以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び均等の範囲内で変更等がなされ得る。図1は、後述する本発明に係るハトメ取付装置30(図5等参照)によって生地1(図2等参照)に取り付けられるハトメの一例であるハトメ10を一部破断して示す斜視図である。図2は、ハトメ10と、ハトメ10が取り付けられる生地1と、生地1に対しハトメ10とは反対側(図2において下方)から適用されるワッシャー20との取付前の配置状態を示す断面説明図である。図3は、ハトメ10を生地1に取り付けた状態を示す断面説明図である。なお、ワッシャー20を用いることなくハトメ10が生地1に取り付けられる場合もある。ハトメ10は、円環状のフランジ部11及び円筒部12を有するハトメ本体10aと、ハトメ本体10aの円筒部12内に固定された閉鎖部材としての円板13とから構成される。円板13は、複数(図1では一例として七つ)の円形の孔13aを有する。円筒部12は、フランジ部11の半径方向内側端部からフランジ部11と同心状でフランジ部11の半径方向に直交する方向に延びる。言い換えると、フランジ部11は、軸方向に延びる円筒部12の半径方向外側端部から円筒部12と同心状に半径方向外側に延びている。フランジ部11は、図2の紙面上方に凸となるように湾曲している。また、円筒部12の厚さは図2の紙面下方へとわずかに薄くなり、これにより、円筒部12の先端(図2の紙面下端)12aが鋭利となっている。ハトメ10は、アルミニウム合金、銅合金等からなる金属製の部品であるが、円板13は樹脂製であってもよい。
円筒部12の内周面におけるフランジ部11付近には、内径がフランジ部11側へと段状に縮小する段部12bが存在する。円板13は、円筒部12内の段部12a上の固定箇所12cに圧入すなわちプレスばめにより固定される。固定箇所12cに固定された円板13は段部12aに接する。円板13の固定箇所12cへの固定前において、円板13の外径は円筒部12の固定箇所12cの内径よりもわずかに大きくなるように設定される。そのため、円板13を円筒部12の先端12a側から円筒部12内の固定箇所12cに押し込むことにより、円板13が円筒部12の固定箇所12cでの内径をわずかに広げ、これにより、円板13の外周面と円筒部12の固定箇所12cでの内周面とが相互に押し付け合い、これらの間の摩擦力を高めることにより、円板13が固定箇所12cにしっかりと固定される。しかしながら、一旦円板13が固定箇所12cからずれると、円板13の外周面と円筒部12の内周面との間の摩擦力が低下し、円板13の円筒部12の内周面に対する固定力が弱まる。段部12bは、円筒部12の内周面に事前に形成される場合の他、円筒部12内への円板13の固定によって生じる場合もある。
ワッシャー20は、ハトメ10の円筒部12を通す開口23を規定する円環状の金属部品である。ワッシャー20は、半径方向内側の平坦部21と、半径方向外側の湾曲部22とを有する。湾曲部22は、図2の紙面下方に凸となるように湾曲する。ハトメ10を生地1に取り付ける場合、ハトメ10の円筒部12がその鋭利な先端12aから生地1を図2の紙面下方に貫通し、更にワッシャー20の開口23を通った後、円筒部12の先端12a側が後述するハトメ取付装置30の第2ダイ31(図5等参照)によって半径方向外側へと湾曲するように加締められる(図3参照)。これにより、ハトメ10が生地1に固定される。図3に示すように、加締められた円筒部12の先端12aはワッシャー20の平坦部21と湾曲部22との境界又はその付近で受け止められ、これにより、円筒部12の先端12aが生地1を損傷するようなことはない。ハトメ10が固定された状態で、生地1は、生地1の一面側からのハトメ10のフランジ部11と、生地1の他面側からの、加締められた円筒部12の先端12aで押さえ付けられたワッシャー20とにより圧縮される。ハトメ10の円筒部12が生地1を貫通することにより、生地1からほぼ円形の生地片1aが切り離される。このような生地片1aがハトメ10の円筒部12内に留まらないように、ハトメ10の生地1への取り付け時に、ハトメ取付装置30の第1ダイ40(図5等参照)から第2ダイ31へと空気を流す場合もある。以上のようなハトメ10の生地1への取り付け時に、ハトメ10の円板13が、生地1あるいは生地片1aとの干渉、上記空気からの作用等により、円筒部12内の固定箇所12cからずれる場合がある。円板13が少しでも固体箇所12cからずれれば、ハトメ10の生地1への取り付けが不良であるとして対処する必要がある。しかしながら、固定箇所12cからずれた円板13が円筒部12内に留まる場合、取付作業者等が不良を見落とすおそれがある。後述するハトメ取付装置30は、円板13が円筒部12内の固定箇所12cからわずかでもずれた場合に、円板13を円筒部12外に押し出すことにより、取付作業者等が一目で取付不良を認識できるようにするためのものである。
