JP6056212B2 - 自動車用トランスミッションオイルシール - Google Patents
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Description
トランスミッションオイルシールは、種々提案されており、例えば、特許文献1には、トランスミッションに使用するオイルシールとして、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体からなり、シールリップを備えたシール部材が開示されている。
以下、図面を参照しながら本発明の自動車用トランスミッションオイルシールの実施形態について説明する。
弾性部材12は、内周側に車軸21に当接する径方向断面楔状の主リップ部13が設けられたシールリップ部を、外周側にハウジング20に密着するはめあい部14を有している。金属環16は弾性部材12に内蔵されており、これにより自動車用トランスミッションオイルシール11の補強の役割を果たしている。リングスプリング17は、主リップ部13の外周面側に配設されており、主リップ部13はリングスプリング17の付勢力により車軸21に当接されることとなる。
以下、本明細書において、単にシャフトと表記した場合、車軸、メインシャフト及びカウンターシャフトを含むこととする。
この摺動特性に優れるとの効果は、シャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って奏することができる。これについてもう少し詳しく説明する。
自動車用トランスミッションオイルシール11の主リップ部13の材質は、フッ素樹脂(B)及びアクリルゴム(A)を含む組成物である。そのため、従来公知の他の自動車用トランスミッションオイルシールの材質、例えば、ニトリルゴムやアクリルゴム、フッ素樹脂(B)を含有しないアクリルゴム等に比べて摺動特性に優れている。
そのうえで、自動車用トランスミッションオイルシール11は、上記組成物からなる凸部を有している。
自動車用トランスミッションオイルシールがシャフトに対して摺動している場合、自動車用トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にはオイルが介在している(油膜が形成されている)ことが知られている。そして、このオイルが両者の間で潤滑剤として機能すると考えられている。即ち、オイルが介在することにより、自動車用トランスミッションオイルシールは低い摩擦抵抗で摺動することができる。
一方、自動車用トランスミッションオイルシールは、シール材として機能することが大前提のため、そのシールリップ部はシャフトに隙間無く当接される。そのため、この状態から自動車用トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にオイルが介在するには、シールリップ部が変形し、この変形に追従してオイルがシールリップ部とシャフトとの間に入り込むことが必要となる。ここで、シールリップ部の変形は、シャフトの回転に追従して生じるため、シャフトが高回転数で回転している際にはシールリップ部も変形しやすく、両者の間にオイルが入り込みやすくなる。これに対してシャフトの回転数が低回転数の場合には、高回転数の場合に比べてシールリップ部が変形しにくく、その結果、シャフトとシールリップ部との間にはオイルが介在しにくくなる。
そのため、シャフトの回転数が低回転数の場合は、高回転数の場合に比べて摺動特性が劣る傾向にあり、自動車用トランスミッションオイルシールにおいては、特に、シャフトの回転数が低回転数の場合における摺動特性の向上が望まれている。
これに対して、本発明の自動車用トランスミッションオイルシールは、上述したように、シールリップ部の表面に凸部を有しており、このため、オイルのトランスミッション外への漏れを防止するという本質的な機能は確保しつつ、微視的にはシールリップ部とシャフトとの間に極微小な空隙を有し、かつ、シャフトの回転に追従して変形しやすい構造を備えていることとなる。
そのため、本発明の自動車用トランスミッションオイルシールでは、自動車用トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にオイルが介在しやすく、シャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って摺動特性に優れることとなる。
そのため、上記凸部と上記凸部を有する弾性部材12とが一体的に構成されることとなり、シャフトの回転時に、脱落したり、欠損したりしにくいとの効果が得られる。
ここで、凸部が実質的に上記組成物に含まれるフッ素樹脂(B)からなることは、IR分析やESCA分析によってアクリルゴム(A)由来とフッ素樹脂(B)由来のピーク比を求めることで、凸部が実質的にフッ素樹脂(B)からなることを示すことができる。具体的には、凸部を有する領域において、IR分析によって、アクリルゴム(A)由来の特性吸収のピークとフッ素樹脂(B)由来の特性吸収のピークとの比(成分由来ピーク比=(アクリルゴム(A)由来のピーク強度)/(フッ素樹脂(B)由来のピーク強度))を、凸部と凸部外のそれぞれの部分で測定し、凸部外の成分由来ピーク比が、凸部の成分由来ピーク比に対して2倍以上、好ましくは3倍以上であることをいう。
