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JP6065000B2 - 運動用股付き衣類 - Google Patents

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Description

本発明は、着用者の下肢の運動をサポートする運動用股付き衣類に関する。
従来、下記特許文献1および2に記載されるように、着用者の下肢の筋肉活動をサポートするための衣類が知られている。下記特許文献1には、大殿筋などの下肢の筋肉に対応したインナーパターンが縫製された下肢用ウェアが記載されている。この下肢用ウェアでは、各パターンが上下方向に伸縮するようになっている。また、下記特許文献2には、緊締力の強い強緊締力部を備えたウェットスーツが記載されている。このウェットスーツでは、下肢の筋肉に沿って強緊締力部を配置している。たとえば、大腿筋膜張筋から腹部および腰部に向かって配置された強緊締力部が記載されている。
特開2008−274493号公報 特開2011−32599号公報
上記した従来の衣類では、緊締力のある伸縮性素材によって、筋肉活動と関節部の支持性を補助している。これにより、着用者の下肢に加わる負荷を軽減し、運動パフォーマンスの向上を図っている。
ここで、運動の具体的な態様として、横方向もしくは斜め方向の動きが考えられる。特に、着用者が横方向もしくは斜め方向に動きながら瞬発的または突発的な動きをした場合、着用者の下肢に大きな負担が加わる。動きの具体例としては、横方向もしくは斜め方向に動きながら急に止まる動き、急に体を捻る動き、または急に走り出す動きなどが挙げられる。このような動きは、たとえば、野球、バレーボール、バスケットボール等の競技において頻繁に起こり得る。
しかしながら、従来の技術では、横方向もしくは斜め方向の動きに対する下肢のサポートが考慮されていない。そのため、着用者が横方向もしくは斜め方向における瞬発的または突発的な動きをした場合、膝などに過剰な負荷がかかることにより、怪我を招く可能性もある。このように、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることは困難であった。
本発明は、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることができる運動用股付き衣類を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る運動用股付き衣類は、着用者の下半身の少なくとも一部を被覆する運動用股付き衣類であって、伸縮性を有する素材によって形成された本体部と、本体部よりも高い緊締力を有する緊締部と、を備え、緊締部は、着用者の左右それぞれにおいて、臀部上方と腰部の側部と大転子に相当する位置付近とを頂点とする略三角形状の領域を被覆する左右一対の第1緊締部を備え、第1緊締部は、上下方向に延在すると共に幅方向に隣接する複数の分割緊締部を有し、分割緊締部は、それぞれ伸縮性の高い方向を有するように形成されており、分割緊締部の伸縮性の高い方向は、下方に向かうにつれて互いに近づいていることを特徴とする。
この運動用股付き衣類によれば、緊締部は、着用者の左右それぞれにおいて、臀部上方と腰部の側部と大転子に相当する位置付近とを頂点とする略三角形状の領域を被覆する左右一対の第1緊締部を備える。臀部上方と腰部の側部と大転子に相当する位置付近とを頂点とする略三角形状の領域は、着用者の中殿筋の位置に相当する。この中殿筋は、腸骨から大転子に延びる扇状の筋肉であり、股関節の動きの根幹をなす。ここで、第1緊締部は、上下方向に延在すると共に幅方向に隣接する複数の分割緊締部を有し、この分割緊締部は、そのそれぞれにおける伸縮性の高い方向が下方に向かうにつれて互いに近づくように形成されている。よって、分割緊締部のそれぞれは、中殿筋の前側と後側をそれぞれカバーすることとなる。しかも、分割緊締部の伸縮性の高い方向が、扇状をなす中殿筋の前部と後部の筋線維方向にそれぞれ沿うことになるため、中殿筋を確実にサポートすることができる。このように、股関節の動きの根幹をなす中殿筋を確実にサポートすることにより、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることができる。
