<脈波測定の原理>
図1は、脈波測定の原理を説明するための模式図であり、図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。
容積脈波法による脈波測定では、例えば、図1に示す通り、測定窓に押し当てられた生体の一部(図1では外耳E(耳の構造のうち耳介(耳殻)と外耳道を合わせた部分))に向けて発光部(LED[Light Emitting Diode]など)から光が照射され、体内を透過して体外に出てくる光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、図2に示すように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用して、末梢動脈の吸光度変化を測定することにより、容積脈波を測定することができる。
なお、脈波センサ(発光部と受光部)の装着位置は、外耳Eのいかなる部位(舟状窩E1、耳輪E2、対耳輪E3、対耳珠E4、外耳道E5、上対耳輪脚E6、三角窩E7、下対耳輪脚E8、耳甲介E9、耳珠E10、珠間切痕E11、及び、耳垂E12)であってもよいし、或いは、外耳E以外(指先、指の第3関節、額、眉間、鼻先、頬、眼下、こめかみなど)の部位であってもよい。
<脈波から分かること>
なお、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被験者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被験者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被験者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被験者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被験者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
<脈波センサ>
図3及び図4は、それぞれ脈波センサの一構成例を示す外観図及びブロック図である。本構成例の脈波センサ1は、イヤホン(ヘッドホン)1Xと本体ユニット1Yを有し、脈波測定機能を備えた携帯型のオーディオプレーヤとして提供される。なお、オーディオプレーヤという概念には、オーディオ再生専用機だけでなく、オーディオ再生機能を備えた携帯電話端末、スマートフォン、及び、携帯ゲーム端末なども含まれる。
イヤホン1Xは、ユーザの外耳E(特に耳介(耳殻))に装着して使用されるインナーイヤー型であり、筐体10と、光センサ部11と、スピーカ12と、ドライバ13と、コード14と、コネクタ15と、を含む。
筐体10は、光センサ部11、スピーカ12、及び、ドライバ13が搭載される部材である。筐体10は、耳珠E10と対耳珠E4に囲まれた窪み部分(耳甲介E9の艇部)にフィットする形状を有する。筐体10は、開放型であっても密閉型であってもよい。
光センサ部11は、筐体10の側面に設けられており、発光部11Aから外耳Eの所定部位に光を照射し、生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部11Bで検出することにより、脈波データを取得する。なお、図3では、右耳用筐体と左耳用筐体のうち、片方の筐体10に光センサ部11を1つ搭載した構成が示されているが、光センサ部11の搭載数はこれに限定されるものではなく、片方の筐体10に光センサ部11を複数搭載してもよいし、或いは、両方の筐体にそれぞれ光センサ部11を1つまたは複数搭載してもよい。光センサ部11を1つだけ搭載する構成であれば、光センサ部11を複数搭載する構成と比べて、消費電力の低減やコストダウンなどを優先することができる。一方、光センサ部11を複数搭載する構成であれば、各々のセンサ出力を足し合わせてS/Nを高めたり、最もS/Nの高いセンサ出力を選択して用いることにより、脈波の検出精度を向上することが可能となる。なお、複数の光センサ部11を選択的に用いる場合には、使用されない光センサ部11への電力供給を遮断することにより、電力の浪費を防止することが可能となる。
なお、本構成例の脈波センサ1において、光センサ部11は、発光部11Aと受光部11Bが生体を挟んで互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部11Aと受光部11Bが生体に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、図1の実線矢印を参照)とされている。また、本願の発明者らは、外耳Eでの脈波測定について、十分に脈波の測定が可能であることを実際に実験で確認済みである。光センサ部11の具体的な構造については、後ほど詳細に説明する。
スピーカ12は、本体ユニット1Yからドライバ13を介して伝達されるオーディオ信号(電気信号)を音波に変換して出力する。スピーカ12の駆動方式としては、ダイナミック型が一般的であるが、その他の駆動方式(マグネティック型、バランスドアーマチュア型、圧電型、クリスタル型、静電型など)を採用しても構わない。
ドライバ13は、本体ユニット1Yから伝達されるオーディオ信号(電気信号)に基づいてスピーカ12の駆動信号を生成する。
コード14は、イヤホン1Xの筐体10と本体ユニット1Yとの間を電気的に接続するための部材である。コード14には信号伝達線や電力供給線が含まれている。
コネクタ15は、コード14の一端に取り付けられており、イヤホン1Xと本体ユニット1Yとを着脱するための部材である。
なお、コード14及びコネクタ15に代えて、イヤホン1Xの筐体10と本体ユニット1Yの双方に無線通信モジュールを設けることにより、両者の間を無線で接続することも可能である。特に、本体ユニット1Yを防水構造とする際には、本体ユニット1Yの外部端子を完全に排除するという観点から、両者の間を無線で接続する構成とすることが望ましい。その場合、本体ユニット1Yからイヤホン1Xの筐体10側に電力を供給することができなくなるので、イヤホン1Xの筐体10側にも電源部を別途用意する必要がある。
