図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1を示す断面図である。基板処理装置1は、略円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に処理液を供給して基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。図1では、基板処理装置1の一部の構成の断面には、平行斜線の付与を省略している(他の断面図においても同様)。
基板処理装置1は、チャンバ12と、トッププレート123と、チャンバ開閉機構131と、基板保持部14と、基板回転機構15と、液受け部16と、カバー17とを備える。カバー17は、チャンバ12の上方および側方を覆う。
チャンバ12は、チャンバ本体121と、チャンバ蓋部122とを備える。チャンバ12の内周面は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円筒面である。チャンバ本体121は、チャンバ底部210と、チャンバ側壁部214とを備える。チャンバ底部210は、略円板状の中央部211と、中央部211の外縁部から下方へと広がる略円筒状の内側壁部212と、内側壁部212の下端から径方向外方へと広がる略円環板状の環状底部213と、環状底部213の外縁部から上方へと広がる略円筒状の外側壁部215と、外側壁部215の上端部から径方向外方へと広がる略円環板状のベース部216とを備える。
チャンバ側壁部214は、中心軸J1を中心とする環状である。チャンバ側壁部214は、ベース部216上に配置され、チャンバ本体121の内周面の一部を形成する。チャンバ側壁部214を形成する部材は、後述するように、液受け部16の一部を兼ねる。以下の説明では、チャンバ側壁部214と外側壁部215と環状底部213と内側壁部212と中央部211の外縁部とに囲まれた空間を下部環状空間217という。
基板保持部14に基板9が支持された場合、基板9の下面92は、チャンバ底部210の中央部211の上面と対向する。以下の説明では、チャンバ底部210の中央部211を「下面対向部211」と呼ぶ。
チャンバ蓋部122は中心軸J1に垂直な略円板状であり、チャンバ12の上部を含む。チャンバ蓋部122は、チャンバ本体121の上部開口を閉塞する。図1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間した状態を示す。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口を閉じる際には、チャンバ蓋部122の外縁部がチャンバ側壁部214の上部に近接する。
チャンバ開閉機構131は、チャンバ12の可動部であるチャンバ蓋部122を、チャンバ12の他の部位であるチャンバ本体121に対して上下方向に相対的に移動する。本実施の形態では、チャンバ本体121の位置は固定されており、チャンバ開閉機構131は、チャンバ蓋部122を昇降する蓋部昇降機構である。チャンバ蓋部122が上下方向に移動する際には、トッププレート123もチャンバ蓋部122と共に上下方向に移動する。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121に近接して上部開口が閉じられることにより、チャンバ12内にチャンバ空間120(図5参照)が形成される。換言すれば、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121とが近接することより、チャンバ空間120が実質的に閉じられた状態となる。
なお、後述するように、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121とが接することにより上部開口が閉じられてもよい。この場合、チャンバ蓋部122によりチャンバ本体121の上部開口が閉じられることより、チャンバ空間120は密閉状態となる。以下、チャンバ蓋部122が上部開口に近接または接してチャンバ空間120が形成される状態を「チャンバ閉状態」という。
基板保持部14は、基板9を水平状態で保持する。すなわち、基板9は、上面91を中心軸J1に垂直に上側を向く状態で基板保持部14により保持される。チャンバ閉状態においては、基板9はチャンバ空間120に位置する。基板保持部14は、基板9の外縁部(すなわち、外周縁を含む外周縁近傍の部位)を下側から支持する上述の基板支持部141と、基板支持部141に支持された基板9の外縁部を上側から押さえる基板押さえ部142とを備える。基板支持部141は、中心軸J1を中心とする略円環板状の支持部ベース413と、支持部ベース413の上面に固定される複数の第1接触部411とを備える。基板押さえ部142は、トッププレート123の下面に固定される複数の第2接触部421を備える。複数の第2接触部421の周方向の位置は、実際には、複数の第1接触部411の周方向の位置と異なる。
