JP6060803B2 - ポリマー生成物、フイルム、成型品、シート、粒子、繊維、及びポリマーの製造方法 - Google Patents
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Description
上記のポリマー生成物は、ルイス酸系触媒およびルイス塩基系触媒(以下、混合触媒と言う)、並びに、圧縮性流体の存在下、炭酸エステルを有する開環重合性モノマーを開環重合して得られる。まず、上記のポリマーの製造に用いられる開環重合性モノマー、混合触媒などの原材料について説明する。本実施形態において、原材料とは、ポリマーを製造するもとになる材料であって、モノマーを含み、更に必要に応じて適宜選択した開始剤、添加剤などの任意成分を含む。
本実施形態において、開環重合性モノマーとは、開環重合に用いられる環状のモノマーを意味する。炭酸エステルを有する開環重合性モノマーとしては、特に限定されないが、環状カーボネートが挙げられる。環状カーボネートとしては、例えば、五員環の環状カーボネート、六員環の環状カーボネート等が挙げられる。五員環の環状カーボネートは、副反応として脱炭酸を引き起こしやすいが、ガスバリア性が高い。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネートなどが挙げられ、これらのうち五員環のものが好ましい。
本実施形態で用いられる混合触媒は、以下に示すようなルイス酸系触媒とルイス塩基系触媒とを含むものである。本実施形態のポリマー生成物は、これらのルイス酸系触媒とルイス塩基系触媒とを含む。
本実施形態においてルイス酸系触媒とは、炭酸エステルを有する開環重合性モノマーの開環重合反応の速度を速めるものであって、ルイス酸であるものを意味する。ルイス酸系触媒としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属錯体が挙げられる。ルイス酸系触媒の具体例としては、オクチル酸錫、ジブチル酸錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ、アルミニウムアセチルアセトナート、酢酸アルミニウム、三塩化アルミニウム、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、四塩化チタン、ジルコニウムイソプロオイキシド、三酸化アンチモン、三フッ化ホウ素、臭化鉄(III)、塩化鉄(III)、三塩化ホウ素、などが挙げられる。
本実施形態においてルイス塩基系触媒とは、炭酸エステルを有する開環重合性モノマーの開環重合反応の速度を速めるものであって、ルイス塩基であるものを意味する。ルイス塩基系触媒としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、開環重合性モノマーの開環重合反応に寄与し、開環重合性モノマーとの活性中間体を形成した後、アルコールとの反応で脱離、再生するものが好ましい。
これらの中でも、立体障害による影響が少なく求核性が高い、或いは、減圧除去可能な沸点を有するという理由により、DABCO、DBU、DPG、TBD、DMAP、PPY、ITBUが好ましい。
また、圧縮性流体中でルイス酸系触媒とルイス塩基系触媒の混合触媒を使用することで各々の触媒活性が相殺されることなく反応平衡のバランスが調整され、有機溶剤を使用せず、脱炭酸と環状オリゴマーの発生が抑えられる。
開始剤は、開環重合により得られるポリマー生成物の分子量を制御するために用いられる。
開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール系であれば、脂肪族アルコールのモノ、ジ、又は多価アルコールのいずれでもよく、また飽和、不飽和のいずれであっても構わない。
開始剤としては、例えば、モノアルコール、多価アルコール、乳酸エステルなどが挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、などが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジアルコール;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、トリエタノールアミン、などが挙げられる。乳酸エステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