図4(a)は、シールリップ部が有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線B1と直線B2を含む平面で凸部31を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線C1と直線C2を含む平面で切断した断面図である。そして、図4(a)〜(c)には、シールリップ部の表面の微小領域を模式的に描画している。シールリップ部の表面には、図4(a)〜(c)に示すように、例えば、略円錐形状(コーン形状)の凸部31が形成されている。
上記フッ素樹脂(B)は優れた耐熱性を有する。従って、後述する成形架橋工程や熱処理工程によって分解することがないので、上記体積比は、弾性部材を形成するために使用する後述の未架橋アクリルゴム組成物におけるフッ素樹脂(B)の体積割合と同一と推測できる。
シールリップ部は、この特徴によりフッ素樹脂(B)の混合割合が小さくても、アクリルゴムの欠点であった耐摩耗性、低摩擦性及び非粘着性が改善され、また、アクリルゴムの利点が損なわれることもなく、圧縮永久歪も小さいものとなる。なお、上記凸部を有する領域の面積比は、使用する用途によって、シールリップ部が低摩擦性、耐摩耗性、又は、非粘着性が必要とされる部分において達成されていれば、本発明の効果は十分に奏される。
以下、本発明の自動車用エンジンオイルシールを構成する各成分について詳述する。
アクリルゴム(A)は、アクリル酸エステルに基づく重合単位からなる重合体である。アクリルゴム(A)は、1種のアクリル酸エステルに基づく重合単位からなる単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル酸エステルに基づく重合単位からなる共重合体でもよいし、1種又は2種以上のアクリル酸エステルに基づく重合単位と、アクリル酸エステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位とからなる共重合体であってもよい。
アクリルゴム(A)は、アクリル酸エステルの種類、重合単位の量を選択することにより、常態物性、耐寒性、耐油性等を調整することができる。
アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート等が挙げられる。
アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−(n−プロポキシ)エチルアクリレート、2−(n−ブトキシ)エチルアクリレート、3−メトキシプロピルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、2−(n−プロポキシ)プロピルアクリレート、2−(n−ブトキシ)プロピルアクリレート等が挙げられる。
例えば、n−ブチルアクリレートの共重合比率を多くすると耐寒性を向上させることができる。また、エチルアクリレートの共重合比率を多くすると耐油性を向上させることができる。
弾性部材は、熱や紫外線等の影響によりその主鎖が切断し、引張強さや破断伸びといった機械的特性が低下してしまうことがある。そこで、架橋反応を起こしやすいカルボキシル基を有する酢酸ビニルをアクリルゴム(A)の主鎖に共重合させておくと、アクリルゴムの主鎖が切断してしまった際に、酢酸ビニルに基づく重合単位中のカルボキシル基が架橋部位(架橋席)となって、切断した分子間を再度架橋させることができる。
フッ素樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン単位(a)とヘキサフルオロプロピレン単位(b)とを含む共重合体(以下、「FEP」ともいう。)である。上記フッ素樹脂(B)を用いることによって、シールリップ部表面に実質的にフッ素樹脂(B)からなる凸部を形成することができ、その結果、低速走行時から高速走行時の全域に渡って摺動特性に優れる自動車用トランスミッションオイルシールとすることができる。
CF2=CF−ORf6
(式中、Rf6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、下記式:
CX5X6=CX7(CF2)nX8
(式中、X5、X6及びX7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、下記式:
CF2=CF−OCH2−Rf7
(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。自動車用トランスミッションオイルシールの耐摩擦性及び非粘着性がより優れる点から、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、パーフルオロモノマーであることが好ましく、なかでも、PAVEであることがより好ましい。
上記フッ素樹脂(B)は、例えば、TFE/HFP共重合体、及び、TFE/HFP/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
更に、フッ素樹脂(B)の融点が上記範囲であることによって、弾性部材の低圧縮永久歪性を向上させることもできる。そのため、シール性に優れた特性の自動車用トランスミッションオイルシールが得られる。