また、ウエスト部において、第1緊締部が形成されていない前方の領域の幅は、第1緊締部が形成されていない後方の領域の幅よりも大きい態様であってもよい。中殿筋は、体側よりも後方寄りに位置している。よって、中殿筋のサポートに適した位置に第1緊締部を配置することができる。
また、ウエスト部において、第1緊締部が形成されていない前方の領域の幅は、第1緊締部が形成されていない後方の領域の幅の2倍以上かつ5倍以下である態様であってもよい。この場合、第1緊締部が形成されていない前方の領域の幅が大きくなるため、腹部に対する圧迫感を低減することができる。
また、緊締部は、第1緊締部の前部から着用者の大腿部の前側を通って着用者の膝部の内側に延びる第2緊締部を有する態様であってもよい。この場合、第2緊締部は縫工筋に相当する領域に配置されるため、横方向もしくは斜め方向に動きながら急に止まる動きに対して下肢をしっかりとサポートできる。よって、下肢に加わる衝撃を軽減できる。
また、緊締部は、第1緊締部の下部から着用者の大腿部の後側を通って着用者の膝部の内側に延びる第3緊締部を有する態様であってもよい。この場合、第3緊締部はハムストリングスに相当する領域に配置されるため、急に走り出す動きに対して下肢をしっかりとサポートできる。よって、下肢に加わる衝撃を軽減できる。
本発明によれば、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることができる。
第1実施形態に係る運動用股付き衣類を上方から見た斜視図である。 図1に示した運動用股付き衣類を下方から見た斜視図である。 図1に示した運動用股付き衣類を平置きした状態の正面図である。 図1に示した運動用股付き衣類を平置きした状態の背面図である。 図1に示した運動用股付き衣類の右側面を中心に平置きした状態の図である。 図3に対応する正面図であり、伸縮性の高い方向を示した図である。 図4に対応する背面図であり、伸縮性の高い方向を示した図である。 図5に対応する図であり、伸縮性の高い方向を示した図である。 (a)は、背面から見た人体下肢部の骨格群および中殿筋を示す図であり、(b)は、左側面から見た人体下肢部の骨格群および中殿筋を示す図である。 第2実施形態に係る運動用股付き衣類を平置きした状態の正面図である。 図10に示した運動用股付き衣類の右側面を中心に平置きした状態の図である。 第3実施形態に係る運動用股付き衣類の右側面を中心に平置きした状態の図である。 (a)および(b)は、変形例に係る運動用股付き衣類の右側面を中心に平置きした状態の図である。 (a)および(b)は、緊締部の機能試験の実施方法の説明図である。 膝への上下方向の負荷に関する機能試験結果を示す図である。 膝への左右方向の負荷に関する機能試験結果を示す図である。 膝への上下方向の負荷に関する機能試験結果を示す図である。 膝への左右方向の負荷に関する機能試験結果を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る運動用股付き衣類の実施形態について説明する。
図1および図2に示されるように、第1実施形態に係る運動用股付き衣類1は、着用者の下半身の少なくとも一部を被覆して、着用者の下肢の運動をサポートするスポーツ用タイツである。運動用股付き衣類1は、着用者の少なくとも膝下までを覆うロングタイプのスポーツ用タイツである。運動用股付き衣類1は、スポーツを行う着用者の横方向や斜め方向の動きに対して、下肢の運動をサポートする。運動用股付き衣類1は、たとえば、サッカー、野球、バレーボール、バスケットボール等の競技者によって着用される。運動用股付き衣類1は、スポーツ等の激しい運動用に限られるものではなく、日常に着用するインナーウェア(たとえば、ガードルまたはパンツ等)に適用してもよい。
運動用股付き衣類1は、着用者の腰部から大腿部および膝下にわたって密着する本体部2と、本体部2に縫合された緊締部10とを備えている。本体部2は、伸縮性を有する素材によって形成されている。本体部2は、縦方向および横方向に追従性の高い2way素材から形成される。本体部2を形成する素材としては、たとえば、ポリエステル混糸率70%、ポリウレタン混糸率30%のツーウェイリコットを用いることができる。縦方向および横方向によく伸び、追従性の高い素材を本体部2に採用することで、サポートライン(緊締部)が増えても、着用者にとっての動きやすさが確保される。