開環重合に際しては、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤の例としては、界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤等が挙げられる。界面活性剤としては、圧縮性流体に溶融し、かつ圧縮性流体と前記開環重合性モノマーの双方に親和性を有するものが好適に用いられる。このような界面活性剤を使用することで、重合反応を均一に進めることができ、分子量分布の狭い生成物が得られるとともに、粒子状のポリマー生成物を得やすくなる等の効果を期待できる。界面活性剤を用いる場合、圧縮性流体に加えても、開環重合性モノマーに加えてもよい。例えば、圧縮性流体として二酸化炭素を用いた場合には、親二酸化炭素基と親モノマー基を分子内に持つ界面活性剤が使用される。このような界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
次に、図1及び図2を用いて本実施形態においてポリマーの製造に用いられる圧縮性流体について説明する。図1は、温度と圧力に対する物質の状態を示す相図である。図2は、圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。本実施形態において、「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、及び(3)のいずれかの領域に存在するときの状態を意味する。
続いて、図3および図4を用いて、本実施形態においてポリマーの製造に用いられる重合反応装置について説明する。図3および図4は、重合工程の一例を示す系統図である。まず、図3を用いて重合反応装置100について説明する。重合反応装置100は、開環重合性モノマーなどの原材料および圧縮性流体を供給する供給ユニット100aと、供給ユニット100aによって供給された開環重合性モノマーを重合させるポリマー製造装置の一例としての重合反応装置本体100bとを有する。供給ユニット100aは、タンク(1,3,5,7,11)と、計量フィーダー(2,4)と、計量ポンプ(6,8,12)と、を有する。重合反応装置本体100bは、重合反応装置本体100bの一端部に設けられた接触部9と、送液ポンプ10と、反応部13と、計量ポンプ14と、重合反応装置本体100bの他端部に設けられた押出口金15とを有する。
押出手段とは、重合反応装置本体100bで得られたポリマー生成物Pを外部に押し出す手段であり、例えば、ギアポンプ、単軸押出機、多軸押出機などが挙げられる。上記の押出手段を用いることにより、重合反応装置本体100bからポリマー生成物を取り出すことができる。
また、重合反応において有機溶媒をエントレーナーとして使用することもでき、それにより反応時間を短縮できる場合もある。
続いて、重合反応装置100を用いたポリマー生成物の連続式の製造方法について説明する。本実施形態では、開環重合性モノマーと、圧縮性流体と、必要に応じてその他の成分と、を連続的に供給し、接触させて、開環重合性モノマーを連続的に開環重合させてポリマー生成物を連続的に得る。この場合、まず、各計量フィーダー(2,4)及び計量ポンプ6、計量ポンプ8を作動させ、各タンク(1,3,5,7)内の開環重合性モノマー、開始剤、添加剤、圧縮性流体を連続的に接触部9に供給する。混合触媒を接触部9に供給する場合、開環重合性モノマー、開始剤、添加剤、圧縮性流体とともに、混合触媒を供給しても良いし、タンクを増設して順次混合触媒を供給しても良い。また、触媒を混合する順番もルイス酸系触媒が先であっても、ルイス塩基系触媒が先であっても良い。なお、混合触媒を接触部9で添加(先添加)せず、反応部13で添加(後添加)しても良い。この場合、モノマーが完全に溶融した状態の均一相に添加されることで、モノマーと触媒の接触面積を増大させることができるという理由により、ポリマー転化率が向上するという効果が得られる。
上記の製造方法によって得られたポリマー生成物の諸物性について説明する。
<開環重合性モノマーの含有率>
本実施形態によると、ポリマー生成物における脂肪族ポリカーボネートの基質である開環重合性モノマー(炭酸エステルを有する開環重合性モノマー)の含有率は、500ppm以下であることがさらに好ましく、200ppmであることがより好ましい。なお、ポリマー生成物に含まれる炭酸エステルを有する開環重合性モノマーは、原材料としての未反応の開環重合性モノマーや、解重合反応により生じた開環重合性モノマー、すなわち残存モノマーを含む。開環重合性モノマーの含有率が500ppmより多い場合、ポリマー生成物の熱特性や耐久性が不十分となる場合がある。残存モノマーの含有率の測定方法としては、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
本実施形態において、オキシドユニットとは、ポリマー生成物に含まれるエーテル基を意味する。また、オキシドユニットの含有率とは、下記式によって表されるモル比を意味する。