トッププレート123は、中心軸J1に垂直な略円板状である。トッププレート123は、チャンバ蓋部122の下方、かつ、基板支持部141の上方に配置される。トッププレート123は中央に開口を有する。基板9が基板支持部141に支持されると、基板9の上面91は、中心軸J1に垂直なトッププレート123の下面と対向する。トッププレート123の直径は、基板9の直径よりも大きく、トッププレート123の外周縁は、基板9の外周縁よりも全周に亘って径方向外側に位置する。
図1に示す状態において、トッププレート123は、チャンバ蓋部122により吊り下げられるように支持される。チャンバ蓋部122は、中央部に略環状のプレート保持部222を有する。プレート保持部222は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部223と、中心軸J1を中心とする略円板状のフランジ部224とを備える。フランジ部224は、筒部223の下端から径方向内方へと広がる。
トッププレート123は、環状の被保持部237を備える。被保持部237は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部238と、中心軸J1を中心とする略円板状のフランジ部239とを備える。筒部238は、トッププレート123の上面から上方に広がる。フランジ部239は、筒部238の上端から径方向外方へと広がる。筒部238は、プレート保持部222の筒部223の径方向内側に位置する。フランジ部239は、プレート保持部222のフランジ部224の上方に位置し、フランジ部224と上下方向に対向する。被保持部237のフランジ部239の下面が、プレート保持部222のフランジ部224の上面に接することにより、トッププレート123が、チャンバ蓋部122から吊り下がるようにチャンバ蓋部122に取り付けられる。
基板回転機構15は、いわゆる中空モータである。基板回転機構15は、中心軸J1を中心とする環状のステータ部151と、環状のロータ部152とを備える。ロータ部152は、略円環状の永久磁石を含む。永久磁石の表面は、PTFE樹脂にてモールドされる。ロータ部152は下部環状空間217内に配置される。ロータ部152の上部には、接続部材を介して基板支持部141の支持部ベース413が取り付けられる。支持部ベース413は、ロータ部152の上方に位置する。
ステータ部151は、チャンバ12外においてロータ部152の径方向外側に配置される。本実施の形態では、ステータ部151は、チャンバ底部210の外側壁部215およびベース部216に固定され、液受け部16の下方に位置する。ステータ部151は、中心軸J1を中心とする周方向に配列された複数のコイルを含む。
ステータ部151に電流が供給されることにより、ステータ部151とロータ部152との間に、中心軸J1を中心とする回転力が発生する。これにより、ロータ部152が、中心軸J1を中心として水平状態で回転する。ステータ部151とロータ部152との間に働く磁力により、ロータ部152は、チャンバ12内において直接的にも間接的にもチャンバ12に接触することなく浮遊し、中心軸J1を中心として基板9を基板支持部141と共に浮遊状態にて回転する。
液受け部16は、カップ部161と、カップ部移動機構162と、カップ対向部163とを備える。カップ部161は中心軸J1を中心とする環状であり、チャンバ12の径方向外側に全周に亘って位置する。カップ部移動機構162はカップ部161を上下方向に移動する。カップ部移動機構162は、カップ部161の径方向外側に配置される。カップ部移動機構162は、上述のチャンバ開閉機構131と周方向に異なる位置に位置する。カップ対向部163は、カップ部161の下方に位置し、カップ部161と上下方向に対向する。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214を形成する部材の一部である。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214の径方向外側に位置する環状の液受け凹部165を有する。
