JP6056601B2 - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、少なくとも水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂(α)を用いてなる樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、樹脂層(X)の表面エネルギー(x)と、官能基指数(y)が下記の式(1)を満たす積層フィルム。
ただし、35≦x≦65(単位:mN/m)、且つ10≦y≦35(単位:%)を満たす範囲とする、
である。
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、表面エネルギー(x)と、官能基指数(y)が下記の式(1)を満たすことが必要である。
ただし、35≦x≦65(単位:mN/m)、且つ10≦y≦35(単位:%)を満たす範囲とする。
本発明に用いる樹脂(α)は前述したように、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)を用いてなる樹脂組成物が加熱されることによって得られる樹脂である。樹脂(α)ついて以下に詳しく説明する。
本発明において用いられる、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とは、少なくとも1つ以上の水酸基と、1つ以上のアクリロイル基を有する樹脂である。本発明において、アクリロイル基はメタクリロイル基を含むものである。
化合物(a)は、樹脂(A)の主骨格を形成するモノマーである。化合物(a)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸i−オクチル、アクリル酸t−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸i−オクチル、メタクリル酸t−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸及び/またはメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステルやその他、アクリル酸シクロヘキシル等のシクロ炭素数5〜12のシクロアルキルエステル、アクリル酸ベンジル炭素数7〜12のアラルキルエステルなどを挙げることができる。
化合物(b)は、水酸基を有することが必要である。かかる化合物(b)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)に水酸基を持たせることができる。
本発明において用いられる、化合物(c)は、アクリロイル基を有することが必要である。また、化合物(c)が有するアクリロイル基が多官能であると、樹脂(α)に緻密な架橋構造を形成させることができるため好ましい。化合物(c)が有するアクリロイル基の数は2以上、15以下であることが好ましい。本発明において、アクリロイル基はメタクリロイル基を含むものである。かかる化合物(c)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)にアクリロイル基を持たせることができる。また、化合物(c)は多官能アクリロイル基以外に分子内にウレタン構造を有することが好ましい。かかる化合物(c)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)にアクリロイル基とウレタン構造を持たせることができる。
本発明において用いられる樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されることなく公知の技術を適用することができるが、モノマーとして、化合物(a)、(b)及び(c)を用いることが好ましい。さらに、樹脂(A)の製造方法としては、化合物(a)、(b)及び(c)を用いて水系溶媒(E)中で乳化重合により製造することが好ましい。水系溶媒(E)を用いることで、水系溶媒(E)を用いた樹脂組成物を含む塗液の調整が容易となる。また乳化重合により樹脂(A)を製造することで、樹脂(A)の機械的分散安定性が優れるので好ましい。
本発明で用いることのできるメラミン化合物(B)は、1分子中にトリアジン環、及びメチロール基をそれぞれ1つ以上有している必要がある。かかるメラミン化合物(B)を用いることで、樹脂(α)に式(2)に示したメチロール基同士の架橋構造を持たせることができる。
本発明では、樹脂層(X)を形成する樹脂に、樹脂(α)、樹脂(A)およびメラミン化合物(B)以外に、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む化合物(C)を含有させることができる。
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるカルボジイミド構造を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、耐湿熱接着性などの点で、1分子中に2つ以上を有するポリカルボジイミド化合物が特に好ましい。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のカルボジイミド基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、本発明の樹脂層をポリエステルフィルム上に設け、積層フィルムとしたときに、樹脂層の硬度向上やオリゴマー析出抑制性だけでなく、各種インキやハードコート剤などとの接着性や耐湿熱接着性、可撓性、強靭性が高まり好ましく用いることができる。
−N=C=N− (5)
カルボジイミド化合物の製造は公知の技術を適用することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物を触媒存在下で重縮合することにより得られる。ポリカルボジイミド化合物の出発原料であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートなどを用いることができ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどを用いることができる。更に本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加しても用いてもよい。
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルムとなるポリエステルフィルムについて詳しく説明する。ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4‘−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。本発明では、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。またポリエステルフィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、ポリエステルフィルムとして耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートを用いることが特に好ましい。
本発明では、樹脂(A)とメラミン化合物(B)、化合物(C)を含有する樹脂組成物をポリエステルフィルムの少なくとも一面の上に設け、その後加熱し、ポリエステルフィルム上に樹脂(α)を含む樹脂層を形成させることが好ましい。特に、加熱温度を150℃以上にすることで、式(2)、式(3)の構造を有する樹脂層(X)を効果的に形成させることが可能となる。これによって、各種ハードコート剤との接着性に優れ、オリゴマーが析出しづらい積層フィルムを得ることができる。
