本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
<掘削機械の全体構成>
図1は、実施形態に係る掘削機械の斜視図である。図2は、油圧ショベル100の油圧システム300と制御システム200との構成を示すブロック図である。掘削機械としての油圧ショベル100は、本体部としての車両本体1と作業機2とを有する。車両本体1は、旋回体としての上部旋回体3と走行体としての走行装置5とを有する。上部旋回体3は、機械室3EGの内部に、動力発生装置としてのエンジン35及び油圧ポンプ36、37等の装置を収容している。機械室3EGは、上部旋回体3の一端側に配置されている。
本実施形態において、油圧ショベル100は、動力発生装置としてのエンジン35に、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられるが、動力発生装置はこのようなものに限定されない。油圧ショベル100の動力発生装置は、例えば、内燃機関と発電電動機と蓄電装置とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド方式の装置であってもよい。また、油圧ショベル100の動力発生装置は、内燃機関を有さず、蓄電装置と発電電動機とを組み合わせた、電気駆動式のものであってもよい。
上部旋回体3は、運転室4を有する。運転室4は、上部旋回体3の他端側に設置されている。すなわち、運転室4は、機械室3EGが配置されている側とは反対側に設置されている。運転室4内には、図2に示す、表示部29、操作装置25及び図示しない運転席等が配置される。これらについては後述する。上部旋回体3の上方には、手すり9が取り付けられている。
走行装置5は、上部旋回体3を搭載する。走行装置5は、履帯5a、5bを有している。走行装置5は、左右に設けられた走行モータ5cの一方又は両方が駆動し、履帯5a、5bが回転することにより、油圧ショベル100を旋回走行又は前後進走行させる。作業機2は、上部旋回体3の運転室4の側方側に取り付けられている。
油圧ショベル100は、履帯5a、5bの代わりにタイヤを備え、エンジン35の駆動力を、トランスミッションを介してタイヤへ伝達して走行が可能な走行装置を備えたものであってもよい。このような形態の油圧ショベル100としては、例えば、ホイール式油圧ショベルがある。また、油圧ショベル100は、このようなタイヤを有した走行装置を備え、さらに車両本体(本体部)に作業機が取り付けられ、図1に示すような上部旋回体3及びその旋回機構を備えていない構造を有する、例えばバックホウローダであってもよい。すなわち、バックホウローダは、車両本体に作業機が取り付けられ、車両本体の一部を構成する走行装置を備えたものである。
上部旋回体3は、作業機2及び運転室4が配置されている側が前であり、機械室3EGが配置されている側が後である。つまり、本実施形態では、前後方向がx方向である。前に向かって左側が上部旋回体3の左であり、前に向かって右側が上部旋回体3の右である。上部旋回体3の左右方向は、幅方向とも言う。つまり、本実施形態では、左右方向がy方向である。油圧ショベル100又は車両本体1は、上部旋回体3を基準として走行装置5側が下であり、走行装置5を基準として上部旋回体3側が上である。つまり、本実施形態では、上下方向がz方向である。油圧ショベル100が水平面に設置されている場合、下は鉛直方向、すなわち重力の作用方向側であり、上は鉛直方向とは反対側である。
作業機2は、ブーム6とアーム7と作業具としてのバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して車両本体1の上部旋回体3の前部に回動可能に取り付けられている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に回動可能に取り付けられている。アーム7の基端部とは反対側の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が取り付けられている。バケット8は、バケットピン15を中心として回動する。バケット8は、バケットピン15とは反対側に複数の刃8Bが取り付けられている。刃先8Tは、刃8Bの先端である。
バケット8は、複数の刃8Bを有していなくてもよい。つまり、図1に示すような刃8Bを有しておらず、刃先が鋼板によってストレート形状に形成されたようなバケットであってもよい。作業機2は、例えば、単数の刃を有するチルトバケットを備えていてもよい。チルトバケットとは、チルトシリンダを備え、バケットが左右にチルト傾斜することで油圧ショベル100が傾斜地にあっても、斜面、平地を自由な形に成形、整地をすることができるバケットである。この他にも、作業機2は、バケット8の代わりに、法面バケット又は削岩用のチップを備えた削岩用のアタッチメント等を備えていてもよい。
図1に示すブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ作動油によって伸縮し、駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10は、伸縮することでブーム6を上下に昇降させる。アームシリンダ11は、伸縮することでアームピン14を支点としてアーム7を回動させる。バケットシリンダ12は、伸縮することでリンクを介して、バケットピン15を支点としてバケット8を回動させる。ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを区別しないでまとめて呼ぶ場合、適宜、各油圧シリンダ10、11、12と称する。
ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等の油圧シリンダと図2に示す油圧ポンプ36、37との間には、図2に示す方向制御弁64が設けられている。方向制御弁64は、油圧ポンプ36、37からブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等に供給される作動油の流量を制御するとともに、作動油が流れる方向を切り替える。作動油の流量が制御されることで、各油圧シリンダ10、11、12の伸縮量が制御され、作動油が流れる方向が切り替え制御されることで、各油圧シリンダ10、11、12に伸長動作又は縮む動作をさせるための切り替え制御が行われる。方向制御弁64は、走行モータ5cを駆動するための走行用方向制御弁と、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12並びに上部旋回体3を旋回させる旋回モータ38を制御するための作業機用方向制御弁とを含む。
本実施形態において、操作装置25は、パイロット油圧方式が用いられる。操作装置25には、油圧ポンプ36から、図示しない減圧弁によって所定のパイロット油圧に減圧された作動油がブーム操作、バケット操作、アーム操作及び旋回操作に基づいて供給される。操作装置25から供給される、所定のパイロット油圧に調整された作動油が方向制御弁64の図示しないスプールを動作させると、方向制御弁64から流出する作動油の流量が調整されて、油圧ポンプ36、37からブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、旋回モータ38又は走行モータ5cに供給される作動油の流量が制御される。その結果、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等の動作が制御される。
また、図2に示す作業機制御装置26が、図2に示す制御弁27を制御することにより、操作装置25から方向制御弁64に供給される作動油のパイロット油圧が制御されるので、方向制御弁64からブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12に供給される作動油の流量が制御される。その結果、作業機制御装置26は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等の動作を制御することができる。
上部旋回体3の上部には、アンテナ21、22が取り付けられている。アンテナ21、22は、油圧ショベル100の現在位置を検出するために用いられる。アンテナ21、22は、図2に示す、油圧ショベル100の現在位置を検出するための位置検出部19の一部であり、位置検出装置19Aと電気的に接続されている。位置検出装置19Aは、3次元位置センサとして機能するものであり、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムを言う)を利用して油圧ショベル100の現在位置を検出する。以下の説明において、アンテナ21、22を、適宜GNSSアンテナ21、22という。GNSSアンテナ21、22が受信したGNSS電波に応じた信号は、位置検出装置19Aに入力される。位置検出装置19Aは、GNSSアンテナ21、22の設置位置を検出する。位置検出部19Aは、例えば、3次元位置センサを含む。
GNSSアンテナ21、22は、図1に示すように、上部旋回体3の上であって、油圧ショベル100の左右方向に離れた両端位置に設置されることが好ましい。本実施形態において、GNSSアンテナ21、22は、上部旋回体3の左右の幅方向両側にそれぞれ取り付けられた手すり9に取り付けられる。GNSSアンテナ21、22が上部旋回体3に取り付けられる位置は手すり9に限定されるものではないが、GNSSアンテナ21、22は、可能な限り離れた位置に設置される方が、油圧ショベル100の現在位置の検出精度は向上するので好ましい。また、GNSSアンテナ21、22は、オペレータの視界を極力妨げない位置に設置されることが好ましい。
図2に示すように、油圧ショベル100の油圧システム300は、動力発生源としてのエンジン35及び油圧ポンプ36、37を備える。油圧ポンプ36、37は、エンジン35によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ36、37から吐出された作動油は、ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とに供給される。また、油圧ショベル100は、旋回モータ38を備える。旋回モータ38は、油圧モータであり、油圧ポンプ36、37から吐出された作動油によって駆動される。旋回モータ38は、上部旋回体3を旋回させる。なお、図2では、2つの油圧ポンプ36、37が図示されているが、1つの油圧ポンプのみが設けられてもよい。旋回モータ38は、油圧モータに代えて、電動モータが用いられてもよい。あるいは、油圧モータと電動モータとを一体として、上部旋回体3が旋回減速する場合に電動モータで発電し、電気エネルギーを二次電池等に蓄え、上部旋回体3が旋回加速する場合に油圧モータを電動モータがアシストするような旋回モータ38であってもよい。
