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JP5917979B2 - 合わせガラス用構成体、それからなる合わせガラス積層体およびその製造方法 - Google Patents

合わせガラス用構成体、それからなる合わせガラス積層体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は合わせガラス用構成体、それからなる合わせガラス積層体およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、熱線遮蔽効果に優れ、しかも曲面を有する合わせガラスとの成形加工性に優れる合わせガラス用構成体、それからなる合わせガラス積層体およびその製造方法に関する。
自動車や電車などの乗り物および建築物の窓に用いるガラスとして、熱線を遮蔽する機能を有する合わせガラスが検討されており、一部は既に実用化されている。このような合わせガラスは熱線の入射を防ぐので省エネルギーの観点から近年注目を集めている。
この合わせガラスは、全光線のうち可視光線は透過し、熱線を選択的に反射または吸収する。例えばこれを窓ガラスとして用いると、太陽光の強い時期には熱線の入射による室内の温度上昇を抑え、他方太陽光が弱く暖房を使用する時期には室内から屋外への熱の逃避を抑えることができる。そのため、この合わせガラスを用いることによってエネルギーの利用効率を大幅に向上させることができ、省エネルギーに役立たせることができる。
この合わせガラスは熱線遮蔽フィルムをガラスに積層することにより得ることができる。
特許文献1には、非金属ポリマー多層光学フィルムを含む透明光学シート、ボンディングシート、およびグレージングコンポーネントを含むラミネートが記載されており、多層フィルムの層間のデラミネーションを防止するためには多層フィルムのサイズをボンディングシートのサイズより小さくすることが好ましいことが開示されている。また、特許文献1には該透明光学シートの一例として、可視波長領域では高透明で赤外線を反射させるフィルムが記載されている。一方、特許文献1にはポリエチレンナフタレートを高屈折率層に用いる場合に曲面を有する合わせガラスに貼り合わせる際の成形加工性について検討されていない。
また特許文献2には、ポリエステルフィルムの片面に、金属および/または金属化合物から構成される熱線遮断層を積層してなる安全ガラス用積層体について、スパッタ加工や合わせガラス成形をする際にフィルムの平面性を維持するために、150℃、30分間の熱処理での縦方向および横方向のフィルムの収縮率の和が10%以下であることが好ましいことが開示されているが、ポリエチレンテレフタレートフィルムを平面ガラスに貼り合わせる際のフィルム平面性に関する。
特許文献3には、耐引き裂き性を高めるために2種類のポリエステル層を有する多層フィルムを合わせガラス用に用い、該フィルムの縦方向と横方向の100℃における熱収縮率が1.5%以下であることにより、エチレンビニルーアセテート膜と熱圧着する場合、しわなどが入りにくいことが開示されている。一方、特許文献3では多層の干渉機能を用いた熱線遮蔽効果とともに曲面を有する合わせガラスへの成形加工性を両立させること、およびポリエチレンナフタレート層を用いる場合の成形加工性について検討されていない。
特許文献4にはポリエチレンテレフタレートフィルムをわん曲形状の合わせガラス中間膜として用いるに際し、合わせガラス加工後の外観にうねりやしわが発生しないよう150℃、30分熱処理後のフィルムの長手方向の熱収縮率を0.6%以上1.2%以下、幅方向の熱収縮率を0.15%以上1.0%以下とすることが記載されている。一方、特許文献4は中間膜として単層のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いるものであり、ポリエチレンナフタレート層を含む多層ポリエステルフィルムを、曲面を有する合わせガラスに貼り合わせる際の成形加工性について検討されていない。
このように、ポリエチレンテレフタレートを主とする単層あるいは積層フィルムを用いた合わせガラス用フィルムについて、目的に応じて熱収縮率を所望の範囲とすることは従来より検討がなされているものの、合わせガラス用フィルムとして超多層構成の干渉反射に着目した熱線遮蔽フィルムを用いる際、層間の屈折率差を大きくできるポリエチレンナフタレートを高屈折率層に用いると、曲面を有する合わせガラスに貼り合わせるときの成形加工性がポリエチレンテレフタレートと異なっており、単に熱収縮率を調整するだけでは十分な成形加工性が得られていないのが現状である。
特表2005−514233号公報 特開平4−163138号公報 特開2005−186613号公報 特開2009−208980号公報
本発明はかかる従来の課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高い熱線遮蔽効果が得られるポリエチレンナフタレート層を含む多層積層構成のポリエステルフィルムを用いながら、曲面を有する合わせガラスとの成形加工性に優れる合わせガラス用構成体、およびそれからなる合わせガラス積層体、ならびにその製造方法を提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、高い熱線遮蔽効果が得られるポリエチレンナフタレート層を含む多層積層構成のポリエステルフィルムを合わせガラス用フィルムとして用いる場合、合わせガラスのラミネート加工温度での熱収縮率挙動が従来のポリエチレンテレフタレートフィルムと異なっており、曲面の合わせガラスに加工する際に120℃で0.8%以下の熱収縮率の小さいフィルムではしわが発生しやすいこと、また熱収縮率を高めるとしわは解消するものの、反射率が低下し、十分な熱線遮蔽効果が得られないことを知見した。そして、熱収縮率の小さいポリエチレンナフタレート層を含む多層積層フィルムと中間膜とを予め貼り合わせた合わせガラス用構成体を作成し、その後、曲面を有する合わせガラスと貼り合わせることにより、高い熱線遮蔽効果を低下させることなく、同時に曲面を有する合わせガラスと貼り合わせた際にしわも発生せずに良好な外観性も得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に中間膜が積層された合わせガラス用構成体であり、前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムは第1の層および第2の層が交互に積層された合計51層以上の積層構成(I)を有し、前記第1の層を構成するポリエステル(A)がポリエチレンナフタレートであり、前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの120℃、30分熱処理したときの熱収縮率が0.8%以下であり、前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの400〜750nmの波長範囲における平均反射率が25%以下であり、800〜1200nmの波長範囲における平均反射率が50%以上である、曲面を有する合わせガラス用構成体により達成される。