本体部2の左右は、前部2aから後部2bにかけての中央部分を通る縫着ラインL1によって互いに縫着されている。左右の脚部2cおよび裾部2dは、股部の中心で縫着ラインL1と交差する縫着ラインL2によって形成されている。ウエスト部17には、たとえばゴム入りのインサイドテープが通されており、着用時のウエストのフィット感が高められている。
緊締部10は、緊締力を有する素材によって形成されたサポート部である。緊締部10を形成する素材としては、たとえば、ナイロンの混糸率79%、ポリウレタンの混糸率21%のサテンパワーネットが用いられる。緊締部10は、本体部2よりも高い緊締力を有する。緊締部10は、その緊締力の作用により、緊締部10があてがわれた部分に対応する着用者の筋肉・骨格をサポートする。
緊締部10は、着用者の左右それぞれにおいて、臀部上方と腰部の側部と大転子に相当する位置付近とを頂点とする略三角形状の領域を被覆する左右一対の第1緊締部11,11を有している。また、緊締部10は、第1緊締部11の下方で帯状に形成されて着用者の左右の脚部に沿って延びる、それぞれ左右一対の第2緊締部12,12、第3緊締部13,13、第4緊締部14,14、および第5緊締部15,15を有している。
図9(a)は、背面から見た人体下肢部の骨格群および中殿筋を示す図であり、図9(b)は、左側面から見た人体下肢部の骨格群および中殿筋を示す図である。図9(a)および(b)に示されるように、人体下肢部の骨盤帯は、寛骨と仙骨からなる骨盤および股関節を含んで構成されている。大転子は、大腿骨の上部に位置しており、股関節から外側に突出している。骨盤帯の可動には、大腿筋膜張筋、大殿筋、中殿筋、および小殿筋など多くの筋肉が関連している。
本実施形態の運動用股付き衣類1では、主に中殿筋に着目している。中殿筋は、主に大殿筋の深部に位置しており、腸骨翼の殿筋面と大転子の外側面とを結ぶように位置している。中殿筋は、大転子から腸骨翼に向けて扇状に拡がるように形成されている。中殿筋の前部(図9(b)の図示左側)は屈曲、内旋に働く筋肉であり、たとえば足を内側にひねる際(内旋時)に機能する。中殿筋の後部(図9(b)の図示右側)は伸展、外旋に働く筋肉であり、たとえば足を外側にひねる際(外旋時)に機能する。
第1緊締部11は、着用者の中殿筋をサポートする部分である。第1緊締部11は、着用者の中殿筋に対応する位置に形成されている。ここで、上記した「臀部上方」は、上後腸骨棘(図9(b)参照)のやや前方に相当する位置X付近であり、「腰部の側部」は、上前腸骨棘(図9(b)参照)のやや後方に相当する位置Y付近である(図5参照)。臀部上方(位置X付近)と腰部の側部(位置Y付近)と大転子に相当する位置Z付近とを頂点とする略三角形状の領域は、着用者の中殿筋の位置に相当する。第1緊締部11は、着用者の腸骨翼の位置から大転子の位置Z付近にかけて形成されており、大殿筋を介して中殿筋を覆っている。第1緊締部11は、下方に向かうにつれて幅狭となる略扇状を成している(図5参照)。
第2緊締部12は、着用者の縫工筋をサポートする部分である(図1、図3、および図5参照)。縫工筋は、腸骨の上前腸骨棘と脛骨粗面内側とを結ぶように位置し、股関節の外旋時に機能する。第2緊締部12は、第1緊締部11の前部から着用者の大腿部の前側を通って着用者の膝部の内側に延びる第1ライン12aと、膝部の内側から脛部の前側を通って脹脛部の外側に延びる第2ライン12bとによって構成されている。第2緊締部12の第1ライン12aは、着用者の縫工筋に対応する位置に形成されている。第1ライン12aの上端部は、第1緊締部11の前部に縫合されている。なお、第1ライン12aの上端部が第1緊締部11の前部に縫合される場合に限られず、第1ライン12aの上端部と第1緊締部11との間に間隔が設けられてもよい。