フッ素樹脂の融点は、示差走査熱量計を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、一度融点ピークの吸熱終了温度+30℃になったら、降温速度−10℃/分で50℃まで降温させ、再度昇温速度10℃/分で吸熱終了温度+30℃まで昇温させ、得られた吸熱曲線のピークの温度を融点とする。
上記MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、温度280℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により70℃で測定する値である。より具体的には、アイティ−計測制御社製動的粘弾性装置DVA220で長さ30mm、巾5mm、厚み0.5mmのサンプルを引張モード、つかみ幅20mm、測定温度25℃から200℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定する値である。70℃における好ましい貯蔵弾性率(E’)は10〜160MPaであり、より好ましい貯蔵弾性率(E’)は20〜140MPaであり、さらに好ましい貯蔵弾性率(E’)は30〜100MPaである。
フッ素樹脂(B1)及び(B2)は、特定の組成を有するテトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位からなる共重合体である。特定の組成を有するフッ素樹脂(B1)又は(B2)を用いることで、シールリップ部表面の低摩擦性及び非粘着性を損なうことなく、弾性部材の低圧縮永久歪性を向上させることができる。
この工程は、未架橋アクリルゴム(A1)とフッ素樹脂(B)とを共凝析して共凝析組成物を得た後、未架橋アクリルゴム組成物を得る工程である。
架橋剤は、アクリルゴムの種類等によって適切に選択すればよく、一般的にアクリルゴム組成物の架橋に用いられる架橋剤を用いることができる。アクリルゴムの種類等によって、架橋剤は使用しなくてもよい。
また、架橋剤だけでなく、受酸剤、架橋促進剤、副資材等を混合してもよい。
過酸化物の添加量が5質量部未満では、架橋不足となり、得られる弾性部材の引張強度や破断時伸び等の機械的特性が低下するおそれがある。また、10質量部を超えると得られる弾性部材が硬化してしまい弾性が損なわれるおそれがある。
フッ素樹脂(B)が少なすぎると、自動車用トランスミッションオイルシールの摺動特性が充分でなくなるおそれがあり、フッ素樹脂(B)が多すぎると、自動車用トランスミッションオイルシールの柔軟性が充分でなくなるおそれがある。得られる自動車用トランスミッションオイルシールの摺動特性及び柔軟性のバランスがよいことから、未架橋アクリルゴム(A1)とフッ素樹脂(B)との体積比(未架橋アクリルゴム(A1))/(フッ素樹脂(B))は、95/5〜60/40であることが好ましく、90/10〜65/35であることがより好ましい。
この工程は、工程(I)で得られた未架橋アクリルゴム組成物を成形し架橋し、製造する弾性部材と略同形状の架橋成形品を製造する工程である。成形及び架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
この熱処理工程(III)では、得られた架橋成形品をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度に加熱する。熱処理工程(III)を経ることにより、製造する弾性部材の表面に、(主にフッ素樹脂(B)からなる)凸部を形成することができる。
核磁気共鳴装置AC300(Bruker−Biospin社製)を用い、測定温度を(ポリマーの融点+50)℃として19F−NMR測定を行い求めた。
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、一度融点ピークの吸熱終了温度+30℃になったら、降温速度−10℃/分で50℃まで降温させ、再度昇温速度10℃/分で吸熱終了温度+30℃まで昇温させ、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、280℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)をMFRとした。
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により70℃で測定する値であり、アイティ−計測制御社製動的粘弾性装置DVA220で長さ30mm、巾5mm、厚み0.25mmのサンプルを引張モード、つかみ幅20mm、測定温度25℃から200℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
キュラストメーターII型(JSR(株)製)にて最低トルク(ML)、最高トルク(MH)、誘導時間(T10)及び最適加硫時間(T90)を測定した。
JIS K6251に準じて測定した。
JIS K6251に準じて測定した。
JIS K6251に準じて測定した。
JIS K6253に準じ、デュロメータ タイプAにて測定した(ピーク値)。
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出した。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の個数は、測定領域中の凸部の個数を1mm2当たりの数に換算したものである。