本体ユニット1Yは、筐体20と、制御部21と、操作部22と、表示部23と、記憶部24と、通信部25と、電源部26と、フィルタ部27と、を含む。なお、本体ユニット1Yがオーディオ再生機能を備えた携帯電話端末である場合には、上記構成要素のほかに、マイク、スピーカ、及び、電話回線接続部などがさらに追加される。
筐体20は、制御部21、操作部22、表示部23、記憶部24、通信部25、電源部26、及び、フィルタ部27を収納する部材である。なお、筐体20は、水没等による故障を防止するために防水構造としておくことが望ましい。
制御部21は、オーディオ再生機能と脈波測定機能の双方を個別的に実現するだけでなく、両機能を複合的に組み合わせて新たな付加価値を産み出すことができるように、脈波センサ1全体の動作を統括的に制御する。なお、制御部21としては、CPU[Central Processing Unit]などを好適に用いることができる。制御部21の具体的な動作については、後ほど詳細に説明する。
操作部22は、ユーザ(被験者)の入力操作(電源オン/オフ、音量調節、選曲など)を受け付けるヒューマンインタフェイスである。操作部22としては、各種キーやボタンのほか、タッチパネルなどを好適に用いることができる。
表示部23は、本体ユニット1Yの表面に設けられており、表示情報(オーディオ再生に関する情報のほか、脈波の測定結果などを含む)を出力する。表示部23としては、液晶表示パネルなどを好適に用いることができる。
記憶部24は、制御部21に読み込まれて実行される各種プログラムを不揮発的に格納するROM[read only memory]や、制御部21のプログラム実行領域として使用される揮発性のRAM[random access memory]、及び、ユーザ(被験者)が任意の楽曲データを不揮発的に格納するための内蔵型(或いは着脱型)フラッシュメモリを含む。
また、記憶部24は、制御部21で得られた脈波データ(生データ、或いは、種々の処理が施された処理済みデータ)を揮発的ないしは不揮発的に格納するRAMやEEPROM[Electrically Erasable Programmable ROM]なども含む。このように、脈波データの格納手段を有する構成であれば、例えば、所定期間毎に記憶部24の蓄積データを一括して外部送信することができるようになるので、通信部25を間欠的に待機状態とすることが可能となり、延いては、脈波センサ1のバッテリ駆動時間を延ばすことが可能となる。
通信部25は、脈波センサ1の測定データ(生データ、種々の処理が施された処理済みデータ、或いは、記憶部24の格納データ)を外部の情報端末2(データサーバやパーソナルコンピュータなど)に無線または有線で送信する。特に、脈波センサ1の測定データを情報端末2に無線で送信する構成であれば、脈波センサ1と情報端末2とを有線で接続する必要がなくなるので、例えば、ユーザ(被験者)の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。特に、本体ユニット1Yを防水構造とする際には、本体ユニット1Yの外部端子を完全に排除するという観点から、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。なお、近距離(数m〜数十m)の情報端末2に測定データを無線送信する場合には、通信部25としてBluetooth(登録商標)無線通信モジュールなどを好適に用いることができる。また、インターネットなどを介して遠隔地の情報端末2に測定データを送信する場合には、通信部25として無線LAN[local area network]モジュールなどを好適に用いることができる。
電源部26は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換して脈波センサ1の各部に供給する。このように、バッテリ駆動方式の脈波センサ1であれば、脈波の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、ユーザ(被験者)の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。なお、上記のバッテリとしては、繰り返して充電を行うことが可能な二次電池(リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど)を用いることが望ましい。このように、バッテリとして二次電池を用いる構成であれば、煩わしい電池交換作業が不要となるので、脈波センサ1の利便性を高めることができる。また、バッテリ充電時における外部からの電力供給方式としては、USB[Universal Serial Bus]ケーブルなどを用いる接触給電方式であってもよいし、或いは、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触給電方式であってもよい。ただし、脈波センサ1を防水構造とする際には、本体ユニット1Yの外部端子を完全に排除するという観点から、外部からの電力供給方式として非接触給電方式を採用することが望ましい。
フィルタ部27は、光センサ部11の出力信号(受光部の検出信号)にフィルタ処理、増幅処理、及び、アナログ/デジタル変換処理を施して制御部21に伝達する。なお、イヤホン1Xの筐体10側にフィルタ部を設けても構わないが、イヤホン1Xの筐体10からコード14を介して本体ユニット1Yに信号を伝送する途中でノイズが重畳しやすいことを鑑みると、フィルタ部27は、本体ユニット1Y側に設けておくことが望ましい。フィルタ部27の具体的な回路構成については、後ほど詳細に説明する。