第3緊締部13は、着用者のハムストリングスをサポートする部分である(図2、図4、および図5参照)。ハムストリングスは、大腿二頭筋、半腱様筋、および半膜様筋の総称である。ハムストリングスは、大腿の後方に位置しており、走り出す際や走行中の加速時に機能する。第3緊締部13は、第1緊締部11の下部から着用者の大腿部の後側を通って着用者の膝部の内側に延びている。第3緊締部13の上端部は、第1緊締部11の下部に縫合されている。なお、第3緊締部13の上端部が第1緊締部11の下部に縫合される場合に限られず、第3緊締部13の上端部と第1緊締部11の下部との間に間隔が設けられてもよい。
第4緊締部14は、着用者の内転筋の上部をサポートする部分である(図1および図3参照)。第4緊締部14は、縫着ラインL1と縫着ラインL2とが交差する股部の中心付近から内転筋に沿って下方に延び、着用者の大腿部の前側を通って着用者の膝部の外側に延びている。第4緊締部14の下端部は、着用者の膝部の外側の位置で第5緊締部15に縫合されている。
第5緊締部15は、着用者の膝外側と脹脛内側をサポートする部分である(図1〜図5参照)。第5緊締部15は、縫着ラインL1と縫着ラインL2とが交差する股部の中心付近から着用者の大腿部の後側を通って着用者の膝部の外側に延び、更に脛部の前側を通って脹脛部の内側に延びている。第5緊締部15および上記の第3緊締部13は、着用者の大腿部の後側で互いに交差する(図2、図4、および図5参照)。
第2緊締部12の第1ライン12aおよび第2ライン12b、第4緊締部14、および第5緊締部15は、膝蓋骨の周囲を通っている。第1ライン12aおよび第4緊締部14は膝蓋骨の上方で互いに交差し、第2ライン12bおよび第5緊締部15は膝蓋骨の下方で互いに交差する。膝蓋骨に対応する位置には、本体部2が露出する部分である菱形状のホール2eが形成されている(図1および図3参照)。
以下、第1緊締部11についてより詳しく説明する。図2、図4、および図5に示されるように、第1緊締部11は、前後方向を基準とした場合に、後部寄り(背面寄り)に形成されている。第1緊締部11が形成されていない前方の領域A1(図3参照)の面積は、第1緊締部11が形成されていない後方の領域A2(図4参照)の面積よりも大きい。ウエスト部17において、第1緊締部11が形成されていない前方の領域A1の幅W1(図3参照)は、第1緊締部11が形成されていない後方の領域A2の幅W2(図4参照)よりも大きい。ウエスト部17における領域A1の幅W1は、ウエスト部17における領域A2の幅W2の2倍以上かつ5倍以下である。
このように、第1緊締部11は、着用者の腹部に対応する位置を避けるように形成されている。なお、着用者の腹部に対応する位置には、腹部緊締部18が形成されている。腹部緊締部18は、前部2aの裏面側に縫着されており、左右方向に伸縮性が高くなっている(図6および図8参照)。腹部緊締部18の伸長回復力は、他の緊締部11〜15の伸長回復力よりも小さい。腹部緊締部18の伸長回復力を小さくすることにより、着用者が腹部に圧迫を感じにくいようにしている。なお、図8中のラインL10は、平置き時における股のラインを示す。
さらに、図2および図5に示されるように、第1緊締部11は、上下方向に延在すると共に幅方向(図5の左右方向)に隣接する複数の分割緊締部11a,11b,および11cを有している。前方側の分割緊締部11aは、縦長かつ下細の四角形状を成しており、縫合ラインL3によって前部2aに縫合されている。中央の分割緊締部11bは、縦長かつ下細の四角形状を成している。後方側の分割緊締部11cは、縦長形状を成しており、縫合ラインL4によって後部2bに縫合されている。
分割緊締部11aおよび分割緊締部11bは、上下方向に延びる縫合ラインL11aによって縫合されており、縫合ラインL11aを介して隣接している。分割緊締部11bおよび分割緊締部11cは、上下方向に延びる縫合ラインL11bによって縫合されており、縫合ラインL11bを介して隣接している。分割緊締部11cと後部2bとを縫合する縫合ラインL4は、滑らかな曲線を描きながら、分割緊締部11aおよび分割緊締部11bの下辺まで延在している。分割緊締部11aおよび分割緊締部11bのそれぞれは、この縫合ラインL4によって、第3緊締部13の上端部に縫合されている。第3緊締部13の上端縁の幅は、分割緊締部11aの下辺と分割緊締部11bの下辺とを合わせた幅に等しい。
