JP6057946B2 - 防錆水性塗料組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、アルキルシリケートは高疎水性であり、水性樹脂であるアクリル樹脂との相溶性が悪く、水中では加水分解及びそれに続く縮合反応によってゲル化しやすいため、アクリル樹脂にアルキルシリケートを直接配しても安定した塗料とならない。
このため、特許文献1に記載の技術においては、製造に手間を要し、コストがかかる。
なお、上記水ガラスのシリカ固形分とは、水ガラスにおけるシリカ成分の固形分のことである。
ここで、「溶媒が実質的に水のみである」とは、防錆水性塗料組成物の溶媒としては水のみを用いて、溶媒として積極的に有機溶剤を使用しないことを意味しており、必ずしも防錆水性塗料組成物中に全く有機溶剤を含まないことを意味するものではない。例えば、添加剤に内部溶剤として有機溶剤が含まれる場合には、必然的に防錆水性塗料組成物中にも少量の有機溶剤が含まれ、また表面張力や蒸発速度を制御するために少量の有機溶剤を添加する場合もあるが、それらの場合をも排除する意味ではない。すなわち、溶媒以外の用途で有機溶剤が含まれる場合もあるが、溶媒として積極的に使用されるのは水のみであるという意味である。
このように水ガラスをアルキルシリケートと混合して作製した無機反応材中に所定の範囲内で配することにより、アルキルシリケートが有するシラノール基(正確には、アルキルシリケートのアルコキシシリル基の一部が水との接触で加水分解を受けて生じるシラノール基(−SiOH))に水ガラスのシリカ成分が結合し、アルキルシリケートのシラノール基同士による加水分解及びその後の縮合反応が抑制される。このため、アクリル樹脂にアルキルシリケートを直接混合すると通常は水の存在によってアルキルシリケートのシラノール基同士による加水分解及びその後の縮合反応が進行してゲル化するのが、本発明では、アルキルシリケートを水ガラスと所定の範囲内で混合し無機反応材とすることで安定した溶液状態となるため、防錆水性塗料組成物の安定性が確保される。そして、この防錆水性塗料組成物を被塗装物に塗布した際には、水分が蒸発することで、水ガラスとアルキルシリケートのシラノール基との結合が解かれて、アルキルシリケートの加水分解及びその後の縮合反応が進行し、アルキルシリケートとアクリル樹脂の反応によって耐食性・防錆性を発揮する塗膜が形成され、また、耐候性に優れたアクリル樹脂によって塗膜の耐候性が確保される。
したがって、無機反応材における水ガラスのシリカ固形分を無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%以上、90重量%以下の範囲内とすることにより、確実に防錆水性塗料組成物の安定性を確保でき、また、この防錆水性塗料組成物を塗布して形成される塗膜において、確実に良好な耐水性を確保してアルキルシリケートによる優れた耐食性・防錆性を発揮させることができる。
本発明の製造方法によれば、予め、アルキルシリケートに水ガラスが混合されるため、アルキルシリケートが有するシラノール基(正確には、アルキルシリケートのアルコキシシリル基の一部が水との接触で加水分解を受けて生じるシラノール基(−SiOH))に水ガラスのシリカ成分が結合する。このため、通常アルキルシリケートは、水が存在することでアルキルシリケートのシラノール基同士による加水分解及びその後の縮合反応が進行してゲル化するが、予め水ガラスと混合することで、アルキルシリケートのシラノール基に水ガラスのシリカ成分が結合してアルキルシリケートのゲル化が抑制され、安定した溶液状態の無機反応材となるため、防錆水性塗料組成物は安定した状態で維持される。
そして、この防錆水性塗料組成物を被塗装物に塗布した際には、水分が蒸発することで、水ガラスとアルキルシリケートのシラノール基との結合が解かれて、アルキルシリケートの加水分解及びその後の縮合反応が進行し、アルキルシリケートとアクリル樹脂の反応によって耐食性・防錆性を発揮する塗膜が形成され、また、耐候性に優れたアクリル樹脂によって塗膜の耐候性が確保される。
したがって、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分を無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%以上、90重量%以下の範囲内とすることにより、確実に防錆水性塗料組成物の安定性を確保でき、また、この防錆水性塗料組成物を塗布して形成される塗膜において、確実に良好な耐水性を確保してアルキルシリケートによる優れた耐食性・防錆性を発揮させることができる。