オキシドユニット含有率(mol%)=脂肪族ポリカーボネートに含まれるエーテル基の数/(脂肪族ポリカーボネートに含まれるエーテル基の数+脂肪族ポリカーボネートに含まれるカーボネート基の数)
ポリマー生成物におけるオキシドユニットの含有率は、20mol%以下であり、好ましくは15mol%以下であり、より好ましくは10mol%以下であり、さらに好ましくは、5mol%以下である。オキシドユニットが、20%より大きいと、ガスバリア性やUV及び熱安定性が低下する場合がある。オキシドユニットの含有率の測定方法としては、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
本実施形態において、環状オリゴマーとは、比較的分子量の低い環状のポリカーボネートを意味する。なお、比較的分子量が低い環状のポリカーボネートとは、例えば、100個以下のモノマーが結合した環状ポリカーボネートを意味する。リビング重合によりポリカーボネートを製造した場合、アルカリ系の開始剤が生成ポリマー鎖中の分子内のカーボネート結合を攻撃する副反応が生じ、結果として環状オリゴマーが生成する。環状オリゴマーは、ポリカーボネートを着色させ、耐熱性、耐加水分解性等を低下させ、ポリカーボネートの分解やアウトガスの増加等、物性を低下させる場合がある。本実施形態の製造方法により、混合触媒および圧縮性流体の存在下、開環重合性モノマーを開環重合させることにより、環状オリゴマーの副生が抑えられる。
本実施形態のポリマー生成物は、ゲルパーエミエイションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が1,000以上であり、5,000以上が好ましく、10,000以上であることがより好ましい。重量平均分子量が、1,000未満であると、機械的強度が不十分となり、また、結晶化速度が遅くなり、成型に時間がかかってしまうことがある。重量平均分子量(Mw)の上限は、特に限定されないが、成型性の点で、例えば、1,000,000以下、好ましくは600,000以下とすることができる。ポリマー生成物における重量平均分子量の測定方法としては、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
ポリマー生成物の重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した分子量分布(Mw/Mn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0以上2.5以下が好ましく、1.2以上2.0以下がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が、2.5を超えると、低分子量成分が多くなり、ガスバリア性が低下する場合がある。分子量分布(Mw/Mn)の測定方法は特に限定されないが、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定することができる。
・装置:GPC−8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:クロロホルム
・流速:0.5mL/分
濃度0.5質量%の試料を1mL注入し、上記の条件で測定したポリマー生成物の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリマー生成物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出する。分子量分布はMwをMnで除した値である。
本発明のポリマー生成物は、上述したようにオキシドユニットが少なく、ガスバリア性に優れているため、例えば、粒子、フイルム、シート、成型品、繊維等に成形して、例えば、日用品、工業用資材、農業用品、衛生資材、医薬品、化粧品、電子写真用トナー、包装材料、電気機器材料、家電筐体、自動車材料等の用途に幅広く用いられる。
測定対象となるポリマー生成物1質量部に2−プロパノール2質量部を加え、超音波で30分間分散させた後、冷蔵庫(5℃)にて1日以上保存し、ポリマー生成物中の有機溶媒を抽出する。上澄み液をガスクロマトグラフィ(GC−14A,SHIMADZU)で分析し、ポリマー生成物中の有機溶媒および残留モノマーを定量することにより有機溶媒濃度を測定する。かかる分析時の測定条件は、以下の通りである。
装置 :島津GC−14A
カラム :CBP20−M 50−0.25
検出器 :FID
注入量 :1〜5μl
キャリアガス :He 2.5kg/cm2
水素流量 :0.6kg/cm2
空気流量 :0.5kg/cm2
チャートスピード:5mm/min
感度 :Range101×Atten20
カラム温度 :40℃
Injection Temp :150℃