上記のように、本構成例の脈波センサ1は、外耳Eに装着される筐体10と、筐体10に設けられて発光部11Aから外耳Eに光を照射し生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部11Bで検出することにより脈波データを取得する光センサ部11とを有する。
このような構成とすることにより、ユーザ(被験者)が意図的に脈波センサ1を外耳Eから外さない限り、脈波の測定中に脈波センサ1が外耳Eから脱落してしまうおそれは少ないので、ユーザ(被験者)の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。
特に、外耳Eは、指や腕に比べて体動の少ない部位であるので、光センサ部11の出力信号が体動ノイズの影響を受けにくく、高精度に脈波の測定を行うことが可能となる。
また、音声の聴取を主たる目的として外耳Eに装着されるイヤホン1Xに光センサ部11を搭載した脈波センサ1であれば、ユーザ(被験者)は、脈波センサ1を脈波測定機能付きの携帯型オーディオプレーヤとして日常的に装着することができるので、脈波センサ1の装着に対する抵抗感を払拭することが可能となり、延いては、利用シーンの拡大や新規ユーザ層の開拓に寄与することが可能となる。
また、脈波センサ1全体の動作を統括的に制御する制御部21は、オーディオ再生機能と脈波測定機能の双方を個別的に実現するだけでなく、両機能を複合的に組み合わせて新たな付加価値を産み出すべく、脈波データに応じてスピーカ12の出力動作を制御する機能を備えている。
より具体的に述べると、制御部21は、フィルタ部27の出力信号に各種の信号処理を施すことによって、脈波に関する種々の情報(脈波の揺らぎ、心拍数、心拍変動、及び、加速度脈波など)を取得し、その解析結果をオーディオ再生動作にフィードバックする。
例えば、制御部21は、脈波データの解析結果に基づいてユーザ(被験者)の体調や精神状態、或いは、睡眠状態などを判定し、その判定結果に基づいて音量調節や選曲、或いは、電源オン/オフなどを自動的に実施する。このような構成とすることにより、携帯型オーディオプレーヤ単体では実現することのできないオーディオ再生動作を実現することが可能となる。
なお、図4では、イヤホン1Xと本体ユニット1Yを別体とした構成を例に挙げたが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、イヤホン1Xと本体ユニット1Yを一体とした構成にしても構わない。その場合、コード14やプラグ15は不要となる。
また、イヤホン1Xの形態や外耳Eへの装着例についても、図5A〜図5Dで示すように、種々のバリエーションが考えられる。図5A〜図5Dは、それぞれ、イヤホン1Xの第1形態〜第4形態と、各形態における外耳Eへの装着例を模式的に示す正面図である。
例えば、第1形態(図5A)のイヤホン1Xは、先の図3と同様、外耳Eに装着して使用されるインナーイヤー型であり、その筐体10は、耳珠E10と対耳珠E4に囲まれた窪み部分(耳甲介E9の艇部)にフィットする形状(例えば球状や円柱状)を有する。第1形態のイヤホン1Xでは、上記の窪み部分に光センサ部11が当接される。
第2形態(図5B)のイヤホン1Xは、シリコンや発泡ウレタンなどで形成されたイヤーピースを外耳道E5に深く押し込んで使用される耳栓型(カナル型)であり、その筐体10は、先出の第1形態(図5A)と同様、耳珠E10と対耳珠E4に囲まれた窪み部分(耳甲介E9の艇部)にフィットする形状を有する。第2形態のイヤホン1Xでは、第1形態と同様、上記の窪み部分に光センサ部11が当接される。
第3形態(図5C)のイヤホン1Xは、耳介E全体を覆う形状の筐体10を備えたヘッドホン型である。左右(右耳用/左耳用)の筐体10は、頭上に跨るヘッドバンドまたは首の後ろ側に跨るネックバンド(いずれも不図示)によって頭部を挟み込む形となる。第3形態のイヤホン1Xにおいて、筐体10は、耳介Eとの対向面(内側面)に光センサ部11を担持する突起部材10xを有する。突起部材10xは、耳介Eに向けて突出しており、例えば、その先端に光センサ部11が搭載されている。従って、第3形態のイヤホン1Xでは、突起部材10xの先端と対向する部位(例えば耳垂E12)に光センサ部11が当接される。なお、第3形態のイヤホン1Xでは、耳介E全体を覆う筐体10が光センサ部11を被覆する遮光部材としても機能する。このような構成とすることにより、外光の影響を受けることなく脈波の測定を安定して行うことが可能となる。
第4形態(図5D)のイヤホン1Xは、耳介Eに懸架されるクリップ部材10yを有する耳掛け型である。クリップ部材10yは、耳介Eと当接する箇所に光センサ部11を担持する。従って、第4形態のイヤホン1Xでは、上対耳輪脚E6、三角窩E7、下対耳輪脚E8、ないしは、耳甲介E9の裏側辺りに光センサ部11が当接される。
なお、上記では、イヤホンやヘッドホンに光センサ部11を設ける構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、図6の変形例で示すように、耳栓構造を有する筐体10に光センサ部11を搭載し、外耳道E5の内部で脈波を測定する形態も考えられる。この場合、筐体10は外耳道E5を塞いで奥深くに挿入され、光センサ部11は外耳道E5の内壁面に当接される形となる。このような耳栓構造を有する脈波センサ1であれば、耳栓本来の機能を利用して被験者をリラックスさせることができるので、脈波測定中の被験者に過度のストレスを与えずに済む。このような特長から、耳栓構造を有する脈波センサ1は、快眠センサ(脈波情報から被験者の睡眠状態に関する知見を得るセンサ)として好適に利用することが可能である。
<光センサ部(構造)>
図7は、光センサ部11の第1構成例を模式的に示す断面図である。第1構成例の光センサ部11は、ケース11aと、遮光壁11bと、透光板11zと、発光部xと、受光部yと、を有する。
