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JP6059167B2 - 正孔輸送層形成用組成物及び太陽電池 - Google Patents

正孔輸送層形成用組成物及び太陽電池 Download PDF

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JP6059167B2 JP2014052498A JP2014052498A JP6059167B2 JP 6059167 B2 JP6059167 B2 JP 6059167B2 JP 2014052498 A JP2014052498 A JP 2014052498A JP 2014052498 A JP2014052498 A JP 2014052498A JP 6059167 B2 JP6059167 B2 JP 6059167B2
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Description

本発明は、太陽電池の正孔輸送層形成用組成物及びこの正孔輸送層形成用組成物を用いた太陽電池に関する。
ヨウ化銅等のp型半導体と有機塩(イオン性液体、常温溶融塩)とを用いた全固体型色素増感型太陽電池(以下、sDSSCともいう。)では、p型半導体結晶を微細化して、二酸化チタン等の多孔質n型半導体の細孔に充填することが必要である。イオン性液体としてチオシアン酸塩を用いたとき、チオシアン酸イオンが結晶成長抑制剤として機能し、ヨウ化銅の結晶が微細化されて二酸化チタン細孔内に充填され、良好な変換効率を示すsDSSCが得られることが報告されている。
高性能のsDSSCを得るには、ヨウ化銅結晶等のp型半導体微粒子表面の化学修飾が重要な要素の1つと考えられる。また、sDSSC用途に限らず、固体正孔輸送層を有する太陽電池において、p型半導体微粒子の表面を化学修飾することで、p型半導体微粒子の機能を向上させ又は拡大することができると期待される。チオシアン酸イオンを用いてヨウ化銅等のp型半導体の微粒子を得る従来の方法では、p型半導体微粒子の表面にチオシアン酸イオンが結合する。チオシアン酸イオンは化学修飾を行いうる官能基としてシアノ基しか有しないため、上記従来法ではp型半導体微粒子の表面に多様な化学修飾を施すことは難しい。
有機塩(イオン性液体)は、カチオンとアニオンとを自由に選択してイオン伝導性、粘度等を自在に変化させることができる。チオシアン酸イオン以外のアニオンを有する有機塩を選択し、良好な変換効率を示すsDSSCが得られれば、アニオンとしてチオシアン酸イオンを有する有機塩を用いたときにp型半導体微粒子表面の多様な化学修飾ができないという上記の問題は解決する。
しかし、特許文献1では、イオン性液体のカチオンを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムに固定し、イオン性液体のアニオンの種類を変えて、全固体型色素増感型太陽電池を得たところ、アニオンとしてチオシアン酸イオンを用いた場合で変換効率が高く、他のアニオンを用いた場合の変換効率は、チオシアン酸イオンを用いた場合の半分以下であった。
特開2001−230434号公報
本発明者らが検討したところ、チオシアン酸イオン以外のアニオンを有する有機塩を用いた場合には、p型半導体の結晶化が起きていないことが判明した。
本発明は、チオシアン酸イオン以外のアニオンを有する有機塩(イオン性液体)を用いた場合であっても、p型半導体の結晶化及び微細化を促進し、かつ、p型半導体微粒子表面の化学修飾を可能とする正孔輸送層形成用組成物、及びそれを用いた太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、p型半導体に強く結合し、かつ、化学修飾が可能な官能基を有する含硫黄化合物を用いることにより、チオシアン酸イオン以外のアニオンを有する有機塩を用いた場合でも、p型半導体の結晶化が促進され、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、アニオンとしてチオシアン酸イオンを有する有機塩を用いた場合でも、上記の含硫黄化合物がp型半導体に結合し、p型半導体微粒子の表面の多様な化学修飾が可能となることがわかった。
本発明の第一の態様は、p型半導体と、有機塩と、プロトン又はカチオンの解離によりチオラートアニオンを生成する化合物及びジスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含硫黄化合物(但し、チオシアン酸塩を除く。)からなり、p型半導体の結晶成長を制御する結晶成長制御剤と、を含有する、太陽電池の正孔輸送層形成用組成物である。
本発明の第二の態様は、導電性基板と対極層との間に、光電変換層と、上記正孔輸送層形成用組成物から形成された正孔輸送層とを備える太陽電池である。
本発明の第三の態様は、導電性基板と、上記導電性基板上に設けられ、空孔を有する多孔質n型半導体及び上記多孔質n型半導体に吸着した増感材料を含む光電変換層と、上記光電変換層上に設けられ、かつ、前記空孔の少なくとも一部を充填する正孔輸送層と、上記正孔輸送層上に設けられた対極層と、を備え、上記正孔輸送層が上記正孔輸送層形成用組成物から形成されたものである太陽電池である。
本発明によれば、チオシアン酸イオン以外のアニオンを有する有機塩を用いた場合であっても、p型半導体の結晶化を促進し、かつ、p型半導体微粒子表面の化学修飾を可能とする正孔輸送層形成用組成物、及びそれを用いた太陽電池を提供することができる。