続いて、上記の製造方法により製造されたポリマー生成物を成形して得られる粒子、フイルム、シート、成型品、繊維等の成形体について説明する。
上記の製造方法により得られるポリマー生成物を粒子に成形する方法としては、ポリマー生成物を従来公知の方法により粉砕する手法が挙げられる。粒子の粒径は、特に限定されないが、通常、1μm以上、50μm以下である。また、成形体の粒子が電子写真用トナーである場合、着色剤および疎水性微粒子がポリマー生成物中に混合された混合物を作製する。混合物は、結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子の他に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、離型剤、帯電制御剤などが挙げられる。添加物を混合する工程は、重合反応と同時でも良いし、重合反応後の後工程や、重合生成物を取り出した後に溶融混錬しながら添加しても良い。その他の粒子として、DDS(Drug Delivery System)などが挙げられる。
本実施形態において、フイルムとは、ポリマー生成物を薄い膜状に成形したものであって、厚みが250μm未満のものである。本実施形態において、フイルムは、上記の製造方法により得られたポリマー生成物を延伸成形して製造される。
本実施形態において、シートとは、ポリマー生成物を薄い膜状に成形したものであって、厚みが250μm以上のものである。本実施形態において、シートは、上記の製造方法により得られたポリマー生成物に、熱可塑性樹脂に対して用いられる従来公知のシートの製造方法を適用して製造される。このような方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が挙げられる。シートに加工する際の加工条件は、ポリマー生成物の種類や、装置等に基づいて、適宜決定される。例えば、ポリ乳酸をTダイ法で加工する場合、温度は、Tダイを出口に取り付けた押出成型機によって、好ましくは150℃以上、250℃以下に加熱したポリマー生成物をTダイから押し出すことにより、シート加工することができる。
上記の製造方法によって得られるポリマー生成物はモノフィラメント、マルチフィラメント等の繊維にも応用可能である。なお、本実施形態において、繊維の概念には、モノフィラメントのような単体の繊維のみでなく、織布や不織布のような繊維によって構成される中間製品や、マスクのような織布や不織布を有する製品が含まれる。
続いて、第2の実施形態について第1の実施形態と異なる点を説明する。第1の実施形態の製造方法では、残存モノマーがほとんどなく定量的に反応が進む。この特性を利用して、第2の実施形態の第1の方法では、第1の実施形態の製造方法で製造されたポリマー生成物を用い、さらに1種以上の開環重合性モノマーを加えて重合することにより、複合体としてのポリマー生成物を合成する。また、第2の実施形態の第2の方法では、第1の実施形態の製造方法で製造されたポリマー生成物を含む2種以上のポリマーを、圧縮性流体の存在下で連続的に混合させることにより、複合体を形成する。なお、本実施形態において、「複合体」とは、モノマーを複数の系列に分けて重合して得られる2種以上のポリマーセグメントを有する共重合体又はモノマーを複数の系列に分けて重合して得られる2種以上のポリマー生成物の混合物を意味する。
以下、複合体の一例として、ラクチドとの共重合体作成方法を示す。
第1の方法によると、第1の実施形態と同様の重合工程(第1の重合工程)により、第1の開環重合性モノマーを開環重合させ、第1のポリマー生成物を得る。得られた第1のポリマー生成物と、第2の開環重合性モノマーとを連続的に接触させて、第1のポリマー生成物及び第2の開環重合性モノマーを重合させる(第2の重合工程)。なお、第1の方法によると、更に必要に応じてその他の工程を含んでいても良い。
なお、図5(B)の重合反応装置202を直列に繰り返すことにより、3種以上のセグメントを有する複合体生成物PPを得ることもできる。
第2の方法であるポリマー生成物の製造方法は、2種以上のポリマー生成物を、圧縮性流体の存在下、連続的に混合させる混合工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。2種以上のポリマー生成物としては、第1の開環重合性モノマーを開環重合させて得られた第1のポリマー生成物と、第2の開環重合性モノマーを開環重合させて得られた第2のポリマー生成物とが挙げられる。
続いて、第3の実施形態について、第1の実施形態と異なる点を説明する。第3の実施形態では、バッチ式の工程によりポリマー生成物を製造する。まず、図7を用いて、バッチ式の工程で用いられる重合反応装置400について説明する。図7は、バッチ式の重合工程を示す系統図である。図7の系統図において、重合反応装置400は、タンク121と、計量ポンプ122と、添加ポット125と、反応容器127と、バルブ(123,124,126,128,129)とを有している。上記の各装置は耐圧性の配管130によって図7に示したように接続されている。また、配管130には、継手(130a,130b)が設けられている。