樹脂組成物を含む塗液を作成する場合、溶媒は水系溶媒(E)を用いることが好ましい。樹脂組成物を含む塗液は、必要に応じて水分散化または水溶化した樹脂(A)、メラミン化合物(B)および水系溶媒(E)を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。次いで、必要に応じて易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により形成される樹脂層の特性を悪化させない程度に任意の順番で混合、撹拌することができる。混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
ポリエステルフィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
本発明の積層フィルムの製造方法について、ポリエステルフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)フィルムを用いた例を挙げて説明する。まず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このAフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した、樹脂(A)とメラミン化合物(B)、化合物(C)を含む樹脂組成物を有する塗液を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、PETフィルム上への樹脂組成物の塗布性が向上するため、樹脂組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
一辺が5cmの正方形状の積層フィルムサンプルを3点(3個)準備する。次にサンプルを23℃、相対湿度50%に40時間放置する。それぞれのサンプルを日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、全光線透過率の測定はJIS「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」(K7361−1、1997年版)、ヘイズの測定はJIS「透明材料のヘーズの求め方」(K7136 2000年版)に準ずる方式で実施する。それぞれの3点(3個)の全光線透過率およびヘイズの値を平均して、積層フィルムの全光線透過率およびヘイズの値とする。
まず、積層フィルムを、RuO4を用いて染色する。次に、積層フィルムを凍結させた後、フィルム厚み方向に切断し、樹脂層断面観察用の超薄切片サンプルを10点(10個)得る。それぞれのサンプル断面をTEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)にて1万〜100万倍で観察し、断面写真を得る。その10点(10個)のサンプルの樹脂層厚みの測定値を平均して、積層フィルムの樹脂層厚みとする。
樹脂層を形成する樹脂中の式(2)〜(4)の構造の確認方法は、特に特定の手法に限定されないが、以下のような方法が例示できる。例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)による式(2)〜(4)の構造に由来する重量ピークの有無を確認する。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)にて、式(2)〜(4)の構造が有する各原子間の結合に由来するピークの有無を確認する。さらに、プロトン核磁気共鳴分光(1H−NMR)にて、式(2)〜(4)の構造が有する水素原子の位置に由来する化学シフトの位置と水素原子の個数に由来するプロトン吸収線面積を確認する。これらの結果を合わせて総合的に確認する手法が好ましい。
まず、積層フィルムを5mg量り取る。次に量り取った積層フィルムを温度変調示差走査熱量計(TMDSC)Q1000(TA Instrumnets社製)にて測定を実施する。温度変調示差走査熱量計では、全体のDSCシグナル(全熱流)をガラス転移など、発熱と吸熱が起こる可逆的な熱成分と、エンタルピー緩和、硬化反応、脱溶媒などの不可逆な熱成分とに分離できる。測定で得られた全体の示差走査熱量シグナルより、可逆成分である、樹脂(α)のガラス転移点由来のシグナルを抽出し、樹脂(α)のガラス転移点とする。ここで、積層フィルムの基材フィルムであるポリエステルフィルムを形成するポリエステルのガラス転移点を事前に測定しておくことで、ポリエステルフィルムを形成するポリエステルと樹脂(α)のガラス転移点とを区別することができる。
積層フィルムの樹脂層(X)の表面エネルギー(x)(単位:mN/m)を以下の方法で算出する。積層フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間静置後する。その後、同雰囲気下で、樹脂層(X)に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、接触角計CA−D型(協和界面科学(株)社製)により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。尚、樹脂層(X)のポリエステルフィルムとの界面側の測定は、一度溶剤によりポリエステルフィルム(P)を溶出させ、樹脂層(X)のポリエステルフィルムとの界面を露出させたもので測定する。
γS : 樹脂層(X)の表面自由エネルギー
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γS d: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの分散力成分
γS p: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの極性力成分
γS h: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γL d : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの分散力成分
γL p : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの極性力成分
γL h: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γS L=γS+γL−2(γS d・γL d)1/2−2(γS p・γLp)1/2−2(γS h・γL h) 1/2 ・・・ 式(5)。
(γS d・γL d)1/2+(γS p・γL p) 1/2+(γS h・γL h)1/2=γL(1+cosθ)/2 ・・・ 式(7)。
まず、積層フィルムの樹脂層(X)表面をX線光電子分光法(XPS)測定装置Quantera SXM(PHI社製、励起X線:monochoromatic AlKα1.2線(1486.6eV)、X線径:200μm、光電子脱出角度:45°)にて分析し、元素組成および化学状態を調べる。尚、XPS分析とは超高真空中においた樹脂層(X)表面に軟X線を照射し、樹脂層(X)表面から放出される光電子をアナライザーで検出する方法であり、物質中の束縛電子の結合エネルギー値から樹脂層(X)の元素情報が、また各ピークのエネルギーシフトから価数や結合状態、ピーク面積比から定量に関する情報が得られる。光電子が物質中を進むことができる長さ(平均自由行程)が、10nm未満であることから、本分析手法における検出深さは10nm未満である。XPS分析によって得られた元素全体量に対する炭素の元素組成(%)と、その炭素に関するピークを分割して得られるC1sピーク中のC−N結合、C−O結合を合計した組成比(炭素元素組成の中で、炭素がC−N結合、C−O結合になっている比率)を掛け合わせることで官能基指数を得る。すなわち、官能基指数とは、XPSによって検出された元素全体量を100%とした時、炭素の比率を示す[炭素元素組成(%)]に、その炭素元素組成の中で、炭素がC−N結合、C−O結合になっている比率である[炭素元素組成に対するC−N結合、C−O結合となっている割合]を掛け合わせた値である。この官能基指数(y)(%)=[元素全体量に対する炭素元素組成(%)]×[炭素元素組成に対するC−N結合、C−O結合になっている割合]である官能基指数(y)により、樹脂層(X)の表面に存在するC−N結合、C−O結合の量を評価することができる。
本発明に積層フィルムのハードコート剤との接着性を評価するため、有機溶媒塗料系の紫外線硬化型ハードコート剤(HC−A、HC−B)や無溶媒型紫外線硬化型樹脂(HC−C)を用いた。
