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JP5932487B2 - クロピドグレル含有錠剤及びその製造方法 - Google Patents

クロピドグレル含有錠剤及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、虚血性脳血管障害後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群等の患者の治療に有用なクロピドグレル含有錠剤及びその製造方法に関する。
従来、医薬品の錠剤を、乾式造粒法によって製造する場合においては、乾式破砕法又は溶融造粒法により製した有効成分を含む粒状物に、打錠障害を防止するため適量のステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を添加・混合した後、その混合物を打錠することにより錠剤を製していた。このような打錠により得られた錠剤は、長期又は高温・高湿下の保存のため又はフィルムコーティング時の熱のため、錠剤の生体内投与後又は溶液中で錠剤が長時間にわたり崩壊しない場合があり、薬物の溶出面からの品質上の問題となっていた。
崩壊遅延を防止する方法として、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤にショ糖脂肪酸エステルを併用することによって、クロピドグレル含有錠剤の崩壊遅延を抑制する方法が公知である(特許文献1参照)。しかし、この方法には、乾式破砕法により製した粒状物を用いて打錠した場合には良好な崩壊性を示すものの、クロピドグレルの溶出性が低下する等の問題があり、一方溶融造粒法により製した粒状物を用いて打錠した場合には、崩壊性の改善が未だ不十分である等の問題があった。
特開平7−89875号公報
本発明の目的は、クロピドグレル含有錠剤の崩壊遅延が抑制されているのみならず、クロピドグレルの溶出性も良好なクロピドグレル含有錠剤及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、クロピドグレル含有錠剤を製造する際の滑沢剤として、特にステアリン酸を選択・使用し、且つ、溶融造粒法により製した粒状物を打錠した場合には、錠剤の崩壊遅延が十分に抑制され、しかもクロピドグレルの溶出性が顕著に向上していることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のクロピドグレル含有錠剤及びその製造方法を提供するものである。
1.クロピドグレル又はその塩、及びステアリン酸を含有し、且つ溶融造粒法により得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物を打錠した錠剤であることを特徴とするクロピドグレル含有錠剤。
2.ステアリン酸の含有量が、錠剤全重量に対して0.1〜20重量%である上記項1に記載のクロピドグレル含有錠剤。
3.更に、ショ糖脂肪酸エステルを含有している上記項1又は2に記載のクロピドグレル含有錠剤。
4.溶融造粒法によって得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物に、ステアリン酸を混合後、打錠することを特徴とするクロピドグレル含有錠剤の製造方法。
本発明のクロピドグレル含有錠剤によれば、クロピドグレル含有錠剤を製造する際の滑沢剤として、特にステアリン酸を使用したこと、及び溶融造粒法により製したクロピドグレル又はその塩を含む粒状物を打錠したことによって、以下の如き顕著な効果を得ることができる。
(1)クロピドグレル含有錠剤の崩壊遅延が十分に抑制され、しかもクロピドグレルの溶出性が顕著に向上しているクロピドグレル含有錠剤が提供される。
(2)クロピドグレル含有錠剤の高温及び/又は高湿下での色調変化やクロピドグレルの分解が抑制され、安定化されたクロピドグレル含有錠剤が提供される。
(3)また、本発明のクロピドグレル含有錠剤の製造方法によれば、溶融造粒法によって得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物に、ステアリン酸を混合後、打錠するという簡便な方法で、クロピドグレル含有錠剤の崩壊遅延が十分に抑制され、しかもクロピドグレルの溶出性が顕著に向上している上で、高温及び/又は高湿下での色調変化やクロピドグレルの分解が抑制され、安定化されたクロピドグレル含有錠剤を容易に調製できる。
図1は、実施例3及び比較例9で得たクロピドグレル含有錠剤の溶出試験の結果を示したグラフである。
クロピドグレル含有錠剤
本発明のクロピドグレル含有錠剤は、クロピドグレル又はその塩、及びステアリン酸を含有すること、及び溶融造粒法により得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物を打錠したことを特徴とし、これによってクロピドグレル含有錠剤の崩壊遅延が十分に抑制され、しかもクロピドグレルの溶出性が顕著に向上している上で、高温及び/又は高湿下での色調変化やクロピドグレルの分解が抑制され、安定化されているものである。
ここで、溶融造粒法は、ポリエチレングリコール等の低融点物質の融解により、有効成分及び賦形剤等を付着させ、粒状物を製造する方法である。