ケース11aは、発光部xと受光部yを収納する枡形状の部材である。なお、ケース11aは、その開口面を塞ぐ透光板11zが筐体10の表面(外耳Eと対向する面)と面一になるように、筐体10に埋設されている。
遮光壁11bは、ケース11aを発光部xが載置される第1領域と受光部yが載置される第2領域に分割する部材である。遮光壁11bを設けることにより、発光部xから受光部yへ直接的に入射される光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。なお、ケース11aと遮光壁11bは、一体成形することが望ましい。
透光板11zは、ケース11aの開口面を塞ぐ透光性の部材である。透光板11zを設けることにより、発光部x及び受光部yの汚損(埃などの付着)を防止することができるので、発光部x及び受光部yとして、樹脂などで封止されていないベアチップ(発光チップ及び受光チップ)を用いることが可能となる。
第1構成例の光センサ部11であれば、発光部xから外耳Eに光を照射した後、外耳Eを透過して戻ってくる光の強度を受光部yで検出することにより、ユーザ(被験者)の脈波データを取得することが可能である。
しかしながら、第1構成例の光センサ部11では、外耳Eと発光部x及び受光部yとの間に透光板11zが存在するので、外耳Eを介することなく透光板11zを介して発光部xから受光部yへ直接的に光が入射されるおそれがある。また、第1構成例の光センサ部11では、光センサ部11と外耳Eとの密着性が損なわれたときに、外光が受光部yに漏れ入るおそれもある。外耳Eを透過していない光が受光部yに入射されると、脈波データの検出精度(S/N)が低下するので、脈波データの検出精度を向上させるためには、上記の問題を解消しておくことが重要となる。
図8は、光センサ部11の第2構成例を模式的に示す断面図である。第2構成例の光センサ部11は、ケース11aと、遮光壁11bと、発光部Xと、受光部Yと、を有する。すなわち、第2構成例の光センサ部11では、先述の透光板11zが除外されている。
ケース11aは、発光部Xと受光部Yを収納する枡形状の部材である。ケース11aの外形寸法(高さH0、幅W0、奥行D0)は、例えば、H0=1.5mm、W0=4.5mm、D0=3.0mmに設計されている。なお、ケース11aは、筐体10の表面から所定寸法H4(例えばH4=0.3mm)だけ突出する形で筐体10に埋設されている。このような構成であれば、ケース11aの突出部分によって受光部Yに漏れ入る外光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を向上することが可能となる。
遮光壁11bは、ケース11aを発光部Xが載置される第1領域と受光部Yが載置される第2領域に分割する部材である。先述の第1実施形態と同じく、遮光壁11bを設けることにより、発光部Xから受光部Yへ直接的に入射される光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。なお、ケース11aと遮光壁11bは、一体成形することが望ましい。
発光部Xは、基板X1と、発光チップX2と、封止体X3と、ワイヤX4と、導電体X5と、を有する。基板X1は、その表面上に発光チップX2が載置される部材である。発光チップX2は、所定波長の光を出力する発光素子(例えば、緑色LEDのベアチップ)である。封止体X3は、発光チップX2を封止する透光性の部材である。ワイヤX4は、発光チップX2と導電体X5とを電気的に接続する部材である。導電体X5は、基板X1の上面から下面にわたって形成された導電性の部材であり、ケース11aの底面に形成された配線パターンと半田付けされる。
受光部Yは、基板Y1と、受光チップY2と、封止体Y3と、ワイヤY4と、導電体Y5と、を有する。基板Y1は、その表面上に受光チップY2が載置される部材である。受光チップY2は、所定の波長領域に属する光を電気信号に変換する光電変換素子(例えば近赤外領域〜可視領域の光感受性を持つフォトトランジスタのベアチップ)である。封止体Y3は、受光チップY2を封止する透光性の部材である。ワイヤY4は、受光チップY2と導電体Y5とを電気的に接続する部材である。導電体Y5は、基板Y1の上面から下面にわたって形成された導電性の部材であり、ケース11aの底面に形成された配線パターンと半田付けされる。
このように、第2構成例の光センサ部11では、発光部X及び受光部Yとして、ベアチップではなくパッケージ型の半導体装置が用いられている。従って、ケース11aの開口面を透光板で被覆する必要がなくなるので、透光板を介して発光部Xから受光部Yへ直接的に光が入射される懸念を払拭することが可能となり、延いては、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
また、第2構成例の光センサ部11において、遮光壁11bの高さH1と発光部Xの高さH2との間には、H1>H2という関係が成立している。なお、遮光壁11bの高さH1は、ケース11aの底面から遮光壁11bの上端部までの距離(例えば、H1=1.4mm)を指している。また、発光部Xの高さH2は、ケース11aの底面から発光チップX2の発光面までの距離(例えば、H2=0.5mm)を指している。ただし、発光チップX2が基板X1に比べて非常に薄いことを鑑みると、基板X1の厚みを発光部Xの高さH2として取り扱うこともできる。
上記の関係式を満たした寸法設計を行えば、発光部Xから受光部Yへ直接的に入射される光を遮光壁11bで効果的に遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
ただし、遮光壁11bの高さH1に比べて、発光部Xの高さH2を小さく設計し過ぎると、発光部Xから出射された光が生体2に到達するまでに散乱ないし減衰してしまい、受光部Yで検出される光の強度が小さくなって脈波データの検出精度が低下する。従って、遮光壁11bの高さH1から発光部Xの高さH2を差し引いたオフセット距離ΔH(=H1−H2)には、最適な設計範囲が存在する。