図4は、本発明に係るハトメ取付装置30が組み込まれたハトメ取付機100の全体を概略的に示す正面図である。ハトメ取付装置30は、詳しくは後述するが、ハトメ10の生地1への取り付け時にハトメ10を保持させる第1ダイ40と、ワッシャー20が載置される第2ダイ31とを含む。ハトメ取付機100は、第1ダイ40にハトメ10を一つずつ供給するハトメ供給部101と、第2ダイ31にワッシャー20を一つずつ供給するワッシャー供給部102と、多数のハトメ10が収容されるハトメホッパー103と、多数のワッシャー20が収容されるワッシャーホッパー104と、ハトメホッパー103からハトメ供給部101へとハトメ10を一つずつ送るハトメシュート105と、ワッシャーホッパー104からワッシャー供給部102へとワッシャー20を一つずつ送るハトメシュート106とを備える。ハトメ取付機100は、ハトメ及びワッシャー供給部101、102からハトメ取付装置30へとハトメ10及びワッシャー20を自動供給してハトメ10の生地1への取り付けを行うが、ハトメ取付装置30に手動でハトメ10及びワッシャー20をセットしてハトメ10の取付作業を行うこともできる。
図5は、本発明の一実施形態に係るハトメ取付装置30の断面説明図である。以下、ハトメ取付装置30について上下方向は図5〜8の紙面に基づく。ハトメ取付装置30は、ハトメ10を生地1に取り付ける際にハトメ10を保持させる上方の第1ダイ40と、ワッシャー20を載置する第2ダイ31とを備える。第1ダイ40は、ハトメ保持部46を下端部に有するダイ組立体41と、ダイ組立体41の上方部分を保持し、ハトメ10の生地1への取り付け時にダイ組立体41が受ける衝撃を緩和するためのダイ保持体60とを備える。ダイ保持体60は、円筒状のハウジング部61と、ハウジング部61の上方開口部を気密に閉じる蓋部材62と、ハウジング部61内に収容されるコイルばね(以下単に「ばね」という。)63と、ばね63内に通されるコア部材64とを備える。ハウジング部61は、ばね63及びコア部材64を収容する上方のばね収容部61aと、ダイ組立体41の後述する摺動部材43が配置される下方のダイ収容部61bとを含む。ハウジング部61のばね収容部61aとダイ収容部61bの間には、ハウジング部61の内径が縮小したストッパー部61cが形成される。ストッパー部61cは、コア部材64及びばね63をばね収容部61aの内部で保持するためのもので、ハウジング部61の内面から中心軸に向けて突出している。ばね収容部61a及びダイ収容部61bは一定の同じ内径を有する。ストッパー部61cは、ばね収容部61a内の空気がダイ収容部61b内へと流入することを許容する空気入口61dを規定する。コア部材64の下端部は拡径して栓部64aをなす。栓部64aは、ばね63の下端を受ける。第1ダイ40に保持されたハトメ10が生地1に接していない状態(初期状態)において、ばね63は栓部64aを下方に付勢し、これにより、栓部64aはストッパー部61cに押し付けられて空気入口61dを気密に閉じる。ダイ組立体41は、略円筒状のダイ本体42と、ダイ本体42の上半部42bと一体的に連結し、ハウジング部61のダイ収容部61b内に収容される略円筒状の摺動部材43と、摺動部材43と栓部64aとを連結する円筒状の連結部材44と、ダイ本体42内の空洞42dに配置され、ダイ保持部46に保持された状態のハトメ10の円板13に対し押し当て部材(72)を比較的弱い力で押し当てる押し当て機構70とを備える。