図7に示すバッチ式の重合反応装置400を用いて、エチレンカーボネートの開環重合を行った。重合反応装置400の構成を以下に示す。
・タンク121 :炭酸ガスボンベ
・添加ポット125:1/4インチのSUS316の配管をバルブ(124,129)に挟んで添加ポットとして使用した。
・反応容器127 :100mLのSUS316製の耐圧容器を用いた。予め開環重合性モノマーとして液体の状態のエチレンカーボネート(製造会社名:東京化成工業、融点:37℃)と、開始剤としてのラウリルアルコールとの混合物(モル比99/1)108gと、を充填した。
また、実施例1−1では、開環重合性モノマーに対して1mol%のオクチル酸錫とDMAPの混合物(質量比50/50)を反応容器127に充填した。
混合比〔原材料/(圧縮性流体+原材料)〕は、下式により算出した。
超臨界二酸化炭素の空間容積:100mL−11g/1.1(原材料の比重)=90ml
超臨界二酸化炭素の質量:90mLl×0.213(170℃、15MPaでの二酸化炭素の比重)=19.17
混合比:11g/(11g+19.17g)=0.36
なお、上記の原材料の質量は、原材料濃度が高い条件では54g、原材料濃度が低い条件では11gとする。
重合密度は、参考文献に記載された文献値を使用した。
・参考文献
R. Span and W. Wagner
"A New Equation of State for Carbon Dioxide covering the Fluid Region from the Triple Point Temperature to 1100 K at Pressures up to 800 MPa"
J. Phys. Chem. Ref. Data 25, pp. 1509-1596 (1996)
得られたポリマー生成物の残存開環重合性モノマーの含有率は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準、第3版改訂版、2004年6月追補、第3部、衛生試験法、P13」記載の測定方法に基づいて求めた。具体的には、ポリマー生成物をジクロロメタンに均一に溶解し、アセトン/シクロヘキサン混合溶液を加えてポリマー生成物を再沈させた上澄み液を、水素炎検出器(FID)付ガスクロマトグラフ(GC)に供し、開環重合性モノマー(炭酸エステルを有する残存開環重合性モノマー)を分離し、内部標準法により定量することによりポリマー生成物中の開環重合性モノマーの含有率を測定した。なお、GCの測定は以下の条件で行った。各表中の「ppm」は質量分率を示す。
・カラム :キャピラリーカラム(J&W社製、DB−17MS、長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)
・内部標準 :2,6−ジメチル−γピロン
・カラム流量:1.8mL/分
・カラム温度:50℃で1分間保持。25℃/分間で定速昇温して320℃で5分間保持。
・検出器 :水素炎イオン化法(FID)
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:クロロホルム
・流速:1.0mL/分
濃度0.5質量%の試料を1mL注入し、上記の条件で測定したポリマー生成物の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して、ポリマー生成物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出した。分子量分布はMwをMnで除した値である。
開環重合性モノマーを重合する際の脱炭酸により副生するオキシドユニットの含有率は、核磁気共鳴(NMR)の結果を用いて算出した。NMRの測定条件を示す。
・装置:日本電子データム株式会社
・溶媒:重クロロホルム
・測定対象:プロトン
オキシドユニット含有率は、NMRによるスペクトル解析により、得られたポリマー生成物に含まれるカーボネートユニット(カーボネート基)およびオキシドユニット(エーテル基)の和に対するオキシドユニットの割合(モル比)に基づいて、算出される。
環状オリゴマー量の測定方法は特に限定はされないが、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定することができる。
・装置:GPC−8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:クロロホルム
・流速:0.5mL/分