図9は、オフセット距離ΔHと信号強度(受光信号のピークトゥピーク値)との相関関係を示す波形図であり、上から順に、ΔH=0.6mm、0.7mm、0.9mm、1.1mm、及び、2.1mmであるときの受光波形が描写されている。図8から、オフセット距離ΔHが0.9mmであるときに信号強度が最大となることが分かる。この実験結果を鑑みると、オフセット距離ΔHは、0mm<ΔH<2mm(より好ましくは、0.6mm≦ΔH≦1.4mm)の設計範囲に収めることが望ましいと言える。
例えば、厚み0.6mmの封止体X3を備えた発光部Xを用いて、オフセット距離ΔHを0.9mmに設計する場合には、封止体X3の上面が遮光壁11bの上端部から0.3mmだけ奥まった高さ位置となるように、基板X1の厚みを設計すればよい。
また、第2構成例の光センサ部11において、発光部Xの高さH2と受光部Yの高さH3との間には、H2>H3という関係が成立している。なお、受光部Yの高さH3は、ケース11aの底面から受光チップY2の受光面までの距離(例えば、H3=0.3mm)を指している。ただし、受光チップY2が基板Y1に比べて非常に薄いことを鑑みると、基板Y1の厚みを受光部Yの高さH3として取り扱うこともできる。
上記の関係式を満たした寸法設計を行えば、外光が受光部Yに届き難くなるので、脈波データの検出精度を向上することが可能となる。
次に、図10を参照しながら、発光部Xと受光部Yとの素子間距離W1に応じて信号強度がどのように変化するかを考察する。図10は、素子間距離W1と信号強度との相関関係を示す波形図であり、上から順に、W1=0.1mm、0.5mm、1.0mm、3.0mm、及び、5.0mmであるときの受光波形が描写されている。図9から、素子間距離W1が0.5mmであるときに信号強度が最大となることが分かる。この実験結果を鑑みると、素子間距離W1は、0.1mm≦W1≦3.0mm(より好ましくは、0.2mm≦W2≦0.8mm)の設計範囲に収めることが望ましいと言える。
次に、図11A〜図11Dを参照しながら光センサ部11の変形例について説明する。図11A〜図11Dは、それぞれ、光センサ部11の第3〜第6構成例を模式的に示す断面図である。なお、第3構成例〜第6構成例は、先出の第2構成例とほぼ同様の構成であり、脈波データの検出精度をさらに向上するために種々の構成要素が追加されている。
例えば、第3構成例(図11A)の光センサ部11は、発光部Xの上部に集光レンズ11cを有する。集光レンズ11cを設けることにより、発光部Xから出射される光を外耳Eに集めて照射することができるので、受光部Yで検出される光の強度を高めて脈波データの検出精度を向上することが可能となる。
また、第4構成例(図11B)の光センサ部11において、発光部Xが載置される第1領域は、発光部Xの発光領域よりも小さい開口部d1を備えた蓋部材11dによって被覆されている。例えば、発光部Xの発光領域が0.7mm四方の矩形領域である場合、開口部d1は、直径0.5mmの円形状や0.5mm四方の矩形状に形成すればよい。蓋部材11dを設けることにより、発光部Xから出射される光の拡散を防止して、発光部Xから受光部Yへ直接的に入射される光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
また、第5構成例(図11C)の光センサ部11において、受光部Yが載置される第2領域は、受光部Yの受光領域よりも大きい開口部d2を備えた蓋部材11eによって被覆されている。例えば、受光部Yの受光領域が0.7mm四方の矩形領域である場合、開口部d2は、直径1.0mmの円形状や1.0mm四方の矩形状に形成すればよい。蓋部材11eを設けることにより、受光部Yに漏れ入る外光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
また、第6構成例(図11D)の光センサ部11において、発光部X及び受光部Yの少なくとも一方は、所定の波長成分のみ(発光部Xの出力ピーク波長近傍)を選択的に通過させるカラーフィルタX6及びY6を有する。カラーフィルタX6及びY6を設けることにより、不要な波長成分を除去することができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
次に、図12を参照しながら光センサ部11のさらなる変形例について説明する。図12は、光センサ部11の第7構成例を模式的に示す断面図である。なお、第7構成例は、先出の第2構成例とほぼ同様の構成であり、脈波データの検出精度をさらに向上するための工夫が凝らされている。
第7構成例の光センサ部11は、筐体10とケース11aとの間に緩衝部材11fを有する。緩衝部材11fとしては、ゴムや合成スポンジなどを好適に用いることができる。このような構成とすることにより、光センサ部11と外耳Eとの密着性を高めることができるので、脈波の測定を安定して行うことが可能となる。
なお、上記した第3構成例(図11A)〜第6構成例(図11D)、及び、第7構成例(図12)で各々追加された構成要素については、各々を単独で適用してもよいし、任意に組み合わせて適用してもよい。
また、上記いずれの構成を採用する場合であっても、受光部Yは、発光部Xよりも外耳道E5に近い側(ないしは外耳道E5の奥側)に配置するとよい。このような構成とすることにより、受光部Yに外光が漏れ入りにくくなるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
<フィルタ部>
図13は、フィルタ部27の第1構成例を示す回路図である。第1構成例のフィルタ部27は、電流/電圧変換回路100と、1次CRハイパスフィルタ回路110(以下、HPF[high pass filter]回路110と呼ぶ)と、増幅回路120と、1次CRローパスフィルタ回路130(以下、LPF[low pass filter]回路130と呼ぶ)と、増幅回路140と、を有する。