本発明の第三の態様に係る太陽電池(増感型太陽電池)を示す縦断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<正孔輸送層形成用組成物>
本発明は、p型半導体と、有機塩と、プロトン又はカチオンの解離によりチオラートアニオンを生成する化合物及びジスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含硫黄化合物(但し、チオシアン酸塩を除く。)からなり、p型半導体の結晶成長を制御する結晶成長制御剤と、を含有する、太陽電池の正孔輸送層形成用組成物を提供する。本発明の正孔輸送層形成用組成物から太陽電池の正孔輸送層を形成することができる。
[p型半導体]
p型半導体としては、特に限定されないが、例えば、銅を含む化合物半導体が挙げられ、1価の銅を含む化合物半導体であることが好ましい。p型半導体の具体例としては、ヨウ化銅、チオシアン酸銅等が挙げられ、導電率、イオン化ポテンシャル、拡散長等の観点から、ヨウ化銅が好ましい。なお、ここでのヨウ化銅には、ヨウ素の一部を塩素又は臭素に任意の割合で置き換えた固溶体も含まれるものとする。p型半導体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[有機塩]
有機塩は、イオン性液体とも呼ばれる場合がある。有機塩としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
有機塩に含まれるカチオンとしては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−パーフルオロオクチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−1−パーフルオロオクチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−メチルイミダゾリウムイオン等のイミダゾリウムイオン;トリブチルメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、メチル−トリオクチルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオン;テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキサデシルホスホニウムイオン、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムイオン等のホスホニウムイオン;1−ブチルピリジニウムイオン、3−メチル−1−プロピルピリジニウムイオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン等のピリジニウムイオン;1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムイオン等のピロリジニウムイオン;1−メチル−1−プロピルピペリジニウムイオン;トリエチルスルホニウムイオン等が挙げられる。これらの中でも、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオンが好ましい。
有機塩に含まれるアニオンとしては、例えば、ジシアナミドイオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、チオシアン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、テトラクロロアルミン酸イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、安息香酸イオン、トシル酸イオン、デカン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、オクチル硫酸イオン、硫酸水素イオン、2−(2−メトキシエトキシ)エチル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、パーフルオロブタンスルホン酸イオン、パーフルオロオクタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドイオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸イオン、ヘキサフルオロホスファートイオン、テトラクロロ鉄(III)酸イオン、テトラシアノボレートアニオン、[B(CF等が挙げられる。これらの中でも、臭化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、ジシアナミドイオン、ヘキサフルオロホスファートイオンが好ましく、臭化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、ジシアナミドイオンがより好ましい。
有機塩としては、例えば、1気圧における融点が200℃未満であるものが挙げられる。有機塩の具体例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾムクロリド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、トリブチルメチルアンモニウムジシアナミド、トリブチルメチルアンモニウムクロリド、トリブチルメチルアンモニウムヨージド、トリブチルメチルアンモニウムブロマイド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが挙げられる。