掘削機械の制御システムとしての制御システム200は、位置検出部19と、グローバル座標演算部23と、角速度及び加速度を検出する検出装置としてのIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)24と、操作装置25と、作業機制御部としての作業機制御装置26と、センサ制御装置39と、設定部としての表示制御装置28と、表示部29と、通信部40と、さらに各ストロークセンサ16、17、18とを含む。操作装置25は、図1に示す作業機2の動作又は上部旋回体3の旋回を操作するための装置である。操作装置25により、作業機2を動作させる際には、オペレータによる操作を受け付けて、操作量に応じた作動油が各油圧シリンダ10、11、12又は旋回モータ38に供給される。
例えば、操作装置25は、オペレータが運転席に着座した時、オペレータから見て左側に設置される左操作レバー25Lと、オペレータから見て右側に配置される右操作レバー25Rと、を有する。左操作レバー25L及び右操作レバー25Rは、前後左右の動作が2軸の動作に対応されている。例えば、右操作レバー25Rの前後方向の操作は、ブーム6の操作に対応されている。右操作レバー25Rが前方へ操作されるとブーム6が下がり、後方へ操作されるとブーム6が上がる。すなわち、右操作レバー25Rの前後方向の操作に応じてブーム6の上げ下げの動作が実行される。右操作レバー25Rの左右方向の操作は、バケット8の操作に対応されている。右操作レバー25Rが左側に操作されるとバケット8が掘削動作し、右側に操作されるとバケット8が排土動作(ダンプ)する。すなわち、右操作レバー25Rの左右方向の操作に応じてバケット8の掘削又は排土の動作が実行される。左操作レバー25Lの前後方向の操作は、アーム7の操作に対応されている。左操作レバー25Lが前方に操作されるとアーム7が排土動作(ダンプ)し、後方に操作されるとアーム7が掘削動作する。左操作レバー25Lの左右方向の操作は、上部旋回体3の旋回に対応されている。左操作レバー25Lが左側に操作されると上部旋回体3は左旋回し、右側に操作されると上部旋回体3は右旋回する。前述した、各操作レバー25R、25Lの操作方向と作業機2又は上部旋回体3の動きとの関係は、例示的に示したものである。したがって、各操作レバー25R、25Lの操作方向と作業機2又は上部旋回体3の動きとの関係は、前述した関係と異なる関係であってもよい。なお、運転室4の内部には、図1に示す走行装置5を動作させるための走行操作装置も備えてある。その走行操作装置は、例えばレバーによって構成され、図示しない運転席の前方に配置され、オペレータがそのレバーを操作することで、走行装置5が駆動し、油圧ショベル100を旋回走行又は前後進走行することができる。
右操作レバー25Rの前後方向の操作に応じて、パイロット油路450へパイロット油圧が供給可能とされて、オペレータによるブーム6の操作が受け付けられる。右操作レバー25Rの操作量に応じて右操作レバー25Rが備える弁装置が開き、パイロット油路450へ作動油が供給される。また、圧力センサ66は、そのときのパイロット油路450内における作動油の圧力をパイロット油圧として検出する。圧力センサ66は、検出したパイロット油圧を、ブーム操作量MBとして作業機制御装置26へ送信する。右操作レバー25Rの前後方向の操作量を、以下、適宜ブーム操作量MBと称する。操作装置25とブームシリンダ10との間のパイロット油路50には、圧力センサ68、制御弁(以下、適宜介入弁と称する)27C及びシャトル弁51が設けられる。介入弁27C及びシャトル弁51については後述する。
右操作レバー25Rの左右方向の操作に応じて、パイロット油路450へパイロット油圧が供給可能とされて、オペレータによるバケット8の操作が受け付けられる。右操作レバー25Rの操作量に応じて右操作レバー25Rが備える弁装置が開き、パイロット油路450に作動油が供給される。また、圧力センサ66は、そのときのパイロット油路450内における作動油の圧力をパイロット油圧として検出する。圧力センサ66は、検出したパイロット油圧を、バケット操作量MTとして作業機制御装置26へ送信する。右操作レバー25Rの左右方向の操作量を、以下、適宜バケット操作量MTと称する。
左操作レバー25Lの前後方向の操作に応じて、パイロット油路450へパイロット油圧が供給可能とされて、オペレータによるアーム7の操作が受け付けられる。左操作レバー25Lの操作量に応じて左操作レバー25Lが備える弁装置が開き、パイロット油路450へ作動油が供給される。また、圧力センサ66は、そのときのパイロット油路450内における作動油の圧力をパイロット油圧として検出する。圧力センサ66は、検出したパイロット油圧を、アーム操作量MAとして作業機制御装置26へ送信する。左操作レバー25Lの前後方向の操作量を、以下、適宜アーム操作量MAと称する。
左操作レバー25Lの左右方向の操作に応じて、パイロット油路450へパイロット油圧が供給可能とされて、オペレータによる上部旋回体3の旋回操作が受け付けられる。左操作レバー25Lの操作量に応じて左操作レバー25Lが備える弁装置が開き、パイロット油路450へ作動油が供給される。また、圧力センサ66は、そのときのパイロット油路450内における作動油の圧力をパイロット油圧として検出する。圧力センサ66は、検出したパイロット油圧を、旋回操作量MRとして作業機制御装置26へ送信する。左操作レバー25Lの左右方向の操作量を、以下、適宜旋回操作量MRと称する。
右操作レバー25Rが操作されることにより、操作装置25は、右操作レバー25Rの操作量に応じた大きさのパイロット油圧を方向制御弁64に供給する。左操作レバー25Lが操作されることにより、操作装置25は、左操作レバー25Lの操作量に応じた大きさのパイロット油圧を方向制御弁64に供給する。このパイロット油圧によって、方向制御弁64のスプールが動作する。
パイロット油路450には、制御弁27が設けられている。右操作レバー25R及び左操作レバー25Lの操作量は、パイロット油路450に設置される圧力センサ66によって検出される。圧力センサ66が検出したパイロット油圧の信号は、作業機制御装置26に入力される。作業機制御装置26は、入力されたパイロット油圧に応じた、パイロット油路450に対する制御信号Nを制御弁27に出力する。制御信号Nを受け取った制御弁27は、パイロット油路450を開閉する。
左操作レバー25L及び右操作レバー25Rの操作量が、例えば、ポテンショメータ及びホールIC等によって検出され、作業機制御装置26は、これらの検出値に基づいて方向制御弁64及び制御弁27を制御することによって、作業機2及び旋回モータ38を制御してもよい。このように、左操作レバー25L及び右操作レバー25Rは、電気方式であってもよい。
制御システム200は、前述したように、第1ストロークセンサ16と第2ストロークセンサ17と第3ストロークセンサ18とを有する。例えば、第1ストロークセンサ16はブームシリンダ10に、第2ストロークセンサ17はアームシリンダ11に、第3ストロークセンサ18はバケットシリンダ12に、それぞれ設けられる。各ストロークセンサ16、17、18は、例えば、図示しないシリンダロッドの伸縮を検出するロータリーエンコーダを用いることができるが、距離センサ等を用いてもよい。
第1ストロークセンサ16は、ブームシリンダ10のストローク長さLS1を検出する。具体的には、第1ストロークセンサ16は、ブームシリンダ10のシリンダロッドの伸縮量を検出する。第1ストロークセンサ16は、ブームシリンダ10の伸縮に対応する変位量を検出して、センサ制御装置39に出力する。センサ制御装置39は、第1ストロークセンサ16の変位量に対応するブームシリンダ10のシリンダ長(以下、適宜ブームシリンダ長と称する)を算出する。センサ制御装置39は、算出したブームシリンダ長から、油圧ショベル100のローカル座標系、具体的には車両本体1のローカル座標系における水平面と直交する方向(z軸方向)に対するブーム6の傾斜角θ1(図3A参照)を算出して、作業機制御装置26及び表示制御装置28に出力する。
第2ストロークセンサ17は、アームシリンダ11のストローク長さLS2を検出する。具体的には、第2ストロークセンサ17は、アームシリンダ11のシリンダロッドの伸縮量を検出する。第2ストロークセンサ17は、アームシリンダ11の伸縮に対応する変位量を検出して、センサ制御装置39に出力する。センサ制御装置39は、第2ストロークセンサ17の変位量に対応するアームシリンダ11のシリンダ長(以下、適宜アームシリンダ長と称する)を算出する。
センサ制御装置39は、第2ストロークセンサ17が検出したアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の傾斜角θ2(図3A参照)を算出して、作業機制御装置26及び表示制御装置28に出力する。第3ストロークセンサ18は、バケットシリンダ12のストローク長さLS3を検出する。具体的には、第3ストロークセンサ18は、バケットシリンダ12のシリンダロッドの伸縮量を検出する。第3ストロークセンサ18は、バケットシリンダ12の伸縮に対応する変位量を検出して、センサ制御装置39に出力する。センサ制御装置39は、第3ストロークセンサ18の変位量に対応するバケットシリンダ12のシリンダ長(以下、適宜バケットシリンダ長と称する)を算出する。
センサ制御装置39は、第3ストロークセンサ18が検出したバケットシリンダ長から、アーム7に対するバケット8が有するバケット8の刃先8Tの傾斜角θ3(図3A参照)を算出して、作業機制御装置26及び表示制御装置28に出力する。ブーム6、アーム7及びバケット8の傾斜角θ1、傾斜角θ2及び傾斜角θ3は、第1ストロークセンサ16等で計測する以外に、ブーム6に取り付けられてブーム6の傾斜角を計測するロータリーエンコーダと、アーム7に取り付けられてアーム7の傾斜角を計測するロータリーエンコーダと、バケット8に取り付けられてバケット8の傾斜角を計測するロータリーエンコーダとによって取得されてもよい。