以下に示す方法でトランスミッションオイルシールの回転トルクを測定した。
図5に示すオイルシールトルク試験機50では、シャフト54が軸受53を介してハウジング59内に回転自在に配設されている。シャフト54の先端側(図5中、右側)には、油室52が設けられるとともに、オイルシール保持部材57が取り付けられている。測定用トランスミッションオイルシール51は、油室52とオイルシール保持部材57との間隙にオイルシール保持部材57に対して摺動可能に固定される。また、油室52にはロードセル56が接続されている。なお、図5中、55はオイルシールである。
そして、測定用トランスミッションオイルシール51を取り付けた状態で、油室52の温度(油温)を所定の温度に設定し、シャフト54をモータ(図示せず)により所定の回転で回転させると、オイルシール保持部材57がシャフト54と一体的に回転し、かつ、測定用トランスミッションオイルシール51に対して摺動し、このときの測定用トランスミッションオイルシール51の荷重をロードセル56にて測定し、回転半径を乗じてトルク換算する。ここで、測定条件は、油温(試験温度)を常温とし、シャフト54の回転数を2000rpm又は5000rpmとした。
レスカ社製フリクションプレーヤーFPR2000で、加重20g(Pinは、φ5mm材質SUJ2)、回転モード、回転数120rpm、回転半径10mmで測定を行い、回転後5分以上経過した後、安定した際の摩擦係数を読み取り、その数値を動摩擦係数とした。
XF−5140((株)トウペ製)エマルジョン 濃度31.1wt%
アクリルゴム(A2)
XF−5140((株)トウペ製)ベースポリマー
攪拌機を備えた内容積3Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水1767g、含フッ素アリルエーテル化合物としてCH2=CFCF2−O−(CF(CF3)CF2O)−CF(CF3)−COONH4の50%水溶液を0.283g(脱イオン水量の80ppmに相当する量)を、含フッ素アニオン性界面活性剤としてF(CF2)5COONH4の50%水溶液を3.53g(脱イオン水量の1000ppmに相当する量)仕込んだ。オートクレーブ内を真空引きし、窒素置換した後、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕を3.4MPaになるように導入し、95℃まで昇温した。引き続き、HFP、TFEを圧力が4.0MPaになるまで導入した。引き続き、重合開始剤として3.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液16gを圧入して重合を開始した。重合開始剤を圧入した後、5分経った時点で圧力低下が始まるので、重合槽圧力を4.0MPaに保つようにTFE/HFP=70/30(モル比)の混合ガスを供給して重合を継続した。また、重合速度を維持するため、重合開始時から定常的に3.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を圧入し、重合終了時までトータル35gを追加した。重合開始4時間後に攪拌を停止してモノマーガスを放出し、反応を停止させた。その後、室温まで冷却して白色のTFE/HFP共重合体〔FEP〕ディスパージョン(エマルション)1990gを得た。得られたエマルションの一部を乾燥して固形分濃度を測定したところ、20.0質量%であった。
TFE/HFP=83.2/16.8(モル比)
融点:179℃
MFR:8.5g/10min(280℃、5kg)
70℃における貯蔵弾性率(E’):58MPa
熱分解開始温度(1%質量減温度):375℃
攪拌機を備えた内容積3Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水1767g、含フッ素アリルエーテル化合物としてCH2=CFCF2−O−(CF(CF3)CF2O)−CF(CF3)−COONH4の50%水溶液を0.283g(脱イオン水量の80ppmに相当する量)を、含フッ素アニオン性界面活性剤としてF(CF2)5COONH4の50%水溶液を3.53g(脱イオン水量の1000ppmに相当する量)仕込んだ。オートクレーブ内を真空引きし、窒素置換した後、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕を3.4MPaになるように導入し、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕を17g圧入し、95℃まで昇温した。引き続き、HFP、TFEを圧力が4.0MPaになるまで導入した。引き続き、重合開始剤として3.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液16gを圧入して重合を開始した。重合開始剤を圧入した後、5分経った時点で圧力低下が始まるので、重合槽圧力を4.0MPaに保つようにTFE/HFP=70/30(モル比)の混合ガスを供給して重合を継続した。また、重合速度を維持するため、重合開始時から定常的に3.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を圧入し、重合終了時までトータル35gを追加した。重合開始4時間後に攪拌を停止してモノマーガスを放出し、反応を停止させた。その後、室温まで冷却して白色のTFE/HFP/PPVE共重合体〔FEP〕ディスパージョン(エマルション)2000gを得た。