本発明の組成物において、有機塩の含有量は、特に限定されないが、例えば、p型半導体100質量部に対し1〜25質量部が好ましい。
[結晶成長制御剤]
本発明で用いる結晶成長制御剤は、プロトン又はカチオンの解離によりチオラートアニオン(−S)を生成する化合物及びジスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含硫黄化合物(但し、チオシアン酸塩を除く。)からなり、p型半導体の結晶成長を制御する。
チオシアン酸イオン以外のアニオンを有する有機塩を含むp型半導体溶液を、多孔質n型半導体を含む光電変換層に滴下し乾燥させた場合、p型半導体は有機塩に溶解した状態で、多孔質n型半導体の細孔内に残存すると考えられる。このとき、溶液中に結晶成長制御剤が存在していると、乾燥が進行していく過程で結晶成長制御剤のチオラートアニオンがp型半導体に配位して錯体を形成し、有機塩中でのp型半導体の溶解度が低下するため、p型半導体の結晶化が起こると考えられる。そして、上記のチオラートアニオンは、結晶化したp型半導体表面に配位し、p型半導体を取り囲むことにより、p型半導体表面では結晶成長が起こりにくくなって、結晶サイズの増大が抑制される。また、ジスルフィド化合物は、ジスルフィド結合の開裂により、チオラートアニオンを生じ、その結果、上記と同様にして、結晶サイズの増大が抑制される。また、結晶成長制御剤が有する官能基を適宜選択することにより、その官能基に応じた化学修飾を、p型半導体表面に配位した結晶成長制御剤を通じて、p型半導体表面に施すことができる。
アニオンとしてチオシアン酸イオンを有するイオン性液体を用いた場合でも、上記結晶成長制御剤から生成するチオラートアニオンはp型半導体に配位することができ、p型半導体微粒子の表面に多様な化学修飾を施すことができる。
含硫黄化合物は、プロトン又はカチオンの解離によりチオラートアニオンを生成する化合物及びジスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、かつ、チオシアン酸塩以外のものであれば、特に限定されない。含硫黄化合物のうち、プロトン又はカチオンの解離によりチオラートアニオンを生成する化合物としては、例えば、チオール化合物、ジチオカルボン酸化合物、ジチオカルバミン酸化合物、チオアミド化合物又はその互変異性体、チオ尿素化合物又はその互変異性体等が挙げられる。含硫黄化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
チオール化合物としては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
−SH (1)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい1価炭化水素基を表す。)
としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数6〜20、好ましくは6〜10、より好ましくは6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜20、好ましくは7〜10、より好ましくは7〜8のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20、好ましくは7〜10、より好ましくは7〜8のアルキルアリール基等が挙げられる。置換基としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は1個でも複数個でもよい。
チオール化合物の具体例としては、チオグリセロール、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、1,2−エタンジチオール、シクロヘキサンチオール、オクタンチオール等の脂肪族チオール化合物、チオフェノール、p−トルエンチオール、アミノベンゼンチオール等の芳香族チオール化合物等が挙げられる。
ジチオカルボン酸化合物としては、例えば、下記式(2−1)又は(2−2)で表されるものが挙げられる。
−CS−S (2−1)
(R2A−CS−S (2−2)
(式(2−1)中、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい1価炭化水素基又はアルコキシ基を表し、Xは、第一族元素のカチオン(例えば、H、Li、Na又はK)又は下記式(3)で表されるアンモニウムイオンを表す。式(2−2)中、(R2Aは、Nを有する1価有機基を表す。)
(3)
(式中、Rは、独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい1価炭化水素基を表す。但し、少なくとも1個のRは置換基を有していてもよい1価炭化水素基である。)
が置換基を有していてもよい1価炭化水素基である場合、Rとしては、例えば、Rについて例示した基が挙げられる。置換基の例及び数は上記のとおりである。Rがアルコキシ基の場合、炭素数1〜6のものが挙げられる。
が置換基を有していてもよい1価炭化水素基である場合、Rとしては、例えば、Rについて例示した基が挙げられる。置換基の例及び数は上記のとおりである。