カップ部161は、側壁部611と、上面部612と、ベローズ617とを備える。側壁部611は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。上面部612は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、側壁部611の上端部から径方向内方および径方向外方へと広がる。カップ部161が下降すると、側壁部611の下部は液受け凹部165内に位置する。
ベローズ617は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、上下方向に伸縮可能である。ベローズ617は、側壁部611の径方向外側において全周に亘って設けられる。ベローズ617は、気体や液体を通過させない材料にて形成される。ベローズ617の上端部は、上面部612の外縁部の下面に全周に亘って接続される。換言すれば、ベローズ617の上端部は、上面部612を介して側壁部611に間接的に接続される。ベローズ617と上面部612との接続部はシールされており、気体や液体の通過が防止される。ベローズ617の下端部は、カップ対向部163を介してチャンバ本体121に間接的に接続される。ベローズ617の下端部とカップ対向部163との接続部でも、気体や液体の通過が防止される。
チャンバ蓋部122の中央には上部ノズル181が固定される。上部ノズル181は、トッププレート123の中央の開口に挿入可能である。上部ノズル181は中央に複数の液吐出口を有し、その周囲にガス噴出口を有する。複数の液吐出口からは互いに異なる種類の処理液が吐出される。上部ノズル181は、基板9上に処理液を供給する処理液吐出部でもあり、基板9上にガスを供給するガス噴出部でもある。なお、チャンバ12内において、処理液を基板9上に吐出する吐出ヘッドがスキャンするスキャンノズルが設けられてもよい。チャンバ底部210の下面対向部211の中央には、下部ノズル182が取り付けられる。上部ノズル181および下部ノズル182の設置位置は必ずしも中央部分に限らず、例えば基板9の外縁部に対向する位置であってもよい。
液受け部16の液受け凹部165には第1排出路191が接続される。第1排出路191は、気液分離部に接続される。チャンバ底部210の下部環状空間217には第2排出路192が接続される。第2排出路192は他の気液分離部に接続される。チャンバ開閉機構131、基板回転機構15およびカップ部移動機構162の動作、並びに、ノズルや排出路における液体や気体の流れは、図示省略の制御部により制御される。
上部ノズル181は、弁を介して薬液供給部に接続される。上部ノズル181を介して基板9上に供給される薬液は、例えば、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液である。上部ノズル181は、弁を介してIPA供給部および純水供給部にも接続される。上部ノズル181は、基板9に純水(DIW:deionized water)およびイソプロピルアルコール(IPA)を供給する。下部ノズル182は弁を介して純水供給部に接続される。下部ノズル182により、基板9の下面に純水が供給される。基板処理装置1では、処理液である上記薬液、純水およびIPA以外の処理液を供給する処理液供給部が設けられてもよい。
上部ノズル181は弁を介して不活性ガス供給部にも接続される。上部ノズル181を介してチャンバ12内に不活性ガスが供給される。本実施の形態では、不活性ガスとして窒素(N2)ガスが利用されるが、窒素ガス以外のガスが利用されてもよい。
図1に示すように、トッププレート123の外縁部の下面には、複数の第1係合部241が周方向に配列され、支持部ベース413の上面には、複数の第2係合部242が周方向に配列される。実際には、第1係合部241および第2係合部242は、基板支持部141の複数の第1接触部411、および、基板押さえ部142の複数の第2接触部421とは、周方向において異なる位置に配置される。これらの係合部は3組以上設けられることが好ましく、本実施の形態では4組設けられる。第1係合部241の下部には上方に向かって窪む凹部が設けられる。第2係合部242は支持部ベース413から上方に向かって突出する。
