本発明は、ワクチンとして有用な製薬組成物を提供する。ここで該製薬組成物は、マンニトール及びtween 80(登録商標)の混合物もしくはマンニトール及びポロキサマー188の混合物が添加された、様々な腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を含有するものであり、これらの混合物は該組成物に安定性及び溶解性を提供する。
ここに使用されるような「製薬組成物」は、ペプチド、マンニトール及びtween 80(登録商標)もしくはペプチド、マンニトール、ポロキサマー188を含む凍結乾燥された組成物が好ましく、または再構成された液状組成物が好ましい。そのため、ここに使用される用語「製薬組成物」はまた、組成物が凍結乾燥の形で存在することを示す凍結乾燥組成物にも適用する。
好ましくは、製薬組成物中のペプチドは、主要な腎臓癌細胞に存在し確認されている、SEQ ID NO: 1 から10で規定されるペプチドの少なくとも1個、または、主要な神経膠腫癌細胞に存在し確認されている、SEQ ID NO: 11 から22及びSEQ ID NO:11から23で規定される ペプチドの少なくとも1個を含む。
他の好ましい実施態様においては、製薬組成物は、SEQ ID NO:12 及び/または SEQ ID NO: 13 で規定されるアミノ酸配列から成るペプチドを含み、さらにSEQ ID NO: 14 からSEQ ID NO: 23のうちいずれか1個で規定されるアミノ酸配列から成る少なくとも1個のペプチドを含む。
ペプチドのセットはHLAクラスI及びクラスIIペプチドを含む。 好ましくは、本発明の製薬組成物は、SEQ ID NO:1 及び/または SEQ ID NO:2で規定されるようなペプチド、及び/またはSEQ ID NO: 3からSEQ ID NO:10を含む他のペプチドの少なくとも1個、または、SEQ ID NO:12 及び/または SEQ ID NO:13で規定されるようなペプチド、及び/またはSEQ ID NO: 11 及びSEQ ID NO:14からSEQ ID NO:23を含む他のペプチド少なくとも1個、を含む。
製薬組成物は、フリーな形あるいは薬学的に許容可能な塩の形のいずれであってもよいペプチドを含有する。
ここに使用されるような「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を言い、作用薬の酸または塩基の塩類を生成することによりペプチドが修飾される。例えば、酸性塩は、適切な酸との反応に関与する遊離塩基(通常、中性型の薬剤は中性 NH2グループを持つ)から生成される。酸性塩の生成に適当な酸は、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)と同様に、有機酸(例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸など)の両方を含む。反対に、ペプチドに存在する酸部分の塩基性塩の生成は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンのような薬学的に許容可能な塩基を使用して生成される。
特に好ましい実施態様では、製薬組成物は酢酸(酢酸塩)あるいは塩酸(塩化物)の塩類としてペプチドを含む。
さらに好ましい実施態様では、本発明による製薬組成物は、塩化物としてSEQ ID NO:5 を、そして酢酸塩としての他のすべてのペプチドを含む。
本発明の製薬組成物はまた、皮内投与の効率を試験する免疫マーカーとしての陽性対照ペプチドとして使用するために、少なくとも1個のペプチドを含み得る。そのような代表的なペプチドの1個は、HBVコア抗原(SEQ ID NO:11)に由来する。
1つの好ましい実施においては、製薬組成物は、11種の異なるペプチドを含み、それぞれがSEQ ID NO: 1 から11で規定されるアミノ酸配列から成る(表1参照)。好ましくは、製薬組成物中の各ペプチドは約1500μgから約75μgの間の量で存在し、好ましくは約1000μgから約750μgの間の量で、さらに好ましくは約500μgから約600μgの間の量で、最も好ましくは約578μgの量で存在する。好ましくは、それぞれのペプチドはHPLCとイオン交換クロマトグラフィーにより精製され、白色からオフホワイトの粉末として出現する。
他の好ましい実施態様においては、製薬組成物は、12種の異なるペプチドを含み、それぞれがSEQ ID NO:11 から22、及び SEQ ID NO: 11 から23で規定されるアミノ酸配列から成る(表1参照)。好ましくは、製薬組成物中のペプチドは約1500μgから約75μgの間の量で存在し、好ましくは約1000μgから約750μgの間の量で、さらに好ましくは約500μgから約600μgの間の量で、最も好ましくは約578μgの量で存在する。 好ましくは、それぞれのペプチドはHPLCとイオン交換クロマトグラフィーにより精製され、白色からオフホワイトの粉末として出現する。
用語「ペプチド」は一連のアミノ酸残基を定義するためにここに使用され、隣接したアミノ酸のα-アミノ基及びカルボニル基間のペプチド結合によって通常連結される。ペプチドは通常、MHCクラスIには9アミノ酸長で、MHCクラスIIにはより長い(15もしくは16のアミノ酸)であるが、最短で8アミノ酸長、最長で16アミノ酸長であり得る。
用語「オリゴペプチド」は一連のアミノ酸残基を定義するためにここに使用され、隣接したアミノ酸のα-アミノ基及びカルボニル基間のペプチド結合によって通常連結される。 正確な1個または複数のエピトープがそこに維持される限り、オリゴペプチドの長さは本発明に決定的なものではない。オリゴペプチドは通常、約30アミノ酸残基未満で、約14アミノ酸長以上である。
用語「ポリペプチド」は一連のアミノ酸残基を定義し、隣接したアミノ酸のα-アミノ基及びカルボニル基間のペプチド結合によって通常連結される。正確な1個または複数のエピトープがそこに維持される限り、ポリペプチドの長さは本発明に決定的なものではない。用語ペプチドもしくはオリゴペプチドとは対照的に、用語ポリペプチドは、約30残基長より長いタンパク分子を示すものである。
免疫応答を誘発することができる場合、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質もしくはそのような分子をコーディングするポリヌクレオチドは「免疫原性の(immunogenic)」(したがって本発明内で「免疫原」)である。本発明の場合には、免疫原性がCTL介在の応答を誘発する能力としてより明確に定義される。したがって、「免疫原」は、免疫応答の誘発が可能な分子で、本発明の場合は、CTL応答を誘発できる分子である。
T細胞「エピトープ」は、クラスIもしくはクラスII MHC分子と結合し、続いてT細胞によって認識される短いペプチド分子である。 クラスI MHC分子と結合するT細胞エピトープは通常、8から14アミノ酸長で、最も典型的には9アミノ酸長である。クラスII MHC分子と結合するT細胞エピトープは通常、12から30アミノ酸長である。クラスII MHC分子と結合するエピトープの場合には、ペプチド分子の末端はクラスI MHC分子ペプチド結合溝の中に埋もれるが、クラスII MHC分子ペプチド結合溝の構造に埋もれないという事実のため、カルボキシ及びアミノ末端基フランキング配列の長さにおいて違いはあるが、同じT細胞エピトープは一般的なコアセグメントを共有する。
クラスI MHC分子をコード化する3つの異なる遺伝子座がある:HLA-A、HLA-B及びHLA-C。HLA-Al、HLA-A2及びHLA-Allは、これらの座から発現できる、異なるクラスI MHC分子の例である。
ここでは、用語「部分」、「セグメント」及び「フラグメント」は、ポリペプチドに関して使用された時、アミノ酸残基のような残基の連続的な配列を言い、その配列はより大きな配列の一部を形成する。例えば、ポリペプチドがトリプシンまたはキモトリプシンのような一般的なエンドペプチダーゼで処理を施された場合、そのような処理から得られたオリゴペプチドは出発ポリペプチドの部分、セグメントあるいはフラグメントを示す。これは、そのようなフラグメントが必然的にアミノ酸配列の一部としてセグメント、フラグメント、あるいは部分を含み、SEQ ID NO: 1 から23の自然発生タンパク質、あるいは「親」タンパク質に対応するSEQ ID NO: 1 から23の配列に、全く同一ではないにせよ実質的に同一であることを意味する。ポリヌクレオチドに関して使用する時、そのような用語は任意の一般のエンドヌクレアーゼでの該ポリヌクレオチド処理によって生成された生成物を言う。
本発明に従って、配列に言及する時、用語「同一性パーセント」もしくは「同一パーセント」は、開示もしくは請求項の配列(「参照配列」)と比較される予定がある配列のアラインメント作成後に、配列が開示もしくは請求項の配列と比較されることを意味する。 その後、同一性パーセントは次の公式により決定される:
同一性パーセント= 100 [I -(C/R)]
Cは、参照配列と比較配列間の相違の数を参照配列と比較配列間のアラインメント長で割ったもので、
(i)整列した比較配列の塩基あるいはアミノ酸に対応する参照配列での各塩基あるいはアミノ酸、及び
(ii) 参照配列の各ギャップ、及び
(i)比較配列の整列した塩基あるいはアミノ酸とは異なる参照配列の各塩基あるいはアミノ酸が違いの構成要素となる。
Rは、参照配列の塩基もしくはアミノ酸の数を、塩基もしくはアミノ酸としても数えられる参照配列で作成される任意のギャップを伴う比較配列を持つアラインメント長で割ったものである。
アラインメントが、上述の計算で同一性パーセントが特定の最小同一性パーセントと殆ど同じまたは大きい比較配列及び参照配列間に存在する場合は、そのため、アラインメントが上述の計算で同一性パーセントが特定の同一性パーセントよりも少ない場合に存在するにしても、比較配列は参照配列に特定の最小同一性パーセントを持つ。
本発明の製薬組成物中のペプチドは、異なる、場合により選択的な、ペプチド鎖内の部位で、1つ以上の残基の置換により変更できる。 例えば、そのような置換は保存的性質かもしれず、例えば、そこでは疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸に置き換わるように、あるアミノ酸が類似構造及び特性を持つアミノ酸に置換される。 さらにもっと保存的なのは、ロイシンがイソロイシンに置換されるように、同様あるいは類似のサイズ及び化学的性質のアミノ酸の入れ替えかもしれない。 自然発生の相同タンパク質のファミリーにおける配列変異に関する研究では、あるアミノ酸置換は他のものより許容されることが多く、これらは、しばしば、オリジナルのアミノ酸とその置換アミノ酸の間のサイズ、電荷、極性及び疎水性の類似性と相関関係を示し、これが「保存的置換」を定義する根拠である。