本発明の曲面を有する合わせガラス用構成体は、さらに好ましい態様として、前記中間膜が二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよび合わせガラスとの接着層であること、
前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの第2の層が、該層の全繰り返し単位を基準としてエチレンテレフタレート単位の割合が50〜95モル%である共重合ポリエチレンテレフタレートからなり、該二軸延伸積層ポリエステルフィルムは該積層構成(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる保護層を有し、かつ各保護層の厚みが5μm以上20μm以下であること、
前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの第2の層が、該層の全繰返し単位を基準としてのエチレンナフタレート単位の割合が45〜90モル%でガラス転移温度が90℃以上の共重合ポリエチレンナフタレートからなること、
加熱圧着なされてなること、の少なくともいずれか1つの態様も包含される。
また本発明には、本発明の曲面を有する合わせガラス用構成体の前記中間膜上に曲面を有するガラスが積層された合わせガラス積層体も包含される。
さらに本発明には、上記の合わせガラス積層体の製造方法であって、
i)二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に中間膜が積層された構成体を作成し、
ii)前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムは第1の層および第2の層が交互に積層された合計51層以上の積層構成(I)を有し、前記第1の層を構成するポリエステル(A)がポリエチレンナフタレートであり、前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの120℃、30分熱処理したときの熱収縮率が0.8%以下であって、
iii)作成された前記構成体を加熱圧着する工程を含み、
iv)加熱圧着工程の後に前記中間膜上に曲面を有するガラスが積層される、
合わせガラス積層体の製造方法も包含される。
本発明によれば、本発明はポリエチレンナフタレート層を含む熱収縮率の小さい多層積層フィルムと中間膜とを予め貼り合わせた合わせガラス用構成体であることにより、曲面を有する合わせガラスと貼り合わせる際に高い熱線遮蔽効果を低下させることなく、同時にしわも発生せずに良好な外観性も得られることから、曲面を有し、優れた外観性と熱線遮蔽が求められる車のフロントガラスなどに好適に用いることができる。
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、以下に述べる第1の層と第2の層が交互に積層された合計51層以上の積層構成(I)を有し、前記第1の層を構成するポリエステル(A)がポリエチレンナフタレートであり、記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの120℃、30分熱処理したときの熱収縮率が0.8%以下である。
<二軸延伸積層ポリエステルフィルム>
(第1の層)
本発明における第1の層はポリエチレンナフタレート(以下、ポリエステル(A)と称することがある)からなる。なおここでいうポリエチレンナフタレートには、ホモポリエステルだけでなく、共重合成分が全酸成分を基準として8モル%以下、好ましくは6モル%以下、より好ましくは4モル%以下共重合されたポリエチレンナフタレートも含まれるが、なかでもホモポリエステルが好ましい。共重合成分が8モル%を超える場合には、後述する第2の層との間に十分な屈折率差を付与しがたくなって、十分な近赤外線反射性能を発現させることが難しくなる。ポリエチレンナフタレートの中でも特にポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
好ましく用いられる共重合成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、主たる成分で用いられる成分以外のナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸の如き芳香族カルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の如き脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のグリコール成分を挙げることができる。中でもイソフタル酸、テレフタル酸、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール好ましく、特にイソフタル酸、テレフタル酸が好ましい。これらの共重合成分は、単独で用いてもよく、また2成分以上併用することもできる。
ポリエステル(A)は、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、主たる成分の酸成分、グリコール成分、および必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。さらに、2種以上のポリエステルを用いて押出機内で溶融混合してエステル交換反応(再分配反応)させて得る方法であってもよい。
第1の層を構成するポリエステル(A)の固有粘度は、好ましくは0.40〜0.80dl/gであり、更には0.45〜0.75dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度がかかる範囲内にあれば、後述する第2の層との多層積層構造部を有するフィルムを形成する際の製膜性が良好となる。
本発明の第1の層には、本発明の目的を損なわない範囲で他のポリマーや添加剤を少量含有していてもよく、例えば不活性粒子などの滑剤、顔料、染料などの着色剤、安定剤、難燃剤、発泡剤、紫外線吸収剤などの添加剤が例示される。
(第2の層)
本発明における第2の層は、第1の層との間に屈折率差を有しており、ポリエステル(A)とともに二軸延伸可能な樹脂であれば特に限定されないが、第2の層もポリエステルで構成されることが好ましい。第1の層との屈折率差が大きくて積層数が小さくても近赤外線反射性能を付与しやすいといった点からは、第2の層の全繰り返し単位を基準としてエチレンテレフタレート単位の割合が50〜95モル%、特に60〜90モル%である(すなわち共重成分が5〜50モル%、特に10〜40モル%共重合された)共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエステル(B−1)と称することがある。)が好ましく、合わせガラスに加工する際にフィルムの平坦性が保たれて、細かな凹凸の発生がなく良好な外観が得られやすいといった点からは、第2の層の全繰返し単位を基準としてエチレンナフタレート単位の割合が45〜90モル%でガラス転移温度が90℃以上の共重合ポリエチレンナフタレート(以下、ポリエステル(B−2)と称することがある。)が好ましい。