濃度0.5質量%の試料を1mL注入し、上記の条件で測定したポリマー生成物の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して環状オリゴマー量を測定することができる。
フイルム等のサンプルについて、ASTM−D1434に準拠して酸素透過率を測定し、これをガスバリア性の評価値とした。すなわち、この値が低いほどガスバリア性に優れると判断できる。具体的には、酸素透過率測定装置(MOCON社製OX−TRAN2/21ML)を使用して、温度23℃で、湿度30%、湿度65%、湿度90%とした各恒温恒湿条件下にて、酸素透過率を測定した。
ガスバリア特性データの測定単位は、Barrer単位である。得られたBarrer単位値は、分子、即ち秒単位の測定時間にわたって試験フイルムを通過したガスの標準温度及び圧力での立法センチメートル数に、センチメートル単位のフイルムの厚さを乗じた積を分子として、ガスに晒されたフイルムの平方センチメートル単位の面積、時間、フイルムを横切る水銀のセンチメートル単位の分圧差を分母として掛けて得られた商に1010を掛けた値に等しい。
(評価基準)
○:0.001以上0.05未満
△:0.05以上0.1未満
×:0.1以上
JIS K7121に従い、示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製 Q2000)によって測定し、得られたDSC曲線から融点を求めた。
短波UV光に、光源からの距離を(通常は1インチ以内に)設定して一定の時間(通常は10分間)露光させる。
このときのポリマー試料の色を記録し、黄色度指数の変化(ΔYI)を計算する。
(評価基準)
○ :5未満
△ :5以上10未満
× :10以上
モノマー種、触媒種、触媒混合種比、開始剤量、重合圧力、重合反応温度、重合密度、反応時間、及び混合比〔原材料/(圧縮性流体+原材料)〕、触媒の添加順の少なくともいずれかを表1−1または表1−2に記載のとおり変えた以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜実施例1−9,比較例1−1のポリマー生成物を作製した。なお、比較例1−1では1種の触媒を用いてポリマーを製造した。また、触媒を後添加する場合には、添加ポット125に予め触媒を充填しておき、反応容器127内の開環重合性モノマー及び開始剤を混合した後に、添加ポット125の触媒を混合物に供給するようにした。また、実施例1−5,1−6および1−9については、反応容器127に開環重合性モノマーに対して1mol%のトルエンをエントレーナーとして加え、重合反応を行った。圧力は、ポンプの流量を変えることにより制御した。
得られた各ポリマー生成物について、実施例1−1と同様の操作を施すことによりペレットを得た。さらに、実施例1−1と同様の評価を行った。結果を表1−1および表1−2に示す。
上記の各本実施例によると、オキシドユニットの含有を少なくすることで、ガスバリア性に優れ、UV及び熱安定性の低下を抑制したポリマー生成物が得られる。
〔シートの製造〕
モノマー種、触媒種、触媒混合種比、開始剤量、重合圧力、重合反応温度、重合密度、反応時間、及び混合比〔原材料/(圧縮性流体+原材料)〕、触媒の添加順を表2に記載の条件として、実施例1−1と同様の操作によりペレットを作成した。なお、比較例1−2では1種の触媒を用いてポリマーを製造した。また、触媒を後添加する場合には、添加ポット125に予め触媒を充填しておき、反応容器127内の開環重合性モノマー及び開始剤を混合した後に、添加ポット125の触媒を混合物に供給するようにした。
得られたペレットをそれぞれ用いて、幅1000mmのTダイを装着したスクリュー径90mmの単軸押出機(東芝機械製SE−90CV)を使って、押出温度215℃にて溶融押出し、40℃に設定されたキャストロールに密着させて、厚み350μmのシートを得た。
シートの製造例で得られたそれぞれのシートを材料とし、熱板圧空成型機(株式会社浅
野研究所社製FKH形小型熱板加熱式圧空成形機)とアルミ製の金型とを用いて、縦250mm、横200mm、深さ30mmの箱形の容器を成型した。成型時の加熱熱板温度(加熱軟化温度)は120℃、金型表面温度は117℃であり、賦型に必要な加熱時間は10秒、冷却時間5秒、ショットサイクルは15秒とした。成型した半製品を、トムソン刃を使用した抜刃で打ち抜き、シート成型品を得た。
得られたシート、シート成型品を以下の基準で評価した。また、得られた成形品を用いて、実施例1−1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、同じポリマー生成物を用いてもペレットと成形品とで物性が異なるのは、成形時の熱および圧力の影響によると考えられる。
(シートの評価)