ダイ組立体41のダイ本体42は略円筒状であり、下半部42aと、下半部42aよりも外径がわずかに小さい上半部42bと、下半部42aよりも外径が拡大している中間部42cとを有する。ダイ本体42の内部には軸線に沿って延びる一定径の空洞42dが形成される。空洞42dは、ダイ本体42の上端及び下端でそれぞれ開放する。押し当て機構70は、ダイ本体42の空洞42dに実質的に配置され、ダイ本体42は特許請求の範囲における「収容部」をなす。押し当て機構70は、図6等にも拡大して示すように、上方の円筒状の弾性部材71と、弾性部材71によって下方(貫通方向)に付勢される押し当て部材としての円筒状の押し当てピン(以下、単に「ピン」という。)72と、ピン72の上下方向の変位を制限するための変位制限機構73とを含む。弾性部材71としては、ばね、エラストマー等を用いることができる。ここで、弾性部材71の弾性力は3kgf〜10kgfに設定されており、この弾性力を超える力が押し当て部材72にかかると、押し当て部材72が弾性力に抗して変位することになる。そして、この弾性力はハウジング61内に収容されるコイルばね63に比較して小さいものである。弾性部材71及びピン72はほぼ同じ内外径を有し、弾性部材71及びピン72の外径はダイ本体42の内径とほぼ同じである。また、ピン72の外径は、円板13が固定される円筒部12内の固定箇所12cの内径よりも小さく、ピン72の円板13と接触する環状の下端(ピン72の下端の外周と内周間)は、円板13と面的な広がりを持って接触することができる。なお、ピン72の円板13と接触する下端を、例えば円形の平面に形成することもでき、この場合も、ピン72の下端面は円板13と面的な広がりを持って接触する。なお、押し当て部材が円板13の1点を集中的に押すような場合、円板13に撓みが生じて検査が不正確になるおそれが生じ得るが、ピン72を円板13に面的な広がりを持って接触させることにより、そのような不具合を回避することができる。また、ピン72の外径は、固定箇所12cの内径よりわずかに小さいほどに設定することで、ピン72を変位するための弾性力が、円板13の外周付近全域に伝達されるので、上述した円板13が撓むようなことはない。弾性部材71の上端部は、ダイ本体42の上半部42bの上端部に一体的に設けられたばね受け(図示せず)で受けられる。このばね受けには、上述した連結部材44の下端部が連結される。弾性部材71の下端はピン72の上端と常に接し、ピン72を下方に付勢する。弾性部材71の下端とピン72の境界は、ダイ本体42の中間部42cよりやや上方の上半部42b内にある。変位制限機構73は、ピン72の上方部分の外周面に、直径方向に対向するように二つ設けた、上下方向に長い長円形状の凹部すなわち窪み73aと、ダイ本体42の内周面から突出し、窪み73aに入り込ませる半球状の凸部73bとから構成される。凸部73bは、ダイ本体42の中間部42cの上下方向中間部に設けられる。本実施形態において、凸部73bは、小球を中間部42の内周面に埋め込んで形成されるが、これに限定されるものではない。また、ピン72の外周面に突部を、ダイ本体42の内周面に窪みを設けてもよく、また、窪み73aはピン72を貫通する開口であってもよい。図5及び6に示す状態では、ピン72が弾性部材71から下方に押され、窪み73aの上端に凸部73bが引っ掛かり、ピン72のそれ以上の下方への変位が制限されている。この状態で、ピン72は、ダイ本体42に対して最も下方の位置にあり、この時のピン72の下端は、ダイ本体42の下半部42aの下端よりもわずかに下方に突出する。以下、図5及び6に示すような、第1ダイ40に対しハトメ10、生地1あるいはワッシャー20を介して第2第ダイ31側から力が実質的に作用していない状態を、第1ダイ40について「初期状態」という。初期状態において、ピン72はダイ本体42に対し最下方位置にある。
ダイ本体42の下半部42aの周囲の下方部には、環状のハトメ保持部材45が設けられる。ハトメ保持部材45と、ダイ本体42の中間部42cとの間にはコイルばね45aが配置される。更に、図6等を参照して、ハトメ保持部材45の内周面には、軸方向(上下方向)に長い溝45bが周方向に複数形成される。他方、ダイ本体42の下半部42aの外周面には溝45b内に入り込む小突起45cが複数設けられる。初期状態において、コイルばね45aは、ハトメ保持部材45を、小突起45cが溝45bの上端に突き当たる限度まで下方に押し下げている。この時、ハトメ保持部材45の下端面45dは、ダイ本体42の下半部42aの下端よりもわずかに下方に突出する。この時のハトメ保持部材45の下端面45dのレベルすなわち上下方向位置は、初期状態のピン72の下端とほぼ同じである。ハトメ保持部材45は、ハトメ10の生地1への取り付け時に生地1側から相対的に上方に押される。