特に、本実施の形態においては、従来技術のようにアクリル樹脂及びアルキルシリケートを有機溶剤に溶解して乳化(エマルジョン)させることなく、後述するように、アルキルシリケートと水ガラスとを混合して作製した無機反応材をアクリル樹脂に配するのみで、その防錆水性塗料組成物は水ガラスによってアルキルシリケートの加水分解及びその後の縮合反応が抑制されるため、安定性が確保される。このため、乳化のための有機溶剤を必要とすることもなく、溶媒として積極的に使用されるのは水のみとすることができる。したがって、揮発性有機化合物(VOC)を発生させる恐れも殆どなくて排気設備等の作業環境を設ける必要もなく、環境に優しい防錆水性塗料組成物となる。
ここで、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分が無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケート固形分の総量に対し90重量%を越えると、無機反応材中に含まれる水ガラスのシリカ成分の比率が高すぎて、防錆水性塗料組成物に含有される水ガラスのシリカ含有量が多くなる。このため、このシリカ成分の高い親水性によって、防錆水性塗料組成物を塗布して形成される塗膜の耐水性が不足しがちになる。一方で、無機反応材中に含まれる水ガラスのシリカ固形分が75重量%未満となると、無機反応材中の水ガラスのシリカ比率が少なすぎ、アルキルシリケートのシラノール基に結合する水ガラスのシリカ成分量が不十分で、水ガラスのシリカ成分が結合されないアルキルシリケートにおいて加水分解及びその後の縮合反応が進んでゲル化し、防錆水性塗料組成物の安定性が悪くなりがちになる。
アクリル樹脂の固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量とアクリル樹脂の固形分との合計重量に対し99重量%より多すぎると、アルキルシリケートによる耐食性・防錆性の向上効果が得られ難くなる。一方で、アクリル樹脂の固形分が80重量%より少なすぎると、防錆水性塗料組成物中に占める水ガラスのシリカ固形分の比率が高くなることで防錆水性塗料組成物の粘度が増加し易く、安定性が低下する傾向にある。更に、防錆水性塗料組成物を塗布して形成される塗膜において、水ガラスのシリカ成分が親水性であるために、水ガラスのシリカ固形分の比率が高くなることで耐水性が低下して、アルキルシリケートによる十分な耐食性(防錆性)が発揮されず、塗膜性能が低下する傾向にある。
このようにして製造された本実施の形態にかかる防錆水性塗料組成物は、例えば、自動車部品、家電品、建材等の鋼板、鋳鍛造品等の金属基材の表面に水性コーティング剤として塗装され、通常、所定温度で所定時間加熱乾燥することで硬化し塗膜を形成する。このとき、基材の表面に防錆水性塗料組成物を塗布する方法としては、エアスプレー法、シャワー法、スプレー法、ロールコート法、刷毛塗り法、浸漬法等の公知の方法によって少なくとも一度塗りすることにより塗布できる。また、本実施の形態の防錆水性塗料組成物を基材表面に塗布することにより形成される塗膜の乾燥膜厚は、例えば、10μm〜70μmの範囲内、好ましくは15μm〜40μmの範囲内、より好ましくは、15μm〜25μmの範囲内である。該範囲内であれば、塗膜は基材表面と十分な密着性が得られ、かつ、基材に対して十分な耐水性及び耐食性・防錆性を付与できる。
ここで、アクリル樹脂にアルキルシリケートを配すると、アルキルシリケートを配さないときに比べて防錆性が向上するが、通常、防錆水性塗料組成物中には水が存在し、この水の存在によってアルキルシリケートのシラノール基同士による加水分解及びその後の縮合反応が進行して、ゲル状となる。そのため水ガラスを配しないアクリル樹脂とアルキルシリケートの防錆水性塗料組成物では安定性に問題が生じていた。
そこで、本発明の防錆水性塗料組成物においては、アルキルシリケートに対して所定の比率で予め水ガラスを混合させること、詳しくは、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し無機反応材の水ガラスのシリカ固形分を75重量%以上、90重量%以下の範囲内、または別の表し方として、アルキルシリケートの固形分に対する水ガラスのシリカ固形分が重量比で、水ガラスのシリカ固形分/アルキルシリケートの固形分=75/25〜90/10の配合比率にすることによって、アルキルシリケートのシラノール基(正確にはアルキルシリケートのアルコキシシリル基の一部が水との接触で加水分解を受けて生じるシラノール基(−SiOH))に水ガラスのシリカ成分が結合することで、アルキルシリケートのシラノール基同士による加水分解及びその後の縮合反応を抑制し、これによってアルキルシリケートのゲル化が阻止されて安定した溶液状態の無機反応材となり、防錆水性塗料組成物の安定性が確保され、貯蔵安定性を向上させることができる。