(ポリエステル(B−1))
上述のポリエステル(B−1)は、第2の層の全繰り返し単位を基準としてエチレンテレフタレート単位の割合が50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%である共重合ポリエチレンテレフタレートからなる。共重合量が下限未満である場合には、製膜時に結晶、配向化しやすくなって第1の層との間に屈折率差がつきにくくなり、積層数を多くしなければ十分な近赤外線反射能を得ることが難しくなる。一方、共重合量が上限を超える場合には、製膜時(特に押出時)の耐熱性や製膜性が低下するだけでなく、共重合成分が高屈折率性を付与する成分である場合には、屈折率増加によって第1の層との屈折率差が小さくなるというという問題も起こる。共重合量が上記の範囲内にあることにより、良好な耐熱性、製膜性を維持しつつ、第1の層との屈折率差を確保することができ、十分な近赤外線反射性能を付与することができるようになる。
なお、後述する製膜時の熱固定温度をポリエステル(B−1)の融点以上にして、第1の層の配向を維持しながら第2の層のポリエステル(B−1)を溶融し、第2の層の配向を低下させて第1の層と第2の層との屈折率差をより大きくすることが好ましいので、ポリエステル(B−1)の融点は前記のポリエステル(A)の融点より10℃以上、さらに30℃以上低いことが好ましい。
好ましく用いられる共重合成分としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸といった脂環族ジカルボン酸等の酸成分、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールといった脂環族ジオール、スピログリコール等のグリコール成分を挙げることができる。なかでもイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールが好ましく、これら以外の共重合成分を含む場合には、その共重合量は10モル%以下であることが好ましい。
また、ポリエステル(B−1)のガラス転移温度が90℃以下の場合には、第1の層のポリエステル(A)が配向するような延伸条件で延伸した場合、第2の層のポリエステル(B−1)にとっては高い延伸温度となるために配向が進まず、第1の層と第2の層との間に屈折率差をつけやすくなる。
なおポリエステル(B−1)は、非晶性、結晶性のいずれであってもよい。ここで非晶性とは、ポリエステルフィルムを昇温速度20℃/分でDSC測定したときに第2の層に由来する融点が観察されないことをいう。また結晶性とは前述のDSC測定で第2の層に由来する融点が観察されることをいう。
上述のポリエステル(B−1)も、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、主たる成分の酸成分、グリコール成分、および必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。さらに、2種以上のポリエステルを用いて押出機内で溶融混合してエステル交換反応(再分配反応)させて得る方法であってもよい。
ポリエステル(B−1)の固有粘度は、好ましくは0.40〜1.0dl/gであり、更には0.45〜0.95dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度がかかる範囲内にない場合には、第1の層を構成するポリエステル(A)の固有粘度との差が大きくなることがあり、その結果交互積層構成とした場合に層構成が乱れたり、製膜はできたとしても製膜性が低下することがある。
(ポリエステル(B−2))
上述のポリエステル(B−2)は、第2の層の全繰返し単位を基準としてのエチレンナフタレート単位の割合が45〜90モル%でガラス転移温度が90℃以上の共重合ポリエチレンナフタレートからなる。エチレンナフタレート単位の割合の下限は、好ましくは50モル%、特に好ましくは55モル%である。また、エチレンナフタレート単位の割合の上限は好ましくは85モル%、特に好ましくは80モル%である。エチレンナフタレート単位の割合が45モル%未満の場合には、90℃以上のガラス転移温度を達成することが困難となり、一方、90モル%を超える場合には、第1層の屈折率との屈折率差が得られ難くなり、十分な反射率特性を得ることが難しい。かかるエチレンナフタレート単位は、エチレン−2,6−ナフタレート単位であることが好ましい。
また、ポリエステル(B−2)のガラス転移温度が90℃以上、好ましくは95℃以上、特に好ましくは100℃以上であることにより、合わせガラス加工工程において、ポリエステルフィルムに軟化による細かな凹凸や、しわなどが発生しにくくなるため、合わせガラス加工時のフィルムの平坦性を保つことができ、良好な外観を呈する合わせガラスが得られやすい。
好ましく用いられる共重合成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、ビフェニルジカルボン酸などの芳香族カルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸といった酸成分や、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのグリコール成分を好ましく挙げることができる。また、従たる共重合成分として、主たる成分以外のナフタレンジカルボン酸を用いてもよく、主たる酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸の場合は、従たる共重合成分として2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
これらの共重合成分の中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
ポリエステル(B−2)のガラス転移温度の上限は、用いられる共重合成分によっておのずと定まり、特に制限はないが、第1層のポリエステルのガラス転移温度よりも低くなる傾向にある。
なおポリエステル(B−2)も、非晶性、結晶性のいずれであってもよい。ここで非晶性とは、ポリエステルフィルムを昇温速度20℃/分でDSC測定したときに第2の層に由来する融点が観察されないことをいう。また結晶性とは前述のDSC測定で第2の層に由来する融点が観察されることをいう。
上述のポリエステル(B−2)も、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、主たる成分の酸成分、グリコール成分、および必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。さらに、2種以上のポリエステルを用いて押出機内で溶融混合してエステル交換反応(再分配反応)させて得る方法であってもよい。