本実施形態の運動用股付き衣類1においては、図6〜図8に示されるように、第1緊締部11は、分割緊締部11a,11b,および11cのそれぞれにおける伸縮性の高い方向D1,D2,およびD3が下方に向かうにつれて互いに近づくように形成されている。分割緊締部11a,11b,および11cのそれぞれにおける伸縮性の高い方向D1,D2,およびD3は、互いに非平行であり、方向D1,D2,およびD3同士間の間隔は、下方ほど狭くされている。換言すれば、分割緊締部11a,11b,および11cのそれぞれにおける伸縮性の高い方向D1,D2,およびD3は、第1緊締部11の下方で互いに交差する(図8の交点P1,P2,およびP3参照)。なお、図8に示される交点P1,P2,およびP3の位置はあくまで一例であり、図示した位置とは異なる位置で交差してもよい。
分割緊締部11a,11b,および11cのそれぞれにおける伸縮性の高い方向D1,D2,およびD3は、着用時において、分割緊締部11a,11b,および11cのそれぞれが覆う中殿筋の筋線維方向に沿うように構成されている。図9に示されるように、中殿筋は、前部と後部とで筋線維方向が異なる。第1緊締部11の分割緊締部11a,11b,および11cは、このように独特の筋線維方向を有する中殿筋に対しても、効果的なサポート機能を発揮する。
以上説明した本実施形態の運動用股付き衣類1では、緊締部10は、着用者の左右それぞれにおいて、臀部上方(位置X付近)と腰部の側部(位置Y付近)と大転子に相当する位置Z付近とを頂点とする略三角形状の領域を被覆する左右一対の第1緊締部11を備える(図5参照)。着用者の左右それぞれにおいて、臀部上方と腰部の側部と大転子に相当する位置Z付近とを頂点とする略三角形状の領域は、着用者の中殿筋の位置に相当する。この中殿筋は、腸骨から大転子に延びる扇状の筋肉であり、股関節の動きの根幹をなす。第1緊締部11は、上下方向に延在すると共に幅方向に隣接する複数の分割緊締部11a,11b,および11cを有し、この分割緊締部11a,11b,および11cのそれぞれは、伸縮性の高い方向が下方に向かうにつれて互いに近づくように形成されている。よって、着用時には、分割緊締部11a,11b,および11cのそれぞれが、中殿筋の前側と後側をそれぞれカバーすることとなる。しかも、分割緊締部11a,11b,および11cの伸縮性の高い方向が、扇状をなす中殿筋の前部と後部の筋線維方向にそれぞれ沿うことになるため、中殿筋を確実にサポートすることができる。このように、股関節の動きの根幹をなす中殿筋を確実にサポートすることにより、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることができる。
特に、着用者が、横方向もしくは斜め方向に動きながら急に止まる動き、急に体を捻る動き、または急に走り出す動きなど、横方向もしくは斜め方向に動きながら瞬発的または突発的な動きをした場合に、運動用股付き衣類1は効果的に作用する。このような動きは、たとえば、野球、バレーボール、バスケットボール等の競技において頻繁に起こり得る。着用者が瞬発性・突発性の高い動きをした場合、着用者の下肢に大きな負担が加わるおそれがあるが、運動用股付き衣類1によれば、横方向または斜め方向の衝撃に対して体を支えるための筋肉をサポートでき、着用者の下肢(たとえば膝など)に加わる負担を軽減できる。これによって、着用者は、怪我を生じることなく運動を行うことができる。
さらに、ウエスト部17において、第1緊締部11が形成されていない前方の領域A1の幅W1は、第1緊締部11が形成されていない後方の領域A2の幅W2よりも大きい。中殿筋は、体側よりも後方寄りに位置しているため、中殿筋のサポートに適した位置に第1緊締部11が配置される。
また、ウエスト部17において、第1緊締部11が形成されていない前方の領域A1の幅W1は、第1緊締部11が形成されていない後方の領域A2の幅W2の2倍以上かつ5倍以下であるため、腹部に対する圧迫感が低減される。
緊締部10は、第1緊締部11の前部から着用者の大腿部の前側を通って着用者の膝部の内側に延びる第2緊締部12(第1ライン12a)を有し、この第2緊締部12が縫工筋に相当する領域に配置される。よって、横方向もしくは斜め方向に動きながら急に止まる動きに対して下肢をしっかりとサポートでき、下肢に加わる衝撃が軽減される。