保存的置換は次の5つのグループのうちの1グループ内での交換としてここに定義される: グループ1 -- 小さな脂肪族の、非極性もしくはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly); グループ2 -- 極性、負電荷の残基及びそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln); グループ3 -- 極性、正電荷の残基(His、Arg、Lys); グループ4-- 大きな脂肪族の、非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys); グループ5-- 大きな芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
より少ない保存的置換は、イソロイシン残基によるアラニンの置換のように、1個のアミノ酸の、同様の特性を持っているがサイズにおいて多少異なる他のアミノ酸による置換を含むことがある。非常に非保存的な置換は、極性をもつアミノ酸、あるいは塩基性アミノ酸でさえ、酸性アミノ酸への置換を含むことがある。しかしながら、化学効果が全く予測不可能で、ラジカル置換がその他単純な化学原理から予測不能な予期せぬ良い結果を生じさせるかもしれないので、そのような「ラジカルな」置換を潜在的に効果がないものとして片付けることができない。
もちろん、そのような置換は、一般のL-アミノ酸以外の構造を含むことがある。そのため、D-アミノ酸は、本発明の抗原ペプチドで一般に見つかるL-アミノ酸の代わりに用いられ、さらにまた、開示によりここに包含される。さらに、非標準R基(すなわち、自然タンパク質の一般的な20個のアミノ酸にみられる以外のR基)を所有するアミノ酸も、本発明の免疫原及び免疫原性ポリペプチドを生産する置換目的に使用され得る。
1つを超える位置での置換が、下に定義されるように実質的に等価かより大きな抗原活性を有するペプチドを生ずると分かれば、組み合わせた置換がペプチドの抗原性上の相加効果あるいは相乗効果をもたらすかどうかについて判断するために、それらの置換の組み合わせが、試験される。最大で、ペプチド内の4つの位置が同時に置換される。
好ましくは、SEQ ID NO:l から23のペプチドに特異的なCTLsが、置換されたペプチドに対して試験される場合、バックグラウンドに関する溶解が最大増加の半分に達する置換ペプチドのペプチド濃度が、約1 mM未満で、好ましくは約1μM未満、さらに好ましくは、約1 nM未満で、それでもさらに好ましくは約100 pM未満で、最も好ましくは約10 pM未満である。また、置換されたペプチドが1個体より多く、少なくとも2、より好ましくは3個体からのCTLsによって認識されることが好ましい。
ムチン-1(MUC1)は高度にグリコシル化されたタイプI 膜貫通糖タンパク質で、乳癌及び卵巣癌のような多くのヒト腺癌の細胞表面上で十分に過剰表現される。悪性腫瘍の異常な脱グリコシル化は一般的で、正常細胞上で示されないことがある腫瘍細胞のエピトープを暴露する。さらに、MUC1発現は多発性骨髄腫及びいくつかのB細胞非ホジキンリンパ腫で実証されている。最近の報告は、卵巣、乳、膵臓、多発性骨髄腫の腫瘍からの細胞毒性MHC無制限T細胞が、タンデムリピートで局地化されたMUC1タンパクコアのエピトープを認識できることを実証した (Apostolopoulos V and McKenzie IF. Cellular mucins: targets for immunotherapy. Crit Rev. Immunol. 14:293-309 (1994); Finn OJ, Jerome KR, Henderson RA, Pecher G, Domenech N, Magarian-Blander J, and Barratt-Boyes SM. MUC-1 epithelial tumor mucin-based immunity and cancer vaccines. Immunol. Rev. 145:61-89 (1995); Barnd 1989; Takahashi 1994; Noto 1997)。
MUC1タンパク質に由来した2つのHLA-A2-制限T細胞エピトープが識別された (Brossart 1999, EP 1484397)。1個のペプチドはMUC1タンパク質のタンデムリピート部位に由来する。 第2のペプチドはMUC1の信号配列内に局在化される。 それらのペプチドを使用して、進行した乳癌あるいは卵巣癌の患者にペプチドパルス樹状細胞をワクチン接種後、in vivoの細胞傷害性Tリンパ球応答の誘発することにおいて有効であった (Brossart 2000) (Wierecky 2005)。腎細胞癌に関して、MUC1発現は従来の腫瘍において一般的であり、腫瘍悪性度及び病期に関係していることが報告されている。MUC1については、タンパク質過剰発現はmRNA過剰発現に関連づけられない。
アディポフィリンは、脂質滴を含む特定の分化細胞、及び脂肪を蓄積する細胞に関連した疾病のためのマーカーである (Heid 1998)。 アディポフィリンは、繊維芽細胞、及び内皮細胞と上皮細胞を含む、広範囲の培養細胞株で生じる。しかしながら、組織中では、アディポフィリンの発現は、乳分泌乳房上皮細胞、副腎皮質細胞、セルトリ細胞及び男性生殖器系のライディッヒ細胞のようなある細胞型、及び、アルコール肝硬変中の脂肪症または脂肪化肝細胞に制限される (Heid 1998)。アディポフィリンが結腸直腸癌(Saha 2001)、 肝細胞癌 (Kurokawa 2004)、腎細胞癌 (Young 2001)で過剰発現することが報告されている。
c-Met は、β-サブユニットにジスルフィド結合されるα鎖から成るチロシンキナーゼ活性を持つ膜貫通性のヘテロ二重体受容体をコード化する (Bottaro 1991; Rubin 1993)。 両サブユニットは表面上で発現され、重いβサブユニットは肝細胞増殖因子(HGF)である配位子の結合を担い、α-サブユニットは、異なる信号伝達経路の賦活を媒介する細胞内ドメインを含む。 c-Met信号は、肝臓及び腎臓で証明された臓器再生、胚形成、造血、筋肉の発達、及び正常に活性化されたB細胞及び単球の移動及び付着の調節に携わる (Zarnegar 1995; Naldini 1991; Montesano 1998; Schmidt 1995; Uehara 1995; Bladt 1995; Takayama 1996; Mizuno 1993; van, V 1997; Beilmann 2000)。更に、数多く研究が、c-Metの過剰発現の、悪性細胞の悪性形質転換及び侵入性へ関与を示している。
c-Met は、細胞増殖、運動性、生存、細胞間マトリックス溶解及び血管形成の促進を含むHGF/散乱係数の多機能かつ潜在的に腫瘍形成性の活動を調停する (Bottaro 1991; Rubin 1993; Zarnegar 1995)。 HGFの受容体への結合は、c-Metの自動リン酸化を誘発し、レジン‐アンジオテンシン系、ホスファチジルイノシトール3'-キナーゼ、ホスホリパーゼCγ及びMAPキナーゼ関連の経路を含む、下流シグナル伝達を活性化する。c-Met 遺伝子は、上皮細胞中で主に発現し、いくつかの悪性組織及び細胞系統中で過剰発現する。多発性骨髄腫、ホジキン病、白血病、リンパ腫がc-Met タンパク質を発現させるように、造血細胞、神経細胞、骨格細胞のような非上皮細胞がHGF及び血液悪性腫瘍に応答することを示す報告が増え続けている。c-Met-活性の突然変異、c-Metの増幅/過剰発現、HGF/c-Metオートクリンループの獲得によって誘発された、腫瘍形成的に活性化されたc-Metにより、規制緩和された浸潤性増殖表現型のコントロールは、悪性細胞に侵襲性及び転移性を与える。特に、HGF-過剰発現の遺伝子組み換えマウスのc-Met の構成的活性化は、広い腫瘍形成を促進する。
in vivoにおけるその機能は定義し難いままであるが、Gタンパク質シグナル5の調整因子(RGS5)はヘテロ三量体Gタンパク質シグナル経路の負の調整因子である。RGSタンパク質は、統一的触媒機能だが様々な組織分布を備えた分子群を含む。活性化されたGαサブユニットの内因性のグアノシントリフォスファターゼ(GTPアーゼ)活性を刺激し、そのためにGタンパク質不活性化を加速する。そのため、RGS分子は、G-タンパク質結合受容体の下流シグナルを阻害する(De 2000)。最近、周皮細胞中のGタンパク質シグナル-5誘発の調整因子が、腫瘍新血管形成中の能動的な血管改造と一致することが示された。 膵島細胞発癌マウスモデルでは、高度の脈管原性星状細胞腫と同様、RGS5の過剰発現が能動的な血管改造に伴う脈管新生切り替え中の周皮細胞に認められた。正常なランゲルハンス島と比較して、過剰発現は腫瘍脈管構造に制限された。しかしながら、RGS5も創傷治癒及び排卵中に上方制御される (Berger 2005)。
RGS5の発現はRCCで増加する。(Rae 2000)。別の研究では、RT-PCRは、検査されたすべてのRCCでRGS5の強度の発現を示した。また、発現は正常な腎臓(6.6:1、リアルタイムPCR)において非常に弱かったか、もしくは検出不可能であった。 腫瘍内皮細胞はRCC中のRGS5の主要位置であった (Furuya 2004)。更に、RGS5が肝細胞癌中のシヌソイドの内皮細胞マーカーであることが報告された (Chen 2004)。
アポリポタンパク質L1(APOL1)はアポリポタンパクA-Iに結合する分泌された高密度リポタンパク質である。アポリポタンパクA-Iは比較的豊富な血漿タンパクで、HDLの主なアポタンパク質である。それは、血漿中のほとんどのコレステロールエステルの形成に関係し、さらに、細胞からのコレステロールの流出を促進する。アポリポタンパク質L1は、体皮細胞から肝臓までのコレステロールの逆輸送と同様、身体全体にわたる、脂質交換及び輸送の役割を果たし得る。血漿タンパク質は、約40 kDaの明白な分子量を持つ、単一鎖ポリペプチドである (Duchateau 1997; Duchateau 2001)。 APOL1 cDNAは、活性化内皮細胞cDNAライブラリから分離され、強力な炎症性サイトカインであるTNF-αにより上方制御されることを示した。 (Monajemi 2002).