ポリエステル(B−2)の固有粘度は、好ましくは0.40〜0.80dl/gであり、さらには0.45〜0.75dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度がかかる範囲内にない場合には、第1の層を構成するポリエステル(A)の固有粘度との差が大きくなることがあり、その結果交互積層構成とした場合に層構成が乱れたり、製膜はできたとしても製膜性が低下することがある。
以上に述べた本発明の第2の層にも、前術の第1の層と同じく、本発明の目的を損なわない範囲で他のポリマーや添加剤を少量含有していてもよく、例えば不活性粒子などの滑剤、顔料、染料などの着色剤、安定剤、難燃剤、発泡剤、紫外線吸収剤などの添加剤が例示される。
(屈折率差)
第1の層と第2の層の屈折率差は、MD方向(長さ方向、製膜方向)およびTD方向(幅方向、製膜方向に直角方向)のいずれも0.09以上であることが好ましく、より好ましくは0.13以上である。屈折率差がかかる範囲にあることにより、反射特性を効率よく高めることができるため、より少ない積層数で高い反射率を得ることができる。
(積層構造部)
本発明における積層ポリエステルフィルムは、前述の第1の層と第2の層とを交互に合計51層以上積層した積層構造部を有する。積層数の上限は、例えば1001層といった層数であってもよいが、生産性の観点から高々900層であることが好ましい。また、層数の下限はより好ましくは100層以上、さらに好ましくは150層以上である。層数が下限未満である場合には、多重干渉による選択反射が小さく十分な近赤外線反射性能が得られない。
(各層の層厚み)
本発明における第1層、第2層の各層厚みは、層間の光干渉によって選択的に近赤外光を反射する効果が得られる厚みであることが好ましい。
ここで、積層フィルムの反射波長は、隣り合った第1層と第2層の光学厚みの合計の2倍に対応する。かかる光学厚みは、屈折率と各層厚みの積で表され、使用する樹脂の屈折率と目的とする反射波長によって各層厚みを調整することが好ましい。
また、ラドフォードらの「Reflectivity of Iridescent Co extruded Multilayered Plastic Films」や、Polymer Engineering and Science、Vol.13、No.3、1973年5月号にあるように、四分の一波長による多層干渉を利用した多層フィルムは、主反射ピークが可視光領域に生じない場合でも、高次反射ピークが可視光領域に生じると、高次反射による着色を示すことがあるため、高次反射を除くための適切な光学厚みとすることが好ましい。
多層干渉フィルムにおいて、主反射ピークの第1層の光学厚みに対する第2層の光学厚みの比が1.0の場合には、高次のピークのうち、2次(主反射ピークの1/2波長)、4次(主反射ピークの1/4波長)を除去することができる。
高次反射を除くための適切な光学厚みを考慮した一例として、第1層にポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下「PEN」と称する)、第2層にイソフタル酸を12mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA12PET」と称する)を使用し、800〜1200nmの波長を一次反射させる場合の各層厚みについて説明する。フィルムの製膜条件にもよるが、一般的にPENの延伸方向の屈折率は1.74〜1.78、IA12PETの延伸方向の屈折率は1.58〜1.65程度であるので、第1の層の各層厚みは0.1〜0.2μmの範囲であることが好ましく、第2の層の各層厚みは0.09〜0.22μmの範囲であること、特に0.10〜0.20μmの範囲であることが好ましい。
第1の層および第2の層の各層がこの範囲の厚みを有することにより、近赤外領域の光を選択的に反射し、遮蔽することができる。第1の層または第2の層の各層の厚みが下限より薄い範囲では反射光が可視光線の領域となり、フィルムが着色し、視認性が低下することがある。一方上限を超えると、層間の光干渉によって3次ピーク(主反射ピークの1/3)が可視光域に生じるため着色が生じ、透明性が損なわれることがある。
本発明の積層ポリエステルフィルムの場合、上述した光学厚みの関係および各層の屈折率を考慮し、隣接する第1の層の厚みに対する第2の層の厚みの比(厚み比)が0.9〜1.1の範囲内となる組み合わせをより多くすることにより、可視光域に生じる高次のピークを減らすことができ、可視光域の平均反射率をより小さくすることができる。
この関係は、積層フィルムの層の大部分について成立していればよく、積層構造部の総層数の70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上について成立していればよい。
また、各層の厚みは、波長800−1200nmの領域での反射率を向上させるため、第1層における最大厚みと最小厚みの比が最大/最小で1.2〜1.8で連続的に変化させることが好ましい。
また、第2の層の各層の厚みも波長800−1200nmの領域での反射率を向上させるため、最大厚みと最小厚みの比が最大/最小で1.2〜1.6で連続的に変化させることが好ましい。
(保護層)
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、積層構造部の両側にガラス転移温度が90℃以上、好ましくは110℃以上のポリマーからなる、厚み2〜20μm、好ましくは5〜20μm、さらに好ましくは7〜15μm、特に好ましくは7〜13μmの保護層を有することが好ましい。かくすることにより、合わせガラスに加工する際の加工条件でも保護層の強度が保たれ、その結果、フィルムの平坦性が保たれて、細かな凹凸の発生が認められない良好な外観の合わせガラスが得られる。特に、前述のポリエステル(B−1)を第2層に用いた場合には、細かな凹凸の発生が起こりやすいので、厚み5〜20μm、さらに好ましくは7〜15μm、特に好ましくは7〜13μmの保護層を設けるとその効果が大きいので好ましい。
保護層ポリマーのガラス転移温度が90℃未満の場合や、保護層の厚さが下限に満たない場合には、合わせガラスに加工した際の細かな凹凸発生の抑制効果が低減することがある。一方、保護層の厚さが上限を超える場合には、細かな凹凸の発生抑制への効果はそれより薄いものと変わらない上、湾曲した形状の合わせガラスを成形する際に湾曲部分への追従性が低下する傾向にある。
好ましく用いられるガラス転移温度が90℃以上のポリマーとしては、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキシドなどが挙げられる。保護層の積層方法としては、共押出によって積層構造部分と保護層とを同時に作成してもよいし、保護層のみ後から貼り合わせてもよい。なかでも、保護層として第1層のポリマーであるポリエチレンナフタレートを使用し、共押出法によって保護層と積層構造部分とを同時に作成するのが好ましい。
(滑剤)