[実施例]
本実施の形態にかかる防錆水性塗料組成物の配合組成として、アクリル樹脂、アルキルシリケートに水ガラスを添加して調整作製された無機反応材、及び溶媒としての水等を含有し、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し無機反応材の水ガラスの固形分を75重量%以上、90重量%以下の範囲内(アルキルシリケートの固形分に対する水ガラスのシリカ固形分が重量比で、水ガラスシリカ固形分/アルキルシリケート固形分=75/25〜90/10の範囲内)とした実施例1乃至実施例4の防錆水性塗料組成物を作製した。
ここでは、アルキルシリケートとしてのメチルシリケート、水ガラスとしての珪酸リチウム、酸触媒、及びイオン交換水を混合して無機反応材とした。更に、防錆水性塗料組成物の溶媒としてイオン交換水を用い、添加剤として、カップリング剤(信越化学工業(株)製の『KBM603』:固形分(シリカ固形分)94%)、消泡剤(サンノプコ(株)製の『SN−DEFOAMER381』:固形分48%)、顔料(大日精化工業(株)製の『NAF5091ブラック』:顔料固形分35%、樹脂固形分5%)を使用した。
ここで、各実施例の配合を表1の上段に示す。
実施例2は、無機反応材として、水ガラスとしての珪酸リチウムのシリカ固形分で60.0gをアルキルシリケートとしてのメチルシリケートの固形分12.0gに配合しており、水ガラスのシリカ固形分とアルキルシリケートの固形分は、その比率が重量比で水ガラスのシリカ固形分/アルキルシリケートの固形分=83/17であり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分は、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し83重量%である。
実施例4は、無機反応材として、水ガラスとしての珪酸リチウムのシリカ固形分で54.0gをアルキルシリケートとしてのメチルシリケートの固形分18.0gに配合しており、水ガラスのシリカ固形分とアルキルシリケートの固形分は、その比率が重量比で水ガラスのシリカ固形分/アルキルシリケートの固形分=75:25であり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分は、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%である。
次に、アクリル樹脂を所定の別容器に入れて攪拌しながら予め作製しておいた無機反応材を、アクリル樹脂の固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対する比率が所定の範囲(ここでは、アクリル樹脂の固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対する重量比で90/10、つまり、アクリル樹脂の固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量とアクリル樹脂の固形分との合計重量に対し90重量%)となるように表1に記載の添加量で添加する。
さらに、顔料、消泡剤を加えて攪拌混合し、本発明の実施例1乃至実施例4にかかる防錆水性塗料組成物が作製される。
なお、本発明の実施例では、攪拌はディスパーを使用している。また攪拌条件は十分混合できればよく、特に限定するものではないが、例えば、回転数は100rpm〜1000rpmの範囲内にすることができ、攪拌時間は10分〜30分とすることができる。
比較例1乃至比較例4の配合は実施例1乃至実施例4と併せて表1の上段に示した通りである。比較例5乃至比較例8の配合は次の表2の上段に示した。
比較例2は、アルキルシリケートとしてのメチルシリケートに水ガラスとしての珪酸リチウムを添加しているが、無機反応材中に含まれる水ガラスのシリカ固形分のアルキルシリケートの固形分に対する比率が重量比で95/5であり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分は、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し95重量%と水ガラスのシリカ添加量を規定範囲より多く配したものである。
比較例4は、水ガラスを一切加えていないものであり、無機反応材中に含まれる水ガラスのシリカ固形分のアルキルシリケートの固形分に対する比率が重量比で0/100で、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分は、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し0重量%である。