KIAA0367は、想定されるタンパク質用にコード化する未知の長いヒト転写物の識別を目標としたKazusa cDNAプロジェクトで識別された (Ohara 1997)。 KIAA0367の想定される820アミノ酸の長いタンパク産物の機能は未知であるが、小さな疎水性分子と結合し、いくつかのヌクレオチド置換因子及びBCL2/アデノウイルスE1B19-kDaタンパク質関与タンパク質2(BNIP-2)に存在するC末端においてドメインプロフィールと結合するCRAL-TRIO脂質を含む。BNIP-2は、細胞形態、転移、エンドサイトーシス、及び細胞周期進行を含む種々の細胞機能のコントロールに関係する (Zhou 2005)。 KIAA0367は染色体領域9q21に位置する。 この部位は多数の腫瘍のホモ接合体欠失の共通標的として(Gursky 2001; Weber 2001) またはヘテロ接合性の損失として (Louhelainen 2000; Tripathi 2003)記述されている。
α及びβサブユニット(1つのヘムグループ)から成る異種のダイマータンパク質である、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)は、GTPの二次伝達物質cGMPへの変換を触媒し、一酸化窒素およびニトロ血管拡張剤の主要受容体として機能する(Zabel 1998)。 GUCYa3及びb3はヒト神経膠腫中で過剰発現される。 アンチセンスGUCY1A3もしくはGUCY1B3のトランスフェクションは、ヌードマウスの血管化及び腫瘍増殖を低下させた。これはVEGFがcGMPによって誘発されるという事実による可能性がある(Saino 2004)。GUCY1A3は、マウスの房癌細胞株の腫瘍細胞転移を促進する(Jadeski 2003)。
サイクリンD1は、サイクリンDサブファミリーにさらに特異的な、高度に保存されたサイクリンファミリーに属する (Xiong 1991; Lew 1991)。サイクリンはCDK(サイクリン依存性キナーゼ)の調整因子として機能する。 異なるサイクリンは、各分裂イベントの時間整合に寄与する、別個の発現及び分解パターンを示す (Deshpande 2005)。サイクリンD1は、複合体を形成し、CDK4もしくはCDK6の調整サブユニットとして機能するが、その機能は細胞周期G1/S遷移に必要である。 CCND1は、CDK4及びCDK6と、複合体に基質特異性を持たせるセリン/トレオニン・キナーゼ・ホロ酵素複合体を形成する (Bates 1994)。タンパク質は腫瘍抑圧遺伝子タンパク質Rbとの相互作用が示され (Loden 2002) 、この遺伝子の発現は、Rbによって積極的に調整される (Halaban 1999)。この遺伝子の、細胞周期進行を変更する突然変異、増幅及び過剰発現は、様々な腫瘍に頻繁に認められ、腫瘍形成に寄与している可能性がある (Hedberg 1999; Vasef 1999; Troussard 2000)。
CSPG4(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)は完全にそろった膜コンドロイチン硫酸プロテオグリカンを表わす。それは、腫瘍細胞増殖、転移及び侵襲の刺激に関与する初期の細胞表面黒色腫進行マーカーとして知られている。 CSPG4は、ヒト黒色腫病変の90%以上に強力に発現される。CSPG4は厳密には腫瘍特異性ではないが、メラノーマ患者と健常人の腫瘍反応的なCD4+T細胞応答では、自己免疫がない状態でのHLA-DR11-発現メラノーマ細胞のCSPG4693-709を認識する (Erfurt et al., 2007)。
CSPG4発現はまた、毛包内の細胞と同様、内皮細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、一部の表皮内の基底角化細胞のような活性化された周皮細胞に加えていくつかの正常組織にも報告されている (Campoli et al., 2004)。
血管形成中、及びCNSの病状に応じて、運動性の高いCSPG4細胞は迅速な形態変化を受けて、脈管増殖及び修復が生じている部位へ補充される。CSPG4は、悪性脳腫瘍の血管の腫瘍細胞及び周皮細胞の両方により過剰発現される (Chekenya and Pilkington, 2002)。 免疫不全のヌードラット脳の中へCSPG4陽性ヒトグリオーマ細胞株から細胞を移植することによって、これらの腫瘍は、CSPG4発現が機能及び宿主派生の腫瘍血管系の両方を調整することを示唆する対照群と比較して、より高度な微小血管密度を持つことが示された (Brekke et al., 2006)。ヌードラットへのGBM生検材料を埋め込む異種移植片実験では、CSPG4は主として腫瘍血管系の周皮細胞及び基底膜構成要素の両方に関係していると確認され、発現もまた、細胞増殖が高い部位に関係していた (Chekenya et al., 2002a)。 更に、CSPG4発現は、神経膠腫移植モデルの腫瘍の進行に平行した (Wiranowska et al., 2006)。
CSPG4は、低悪性度の神経膠腫と比較して、より高度な発現を伴うヒト神経膠腫中で特異的に高度に発現される (Chekenya et al., 1999)。CSPG4の高度発現は、α3β1インテグリン/PI3Kシグナリング及び下流標的の活性増加によって調整された多剤耐性と関連し、細胞生存を促進する (Chekenya et al., 2008)。
FABP7: 脂肪酸結合タンパク質(FABP)は細胞質性の14-15kDaタンパク質で、脂肪酸(FA)摂取、輸送及び標的に関係すると思われる。それらは、膜分画間のFAを輸送する場合に細胞質中のFAの溶解度を増加させ、FAをそれらの核の標的にすると思われる (Glatz et al., 2002)。 FABPはFA濃度を調整する可能性があり、このように酵素活性、形質発現、細胞の増殖及び分化などの様々な細胞機能に影響を及ぼす (Glatz and Storch, 2001)。
FABP7 mRNAは、悪性神経膠腫腫瘍と同様に神経上皮由来の組織で発現される (WHO grade III and IV)。遺伝子は、さらに癌原遺伝子c-mycを含み、しばしば悪性神経膠腫の異型接合性を損失する部位であるクロモソームバンド6q22-23にマッピングされた。悪性神経膠腫細胞株の分析は、FABP7が神経膠線維酸性タンパク質(GFAP)としばしば共同発現されることを示し、それは悪性神経膠腫由来の細胞が両方のタンパク質を正常に発現する可能性、または腫瘍形成の結果としての可能性を持つ星状細胞の前駆細胞であることを示唆している (Godbout et al., 1998)。FABP7タンパク質はGBMの中程度から強度の核発現および細胞質発現を示す。FABP7-トランスフェクトされたグリオーマ細胞は対照細胞に対して5倍の転移を示した。そのため、特にGBMでのFABP7過剰発現に関連したより短い総生存率は、周囲の脳実質への腫瘍細胞の転移増加及び侵襲による可能性がある (Liang et al., 2005)。星状細胞腫腫瘍のFABP7分布の詳しい分析は、悪性細胞の浸潤を隣接した脳組織に生じさせる際にFABP7に対し重要な役割を企てる腫瘍の部位に侵入する際、FABP7のより高いレベルを示す (Mita et al., 2007)。FABP7は、神経膠組織及びすべての重症度の星状細胞腫の様々な発現レベル及び細胞内局在性を示す。しかしながら、その核転座がEGFR活性化後に検知され、EGFR‐陽性のGBMの予後不良に関係しているので、特にFABP7の核局在性はグリオーマ細胞及びEGFR経路の浸潤性表現型に関係しているように見える。 さらに、核FABP7の免疫応答性はグレードI星状細胞腫で認められない (Liang et al., 2006; Kaloshi et al., 2007)。
X連鎖性のニューロリジン4は、ニューロン・シナプスの成熟及び機能に役割を果たすように見える細胞接着タンパク質のファミリーに属する。ニューロリジンファミリーの仲間は、N末端シグナルペプチド、代替スプライシングの2つのサイトを持つエステラーゼ様ドメイン、膜貫通ドメイン前面の低い配列同一性の小さなリンカー領域、及び高度に保存されたC末端をもつ短い細胞性部分と共に、関連する構造組織を持つ。最も高い相対的なニューロリジン4 mRNAレベルは心臓で見つかった。より低い発現が肝臓、骨格筋及び膵臓で検知されが、脳、胎盤、肺及び腎臓では、ニューロリジン4 mRNAはほとんど検知不可能であった (Bolliger et al., 2001)。
X連鎖性のNLGN4遺伝子中の突然変異は、自閉症スペクトラム障害の潜在的な原因であり、また突然変異は、自閉症、アスペルガー症候群及び精神遅滞の患者数例で報告された (Jamain et al., 2003; Laumonnier et al., 2004; Lawson-Yuen et al., 2008)。
NLGN4Xの癌との関連はほとんど述べられていない: 消化管間質腫瘍では、NLGN4Xの過剰発現は高齢者と比較して小児及び若年成人の症例で見つかった (Prakash et al., 2005)。
テネイシンC: 腫瘍細胞を囲む細胞間マトリックスは、正常組織の細胞間マトリックスとは異なる。 テネイシン-C(TNC)は、胚発生 (Bartsch et al., 1992)、創傷治癒 (Mackie et al., 1988) 、腫瘍過程 (Chiquet-Ehrismann, 1993; Chiquet-Ehrismann and Chiquet, 2003)のような高い転移活性に緊密に関係しているプロセスで、高度に上方調整される細胞外基質タンパク質である。更に、TNCは、TNCが腫瘍性の血管形成に関係することを示す高い増殖能指標を持つ腫瘍血管で過剰発現される (Kim et al., 2000)。 正常なヒトの脳では、TNCの発現は極めて稀に検知されるが、それは悪性神経膠腫に高レベルで発現される (Bourdon et al., 1983)。TNC発現は、低酸素症 (Lal et al., 2001)、健康な実質へ高悪性度の神経膠腫の侵潤のメカニズムを提供するTGF-β1 (Hau et al., 2006)、もしくはヒトGBM細胞の転移を著しく調整するガストリン (Kucharczak et al., 2001)により、誘発され得る。TNCは、トロポミオシン-1を下方調整し、そのためアクチン緊張繊維を不安定にする。さらにWnt阻害剤Dickkopf1の下方調整を引き起こす。縮小されたトロポミオシン-1発現及び増加したWntシグナリングが転換と腫瘍形成に緊密にリンクされるので、TNCは特に、グリオーマ細胞の増殖を増強するためにこれらのシグナル経路を調整する (Ruiz et al., 2004)。