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、高い透明性を維持する観点から、フィルム中には不活性粒子を含まないことが好ましい。しかし、製造工程での微小なキズ防止や、フィルムの巻取り性を向上させるために、滑剤として不活性粒子を含有させてもよい。この場合、最外層に含有させることが好ましいが、表層に近い第1の層および/または第2の層にも含有させてもよい。不活性粒子は、例えば平均粒径0.01〜2μm、さらには0.05〜1μm、特に0.1〜0.3μmのものを用いるとよい。配合割合としては、配合する層の重量を基準として、例えば0.001〜1重量%の範囲が好ましい。
不活性粒子を配合する場合、不活性粒子の平均粒径が下限よりも小さいか、含有量が下限よりも少ないと、フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限を超えるか、平均粒径が上限を超えると、透明性が低下する傾向がある。
好ましく用いられる不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子を挙げることができる。
これらの不活性粒子は、その長径と短径の比が1.2以下、さらには1.1以下である球状粒子(以下、真球状粒子ということがある)であることが、フィルムの滑り性と透明性とをできるかぎり維持する観点から好ましい。また、これらの不活性粒子の粒度分布はシャープであることが好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、紫外線吸収剤を含有する層を少なくとも1層有することができる。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、波長380nmにおける吸光係数εが2以上、さらに好ましくは3以上の紫外線吸収剤である。ここでいう吸光係数εは下記式(1)で表され、Lambert−Beerの式をもとにし、テトラヒドロフラン中に溶解させた紫外線吸収剤の吸光度を測定し、濃度の値から算出した吸光係数である。
ε=A/(c×b) ・・・(1)
(上式(1)中、εは吸光係数、Aは吸光度、cは濃度(g/L)、bは試料中の光路長(cm)をそれぞれ表す)
かかる吸光特性を有する紫外線吸収剤を用いることにより、紫外線耐久性が比較的低いポリエチレンナフタレート層を含む積層ポリエステルフィルムでありながら、乗り物や建築物の窓などの熱線遮蔽用途に用いることのできる高い紫外線耐久性を付与することができる。
紫外線吸収剤として、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サルチレート系紫外線吸収剤を挙げることができ、好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いるが、これら全てが上述の吸光特性を満足するわけではなく、これら中から選択して用いる必要がある。
波長380nmにおける吸光係数εが2以上の特性を満足する紫外線吸収剤として、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチルー4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4,6−ビス(1−エチル−1−フェニルエチル)フェノール、フェノール,2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)4−メチル、2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)ロキシ]フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニシル)−1,3,5−トリアジン、ベンゼンプロパン酸,3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9分岐及び鎖状アルキルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール,2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが例示される。
紫外線吸収剤を含む層における紫外線吸収剤の濃度は、層の重量を基準として、例えば0.1重量%以上、好ましくは1〜80重量%である。紫外線吸収剤の含有量が下限に満たないと十分な紫外線の吸収効果が得られないことがある。
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、かかる紫外線吸収剤を含有する層を有することによって、波長300〜400nmの範囲内での該フィルムの平均光線透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
紫外線吸収剤を含有させる層は、前述の第1の層(PEN層)より表層側にあることが好ましく、前述の積層構造部上、または前述の保護層上に別途層を設けてもよく、また、前述の保護層に含有させてもよいが、特に保護層に含有させることが好ましい。
また、後述の中間膜中に紫外線吸収剤を含有させることも好ましい。このように紫外線がポリエチレンナフタレート層に到達する前の段階で紫外線を遮蔽することが好ましく、外側に位置する層に該紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
また紫外線吸収剤とともに、クエンチャーやHALSといった光安定剤を併用してもよい。
<塗布層>
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、高い透明性を維持する観点から、フィルム内部に粒子がほとんど存在しないことから、易滑性の機能を塗布層によって付与することが好ましい。また、中間膜との接着性を向上させるために易接着性の機能を塗布層によって付与することが好ましい。
<フィルム特性>
(熱収縮率)
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、120℃、30分熱処理したときの熱収縮率が、フィルム縦方向および横方向の両方において0.8%以下であり、好ましくは0.7%以下である。熱収縮率の下限は特に規定するものではないが、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上である。本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムがこのような小さな熱収縮率特性を有し、かつ後述するように中間膜と予め積層された構成体を作成し、かかる構成体を曲面を有する合わせガラスと貼り合わせることにより、高い熱線遮蔽効果を発現する屈折率差を有する積層構成を維持しつつ、曲面を有する合わせガラスとの加工の際のしわ発生を低減することができる。
一方、二軸延伸積層ポリエステルフィルムの熱収縮率を上限を超えて高くすると、曲面を有する合わせガラスとの加工の際のしわ発生は低減するものの、層間の屈折率特性を十分に維持することができずに熱線遮蔽効果の低下につながる。かかる熱収縮率特性は、フィルム製造工程において、熱固定温度を200℃〜250℃にすることにより得ることができる。
(反射率)