これにより、コイルばね45aの付勢に抗して、小突起45cが溝45bの下端に突き当たる限度までダイ本体42に対し上方に変位することができる(図8参照)。ハトメ保持部材45の下端部の半径方向内側でかつダイ本体42の下半部42aの下端面下に、ハトメ10を保持するためのハトメ保持部46が規定される。ダイ本体42の下半部42aの下端面42eは、ハトメ10のフランジ部11に合致するように上方に湾曲状に窪んでいる。ハトメ10は、ハトメ保持部材45の下端部の内周面とハトメ10のフランジ部の半径方向外側端との間に作用する摩擦によってハトメ保持部46に保持される。すなわち、ハトメ10のフランジ部の外径は、ハトメ保持部材45の内径よりもわずかに大きく設定される。また、ハトメ10がハトメ保持部46に保持された時点(すなわち初期状態)で、ダイ本体42の下半部42aの下端面42eは、図6に示すように、ハトメ10のフランジ部11から若干上方に離れる。ハトメ保持部46へのハトメ10のセットにより、ピン72の下端がハトメ10の円板13に接するが、この時、ピン72は円板13をほとんど押さない。
ダイ組立体41の摺動部材43は、ハウジング部61のダイ収容部61bの内径とほぼ同じ外径を有し、摺動部材43の外周面とダイ収容部61bの内周面とは気密に接する。この気密性を保ったまま、摺動部材43はダイ収容部61bに対し相対的に軸方向に変位し得る。摺動部材43は、ダイ本体42の上半部42bを受け入れる、下方の大径空洞43aと、大径空洞に連続する、連結部材44を通す上方の小径空洞43bとを有する。大径空洞43aの軸方向長さは、小径空洞43bのそれの約2倍である。摺動部材43には、ダイ本体42の上半部42bが螺合等により一体的に連結される。この連結は、ダイ本体42の中間部42cの上面が摺動部材43の下端面に接するまで行われる。中間部42cの外径はダイ収容部61bの内径よりもわずかに小さい。大径空洞43aと小径空洞43bとの間には、上方から下方へと拡径する段部43cがある。段部43cとダイ本体42の上半部42bの上端とは離れている。
連結部材44は、小径空洞43bの内径とほぼ同じ外径を有し、小径空洞43bに通され、小径空洞43bに対応する摺動部材43の内周面に気密に固定される。また、連結部材44は、摺動部材43の上端から上方に突出し、ハウジング部60の空気入口61dを通って連結部材44の底部に連結される。連結部材44の外径は、空気入口61dよりも小さい。そのため、ストッパー部61cの内径と連結部材44の外周面との間には空気入口61dの一部である環状の空隙が残る。この空隙も以下「空気入口61d」という。連結部材44の、摺動部材43の上端から上方に突出する部分には、複数の開口44aが設けられる。更に、連結部材44は、摺動部材43の段部43cから下方に突出し、上述したようにダイ本体42の上半部42bの上端部に連結される。連結部材44の内部は、ダイ本体42の空洞42dに空気を送る通路の役割を果たす。そのため、連結部材44の下端部は、ダイ本体42の上半部42bの上端部に対し気密に連結される。詳しくは後述するが、ハトメ10の生地1への取り付け時に栓部64aが空気入口61dを開放すると、ばね収容部61a内の空気が、連結部材44の開口44aから連結部材44内に入り、連結部材44内を下方に流れ、次いで、ダイ本体42の空洞42dへと流れる。なお、初期状態において、摺動部材43の上端面は、ストッパー部61cの下面から若干離れている(図5参照)。そして、詳しくは後述するが、ハトメ10の円筒部12の加締め時に摺動部材43がダイ収容部61bに対し相対的に上方に変位し、摺動部材43の上端面がストッパー部61cの下面に対し近接又は接触する(図8参照)。
蓋部材62は、外径がハウジング部61と同じ頭部62aと、頭部62aから下方に延び、ハウジング部61の上端部61eの内周面に螺合等により気密に連結される連結部62bと、連結部62bから筒状に下方に延びて、ばね63の上端を受けるばね受け部62cと、ばね受け部62cの半径方向内側にて上方に窪む凹部62dとを含む。凹部62dは、ハトメ10の取り付け時にハウジング部61に対し相対的に上方に変位するコア部材64の上端部を受け入れることができる。蓋部材62は、空気供給源の一例として概略的に示される空気ポンプ65から供給された空気をハウジング部61内に導入するための空気導入路66を有する。空気導入路66の一端は、蓋部材62の頭部62aの外周面に開口し、他端は蓋部材62のばね受け部62cを通じて、ハウジング部61のばね収容部61a内に開口する。空気ポンプ65から空気供給路66を通じて第1ダイ40に供給された空気は、栓部64aが空気入口61dを開放している状態で、蓋部材62の空気導入路66、ハウジング部61のばね収容部61a、空気入口61d、連結部材44、及びダイ本体42の空洞42dを軸方向下方へと通過することができる。