腫瘍供給血管の周辺のTNCの血管周囲の着色が、GBM組織で認められるのに対して、WHOの悪性度II及びIII神経膠腫においてそれほどの頻度ではなく、TNC着色の強度が腫瘍の悪性度と関連し、最も強い着色が予後不良を示すことを示唆している (Herold-Mende et al., 2002)。TNCはさらに、脳室下帯(SVZ)内の幹細胞ニッチの生成に寄与し、神経幹細胞の発育を加速する生長因子シグナリングを組み合わせる働きを担っている。SVZ中の細胞に対するTNCの顕著な影響は、発達の進行の調整である (Garcion et al., 2004)。TNCは、ヒト神経幹細胞(NSC)の指向転移の最も強い誘発物質である。腫瘍由来のECMは、そのためにNSC親和性に対して許容状態の環境を播種性腫瘍細胞に提供する (Ziu et al., 2006)。
NRCAM(ニューロン細胞接着分子)は、多数の免疫グロブリン様C2タイプ及びフィブロネクチンタイプ-IIIドメインを持つニューロン膜貫通細胞接着分子である。それは、他のIgCAMとの異種相互作用だけでなく同種相互作用を形成することにより (Volkmer et al., 1996; Sakurai et al., 1997; Zacharias et al., 1999)、ニューロン細胞の誘導、増殖及び繊維束性収縮に関係する (Grumet et al., 1991; Morales et al., 1993; Stoeckli and Landmesser, 1995; Perrin et al., 2001; Sakurai et al., 2001) 。アンキリン結合NRCAM (Davis and Bennett, 1994) は、管形成及び血管形成における可能な役割を示唆する内皮細胞を形成する管で上方調整される (Aitkenhead et al., 2002)。
NRCAMは、腫瘍形成に寄与するβ-カテニン及びプラコグロビン-LEF/TCF複合体の標的遺伝子である (Conacci-Sorrell et al., 2002)。 NRCAM エクトドメインは、メタロプロテアーゼ様活性により、細胞表面から削減し得る。この削減ドメインは、様々なシグナル経路を活性化することができ、細胞運動を増強し、マウスの腫瘍形成を行う (Conacci-Sorrell et al., 2005)。
正常な脳と比較して、NRCAMは未分化星細胞腫及びGBM腫瘍組織で上方調整され、増加したレベルは、浸潤行動に関連する (Sehgal et al., 1998)。NRCAMに対するアンチセンスRNAは、ヒトGBM細胞の腫瘍形成性能力を減少させる (Sehgal et al., 1999)。
IGF2BP3は、mRNA局在性、ターンオーバー及び翻訳調節に関与するインスリン様増殖因子II mRNA結合タンパク質ファミリーに属する。 タンパク質はいくつかのKH(K-相同)ドメインを含み、それはRNA結合において重要で、RNA合成と物質代謝に関係することが知られている。発現は主として胚発生中に生じるが、それはいくつかの腫瘍で表されている。 そのため、IGF2BP3は癌胎児性タンパク質であると考えらる (Liao et al., 2005)。対照組織と比較して多数の癌組織中のIGF2BP3の高い転写レベルの存在は、IGF2BP3タンパク質が増殖する形質転換細胞の機能的役割をし得ることを示す。この仮説は、IGF2BP3転写が、細胞の成長及び増殖により特徴づけられる組織であるヒト胎盤であることを表現する唯一の良性のヒト組織であるという所見により支持される (Mueller-Pillasch et al., 1997)。
例えば、IGF2BP3は明らかな細胞RCC標本で発現され、その発現は、一次腫瘍の進行期及び悪性度に関係する。更に、積極的なIGF2BP3発現は遠隔転移のリスクの5から10倍の増加、及びRCCによる死亡リスクの42%から50%の増加に関連する (Hoffmann et al., 2008; Jiang et al., 2006; Jiang et al., 2008)。
IGF2BP3も、膵臓癌で高度に発現される。2つの研究では、膵臓腫瘍組織サンプル中90%以上が、免疫染色後にIGF2BP3発現を示した一方、非腫瘍性の膵臓組織がIGF2BP3で陰性であった。 更に、発現は、腫瘍病期につれて次第に増加した (Yantiss et al., 2005; Yantiss et al., 2008)。
IGF2BP3発現はまた、それが一般的に良性の尿路上皮もしくは低悪性度の尿路上皮腫瘍で発現されない一方、高悪性度の尿路上皮腫瘍中で著しく増加することが分かった。さらに、IGF2BP3陽性腫瘍を持つ患者は、IGF2BP3陰性腫瘍を持つ患者よりはるかに低い無増悪生存率及び無病生存率である (Li et al., 2008; Sitnikova et al., 2008; Zheng et al., 2008)。
ブレビカン(BCAN)は、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのレクティカンファミリーに脳特異的に属する。 2つのBCANアイソフォームが報告されている: 細胞外マトリックスに分泌される全長アイソフォーム、及びグリコフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを予測する配列を持つ短めのアイソフォームである。 分泌されたアイソフォームは、生誕時から8歳まで高度に発現され、正常成人皮質で維持される低レベルに、20歳までに下方調整される。GPIアイソフォームは発育を通して一様に低レベルで発現される (Gary et al., 2000)。BCANは、成人の神経系中の細胞及び神経突起の運動性を阻む障壁分子として通常説明されるプロテオグリカン類のファミリーに帰属する (Viapiano and Matthews, 2006)。In vivoで、BCANは吻側細胞移動路(RMS)の境界近くで発現され (Jaworski and Fager, 2000) 、神経損傷後にグリア性瘢痕の主要な上方調整されたコンポーネントである (Jaworski et al., 1999)。
BCANは神経膠腫中で劇的な上方調整を示し、正常レベルのほぼ7倍の増加が確認され得る。 BCAN mRNAは、神経学的な合併症がなく死亡した個人から得た成人皮質のサンプルに検知されなかった。 際立った差異では、BCAN mRNAは、BCANが神経膠腫中の唯一の選択マーカーである可能性を提案するヒト神経膠腫の外科サンプル27例全てにおいて検知された (Jaworski et al., 1996)。
タンパク質チロシンホスファターゼ、受容体タイプ(PTPRZ1, PTP-ξ) - PTPRZ1は受容体タイプ・タンパク質チロシンホスファターゼ・ファミリーに属し、2つの細胞質のチロシン・タンパク質脱リン酸化酵素ドメイン(アルファ炭酸脱水酵素ドメイン及びフィブロネクチン・タイプ-IIIドメイン)を持つ単一パスタイプI膜タンパク質をコード化する、 この遺伝子の発現は、胃癌細胞 (Wu et al., 2006)、乳癌 (Perez-Pinera et al., 2007)、多発性硬化症病変の乏突起膠細胞の再ミエリン化 (Harroch et al., 2002)、及び低酸素状態におけるヒト胎児腎臓細胞 (Wang et al., 2005)で誘発される。
タンパク質と転写物の両方は膠芽腫細胞中で過剰発現され、走触性の転移 (Lu et al., 2005)及び 膠芽腫中のゲノムDNA増幅 (Mulholland et al., 2006)を促進する。
キチナーゼ3様2 (CHI3L2) - CHI3L2は、最初に軟骨細胞から確認され、例えば、変形性関節症に上方調整される (Steck et al., 2002)。タンパク質はまだあまり特徴づけられていないが、恐らく細胞外スペースへ分泌されるようである。慢性関節リウマチの目標抗原として頻繁に述べられている。実験による、ヒトグリオーマ細胞株のsiRNAトランスフェクション(VEGF-A)による抗血管形成誘発は、CHI3L2の上方調整を引き起こした。
サービビン(BIRC5)-アポトーシスタンパク質(IAP)ファミリーの阻害剤に属する、BIRC5(サービビン)の発現は、胎生組織及び様々なヒト癌中で上昇する。サービビンは、細胞増殖とアポトーシス細胞死の両方の調整が可能に思われる。特に膠芽腫では、非常に高レベルのサービビンの発現が検知できる (Angileri et al., 2008)。脳神経膠腫中のサービビン過剰発現が悪性増殖、抗アポプトーシス及び血管形成に重要な役割を果たす可能性があることが示唆される (Zhen et al., 2005; Liu et al., 2006)。特に膠芽細胞腫において、しかし他の腫瘍の存在においても、サービビン陰性の腫瘍を持つ患者と比較して、サービビン発現は著しく悪性度が高く(膠芽細胞腫で最も高いサービビン発現)、より短い生存期間に関係していた (Kajiwara et al., 2003; Saito et al., 2007; Uematsu et al., 2005; Mellai et al., 2008; Grunda et al., 2006; Xie et al., 2006; Sasaki et al., 2002; Chakravarti et al., 2002)。
マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、関節炎と転移のような疾病プロセスと同様、胚発生、生殖及び組織改造のような正常な生理的プロセスでの細胞外マトリックスの分解に関係する (Mott 2004)。マトリクス・メタロプロテイナーゼ7(MMP7)は、細胞外のプロテイナーゼによって開裂された時に活性化される29.6 kDaの不活性タンパク質として分泌される。活性酵素は、分子量が19.1 kDaで、1つのサブユニット当たり2個の亜鉛イオン及び2個のカルシウムイオンと結合する (Miyazaki 1990; Browner 1995)。 MMP7はゼラチン、フィブロネクチン及びカゼインを分解し (Miyazaki 1990; Quantin 1989)、 保存されたC末端タンパク質ドメインを欠く点でほとんどのMMPファミリーと異なる (Gaire 1994)。MMP7は、悪性組織でしばしば過剰発現状態で見つかり (Lin 2004; Bramhall 1997; Denys 2004)それがin vivoの腫瘍細胞侵入を促進することが示唆される (Wang 2005)。
これらのタンパク質は、多くの型の癌において腫瘍特異的免疫応答の標的とすることができる。
B型肝炎ウイルスコア抗原ペプチドHBV-001は内因性のヒト腫瘍関連の抗原に由来しないが、B型肝炎ウイルスコア抗原に由来する。最初に、それは、本発明の製薬組成物で使用される、腫瘍関連ペプチド(TUMAP)により誘発されたT細胞応答の大きさの定量比較を可能にし、そのため抗腫瘍反応を生じさせる能力の研究を可能にする。次に、それは、患者の任意のT細胞応答が不足する場合には、重要な陽性対照として機能する。第三に、それはまた、患者の免疫適格性のモニタリングを可能にする。
Hepatitiv Bウイルス(HBV)感染は、世界中の約3億5000万人に影響する肝疾患の主要原因の一つである (Rehermann 2005)。縦横容易に伝播し、肝硬変及び肝細胞癌に結びつくことがある慢性疾患の可能性により、HBVは、世界中の多くの国々の健康保険に対する主な影響を代表する。HBVゲノム (Previsani 2002)は、部分的に二重らせん構造の環状DNAで構成される。HBVビリオンでは、ヌクレオカプシドを形成するためにコアタンパク質HBc及び他のタンパク質と一緒にパックされ、それは脂質及び表面タンパク質ファミリーHBs(エンベロープ・タンパク質とも呼ばれる)を含む外殻に囲まれている。HBc及びHBsに関連する抗原決定基群は、それぞれHBcAg及びHBsAgとして著名である。これらの抗原は、血清学、すなわち、患者の血液で見つかった抗体反応に関連があり、臨床的に、HBV感染の診断用の最も有用な抗原抗体系である。HBcは、過去にHBV感染の履歴がないすべての個人のための新規外来抗原を表わすであろう。免疫原性ペプチドがこの抗原でよく知られているので (Bertoletti 1993; Livingston 1997)、HBcAgから1個の10アミノ酸ペプチドがIMA内の陽性対照抗原として選択された。次に、HBcペプチド特異的CTLの誘発は、マーカーとして患者の免疫適格性及びワクチン接種を成功させるために使用されるだろう。
本発明の製薬組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与や経口投与に用い得る。このため、ペプチドは、薬理学的に許容可能な好ましい水性担体中に溶解または懸濁される。さらに、組成物は、抗酸化剤、保存剤、バッファ、結合剤、爆破剤、希釈剤、香料などの賦形剤を含んでもよい。ペプチドはまた、サイトカインなどの免疫刺激物質と一緒に投与することができる。そのような組成物に使用可能な賦形剤の指示リストは、例えば、A. Kibbe, Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版、2000年(American Pharmaceutical Association and pharmaceutical press)から得ることができる。本発明の組成物は、腺腫性疾患もしくは腫瘍疾患の防止、予防及び/または治療に用いることができる。
本発明の製薬組成物は、SEQ ID NO:1から10の各ペプチドもしくは抗原に関連する腺腫または癌疾病に苦しむ患者、または、脳腫瘍、特に神経膠腫、特にSEQ ID NO:11 から22 または11から23の各ペプチドもしくは抗原に関連する神経膠芽腫に苦しむ患者に投与され得る。製薬組成物中のペプチドは、患者のT細胞を媒介とした免疫応答を誘発し得る。 上述されるように、腎細胞癌の場合には、本発明による製薬組成物は、好ましくはSEQ ID NO:1 及び/または SEQ ID NO:2に規定されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、さらにSEQ ID NO:3 からSEQ ID NO: 10に規定されるアミノ酸配列を含む追加の腫瘍関連ペプチドを少なくとも1つ含む。脳腫瘍、特に神経膠腫、特に神経膠芽腫の場合には、製薬組成物が、好ましくはSEQ ID NO:12 及び/または SEQ ID NO:13で規定された配列を含み、さらにSEQ ID NO:11 及びSEQ ID NO:14 から22 及び/または23で規定されたアミノ酸配列を含む追加の腫瘍関連ペプチドを少なくとも1つ含む。
好ましくは、本発明の製薬組成物中のペプチドは、全長が9から100の間、好ましくは9から30の間、最も好ましくは9から16の間のアミノ酸である。更に、SEQ ID NO:1 からSEQ ID NO:23のいずれかによる、少なくとも1つのペプチドが、非ペプチド結合を含み得る。
本発明(好ましくは腎細胞癌ワクチン用)の好ましい製薬組成物は、SEQ ID NO:1 及び/またはSEQ ID NO:2で規定されるアミノ酸配列から成るペプチドを含み、他の態様において、更にSEQ ID NO:3 からSEQ ID NO:11で規定されるアミノ酸配列から成る、少なくとも1つのペプチドを含む。
本発明(脳腫瘍、特に神経膠腫、特に神経膠芽腫ワクチン用)の好ましい製薬組成物は、 SEQ ID NO:12 及び/またはSEQ ID NO:13で規定されるアミノ酸配列から成るペプチドを含み、他の態様において、更にSEQ ID NO:11 からSEQ ID NO:22及び/または23で規定されるアミノ酸配列から成る、少なくとも1つのペプチドを含む。
ペプチドはまたタグをつけることができるか、あるいは融合タンパク質であるか、ハイブリッド分子であり得る。その配列が本発明で提供されるペプチドは、CD8陽性CTLを刺激することが期待される。しかしながら、CD4陽性(CD4+)T細胞によるヘルプの存在で、刺激性はより効率的になる。そのため、ハイブリッド分子の融合相手または切片は、CD4陽性T細胞を刺激するエピトープを適切に提供する。CD4陽性刺激エピトープは当業界で既知であり、破傷風トキソイドにおいて同定されるものを含む。 さらに好ましい態様では、ペプチドは、融合タンパク質であり、特にHLA-DR抗原-関連不変鎖(Ii)のN-末端アミノ酸を含む。一実施態様において、本発明のペプチドは、切断型(truncated)ヒトタンパク質、または、タンパク質フラグメントとその他のポリペプチド部分の融合タンパク質であるが、ただし、ヒト部分は1つ以上の本発明のアミノ酸配列を含む。
製薬組成物に役立つペプチドは、本質的に純粋であり得るか、免疫刺激アジュバントと組み合わせたものであり得るか、または免疫刺激的サイトカインと組み合わせて用い得るか、あるいは適当なデリバリシステム、例えば、リポソーム、ミクロ粒子、ナノ粒子、ミセル、乳剤、ゲルとともに投与され得る。一般にペプチドワクチンをアジュバントする必要があり、そういうものとして、GM-CSFが好まれる(ヒトGM-CSFは、Sargramostim(登録商標)、Leukine(登録商標)として市販されており、Berlex、現在はBayer HealthCare Pharmaceuticalsから入手可能)。 その他の適当なアジュバントには、サポニン、マイコバクテリア抽出物及び合成バクテリア細胞壁ミミックから誘導されるAquila's QS21 stimulon(Aquila Biotech, 米国メリーランド州ウースター)、及び、Ribi's Detoxのような専売の(proprietary)アジュバントが含まれる。他のサポニン誘導アジュバント、Quil Aも使用し得る (Superfos, Denmark)。フロイントのアジュバントなどのその他のアジュバントもまた有用である。ペプチドはまた、キーホール無脊椎ヘモシアニン(KLH)またはマンナンなどにペプチドを接合させることも有用である(WO 95/18145号公報及びLongenecker等の(1993年)、Ann. NY Acad. Sci. 690,276-291を参照)。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増強する物質として定義されるので(MedlinePlus(登録商標) Medical Dictionary, NIH)、この機能を備えた他の物質が使用し得る。他の物質は、トール様受容体アゴニスト(TLRアゴニスト)を含むがこれらに限定されない。TLRアゴニストとしては、好ましくはプロタミン安定化RNA、CpGオリゴヌクレオチド、CpRオリゴヌクレオチド、細菌DNA、イミダゾキノリン等のような、TLR 3、7、8及び9とアゴニスト的に相互作用する物質が挙げられる。
