電子線出射窓11は、数μm〜10μmの厚さに形成されている。電子線出射窓11は、ガイド部10の先端において、ロウ材を用いてロッド部10bにロウ付けされて、ロッド部10bの先端部の開口を閉じるように気密に接合されている。なお、電子線出射窓11は、例えば溶接によって接合されていてもよいし、気密保持構造を持った窓枠部によって薄膜状の部材が交換可能となるように保持されていてもよい。
制御部12は、例えば、プロセッサ及び記憶装置(メモリ等)を有する一以上のコンピュータ装置により構成されている。制御部12は、記憶装置に記憶されたプログラムに従って動作し、電子線照射装置1aの各部を制御する。
調整用電磁コイル13は、ガイド部10における電子線EBの軌道を調整する調整部である。調整用電磁コイル13は、電磁レンズとして機能する。調整用電磁コイル13は、ガイド部10の内部において通過する電子線EBが電子線出射窓11に到達するように、当該電子線EBの進行方向を偏向させて軌道(出射軸線)を微調整する。例えば調整用電磁コイル13は、電子線EBの出射軸線がガイド部10(特にロッド部10b)の中心軸線におおよそ一致するように微調整する。調整用電磁コイル13は、制御部12に接続されており、制御部12により流れる電流が制御される。これにより、電子線EBの軌道の微調整が実現される。
調整用電磁コイル13は、真空空間Zの外部においてガイド部10の基端側(真空容器3側)に配置されている。より具体的には、調整用電磁コイル13は、ガイド部10の基端部10aにおける真空容器3に近接する基端側の位置に、基端部10aを包囲するように環状に配置されている。調整用電磁コイル13は、保持部材22によって覆われ、その位置が保持されている。保持部材22は、真空容器3の前側に固定されている。保持部材22は、ガイド部10における基端側の一部(基端から一定距離先端側に亘る領域)である基端部10aを覆う。換言すると、本実施形態においては、ガイド部10のうち、保持部材22で覆われた部分が基端部10aとなる。
集束用電磁コイル14は、ガイド部10における電子線EBの集束を制御する集束部である。集束用電磁コイル14は、電磁レンズとして機能する。集束用電磁コイル14は、ガイド部10(特にロッド部10b)の内部において、通過する電子線EBを、集束点が形成されないように集束させる。例えば集束用電磁コイル14は、出射軸線に沿って拡がるように進行する電子線EBの当該広がりを抑制し、電子線出射窓11上における電子線EBの照射範囲が一定となるように集束制御を行う。集束用電磁コイル14は、制御部12に接続されており、制御部12により流れる電流が制御される。これにより、電子線EBの集束制御の微調整が実現される。
集束用電磁コイル14は、真空空間Zの外部において、調整用電磁コイル13よりも前側であるガイド部10の先端側(電子線出射窓11側、真空容器3側と反対側)に配置されている。換言すると、調整用電磁コイル13は、集束用電磁コイル14よりもガイド部10の基端側(電子銃2側)に配置されている。より具体的には、集束用電磁コイル14は、ガイド部10の基端部10aにおいて、調整用電磁コイル13に対して前側(ガイド部10の先端側)に隣接する位置に、基端部10aを包囲するよう環状に配置されている。調整用電磁コイル13及び集束用電磁コイル14は、電子線EBの出射方向に沿ってこの順で並ぶように配置されている。集束用電磁コイル14は、保持部材22によってその位置が保持されるとともに覆われている。
図2は、図1の電子線照射装置の使用状態を示す断面図である。図1及び図2に示されるように、ガイド部10の先端側であるロッド部10bは、容器であるボトルBの口部Baを介して当該ボトルB内に挿入可能に構成されている。換言すると、本実施形態においては、ガイド部10のうち、保持部材22から突出し、ボトルBの口部Baを介して当該ボトルB内に挿入可能に構成されている部分がロッド部10bとなる。
図示する例においては、ボトルBは、ネック部Bnに連なる開口部である口部Baを備えた容器である。口部Baの内径は、真空容器3の外径よりも小さく、且つ、ロッド部10bの外径よりも大きい。つまり、ロッド部10bは、ボトルBの口部Baに対して、ボトルBの軸方向に沿って挿入可能な外径を有している。例えばロッド部10bの外径は、口部Baから挿入可能な寸法として、φ18mm程度とされている。ガイド部10において保持部材22から突出する部分の軸長であるロッド部10bの長さLは、電子線EBがボトルBの底面に照射されるように、口部Baを通ってボトルB内に位置するロッド部10bの先端がボトルBの底面近傍まで届き得る長さとされている。