緊締部10は、第1緊締部11の下部から着用者の大腿部の後側を通って着用者の膝部の内側に延びる第3緊締部13を有し、この第3緊締部13がハムストリングスに相当する領域に配置される。よって、急に走り出す動き(たとえば急なスタート時の動き)に対して下肢をしっかりとサポートでき、下肢に加わる衝撃が軽減される。
また、第1緊締部11の前部に第2緊締部12が連結され、第1緊締部11の下部に第3緊締部13に連結されるため、筋肉の連動に応じて、第1緊締部11と第2緊締部12または第3緊締部13との協働により、一層好適な筋活動のサポートが可能となる。
図10は、第2実施形態に係る運動用股付き衣類1Aを平置きした状態の正面図であり、図11は、運動用股付き衣類1Aの右側面を中心に平置きした状態の図である。図10および図11に示す運動用股付き衣類1Aが図1〜図8に示した第1実施形態の運動用股付き衣類1と違う点は、本体部2に代えて、着用者の腰部から大腿部にわたって密着し、着用者の膝上で終端している本体部2Aを備えた点である。この運動用股付き衣類1Aは、いわゆるハーフタイプのスポーツ用タイツである。運動用股付き衣類1Aでは、第2緊締部12A、第3緊締部13A、第4緊締部14A、および第5緊締部15Aは、膝上で終端している。第4緊締部14Aは、裾部まで内転筋に沿って下方に延びており、内転筋をサポートする。
この運動用股付き衣類1Aにおいても、運動用股付き衣類1と同様に、股関節の動きの根幹をなす中殿筋を確実にサポートすることにより、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることができる。
図12は、第3実施形態に係る運動用股付き衣類1Bの右側面を中心に平置きした状態の図である。図12に示す運動用股付き衣類1Bが図1〜図8に示した第1実施形態の運動用股付き衣類1と違う点は、本体部2に代えて、着用者の腰部に密着する本体部2Bを備えた点である。この運動用股付き衣類1Bは、いわゆるショートタイプのスポーツ用タイツである。運動用股付き衣類1Bでは、第2緊締部、第3緊締部、第4緊締部、および第5緊締部は形成されない。
この運動用股付き衣類1Bにおいても、運動用股付き衣類1と同様に、股関節の動きの根幹をなす中殿筋を確実にサポートすることにより、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることができる。
[機能試験]
図14(a)および(b)に示されるように、6名のモニターに台の上から斜め前方に飛び降る動作を行わせ、モニターの大腿骨外側顆に相当する部分に貼り付けた3軸加速度センサにより、膝に加わる下方向の加速度および内方向の加速度を計測した。計測時のサンプリング周波数は、2.56kHzである。計測によって得られた下方向の加速度は、上下方向における負荷量に相当し、内方向の加速度は、左右方向における負荷量に相当すると解釈できる。
実施例1として、運動用股付き衣類1と同様のサンプルを着用させた。比較例1として、緊締部がまったく形成されていないサンプルを着用させた。図15および図16は、その試験結果を示す図である。取得したデータ数は、17個である。図15に示されるように、下方向の加速度の平均は、比較例1では10.453Gであったのに対し、実施例1では8.600Gであった。図16に示されるように、内方向の加速度の平均は、比較例1では6.474Gであったのに対し、実施例1では5.675Gであった。この結果から、運動用股付き衣類1と同様の緊締部を備える実施例1では、緊締部を備えない比較例1に比して、上下方向および左右方向のいずれにおいても膝への負荷が軽減されることが確認できた。
次に、実施例2として、運動用股付き衣類1と同様のサンプルを着用させた。比較例2として、中殿筋を覆う緊締部を備えるが、その緊締部は幅方向に分割されていないサンプルを着用させた。図17および図18は、その試験結果を示す図である。取得したデータ数は、6個である。図17に示されるように、下方向の加速度の平均は、比較例2では8.168Gであったのに対し、実施例2では6.524Gであった。図18に示されるように、内方向の加速度の平均は、比較例2では8.169Gであったのに対し、実施例1では6.113Gであった。この結果から、運動用股付き衣類1と同様の緊締部を備える実施例2では、幅方向に分割されない緊締部を備える比較例2に比して、上下方向および左右方向のいずれにおいても膝への負荷が軽減されることが確認できた。