縦1000mm、横1000mmのサンプルを目視で観察し、フィッシュアイ状の異物があるかを確認し、評価した。
○:フィッシュアイ状の異物がない。
△:フィッシュアイ状の異物が1〜2個ある。
×:フィッシュアイ状の異物が3個以上ある。
(シート成型品の評価)
シート成型品サンプルを100個製造し、その場合の成形性、外観から次のように評価した。
○:成形性、外観に問題なし。
△:成形性、外観に若干問題あり:(1〜9個のサンプルで成型の際または打ち抜きの際の少なくとも一方でワレが発生、目視でやや濁る)
×:成形性、外観に明らかに問題あり:(10個以上の成型の際または打ち抜きの際の少なくとも一方でワレが発生、目視で明らかに濁る)
モノマー種、触媒種、触媒混合種比、開始剤量、重合圧力、重合反応温度、重合密度、反応時間、及び混合比〔原材料/(圧縮性流体+原材料)〕、触媒の添加順を表3に記載の条件として、実施例1−1と同様の操作によりポリマー生成物を得た。なお、比較例1−3では1種の触媒を用いてポリマーを製造した。また、触媒を後添加する場合には、添加ポット125に予め触媒を充填しておき、反応容器127内の開環重合性モノマー及び開始剤を混合した後に、添加ポット125の触媒を混合物に供給するようにした。
得られたポリマー生成物について、公知の簡易型溶融紡糸機(東洋精機社製キャピログラフ1D PMD−C)にて紡糸し、温風式延伸機で延伸してモノフィラメントを得た。得られた繊維を用いて、実施例1−1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
モノマー種、触媒種、触媒混合種比、開始剤量、重合圧力、重合反応温度、重合密度、反応時間、及び混合比〔原材料/(圧縮性流体+原材料)〕、触媒の添加順を表4に記載の条件として、実施例1−1と同様の操作によりポリマー生成物を得た。なお、比較例1−4では1種の触媒を用いてポリマーを製造した。また、触媒を後添加する場合には、添加ポット125に予め触媒を充填しておき、反応容器127内の開環重合性モノマー及び開始剤を混合した後に、添加ポット125の触媒を混合物に供給するようにした。
得られたポリマー生成物について、汎用のインフレ成形機で成形温度250℃、厚み25μmとなるようフイルム成形を行った。得られた延伸フイルムについて、ポリマー生成物としての物性値を上記の方法で求めた。結果を表4に示す。
実施例5−1では、図3の連続式の重合反応装置100を使用した。接触部9の混合装置は、互いに噛み合うスクリュウを取り付けた二軸攪拌装置を有するシリンダー内径(d)30mmのもので、2つの回転軸は同方向回転で、速度は30rpmである。反応部13の反応容器は二軸混練機(東芝製TME−18)である。
モノマー種、触媒種、触媒混合種比、開始剤量、重合圧力、重合反応温度、重合密度、反応時間、及び混合比〔原材料/(圧縮性流体+原材料)〕、触媒の添加順を表5に記載の条件として、実施例5−1と同様の操作により粒子を得た。なお、比較例2−1では1種の触媒を用いてポリマーを製造した。また、触媒を後添加する場合には、ギヤポンプ(計量フィーダ12)を作動させて、タンク11内のオクチル酸錫とDMAPの混合物を、エチレンカーボネートに対して0.5mol%となるように、導入口13bへ供給する。得られた粒子を用いて、実施例1−1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
図8に示された重合反応装置500を用いて、ポリエチレンカーボネート−ポリ乳酸共重合体を製造した。図8は、バッチ式の重合工程の一例を示す系統図である。重合反応装置500は、計量ポンプ222と、添加ポット225と、バルブ(223,224,226,229)と、継手(230a,230b)が設けられた配管230を有する点を除き、図7の重合反応装置400と同様の構成である。なお、計量ポンプ222、添加ポット225、バルブ(223,224,226,229)、配管230は、それぞれ、計量ポンプ122、添加ポット125、バルブ(123,124,126,129)、配管130と同様の装置、機構、又は、手段によって構成されている。
・タンク121 :炭酸ガスボンベ
・添加ポット125:1/4インチのSUS316の配管をバルブ(124,129)に挟んで添加ポットとして使用した。
・添加ポット225:1/4インチのSUS316の配管をバルブ(224,229)に挟んで添加ポットとして使用した。また、予め原材料のうち融点の高い開環重合性モノマー(ラクチド)と、開始剤(ラウリルアルコール)との混合物(モル比99/1)54gを充填した。
・反応容器127 :100mLのSUS316製の耐圧容器を用いた。予め原材料のうち融点の低い開環重合性モノマー(エチレンカーボネート)と、開始剤としてのラウリルアルコールとの混合物(モル比99/1)54gと、を充填した。