ロッド部10bの長さLは、300mm以上とされている。本実施形態では、ロッド部10bの長さLは、300mm〜400mmである。適用されるボトルBとしては、特に限定されず、あらゆるボトルBを適用できる。ボトルBの大きさ、材質、形状、外観及び用途等は限定されず、種々のボトルを適用できる。本実施形態のボトルBとしては、容量が2リットルの飲料用ペットボトルが適用されている。
ガイド部10は、非磁性体で形成されている。例えばガイド部10は、ステンレス、アルミニウム又は無酸素銅等により形成されている。これにより、ガイド部10の周囲に設置した調整用電磁コイル13及び集束用電磁コイル14の形成する磁界を、ガイド部10内の電子線(電子ビーム)EBへ導くことができる。そのため、ガイド部10のうち、特に基端部10aを非磁性体で形成することが必須となる。
一方、ガイド部10において保持部材22から突出する部分(外部に露出し、ボトルB内に挿入可能な部分であって、長さLに対応する部分)であるロッド部10bは、その外面が磁性体15で覆われている。磁性体15は、磁気シールドとして機能するものであり、ロッド部10b内の電子線EBに及ぶ地磁気等の外部磁気を遮蔽して、当該電子線EBの軌道のずれを抑制する。なお、非磁性体で形成されたロッド部10bを別途に磁性体15で覆うのではなく、ロッド部10b自体を磁性体で形成してもよい。
以上の構成を備える本実施形態の電子線照射装置1aの動作について説明する。
まず、真空ポンプ50によって真空容器3の内部を排気して真空空間Zを形成した後、フィラメント7を通電することにより、フィラメント7を予備加熱し、電子放出の準備を行う。続いて、電源装置からマイナス数10kV〜マイナス数100kVの電源電圧を印加する。この電源電圧は、内部配線9a及び9bを介してフィラメント7に供給される。そして、所望の管電流値が得られるような温度までフィラメント7を加熱する。なお、予備加熱を行うことなく、直接、所望の管電流値が得られるような温度までフィラメント7を加熱してもよい。その後、グリッド部8によってフィラメント7から電子を引き出し、前側に放出させる。
フィラメント7から放出された電子は、グリッド部8によって拡散が抑制され、印加電圧に応じたエネルギーを持った電子線EBとなる。電子線EBは、拡がるように前側に直進し、ガイド部10の内部空間を電子線出射窓11へ向かって進む。このとき、電子線EBは、調整用電磁コイル13により、軌道がガイド部10(特にロッド部10b)の中心軸線に一致するように微調整された後、集束用電磁コイル14により、ガイド部10(特にロッド部10b)の内部において集束点が形成されないように集束制御される。
軌道が微調整されて集束制御された電子線EBは、電子線出射窓11に到達し、電子線出射窓11を透過して電子線照射装置1aの外部へ出射される。電子線EBを出射状態とした後、ガイド部10の先端側のロッド部10bをボトルBの口部Baを介してボトルBの内部に挿入し、ロッド部10b先端の電子線出射窓11をボトルBの内部の所望位置に位置させる。その結果、電子線EBがボトルBの内面に効率よく照射され、ボトルBの内面が滅菌される。なお、ボトルBの局所への電子線EBの過剰照射による劣化を抑制するため、ボトルBと電子線出射窓11の相対的な位置関係は常に変動するように制御される。
ここで、電子線EBをボトルBの内面に効率よく照射するためには、ボトルBの内部に電子線EBを放出する部位を挿入する必要がある。このことから、電子線照射装置1aは、基本構造として、ガイド部10において、ボトルBの口部BaからボトルB内部に挿入可能な細長いロッド部10bを備える。そのため、電子銃2から放出された電子線EBを、細長いロッド部10bの狭く且つ長い内部空間を通過させて先端の電子線出射窓11に効率よく到達させる必要がある。
一方、電子線照射装置1aにおける電子銃2は、調整用電磁コイル13を備えていない場合には、調整用電磁コイル13を備えている場合と比較して、電子線出射窓11から出射される電子線量が減少するような構成となっている。換言すると、調整用電磁コイル13を備えている場合と比較して、電子線出射窓11に到達不能な電子線量が増加するような構成となっている。具体的には、電子銃2は、調整用電磁コイル13を備えていない場合には、その加工や組立、配置等を非常に高精度で行わない限り、電子銃2から出射した際の電子線EBの軌道(出射軸線)がガイド部10(特にロッド部10b)の中心軸線と一致せず、交差した状態となる可能性が高い。特に、電子銃2は、電子を放出するフィラメント7やグリッド部8を絶縁性樹脂やセラミック等の絶縁性材料からなる絶縁ブロック5で保持した構造であるため、絶縁ブロック5に起因する個体差も生じやすく、加工や組立、配置等を高精度で行うのは非常に困難である。つまり、電子銃2は、電子線EBを電子銃2から放出させたとき、その軌道を調整しないと、電子線出射窓11に到る前に、例えばガイド部10の内壁等に入射したりする可能性が高いため、電子線出射窓11から出射される電子線量が減少する(電子線出射窓11に到達不能な電子線量が増加する)ような構成となっている。電子銃2は、それのみで電子線EBがガイド部10内を通って電子線出射窓11から出射されるようには、真空空間Z内に形成、寸法合わせ及び位置決めされていない。