第2ダイ31は、上面にワッシャー20を載置すると共に、生地1を下方に貫通したハトメ10の円筒部12を加締めるための環状の窪み32を有する。また、第2ダイ31には、ハトメ10の円筒部12が生地1を貫通することによって生じ得る生地片1a(図7参照)を下方の排出先(図示せず)に排出するための排出路33が形成される。排出路33は第2ダイ31の上端に開口し、ここから第1ダイ40のダイ本体42の空洞42dから下方に吐出された空気を受け入れる。第2ダイ31は主体34を含み、主体34は下方の大径部34aと上方の小径部34bとを有する。排出路33は主体34の軸線に沿って形成される。第2ダイ31は、小径部34bの周囲に設けられた円筒部材35、及び円筒部材35の上方に連結された環状部材36を含む。窪み32は、主体34の小径部34bの上端面と環状部材36の上端面にわたって形成される。
ハトメ10を生地1に取り付ける際、ハトメ取付機100の昇降部(図示せず)により、第1ダイ40が上方位置から下方の第2ダイ31に向けて降下させられる。そして、詳しくは後述するが、ダイ本体41が保持するハトメ10の円筒部12が生地1を貫通して第2ダイ31上のワッシャー20に突き当たった後、円筒部12が加締められる。この加締め時にダイ組立体41には下方への移動にブレーキがかかるが、ダイ保持体60はそのまま降下し続ける。これにより、ダイ保持体60に対しダイ組立体41が相対的に上方に変位する。これにより、連結部材44が、空気入口51dを閉じていたコア部材64の栓部64aをばね63の付勢に抗して持ち上げ、空気入口51dを開放する。
次に、ハトメ取付装置30を使用してハトメ10を生地1に取り付ける工程について説明する。ハトメ取付機100においてハトメ10は、ハトメ供給部101から、上方の初期位置にある第1ダイ40に供給され、ダイ組立体41のハトメ保持部46に保持される。同時にワッシャー20は、ワッシャー供給部102から第2ダイ31上に載置される。生地1はワッシャー20上に配される(図6参照)。この際、ポンプ65からダイ保持体60のハウジング部61のばね収容部61a内に空気が供給される。この空気は、空気入口51dがばね63により下方に付勢された栓部64aによって閉じられているため、ばね収容部61a内で圧縮状態に保たれる。この状態から取付作業者がハトメ取付機100のスタートボタン(図示せず)を押すと、第1ダイ40が初期位置から下方の第2ダイ31に向けて降下し始める。この実施形態では第2ダイ31は実質的にずっと静止したままである。図6は、降下中の第1ダイ40が保持するハトメ10の円筒部12の先端12aが生地1の上面に接した時点を示す断面説明図である。この後、ハトメ10の円筒部12は、図7に示すように、生地1を下方に貫通し、次いでワッシャー20の開口23に入って第2ダイ31の窪み32に突き当たる。この際、生地1からほぼ円形の生地片1aが切り離される。この後、図8に示すようにハトメ10の円筒部12が窪み32により加締められる。図6の時点では、第1ダイ40の押し当て機構70のピン72は、ダイ本体42に対し最下方位置にあり、ダイ本体42の下半部42aの下端面42eがハトメ10のフランジ部11から若干上方に離れている。つまり、ハトメ10が第1ダイ40のハトメ保持部46に保持された状態(図6に表す)で、ピン72は円板13と接触し、フランジ部11が第1ダイ40の下端面42eから離れている。この下端面42eは、生地1への取付時(図7、図8、図9に表す)に、フランジ部11と接触する面であることから、接触面と言うこともできる。この状態からハトメ10の円筒部12が生地1を貫通し始めると、生地1やハトメ10等を介して第2ダイ31から第1ダイ40のダイ組立体41へと荷重が伝わり始め、ピン72にハトメ10の円板13から上方に向かう荷重がかかり始める。これにより、ピン72はばね71の付勢に抗してダイ本体42に対し相対的に上方に変位し、そのため、変位制限機構73において窪み73aの上端に接していた凸部73bが窪み73aの上端から相対的に下方に離れる(図7参照)。また、図6の時点から図7の時点にかけて、ハトメ保持部材45も生地1との接触後、上方に向かう荷重を受け、コイルばね45aの付勢に抗してダイ本体42に対し相対的に上方に変位する。このようなダイ本体42に対するピン72及びハトメ保持部材45の上方への変位により、図7の時点で、ダイ本体42の下端部42aの下端面42eがピン72の下端及びハトメ保持部材45の下端面45dに対し相対的に下方に変位し、ハトメ10のフランジ部11を受けるようになる。