本発明のクロピドグレル含有錠剤は、クロピドグレル又はその塩と、滑沢剤としてのステアリン酸とを含有するものであり、更に、製薬分野において通常使用される薬理学的に許容される各種添加剤、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤等を、含有する錠剤である。
クロピドグレル含有錠剤としては、素錠、コーティング錠、徐放錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠等が好ましいものとして、包含される。
クロピドグレル又はその塩
クロピドグレルは、本発明錠剤の薬効成分であり、化学名が(+)−(S)−メチル 2−(2−クロロフェニル)−2−(4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−5−イル)アセテートであり、その塩としては、硫酸塩、塩酸塩、硫酸水素塩、臭化水素塩、タウロコール酸塩等がある。クロピドグレル又はその塩は、肝臓で代謝を受けて生成される活性代謝物が血小板上のADP受容体(P2Y12)に選択的且つ不可逆的に結合することにより、持続的に安定した血小板凝集抑制作用を有しており、虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)等の治療薬として有用である。
添加剤
クロピドグレル又はその塩は、通常、賦形剤、崩壊剤及び結合剤の少なくとも1種の薬理学的に許容可能な添加剤と組み合わせて用いられる。
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプンなどのデンプン類;結晶セルロース、乳糖、粉糖、グラニュー糖、ブドウ糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、第三リン酸カルシウム、キシリトール、ソルビトールなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋化ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン類などが挙げられる。これらの崩壊剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
結合剤としては、慣用の結合剤、例えば、ポリエチレングリコール、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、α化デンプン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらの結合剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの賦形剤、崩壊剤及び結合剤の少なくとも1種である添加剤の総量は、クロピドグレル又はその塩100重量部に対して、100〜5000重量部程度の範囲から選択できる。
本発明のクロピドグレル含有錠剤は、滑沢剤としてのステアリン酸を含有すること、及び溶融造粒法により得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物を打錠することを必須とし、これによってクロピドグレル含有錠剤の崩壊遅延が十分に抑制され、しかもクロピドグレルの溶出性が顕著に向上している上で、高温及び/又は高湿下での色調変化やクロピドグレルの分解が抑制され、安定化されている。ステアリン酸を含有していない場合は、錠剤の崩壊遅延及び類縁体の生成は抑制されない。また、溶融造粒法ではなく、乾式粉砕法により得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物を打錠した場合には、クロピドグレルの溶出性が低下する。滑沢剤としてのステアリン酸の含有量は、通常、錠剤全重量に対して、0.1〜20重量%程度であるのが好ましい。
また、滑沢剤として、ステアリン酸に加えて、ショ糖脂肪酸エステルを併用してもよい。ショ糖脂肪酸エステルを併用する場合には、打錠性が向上するという利点が得られる。
クロピドグレル又はその塩には、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の薬理学的に許容可能な添加剤の他に、さらに、薬理学的に許容可能な慣用の他の添加剤、例えば、流動化剤、帯電防止剤、界面活性剤、矯味剤、湿潤剤、充填剤、増量剤、吸着剤、保存剤(例えば防腐剤など)、緩衝剤、崩壊延長剤、着色剤などを加えてもよい。
上記流動化剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、タルクなどを挙げることができる。帯電防止剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸などを挙げることができる。界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体などの非イオン系界面活性剤などを挙げることができる。矯味剤としては、例えば、ショ糖、乳糖、マンニトール、キシリトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオシド、スクラロース、アセスルファムカリウム、タウマチン、エリスリトールなどの甘味剤;香料などを挙げることができる。湿潤剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコールなどを挙げることができる。