そこで、電子線照射装置1aでは、真空空間Zの外部においてガイド部10の基端側に調整用電磁コイル13が配置されている。調整用電磁コイル13によってガイド部10における電子線EBの軌道を調整することで、電子銃2の加工や組立、配置に関して高い精度を必要とせずに、電子銃2からの電子線EBを、ガイド部10の先端側の電子線出射窓11へ確実に到達させて当該電子線出射窓11から出射できる。すなわち、調整用電磁コイル13によって初めて、電子線出射窓11から電子線EBを高効率で出射できる。さらに、調整用電磁コイル13を真空空間Z外に配置することで、調整用電磁コイル13からのガス放出による真空空間Zの真空度の低下といった問題を抑制し、より高効率に電子線出射窓11から電子線EBを出射できる。なお、調整用電磁コイル13をガイド部10の先端側、つまりロッド部10bの領域に配置することも考えられるが、その場合、調整用電磁コイル13を設けたロッド部10bをボトルBの内部に挿入可能な大きさとするのは非常に困難となる。ロッド部10bには電子線EBを制御するような構成を付加せず、その手前の基端部10aにおいて制御することが好ましい。
従って、本実施形態の電子線照射装置1aによれば、ボトルBの口部Baから当該ボトルB内に挿入可能な長尺の筒状部材を備えたガイド部10を具備することで、安定してガイド部10先端側の電子線出射窓11から電子線EBを出射可能となる。また、電子銃2に求められる精度に余裕が生じることで、良品率の向上や均一の特性を備えた電子線照射装置の製造が容易となる。さらに、電子銃2から放出された電子線EBを常に電子線出射窓11の有効径内に入るようにし、安定して高性能の滅菌効果を得ることができる。
電子線照射装置1aにおいて、電子線EBの軌道を調整する調整部として、電磁コイルである調整用電磁コイル13を備えている。これにより、調整用電磁コイル13に供給する電流を調整することで、ガイド部10における電子線EBの軌道を微調整できるので、安定してガイド部10先端側の電子線出射窓11から電子線EBを出射可能となる。また、熱膨張等による経時変化に起因した電子線EBの軌道の変化にも、容易に対応することができる。
電子線照射装置1aは、真空空間Zの外部に配置され電子線EBの集束を制御する集束用電磁コイル14を、集束部としてさらに備えている。これにより、ガイド部10における電子線EBの集束制御を確実に行い、安定してガイド部10先端側の電子線出射窓11から電子線EBを出射可能となる。また、このように集束部として集束用電磁コイル14を備えていることから、集束用電磁コイル14に供給する電流を調整することで、ガイド部10における電子線EBの集束を微調整でき、さらに安定してガイド部10先端側の電子線出射窓11から電子線EBを出射可能となる。より詳細には、電子銃2の加工や組立、配置のバラツキによって、同じ集束レンズを用いても電子線出射窓11上における電子線EBの照射範囲にバラツキが発生するため、結果として電子線出射窓11から出射される電子線EBを均一化するのは困難となる。対して、集束部を集束用電磁コイル14とすることで、供給する電流の調整によって集束レンズを適切に調整できるので、電子線出射窓11上における電子線EBの照射範囲のバラツキを抑制し、電子線出射窓11から出射される電子線EBを均一化できる。さらに、集束用電磁コイル14を真空空間Z外に配置することで、集束用電磁コイル14からのガス放出による真空空間Zの真空度の低下といった問題を抑制し、より高効率に電子線出射窓11から電子線EBを出射できる。
ところで、ガイド部10の内部に電子線EBの集束点が存在する場合、例えば放電等の影響によって当該集束点が電子線出射窓11上に位置し、電子線EBのエネルギーが電子線出射窓11上の局所に集中してしまうことから、電子線出射窓11が破損してしまう可能性が懸念される。これに対し、電子線照射装置1aでは、集束用電磁コイル14により、ガイド部10(特にロッド部10b)の内部において集束点が形成されないように電子線EBを集束する。これにより、電子線出射窓11が破損する当該可能性を低減でき、安定してガイド部10先端側の電子線出射窓11から電子線EBを出射可能となる。