比較例5は、比較例1と同様に無機反応材にアルキルシリケートを配しないものであり、比較例6乃至比較例8は、無機反応材中に含まれるコロイダルシリカのシリカ固形分のアルキルシリケートの固形分に対する比率が重量比で75/25から95/5の範囲内、つまり、無機反応材のコロイダルシリカのシリカ固形分を、無機反応材のコロイダルシリカのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%から95重量%範囲内としたものである。
これらの比較例1乃至比較例8についても、実施例1乃至実施例4と同様の製造方法にて作製した。なお後述する実施例5乃至実施例9、及び、比較例9乃至比較例15に関しても同様である。
表1に示されるように、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分がアルキルシリケートの固形分に対し重量比で75/25〜90/10、つまり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%〜90重量%の範囲内である実施例1乃至実施例4の全ての防錆水性塗料組成物の安定性については、防錆水性塗料組成物を作製する際に粘度が増大してゲル化することもなく、塗装に適した適度な流動性を有し、良好な結果が得られた。また、実施例1乃至実施例4の防錆水性塗料組成物を塗布して形成した塗膜の耐水性についても、全て、240時間温水中に浸漬した後の塗膜接着力が100個の升目の1個も剥がれないという優れた耐水性を示した。
また、無機反応材における水ガラスのシリカ固形分のアルキルシリケート固形分に対する重量比が90/10、つまり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し90重量%より多い比較例2では、防錆水性塗料組成物作製の際にゲル状となることはなかったが、防錆水性塗料組成物から形成された塗膜は耐水性に劣っていた。
また、無機反応材に水ガラスを配合していない組成の比較例4では、水ガラスを配合していないことで、アルキルシリケートの加水分解反応及びその後の縮合反応が進み、防錆水性塗料組成物作製の際にゲル状となり、安定性が無く塗装に適さないことが確認された。なお、かかる防錆水性塗料組成物についても、塗装に適さないことから、耐水性の評価試験は実施しなかった。
また、無機反応材にコロイダルシリカを配合してもアルキルシリケートを配合しない組成の比較例5、及び、コロイダルシリカのシリカ固形分がアルキルシリケートの固形分に対し重量比で90/10、つまり、無機反応材のコロイダルシリカのシリカ固形分が、無機反応材のコロイダルシリカのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し90重量%を越えた比較例6では、防錆水性塗料組成物作製の際にゲル状となることはなかったが、防錆水性塗料組成物から形成された塗膜は耐水性に劣っていた。
一方で、比較例3との比較から、水ガラスのシリカ固形分がアルキルシリケートの固形分に対し重量比で75/25、つまり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%未満となると、アルキルシリケートのシラノール基に結合する水ガラスのシリカ成分量が不十分で、水ガラスのシリカ成分によって結合されていないアルキルシリケートにおいて加水分解及びその後の縮合反応によってゲル化し、塗料の安定性が悪くなる。
これらの結果から、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分は、アルキルシリケート固形分に対し、75/25以上、90/10以下、つまり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%以上、90重量%以下の範囲内が好適な配合であり、そのような配合の防錆水性塗料組成物とすることで、確実に安定性に優れた塗料となり、更に、形成する塗膜において優れた耐水性を確保できる。
ここで、コロイダルシリカでは安定した塗料組成物とならないのは、水ガラスのシリカ成分に比べコロイダルシリカのシリカ成分はそれ自身安定して存在し、水ガラスのようにアルキルシリケートのシラノール基に結合する力が弱く、このためアルキルシリケートの加水分解及びその後の縮合反応によるゲル化を抑制することが困難であるためと考えられる。
この防錆水性塗料組成物を被塗装物に塗布した際には、水分が蒸発することで、水ガラスによるアルキルシリケートのゲル化抑制が解かれて、アルキルシリケートとアクリル樹脂との反応によって耐食性・防錆性を発揮する塗膜が形成される。ここで、耐候性に優れたアクリル樹脂によって塗膜の耐候性が確保される。