これら慣用の他の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分は、特に、最終錠剤中の含量に制限はない。
本発明のクロピドグレル含有錠剤の製造方法は、溶融造粒法によって得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物に、ステアリン酸を混合後、打錠することを特徴とする。より具体的には、本発明のクロピドグレル含有錠剤は、例えば、クロピドグレル又はその塩と、賦形剤、崩壊剤、結合剤等の添加剤とを、粉体混合後、通常、40〜100℃程度に加温して、ポリエチレングリコール等の低融点物質を融解させて、混合・造粒後、冷却、整粒して、溶融造粒物を調製し、次いで滑沢剤、崩壊剤、賦形剤等を、混合後打錠することによって、錠剤を製造できる。これらの操作の内、溶融造粒操作は、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒機、高速撹拌造粒機、押出造粒機等の装置を使用して行えばよい。また、打錠は、市販の打錠機を使用して、行うことができる。
本発明のクロピドグレル含有錠剤の製造において、素錠又は造粒後の素顆粒等に、コーティングを施してもよい。コーティングをする場合は、フィルムコーティング機、流動層造粒機等の手段により実施するのが好ましい。コーティングには、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒプロメロースフタル酸エステル、酢酸フタル酸セルロース、タルク、酸化チタン、カルナウバロウ、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、白糖等の当該分野で周知のコーティング剤を用いることができる。
本発明のクロピドグレル含有錠剤を使用する場合、ヒトに、虚血性脳血管障害後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群等の患者の治療の有効量を投与すればよい。患者の年令、体重、症状、性別などにより投与量は変わりうるが、通常、1日当たり、1回または必要に応じて数回に分けて、クロピドグレルに換算して、例えば50〜300mg程度を経口的に投与することができる。
本発明錠剤は、例えば、40℃・75%RHで開放下の条件で4週間保存後に崩壊遅延は殆ど認められない。また、40℃・75%RHで開放下の条件で2ヶ月間保存後に変色や類縁体(R体等)の生成が抑えられている。従って、十分な経時安定性を有している。
本発明錠剤は、PTP包装またはボトル包装(例:プラスチック瓶、ガラス瓶、アルミニウム缶)されていてもよい。また、それらの包装された錠剤は、さらにピロー包装等の二次包装されていてもよい。包装中には脱臭剤、乾燥剤、脱酸素剤等を同封しても良い。
以下、試験例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら各例によって何ら制限されるものではない。
各例において、崩壊試験方法、色差測定方法、純度試験方法及び溶出試験方法は、以下の様にして、行った。
崩壊試験方法
崩壊時間(分)の測定は、崩壊試験器(東洋科学産業(株)製)を用いて、第十五改正日本薬局方の崩壊試験に準じて、試験液に水を用いて、補助盤無しで、試験を行った。
色差測定方法
色差の測定は、分光色差計「SE−6000」(日本電色工業(株)製)を用いて、イニシャルとの色差変化をΔEとして算出した。フィルムコーティング錠の場合にはφ6mm測定試料台を使用して、配合試験用混合粉末の場合にはφ10mm丸セルを用いて測定した。
純度試験方法
純度の測定として、HPLCを用いて、下記測定条件でクロピドグレル硫酸塩のピーク面積(保持時間:約12min)を調べて、クロピドグレル原薬のピーク面積に対するR体(保持時間:約20min)のピーク面積比(%)を測定した。試料溶液は、配合試験用混合粉末又はフィルムコーティング錠を粉砕し、メタノール1.5mLを加えて溶解し、アセトニトリルと0.01Mリン酸二水素カリウム溶液との混合液[前者:後者=1:3(容量比)]を加えて50mLとし、次いでろ過して得た。
HPLC測定条件
検出器:紫外吸光光度計(220nm)
カラム:液体クロマトグラフィー用オボムコイド化学結合アミノシリカゲル充填カラム
カラム温度:25℃
移動相:アセトニトリル及び0.01Mリン酸二水素カリウム溶液の混合液
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
溶出試験方法
溶出試験器(富山産業(株)製)を用いて、第十五改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法・毎分50回転)に準じて、試験液に第十五改正日本薬局方の溶出試験第2液(pH6.8)を用いて、溶出試験を行った。各規定時間後のクロピドグレル硫酸塩の溶出率(%)を、HPLCを用いて下記測定条件で測定した。
HPLC測定条件
検出器:紫外吸光光度計(220nm)
カラム:オクチルシリル化シリカゲル
カラム温度:25℃
移動相:pH2.5に調整したリン酸緩衝液及びアセトニトリルの混液
流量:クロピドグレルの保持時間が約3分となるように調整する。
注入量:10μL
試験例1〜7
クロピドグレル硫酸塩と添加剤との配合試験を次の様にして行った。クロピドグレル硫酸塩9gと、下記表1に示した添加剤1gとを、乳鉢中で混合した。この混合物約500mgを、4号褐色瓶に入れ、25℃・75%RH開放下、45℃・75%RH開放下、又は60℃密栓下の条件で、2週間保存後に、色差測定及び純度試験を行って、変色及び類縁体の生成を、調べた。