次いで、ハトメ10の円筒部12は第2ダイ31の窪み32により加締められる(図8参照)。この加締め時に、ダイ組立体41には、第2ダイ31からハトメ10を介して、上述した円筒部12の生地1への貫通時にかかる荷重よりもずっと大きい荷重がかかる。加締め時にダイ組立体41が受ける荷重により、ダイ組立体41の下方への移動にブレーキがかかり、その一方、ダイ保持体60は加締めの終了時点までそのまま降下し続ける。そのため、加締めの間、降下するダイ保持体60に対しダイ組立体41が相対的に上方に変位する。これに伴い、図8に示すように連結部材44がストッパー部61cに対し上方に変位する。これにより、栓部64aがばね63の付勢に抗して相対的に上方に変位し、これによりばね63が上方に圧縮され、また、栓部64aがストッパー部61cの上面から離れて、空気入口61dを開放する。栓部64aがばね63を圧縮することにより、加締め時にダイ組立体41が受ける衝撃が緩和される。また、空気入口61dの開放により、ばね収容部61a内に圧縮状態で保たれていた空気が空気入口61dからダイ収容部56b内に入り、次いで、連結部材44の開口44aから連結部材44内に入り、ダイ本体42の空洞42dを通ってダイ組立体41の下端から第1ダイ40外の下方に噴出する。この空気は、次いで、生地1に取り付け中のハトメ10の円板13の孔13aを通った後、第2ダイ31の排出路33に入り、排出路33を通って下方の排出先(図示せず)に排出される。このような空気の流れにより、ハトメ10の円筒部12が生地1を貫通して生じた生地片1aを排出することができる。
上述したように、図7の時点でピン72はばね71の付勢に抗してダイ本体42に対し上方に変位する。これにより、ばね71が上方に若干圧縮され、この反動によってピン72はばね71により下方に押される。これにより、ピン72は加締め中のハトメ10の円板13を比較的弱い力で下方に押す。この力は、ハトメ10の円筒部12内の固定箇所12cにある円板13を固定箇所12cから強制的にずらす力に比べ格段に小さい力であり、ハトメ10の生地1への取り付け時に固定箇所12cにある円板13を固体箇所12cからずらすことはできないように設定される。この力は、一例として10kgfに設定され得る。図8は、ハトメ10の生地1への取り付けが正常に完了した状態を示す断面説明図である。ハトメ10の生地1への正常な取り付けでは、ピン72は円板13を上記弱い力で下方に押し続けるが、円板13が円筒部12の固定箇所12cからずれることはない。
図9は、ハトメ10の生地1への取り付け時に円板13が固定箇所12cからずれた場合の断面説明図であり、図10は図9の一部拡大図である。ハトメ10の生地1への取り付け時に、円板13は、生地1あるいは生地片1aとの干渉、上記空気からの作用等により、円筒部12内の固定箇所12cから図10の紙面下方にずれる場合がある。この際、ばね71によって下方に付勢されているピン72は、ずれた円板13に追随して下方に変位して円板13を下方に押す。一旦固定箇所12cからずれた円板13では、円筒部12の内周面に対する固定力が弱まる。そのため、ピン72が円板13を押す力がたとえ比較的弱くても、円板13は下方に更にずらされる。ピン72は、変位制限機構73において凸部73bが窪み73aの上端に接するまでダイ本体42に対し下方に変位しつつ円板13を押し下げる。これにより、円板13はハトメ本体10aから外れる。そのため、取付作業者は、第1ダイ40が上方の初期位置に戻った際、あるいはその後生地1を持ち上げた際、生地1に取り付けられた円環状のハトメ本体10aが、その中央に円板13が存在せず、開放しているため、取付不良が発生したことを一目で認識することができる。なお、円板13は円筒部12内の固定箇所12cに最初に固定される。すなわち、固定箇所12cは初期セット位置とも言える。