この際、防錆水性塗料組成物の安定化のためにアクリル樹脂及びアルキルシリケートを乳化させる必要もないことから乳化に伴う手間(作業)やコストがかかることもない。さらに、水ガラスは安価に入手できる材料である。このため、安価に防錆水性塗料組成物を得ることができる。
実施例7は、アクリル樹脂エマルジョンの固形分29.92gに対して、無機反応材中の水ガラスとしての珪酸リチウムをシリカ固形分で2.764gとアルキルシリケートとしてのメチルシリケートを固形分で0.566g配合して合計3.33gとしている。このためアクリル樹脂の固形分は、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し重量比で90/10となり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量とアクリル樹脂の固形分との合計重量に対し90重量%となる。
実施例9は、アクリル樹脂エマルジョンの固形分22.76gに対して、無機反応材中の水ガラスとしての珪酸リチウムをシリカ固形分で4.722gとアルキルシリケートとしてのメチルシリケートを固形分で0.967g配合して合計5.69gとしている。このためアクリル樹脂の固形分は、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し重量比で80/20となり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量とアクリル樹脂の固形分との合計重量に対し80重量%となる。
また、比較例10は、アクリル樹脂エマルジョンの固形分19.88gに対して、無機反応材中の水ガラスとしての珪酸リチウムをシリカ固形分で5.528gとアルキルシリケートとしてのメチルシリケートを1.132g配合して合計6.66gとしている。このためアクリル樹脂の固形分は、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対し重量比で75/25となり、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量とアクリル樹脂の固形分との合計重量に対し75重量%となる。
比較例11乃至比較例15の配合は表4の上段に示す。
塗膜性能の評価に際しては、基材としてシンナー脱脂された未処理冷間圧延鋼板(SPCC−SD)の表面に、乾燥膜厚が25μmとなるように実施例及び比較例の各防錆水性塗料組成物をエアスプレー塗装し、60℃で20分間乾燥させて作製した供試体を用いた。
また、防錆水性塗料組成物の安定性及び塗膜の耐水性については、上記実施例1乃至実施例4のときと同様の評価方法を行った。
(耐食性・防錆性試験1:塗膜剥離試験)
供試体の塗装面にカッターナイフで基材まで達するクロスカットを入れ、かかる供試体を塩水の霧が発生する塩水噴霧試験(SST)装置内に入れて、JIS−Z2371に準じ塩水噴霧条件(試験室内の温度35±1℃、試験室内の相対湿度95〜98%、加湿器の温度47±1℃、塩水の濃度5w/v%等)下におき、120時間(5日間)後に取り出して、クロスカット上から粘着性セロハンテープを強く圧着させ貼り付けて、一気に引き剥がし、引き剥がした後のそれぞれクロスカットからの片側の最大剥離巾を測定し、1〜5の5段階で評価した。
評価「5」・・クロスカットからの最大剥離巾が1mm未満
評価「4」・・クロスカットからの最大剥離巾が1mm以上、2mm未満
評価「3」・・クロスカットからの最大剥離巾が2mm以上、3mm未満
評価「2」・・クロスカットからの最大剥離巾が3mm以上
評価「1」・・全面剥離
供試体の塗装面にカッターナイフで基材まで達するクロスカットを入れ、かかる供試体を塩水の霧が発生する塩水噴霧試験(SST)内に入れて、JIS−Z2371に準じて塩水噴霧条件(試験室内の温度35±1℃、試験室内の相対湿度95〜98%、加湿器の温度47±1℃、塩水の濃度5w/v%等)下におき、120時間(5日間)後に取り出して、それぞれクロスカットからの片側の最大錆巾(片錆巾)を測定し、1〜5の5段階で評価した。
評価「5」・・クロスカットからの片錆巾が1mm未満
評価「4」・・クロスカットからの片錆巾が1mm以上、2mm未満
評価「3」・・クロスカットからの片錆巾が2mm以上、3mm未満
評価「2」・・クロスカットからの片錆巾が3mm以上
評価「1」・・全面錆
塗膜の耐白化性については、40℃の温水に240時間(10日間)浸漬後、外観を観察して、白化がなかったものを○と評価し、白化したものを×と評価した。