(R2Aとしては、イミダゾリジニウム環含有1価炭化水素基、キノリニウム環含有1価炭化水素基、ピリジニウム環含有1価炭化水素基、ピペラジニウム基含有1価炭化水素基等、Nを有する複素環式基が挙げられる。
ジチオカルボン酸化合物の具体例としては、2−ジチオナフトエートと上記式(3)のアルキルアンモニウムイオンとの塩、2,6−ジフルオロベンゼンカルボジチオネートと上記式(3)のアルキルアンモニウムイオンとの塩、Nsc160482、Nsc273908、Nsc273909等、Rがアルコキシ基の化合物としては、エチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、アミルキサントゲン酸カリウムが挙げられる。
ジチオカルバミン酸化合物としては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
(R N−CS−Sm+ (4)
(式中、Rは、上記のとおりであり、Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。n及びmは価数を示しn=mである。Xm+は、価数mのカチオンを表す。)
式(4)におけるRとしては、置換基を有していてもよい1価炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよい1価炭化水素基は、上記と同様である。mが1の場合、Xm+(つまりX)は上記と同様のものが挙げられる。mが2以上の場合は任意の金属イオンを用いることができる。
ジチオカルバミン酸化合物の具体例としては、ジエチルジチオカルバミン酸と上記式(3)のアンモニウムイオンとの塩(特にジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム)、1−ピロリジンカルボジチオ酸と上記式(3)のアルキルアンモニウムイオンとの塩、ジベンジルジチオカルバミン酸と上記式(3)のアルキルアンモニウムイオンとの塩、ジメチルジチオカルバミン酸と上記式(3)のアルキルアンモニウムイオンとの塩、ジブチルジチオカルバミン酸と上記式(3)のアルキルアンモニウムイオンとの塩等が挙げられる。また、ジチオカルバミン酸化合物としては、1価、2価、又は3価の金属イオンとの塩を用いることもできる。例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸鉄、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルを用いることができる。
チオアミド化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
−CS−NHR (5)
(式中、Rは、上記のとおりであり、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
上記式(5)のチオアミド化合物は、脱プロトン化し、生じた脱プロトン化体は、以下に示すとおり、共鳴構造の1つがチオラートアニオンを有する。
Figure 0006059167
チオアミド化合物の具体例としては、チオアセトアミド、チオベンズアミド、チオイソニコチンアミド、2−ピペリジンチオン、2−ピロリジンチオン、N−フェニルプロパンチオアミド等が挙げられる。
チオアミド化合物の互変異性体としては、例えば、下記式(6)で表されるものが挙げられる。
−C(SH)=NR (6)
(式中、Rは、上記のとおりであり、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
チオ尿素化合物としては、例えば、下記式(7)で表されるものが挙げられる。
NH−CS−NHR (7)
(式中、Rは、上記のとおりであり、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
上記式(7)のチオ尿素化合物は、脱プロトン化し、生じた脱プロトン化体は、以下に示すとおり、共鳴構造の1つがチオラートアニオンを有する。
Figure 0006059167
チオ尿素化合物の具体例としては、チオ尿素、1,3−ジブチル−2−チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、1,3−ジエチル−2−チオ尿素、1,3−ジイソプロピル−2−チオ尿素、2−イミダゾリヂンチオン、1,3−ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジ(p−トリル)チオ尿素、2−チオウラシル、ジチオピリミジン等が挙げられる。
チオ尿素化合物の互変異性体としては、例えば、下記式(8)で表されるものが挙げられる。
NH−C(SH)=NR (8)
(式中、Rは、上記のとおりであり、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
ジスルフィド化合物としては、例えば、下記式(9)で表されるものが挙げられる。
−S−S−R (9)
(式中、Rは、上記のとおりであり、互いに同一でも異なっていてもよい。)
ジスルフィド化合物の具体例としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、シクロヘキシルジスルフィド、フェニルジスルフィド、ベンジルジスルフィド、p−トリルジスルフィド、p−ジクロロジフェニルスルフィド、ジ(3,4−ジクロロフェニル)ジスルフィド、2,2’−ジチオビス(5−クロロアニリン)、4,4’−ジチオピリジン、2,2’−ジチオピリジン、2,4−キシリルジスルフィド、2,3−キシリルジスルフィド、3,5−キシリルジスルフィド、2,4−キシリル2,6−キシリルジスルフィド、2,2’−ジチオサリチル酸、2,2’−ジチオビス(4−tert−ブチルフェノール)等が挙げられる。