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:70重量部
・N−ビニルピロリドン:30重量部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:4重量部。
HC−C:無溶媒型透明紫外線硬化型樹脂(下記の組成比で調整した)
・三洋化成(株)製“サンラッド”(登録商標)RC−610:60重量部
・三菱レイヨン(株)製“ダイヤビーム”(登録商標)UR−6530:20重量部
・日本化薬(株)製DPHA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物):20重量部。
各種ハードコートの硬化膜に1mm2のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製“セロハンテープ”(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、該硬化膜の残存した個数により評価した。評価は3回実施し、3回の測定の平均値において、残存した個数が80以上を接着性良好「○」、80未満を接着性不良「×」とした。
一辺が10cmの積層フィルムサンプルを金属枠に4辺で固定する。次に、金属枠に固定した積層フィルムサンプルを150℃(風量ゲージ「7」)に設定したエスペック(株)製熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200」に、オーブン内の床に対して立てて入れ1時間加熱する。その後、積層フィルムサンプルを空冷で1時間放置した。
・水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A):
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(a)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(b)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN−3320HA、アクリロイル基の数が6)(c)を表中の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(a)〜(c)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60重量部と、イソプロピルアルコール200重量部、重合開始剤として過硫酸カリウムを5重量部とを反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1を40重量部とイソプロピルアルコール50重量部、過硫酸カリウム5重量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、濃度25重量%のアンモニア水60重量部、及び純水900重量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散された樹脂(A)を得た。
・メチロール基を有するメラミン化合物(B):
メチロール化メラミン((株)三和ケミカル製、ニカラック(登録商標)MX−035)を用いた。
・イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む化合物(C):
(C)−1:オキサゾリン化合物((株)日本触媒製“エポクロス”WS−500)
(C)−2:カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)“カルボジライト”V−04)を用いた。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=37/40)=100/10/77となるように混合した。そこに、積層フィルム表面に易滑性を付与させるために、無機粒子として数平均粒子径300nmのシリカ粒子((株)日本触媒社製 シーホスター(登録商標)KE−W30)を樹脂(A)100質量部に対して2質量部添加した。さらに、樹脂組成物のポリエステルフィルム上への塗布性を向上させるために、樹脂組成物にフッ素系界面活性剤(互応化学(株)製 プラスコート(登録商標)RY−2)を、樹脂組成物を含む塗液に対する含有量が0.03質量部になるよう添加した。
実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押出機に供給し285℃で溶融した。次に、溶融したPETをT字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
一軸延伸フィルムの片面に、樹脂組成物をバーコートを用いて塗布厚み約8μmで塗布した。続いて、樹脂組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度を90℃〜100℃にし、樹脂組成物を含む塗液の溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に110℃の延伸ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、続いて235℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施し、樹脂(α)を形成せしめ、ポリエステルフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは100μm、樹脂層(X)の厚みは150nmであった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=35/35)=100/20/70となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=35/48)=100/22/83となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=23/23)=100/20/46となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=46/46)=100/20/92となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=23/23)=100/51/46となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
ポリエステルフィルム上への樹脂組成物の塗布厚みを変更し、樹脂層(X)の厚みを表2に記載の厚みに変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)中の、化合物(c)をウレタンアクリレートオリゴマー(東洋ケミカルズ(株)製、Miramer(登録商標)HR3200、アクリロイル基の数が4)(ウレタン構造と多官能アクリロイル基を有する化合物)に変更した以外は実施例2と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)中の、化合物(c)をウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN−3320HS、アクリロイル基の数が15)(ウレタン構造と多官能アクリロイル基を有する化合物)に変更した以外は実施例2と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