作業機制御装置26は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の作業機用記憶部26Mと、CPU(Central Processing Unit)等の作業機用処理部26Pとを有する。作業機制御装置26は、図2に示す圧力センサ66の検出値に基づいて、制御弁27及び介入弁27Cを制御する。
図2に示す方向制御弁64は、例えば比例制御弁であり、操作装置25から供給される作動油によって制御される。方向制御弁64は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12及び旋回モータ38等の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ36、37との間に配置される。方向制御弁64は、油圧ポンプ36、37からブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12及び旋回モータ38に供給される作動油の流量を制御する。
制御システム200が備える位置検出部19は、油圧ショベル100の位置を検出する。位置検出部19は、前述したGNSSアンテナ21、22を含む。GNSSアンテナ21、22で受信されたGNSS電波に応じた信号が、グローバル座標演算部23に入力される。GNSSアンテナ21は、自身の位置を示す基準位置データP1を測位衛星から受信する。GNSSアンテナ22は、自身の位置を示す基準位置データP2を測位衛星から受信する。GNSSアンテナ21、22は、所定の周期で基準位置データP1、P2を受信する。基準位置データP1、P2は、GNSSアンテナ21、22が設置されている位置の情報である。GNSSアンテナ21、22及び位置検出部19は、基準位置データP1、P2を受信する毎に、グローバル座標演算部23に出力する。
グローバル座標演算部23は、グローバル座標系で表される2つの基準位置データP1、P2(複数の基準位置データ)を取得する。グローバル座標演算部23は、2つの基準位置データP1、P2に基づいて、上部旋回体3の配置を示す旋回体配置データを生成する。本実施形態において、旋回体配置データには、2つの基準位置データP1、P2の一方の基準位置データPと、2つの基準位置データP1、P2に基づいて生成された旋回体方位データQとが含まれる。旋回体方位データQは、GNSSアンテナ21、22が取得した基準位置データPから決定される方位が、グローバル座標の基準方位(例えば北)に対してなす角に基づいて決定される。旋回体方位データQは、上部旋回体3、すなわち作業機2が向いている方位を示している。グローバル座標演算部23は、所定の周波数でGNSSアンテナ21、22から2つの基準位置データP1、P2を取得する毎に、旋回体配置データ、すなわち基準位置データPと旋回体方位データQとを更新して、表示制御装置28に出力する。
IMU24は、上部旋回体3に取り付けられている。IMU24は、上部旋回体3の動作を示す動作データを検出する。IMU24が検出する動作データは、例えば、加速度及び角速度(旋回角速度ω)である。IMU24は、油圧ショベル100のロール角(傾斜角θ4)やピッチ角(傾斜角θ5)を出力してもよい。本実施形態において、動作データは、図1に示す、上部旋回体3の旋回軸zを中心として上部旋回体3が旋回する旋回角速度ωである。
図3Aは、油圧ショベル100の側面図である。図3Bは、油圧ショベル100の背面図である。IMU24は、上記及び図3A及び図3Bに示すように、車両本体1の左右方向に対するロール角である傾斜角θ4と、車両本体1の前後方向に対するピッチ角である傾斜角θ5と、加速度と、角速度(旋回角速度ω)とを検出する。IMU24は、例えば所定の周波数で旋回角速度ω、傾斜角θ4及び傾斜角θ5を更新する。IMU24における更新周期は、グローバル座標演算部23における更新周期よりも短いことが好ましい。IMU24が検出した旋回角速度ω、傾斜角θ4及び傾斜角θ5は、センサ制御装置39に出力される。センサ制御装置39は、旋回角速度ω、傾斜角θ4及び傾斜角θ5に対してフィルタ処理等を施してから、作業機制御装置26及び表示制御装置28に出力する。
表示制御装置28は、グローバル座標演算部23から旋回体配置データ(基準位置データP及び旋回体方位データQ)を取得する。本実施形態において、表示制御装置28は、作業機位置データとして、バケット8の刃先8Tの3次元位置を示すバケット刃先位置データSを生成する。そして、表示制御装置28は、バケット刃先位置データSと、後述する目標施工情報Tとを用いて、掘削対象の目標形状を示す情報としての目標掘削地形データUを生成する。表示制御装置28は、目標掘削地形データUに基づく表示用の目標掘削地形データUaを導出し、表示用の目標掘削地形データUaに基づいて、表示部29に目標掘削地形43Iを表示させる。本実施形態において、表示制御装置28は、通信部40がアンテナ40Aを介した無線通信により油圧ショベル100の外部から受け取って取得した設計面情報Tを記憶部28Mに記憶する。設計面情報TIは、後述する目標施工情報Tを含み、以下、適宜、目標施工情報Tと称する。設計面情報TIは、作業機2が掘削する掘削対象に関する情報である。掘削対象に関する情報は、より具体的には、掘削対象の目標形状を示す施工情報(目標施工情報T)を含むものである。設計面情報TIは、油圧ショベル100で施工する必要がない部分の地形形状に関する情報を含むことがある。一方、設計面情報TIは、施工により掘削する必要がある部分での地形形状に関する情報のみ、すなわち目標形状を示す施工情報のみであって設計面情報TIと目標施工情報Tとが同一であることがある。通信部40は、後述するように有線通信又は有線接続により、油圧ショベル100の外部から目標施工情報Tを取得できるものでもよい。目標施工情報Tについての詳細は後述する。
表示部29は、例えば、液晶表示装置等であるが、これに限定されるものではなく、タッチパネルを用いてもよい。本実施形態においては、表示部29に隣接して、スイッチ29S及び入力部29Iが設置されている。スイッチ29Sは、後述する掘削制御を実行するか否かを選択するための入力装置である。表示部29にタッチパネルを用いる場合、スイッチ29S及び入力部29Iが一体となり、表示部29を触れることでスイッチ29S及び入力部29Iに割り当てられた機能が働く。入力部29Iは、例えば、油圧ショベル100のオペレータが、表示部29に表示させる目標掘削地形43Iを含む目標施工面を選択したり、後述する掘削制御の対象となる目標施工面の範囲を選択したりするために用いられる。
作業機制御装置26は、図1に示す旋回軸zを中心として上部旋回体3が旋回する旋回速度を示す旋回角速度ωをセンサ制御装置39から取得する。また、作業機制御装置26は、圧力センサ66からブーム操作量MB、バケット操作量MT、アーム操作量MA及び旋回操作量MR並びにこれらを示す信号を取得する。さらに、作業機制御装置26は、センサ制御装置39からブーム6の傾斜角度θ1、アーム7の傾斜角度θ2及びバケット8の傾斜角度θ3といった作業機角度並びに傾斜角θ4及び傾斜角θ5といった車体傾斜角度を取得する。
作業機制御装置26は、表示制御装置28から、目標掘削地形データUを取得する。作業機制御装置26は、センサ制御装置39から取得した作業機角度及び車体傾斜角度からバケット8の刃先8Tの位置(以下、適宜刃先位置と称する)を算出する。作業機制御装置26は、バケット8の刃先8Tが目標掘削地形データUを掘り込んで侵食しないように目標掘削地形データUに沿ってバケット8の刃先8Tが移動するように、操作装置25から入力されたブーム操作量MB、バケット操作量MT及びアーム操作量MAを、目標掘削地形データUと、バケット8の刃先8Tとの距離と作業機2の速度と、に基づき調整する。作業機制御装置26は、目標掘削地形データUに沿ってバケット8の刃先8Tが移動するように作業機2を制御するための制御信号Nを生成して、図2に示す制御弁27に出力する。このような処理により、作業機2が目標掘削地形データUに近づく速度は、目標掘削地形データUに対する距離に応じて制限される。
作業機制御装置26から出力された制御信号Nに応じて、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12のそれぞれに対して2個ずつ設けられた制御弁27が開閉する。左操作レバー25L又は右操作レバー25Rの操作と制御弁27の開閉指令とに基づき、方向制御弁64のスプールが動作して、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12へ供給される作動油が調整される。
グローバル座標演算部23は、グローバル座標系におけるGNSSアンテナ21、22の基準位置データP1、P2を検出する。グローバル座標系は、油圧ショベル100の作業エリアGDに設置された基準となる、例えば基準杭60の基準位置PGを基準とした、(X、Y、Z)で示される3次元座標系である。図3Aに示すように、基準位置PGは、例えば、作業エリアGDに設置された基準杭60の先端60Tに位置する。本実施形態において、グローバル座標系とは、例えば、GNSSにおける座標系である。
図2に示す表示制御装置28は、位置検出部19による検出結果に基づいて、グローバル座標系で見たときのローカル座標系の位置を算出する。ローカル座標系とは、油圧ショベル100を基準とした、(x、y、z)で示される3次元座標系である。本実施形態において、ローカル座標系の基準位置PLは、例えば、上部旋回体3が旋回するためのスイングサークル上に位置する。本実施形態において、例えば、作業機制御装置26は、次のようにしてグローバル座標系で見たときのローカル座標系の位置を算出する。
センサ制御装置39は、第1ストロークセンサ16が検出したブームシリンダ長から、ローカル座標系における水平面と直交する方向(z軸方向)に対するブーム6の傾斜角θ1を算出する。センサ制御装置39は、第2ストロークセンサ17が検出したアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の傾斜角θ2を算出する。センサ制御装置39は、第3ストロークセンサ18が検出したバケットシリンダ長から、アーム7に対するバケット8の傾斜角θ3を算出する。