本発明の組成物において、結晶成長制御剤の含有量は、p型半導体の結晶化及び微細化を促進することができる有効量であれば特に限定されないが、例えば、p型半導体100質量部に対し0.001〜15質量部が好ましい。
本発明の組成物は、通常、有機溶媒を含んだ状態で使用される。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、ピリジン等の窒素含有溶媒、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、ジ−n−プロピルスルフィド等のスルフィド系溶媒が挙げられ、アセトニトリル等のニトリル系溶媒が好ましい。有機溶媒を含む本発明の組成物で、有機塩の濃度は、好ましくは0.5〜20mM、より好ましくは1〜15mMであり、結晶成長制御剤の濃度は、好ましくは0.5〜10mM、より好ましくは0.7〜7mMである。
本発明の組成物は、正孔輸送層の電気特性を向上させる等の目的で他の成分を加えてもよい。例えば、電気特性としてVoc向上のため、t−ブチルピリジン、ピリジン、ポリビニルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等のアミン類;N−メチルベンズイミダゾール、N−ブチルベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の窒素含有極性化合物を添加してもよい。また、TiO等のn型半導体の伝導帯を下げるため(Jsc向上のため)、リチウムイオンの塩やナトリウムイオンの塩(ヨウ化リチウム、(イソ)チオシアン酸リチウム、(イソ)チオシアン酸ナトリウム等)、又はグアニジウムイオンの塩(ヨウ化グアニジン、グアニジンチオシアネート、N−メチルグアニジンチオシアネート、)等を添加してもよい。また、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸等のコール酸類を後述の色素の共吸着剤として添加してもよい。
<太陽電池>
本発明の第二の態様に係る太陽電池は、導電性基板と対極層との間に、光電変換層と、上記正孔輸送層形成用組成物から形成された正孔輸送層とを備える太陽電池である。このような太陽電池としては、全固体型色素増感型太陽電池、量子ドット増感型太陽電池等の増感型太陽電池;有機薄膜型太陽電池;ペロブスカイト型太陽電池が挙げられる。これらのうち、まず、有機薄膜型太陽電池及びペロブスカイト型太陽電池について、説明する。増感型太陽電池については、後述する。
有機薄膜型太陽電池やペロブスカイト型太陽電池としては、例えば、導電性基板と、上記導電性基板上に設けられるn型半導体を含むn型半導体層と、n型半導体層上に設けられる光電変換層と、光電変換層上に設けられるp型半導体層(正孔輸送層)と、p型半導体層上に設けられる対極層と、を備え、p型半導体層は本発明の正孔輸送層形成用組成物から形成されているものが挙げられる。このような太陽電池は、更に、導電性基板の主面のうち、n型半導体層と接する主面とは反対側の主面上に支持基板を備え、対極層の主面のうち、p型半導体層と接する主面とは反対側の主面上に支持基板を備えていてもよい。これらのうち、導電性基板と対極層と支持基板については、後述する<増感型太陽電池>における説明と同様である。
[n型半導体層]
n型半導体層は、上記導電性基板上に設けられ、n型半導体からなる。n型半導体としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物半導体が挙げられる。n型半導体の具体例としては、TiO、SnO、ZnO、Nb、In等が挙げられる。電荷分離の効率性等の観点から、TiO又はZnOが好ましい。n型半導体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、全固体型色素増感型太陽電池、量子ドット増感型太陽電池等の増感型太陽電池の場合はn型半導体として多孔質n型半導体を用いることが好ましく、当該多孔質n型半導体が有する空孔の直径は、平均で5nm〜1000nm程度であり、好ましくは10nm〜500nm程度である。
n型半導体層の厚さは、10nm〜30μm程度が好ましい。
[光電変換層]
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する固体状の層である。ペロブスカイト型太陽電池の場合、光電変換層の材料としては、例えば、有機−無機ハイブリッド系のペロブスカイト(例えば、ハロゲン化鉛ペロブスカイト)が挙げられる。
光電変換層は、上記n型半導体層上に設けられ、公知の堆積法や溶液法(滴下法又は塗布法)等により形成することができる。光電変換層の厚さは、10〜2000nm程度が好ましい。
[p型半導体層]
p型半導体層は、上記光電変換層上に設けられ、かつ、本発明の正孔輸送層形成用組成物から形成されている。p型半導体は上記[p型半導体]の項で説明したとおりである。
p型半導体層の厚さは、100〜3000nm程度が好ましい。
p型半導体層は、例えば、本発明の正孔輸送層形成用組成物を用いて、公知の塗布法や堆積法により、上記光電変換層上に形成することができる。塗布法を用いる場合は正孔輸送層形成用組成物は、有機溶媒を含むことが好ましい。
<増感型太陽電池>