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、該フィルムの400〜750nmの波長範囲における平均反射率が25%以下であり、800〜1200nmの波長範囲における平均反射率が50%以上であることが好ましい。また、該フィルムの400〜750nmの波長範囲における平均反射率は20%以下であることが好ましい。可視光線波長域の平均反射率がより低いほど、可視光線透過率が高くなり、良好な視認性が得られる。800〜1200nmの波長範囲における平均反射率は好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上であり、赤外波長領域の平均反射率が高いほど熱線遮熱性能が向上するので好ましい。
かかる反射率特性を有することにより、自動車や電車などの乗り物および建築物の窓に用いるガラスと貼り合わせて優れた外観性と熱線遮蔽効果を付与することができる。
(フィルム製造方法)
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、例えば次の方法で製造することができる。すなわち第1の押出機より供給された第1の層用ポリエステルと、第2の押出機より供給された第2の層用樹脂とを溶融状態で交互に少なくとも51層以上重ね合わせ、さらに保護層を付与する場合は保護層用のポリマーを積層構造部の両側に重ね合わせて多層未延伸シートとする。
これを回転するドラム上にキャストすることにより、未延伸多層積層フィルムとする。このようにして得られた未延伸多層積層フィルムを、製膜方向とそれに直交する幅方向の二軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸する。延伸温度は、第1の層用のポリエステルのガラス転移点の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲とする。延伸の面積倍率は5〜50倍とすることが好ましい。延伸倍率が大きい程、第1の層および第2の層の個々の層における面方向のバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、得られるフィルムの光干渉が面方向に均一になるので、延伸倍率はこの範囲で大きいことが好ましい。延伸方法は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれの方法であってもよい。
得られた二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、第1の層に使用するポリエステルの結晶化温度の範囲で熱固定するが、本発明の熱収縮率特性を得るため、200℃〜250℃の温度範囲で熱固定を行う。熱固定温度が下限に満たない場合は十分に熱収縮率を小さくし難く、一方、上限を超える温度では第1層の結晶配向構造がくずれ、層間の屈折率差を十分なものとすることができず、熱線遮蔽効果の低下につながる。
第2の層用のポリエステルが融点を有する場合には、熱固定温度を該融点以上とすることにより、第1の層は結晶化し、第2の層は熱固定条件下で溶融して部分的に無配向状態となり、その結果、層間の屈折率差がさらに大きくなって赤外領域の反射率を高め、高い熱線遮蔽効果を得ることができる。
<合わせガラス用構成体>
本発明の合わせガラス用構成体は、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に中間膜が積層された構成を有する。
本発明において用いられる中間膜は本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよび合わせガラスとの接着性を有する接着層であることが好ましい。かかる中間膜として、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルブチラール、アイオノマー樹脂、ポリウレタンが例示され、ポリビニルブチラールが特に好ましい。
本発明の合わせガラス用構成体には、片面に中間膜が積層された構成、両面に中間膜が積層された構成が含まれる。
本発明の合わせガラス用構成体は、二軸延伸積層ポリエステルフィルムと中間膜を重ねた状態で予め熱と圧力を加えて接着(加熱圧着と称することがある)させる方法で製造することが好ましい。具体的な加熱圧着手法としては、二軸延伸積層ポリエステルフィルムと中間膜を重ねた状態で加熱しながら、ニップロールに通すことで圧力をかけて接着させる手法が挙げられる。加熱温度は中間膜が軟化する温度であれば特に制限されないが上限は100℃以下が好ましい。
二軸延伸積層ポリエステルフィルムと中間膜とを予め加熱圧着してまず合わせガラス用構成体を作成し、その後、該中間膜上に曲面を有するガラスを積層し、後述する方法で加熱加圧処理を行う方法を用いることにより、曲面を有する合わせガラスと貼り合わせる際に高い熱線遮蔽効果を低下させることなく、同時にしわの発生も抑制できるため、良好な熱線遮蔽効果と外観性を備える、曲面を有する合わせガラス積層体が得られる。一方、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムを用いて曲面を有する合わせガラスと貼り合わせるにあたり、従来のようなポリエステルフィルム、中間膜およびガラスを同時に加熱圧着させる方法ではしわが発生してしまい、外観性が低下する。なお、従来の同時に加熱圧着させる方法を用いる場合、本発明と同じ組成の積層ポリエステルフィルムであれば、本発明より高い熱収縮率とすれば曲面を有する合わせガラスと貼り合わせてもしわを低減させることが可能ではあるが、一方で熱線遮蔽効果の低下を引き起こす傾向にある。
また、本発明の合わせガラス用構成体は、金属系の積層体を介して該二軸延伸積層ポリエステルフィルムと該中間膜が積層された構成であってもよい。金属系の積層体をさらに有することにより、さらに熱線遮蔽効果を高めることができる。金属系の積層体として、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された積層構成を有する金属および/あるいは金属酸化物の積層体が例示される。
金属は低屈折率層に使用することができ、金属酸化物は低屈折率層と高屈折率層の両方に使用することができる。
該金属系の積層体に用いられる金属としては、Au、Ag、CuまたはAlなどの金属が例示される。これらの中で特に好ましいのは可視光線の吸収がほとんどないAgである。なお、該金属層を形成する金属は、必要に応じて2種以上併用しても良い。
係る金属層を形成する方法としては、気相成長法が好ましく、特に真空蒸着法、スパッタ―法またはプラズマCVD法が好ましい。該金属層の厚みは、5〜1000nm、好ましくは10〜500nmの範囲である。該金属層厚みが下限に満たないと十分な熱線遮蔽性能が発現しにくい。また、該金属層厚みが上限を越えると、可視光の透過率が不十分なものとなりやすく、透明性が損なわれることがある。
該金属酸化物としては、TiO、ZrO、SnO、In、SiO、ITO、IZO、AZOなどが挙げられる。