作業機制御装置26の作業機用記憶部26Mは、作業機2のデータ(以下、適宜作業機データという)を記憶している。作業機データは、ブーム6の長さL1、アーム7の長さL2及びバケット8の長さL3を含む。図3Aに示すように、ブーム6の長さL1は、ブームピン13からアームピン14までの長さに相当する。アーム7の長さL2は、アームピン14からバケットピン15までの長さに相当する。バケット8の長さL3は、バケットピン15からバケット8の刃先8Tまでの長さに相当する。刃先8Tは、図1に示す刃8Bの先端である。また、作業機データは、ローカル座標系の基準位置PLに対するブームピン13までの位置情報を含む。
図4は、掘削対象の目標形状を示す施工情報の一例を示す模式図である。図4に示すように、油圧ショベル100が備える作業機2によって掘削される対象であって、その掘削される対象の掘削後における仕上がりの目標となる目標施工情報Tは、三角形ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の目標施工面41を含む。目標施工情報Tは、目標施工面41のような面に関する情報でなく、線又は点の少なくとも一方を示す情報によって、掘削対象の目標形状を示す施工情報を構成するようなものであってもよい。つまり、目標施工情報Tは、面、線及び点の少なくとも一つの形態を含む情報によって掘削対象の目標形状を示す施工情報であればよい。図4では複数の目標施工面41のうち1つのみに符号41が付されており、他の目標施工面41の符号は省略されている。作業機制御装置26は、バケット8が目標掘削地形データUa、すなわち目標掘削地形43Iを侵食することを抑制するために、作業機2が掘削対象に接近する方向の速度が制限速度以下になるように制御する。この制御を、適宜掘削制御という。次に、作業機制御装置26によって実行される掘削制御について説明する。
<掘削制御について>
図5は、作業機制御装置26及び表示制御装置28を示すブロック図である。図6は、表示部29に表示される目標掘削地形43Iの一例を示す図である。図7は、目標速度と垂直速度成分と水平速度成分との関係を示す模式図である。図8は、垂直速度成分と水平速度成分との算出方法を示す図である。図9は、垂直速度成分と水平速度成分との算出方法を示す図である。図10は、刃先と目標施工面との間の距離を示す模式図である。図11は、制限速度情報の一例を示すグラフである。図12は、ブームの制限速度の垂直速度成分の算出方法を示す模式図である。図13は、ブームの制限速度の垂直速度成分とブームの制限速度との関係を示す模式図である。図14は、刃先の移動によるブームの制限速度の変化の一例を示す図である。
図2及び図5に示すように、表示制御装置28は、目標掘削地形データUを生成して作業機制御装置26に出力する。掘削制御は、例えば、油圧ショベル100のオペレータが、図2に示すスイッチ29Sを用いて掘削制御を実行することを選択した場合(掘削制御モード)に実行される。掘削制御モードになっている状態で、実際に、作業機2が掘削のための動作をしていても、作業機2が停止していても、掘削制御は実行中であると定義する。掘削制御モードを解除して作業機2を操作したい場合は、オペレータがスイッチ29Sを操作することで掘削制御モードを解除することができる。また、オペレータがイグニッションキー103をオフの状態(キーオフ)にしてエンジン35を停止させた場合、掘削制御モードは自動的に解除される。キーオフにされたとき、すでに管理サーバー111から送信された更新命令PCを受けているのであれば、後述のように目標施工情報Tの更新処理が実行される。
掘削制御モードに移行する方法として、バケット8の刃先8Tの位置と目標掘削地形データU(目標掘削地形43I)の所定の位置との距離が所定の距離内にあるときに、掘削制御モード(掘削制御は実行中)に移行する方法がある。掘削制御モードを解除する場合、バケット8又は作業機2が動いて、掘削対象から離れて、刃先8Tの位置と目標掘削地形データU(目標掘削地形43I)の所定の位置との距離が、所定の距離を超えた場合に、掘削制御モードを解除するようにしてもよい。
掘削制御が実行されるにあたって、作業機制御装置26は、ブーム操作量MB、アーム操作量MA及びバケット操作量MT並びに表示制御装置28から取得した目標掘削地形データU及びセンサ制御装置39から取得した作業機角度θ1、θ2、θ3を用いて、掘削制御に必要なブーム指令信号CBIと、必要に応じてアーム指令信号及びバケット指令信号を生成し、制御弁27及び介入弁27Cを駆動して作業機2を制御する。
表示制御装置28について詳細に説明する。表示制御装置28は、目標施工情報格納部28Aと、バケット刃先位置データ生成部28Bと、目標掘削地形データ生成部28Cとを含む。目標施工情報格納部28Aは、表示制御装置28の記憶部28Mの一部であり、作業エリアGDにおける目標形状を示す情報としての目標施工情報Tを格納している。目標施工情報Tは、掘削対象の目標形状を示す情報としての目標掘削地形データUを生成するために必要とされる座標データ及び角度データを含んでいる。目標施工情報Tは、複数の目標施工面41の位置情報を含む。
掘削制御を実行するために作業機制御装置26が作業機2を制御したり、表示部29に目標掘削地形データUaを表示させたりするために必要な目標施工情報Tは、例えば、図2及び図5に示すアンテナ40A及び通信部40を介した無線通信によって、管理センター110の管理サーバー111から目標施工情報格納部28Aにダウンロードされる。また、目標施工情報Tは、これを保存している端末装置である、例えばパーソナルコンピュータ又は携帯端末装置が表示制御装置28に無線通信により接続されて、目標施工情報格納部28Aにダウンロードされてもよいし、通常は油圧ショベル100に装備されておらず、管理者等が持ち運び可能な、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記憶装置に目標施工情報Tを格納しておき、その記憶装置が表示制御装置28に有線接続されて目標施工情報格納部28Aに転送されてもよい。この場合、有線接続とは、記憶装置と表示制御装置28とを通信ケーブル等の有線で接続するもの及び記憶装置が表示制御装置28に設けた接続口(ポート)等に直接接続されるものを含む。他の例として、目標施工情報Tは、これを保存している端末装置である、例えばパーソナルコンピュータ又は携帯端末装置が表示制御装置28に有線通信により接続されて、目標施工情報格納部28Aにダウンロードされてもよい。このような記憶装置による有線接続又は端末装置の有線通信による目標施工情報Tのダウンロードの際は、入出力のポートを有した入出力装置が通信部40として用いられる。つまり、以上に述べた通信部40は、管理サーバー111、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置又は記憶装置といった外部装置と通信することができる。
バケット刃先位置データ生成部28Bは、グローバル座標演算部23から取得する基準位置データP及び旋回体方位データQに基づいて、上部旋回体3の旋回軸zを通る油圧ショベル100の旋回中心の位置を示す旋回中心位置データXRを生成する。旋回中心位置データXRは、ローカル座標系の基準位置PLとxy座標が一致する。
バケット刃先位置データ生成部28Bは、旋回中心位置データXRと、作業機2の作業機角度θ1、θ2、θ3と、作業機制御装置26の作業機用記憶部26Mから作業機データL1、L2、L3と、ローカル座標系の基準位置PLに対するブームピン13までの位置情報とに基づいて、バケット8の刃先8Tの現在位置を示すバケット刃先位置データSを生成する。作業機用処理部26Pは、作業機制御装置26においても、作業機角度θ1、θ2、θ3、作業機データL1、L2、L3及びローカル座標系の基準位置PLに対するブームピン13までの位置情報に基づいて、バケット8の刃先8Tの現在位置を示すバケット刃先位置データSを生成する。
バケット刃先位置データ生成部28Bは、前述したように、所定の周波数で基準位置データPと旋回体方位データQとをグローバル座標演算部23から取得する。したがって、バケット刃先位置データ生成部28Bは、所定の周波数でバケット刃先位置データSを更新することができる。バケット刃先位置データ生成部28Bは、更新したバケット刃先位置データSを目標掘削地形データ生成部28Cに出力する。
目標掘削地形データ生成部28Cは、目標施工情報格納部28Aに格納された目標施工情報Tと、バケット刃先位置データ生成部28Bからのバケット刃先位置データSと、を取得する。目標掘削地形データ生成部28Cは、ローカル座標系において刃先8Tの現時点における刃先位置P4を通る垂線と目標施工面41との交点を掘削対象位置44として設定する。掘削対象位置44は、バケット8の刃先位置P4の直下の点である。目標掘削地形データ生成部28Cは、目標施工情報Tとバケット刃先位置データSとに基づいて、図4に示すように、上部旋回体3の前後方向で規定され、かつ掘削対象位置44を通る作業機2の平面42と、複数の目標施工面41で表される目標施工情報Tとの交線43を、目標掘削地形43Iの候補線として取得する。掘削対象位置44は、候補線上の一点である。平面42は、作業機2が動作する平面(動作平面)である。
作業機2の動作平面は、油圧ショベル100のローカル座標系のz軸側から見たとき、ブーム6及びアーム7がy軸方向に移動しないような図1のような油圧ショベル100の場合、油圧ショベル100のxz平面と平行な平面である。油圧ショベル100のローカル座標系のz軸側から見たとき、ブーム6及びアーム7の少なくとも一方がy軸方向に移動するような作業機2の構造を有する油圧ショベルの場合、作業機2の動作平面は、アーム7が回動する軸、すなわち図1に示すアームピン14の軸線と直交する平面である。以下において、作業機2の動作平面をアーム動作平面と称する。
目標掘削地形データ生成部28Cは、目標施工情報Tの掘削対象位置44の前後における単数又は複数の変曲点とその前後の線とを、掘削対象となる目標掘削地形43Iとして決定する。図4に示す例では、2個の変曲点Pv1、Pv2とその前後の線とが目標掘削地形43Iとして決定される。そして、目標掘削地形データ生成部28Cは、掘削対象位置44の前後における単数又は複数の変曲点の位置情報とその前後の線の角度情報とを、掘削対象の目標形状を示す情報である目標掘削地形データUとして生成する。本実施形態において、目標掘削地形43Iは線で規定しているが、例えばバケット8の幅等に基づき、面として規定されていてもよい。このようにして生成された目標掘削地形データUは、複数の目標施工面41の一部の情報を有している。目標掘削地形データ生成部28Cは、生成した目標掘削地形データUを作業機制御装置26に出力する。本実施形態において、表示制御装置28と作業機制御装置26とは直接信号のやり取りをするが、例えば、CAN(Controller Area Network)のような車内信号線を介して信号をやり取りしてもよい。