図2は、基板処理装置1における基板9の処理の流れを示す図である。基板処理装置1では、図3に示すように、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間して上方に位置し、カップ部161がチャンバ蓋部122から離間して下方に位置する状態にて、基板9が外部の搬送機構によりチャンバ12内に搬入され、基板支持部141により下側から支持される(ステップS11)。以下、図3に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「オープン状態」と呼ぶ。チャンバ蓋部122とチャンバ側壁部214との間の開口は、中心軸J1を中心とする環状であり、以下、「環状開口81」という。換言すれば、基板処理装置1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間することにより、基板9の周囲(すなわち、径方向外側)に環状開口81が形成される。ステップS11では、基板9は環状開口81を介して搬入される。
基板9が搬入されると、カップ部移動機構162により、カップ部161が、図3に示す位置から図4に示す位置まで上昇し、環状開口81の径方向外側に全周に亘って位置する。以下の説明では、図4に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「第1閉状態」という(図1の状態も同様)。また、図4に示すカップ部161の位置を「液受け位置」といい、図3に示すカップ部161の位置を「退避位置」という。カップ部移動機構162は、カップ部161を、環状開口81の径方向外側の液受け位置と、液受け位置よりも下方の退避位置との間で上下方向に移動する。
液受け位置に位置するカップ部161では、側壁部611が、環状開口81と径方向に対向する。また、上面部612の内縁部の上面が、チャンバ蓋部122の外縁部下端のリップシール232に全周に亘って接する。これにより、チャンバ蓋部122とカップ部161の上面部612との間には、気体や液体の通過を防止するシール部が形成される。環状開口81が形成された状態でカップ部161が液受け位置に位置することにより、チャンバ本体121、チャンバ蓋部122、カップ部161およびカップ対向部163により囲まれる密閉された空間(以下、「拡大密閉空間100」という。)が形成される。拡大密閉空間100は、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間の空間、すなわち、上下方向に拡大されたチャンバ空間120と、カップ部161とカップ対向部163とに囲まれる側方空間160とが、環状開口81を介して連通することにより形成された1つの空間である。拡大密閉空間100は、チャンバ本体121、チャンバ蓋部122およびカップ部161を含む部位により形成されるのであれば、他の部位も利用して形成されてよい。
続いて、基板回転機構15により一定の回転数(比較的低い回転数であり、以下、「定常回転数」という。)での基板9の回転が開始される。さらに、上部ノズル181から拡大密閉空間100への不活性ガス(ここでは、窒素ガス)の供給が開始されるとともに、第1排出路191からの拡大密閉空間100内のガスの排出が開始される。これにより、所定時間経過後に、拡大密閉空間100が、不活性ガスが充填された不活性ガス充填状態(すなわち、酸素濃度が低い低酸素雰囲気)となる。なお、拡大密閉空間100への不活性ガスの供給、および、拡大密閉空間100内のガスの排出は、図3に示すオープン状態から行われていてもよい。
次に、薬液供給部から上部ノズル181に薬液が供給され、基板9の上面91に向かって薬液が吐出される(ステップS12)。薬液は、基板9の回転により外周部へと拡がり、上面91全体が薬液により被覆される。上面91には薬液によるエッチングが行われる。なお、チャンバ12にヒータを設け、薬液供給時に基板9が加熱されてもよい。
拡大密閉空間100では、回転する基板9の上面91から飛散する薬液が、環状開口81を介してカップ部161にて受けられ、液受け凹部165へと導かれる。液受け凹部165へと導かれた薬液は、第1排出路191を介して気液分離部に流入する。気液分離部にて回収された薬液は、フィルタ等を介して不純物等が除去された後、再利用される。
薬液の供給開始から所定時間(例えば、60〜120秒)経過すると、薬液の供給が停止される。続いて、基板回転機構15により、所定時間(例えば、1〜3秒)だけ基板9の回転数が定常回転数よりも高くされ、基板9から薬液が除去される。
チャンバ蓋部122およびカップ部161は、接した状態を維持しつつ下方へと移動する。そして、図5に示すように、チャンバ蓋部122の外縁部下端とチャンバ側壁部214の上部とが僅かな隙間を空けて近接する。これにより、環状開口81は実質的に閉じられ、チャンバ空間120が、側方空間160と隔絶される。カップ部161は、図3と同様に、退避位置に位置する。以下、図5に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「第2閉状態」という。第2閉状態では、基板9は、チャンバ12の内壁と直接対向し、これらの間に他の液受け部は存在しない。第2閉状態では、チャンバ12はチャンバ閉状態である。