この初期セット位置が生地1への取り付け後にもずれていないものが良品であると言える。ここで、ピン72は、初期セット位置に固定された円板13によって、ピン72の押す方向とは反対方向に抗して変位されても、初期セット位置に円板13が固定されていれば、正常な取付状態であると判断できる。言い換えると、ピン72により円板13が押されても初期セット位置に円板13が固定されていれば、正常な取付状態であると判断できる。または、円板13がピン72を変位させる途中で、円板13がピン72の押す方向にずれる、つまりピン72が押す力で円板13の初期セット位置からピン72が押す方向にずれて円板13がハトメ本体10aから外れていれば取付異常と判断でき、円板13がハトメ本体10aから完全に外れていなくとも、初期セット位置に比較して下方にずれていれば、取付異常と判断できる。このピン72と、ピン72を円板13に対しに付勢する弾性部材71とは、円板13のハトメ本体10aに対する取付状態の正常・異常を判断するための検査機構と言うことができる。
図11は、本発明の別の実施形態に係るハトメ取付装置130を概略断面説明図である。ハトメ取付装置130について上下方向は図11の紙面に基づく。ハトメ取付装置130は、ハトメ10を生地1に取り付ける際にハトメ10を保持させる下方の第1ダイ140と、ワッシャー20を保持させる上方の第2ダイ150とを備える。第1ダイ140は、上方に開放する円筒状の収容部141aを含むダイ本体141と、収容部141a内に実質的に収容された押し当て機構142とを備える。この押し当て機構142は、既述した押し当て機構70と実質的に同様のものである。押し当て機構142は、下方の弾性部材143と、弾性部材143上に配置された円筒状の押し当て部材144と、押し当て部材144の上下方向の変位を制限するための変位制限機構145とを含む。変位制限機構145は、押し当て部材144の外周面に、直径方向に対向するように二つ設けた、上下方向に長い長円形状の凹部145aと、収容部141aの内周面から突出し、凹部145aに入り込ませる半球状の凸部145bとから構成される。図11に示す初期状態において、押し当て部材144が弾性部材143から上方に押され、凹部145aの下端に凸部145bが接して、押し当て部材144は収容部141aに対し最上方位置にある。この時の押し当て部材144の上端は、収容部141aの上端よりもわずかに上方に突出する。
ダイ本体141の収容部141aの上半部の周囲には、環状のハトメ保持部材146が設けられる。ハトメ保持部材146と、ダイ本体141の基端部141bとの間にはコイルばね146aが配置される。ハトメ保持部材146の内周面には、軸方向に長い溝146bが周方向に複数形成され、他方、収容部141aの外周面には溝146b内に入り込む小突起146cが複数設けられる。初期状態において、コイルばね146aは、ハトメ保持部材146を、小突起146cが溝146bの下端に突き当たる限度まで上方に押し上げている。この時、ハトメ保持部材146の上端面は、収容部141aの上端よりもわずかに上方に突出する。この時のハトメ保持部材146の上端面のレベルすなわち上下方向位置は、初期状態の押し当て部材144の上端とほぼ同じである。ハトメ保持部材146は、ハトメ10の生地1への取り付け時に生地1側から相対的に下方に押される。これにより、コイルばね146aの付勢に抗して、小突起146cが溝146bの上端に突き当たる限度まで収容部141aに対し下方に変位することができる。ハトメ保持部材146の上端部の半径方向内側でかつ収容部141aの上端面上に、ハトメ10を保持するためのハトメ保持部147が規定される。収容部141aの上端面141cは、ハトメ10のフランジ部11に合致するように下方に湾曲状に窪んでいる。ハトメ10がハトメ保持部147に保持された時点で、収容部141aの上端面141cは、図11に示すように、ハトメ10のフランジ部11から若干下方に離れる。ハトメ保持部147へのハトメ10のセットにより、押し当て部材144の上端がハトメ10の円板13に接するが、この時、押し当て部材144は円板13をほとんど押さない。なお、押し当て部材144の上端は、円形環状又は円形平面であり、いずれでも円板13に対し面的な広がりを持って接触することができる。