係る金属酸化物層の形成方法は、前述の金属層の形成方法と同様に、気相成長法が好ましく、特に真空蒸着法、スパッタ―法またはプラズマCVD法が好ましい。該金属酸化物層の厚みは、光干渉の面から他の金属層や金属酸化物層の屈折率および厚みとも関連するが、0.1〜750nm、好ましくは10〜500nmの範囲である。該厚みが範囲外であると光干渉効果が得られず、可視光の反射率の増加や熱線反射性能の低下といった問題が生じることがある。
該金属系の積層体をさらに有する場合、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルム、該金属系の積層体および中間膜が積層された合わせガラス用構成体の400〜750nmの波長範囲における平均反射率は25%以下であることが好ましく、また800〜1200nmの波長範囲における平均反射率は50%以上であることが好ましい。
<合わせガラス用積層体>
本発明の合わせガラス用積層体は、本発明の曲面を有する合わせガラス用構成体の中間膜上に曲面を有するガラスが積層された構成を有することが好ましい。
合わせガラス積層体を製造方法する方法として、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に中間膜が積層された構成体を作成し、該構成体を加熱圧着する工程を含み、該加熱圧着工程の後に該中間膜上に曲面を有するガラスを積層する方法が挙げられる。2枚の曲面を有するガラスで該合わせガラス用構成体を挟持し、それ自体公知の合わせガラス製造条件で加熱加圧処理を行うことにより製造することができる。
また、該合わせガラス用構成体において中間膜が二軸延伸積層ポリエステルフィルムの片面のみに貼り合わされている場合は、合わせガラスの作製工程で中間膜を貼り合わせていないフィルム面に新たな中間膜を積層してから2枚のガラスの間に挟持して、加熱加圧処理を行うことが好ましい。驚くべきことに、一方の面の中間膜が予め二軸延伸積層ポリエステルフィルムと貼り合されていれば、他方の面の中間膜が従来と同じく合わせガラスの作成工程で貼り合されても本発明の効果は発現される。
加熱加圧処理の条件は特に制限されないが、一例として、加熱加圧炉に入れ、120〜150℃、14atm以下で10〜60分間処理後、圧は維持したまま温度だけ室温まで低下させた後、常圧に戻し、加熱加圧炉から取り出す方法が挙げられる。
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性や特性は下記の方法によって測定または評価した。
(1)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに120℃のオーブンで30分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、下記式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=((熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離)×100
(2)ポリエステルの組成
H−NMR測定を用いて特定した。
(3)フィルム厚み
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
(4)フィルムの平均反射率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、波長350nmから2100nmの範囲にわたり、アルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を測定した。得られたスペクトルのなかで800〜1200nmの範囲、および400〜750nmの範囲における反射率を平均して、それぞれの平均反射率とした。
(5)DSCによる樹脂のガラス転移温度
各層を構成する樹脂10mgについて、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/minの昇温速度でガラス転移温度を測定した。
(6)積層ポリエステルフィルムの各層厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUTS、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
(7)合わせガラス加工性評価
二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよび中間膜からなる構成体サンプルを、厚さ2mm、500mm(曲率150R)×400mm(曲率1500R)のガラス板2枚で挟み、その後、加熱加圧炉に入れ、130℃、13atmで30分間処理後、圧は維持したまま温度だけ40℃まで低下させた後、常圧に戻し、加熱加圧炉から取り出し、ガラス板の周囲にはみでているフィルムを切り放し、合わせガラスを得た。この際、構成体サンプルが一方のみに中間膜を有している場合は、ガラス板2枚で挟みこむ際に中間膜を有していない側に反対面と同組成の中間膜を介してガラス板と貼り合わせた。
上記方法で得られた合わせガラスにおいて、目視にて30W蛍光灯光源のもと、シワが発生しているものを×、シワは発生していないが微細凹凸が発生しているものを△、シワや凹凸といった外観上の問題がないものを○とした。
(8)日射透過率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、合わせガラスの各波長での硫酸バリウム積分球に対する相対分光透過率を波長300nmから2100nmの範囲で測定した。得られた透過率曲線から、JIS R 3106:1998に準じて、340〜1800nmの波長域より日射透過率を算出した。
[実施例1]
第1の層用でかつ保護層用であるポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下「PEN」という)、第2の層用のポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65dl/gのイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA12PET」という)をそれぞれ準備した。
そして、第1の層用でかつ保護層用であるポリエステルを180℃で5時間、第2の層用ポリエステルを160℃で3時間乾燥後、押出機に供給し、PENは300℃、IA12PETは280℃まで加熱して溶融状態とした。第1の層のポリエステルを90層、第2の層のポリエステルを91層に分岐させた後、第1の層のポリエステル層と第2の層のポリエステル層とが交互に積層され、かつ第1の層と第2の層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みの比が最大/最小で1.5倍まで連続的に変化するような積層構造部分と該積層構造部分の両面に保護層を積層させるような、多層フィードブロック装置を使用して積層し、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストした。そして、フィルム両面の最外層にPEN層からなる保護層を持ち、積層構造部の全層数が181層の未延伸多層積層フィルムを作成した。なお、積層構造部および保護層の厚みは、延伸後の厚みが表1記載のとおりとなるように供給量を調整した。