得られたエマルションの一部を乾燥して固形分濃度を測定したところ、20.3質量%であった。
引き続き110℃で乾燥して56gのポリマーを得た。
TFE/HFP/PPVE=84.2/14.8/1.0(モル比)
融点:178℃
MFR:9.2g/10min(280℃、5kg)
70℃における貯蔵弾性率(E’):63MPa
熱分解開始温度(1%質量減温度):372℃
ステアリン酸
パラフィンワックス
ナウガード#445(ユニロイヤル社製)
シーストV(東海カーボン(株)製)
CHEMINOX AC−6(ユニマテック(株)製)
ノクセラーDT(大内新興化学工業(株)製)
容量1Lのミキサー内に、水500ccと塩化マグネシウム4gをあらかじめ混合した溶液にFEP水性ディスパージョン(B1)とアクリルゴムディスパージョン(A1)とを、固形分が体積比で75/25(アクリルゴム/フッ素樹脂(FEP))となるようにあらかじめ混合した溶液400ccを投入し、ミキサーにて3分間混合し、共凝析した。
共凝析後、固形分を取り出し、80℃×48時間乾燥炉で乾燥させた後、オープンロールにて表1に示す所定の配合物を混合して、未架橋アクリルゴム組成物とした。
その後、自動車用トランスミッションオイルシールの金型に金属環を配設し、未架橋アクリルゴム組成物を投入して、8MPaに加圧して、180℃で5分間加硫させて、架橋成形品(適応軸径80mm、外径98mm、幅8mm)を得た。
その後、得られた架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れ、加熱処理をし、図3に示すような構造を有する自動車用トランスミッションオイルシールを得た。得られた自動車用トランスミッションオイルシールを用いて、凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比を測定した。また、自動車用トランスミッションオイルシールの回転トルクを測定した。結果を表1に示す。
実施例1でFEPディスパージョン(B1)の代わりに(B2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で自動車用トランスミッションオイルシールを得て各種測定を行った。
オープンロールにて、アクリルゴム(A2)に表1に示す所定の配合物を混合して、架橋性組成物とした。その後は実施例1と同様の方法で自動車用トランスミッションオイルシールを得て各種測定を行った。
11 自動車用トランスミッションオイルシール
12 弾性部材
13 主リップ部
14 はめあい部
16 金属環
17 リングスプリング
20 ハウジング
21 車軸
22 メインシャフト(入力シャフト)
23 カウンターシャフト(出力シャフト)
30 シールリップ部
31 凸部
50 オイルシールトルク試験機
51 測定用トランスミッションオイルシール
52 油室
53 軸受
54 シャフト
55 オイルシール
56 ロードセル
57 オイルシール保持部材
59 ハウジング
Claims (6)
- 少なくとも主リップ部が設けられたシールリップ部を有する弾性部材を備えた自動車用トランスミッションオイルシールであって、
前記弾性部材は、アクリルゴム(A)及びフッ素樹脂(B)を含む組成物からなり、かつ、少なくとも前記主リップ部の表面に凸部を有するとともに、前記凸部が実質的に前記組成物に含まれるフッ素樹脂(B)からなり、
前記フッ素樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン単位(a)とヘキサフルオロプロピレン単位(b)とを含む共重合体であり、かつ、融点が200℃以下であり、
前記凸部と前記凸部を有する弾性部材とが一体的に構成されており、かつ、前記凸部は、組成物内のフッ素樹脂(B)が表面に析出したものである
ことを特徴とする自動車用トランスミッションオイルシール。 - アクリルゴム(A)は、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ブトキシエチル、及び、アクリル酸メトキシエチルからなる群より選択される少なくとも1種のアクリル酸エステルに基づく重合単位からなる重合体である請求項1記載の自動車用トランスミッションオイルシール。
- シールリップ部表面に対する凸部を有する領域の面積比が0.04以上であり、
シールリップ部に対するフッ素樹脂(B)の体積比が0.03〜0.45であり、
前記凸部を有する領域の面積比が、前記フッ素樹脂(B)の体積比の1.1倍以上である
請求項1又は2記載の自動車用トランスミッションオイルシール。 - 凸部は、高さが0.1〜30.0μmである
請求項1、2又は3記載の自動車用トランスミッションオイルシール。 - 凸部は、底部断面積が0.1〜2000μm2である
請求項1、2、3又は4記載の自動車用トランスミッションオイルシール。 - 凸部の数が500〜60000個/mm2である
請求項1、2、3、4又は5記載の自動車用トランスミッションオイルシール。
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