電流/電圧変換回路100は、光センサ部11から出力される電流信号を電圧信号に変換する回路であり、抵抗R1(例えば200kΩ)を含む。光センサ部11を形成する発光ダイオードのアノードは、電源電圧VDDの印加端に接続されている。前記発光ダイオードのカソードは、接地端に接続されている。光センサ部11を形成するフォトトランジスタのコレクタは、抵抗R1を介して電源電圧VDDの印加端に接続されている。前記フォトトランジスタのエミッタは、接地端に接続されている。
HPF回路110は、電流/電圧変換回路100の出力信号に重畳した低周波成分を除去する回路であり、キャパシタC1(例えば0.1μF)と、抵抗R2(例えば4.7MΩ)とを含む。キャパシタC1の第1端は、光センサ部11を形成するフォトトランジスタのコレクタに接続されている。キャパシタC1の第2端は、抵抗R2を介して接地端に接続されている。なお、上記構成から成るHPF回路110のカットオフ周波数は、0.34Hzに設計されている。
増幅回路120は、HPF回路110の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP1と、抵抗R3(例えば100kΩ)と、抵抗R4(例えば10kΩ)と、キャパシタC2(例えば0.01μF)と、キャパシタC3(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP1の非反転入力端(+)は、キャパシタC1の第2端に接続されている。オペアンプOP1の反転入力端(−)は、抵抗R3を介してオペアンプOP1の出力端に接続される一方、抵抗R4を介して接地端にも接続されている。オペアンプOP1の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP1の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC2は、抵抗R3と並列に接続されている。キャパシタC3は、オペアンプOP1の第1電源端と接地端との間に接続されている。
LPF回路130は、増幅回路120の出力信号に重畳した高周波成分を除去する回路であり、抵抗R5(例えば100kΩ)と、キャパシタC4(例えば1.0μF)と、を含む。抵抗R5の第1端は、オペアンプOP1の出力端に接続されている。抵抗R5の第2端は、キャパシタC4を介して接地端に接続されている。なお、上記構成から成るLPF回路130のカットオフ周波数は、1.6Hzに設定されている。
増幅回路140は、LPF回路130の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP2と、可変抵抗R6(例えば500kΩ)と、抵抗R7(例えば10kΩ)と、キャパシタC5(例えば0.01μF)と、キャパシタC6(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP2の非反転入力端(+)は、抵抗R5の第2端に接続されている。オペアンプOP2の反転入力端(−)は、可変抵抗R6を介してオペアンプOP2の出力端に接続される一方、抵抗R7を介して接地端にも接続されている。オペアンプOP2の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP2の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC5は、可変抵抗R6と並列に接続されている。キャパシタC6は、オペアンプOP2の第1電源端と接地端との間に接続されている。
第1構成例のフィルタ部27であれば、簡易な回路構成により、光センサ部11の出力信号に重畳するノイズ成分を除去して、脈波データの検出精度を高めることができる。
ただし、第1構成例のフィルタ部27では、ユーザ(被験者)の体動ノイズ(歩行等の運動によって生じる6.0Hz程度のノイズ成分)を十分に除去し切れない場合があり、ユーザ(被験者)の運動時における脈波を高精度に検出するためには、さらなる改善の余地を残していた(図15の下段を参照)。
図14は、フィルタ部27の第2構成例を示す回路図である。第2構成例のフィルタ部27は、電流/電圧変換回路200と、1次CRハイパスフィルタ回路210(以下、HPF回路210と呼ぶ)と、ボルテージフォロワ回路220と、2次CRローパスフィルタ回路230(以下、LPF回路230と呼ぶ)と、増幅回路240と、6次バンドパスフィルタ回路250(以下、BPF[band pass filter]回路250と呼ぶ)と、増幅回路260と、中間電圧生成回路270と、を有する。
電流/電圧変換回路200は、光センサ部11から出力される電流信号を電圧信号に変換する回路であり、抵抗R8(例えば200kΩ)と、抵抗R9(例えば430Ω)と、を含む。光センサ部11を形成する発光ダイオードのアノードは、電源電圧VDDの印加端に接続されている。前記発光ダイオードのカソードは、抵抗R9を介して接地端に接続されている。光センサ部11を形成するフォトトランジスタのコレクタは、抵抗R8を介して電源電圧VDDの印加端に接続されている。前記フォトトランジスタのエミッタは、接地端に接続されている。
HPF回路210は、電流/電圧変換回路200の出力信号に重畳した低周波成分を除去する回路であり、キャパシタC7(例えば1.0μF)と、抵抗R10(例えば240kΩ)と、を含む。キャパシタC7の第1端は、光センサ部11を形成するフォトトランジスタのコレクタに接続されている。キャパシタC7の第2端は、抵抗R10を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。なお、上記構成から成るHPF回路210のカットオフ周波数は、0.66Hzに設計されている。