免疫応答を増強するのに適切な該技術で既知の他の物質には、これに限定されないが、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤、アルギナーゼ(ARG1)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR-1)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)1、TGFベータ受容体I(TGFベータ-RI)などが含まれる。そのような阻害剤は、例えば分子または小分子に対する単クローン抗体であり得る。 上述された因子への阻害機能、およびこのように効果の増強する免疫応答を有する、当技術分野で周知の小分子及び単クローン抗体は、例えば1-MT、NCX-4016、ロフェコキシブ、セレブレックス、BEC、ABH、nor-NOHA、SB-505124、SD-208、LY580276、AMD3100、アキシチニブ、べバシズマブ、JSI-124、CPA-7、XL-999、ZD2171、パゾパニブ、CP-547632、VEGFなどがある。
さらに、調節性T細胞(CD4+、CD25+、FoxP3+)の数を低減させる物質はアジュバントとして適切である。それらに限定されるものではないが、そのような例には、シクロホスファミド(Cytoxan)、ONTAK(デニロイキンジフチトクス)、スニチニブ、抗-CTLA-4(MDX-010、CP-675206)、抗CD25、抗CCL22、及び抗GITRがある。
本発明の製薬組成物中のペプチドの好ましい量は、約0.1から100mg間で変化し、好ましくは約0.1から1mgで、溶液500μl当たり約300 μg から 800 μgが最も好ましい。用語「約」は、別に述べられていない場合には、所与値のプラス/マイナス10パーセントを意味するものとする。熟練者は、例えば個々の患者の免疫状態及び/または特定のタイプの癌に存在するTUMAPの量のようないくつかの要因に基づいて使用される実際の量のペプチドを調節することができるだろう。
本発明の製薬組成物は、非常に増強された溶解性、及び既知の組成物を上回る凍結乾燥品の湿潤性を組成物に提供する。これは賦形剤の特別の組成を使用して達成された。この方法で、SEQ ID NO:1 から10 もしくはSEQ ID NO:1 から11のペプチドおよびその変異体を含む本発明の製薬組成物は開発され、それは(-20°C、+5°C、+25°Cで)優れた棚安定性を示し、容易に再可溶化できる。
用語「棚安定性」は、副産物の割合が2年間で5%以上上昇しないことを意味する。更に、用語「安定性」は、溶解度、溶液の視覚的な明瞭さ、及び溶液内の粒子数のなどの、特定の特性が、時間的枠中に知覚可能な変化を見せないことを意味する。
用語「容易に、再可溶化できる」は、凍結乾燥物が、超音波ホモジナイザーを使用せずに数秒から2分間以内にバッファあるいは他の賦形剤で完全に溶解できることを意味する。更に、組成物は、皮内注射による治療を必要とする患者に容易に提供することができ、皮下注射による治療はあまり好ましくない。結果として生じる溶液のpHは、pH 2.7からpH 9間でなければならない。
別の態様では、本発明の製薬組成物は、骨格フォーマーとして糖、糖アルコールや、グリシン、アルギニン、グルタミニン酸などのようなアミノ酸を含み得る。糖は、単糖類、二糖類、あるいは三糖類であり得る。 これらの糖は単独で使用されてもよいし、糖アルコールと組み合わせてもよい。糖の例としては、単糖類としてグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖あるいはソルボース、二糖類としてサッカロース、蔗糖、ラクトース、麦芽糖、トレハロース、及び三糖類としてラフィノースを含む。例えば、糖アルコールはマンニトースである。好ましい成分は、サッカロース、蔗糖、ラクトース、麦芽糖、トレハロース、マンニット及び/またはソルビットで、マンニトールはさらに好ましい。
更に、本発明の製薬組成物は、生理学的に十分に許容された賦形剤を含み得る(Handbook of Pharmaceutical Excipients, 5th ed., edited by Raymond Rowe, Paul Sheskey and Sian Owen, Pharmaceutical Press (2006)参照)。例えば、アスコルビン酸もしくはグルタチオンのような酸化防止剤、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、チオメルサール、または塩化ベンザルコニウムなどの保存薬、安定化剤、サッカロース、蔗糖、ラクトース、麦芽糖、トレハロース、マニトース、マンニット及び/またはソルビット、マンニット及び/またはラクトースのような骨格フォーマー、及びポリエチレングリコール(PEG)、すなわちPEG 3000、3350、4000もしくは6000、またはシクロデキストリン、すなわちヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエチル-β-シクロデキストリン、またはγシクロデキストリン、デキストラン、ポロキサマー、すなわちポロキサマー407(登録商標)、ポロキサマー188、もしくはTween 20(登録商標)、 Tween 80(登録商標)などの溶解剤がある。 好ましい態様では、本発明の製薬組成物は、酸化防止剤、骨格フォーマー及び安定化剤から成るグループから選択された、1つあるいはそれ以上の良好な耐容性を示す賦形剤を含む。
本発明は、SEQ ID NO:1 から10もしくは SEQ ID NO:1 から11によるペプチドの少なくとも2セット、マンニトールおよびポロキサマー188を一定の比率で含む組成物が、非常に増強された安定性を示し、超音波処理なしで溶解可能な組成物をもたらすという所見に関連する。 更に、溶媒和はただ数秒間必要とするのみである。凍結乾燥品の規格として、透明から乳白色の溶液は、4.2%重炭酸ナトリウム溶液を使用した再構成後に、目視検査によって観察されなければならない。本発明の製薬組成物のこの再可溶化の性質は、2年間、-20°C、+5°C及び+25°Cにおいて製剤を保管した後でも複製可能である。
更に、本発明は、SEQ ID NO:11からSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:11からSEQ ID NO:23、 SEQ ID NO:12 からSEQ ID NO:22もしくはSEQ ID NO:12 からSEQ ID NO:23によるペプチドの少なくとも4セットを含む組成物に関連し、ここでは一定の割合のマンニトール及びポロキサマー188は、容易に溶解できる組成物に帰着する。凍結乾燥品の規格として、透明から乳白色の溶液が、4.2%重炭酸ナトリウム溶液を使用した再構成後に、目視検査によって観察されなければならない。上述の組成物中の個々のペプチドは-20°C、+5°C及び+25°で保管した後に、少なくとも3か月間安定である。
好ましい態様では、本発明の製薬組成物は、1:2:1.5から1:8:2.2の範囲を含む、ペプチド:マンニトール:Tween 80(重量比)の特別な比率を含む。その他の、本発明に含まれている好ましい比率については、下記の図表を参照されたい。特に好ましい比率は1:5:2である。 別の特に好ましい比率は1:8:2である。
他の好ましい態様では、本発明の製薬組成物は、1:5:1.5 から1:8:2.2の範囲を含む、ペプチド:マンニトール:ポロキサマー188 (重量比)の特別な比率を含む。その他の、本発明に含まれている好ましい比率については、下記の図表を参照されたい。好ましい比率は1:5:1である。
ペプチド:マンニトール:ポロキサマー188の、重量比による別の特に好ましい比率は1:8:2である。さらに好ましい組成は、重量比でペプチド:マンニトール:ポロキサマー188が1:5:2の比率の混合物を含む(例2を参照)。 別の比率は、重量比で1:0:2から1:2:2.2の比率でペプチド:マンニトール:ポロキサマー188を含む。
本発明の製薬組成物は凍結乾燥され得る。得られた凍結乾燥物は、含水溶剤を加えることにより含水組成物に再構成することができる。好ましくは、含水組成物は、患者に直接非経口投与され得る。そのため、本発明のさらなる態様は、上記に開示された組成物の含水製薬組成物で、含水溶剤で上述された凍結乾燥物の再構成を通じて入手可能である。
受容可能なpH範囲は、静脈内及び筋肉内投与においてpH 2 から 12であるが、皮下には、生体内希釈率が減少する結果、注射部位の刺激の可能性がさらに増すので、その範囲は2.7 から 9.0まで低下する。Strickley Robert G., Pharm. Res., 21, NO:2, 201 - 230 (2004)。
好ましくは、本発明の含水製薬組成物のpH値は7から9で、さらに好ましくは8から9で、さらにもっと好ましくは8.3から8.7である。
本発明の製薬組成物は生理学的に良好な耐容性を示し、容易に生産可能で、正確に投薬することができ、保管時間における濃度、分解産物及び会合体に関する優れた棚安定性を示す。その製剤は、冷凍庫内(-20°C)、冷蔵庫内 (+2から8°C)、及び室温 (+25°C)でさえ、60%の相対湿度で保管しても2年間安定し得る。
本発明の製薬組成物は、無菌でin vivo投与用に調製されるのが好ましい。
本発明はまた、被験者の免疫応答を上昇させる方法を提供し、該方法はその必要のある被験者への本発明の製薬組成物を含み、そこでは該ペプチド、変異体または塩が、有効量で、好ましくは該免疫応答を上昇させるのに有効な量で、投与される。本発明はさらに、癌に対する免疫応答を上昇させるために、被験者へ投与する薬剤における、本発明の製薬組成物の使用を提供する。さらに、癌、好ましくは腎臓癌の治療のための本発明の製薬組成物の使用、及び癌に対する免疫応答を上昇させ、それにより癌を治療するための患者に投与用の医薬品製造における使用も含まれる。
製薬組成物に使用されるペプチドは、好ましくは純粋、あるいは本質的に純粋で、望ましくは、本質的に均質(すなわち、混入ペプチド、タンパク質などがないもの)である。 「本質的に純粋」は、HPLCにより少なくとも90%の、好ましくは少なくとも95%の純度を持つペプチド製剤を意味する。「本質的に均質」な製剤は、製剤中のペプチドの全重量に基づいて、少なくとも99%のペプチドを含むペプチド製剤を意味する。
本発明はさらに、次の事項から成るキットを含む:
(a)溶液あるいは凍結乾燥剤で、上述されるような製薬組成物を含む容器;
(b)任意に、希釈剤あるい再構成溶液を含む第2容器;及び
(c)任意に、(i)溶液の使用、もしくは(ii)凍結乾燥組成物の再構成及び/または使用の説明。
キットはさらに、(i)バッファー、(ii)希釈剤、(iii)フィルタ、(iv)針もしくは(v)注射器を1つまたはそれ以上を含むことがある。 容器は、好ましくはボトル、バイアル、注射器もしくは試験管で、容器は多重使用(multi-use)容器であり得る。製剤組成物は、好ましくは凍結乾燥される。
本発明のキットは、好ましくは適切な容器中の本発明の凍結乾燥組成物、および、再構成及び/または使用の使用説明を含む。 適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル(例えば、二室バイアル)、注射器(二室注射器など)及び試験管を含む。容器はガラスもしくはプラスチックのような様々な材料から形成され得る。好ましくは、キット及び/または容器は、再構成及び/または使用の方法を示す説明(容器上あるいはその容器と共に)含む。例えば、ラベルは、凍結乾燥組成物が上述のペプチド濃度に再構成されることになることを表示し得る。ラベルはさらに、組成物が有用であるか、あるいは皮下投与を意図するものであることを表示し得る。
組成物が入った容器は多重使用バイアルであり得、再構成組成物の反復投与(例えば2から6回投与から)を考慮に入れ得る。キットはさらに、適切な希釈剤(例えば重炭酸ナトリウム溶液)を含む、第2容器を含み得る。
希釈剤及び凍結乾燥組成物の混合に際して、再構成組成物の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15mg/mL/ペプチド(=75μg)で、好ましくは最高3mg/mL/ペプチド(=1500μg)までである。キットはさらに、他のバッファ、賦形剤、フィルタ、針、注射器及び使用方法の添付文書を含む商業上観点及び使用者観点から望ましい他の材料を含む。
本発明のキットは、他のコンポーネント(例えば、他の化合物あるいはこれらの他の化合物の製薬組成物)の有無に関わらず、本発明による製薬組成物の調整物を含む単一容器、あるいは各コンポーネントの別個の容器を含み得る。
好ましくは、本発明のキットは、第2化合物またはその製薬組成物の併用と組み合わせ使用のために包装された本発明の組成物を含む(第2化合物は、アジュバント(例えば、GM-CSF)化学療法剤、天然産物、ホルモンもしくは拮抗薬、抗血管形成作用薬もしくは阻害剤、アポトーシス誘導作用薬もしくはキレート化剤のような化合物である)。キットのコンポーネントは、あらかじめ複合するか、または各コンポーネントが患者に投与する前に分離された個別の容器内にあり得る。キットのコンポーネントは、1つまたはそれ以上の溶液中に、好ましくは水溶液、さらに好ましくは無菌水溶液中に提供され得る。キットのコンポーネントもまた、固体として提供され得、好ましくは他の別個の容器で提供され、適切な溶剤を添加することで液体に変換され得る。
治療キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器もしくは固体か液体を入れるその他の手段であり得る。通常、1より多くのコンポーネントがある時、キットは第2のバイアルあるいは他の容器を含み得、それにより別々に投与できる。キットはまた、薬学的に受理可能な液体用の別の容器を含み得る。好ましくは、治療キットは器具(例えば、1またはそれ以上の針、注射器、点眼びん、ピペットなど)を含み、それは、本キットのコンポーネントである、本発明の薬の投与を可能にする。
本組成物は、経口(腸内)、経鼻、眼、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、もしくは経皮のような任意の受理可能なルートによるペプチドの投与に適するものである。好ましくは、投与は皮下注射で、輸液ポンプによる皮内注射が最も好ましい。
分析試験の手順:
同一性、純度及びペプチド内容物を、RP-HPLC分析クロマトグラフィーにより測定する。検出波長は220nmであった。
安定性試験(試験組成物の安定性):
a) 腎細胞癌ワクチン:
様々な凍結乾燥物を、HPLC分析により、+25°C及び+40°Cで個々のペプチドの安定性に関して試験した。+25°C及び+40°Cでのストレス試験を、どの組成物が室温及びそれ以上の温度でより安定しているかに関する傾向を決定するために実施した。
SEQ ID NO: 1から10によるペプチドは、賦形剤なしで、および、マンニトール及びポロキサマー188(Lutrol F68(登録商標))あるいはTween 80(登録商標)の追加によって凍結乾燥された。
次の試験組成物を調製し、安定性を、HPLC分析により+25°C及び+40°Cで評価した:
組成物1: 賦形剤なしのペプチド
組成物2: ペプチド: マンニトール: Lutrol F68 (ポロキサマー188) (重量比1:5:2 );
組成物3: ペプチド: マンニトール: Tween 80 (重量比1:5:2);及び
組成物4: ペプチド: マンニトール: Tween 80 (重量比1:5:1)。
最初のHPLC測定を、人工気候室に保管する前に各組成物に行った。この目的のために、2バイアルの内容物を30%酢酸に完全に溶解し、繰り返し測定によるRP-HPLC により測定した。個々の測定間の比較を確実にするためβ-ナフチル-アラニンを内標準として使用し、ペプチドと一緒に凍結乾燥した。
7、14、21及び28日後に、さらに2個のバイアルを安定性を評価するために人工気候室から取り出した。
データ評価を、1バイアルを繰り返し測定することで実施した。 1回の時間ポイントと温度に対し、2個の独立したバイアルを、合計で4つのデータポイントを得るために使用した。 これらの値を、適切な図表の中でエラーバーとして示される標準偏差を計算するために得た。
実験の結果、マンニトール及びLutrol F68を含む組成物の個々のペプチドの安定性は、賦形剤のない組成物で得られた結果と同程度である。Tween 80を含む組成物は、特に+40°CでIMA-RGS-001の分解の増加、および、特にペプチドIMA-ADF-001でシグナルの増加を示す。この増加はペプチドの分解によって引き起こされた不純物の共溶出のためであり得る。
b) 膠芽腫細胞癌ワクチン:
様々な凍結乾燥物を、混合物に調整されたペプチドの溶解度及び安定性に関して試験した。
SEQ ID NO: 11から23によるペプチドは、賦形剤なしで、および、マンニトール/ポロキサマー188(Lutrol F68)及びマンニトール/Tween 80の添加により凍結乾燥された。
次の試験組成物を調製し、異なる溶液内でのそれらの溶解度、及び+25°C及び+40°Cでの安定性を試験した。
組成物1: 賦形剤なしのペプチド
組成物2: ペプチド: マンニトール: Lutrol F68 (ポロキサマー188) (重量比1:5:2 );
組成物3: ペプチド: マンニトール: Tween 80 (重量比1:5:2)。
両組成物の安定性は同等に良好であった。溶解度は組成物2において最良で、明瞭で無色の混合物になった。その一方で組成物3はいくつかの例では、高濃度にてわずかに沈澱を示した。組成物1の使用で、溶解は全く不可能であった。
実験の結果、マンニトール/Lutrol F68及びマンニトール/Tween 80(登録商標)を含む個々のペプチドの安定性は、賦形剤がない組成物により得られた結果と同程度である。賦形剤なしでは、組成物は、たとえば炭酸水素ナトリウム(4.2%)などの適切な溶液に溶解しない。
IMA901調製の可能性の計算:
賦形剤ポロキサマー188及びマンニトールのT細胞プライミング効率に対する影響を試験した。IMA901組成物中の非活性賦形剤は、ポロキサマー188(Lutrol F68)及びマンニトールである。これらの2つの賦形剤は、第I相臨床試験のIMA901組成物には含まれず、第II相臨床試験でIMA901の溶解度及び使用中の安定性を増強するために含められた。この試験では、マウスモデルにおけるT細胞のプライミング効率に対するこれらの物質の影響を、マウスモデルペプチドによるペプチド免疫処置後に試験した。ポロキサマー188(Lutrol F68)及びマンニトールの毒性作用は認められなかった。T細胞プライミングを、免疫処置の9日後に四量体染色と流動細胞計測法(フローサイトメトリー)によりex vivoで分析した。免疫性溶液へのポロキサマー (Lutrol F68)/マンニトールの添加は、CD8+T細胞のプライミング効率を変化させない。
試験の原理
免疫処置: 未感作 CD8+T細胞のプライミングについては、4.2%の重炭酸バッファー中、マウス免疫処置で一般に使用されるアジュバント(CpG デオキシオリゴヌクレオチド)と組み合わせて、免疫原H2-Kb結合ペプチドOva257-264(SIINFEKL)を、8から12週齢の雌マウス(系統C57BL/6, H2b 、1つの群当たり3匹のマウス)に皮内注射した。 ポロキサマー188(Lutrol F68(16.5mg/ml))及びマンニトール(41.3mg/ml)を含む注射液を、それらを含まない注射液と比較した。賦形剤の濃度はIMA901注射液で予定されている濃度と同じである。陽性対照群には、Titermax(登録商標)classic (Sigma-Aldrich)で乳化されたCpGを含むペプチド溶液を使用して皮下に免疫投与した。
四量体染色: 9日後にマウス脾臓を取り出し、Ova257-264-特異T細胞を、四量体染色と流動細胞計測法でex vivoで分析した。 四量体技術で、適合性をもつT細胞受容体を運ぶT細胞の特異的かつ高感度の検出が可能である。
結果: ポロキサマー188(Lutrol F68(登録商標)BASF、ルートウィックスハーフェン、ドイツ)/マンニトールの毒作用は、注射部位で局所的にもしくは体系的に認められなかった。 陽性対照群、CpG群及びCpG/ポリキサマ―188/マンニトール群は、陰性対照群と比較して、ペプチド特異T細胞を著しく高い頻度で示した(p<0.05)。CpG単独およびCpG/ポロキサマー188/マンニトール群の間に有意差は見られなかった。