以下、本発明に係る増感型太陽電池について図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第三の態様に係る増感型太陽電池を示す縦断面図である。本発明の第三の態様に係る増感型太陽電池1は、導電性基板2と、上記導電性基板2上に設けられ、空孔を有する多孔質n型半導体3及び多孔質n型半導体3に吸着した増感材料4を含む光電変換層5と、光電変換層5上に設けられ、かつ、上記空孔の少なくとも一部を充填する正孔輸送層6と、正孔輸送層6上に設けられた対極層7と、を備え、正孔輸送層6は本発明の正孔輸送層形成用組成物から形成されている。増感型太陽電池1は、更に、導電性基板2の主面のうち、光電変換層5と接する主面とは反対側の主面上に支持基板8を備え、対極層7の主面のうち、正孔輸送層6と接する主面とは反対側の主面上に支持基板9を備える。
[導電性基板]
導電性基板2は、導電性材料からなる基板である。導電性材料としては、例えば、白金、金等の金属、炭素、及びフッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物が挙げられる。支持基板8としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板等が挙げられる。導電性基板2及び支持基板8はともに透明である。
導電性基板2の厚さは、100nm〜2μm程度が好ましい。また、支持基板8の厚さは、1μm〜3mm程度が好ましい。
導電性基板2は、導電性材料を平板状に成形することで得ることができる。例えば、支持基板8上に導電性材料を積層することにより、導電性基板2を得ることができる。
なお、例えば、導電性基板2のみで十分な強度が得られる場合には、支持基板8を設けなくてもよい。
[光電変換層]
光電変換層5は、上記導電性基板2上に設けられ、空孔を有する多孔質n型半導体3及び多孔質n型半導体3に吸着した増感材料4を含む。多孔質n型半導体3は上記[n型半導体層]の項で説明したとおりである。
光電変換層5の厚さは、100nm〜30μm程度が好ましい。
増感型太陽電池1が全固体型色素増感型太陽電池である場合、多孔質n型半導体3に吸着した増感材料4としては、色素が用いられる。増感材料4として用いられる色素は、色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、特に限定されない。色素としては、例えば、特開2001−230435号公報に記載の有機金属錯体色素、メチン色素、ポルフィリン系色素、及びフタロシアニン系色素、特開2003−218371号公報に記載のフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、アントラキノン顔料、アゾメチン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、ニトロソ系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料等の有機顔料、炭素系顔料、クロム酸塩系顔料、硫化物系顔料、酸化物系顔料、水酸化物系顔料、フェロシアン化物系顔料、ケイ酸塩系顔料、リン酸塩系顔料等の無機顔料、シアン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素、特開2011−204789号公報に記載の下記式で表される有機色素分子が挙げられる。色素は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0006059167
(式中、Rは、置換基を有していてもよい1価炭化水素基を表す。)
としては、例えば、Rについて例示した基が挙げられる。置換基の例及び数は上記のとおりである。
増感型太陽電池1が量子ドット増感型太陽電池である場合、多孔質n型半導体3に吸着した増感材料4としては、例えば、硫化アンチモン、硫化カドミウム、硫化鉛等の硫化物や、セレン化鉛、セレン化カドミウム等のセレン化物が挙げられる。量子ドット増感型太陽電池において、増感材料4は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
増感材料4について、増感型太陽電池1が全固体型色素増感型太陽電池又は量子ドット増感型太陽電池である場合を例にして説明したが、増感機能の異なる太陽電池においては、他の増感材料を適宜選択し、多孔質n型半導体3に吸着させる。
光電変換層5は、例えば、多孔質n型半導体3を導電性基板2上に塗布して乾燥及び焼成させた後、得られた積層体を増感材料4溶液に浸漬し、多孔質n型半導体3に増感材料4を吸着させ、次に、余分な増感材料4を除去することにより得ることができる。
[正孔輸送層]
正孔輸送層6は、上記光電変換層5上に設けられ、かつ、前記空孔の少なくとも一部を充填するものであり、本発明の正孔輸送層形成用組成物から形成されている。正孔輸送層に含まれるp型半導体は上記[p型半導体]の項で説明したとおりである。
正孔輸送層6の厚さは、100〜3000nm程度が好ましい。
正孔輸送層6は、例えば、有機溶媒を含む本発明の正孔輸送層形成用組成物の所定量を所定回数に分けて光電変換層5上に滴下し乾燥させる操作を繰り返すことにより、光電変換層5上に設けられ、かつ、多孔質n型半導体3の空孔の少なくとも一部を充填する。このときに形成されるp型半導体微粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)像から測定した粒子径が、好ましくは1〜3000nm、より好ましくは5〜100nmという非常に小さな値を有する。このp型半導体微粒子は、太陽電池における平坦なp型半導体層の形成、全固体型色素増感型太陽電池、量子ドット増感型太陽電池等の増感型太陽電池に用いられる多孔質n型半導体における空孔の充填等に好適に用いることができ、平坦膜を製膜する場合でも、結晶成長抑制剤の使用により、無添加の場合に比べて表面粗さの小さいヨウ化銅膜を形成できる。