第2閉状態では、基板押さえ部142の複数の第2接触部421が基板9の外縁部に接触する。トッププレート123の下面、および、基板支持部141の支持部ベース413上には、上下方向にて対向する複数対の磁石(図示省略)が設けられる。以下、各対の磁石を「磁石対」ともいう。基板処理装置1では、複数の磁石対が、周方向において第1接触部411、第2接触部421、第1係合部241および第2係合部242とは異なる位置に、等角度間隔にて配置される。基板押さえ部142が基板9に接触している状態では、磁石対の間に働く磁力(引力)により、トッププレート123に下向きの力が働く。
基板処理装置1では、基板押さえ部142が、トッププレート123の自重、および、磁石対の磁力により基板9を基板支持部141へと押圧することにより、基板9を基板押さえ部142と基板支持部141とで上下から挟んで強固に保持することができる。
第2閉状態では、被保持部237のフランジ部239が、プレート保持部222のフランジ部224の上方に離間しており、プレート保持部222と被保持部237とは接触しない。換言すれば、プレート保持部222によるトッププレート123の保持が解除されている。このため、トッププレート123は、チャンバ蓋部122から独立して、基板保持部14および基板保持部14に保持された基板9と共に、基板回転機構15により回転する。
また、第2閉状態では、第1係合部241の下部の凹部に第2係合部242が嵌る。これにより、トッププレート123は、中心軸J1を中心とする周方向において基板支持部141の支持部ベース413と係合する。換言すれば、第1係合部241および第2係合部242は、トッププレート123の基板支持部141に対する回転方向における相対位置を固定する位置固定部材である。チャンバ蓋部122が下降する際には、第1係合部241と第2係合部242とが嵌り合うように、基板回転機構15により支持部ベース413の回転位置が制御される。
チャンバ空間120および側方空間160がそれぞれ独立すると、第1排出路191からのガスの排出が停止されるとともに、第2排出路192からのチャンバ空間120内のガスの排出が開始される。そして、リンス液または洗浄液である純水の基板9への供給が、純水供給部により開始される(ステップS13)。
純水供給部からの純水は、上部ノズル181および下部ノズル182から吐出されて基板9の上面91および下面92の中央部に連続的に供給される。純水は、基板9の回転により上面91および下面92の外周部へと拡がり、基板9の外周縁から外側へと飛散する。基板9から飛散する純水は、チャンバ蓋部122の内壁にて受けられ、第2排出路192および気液分離部を介して廃棄される(後述する基板9の乾燥処理においても同様)。これにより、基板9の上面91のリンス処理および下面92の洗浄処理と共に、チャンバ12内の洗浄も実質的に行われる。
純水の供給開始から所定時間経過すると、純水の供給が停止される。そして、チャンバ空間120内において、基板9の回転数が定常回転数よりも十分に高くされる。これにより、純水が基板9上から除去され、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS14)。基板9の乾燥開始から所定時間経過すると、基板9の回転が停止する。
その後、チャンバ蓋部122とトッププレート123が上昇して、図3に示すように、チャンバ12がオープン状態となる。ステップS14では、トッププレート123が基板支持部141と共に回転するため、トッププレート123の下面に液体はほとんど残存せず、チャンバ蓋部122の上昇時にトッププレート123から液体が基板9上に落下することはない。基板9は外部の搬送機構によりチャンバ12から搬出される(ステップS15)。なお、純水の基板9への供給後、基板9の乾燥前に、IPA供給部から基板9上にIPAを供給して基板9上において純水がIPAに置換されてもよい。
図4に示すように、基板処理装置1では、チャンバ12の外周に側方空間160を形成するカップ部161が設けられ、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間した状態、すなわち、環状開口81が形成された状態で、カップ部161がチャンバ蓋部122に接することにより、拡大されたチャンバ空間120および側方空間160が1つの拡大密閉空間100となる。さらに、図4に示す第1閉状態から図5に示す第2閉状態へと変更する際に、チャンバ蓋部122とカップ部161とが接したまま下降する。これにより、基板9の処理中に内部空間を開放することなく、チャンバ空間120と側方空間160を分離することができる。