第2ダイ150は主体151を含み、主体151は上方の大径部151aと下方の小径部151bとを有する。主体151には、その軸線に沿って延び、下方に開放する空洞152が形成される。空洞152には、円筒状の位置合わせ用ピン(以下、単に「ピン」という。)153が上下方向に変位可能に配置される。ピン153は図示しないばねによって弱い力で下方に付勢される。この弱い力は、弾性部材143が押し当て部材144を上方に付勢する力よりも更に弱く設定される。ピン153の外周面には上下方向に長い長円形状の窪み153aが複数形成される。他方、主体151の空洞152を規定する内周面には、窪み153aに入り込む円形の突起153bが設けられる。ハトメ10の生地1への取り付け直前の図11の状態(初期状態)で、ピン153はばねの付勢により最下方位置にある。この時、突起153bは窪み153aの上端に接して、ピン153の下方への変位を制限している。第2ダイ150は、小径部151bの周囲に設けられた円筒部材154、及び円筒部材154の下方に連結された環状部材155を含む。主体151の小径部151bの下端面と環状部材155の下端面にわたって、ワッシャー20を保持すると共に、生地1を通ったハトメ10の円筒部12を加締めるための環状の窪み156が形成される。ハトメ取付装置130でハトメ10を生地1に取り付ける場合、生地1にハトメ10の円筒部12を通すための円形の開口1bが設けられる。第2ダイ150のピン153は、生地1の開口1bと窪み156に保持したワッシャー20との位置を合わせるためのものである。開口1bの直径はハトメ10の円筒部12の外径とほぼ同じであり、ピン153の外径は円筒部12の内径とほぼ同じである。ピン153は初期状態で窪み156よりも下方に突出する。
ハトメ取付装置130を使用してハトメ10を生地1に取り付ける場合、上方の第2ダイ150が下方の第1ダイ140に向けて降下する。なお、第1ダイ140が上昇してもよい。降下する第2ダイ150のピン153が生地1の開口1bに入ることにより、生地1がワッシャー20に対し位置合わせされる。次いで、生地1の開口1bを上方に通ったハトメ10の円筒部12が第2ダイ150の窪み156によって加締められる。図11の時点で、第1ダイ140の収容部141aの上端面141cがハトメ10のフランジ部11から若干下方に離れている。この上端面141cは、加締め時に押し当て部材144及びハトメ保持部材146がばね143及びコイルばね146aの付勢に抗して収容部141aに対し相対的に下方に変位するため、ハトメ10のフランジ部11を受けるようになる。この上端面141cは、生地1への取付時に、フランジ部11と接触する面であることから、接触面と言うこともできる。
ハトメ10の円筒部12の加締め中、第1ダイ140の押し当て部材144は、円板13を介して第2ダイ150により下方への荷重を受ける。これにより、ばね143が下方に若干圧縮され、この反動によって押し当て部材144はばね143により上方に押される。これにより、押し当て部材144は加締め中のハトメ10の円板13を比較的弱い力で上方に押す。この際、変位制限機構145において凹部145aの下端に接していた凸部145bが凹部145aの下端から相対的に上方に離れる。また、ハトメ10の円筒部12の加締め中、第2ダイ150のピン153の下端は円板13の上面に接している。ピン153が円板13を下方に付勢する弾性力は、押し当て部材144が円板13を上方に付勢する弾性力よりも弱い。ハトメ10の生地1への正常な取り付けでは、押し当て部材144は円板13を上記弱い力で上方に押し続けるが、円板13が円筒部12の固定箇所12cからずれることはない。その一方、ハトメ10の生地1への取り付け時に、円板13が固定箇所12cからずれた場合、ばね143によって上方に付勢されている押し当て部材144は、ずれた円板13を更にずらすように上方に変位し、これにより、円板13はハトメ本体10aから外れる。この時、押し当て部材144は、変位制限機構145において凸部145bが凹部145aの下端に接するまで収容部141aに対し上方に変位しつつ円板13を押し上げる。なお、この時、円板13と共にピン153も上方に変位する。そのため、取付作業者は、取付不良が発生したことを一目で認識することができる。また、目視に限らず、カメラや各種センサーを使用して取付不良の発生を認識するようにもできる。なお、加締め時の衝撃を吸収するためのばね等を含む機構(図示せず)は、第1ダイ140又は第2ダイ150の一方に設けることができる。