[対極層]
対極層7は、正孔輸送層6上に設けられる。対極層7の材料としては、例えば、白金、金等の金属、炭素、及びフッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物が挙げられる。対極層7は透明であってもよい。
対極層7の厚さは、特に限定されないが、例えば、15μm程度が好ましい。
対極層7は、対極層7の材料が金属である場合には、それら金属を真空蒸着すること又は金属の箔を正孔輸送層6上に載せて貼り付けることにより形成させることができ、対極層7の材料が導電性金属酸化物である場合には、それら導電性金属酸化物をスパッタリング、MOCVD等で成膜すること、又は導電性金属酸化物を正孔輸送層6上に塗布して乾燥させることにより得ることができる。
支持基板9の材質及び厚さは支持基板8と同様である。支持基板9は透明であってもよい。なお、例えば、対極層7のみで十分な強度が得られる場合には、支持基板9を設けなくてもよい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ヨウ化銅塗布液の調製]
ヨウ化銅をアセトニトリルに0.15Mになるように溶解し、得られた溶液に、表1に示す濃度となるように有機塩及び結晶成長制御剤を添加し混合して、ヨウ化銅塗布液を得た。
Figure 0006059167
[ヨウ化銅充填多孔質二酸化チタン基板の作成:多孔質二酸化チタンへのヨウ化銅充填]
ガラス基板(厚さ:1100μm)とその一方の主面を覆うFTO層(厚さ:0.8μm)とからなる透明導電性支持体のFTO層上に二酸化チタンペーストをスクリーン印刷し、150℃で乾燥した後、電気炉で450℃に加熱して、透明導電性支持体とその上に設けられた多孔質二酸化チタン層とを備える多孔質二酸化チタン基板を作製した。この基板を、市販のインドリン系色素D149を0.4mMになるように溶解したアセトニトリル/tert−ブチルアルコール溶液に浸漬し、多孔質二酸化チタンに色素を吸着させた。この基板をアセトニトリルで洗浄して余分な色素を除去した後、この基板を乾燥させて、色素吸着多孔質二酸化チタン基板を得た。
この色素吸着二酸化チタン基板を、窒素雰囲気下、ホットプレートで60℃に加熱しながら、ヨウ化銅塗布液を10μL滴下し、乾燥後、次の10μLを滴下した。この工程を繰り返し、計200μLのヨウ化銅塗布液を多孔質二酸化チタン基板に滴下し乾燥させて、多孔質二酸化チタンの細孔にヨウ化銅を充填し、ヨウ化銅充填多孔質二酸化チタン基板を得た。多孔質二酸化チタン層上に積層されたヨウ化銅層の厚さは1μmであった。
[多孔質二酸化チタンへのヨウ化銅充填性の評価]
ヨウ化銅の充填性の評価は、実施例4又は比較例4若しくは5で得られたヨウ化銅充填多孔質二酸化チタン基板の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を画像処理することで行った。ヨウ化銅を充填した二酸化チタンを含む多孔質二酸化チタン層断面の二次電子像では、帯電状態の差により、ヨウ化銅部分は白色の像、二酸化チタン部分は黒色の像として得られた。二次電子像の白黒が元素組成の差に由来することは、反射電子像と比較することで確認した。得られた二次電子像(8000倍〜10000倍拡大の像)を画像処理ソフトImage J(National Institute of Health、アメリカ合衆国)により、白/黒二階調化して白色部及び黒色部のピクセル数を計測し、(白色部のピクセル数)/(白色部のピクセル数+黒色部のピクセル数)の比をヨウ化銅の充填率とした。なお、二階調化の設定は、上記ソフトの自動設定を用いて行った。
イオン性液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドを用い、結晶成長制御剤を用いなかった比較例4、及び、イオン性液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用い、結晶成長制御剤を用いなかった比較例5では、SEM像においてヨウ化銅結晶に対応する白色部は見られず、二酸化チタン細孔内は黒色に見える物質で充填されていた。これはヨウ化銅が溶解したイオン性液体と思われる。
イオン性液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドを用い、結晶成長制御剤として1,3−ジブチルチオ尿素を用いた実施例4では、SEM像において、黒色に見える色素吸着二酸化チタンの細孔内に、白色のヨウ化銅結晶が充填されているのが確認された。SEM像の画像解析からヨウ化銅の充填率を求めた。イオン性液体無添加かつ結晶成長促進剤無添加の条件化で求めた充填率を1とした場合に、実施例4における充填率は約2であった。また、従来、用いられているイオン性液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアナートを用い、結晶成長制御剤を用いなかった比較例1における充填率を1とした場合に、実施例4における充填率は約0.8であり、従来法に近いヨウ化銅の充填率が得られることがわかった。