表1に、各試験例で用いた添加剤、各試験条件下における色差(ΔE)及び類縁体生成率〔R体のピーク面積比(%)〕を示した。表1において、試験例2で用いた硬化油は「ラブリワックス−101」(フロイント(株)製)であり、試験例6で用いたショ糖脂肪酸エステル(F−20W)は「DKエステルF−20W」(HLB=2、第一工業製薬(株)製)であり、試験例7で用いたショ糖脂肪酸エステル(S370F)は「リョートーシュガーエステルS−370F」(HLB=3、三菱化学フーズ(株)製)である。尚、「硬化油」、「ショ糖脂肪酸エステル(F−20W)」及び「ショ糖脂肪酸エステル(S−370F)」は、以下の実施例及び比較例において、同様のものを示す。
Figure 0005932487
表1より、添加剤として、ステアリン酸及び硬化油を用いた試験例1及び2の混合物は、いずれも変色及び類縁体生成が殆ど無いのに対して、試験例3及び4の混合物は、いずれも変色及び類縁体生成が著しく、又試験例5、6及び7の混合物は、いずれも変色があることが明らかである。
実施例1
流動層造粒機(パウレック(株)製)にて、クロピドグレル硫酸塩130.52g、無水乳糖236.96g、部分アルファ化デンプン20.0g、ヒドロキシプロピルセルロース10.8g及びポリエチレングリコール6000の30.0gを、給気温度30℃で混合し、そこにトコフェロール0.12g及びヒドロキシプロピルセルロース1.2gを含むエタノール溶液をスプレーした。続いて給気温度90℃で加温しながら流動させて、ポリエチレングリコール6000の融解による溶融造粒を行い、その後品温40℃まで冷却し、溶融造粒物を得た。得られた溶融造粒物をパワーミルφ1.2mmで整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸10.4gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり110.0mgで打錠し、その後、ヒプロメロース7.0g、ポリエチレングリコール6000の0.7g、タルク0.7g及び酸化チタン1.6gを用いて、常法によりフィルムコーティグを被覆し、1錠あたりのクロピドグレル含有量25mg、1錠重量120.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
比較例1〜7
実施例1において、ステアリン酸10.4gに代えて、硬化油10.4g(比較例1)、ステアリン酸マグネシウム10.4g(比較例2)、ステアリン酸カルシウム10.4g(比較例3)、フマル酸ステアリルナトリウム10.4g(比較例4)、ショ糖脂肪酸エステル(F−20W)10.4g(比較例5)、ショ糖脂肪酸エステル(S−370F)10.4g(比較例6)、又は硬化油6.4gとショ糖脂肪酸エステル(S−370F)4.0g(比較例7)、を用いた以外は、実施例1と同様にして、1錠あたりのクロピドグレル含有量25mg、1錠重量120.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
実施例2
流動層造粒機(パウレック(株)製)にて、クロピドグレル硫酸塩130.52g、無水乳糖242.36g、部分アルファ化デンプン20.0g、ヒドロキシプロピルセルロース5.4g及びポリエチレングリコール6000の30.0gを、給気温度30℃で混合し、そこにトコフェロール0.12g及びヒドロキシプロピルセルロース1.2gを含むエタノール溶液をスプレーした。続いて給気温度90℃で加温しながら流動させて、ポリエチレングリコール6000の融解による溶融造粒を行い、その後品温40℃まで冷却し、溶融造粒物を得た。得られた溶融造粒物をパワーミルφ1.2mmで整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸10.4gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり110.0mgで打錠し、その後、実施例1と同様にフィルムコーティグを被覆し、1錠あたりのクロピドグレル含有量25mg、1錠重量120.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
比較例8
実施例2において、ステアリン酸10.4gに代えて、硬化油10.4g(比較例8)を用いた以外は、実施例2と同様にして、1錠あたりのクロピドグレル含有量25mg、1錠重量120.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
実施例3
流動層造粒機(パウレック(株)製)にて、クロピドグレル硫酸塩130.52g、無水乳糖242.36g、部分アルファ化デンプン20.0g、ヒドロキシプロピルセルロース5.4g及びポリエチレングリコール6000の30.0gを、給気温度30℃で混合し、そこにトコフェロール0.12g及びヒドロキシプロピルセルロース1.2gを含むエタノール溶液をスプレーした。続いて給気温度90℃で加温しながら流動させて、ポリエチレングリコール6000の融解による溶融造粒を行い、その後品温40℃まで冷却し、溶融造粒物を得た。得られた溶融造粒物をパワーミルφ1.2mmで整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸6.4g及びショ糖脂肪酸エステル(S−370F)4.0gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり110.0mgで打錠し、その後、実施例1と同様にフィルムコーティグを被覆し、1錠あたりのクロピドグレル含有量25mg、1錠重量120.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