図6は、第2閉状態におけるチャンバ本体121とチャンバ蓋部122との間の境界近傍を示す図である。チャンバ蓋部122の内周部の下部は、下方に向かって突出する下方突出部31を有する。下方突出部31は、全周に亘って存在する環状である。下方突出部31は、およそ下方に突出するのであれば、重力方向に対して傾斜してもよい。また、チャンバ蓋部122における下方突出部31の位置は、チャンバ蓋部122の内周部には限定されない。チャンバ閉状態において、下方突出部31の下端は、基板保持部14に保持される基板9よりも下に位置する。
チャンバ蓋部122の内周面は、下方突出部31の上側に、径方向外方に向かって窪む環状凹部33を含む。チャンバ閉状態では、環状凹部33は、基板保持部14に保持される基板9の側方に位置する。そのため、基板9から飛散する処理液は、環状凹部33にて受けられ、その後、チャンバ蓋部122の内周面を下方へと流れて下方突出部31の先端から落下する。環状凹部33が設けられることにより、基板9から飛散する処理液の飛翔距離を大きくすることができ、飛沫の基板9への跳ね返りを抑制することができる。液体が滑らかに流れるように、環状凹部33は曲面であることが好ましい。
基板処理装置1では、チャンバ蓋部122の内周面にて飛散する処理液を受けるため、チャンバ蓋部122の位置を基板9に対して低くすることができ、上下方向に関してチャンバ12を小さくすることができる。加えて、既述のように、チャンバ12の外に位置するカップ部161を利用することにより、チャンバ12の小型化と共に処理液の分離回収が実現される。なお、チャンバ閉状態でチャンバ12内を流れ落ちる処理液が回収され、第2閉状態でカップ部161にて受けられる処理液が廃棄されてもよい。双方の処理液が回収されてもよい。
基板処理装置1では、基板9がチャンバ本体121とチャンバ蓋部122との間に搬入される際の図3に示すカップ部161の位置は、拡大密閉空間100が形成される状態の図4に示すカップ部161の位置よりも低い。そのため、基板9を搬入する際に、チャンバ蓋部122の上昇を最小限に抑えることができる。その結果、基板処理装置1の設置に必要な空間の上下方向の大きさを小さく抑えることができる。
図6に示すように、チャンバ本体121は、上方に向かって突出する上方突出部32を含む。上方突出部32は、チャンバ側壁部214の上端に設けられ、下方突出部31の径方向外側において全周に亘って存在する。上方突出部32の上端は、上方に向かって尖っている。上方突出部32の上端の位置は、下方突出部31の下端の位置よりも上に位置する。既述のように、チャンバ閉状態では、チャンバ本体121とチャンバ蓋部122とは非接触にて近接する。下方突出部31と上方突出部32との間には、僅かな隙間82が形成される。隙間82は、径方向外方に向かって上方へと向かう。
下方突出部31の下端と、チャンバ側壁部214の内周面とは、径方向に十分に離れている。これにより、環状凹部33から下方突出部31の下端に到達した処理液は、隙間82に入り込むことなく落下する。好ましくは、下方突出部31は、チャンバ本体121の内周面よりも径方向内方に迫り出している。
また、下方突出部31は、チャンバ閉状態において、隙間82の径方向内側を覆う。これによっても、飛散する処理液が直接的に隙間82に到達して入り込むことが防止される。処理液の隙間82への進入を防止することにより、固化した処理液がパーティクルの発生原になることが防止される。なお、下方突出部31は、基板9から見て隙間82の径方向内側を覆えばよく、中心軸J1に垂直な方向から見た場合に、隙間82の開口は露出していてもよい。
隙間82が存在するため、チャンバ閉状態では、回転する基板9上に処理液が供給される際に、図5に示す第1排出路191からのカップ部161内の気体の排出が停止される。第2排出路192からのチャンバ本体121内の気体および処理液の排出は、原則として行われる。これにより、処理液の隙間82への進入をより確実に抑制することができる。なお、下方突出部31の上端が、上方に向かって尖っているため、万一、隙間82に処理液が進入したとしても、処理液の付着量を低減することができる。