本実施形態において、目標掘削地形データUは、作業機2が動作する動作平面としての平面42と、目標形状を示す少なくとも1つの目標施工面(第1の目標施工面)41とが交差する部分における情報である。平面42は、図3A、図3Bに示すローカル座標系(x、y、z)におけるxz平面である。平面42によって、複数の目標施工面41を切り出すことによって得られた目標掘削地形データUを、適宜前後方向目標掘削地形データUと称する。
表示制御装置28は、必要に応じて、第1目標掘削地形情報としての前後方向目標掘削地形データUに基づいて表示部29に目標掘削地形43Iを表示させる。表示用の情報としては、表示用の目標掘削地形データUaが用いられる。表示用の目標掘削地形データUaに基づき、例えば、図2に示すような、バケット8の掘削対象として設定された目標掘削地形43Iと刃先8Tとの位置関係を示す画像が、表示部29に表示される。表示制御装置28は、表示用の目標掘削地形データUaに基づいて表示部29に目標掘削地形(表示用の目標掘削地形)43Iを表示する。作業機制御装置26に出力された前後方向目標掘削地形データUは掘削制御に用いられる。掘削制御に用いられる目標掘削地形データUを、適宜作業用目標掘削地形データUと称する。
目標掘削地形データ生成部28Cは、前述したように、所定の周波数でバケット刃先位置データSをバケット刃先位置データ生成部28Bから取得する。したがって、目標掘削地形データ生成部28Cは、所定の周波数で前後方向目標掘削地形データUを更新し、作業機制御装置26に出力することができる。次に、作業機制御装置26について詳細を説明する。
作業機制御装置26は、前述の作業機用記憶部26Mと作業機用処理部26Pとを備える。作業機用処理部26Pの構成は、図5に詳細を示すように目標速度決定部52と、距離取得部53と、制限速度決定部54と、作業機制御部57とを有する。作業機制御装置26は、前述した前後方向目標掘削地形データUに基づく目標掘削地形43Iを用いて掘削制御を実行する。このように、本実施形態では、表示に用いられる目標掘削地形43Iと、掘削制御に用いられる目標掘削地形43Iとがある。前者を表示用目標掘削地形と称し、後者を掘削制御用目標掘削地形と称する。
前述したように、本実施形態において、目標速度決定部52、距離取得部53、制限速度決定部54及び作業機制御部57の機能は、図2に示す作業機用処理部26Pが実現する。次に、作業機制御装置26による掘削制御について説明する。
目標速度決定部52は、ブーム目標速度Vc_bmと、アーム目標速度Vc_amと、バケット目標速度Vc_bktとを決定する。ブーム目標速度Vc_bmは、ブームシリンダ10のみが駆動されるときの刃先8Tの速度である。アーム目標速度Vc_amは、アームシリンダ11のみが駆動されるときの刃先8Tの速度である。バケット目標速度Vc_bktは、バケットシリンダ12のみが駆動されるときの刃先8Tの速度である。ブーム目標速度Vc_bmは、ブーム操作量MBに応じて算出される。アーム目標速度Vc_amは、アーム操作量MAに応じて算出される。バケット目標速度Vc_bktは、バケット操作量MTに応じて算出される。
作業機用記憶部26Mは、ブーム操作量MBとブーム目標速度Vc_bmとの関係を規定する目標速度情報を記憶している。目標速度決定部52は、目標速度情報を参照することにより、ブーム操作量MBに対応するブーム目標速度Vc_bmを決定する。目標速度情報は、例えば、ブーム操作量MBに対するブーム目標速度Vc_bmの大きさが記述されたグラフである。目標速度情報は、テーブル又は数式等の形態でもよい。目標速度情報は、アーム操作量MAとアーム目標速度Vc_amとの関係を規定する情報を含む。目標速度情報は、バケット操作量MTとバケット目標速度Vc_bktとの関係を規定する情報を含む。目標速度決定部52は、目標速度情報を参照することにより、アーム操作量MAに対応するアーム目標速度Vc_amを決定する。目標速度決定部52は、目標速度情報を参照することにより、バケット操作量MTに対応するバケット目標速度Vc_bktを決定する。目標速度決定部52は、図7に示すように、ブーム目標速度Vc_bmを、目標掘削地形43I(目標掘削地形データU)に垂直な方向の速度成分(以下、適宜垂直速度成分と称する)Vcy_bm及び目標掘削地形43I(目標掘削地形データU)に平行な方向の速度成分(以下、適宜水平速度成分と称する)Vcx_bmに変換する。
例えば、まず、目標速度決定部52は、傾斜角θ5をセンサ制御装置39から取得し、グローバル座標系の垂直軸に対して目標掘削地形43Iと直交する方向における傾きを求める。そして、目標速度決定部52は、これらの傾きからローカル座標系の垂直軸と目標掘削地形43Iに直交する方向との傾きを表す角度β2(図8参照)を求める。
次に、目標速度決定部52は、図8に示すように、ローカル座標系の垂直軸とブーム目標速度Vc_bmの方向とのなす角度β2とから、三角関数によりブーム目標速度Vc_bmをローカル座標系の垂直軸方向の速度成分VL1_bmと水平軸方向の速度成分VL2_bmとに変換する。そして、図9に示すように、目標速度決定部52は、前述したローカル座標系の垂直軸と目標掘削地形43Iに直交する方向との傾きβ1から、三角関数により、ローカル座標系の垂直軸方向における速度成分VL1_bmと水平軸方向における速度成分VL2_bmとを、前述した目標掘削地形43Iに対する垂直速度成分Vcy_bm及び水平速度成分Vcx_bmとに変換する。同様に、目標速度決定部52は、アーム目標速度Vc_amを、ローカル座標系の垂直軸方向における垂直速度成分Vcy_am及び水平速度成分Vcx_amに変換する。目標速度決定部52は、バケット目標速度Vc_bktを、ローカル座標系の垂直軸方向における垂直速度成分Vcy_bkt及び水平速度成分Vcx_bktに変換する。
距離取得部53は、図10に示すように、バケット8の刃先8Tと目標掘削地形43Iとの間の距離dを取得する。詳細には、距離取得部53は、前述したように取得した刃先8Tの位置情報及び目標掘削地形43Iの位置を示す目標掘削地形データU等から、バケット8の刃先8Tと目標掘削地形43Iとの間の最短となる距離dを算出する。本実施形態では、バケット8の刃先8Tと目標掘削地形43Iとの間の最短となる距離dに基づいて、掘削制御が実行される。
制限速度決定部54は、バケット8の刃先8Tと目標掘削地形43Iとの間の距離dに基づいて、図1に示す作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを算出する。作業機2全体の制限速度Vcy_lmtは、バケット8の刃先8Tが目標掘削地形43Iに接近する方向において許容できる刃先8Tの移動速度である。図2に示す作業機用記憶部26Mは、距離dと制限速度Vcy_lmtとの関係を規定する制限速度情報を記憶している。
図11は、制限速度情報の一例を示している。図11中の横軸は距離d、縦軸は制限速度Vcy_lmtである。本実施形態において、刃先8Tが目標掘削地形43Iの外方、すなわち油圧ショベル100の作業機2側に位置しているときの距離dは正の値であり、刃先8Tが目標掘削地形43Iの内方、すなわち目標掘削地形43Iよりも掘削対象の内部側に位置しているときの距離dは負の値である。これは、例えば、図10に図示されるように、刃先8Tが目標掘削地形43Iの上方に位置しているときの距離dは正の値であり、刃先8Tが目標掘削地形43Iの下方に位置しているときの距離dは負の値であるとも言える。また、刃先8Tが目標掘削地形43Iに対して侵食しない位置にあるときの距離dは正の値であり、刃先8Tが目標掘削地形43Iに対して侵食する位置にあるときの距離dは負の値であるとも言える。刃先8Tが目標掘削地形43I上に位置しているとき、すなわち刃先8Tが目標掘削地形43Iと接しているときの距離dは0である。
本実施形態において、刃先8Tが目標掘削地形43Iの内方から外方に向かうときの速度を正の値とし、刃先8Tが目標掘削地形43Iの外方から内方に向かうときの速度を負の値とする。すなわち、刃先8Tが目標掘削地形43Iの上方に向かうときの速度を正の値とし、刃先8Tが下方に向かうときの速度を負の値とする。
制限速度情報において、距離dがd1とd2との間であるときの制限速度Vcy_lmtの傾きは、距離dがd1以上又はd2以下のときの傾きより小さい。d1は0より大きい。d2は0より小さい。目標掘削地形43I付近の操作においては制限速度をより詳細に設定するために、距離dがd1とd2との間であるときの傾きを、距離dがd1以上又はd2以下であるときの傾きよりも小さくする。距離dがd1以上のとき、制限速度Vcy_lmtは負の値であり、距離dが大きくなるほど制限速度Vcy_lmtは小さくなる。つまり、距離dがd1以上のとき、目標掘削地形43Iより上方において刃先8Tが目標掘削地形43Iから遠いほど、目標掘削地形43Iの下方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。距離dが0以下のとき、制限速度Vcy_lmtは正の値であり、距離dが小さくなるほど制限速度Vcy_lmtは大きくなる。つまり、バケット8の刃先8Tが目標掘削地形43Iから遠ざかる距離dが0以下のとき、目標掘削地形43Iより下方において刃先8Tが目標掘削地形43Iから遠いほど、目標掘削地形43Iの上方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。
距離dが第1所定値dth1以上では、制限速度Vcy_lmtは、Vminとなる。第1所定値dth1は正の値であり、d1より大きい。Vminは、目標速度の最小値よりも小さい。つまり、距離dが第1所定値dth1以上では、作業機2の動作の制限が行われない。したがって、刃先8Tが目標掘削地形43Iの上方において目標掘削地形43Iから大きく離れているときには、作業機2の動作の制限、すなわち掘削制御が行われない。距離dが第1所定値dth1より小さいときに、作業機2の動作の制限が行われる。詳細には、後述するように、距離dが第1所定値dth1より小さいときに、ブーム6の動作の制限が行われる。