電子線照射装置1aにおいて、調整用電磁コイル13は、集束用電磁コイル14よりもガイド部10の基端側に配置されている。これにより、ガイド部10内を電子線出射窓11へ向かって進む電子線EBは、調整用電磁コイル13で軌道が微調整された後に集束用電磁コイル14で集束制御される。そのため、電子銃2からの電子線EBの軌道においてずれが大きい場合であっても、集束用電磁コイル14により電子線EBの集束制御を確実に行い得る軌道となるように電子線EBの軌道を調整できるので、安定してガイド部10先端側の電子線出射窓11から電子線EBを出射可能となる。また、電子線EBの集束制御を確実に行うことができるので、電子線出射窓11から出射させる電子線EBを均一化することが可能となる。
なお、電子線照射装置1aでは、調整用電磁コイル13及び集束用電磁コイル14を真空空間Zの外側に設置し、ガイド部10を介して制御用磁界を導入している。これにより、次の効果を奏する。すなわち、調整用電磁コイル13及び集束用電磁コイル14からのガス放出による真空空間Zの真空度の低下といった問題を抑制する。これにより、より高効率に電子線出射窓11から電子線EBを出射できる。また、調整用電磁コイル13及び集束用電磁コイル14を真空に対応させることが不要となることから、構造の簡素化が可能となる。さらに、調整用電磁コイル13及び集束用電磁コイル14の位置調整が容易となる。
電子線照射装置1aでは、集束用電磁コイル14により、電子線EBを電子線出射窓11上にて任意のサイズに調整できる。集束用電磁コイル14により電子線EBの集束制御ができるため、ガイド部10のロッド部10bの長さLや電子線出射窓11の有効径を変更する場合、ガイド部10(ロッド部10b)のみを付け替えることで対応可能となる。
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
図3は、第2実施形態に係る電子線照射装置の縦断面図である。図3に示される第2実施形態に係る電子線照射装置1bは、調整用電磁コイル13と集束用電磁コイル14との配置が入れ替わっている点で上記電子線照射装置1a(図1参照)と異なる。
集束用電磁コイル14は、ガイド部10の基端部10aにおける真空容器3に近接する基端側の位置に、基端部10aを包囲するように設けられている。調整用電磁コイル13は、ガイド部10の基端部10aにおいて、集束用電磁コイル14に対して前側(ガイド部10の先端側)に隣接する位置に設けられている。集束用電磁コイル14及び調整用電磁コイル13は、電子線EBの出射方向に沿ってこの順で並ぶように、ガイド部10の基端部10aの周囲に配置されている。
以上、電子線照射装置1bにおいても、上記電子線照射装置1aにおける効果と同様の効果を奏する。また、電子線照射装置1baでは、集束用電磁コイル14が調整用電磁コイル13よりもガイド部10の基端側(電子銃2側)に配置されている。これにより、ガイド部10内を電子線出射窓11に向かって進む電子線EBは、集束用電磁コイル14で集束制御された後に、調整用電磁コイル13で軌道が微調整される。よって、電子銃2からの電子線EBの発散が大きい場合であっても、それを予め集束した上で電子線EBの軌道を微調整するため、調整用電磁コイル13において容易に電子線EBの軌道調整が可能となり、安定してガイド部10先端側の電子線出射窓11から電子線EBを出射可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
上記実施形態において、ガイド部10は、その先端側のロッド部10bがボトルBに挿入可能であれば、その長さを適宜変更することができる。例えば、図4(a)に示される電子線照射装置1cのように、ロッド部10bの長さLよりも小さい長さL2のロッド部10cを備えていてもよい。この電子線照射装置1cは、例えばボトルBよりも低背のボトルB2にロッド部10cが挿入されて使用される。また逆に、図4(b)に示される電子線照射装置1dのように、ロッド部10bの長さLよりも大きい長さL3のロッド部10dを備えていてもよい。この電子線照射装置1dは、例えばボトルBよりも高背のボトルB3にロッド部10dが挿入されて使用される。
上記実施形態では、調整部として調整用電磁コイル13を適用したが、調整部は特に限定されず、電子線EBの軌道を調整できるものであれば、種々の手段を調整部として適用できる。上記実施形態では、集束部として集束用電磁コイル14を適用したが、集束部は特に限定されず、電子線EBを集束制御できるものであれば、種々の手段を集束部として適用できる。また、集束部を備えない場合もある。