[太陽電池性能の評価−1−]
上記で得たヨウ化銅充填多孔質二酸化チタン基板を作用極、白金箔(15μm)を対極とし、1 sun、AM 1.5の光照射下の電流−電圧特性をポテンショスタットで測定することにより、太陽電池の性能を評価した。結果を相対値で表2に示す(比較例1で得られた各測定値を1とした)。
Figure 0006059167
表2では、従来用いられているイオン性液体である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアナートを用い、結晶成長制御剤を用いなかった比較例1における開放起電力Voc、短絡電流Jsc、及び曲線因子FFをそれぞれ1として結果を示す。
イオン性液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドを用い、結晶成長制御剤を用いなかった比較例1では、光照射した際に、電圧印加に対して電流が直線的に増加した。よって、白金対極と多孔質二酸化チタン層の下のFTO層とが短絡し、太陽電池として機能しないことがわかった。
これに対して、実施例では、イオン性液体とともに結晶成長制御剤を用いたところ、得られた太陽電池は、暗下でダイオード特性を示し、光照射で光電流を発生することが確認された。Vocは従来法よりも高いか同等の値を示し、Jsc及びFFはともに対応する比較例より高い値を示し、特に実施例1〜2では従来法に近い値を示したことから、本発明に係る全固体型色素増感型太陽電池の有用性が示された。
[太陽電池性能の評価−2−]
上記実施例2のヨウ化銅塗布液において、表3のように濃度を変更した他は、[太陽電池性能の評価−1−]と同様にして、太陽電池の性能を評価し、表3の各ヨウ化銅塗布液について、効率Effを求めた。結果は、比較例1のEffに対する比(rel. Eff. vs. EMI−SCN)として表3に示す。
Figure 0006059167
表3の結果から、特に、実施例11及び14が従来法に近い値を示したことから、本発明に係る全固体型色素増感型太陽電池の有用性が示された。
また、表3の結果から、本発明に係る組成物中、含硫黄化合物からなる結晶成長制御剤の濃度が5mM以下であり、有機塩の濃度が結晶成長制御剤の濃度の5〜15倍程度である場合が好ましいことが分かる。
1 増感型太陽電池
2 導電性基板
3 多孔質n型半導体
4 増感材料
5 光電変換層
6 正孔輸送層
7 対極層
8 支持基板
9 支持基板

Claims (5)

  1. p型半導体と、有機塩と、プロトン又はカチオンの解離によりチオラートアニオンを生成する化合物及びジスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の含硫黄化合物(但し、チオシアン酸塩を除く。)からなり、p型半導体の結晶成長を制御する結晶成長制御剤と、を含有する、太陽電池の正孔輸送層形成用組成物(但し、以下の(1)及び(2)の正孔輸送層形成用組成物を除く;
    (1)Cuを含有した第1のジアルキルジチオカルバミン酸化合物、Znを含有した第2のジアルキルジチオカルバミン酸化合物、及びSnを含有した第3のジアルキルジチオカルバミン酸化合物を、脂肪族アミンと脂肪族チオールとの混合溶媒中で加熱処理し、作製した化合物半導体であるp型半導体及びp型半導体の結晶成長を制御する結晶成長制御剤を含有する太陽電池の正孔輸送層形成用組成物。
    (2)銅及び/又は銀と、インジウム、ガリウム、亜鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素と、硫黄、セレン及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とを含むIb−IIIB−VIB化合物又はIb−IIB−IVB−VIB化合物であるp型半導体及びp型半導体の結晶成長を制御する結晶成長制御剤を含有する太陽電池の正孔輸送層形成用組成物。)
  2. 前記含硫黄化合物が、チオール化合物、ジチオカルボン酸化合物、ジチオカルバミン酸化合物、チオアミド化合物又はその互変異性体、チオ尿素化合物又はその互変異性体、及びジスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の正孔輸送層形成用組成物。
  3. 前記有機塩が、臭化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、及びジシアナミドイオンからなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを有する請求項1又は2に記載の正孔輸送層形成用組成物。
  4. 導電性基板と対極層との間に、光電変換層と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正孔輸送層形成用組成物から形成された正孔輸送層とを備える太陽電池。
  5. 導電性基板と、
    前記導電性基板上に設けられ、空孔を有する多孔質n型半導体及び前記多孔質n型半導体に吸着した増感材料を含む光電変換層と、
    前記光電変換層上に設けられ、かつ、前記空孔の少なくとも一部を充填する正孔輸送層と、
    前記正孔輸送層上に設けられた対極層と、
    を備え、
    前記正孔輸送層が請求項1〜3のいずれか1項に記載の正孔輸送層形成用組成物から形成されたものである太陽電池。
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