制限速度決定部54は、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtとアーム目標速度Vc_amとバケット目標速度Vc_bktとからブーム6の制限速度の垂直速度成分(以下、適宜ブーム6の制限垂直速度成分と称する)Vcy_bm_lmtを算出する。制限速度決定部54は、図12に示すように、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtから、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amと、バケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとを減算することにより、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを算出する。
制限速度決定部54は、図13に示すように、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを、ブーム6の制限速度(ブーム制限速度)Vc_bm_lmtに変換する。制限速度決定部54は、前述したブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、バケット8の傾斜角θ3、GNSSアンテナ21、22の基準位置データ及び目標掘削地形データU等から、目標掘削地形43Iに垂直な方向とブーム制限速度Vc_bm_lmtの方向との間の関係を求め、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを、ブーム制限速度Vc_bm_lmtに変換する。この場合の演算は、前述したブーム目標速度Vc_bmから目標掘削地形43Iに垂直な方向の垂直速度成分Vcy_bmを求めた演算と逆の手順により行われる。
図2に示すシャトル弁51は、ブーム6の操作に基づいて生成されたパイロット油圧と、ブーム介入指令CBIに基づいて介入弁27Cが生成したパイロット油圧とのうち大きい方を選択して方向制御弁64に供給する。ブーム介入指令CBIに基づくパイロット油圧がブーム6の操作に基づいて生成されたパイロット油圧よりも大きい場合、ブーム介入指令CBIに基づくパイロット油圧によってブームシリンダ10に対応する方向制御弁64が動作する。その結果、ブーム制限速度Vc_bm_lmtに基づくブーム6の駆動が実現される。
作業機制御部57は、作業機2を制御する。作業機制御部57は、アーム指令信号CAとブーム指令信号CBとブーム介入指令CBIとバケット指令信号CTとを図2に示す制御弁27及び介入弁27Cに出力することによって、ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを制御する。アーム指令信号CAとブーム指令信号CBとブーム介入指令CBIとバケット指令信号CTとは、それぞれブーム指令速度とアーム指令速度とバケット指令速度とに応じた電流値を有する。
ブーム6の上げ操作に基づいて生成されたパイロット油圧がブーム介入指令CBIに基づくパイロット油圧よりも大きい場合、シャトル弁51がレバー操作に基づくパイロット油圧を選択する。ブーム6の操作に基づきシャトル弁51によって選択されたパイロット油圧によってブームシリンダ10に対応する方向制御弁64が動作する。すなわち、ブーム6は、ブーム目標速度Vc_bmに基づいて駆動されるので、ブーム制限速度Vc_bm_lmtに基づいては駆動されない。
ブーム6の操作に基づいて生成されたパイロット油圧がブーム介入指令CBIに基づくパイロット油圧よりも大きい場合、作業機制御部57は、ブーム目標速度Vc_bm、アーム目標速度Vc_am及びバケット目標速度Vc_bktのそれぞれを、ブーム指令速度、アーム指令速度及びバケット指令速度として選択する。作業機制御部57は、ブーム目標速度Vc_bm、アーム目標速度Vc_am及びバケット目標速度Vc_bktに応じてブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12の速度(シリンダ速度)を決定する。そして、作業機制御部57は、決定したシリンダ速度に基づいて制御弁27を制御することにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12を動作させる。
このように、通常運転時において、作業機制御部57は、ブーム操作量MBとアーム操作量MAとバケット操作量MTとに応じて、ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを動作させる。したがって、ブームシリンダ10はブーム目標速度Vc_bmで動作し、アームシリンダ11はアーム目標速度Vc_amで動作し、バケットシリンダ12はバケット目標速度Vc_bktで動作する。
一方、ブーム介入指令CBIに基づくパイロット油圧がブーム6の操作に基づいて生成されたパイロット油圧よりも大きい場合、介入の指令に基づく介入弁27Cから出力されたパイロット油圧をシャトル弁51が選択する。その結果、ブーム6は、ブーム制限速度Vc_bm_lmtで動作するとともに、アーム7は、アーム目標速度Vc_amで動作する。また、バケット8は、バケット目標速度Vc_bktで動作する。
図12を用いて説明したように、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtから、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとを減算することにより、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtが算出される。したがって、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも小さいときには、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、ブーム6が上昇する負の値となる。
したがって、ブーム制限速度Vc_bm_lmtは、負の値となる。この場合、作業機制御部57は、ブーム6を下降させるが、ブーム目標速度Vc_bmよりも減速させる。このため、オペレータの違和感を小さく抑えながらバケット8が目標掘削地形43Iを侵食することを抑制することができる。
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも大きいときには、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、正の値となる。したがって、ブーム制限速度Vc_bm_lmtは、正の値となる。この場合、操作装置25がブーム6を下降させる方向に操作されていても、図2に示す介入弁27Cからの指令信号に基づき、ブーム6が上昇する。このため、目標掘削地形43Iの侵食の拡大を迅速に抑えることができる。
刃先8Tが目標掘削地形43Iより上方に位置しているときには、刃先8Tが目標掘削地形43Iに近づくほど、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtの絶対値が小さくなるとともに、目標掘削地形43Iに平行な方向へのブーム6の制限速度の速度成分(以下、適宜制限水平速度成分と称する)Vcx_bm_lmtの絶対値も小さくなる。したがって、刃先8Tが目標掘削地形43Iより上方に位置しているときには、刃先8Tが目標掘削地形43Iに近づくほど、ブーム6の目標掘削地形43Iに垂直な方向への速度と、ブーム6の目標掘削地形43Iに平行な方向への速度とがともに減速される。油圧ショベル100のオペレータによって左操作レバー25L及び右操作レバー25Rが同時に操作されることにより、ブーム6とアーム7とバケット8とが同時に動作する。このとき、ブーム6とアーム7とバケット8との各目標速度Vc_bm、Vc_am、Vc_bktが入力されたとして前述した制御を説明すると次の通りである。
図14は、目標掘削地形43Iとバケット8の刃先8Tとの間の距離dが第1所定値dth1より小さく、バケット8の刃先8Tが位置Pn1から位置Pn2に移動する場合のブーム6の制限速度の変化の一例を示している。位置Pn2での刃先8Tと目標掘削地形43Iとの間の距離は、位置Pn1での刃先8Tと目標掘削地形43Iとの間の距離よりも小さい。このため、位置Pn2でのブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmt1よりも小さい。したがって、位置Pn2でのブーム制限速度Vc_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム制限速度Vc_bm_lmt1よりも小さくなる。また、位置Pn2でのブーム6の制限水平速度成分Vcx_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム6の制限水平速度成分Vcx_bm_lmt1よりも小さくなる。ただし、このとき、アーム目標速度Vc_am及びバケット目標速度Vc_bktに対しては、制限は行われない。このため、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_am及び水平速度成分Vcx_amと、バケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bkt及び水平速度成分Vcx_bktに対しては、制限は行われない。
前述したように、アーム7に対して制限を行わないことにより、オペレータの掘削意思に対応するアーム操作量MAの変化は、バケット8の刃先8Tの速度変化として反映される。このため、本実施形態は、目標掘削地形43Iの侵食の拡大を抑制しながらオペレータの掘削時の操作における違和感を抑えることができる。
刃先8Tの刃先位置P4は、GNSSに限らず、他の測位手段によって測位されてもよい。したがって、刃先8Tと目標掘削地形43Iとの距離dは、GNSSに限らず、他の測位手段によって測位されてもよい。バケット制限速度の絶対値は、バケット目標速度の絶対値よりも小さい。バケット制限速度は、例えば前述したアーム制限速度と同様の手法で算出されてもよい。なお、アーム7の制限とともにバケット8の制限が行われてもよい。