人為的に観察された陽性個体群の可能性は、ペプチドのin vitro刺激の5日後に、増殖したペプチド特異細胞の四量体染色により除外された(データは示されていない)。
結論として、免疫カクテル中のポロキサマー188(Lutrol F68)/マンニトールの存在は、マウスのペプチド誘発免疫応答を変更しない。そのため、ペプチドに基づいた免疫治療一般の効能及び安全性に対するポロキサマー188(Lutrol F68)及びマンニトールの有害または好ましくない影響は期待されない。
材料及び方法
異なる組成物の生成に使用されたペプチドは、Bachem AG(スイス)により合成され提供された。
個々のペプチドの原液を、可溶化特性に従って適切な溶剤中にペプチドを溶解することにより調製した(表2を参照)。より高い濃度のペプチド溶液(ペプチド5から10)の1.47 mL、及びペプチド溶液1から4の7.34mLを、 10%酢酸1.47のmL追加により次のように組み合せた。混合物を2分間ボルテックスで攪拌し、次に1分間超音波浴で処理した。出来上がった透明溶液約1 mLを、ガラスバイアルへ移し、マンニトール19.2mg及びTween 80原液(77 mgのTween 80が30%の酢酸溶液に溶解)50 μLを添加した。数分以内に、溶液は-40°Cで凍結され、0.06mbarで14時間凍結乾燥された。その後0.003 mbarにおいて6時間の乾燥後期間を取った(表3参照)。
GMPロットは、バイアル当たり個々のペプチド578μgにマンニトールとポロキサマー188を加えた2.000個のバイアルを含む。組成物はペプチド、マンニトールおよびポロキサマー188を1:5:2[w:w.w]の割合で含む。
個々の凍結乾燥されたペプチドを、それぞれ 表4に記載された量に従って個々のガラス容器に測り入れた。 計量後、すべてのペプチドを、規定の溶液に溶解した。
ペプチドの異なる溶解度により、ペプチド1から始まる 表4で提供される順にそれらを溶解させなければならない。異なる量と濃度の酢酸溶液ならびに注射用蒸留水(WFI)を、ペプチドの溶解度が異なるために、またバルク溶液の最終充填容量に対してペプチドを溶解させるために使用した。溶解度を改善させるために、各ガラスバイアルをそれぞれ最大5分間激しく撹拌し、必要に応じて最大5分間の超音波処理を施した。使用された量と濃度は 表4にも示されている。
一旦ペプチドが容易に溶解されると、溶液は、ペプチドNo.1から始まる表4による順に混合されなければならない。溶液は滅菌ガラス容器に集められる。個々のペプチドのガラスバイアルを、105mlの酢酸溶液(30%)ですすぐ。最後に、この溶液をペプチド混合溶液に加え、5分間撹拌した。
ポロキサマー188(Lutrol F68)23.1g及びマンニトール57.8gを、ペプチド混合物及び全溶液に加え、5分間撹拌した。
10個のペプチドすべてと賦形剤を含むバルク溶液を、細孔径が0.22μmのフィルタで滅菌ろ過した。 溶液1.485mlを、無菌状態及び不活性窒素雰囲気下で滅菌2Rガラスバイアルに満たし、前-密閉(pre-sealed)し凍結乾燥用の凍結ドライヤーへ移送した。 凍結乾燥プロセス(表5を参照)では、温度-45°Cでバイアルを凍結させ、段階的に温度を+20°Cまで上昇させ(主要乾燥期)、+25°Cで最終乾燥段階になる。 乾燥が終了すると、凍結ドライヤーを、滅菌濾過された乾燥窒素を使用して大気圧に戻した。
再可溶化の手順: 臨床試験において、上述の組成物を、700μlの炭酸水素ナトリウム(4.2%)に溶解する。 1本のバイアルからプラスチックキャップを外す。再可溶化の少なくとも30分前に、包装を開け冷蔵庫から炭酸水素ナトリウム(4.2%)を取り出し、注入前に室温に戻す。再構成のために注射器と針を準備する。無菌技術を使用して、凍結乾燥の再構成用の希釈剤700μLを採取する。凍結乾燥物を溶解させるために、バイアル及び希釈剤を1分間激しく振り、溶液が透明かどうかを確認する。そうでない場合は、溶液が透明になるまで更に振る。GM-CSF注入の10から30分後に、新しい注射器で同じ部位に再構成組成物500μLを皮内投与する。投与は再構成後、1時間以内に行わなければならない。溶解凍結乾燥物は、再構成した後、最大1時間、室温で無菌的に保管し得る。
再構成後の安定性試験は、ほとんどのペプチドが再構成後に十分に安定したままであることを示した。しかしながら、2つの特定のペプチド、すなわち、IMA-CCN-001及びIMA-RGS-001は減少した。(表 6.1を参照)。これらのペプチドはシステイン残基を含んでいので、時間依存性に二量化が生じる。
表6.1:炭酸水素ナトリウム4.2%溶液での再構成後の使用中の安定性のHPLC分析結果。 賦形剤を含む組成物と含まない組成物の比較
異なるpH値(pH 8.5周辺)及び高容量の炭酸塩バッファーのペプチド免疫処置の成功に対する影響を、マウスモデルで評価した。 異なる注射液中の標準免疫原のモデルペプチドを使用して、プライミング効率を、標準51Crリリース分析により試験した。結果を、四量体染色後に流動細胞計測法分析により確認した。要約すると、pH 7.5、8.5(IMA901希釈剤のpH)及びpH 9.5で皮内免疫間のプライミングにおいて検知できる有意差はなかった。
さらに、高イオン強度は等張の注入バッファと比較して、観察された免疫応答を低減しなかった。毒性副作用は、pH 7.5、8.5の注射液、及びIMA901希釈剤による免疫処置で認められなかったが、pH 9.5注射液で明らかとなった(注射部位の皮膚の局所的な病斑)。これらの結果は、IMA901の適切な希釈剤として選択されたバッファの適合性を支持する。
個々のペプチドの原液を、可溶化特性に準じて適切な溶剤中のペプチドの溶解により調製した(表6.2を参照)。
ペプチドの異なる溶解度により、ペプチド1から始まる 表6.2で提供される順にそれらを溶解させなければならない。異なる量と濃度の酢酸溶液ならびに注射用蒸留水(WFI)を、ペプチドの溶解度が異なるために、またバルク溶液の最終充填容量に対してペプチドを溶解させるために使用した。溶解性を改善させるために、各ガラスバイアルは、それぞれ最大5分間激しく撹拌し、必要に応じて最大5分間の超音波処理を施した。使用された量と濃度は 表6.2にも示されている。
一旦ペプチドが容易に溶解されると、溶液は、ペプチドNo.1から始まる表6.2による順に混合されなければならない。溶液は撹拌子がある滅菌ガラス容器に集められる。最後に、この溶液をペプチド混合溶液に加え、少なくとも5分間撹拌した。
ポロキサマー188(Lutrol F68)601.1 mg及びマンニトール1502.8 mgを、ペプチド混合物及び全溶液に加え、5分間撹拌した。
13個のペプチドすべてと賦形剤を含むバルク溶液を、細孔径が0.22μmのフィルタで滅菌ろ過した。 溶液1.500mlを2Rガラスバイアルに満たし、前-密閉(pre-sealed)して凍結乾燥用の凍結ドライヤーへ移した。 凍結乾燥プロセス(表7を参照)は、温度-45°Cでバイアルを凍結させ、段階的に温度を+20°Cまで上昇させ(主要乾燥期)、+25°Cで最終乾燥段階になる。 乾燥が終了すると、凍結ドライヤーを、窒素を使用して大気圧に戻した。
再可溶化の手順:臨床試験において、上述の組成物を、700μlの炭酸水素ナトリウム(4.2%)に溶解する。凍結乾燥物を溶解させるために、バイアル及び希釈剤を1分間激しく振り、溶液が透明かどうかを確認する。そうでない場合は、溶液が透明になるまで更に振る。溶液500μLの投与は再構成後1時間以内に行わなければならない。溶解凍結乾燥物を、再構成した後、最大1時間室温で無菌的に保管し得る。
再構成後の安定性試験は、ほとんどのペプチドが再構成後に十分に安定したままであることを示した(表8参照)。
表8:炭酸水素ナトリウム4.2%溶液での再構成後の使用中の安定性のHPLC分析結果。 賦形剤を含む組成物と含まない組成物の比較
個々のペプチドの原液を、可溶化特性に準じて適切な溶剤中のペプチドの溶解により準備した(表9を参照)。
ペプチドの異なる溶解度により、ペプチド1から始まる 表9で提供される順にそれらを溶解させなければならない。異なる量と濃度の酢酸溶液ならびに注射用蒸留水(WFI)を、ペプチドの溶解度が異なるために、またバルク溶液の最終充填容量に対してペプチドを溶解させるために使用した。溶解性を改善させるために、各ガラスバイアルは、それぞれ最大5分間激しく撹拌し、必要に応じて最大5分間の超音波処理を施した。使用された量と濃度は 表9にも示されている。
一旦ペプチドが容易に溶解されると、溶液は、ペプチドSEQ ID NO:23から始まる表9 による順に混合されなければならない。溶液は撹拌子がある滅菌ガラス容器に集められる。 最後に、この溶液をペプチド混合溶液に加え、少なくとも5分間撹拌した。
ポロキサマー188(Lutrol F68)624.2 mg及びマンニトール1560.6 mgを、ペプチド混合物及び全溶液に加え、5分間撹拌した。
12個のペプチドをすべてと賦形剤を含むバルク溶液を、細孔径が0.22μmのフィルタで滅菌ろ過した。溶液1.500mlを2Rガラスバイアルに満たし、前-密閉(pre-sealed)して凍結乾燥用の凍結ドライヤーへ移した。凍結乾燥プロセス(表10を参照)は、温度-45°Cでバイアルを凍結させ、段階的に温度を+20°Cまで上昇させ(主要乾燥期)、+25°Cで最終乾燥段階になる。乾燥が終了すると、凍結ドライヤーを、乾燥窒素を使用して大気圧に戻した。
異なる温度における安定性試験は、温度ストレスの状態(+25°C)でさえすべてのペプチドが十分に安定していることを示した(表11を参照)。
表11:+25°C +/- 2°Cにおけるペプチド安定性をHPLCで分析した結果(3か月間)
表12:+5℃ +/- 3℃におけるペプチド安定性をHPLCで分析した結果(3か月間)
表13:-20°C +/- 5°Cにおけるペプチド安定性をHPLCで分析した結果(3か月間)