化合物(C)として、さらに(C)−3:イソシアネート化合物(DIC(株)製“バーノック”DNW−500)を用いて、樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2/(C)−3=30/30/10)=100/20/70となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1=100/20/70となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と同様に、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満たし、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つ接着性評価が「○」、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=37/40)=100/8/77となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満足しなかったため、接着性評価が不良であり、また樹脂組成物中のメラミン化合物(B)の含有量が少なく樹脂(α)の形成が不十分だったため、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化も0.3%より大きく不良であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=19/20)=100/20/39となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満足しなかったため、接着性評価が不良であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=19/20)=100/15/15となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満足しなかったため、接着性評価が不良であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)((C)−1/(C)−2=15/20)=100/15/35となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満足しなかったため、接着性評価が不良であった。
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、化合物(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)=100/50/0となるように混合した以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化は良好であったが、表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満足しなかったため、接着性評価が不良であった。
樹脂(A)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。樹脂(A)中に水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(b)がない比較例6では、樹脂組成物の水系溶媒への分散が不可能であったため評価できなかった。
樹脂(A)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。表面エネルギーと官能基指数の算出結果より式(1)を満足しなかったため、接着性評価が不良であり、また樹脂(A)中の式(4)で示される化学構造(ウレタン構造)とアクリロイル基を有する化合物(c)が無かったため、樹脂層(X)にクラックが発生したため、透明性が低下し、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化も0.3%より大きく不良であった。
Claims (15)
- ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、少なくとも水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂(α)を用いてなる樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、樹脂層(X)の表面エネルギー(x)と、官能基指数(y)が下記の式(1)を満たす積層フィルム。
y>−0.8x+55 ・・・式(1)
ただし、35≦x≦65(単位:mN/m)、且つ10≦y≦35(単位:%)を満たす範囲とする。 - 前記樹脂(α)が、ガラス転移点温度が50℃以上の樹脂である請求項1に記載の積層フィルム。
- ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、少なくとも水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂(α)を用いてなる樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、以下の(i)〜(iii)の条件を満たす積層フィルム。
(i)前記樹脂層(X)の表面エネルギー(x)と、官能基指数(y)が下記の式(1)を満たす積層フィルム。
y>−0.8x+55 ・・・式(1)
ただし、35≦x≦65(単位:mN/m)、且つ10≦y≦35(単位:%)を満たす範囲とする。
(ii)前記樹脂(α)が、アクリロイル基同士の架橋構造と、式(2)で示される化学構造と、式(3)で示される化学構造を有すること
(iii)前記樹脂(α)が、ガラス転移点温度が50℃以上の樹脂であること
- 前記樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)と、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む化合物(C)を含む樹脂組成物から得られる請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
- ポリエステルフィルムの少なくとも一面に樹脂層(X)が設けられた、以下の(i)〜(ii)の条件を満たす積層フィルムの製造方法であって、
ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物を塗布し、加熱することで、樹脂層(X)を形成せしめる工程を含む積層フィルムの製造方法。
(i)樹脂層(X)の表面エネルギー(x)と、官能基指数(y)が下記の式(1)を満たす積層フィルム。
y>−0.8x+55 ・・・式(1)
ただし、35≦x≦65(単位:mN/m)、且つ10≦y≦35(単位:%)を満たす範囲とする。
(ii)前記樹脂層(X)を形成する樹脂が、アクリロイル基同士の架橋構造と、式(2)で示される化学構造と、式(3)で示される化学構造を有すること - 前記樹脂組成物中における、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)の含有量の合計が、樹脂組成物中の固形分に対して、50質量%以上である、請求項8に記載の積層フィルムの製造方法。
- 前記樹脂組成物中における、樹脂(A)とイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む化合物(C)の含有量の質量比(樹脂(A)の含有量[質量部]/化合物(C)の含有量[質量部]が、100/40〜100/100である、請請求項8または9に記載の積層フィルムの製造方法。
- 前記樹脂組成物中における、樹脂(A)とメラミン化合物(B)の含有量の質量比(樹脂(A)の含有量[質量部]/メラミン化合物(B)の含有量[質量部]が、100/10〜100/60である、請求項8〜10のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
- 前記(c)の化合物が、さらにメチロール基を有する請求項13に記載の積層フィルムの製造方法。
- ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、前記樹脂組成物を塗布し、次いで少なくとも一軸方向に延伸し、その後、150℃以上に加熱し、樹脂層(X)を形成せしめる請求項8〜14のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
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