この未延伸多層積層フィルムを150℃の温度で製膜方向に4.5倍延伸した。続いてテンターに供給し、155℃の温度で幅方向に4.5倍に延伸し、次いで204℃で3秒間熱固定処理を行った。得られたフィルム(フィルム1)の特性を表1に示す。
得られた近赤外線遮蔽性を有する二軸延伸積層ポリエステルフィルムを、厚さ0.38mmのポリビニルブチラールシート(PVB、積水化学(株)製、S−LEC Film(商品名))2枚の間にはさみ、ラミネート装置で90℃で加熱圧着することで合わせガラス用構成体を作製した。得られた特性を表2に示す。
[実施例2]
PVBを片面のみに貼り合わせた以外は実施例1と同様にして構成体を得た。得られた構成体の特性を表2に示す。
[実施例3]
中間膜に厚さ0.40mmのエチレンビニルアセテート(EVA、積水化学(株)製、S−LEC Film−EN(商品名))を使用した以外は実施例1と同様にして構成体を得た。得られた構成体の特性を表2に示す。
[実施例4,5]
二軸延伸積層ポリエステルフィルムの種類およびフィルム製造時の熱固定温度を表1、表2に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして構成体を得た。得られた特性を表2に示す。
なお、フィルム2に使用しているTA44PENはテレフタル酸を8mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.63dl/gの共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(以下「TA8PEN」という)と2,6-ナフタレンジカルボン酸を11mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.63dl/gの共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「NDC11PET」という)を重量比6:4でブレンドすることで得ている。
[比較例1〜4]
ガラスと貼り合わせる前に中間体と二軸延伸積層ポリエステルフィルムを加熱圧着させて構成体を作製する工程を経ずに、ガラスと貼り合わせる際に中間体とフィルムを同時に挟み込んで合わせガラスを作製した。使用したフィルム、中間膜およびその特性を表2に示す。
[比較例5]
二軸延伸積層ポリエステルフィルムの第1層および保護層の種類をポリエチレンテレフタレート(PET)に変更し、溶融温度を280℃、製膜方向の延伸温度を95℃、幅方向の延伸温度を115℃、熱固定温度を235℃に変更した以外は実施例1におけるフィルム1と同じ操作を行い、フィルム4を作成した。
また、ガラスと貼り合わせる前に中間体と二軸延伸積層ポリエステルフィルムを加熱圧着させて構成体を作製する工程を経ずに、ガラスと貼り合わせる際に中間体とフィルムを同時に挟み込んで合わせガラスを作製した。使用したフィルム、中間膜およびその特性を表2に示す。
Figure 0005917979
Figure 0005917979
本発明はポリエチレンナフタレート層を含む熱収縮率の小さい多層積層フィルムと中間膜とを予め貼り合わせた合わせガラス用構成体であることにより、曲面を有する合わせガラスと貼り合わせる際に高い熱線遮蔽効果を低下させることなく、同時にしわも発生せずに良好な外観性も得られることから、曲面を有し、優れた外観性と熱線遮蔽が求められる車のフロントガラスなどに好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に中間膜が積層された合わせガラス用構成体であり、前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムは第1の層および第2の層が交互に積層された合計51層以上の積層構成(I)を有し、前記第1の層を構成するポリエステル(A)がポリエチレンナフタレートであり、前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの120℃、30分熱処理したときの熱収縮率が0.8%以下であり、
    前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの400〜750nmの波長範囲における平均反射率が25%以下であり、800〜1200nmの波長範囲における平均反射率が50%以上である、ことを特徴とする曲面を有する合わせガラス用構成体。
  2. 前記中間膜が二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよび合わせガラスとの接着層である、請求項1に記載の曲面を有する合わせガラス用構成体。
  3. 前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの第2の層が、該層の全繰り返し単位を基準としてエチレンテレフタレート単位の割合が50〜95モル%である共重合ポリエチレンテレフタレートからなり、該二軸延伸積層ポリエステルフィルムは該積層構成(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる保護層を有し、かつ各保護層の厚みが5μm以上20μm以下である、請求項1または2に記載の曲面を有する合わせガラス用構成体。
  4. 前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの第2の層が、該層の全繰返し単位を基準としてのエチレンナフタレート単位の割合が45〜90モル%でガラス転移温度が90℃以上の共重合ポリエチレンナフタレートからなる、請求項1または2に記載の曲面を有する合わせガラス用構成体。
  5. 加熱圧着なされてなる請求項1〜のいずれかに記載の曲面を有する合わせガラス用構成体。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の曲面を有する合わせガラス用構成体の前記中間膜上に曲面を有するガラスが積層された合わせガラス積層体。
  7. 請求項に記載の合わせガラス積層体の製造方法であって、
    i)二軸延伸積層ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に中間膜が積層された構成体を作成し、
    ii)前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムは第1の層および第2の層が交互に積層された合計51層以上の積層構成(I)を有し、前記第1の層を構成するポリエステル(A)がポリエチレンナフタレートであり、前記二軸延伸積層ポリエステルフィルムの120℃、30分熱処理したときの熱収縮率が0.8%以下であって、
    iii)作成された前記構成体を加熱圧着する工程を含み、
    iv)加熱圧着工程の後に前記中間膜上に曲面を有するガラスが積層される
    ことを特徴とする合わせガラス積層体の製造方法。
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