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。たとえば、図13(a)に示されるように、幅方向に2分割された分割緊締部21aおよび分割緊締部21bを有する第1緊締部21を備えた運動用股付き衣類1Cであってもよい。この場合においても、分割緊締部21aおよび分割緊締部21bのそれぞれにおける伸縮性の高い方向D4およびD5が、下方に向かうにつれて互いに近づくように形成されることで、中殿筋を確実にサポートすることができる。
また、図13(b)に示されるように、幅方向に3分割された分割緊締部31a、分割緊締部31b、および分割緊締部31cを有する第1緊締部31を備えた運動用股付き衣類1Dにおいて、分割緊締部31a、分割緊締部31b、および分割緊締部31cのいずれか1つの分割緊締部(図13(b)では中央の分割緊締部31b)が縦長かつ上細の長方形状であってもよい。この場合においても、分割緊締部31a、分割緊締部31b、および分割緊締部31cのそれぞれにおける伸縮性の高い方向D6,D7およびD8が、下方に向かうにつれて互いに近づくように形成されることで、中殿筋を確実にサポートすることができる。
分割緊締部を有する第1緊締部が形成されればよく、第2緊締部〜第5緊締部は省略可能である。膝蓋骨に対応する位置に菱形状のホール2eが形成されなくてもよい。各緊締部は、本体部に縫合される場合に限られず、本体部の表面側または裏面側に縫着してもよく、また、樹脂プリントによって形成してもよい。各緊締部は、抜蝕加工(オパール加工)によって形成してもよい。
本発明によれば、横方向もしくは斜め方向の動きに対して下肢の運動を十分にサポートすることができる。
1,1A,1B,1C,1D…運動用股付き衣類、2…本体部、10…緊締部、11…第1緊締部、11a〜11c…分割緊締部、12…第2緊締部、13…第3緊締部、17…ウエスト部、21…第1緊締部、21a,21b…分割緊締部、31第1緊締部、31a〜31c…分割緊締部、D1〜D8…伸縮性の高い方向。

Claims (5)

  1. 着用者の下半身の少なくとも一部を被覆する運動用股付き衣類であって、
    伸縮性を有する素材によって形成された本体部と、
    前記本体部よりも高い緊締力を有する緊締部と、を備え、
    前記緊締部は、前記着用者の左右それぞれにおいて、臀部上方と腰部の側部と大転子に相当する位置付近とを頂点とする略三角形状の領域を被覆する左右一対の第1緊締部を備え、
    前記第1緊締部は、上下方向に延在すると共に幅方向に隣接する複数の分割緊締部を有し、
    前記分割緊締部は、それぞれ伸縮性の高い方向を有するように形成されており、
    前記分割緊締部の前記伸縮性の高い方向は、下方に向かうにつれて互いに近づいていることを特徴とする運動用股付き衣類。
  2. ウエスト部において、前記第1緊締部が形成されていない前方の領域の幅は、前記第1緊締部が形成されていない後方の領域の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の運動用股付き衣類。
  3. 前記ウエスト部において、前記第1緊締部が形成されていない前方の領域の幅は、前記第1緊締部が形成されていない後方の領域の幅の2倍以上かつ5倍以下であることを特徴とする請求項2記載の運動用股付き衣類。
  4. 前記緊締部は、前記第1緊締部の前部から前記着用者の大腿部の前側を通って前記着用者の膝部の内側に延びる第2緊締部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の運動用股付き衣類。
  5. 前記緊締部は、前記第1緊締部の下部から前記着用者の大腿部の後側を通って前記着用者の膝部の内側に延びる第3緊締部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の運動用股付き衣類。
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