表3の下段に示したように、アクリル樹脂の固形分の無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量に対する重量比が80/20以上、99/1以下の範囲内、つまり、アクリル樹脂の固形分が、無機反応材の水ガラスのシリカ固形分及びアルキルシリケートの固形分の総量とアクリル樹脂の固形分との合計重量に対し80重量%以上、99重量%以下の範囲内である実施例5乃至実施例9の防錆水性塗料組成物においては、防錆水性塗料組成物の安定性及び塗膜の耐水性・耐食性(防錆性)・密着性・硬さ・耐白化性の評価試験にて全て良好な結果が得られた。
即ち、防錆水性塗料組成物の安定性については、実施例5乃至実施例9の全てにおいて、防錆水性塗料組成物を作製する際にゲル化して粘度が増大することもなく安定性に優れることが確認された。
また、塗膜の耐水性についても、実施例5乃至実施例9の全てにおいて、240時間温水中に浸漬した後の塗膜接着力が100個の升目の1個も剥がれないという優れた耐水性を示した。
また、錆発生試験(耐食性・防錆性2)においても、実施例5乃至実施例9の全てで、120時間(5日間)の塩水噴霧条件下後の片錆巾が3mm未満で評価が「3」以上という良好な結果が得られた。特に、実施例5乃至実施例8では、評価「4」で片錆巾が1mm以上、2mm未満という優れた耐食性・防錆性が示された。
塗膜の硬度については、実施例5及び実施例6では鉛筆硬度測定試験における鉛筆硬度がF、実施例7乃至実施例9においては鉛筆硬度測定試験における鉛筆硬度がHであり、防錆水性塗料組成物を塗布してなる塗膜としては十分な硬度を有していることが分かった。
塗膜の耐白化性については、実施例5乃至実施例9の全てで、40℃の温水に240時間(10日間)浸漬後の白化が見られず、耐白化にも優れていることが確認された。
一方、アクリル樹脂に対して、アルキルシリケートとしてのメチルシリケートを配合したものの水ガラスを配合していない組成の比較例14では、水ガラスが配合されていないことで、アルキルシリケートの加水分解及びその後の縮合反応が進行して、防錆水性塗料組成物の作製に際しゲル状となり、塗装に適さないことが確認された。
また、従来の防錆塗料に相当するエポキシ変性樹脂を配合した組成の比較例15では、塗料の安定性及び塗膜の耐食性・防錆性、密着性、硬さについては良好な結果が得られたが、耐白化性が実施例5乃至実施例9と比較して劣ることが確認された。
Claims (6)
- アクリル樹脂と、水ガラス及びアルキルシリケートを混合して作製した無機反応材と、溶媒としての水とを含有し、金属基材の表面に塗布される防錆水性塗料組成物であって、
前記無機反応材における前記水ガラスのシリカ固形分が、前記無機反応材の前記水ガラスのシリカ固形分及び前記アルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%以上、90重量%以下の範囲内であることを特徴とする防錆水性塗料組成物。 - 前記アクリル樹脂の固形分は、前記無機反応材の前記水ガラスのシリカ固形分及び前記アルキルシリケートの固形分の総量と前記アクリル樹脂の固形分との合計重量に対し80重量%以上、99重量%以下の範囲内としたことを特徴とする請求項1に記載の防錆水性塗料組成物。
- 前記溶媒は、固形分を除いて実質的に水のみであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防錆水性塗料組成物。
- アクリル樹脂と、水ガラス及びアルキルシリケートを混合して作製した無機反応材と、溶媒としての水とを含有し、金属基材の表面に塗布される防錆水性塗料組成物の製造方法であって、
前記無機反応材を、前記無機反応材中の前記水ガラスのシリカ固形分が、前記無機反応材中の前記水ガラスのシリカ固形分及び前記アルキルシリケートの固形分の総量に対し75重量%以上、90重量%以下の範囲内となるように調整して混合することで予め作製し、その後、当該無機反応材を前記アクリル樹脂と混合したことを特徴とする防錆水性塗料組成物の製造方法。 - 前記アクリル樹脂の固形分は、前記無機反応材の前記水ガラスのシリカ固形分及び前記アルキルシリケートの固形分の総量と前記アクリル樹脂の固形分との合計重量に対し80重量%以上、99重量%以下の範囲内としたことを特徴とする請求項4に記載の防錆水性塗料組成物の製造方法。
- 前記溶媒は、固形分を除いて実質的に水のみであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の防錆水性塗料組成物の製造方法。
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JP2014123229A JP6057946B2 (ja) | 2014-06-16 | 2014-06-16 | 防錆水性塗料組成物及びその製造方法 |
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