チャンバ蓋部122とカップ部161とがリップシール232を介して接する状態では、上面部612の内周部の下面の位置は、下方突出部31の下端の位置よりも上である。これにより、図4に示す第1閉状態では、薬液がチャンバ蓋部122とカップ部161の間に付着する可能性を低減することができる。
図7は、チャンバ蓋部122の下部の他の例を示す図である。図7では、チャンバ蓋部122の下部は、もう1つの下方突出部31aを有する。以下、この下方突出部31aを「追加下方突出部31a」を呼ぶ。チャンバ蓋部122の他の部位の構造は図6と同様である。追加下方突出部31aは、上方突出部32の径方向外側に位置し、全周に亘って下方へと突出する。追加下方突出部31aの下端の位置は、上方突出部32の上端の位置よりも下である。下方突出部31、上方突出部32および追加下方突出部31aにより、隙間82は形成される。これにより、隙間82は、径方向外方に向かって一旦上方に向かった後、下方へと向かう。
隙間82がより複雑なラビリンス構造となることにより、処理液の非常に微細な液滴がチャンバ空間120の外部へと移動することがより抑制される。
図8は、上方突出部32の他の例を示す図である。図8の上方突出部32の上端は、チャンバ閉状態において、チャンバ蓋部122の下部に接する。換言すれば、チャンバ閉状態においてチャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口に接する。これにより、チャンバ空間120は密閉空間となる。したがって、基板9の処理中にチャンバ空間120を減圧することが可能である。例えば、基板9の乾燥処理は、大気圧よりも低い減圧雰囲気にて行われてもよい。
チャンバ空間120の密閉を実現するために、上方突出部32の上部は、樹脂により成形された弾性シール部材35を含む。図9に示すように、チャンバ蓋部122の上方突出部32の上端と接する部位が、弾性シール部材35を含んでもよい。
図8および図9において、チャンバ本体121およびチャンバ蓋部122の他の部位の構造は、図6と同様である。チャンバ閉状態において、下方突出部31は、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間の境界83の径方向内側を覆う。これにより、チャンバ12を小さくしつつ、パーティクルの発生の抑制および処理液の回収を実現することができる。
上記基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
例えば、環状凹部33は省かれてもよい。上方突出部32も存在しなくてもよい。下方突出部31および上方突出部32等により形成されるラビリンス構造は、より複雑なものであってもよい。
基板処理装置1により実行される処理は、上記実施の形態に示したものには限定されない。基板処理装置1では、チャンバ空間120が密閉可能な場合、チャンバ空間120にガスを供給して加圧する加圧部が設けられてもよい。
チャンバ開閉機構131は、必ずしもチャンバ蓋部122を上下方向に移動する必要はなく、チャンバ蓋部122が固定された状態で、チャンバ本体121を上下方向に移動してもよい。チャンバ12は、必ずしも略円筒状には限定されず、様々な形状であってよい。
基板回転機構15のステータ部151およびロータ部152の形状および構造は、様々に変更されてよい。ロータ部152は、必ずしも浮遊状態にて回転する必要はなく、チャンバ12内にロータ部152を機械的に支持するガイド等の構造が設けられ、当該ガイドに沿ってロータ部152が回転してもよい。基板回転機構15は、必ずしも中空モータである必要はなく、軸回転型のモータが基板回転機構として利用されてもよい。
基板処理装置1では、カップ部161の上面部612以外の部位、例えば、側壁部611が、チャンバ蓋部122に接することにより、拡大密閉空間100が形成されてもよい。液受け部16の構造は適宜変更されてよい。例えば、カップ部161の内側に他のカップ部が設けられてもよい。
上部ノズル181、下部ノズル182の形状は、突出する形状には限定されない。処理液を吐出する吐出口を有する部位であれば全て本実施の形態の吐出部の概念に含まれる。
基板処理装置1では、半導体基板以外に、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、FED(field emission display)等の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。あるいは、基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。