比較例9
クロピドグレル硫酸塩130.52g、無水乳糖214.96g、部分アルファ化デンプン20.0g、ヒドロキシプロピルセルロース12.0g及びポリエチレングリコール6000の30.0gを、ポリ塩化ビニル製の袋中で混合後、磁性乳鉢に入れ、そこにトコフェロール0.12gを含むエタノール溶液を加えて、均一に分散させた。次に、乾式破砕造粒機(フロイント(株)製)にて造粒を行い、乾式破砕造粒物を得た。得られた乾式破砕造粒物をパワーミルφ1.2mmで整粒し、部分アルファ化デンプン22.0g、ステアリン酸6.4g及びショ糖脂肪酸エステル(S−370F)4.0gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり110.0mgで打錠し、その後、実施例1と同様にフィルムコーティグを被覆し、1錠あたりのクロピドグレル含有量25mg、1錠重量120.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
次に、実施例1〜3及び比較例1〜8で得たクロピドグレル含有錠剤について、60℃・60%RH開放下3週間及び40℃・75%RH開放下4週間保存したときの崩壊時間(min)、40℃・75%RH開放下2ヶ月保存したときの色差(ΔE)、並びに40℃・75%RH開放下2週間保存したときの類縁体生成率〔R体のピーク面積比(%)〕を、それぞれ、前記方法に従って、調べた。
表2及び表3に、実施例1〜3及び比較例1〜8で得たクロピドグレル含有錠剤の崩壊時間(min)、色差(ΔE)、並びに類縁体生成率〔R体のピーク面積比(%)〕を調べた結果を示した。
Figure 0005932487
Figure 0005932487
表2及び表3より、ステアリン酸を使用した実施例1〜3の錠剤は、ステアリン酸を使用していない比較例1〜8の錠剤に比して、加熱及び/又は加湿下に、崩壊時間の遅延が実質的に無く、又保存後に変色や類縁体(R体)の生成が抑制されており、クロピドグレルの安定性が顕著に優れていることが明らかである。
次に、実施例3及び比較例9で得たクロピドグレル含有錠剤について、溶出試験を行った。表4に、溶出試験の結果を示す。各溶出率(%)は、2例の平均値で示した。尚、試験前の溶出率は0%である。
Figure 0005932487
図1に、実施例3及び比較例9で得たクロピドグレル含有錠剤の溶出試験の結果(平均値)を示したグラフを示した。
表4及び図1より、クロピドグレル含有錠剤において、同量のステアリン酸を含有している場合において、溶融造粒法により製した粒状物を用いて打錠した実施例3で得た錠剤が良好な溶出性を示しているのに比して、乾式破砕法により製した粒状物を用いて打錠した比較例9の錠剤では、クロピドグレルの溶出性が大きく低下していることが明らかである。
実施例4
流動層造粒機(パウレック(株)製)にて、クロピドグレル硫酸塩130.52g、無水乳糖228.96g、部分アルファ化デンプン20.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース20.0g及びポリエチレングリコール6000の30.0gを、給気温度30℃で混合し、そこにトコフェロール0.12gを含むエタノール溶液をスプレーした。続いて給気温度90℃で加温しながら流動させて、ポリエチレングリコール6000の融解による溶融造粒を行い、その後品温40℃まで冷却し、溶融造粒物を得た。得られた溶融造粒物をパワーミルφ1.2mmで整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸6.4g及びショ糖脂肪酸エステル(S−370F)4.0gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を打錠機にて1錠あたり110.0mgで打錠し、その後、実施例1と同様にフィルムコーティグを被覆し、1錠あたりのクロピドグレル含有量25mg、1錠重量120.0mgのフィルムコーティング錠を得た。
本発明のクロピドグレル含有錠剤は、虚血性脳血管障害後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群等の患者の治療に有用であり、本発明は製薬分野において有効に利用される。

Claims (4)

  1. クロピドグレル又はその塩を含む溶融造粒物、及びステアリン酸を含有する錠剤であることを特徴とするクロピドグレル含有錠剤。
  2. ステアリン酸の含有量が、錠剤全重量に対して0.1〜20重量%である請求項1に記載のクロピドグレル含有錠剤。
  3. 更に、ショ糖脂肪酸エステルを含有している請求項1又は2に記載のクロピドグレル含有錠剤。
  4. 溶融造粒法によって得られたクロピドグレル又はその塩を含む粒状物に、ステアリン酸を混合後、打錠することを特徴とするクロピドグレル含有錠剤の製造方法。

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