また、実施例6−1では、原材料の開環重合性モノマーに対して0.5mol%のオクチル酸錫とDMAPの混合物(50/50)を予め添加ポット125に充填した。
モノマー種、触媒種、触媒混合種比、開始剤量、重合圧力、重合反応温度、重合密度、反応時間、及び混合比〔原材料/(圧縮性流体+原材料)〕、触媒の添加順の少なくともいずれかを表6−1または表6−2に記載のとおり変えた以外は、実施例6−1と同様にして、実施例6−2〜実施例6−9のポリマー生成物を作製した。触媒を前添加する場合には、触媒を反応容器127に予め触媒を充填した。また、実施例6−5,6−6および6−9については、反応容器127に開環重合性モノマーに対して1mol%のトルエンをエントレーナーとして加え、重合反応を行った。圧力は、ポンプの流量を変えることにより制御した。
得られた各ポリマー生成物について、実施例6−1と同様の操作を施すことにより粒子を得た。さらに、実施例6−1と同様の評価を行った。結果を表6−1および表6−2に示す。
2 計量フィーダー
3 タンク
4 計量フィーダー
5 タンク
6 計量ポンプ
7 タンク
8 計量ポンプ
9 混合装置
10 送液ポンプ
11 タンク
12 計量ポンプ
13 反応容器
14 計量ポンプ
15 押出口金
21 タンク
22 ポンプ
23 バルブ
24 バルブ
25 添加ポット
26 バルブ
27 圧力容器
28 バルブ
100 重合反応装置
200 重合反応装置
Claims (13)
- 脂肪族ポリカーボネートを含有し、
前記脂肪族ポリカーボネートにおけるオキシドユニット含有率が20mol%以下であり、
前記脂肪族ポリカーボネートの基質であるモノマーの含有率が500ppm以下であり、
前記脂肪族ポリカーボネートは、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、又はポリトリメチレンカーボネートであることを特徴とするポリマー生成物。 - 環状オリゴマーの含有率が10,000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー生成物。
- 前記モノマーは、五員環の環状カーボネートを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー生成物。
- ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が1000以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリマー生成物。
- 前記重量平均分子量を数平均分子量で除した値が、1.2以上2.5以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリマー生成物。
- ルイス酸系触媒とルイス塩基系触媒とを含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマー生成物。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー生成物を含有することを特徴とするフイルム。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー生成物を含有することを特徴とする成型品。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー生成物を含有することを特徴とするシート。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー生成物を含有することを特徴とする粒子。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー生成物を含有することを特徴とする繊維。
- 炭酸エステルを含有する開環重合性モノマーと、圧縮性流体と、を接触させて、
ルイス酸系触媒およびルイス塩基系触媒の存在下、前記炭酸エステルを含有する開環重合性モノマーを開環重合し、
前記炭酸エステルは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、又はトリメチレンカーボネート、であり、
前記ルイス酸系触媒は、オクチル酸スズであり、
前記ルイス塩基系触媒は、DMAP、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、又はDBUであることを特徴とするポリマーの製造方法。 - 前記圧縮性流体は、二酸化炭素を含有することを特徴とする請求項12に記載のポリマーの製造方法。
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