以上、油圧ショベル100の作業機2が、掘削対象を侵食しないよう作業機2の動作速度を制御するような掘削制御について説明した。掘削制御は、作業機2のバケット8の刃先8Tの位置と掘削対象である目標施工情報Tの位置情報とに基づいて、バケット8が掘削対象を侵食しそうな位置に動いたことを検知した場合、作業機2のブーム6を上げ動作させる制御であってもよい。次に、油圧ショベル100が掘削制御を実行しているときに、図5に示す管理センター110の管理サーバー111から目標施工情報Tが油圧ショベル100に対して送信され、通信部40が受信したときの制御について説明する。
(掘削制御中に通信部40が目標施工情報Tを受信した場合)
図15は、油圧ショベル100と管理センター110とを示す図である。本実施形態において、目標施工情報Tは、例えば、油圧ショベル100の施工対象に応じて管理センター110で作成され、管理サーバー111に記憶される。前述したように、設計面情報TIは、目標施工情報Tを含み、目標施工情報Tは、掘削対象の目標形状を示す施工情報を含むものである。管理サーバー111に記憶されている目標施工情報Tは、管理センター110の通信装置112及びアンテナ112Aを介して油圧ショベル100に送信される。
油圧ショベル100のイグニッションキー103がオンにされたタイミングで、蓄電器104から通信部40を含む機器に給電が行われる。通信部40が無線通信の機能を備えたものを用いる場合、蓄電器104から通信部40を含む機器に給電が行われた後、油圧ショベル100はアンテナ40Aを介して管理サーバー111と無線通信を行い、管理サーバー111から目標施工情報Tを受信する。イグニッションキー103がオンにされたタイミングに限らず、イグニッションキー103がオンである限り、通信部40を含む機器に給電が行われ、管理サーバー111や端末装置といった外部装置から目標施工情報Tを受信できる状態が継続する。
管理サーバー111から送信された目標施工情報Tは、油圧ショベル100のアンテナ40Aを介して通信部40が受け取る。表示制御装置28の記憶部28Mは、通信部40が受け取った目標施工情報Tを記憶する。図15に示す例において、記憶部28Mは、複数の目標施工情報T_A、T_B、T_C、・・・T_V、T_Wを記憶している。目標施工情報Tに付されている符号A、B、C、・・・V、Wは、設計面情報のファイル名である。
油圧ショベル100が掘削制御を実行する場合、オペレータは、図2に示すスイッチ29Sを操作して、表示制御装置28に掘削制御を実行する指令を送信する。このとき、オペレータは、掘削制御の対象となる目標施工面41の範囲を、表示制御装置28の図示しない入力部によって選択する。表示制御装置28の処理部28Pは、選択された範囲に対応する目標施工情報Tを記憶部28Mから読み出して、目標掘削地形データUを生成し、作業機制御装置26に送信する。この例では、選択された範囲に対応するのは、ファイル名Aの目標施工情報T_Aであり、目標施工情報T_Aから目標掘削地形データU_Aが生成されるものとする。作業機制御装置26は、目標掘削地形データU_Aを用いて掘削制御を実行する。
管理サーバー111から送信される新たな目標施工情報Tnには、表示制御装置28の記憶部28Mの目標施工情報Tを新たな目標施工情報Tnに更新する旨の命令(更新命令)PCが含まれている。管理サーバー111から、新たな目標施工情報Tn及び更新命令PCが送信され、油圧ショベル100の通信部40がこれらを受信すると、表示制御装置28の処理部28Pは、通信部40が受信した新たな目標施工情報Tnを記憶部28Mに記憶させる。すると、現在記憶部28Mに記憶されている目標施工情報Tは、通信部40が受信した新たな目標施工情報Tnに書き換えられ、更新される。このように、本実施形態において、処理部28Pは、記憶部28Mが記憶している目標施工情報Tを新たな目標施工情報Tnに更新するか否かを決定する。処理部28Pは、新たな目標施工情報Tに基づいて目標掘削地形データU_nを生成し、作業機制御装置26は、この目標掘削地形データU_nに基づいて掘削制御を実行する。ファイル名Aの目標施工情報T_Aが新たな目標施工情報T_Anに書き換えられた場合、処理部28Pは、新たな目標施工情報T_Anに基づいて目標掘削地形データU_Anを生成し、作業機制御装置26は、この目標掘削地形データU_Anに基づいて掘削制御を実行する。
管理サーバー111から、新たな目標施工情報Tnが油圧ショベル100に送信される時点において、作業機制御装置26が、例えば、目標施工情報T_Aから生成された目標掘削地形データU_Aを用いて掘削制御を実行しているとする。ファイル名Aの新たな目標施工情報T_Anを含む新たな目標施工情報Tnを通信部40が受け取ると、記憶部28Mは、現在の目標施工情報T_Aを新たな目標施工情報T_Anに書き換える。この時点で、作業機制御装置26は掘削制御を実行しているので、作業機制御装置26は、新たな目標施工情報T_Anに基づいて生成された目標掘削地形データU_Anに基づいて掘削制御を実行する。
しかし、新たな目標施工情報T_Anを通信部40が受け取る前の目標施工情報T_Aと、新たな目標施工情報T_Anの内容とが異なる場合、掘削制御の実行中に新たな目標施工情報T_Anに更新されると、油圧ショベルのオペレータは、目標施工情報T_Aが目標施工情報T_Anに更新されたことを認識せずに、更新される前の目標施工情報T_Aに対して作業機2に対して掘削制御が実行されていると認識しながら作業機2を操作し、違和感を覚える可能性がある。その結果、目標形状が、油圧ショベル100のオペレータが意図しない形状に施工される可能性がある。これを回避するため、制御システム200は、作業機制御装置26が掘削制御を実行している場合は、実行中の掘削制御が終了するまで、実行中の掘削制御に使用している目標施工情報T_A以外の設計面情報を用いない。このため、制御システム200は、作業機制御装置26が掘削制御を実行中に、新たな目標施工情報T_Anの更新待ち状態であって、掘削制御が実行中である場合は新たな目標施工情報T_Anを用いないで掘削制御を継続する。
したがって、本実施形態において、作業機制御装置26は、掘削制御を実行している場合、実行中の掘削制御に使用している目標施工情報T_Aから生成された目標掘削地形データU_Aのみを用いて、掘削制御を継続する。このようにすることで、制御システム200は、油圧ショベル100を用いた情報化施工を行う際に、油圧ショベル100のオペレータにとって意図しない施工情報の更新をしないので、オペレータは違和感なく作業機2を操作することができる。
例えば、通信部40がファイル名Aの新たな目標施工情報T_Anを受け取った場合、記憶部28Mは、実行中の掘削制御に使用している目標施工情報T_Aを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報T_Anに更新しない。記憶部28Mは、実行中の掘削制御に使用していない、ファイル名B、C、D、・・・V、Wの目標施工情報T_B、T_C、・・・T_V、T_Wについては、新たな目標施工情報T_Bn、T_Cn、・・・T_Vn、T_Wnに更新する。すなわち、表示制御装置28の処理部28Pは、作業機制御装置26が掘削制御に使用中の設計面情報のファイル名(この例ではA)と、通信部40が受け取った新たな設計面情報のファイル名(この例ではA)とが同一であるときには、掘削制御に使用される設計面情報を、通信部40が受け取った新たな設計面情報に更新しない。処理部28Pは、新たな設計面情報を受け取った際に、新たな設計面情報TIを受け取ったことを示す受信情報を生成し、表示部29に受信情報を表示させてもよい。受信情報としては、所定のアイコン、コーションマーク及び文字情報のうち少なくとも一つを用いることができる。例えば、処理部28Pは、使用中の設計面情報のファイル名(この例ではA)と、通信部40が受け取った新たな設計面情報のファイル名(この例ではA)とが同一であると判断したら、同一を意味する受信情報を生成して表示部29に表示させてもよい。また、処理部28Pは、掘削制御が実行されていないときに、新たな設計面情報を受け取った場合も、受信情報を表示部29に表示してもよい。そして、処理部28Pは、作業機制御装置26が掘削制御に使用中の設計面情報のファイル名(この例ではA)と、通信部40が受け取った新たな設計面情報のファイル名(この例ではB、C、・・V、W)とが同一でないときには、掘削制御に使用される設計面情報を、通信部40が受け取った新たな設計面情報に更新する。目標施工情報Tのファイル名によって目標施工情報Tの更新の有無が決定されるようにすると、容易かつ確実に更新の有無を決定できる。
このようにすることで、作業機制御装置26は、実行中の掘削制御に使用している目標施工情報T_Aから生成された目標掘削地形データU_Aのみを用いて掘削制御を継続することができる。また、掘削制御に使用されていない目標施工情報T_B、T_C等は、新たな目標施工情報T_Bn、T_Cn等に更新される。この場合、記憶部28Mは、例えば、新たな目標施工情報T_Anを一時的にバッファに記憶しておき、掘削制御が終了したとき又はエンジン35を停止させて油圧ショベル100が休車しているとき等に、掘削制御に使用されていた目標施工情報T_Aを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報T_Anに更新する。
(制御例)
図16は、掘削制御中における制御例(施工情報の更新制御)を示すフローチャートである。ステップS101において、表示制御装置28の処理部28Pは、通信部40が、管理サーバー111から新たな目標施工情報Tnを受け取ったか否かを判定する。通信部40が新たな目標施工情報Tnを受け取った場合(ステップS101、Yes)、処理部28Pは、処理をステップS102に進める。通信部40が新たな目標施工情報Tnを受け取らなかった場合(ステップS101、No)、処理は終了する。
ステップS102において、処理部28Pは、作業機制御装置26が掘削制御を実行しているか否かを判定する。例えば、作業機制御装置26は、掘削制御中において、掘削制御の実行信号OPを表示制御装置28に送信する。表示制御装置28の処理部28Pは、実行信号OPを受信している間は、掘削制御が実行中であると判定する(ステップS102、Yes)。この場合、ステップS103に進み、表示制御装置28の処理部28Pは、現在掘削制御に用いられている目標施工情報Tを、ステップS101で通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新しない。