ボルテージフォロワ回路220は、HPF回路110の出力信号を後段に伝達する回路であり、オペアンプOP3と、キャパシタC8(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP3の非反転入力端(+)は、キャパシタC7の第2端に接続されている。オペアンプOP3の反転入力端(−)は、オペアンプOP3の出力端に接続されている。オペアンプOP3の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP3の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC8は、オペアンプOP3の第1電源端と接地端との間に接続されている。
LPF回路230は、ボルテージフォロワ回路220の出力信号に重畳した高周波成分を除去する回路であり、抵抗R11(例えば620kΩ)と、抵抗R12(例えば620kΩ)と、キャパシタC9(例えば1.0μF)と、キャパシタC10(例えば1.0μF)と、を含む。抵抗R11の第1端は、オペアンプOP3の出力端に接続されている。抵抗R11の第2端は、抵抗R12の第1端に接続される一方、キャパシタC9を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。抵抗R12の第2端は、キャパシタC10を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。なお、上記構成から成るLPF回路230のカットオフ周波数は、0.26Hzに設定されている。
増幅回路240は、LPF回路230の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP4と、抵抗R13(例えば10kΩ)と、抵抗R14(例えば1kΩ)と、キャパシタC11(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP4の非反転入力端(+)は、抵抗R12の第2端に接続されている。オペアンプOP4の反転入力端(−)は、抵抗R13を介してオペアンプOP4の出力端に接続される一方、抵抗R14を介して中間電圧VMの印加端にも接続されている。オペアンプOP4の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP4の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC11は、オペアンプOP4の第1電源端と接地端との間に接続されている。
BPF回路250は、増幅回路240の出力信号に重畳した低周波成分と高周波成分を除去する回路であり、オペアンプOP5〜OP7と、抵抗R15(例えば75kΩ)と、抵抗R16(例えば2MΩ)と、抵抗R17(例えば150kΩ)と、抵抗R18(例えば130kΩ)と、抵抗R19(例えば91kΩ)と、抵抗R20(例えば620kΩ)と、抵抗R21(例えば43kΩ)と、抵抗R22(例えば30kΩ)と、抵抗R23(例えば200kΩ)と、キャパシタC12(例えば1μF)と、キャパシタC13(例えば1μF)と、キャパシタC14(例えば0.1μF)と、キャパシタC15(例えば1μF)と、キャパシタC16(例えば1μF)と、キャパシタC17(例えば0.1μF)と、キャパシタC18(例えば1μF)と、キャパシタC19(例えば1μF)と、キャパシタC20(例えば0.1μF)と、を含む。
抵抗R15の第1端は、オペアンプOP4の出力端に接続されている。抵抗R15の第2端は、抵抗R16を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP5の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP5の反転入力端(−)は、キャパシタC12を介して抵抗R15の第2端に接続される一方、抵抗R17を介してオペアンプOP5の出力端にも接続されている。オペアンプOP5の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP5の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC13は、抵抗R15の第2端とオペアンプOP5の出力端との間に接続されている。キャパシタC14は、オペアンプOP5の第1電源端と接地端との間に接続されている。
抵抗R18の第1端は、オペアンプOP5の出力端に接続されている。抵抗R18の第2端は、抵抗R19を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP6の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP6の反転入力端(−)は、キャパシタC15を介して抵抗R18の第2端に接続される一方、抵抗R20を介してオペアンプOP6の出力端にも接続されている。オペアンプOP6の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP6の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC16は、抵抗R18の第2端とオペアンプOP6の出力端との間に接続されている。キャパシタC17は、オペアンプOP6の第1電源端と接地端との間に接続されている。
抵抗R21の第1端は、オペアンプOP6の出力端に接続されている。抵抗R21の第2端は、抵抗R22を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP7の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP7の反転入力端(−)は、キャパシタC18を介して抵抗R21の第2端に接続される一方、抵抗R23を介してオペアンプOP7の出力端にも接続されている。オペアンプOP7の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP7の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC19は、抵抗R21の第2端とオペアンプOP7の出力端との間に接続されている。キャパシタC20は、オペアンプOP7の第1電源端と接地端との間に接続されている。