掘削制御が実行中でない場合(ステップS102、No)、例えば、表示制御装置28の処理部28Pが実行信号OPを受信しない場合、処理部28Pは、処理をステップS104に進める。ステップS104において、処理部28Pは、現在、記憶部28Mが保持している目標施工情報Tを、ステップS101で通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新する。
本実施形態において、表示制御装置28の処理部28Pは、目標施工情報Tのファイル名に基づいて、作業機制御装置26が掘削制御に使用する目標施工情報Tを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新するか否かを決定した。この他にも、例えば、表示制御装置28の処理部28Pは、掘削制御に使用中の目標施工情報Tの位置情報と、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnの位置情報とが同一であるときには、掘削制御に使用される目標施工情報Tを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新しないようにしてもよい。この場合、例えば、掘削制御に使用中の目標施工情報Tの目標施工面41(図4参照)と、新たな目標施工情報Tnの目標施工面41とが同一平面と見なせる場合、両者の位置情報は同一であるとすることができる。
本実施形態において、表示制御装置28の処理部28Pは、掘削制御が実行中でない場合の他に、油圧ショベル100がキーオフ、すなわちイグニッションキー103がオフの状態である場合、掘削制御に使用される目標施工情報Tを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新してもよい。例えば、イグニッションキー103がオンのときに通信部40が新たな目標施工情報Tnを受け取った場合、表示制御装置28の処理部28Pは、記憶部28Mのバッファに新たな目標施工情報Tnを一時的に記憶させる。そして、イグニッションキー103がオフになったタイミングで、処理部28Pは、バッファに記憶させた新たな目標施工情報Tnで、現在記憶部28Mに記憶されている目標施工情報Tを更新する。このようにすれば、イグニッションキー103がオンのときには、掘削制御に使用される目標施工情報Tは更新されないので、油圧ショベル100のオペレータが意図しないような目標施工情報の更新が行われず、オペレータは、目標施工情報が更新されたことを認識して作業機2を操作することができる。
このような場合、表示制御装置28の処理部28Pは、管理サーバー111から新たな目標施工情報Tnとともに送信された更新命令PCを受け取り、イグニッションキー103がオフにされるまで更新命令PCを保持する。更新命令PCが保持されていることにより、表示制御装置28の処理部28Pは、目標施工情報Tの更新を保留する。更新命令PCとイグニッションキー103のオフとが両立した場合、表示制御装置28の処理部28Pは、図示しない自己保持回路を用いて更新の処理が終了するまで蓄電器104からの給電を維持する。この状態で、表示制御装置28の処理部28Pは、記憶部28Mの目標施工情報Tをバッファに記憶させた新たな目標施工情報Tnで更新し、この更新が終了したら更新命令PCを消去するとともに、前述した自己保持回路は、蓄電器104からの給電を停止させる。
イグニッションキー103がオフにされてエンジン35が停止し、油圧ショベル100が休車している際に、通信部40等の機器が所定の時間に起動して、管理サーバー111から新たな目標施工情報Tnとともに更新命令PCをアンテナ40Aを介して受信できるようにしてもよい。この場合、例えば、表示制御装置28に、所定の時間に表示制御装置28自身及び通信部40を起動するためのタイマープログラムを組み込む。タイマープログラムは、例えば夜間の所定の時間になったときに蓄電器104から通信部40等の機器に給電する処理を実行する。さらに、表示制御装置28は、目標施工情報の更新制御を行う。つまり、記憶部28Mは、記憶済みの目標施工情報Tを、受信した新たな目標施工情報Tnに更新し、更新が完了した後にタイマープログラムは蓄電器104から通信部40等の機器への給電を停止する。このように、油圧ショベル100が休車中に新たな目標施工情報Tnに更新されるため、更新後にオペレータがイグニッションキー103をオンにして作業を開始する際に、新たな目標施工情報Tnに基づき作業を開始できるため、オペレータは効率的に施工を進めることができる。
また、掘削制御が実行されている掘削制御モードの状態で、油圧ショベル100のオペレータがスイッチ29Sを操作することにより掘削制御モードを解除した際、掘削制御モード時に使用されていた目標施工情報Tをバッファに記憶させた新たな目標施工情報Tnに更新させ、記憶部28Mに目標施工情報Tとして更新することもできる。オペレータによる掘削制御モードの解除の意思があるため、前述した処理により、掘削制御モードを解除した後に掘削制御モードになった場合、オペレータは、更新された目標施工情報Tによって掘削制御が実行されても違和感なく作業機2を操作することができる。
表示制御装置28の処理部28Pは、作業機制御装置26が掘削制御を実行している場合、かつ作業機2のバケット8が掘削対象から離れるときには、掘削制御に使用される目標施工情報Tを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新してもよい。例えば、作業機制御装置26P又は表示制御装置28が、バケット8の刃先8Tと掘削対象との距離を算出した結果、所定の距離以上にバケット8の刃先8Tが離れた場合、掘削制御モードを自動的に解除して、掘削制御が実行中でない状態にして、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新してもよい。ここで、バケット8の刃先8Tの位置と掘削対象との距離を算出するのではなく、作業機2の所定の位置と掘削対象との距離を算出するものであってもよい。このように、バケット8又は作業機2が掘削対象から離れる場合、掘削制御が実行されないので、記憶部28Mの目標施工情報Tが新たな目標施工情報Tnで更新されても、オペレータは違和感なく作業機2を操作できる。また、記憶部28Mの目標施工情報Tが新たな目標施工情報Tnに迅速に更新されるという利点もある。
表示制御装置28の処理部28Pは、掘削制御に使用中の目標施工情報Tの位置情報と、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnの位置情報とが同一と見なせる場合、掘削制御に使用される目標施工情報Tを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新してもよい。この場合、目標施工情報Tと同一と見なせる新たな目標施工情報Tnから生成された目標掘削地形データUnに基づいて掘削制御が実行されるので、目標施工情報Tから生成された目標掘削地形データUを用いた場合と同様に掘削制御が介入する。その結果、油圧ショベル100を用いた情報化施工を行う際に、前述したように目標施工情報Tと同一と見なせる新たな目標施工情報Tnに、目標施工情報Tが更新されたとしても、掘削対象の目標形状は不変であるため、オペレータが意図しない目標施工情報Tの更新とはならず、オペレータは違和感なく作業機2の操作を行うことができる。また、前述したように、取得済みの目標施工情報Tの位置情報と新たな目標施工情報Tnの位置情報とが同一と見なせる場合に、新たな目標施工情報Tnに更新することで、油圧ショベル100のオペレータは違和感なく作業機2の操作を行うことができる。また、記憶部28Mの目標施工情報Tが新たな目標施工情報Tnに迅速に更新されるという利点もある。
また、表示制御装置28の処理部28Pが、掘削制御に使用される目標施工情報Tを、通信部40が受け取った新たな目標施工情報Tnに更新しているとき、掘削制御を実行する指令があった場合でも作業機制御装置26は掘削制御を実行しないようにしてもよい。このようにしても、油圧ショベル100を用いた情報化施工を行う際に、オペレータが意図しない目標施工情報Tの更新が行われないので、オペレータは違和感なく作業機2の操作を行うことができる。
作業機制御装置26が掘削制御を実行中における、新たな目標施工情報T_Anの更新待ちである状態とは、次のような場合を含む。前述したように、新たな目標施工情報T_Anを一旦バッファに記憶させた状態で保持しておく状態の他、新たな目標施工情報T_Anを取得していても、表示制御装置28の地形データ生成部28Cが目標掘削地形43Iを求める処理を行わない状態又は目標掘削地形43Iを求める処理を行っても新たな目標掘削地形43Iとして更新しない状態等が、更新待ち状態である。また、掘削制御の実行中は、油圧ショベル100の外部から新たな目標施工情報T_An又は目標掘削地形43Iを受け付けない状態も更新待ち状態である。例えば、新たな目標施工情報T_Anが、外部から油圧ショベル100に送信されても受け付けない状態も更新待ち状態である。あるいは、例えば、新たな目標施工情報T_Anに基づく目標掘削地形43Iが、管理サーバー111といった外部装置等で生成又は記憶されていて、その目標掘削地形43Iが油圧ショベル100に送信されても受け付けない状態も更新待ち状態である。この場合、油圧ショベル100に送信された、新たな目標掘削地形43Iが、新たな目標施工情報T_Anとなる。このように、油圧ショベル100の外部から、目標掘削地形43Iの生成に必要な新たな目標施工情報T_An又は新たな目標掘削地形43Iが直接、送信されても、制御システム200は、目標施工情報T_Anの受信を拒否するようにしてもよい。
以上、本実施形態を説明したが、上述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。例えば、作業機2は、ブーム6、アーム7及び作業具であるバケット8を有しているが、作業機2に装着される作業具はこれに限られず、バケット8には限定されない。
また、本実施形態では油圧ショベル100を例にとり、図16に示したように目標施工情報の更新制御を説明したが、本実施形態のように、目標掘削地形データUを掘り込んで侵食しないように目標掘削地形データUに沿ってブレードを制御可能な掘削制御を可能としたブルドーザ又はモータグレーダに対しても、通信部40、処理部28P及び記憶部28M等の必要な装置を用いることで、目標施工情報の更新制御を実現でき、掘削機械のオペレータは情報化施工における作業機の操作を適切に実行できる。