なお、上記構成から成るBPF回路250は、0.80〜2.95Hzの通過周波数帯域を持つ。
増幅回路260は、BPF回路250の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP8と、可変抵抗R24(例えば1MΩ)と、抵抗R25(例えば1kΩ)と、キャパシタC21(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP8の非反転入力端(+)は、オペアンプOP7の出力端に接続されている。オペアンプOP8の反転入力端(−)は、可変抵抗R24を介してオペアンプOP8の出力端に接続される一方、抵抗R25を介して中間電圧VMの印加端にも接続されている。オペアンプOP8の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP8の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC21は、オペアンプOP8の第1電源端と接地端との間に接続されている。
中間電圧生成回路260は、電源電圧VDDを1/2に分圧して中間電圧VM(=VDD/2)を生成する回路であり、抵抗R26(例えば1kΩ)と、抵抗R27(例えば1kΩ)と、キャパシタC22(0.1μF)と、を含む。抵抗R26の第1端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。抵抗R26の第2端と抵抗R27の第1端は、いずれも中間電圧VMの印加端に接続されている。抵抗R27の第2端は、接地端に接続されている。キャパシタC22は、抵抗R27に対して並列に接続されている。
第2構成例のフィルタ部27であれば、ユーザ(被験者)の体動ノイズを適切に除去することができるので、ユーザ(被験者)の安静時における脈波はもちろん、ユーザ(被験者)の運動時(例えば歩行時)における脈波についても高精度に検出することが可能となる(図15の上段を参照)。
また、第2構成例のフィルタ部27において、HPF回路210、LPFフィルタ回路230、増幅回路240、BPF回路250、及び、増幅回路260は、いずれも中間電圧VM(=VDD/2)を基準電圧として動作するので、フィルタ部27の出力信号は、中間電圧VMに対して上下に振幅変動する波形となる。従って、第2構成例のフィルタ部27であれば、出力信号の飽和(電源電圧VDDや接地電圧への張り付き)を防止して、脈波データを正しく検出することが可能となる。
<補聴器への適用>
図16は、補聴器への応用例を示すシステム図である。図16の脈波センサ1は、脈波測定機能を備えた補聴器として提供される。なお、脈波センサ1の具体的な構成については、基本的に先出の図4と同様であるが、携帯型オーディオプレーヤではなく補聴器として機能するための構成要素(集音マイクなど)を適宜組み込む必要がある。
また、脈波データやその解析結果(安否情報など)の送信先となる情報端末2は、遠隔地に設置されていることが想定される。従って、本構成を採用する場合、脈波センサ1には、ネットワーク3を介して情報端末2(医療機関のデータサーバや遠隔地の家族が所有するパーソナルコンピュータなど)との接続を確立するための通信部(無線LANモジュールなど)を設けることが望ましい。
補聴器を必要とするユーザ(被験者)の中には、遠隔地からの健康管理や安否確認などを必要とする高齢者が多く含まれている。しかし、高齢者にとって複数の電子機器(ここでは補聴器と脈波センサ)を個別にかつ適切に装着ないし保守管理することは必ずしも容易なことではない。
これに対して、脈波測定機能を備えた補聴器として提供される脈波センサ1は、ユーザ(被験者)にとって補聴器そのものであり、脈波の測定を意識させるものではないので、その装着や保守管理の負担を軽減することが可能となる。また、脈波センサ1から送信されてくる脈波データやその解析結果を遠隔地の情報端末2で監視することにより、ユーザ(被験者)の健康状態に異常が生じた場合であっても迅速に対処することが可能となる。
なお、当然のことながら、オーディオ再生機能や補聴機能などの付加機能を具備しない脈波センサ単体として本発明の構成(外耳Eで脈波を測定するための構成)を実施することも可能である。
<出力波長についての考察>
実験では、いわゆる反射型の脈波センサ1において、発光部の出力波長をλ1(赤外:940nm)、λ2(緑:630nm)、及び、λ3(青:468nm)とし、発光部の出力強度(駆動電流値)を1mA、5mA、10mAに変化させたときの挙動を各々調査した。その結果、およそ波長600nm以下の可視光領域において、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数が大きくなり、測定される脈波のピーク強度が大きくなるため、脈波の波形を比較的取得しやすいことが分かった。
なお、動脈血の酸素飽和度を検出するパルスオキシメータでは、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数(実線)と脱酸素化ヘモグロビンHbの吸収係数(破線)との差違が最大となる近赤外領域の波長(700nm前後)が発光部の出力波長として広く一般的に用いられているが、脈波センサ(特に、いわゆる反射型の脈波センサ)としての利用を考えた場合には、上記の実験結果で示したように、波長600nm以下の可視光領域を発光部の出力波長として用いることが望ましいと言える。
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。