JP5912493B2 - リチウム粒子を含む組成物、電極及び電池 - Google Patents
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Description
リチウムイオン二次電池は、可燃性の有機溶媒を使用したものが多く、過充電時や乱用時に液漏れや発火の危険性がある。そのため、電池の高エネルギー密度化に伴い、安全性の確保が重要な課題とされてきた。
リチウムを含まない活物資としては、硫黄、金属硫化物(TiS2、MoS2、FeS、FeS2、CuS、Ni3S2等)、MnO2、V2O5等が挙げられる。
尚、負極活物質としては、炭素、ケイ素、スズ等が挙げられる。
また、リチウムイオン電池の高容量化に伴い、電池内で必要となるリチウム量は多くなるが、リチウム箔は厚くなると、さらにハンドリング性が悪くなる。そのため、特に固体電解質を含む電極の合材にリチウム箔を貼付する場合、さらに密着性が悪くなるという問題があった。
リチウムのプレドープの方法の一つとして、リチウム箔を貼り付ける方法が挙げられるが、固体電解質を含む合材へのリチウム箔の貼付は上述したとおり困難である。
1.活物質及び電極複合材料の少なくとも一方と、リチウム粒子と、を含む組成物。
2.活物質及び電極複合材料の少なくとも一方と、リチウム粒子と、を含む電極。
3.上記1に記載の組成物を原料とする電極。
4.上記2又は3に記載の電極を含む電池。
5.リチウム粒子を含む層と、正極層と負極層と電解質層を備える電池。
(1)リチウム粒子(粉末)
本願においてリチウム粒子とは、金属リチウムが微細に粉砕された粉末を意味する。リチウム粉末の形状は特に制限されず、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等任意の構造をとりうる。
リチウム粒子の平均粒子径については、特に制限はないが、好ましくは0.1〜200μmであり、より好ましくは1〜50μmである。平均粒子径が1μm以上であれば、取り扱いが容易であるため好ましい。一方、平均粒子径が200μm以下であれば、電極の面内分散状態が良好になるという点で好ましい。
尚、リチウム粒子の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定(レーザ回折散乱法)により測定された値である。
リチウム粒子は、リチウム金属の単体であってもよいし、表面を安定化処理した粒子であってもよい。例えば、表面の安定化は、リチウム金属粒子の表面に皮膜を形成する方法がある。尚、皮膜を有するリチウム粒子の場合、リチウム粒子の平均粒子径は、安定化処理前(芯部)のリチウム粒子のみの平均粒子径を用いるものとする。
活物質には、正極活物質と負極活物質がある。
正極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において正極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、V2O5、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCoYO2、LiCo1−YMnYO2、LiNi1−YMnYO2(0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNiZO4、LiMn2−ZCoZO4(0<Z<2)、LiCoPO4、LiFePO4、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、LixCoO2、LixNiO2,LixMn2O4、LixFePO4、LixCoPO4、LixMn1/3Ni1/3Co1/3O2、LixMn1.5Ni0.5O2等の酸化物が挙げられる。
式(D)において、Zはそれぞれ−S−又は−NH−であり、nは繰返数2〜300の整数である。
また、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。なかでも、高い理論容量を有するケイ素、スズが好ましい。
電極複合材料は、活物質と他の物質を複合化させたものである。
他の物質は、イオン伝導性物質でもよく、導電物質でもよい。また、他の物質は、イオン伝導性物質と導電物質の両方でもよい。
複合材料としては、例えば、活物質と導電性物質を複合化したもの、活物質、導電性物質及びイオン伝導性物質を複合化したものを挙げることができる。
導電性物質としては、電気伝導率が1.0×103S/m以上の物質が使用できる。好ましくは1.0×104S/m以上の物質であり、より好ましくは1.0×105S/m以上の物質である。
板状導電性物質としては、グラフェン等が挙げられる。棒状導電性物質としては、カーボンナノチューブ等が挙げられる。粒子状導電性物質としては、表面積が大きく、細孔容量が大きく、かつ電子伝導性が高いケッチェンブラックや活性炭が挙げられる。
多孔質炭素としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;黒鉛、炭素繊維、活性炭等の炭素が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電性物質の細孔容量は0.5cc/g以上4.0cc/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.6cc/g以上3.95cc/g以下であり、特に好ましくは0.75cc/g以上3.9cc/g以下である。細孔容量が0.5cc/g未満の場合、導電性物質内部の硫黄系化合物含有量が少なくなるおそれがあり、電気容量が高いリチウムイオン電池を得ることが困難になるおそれがある。一方、導電性物質の細孔容量が4.0cc/g超の場合、硫黄系化合物と複合化しても電子伝導性が十分に確保できないおそれがある。
固体電解質としては、ポリマー系固体電解質、酸化物系固体電解質又は硫化物系固体電解質が挙げられる。本発明では、酸化物系固体電解質又は硫化物系固体電解質が好ましく、より好ましくは硫化物系固体電解質である。尚、本発明の組成物には、複数の固体電解質を用いてもよい。
LiaMbPcSd…(1)
a〜dは各元素の組成比を示し、a:b:c:dは1〜12:0〜0.2:1:2〜9を満たす。
各元素の組成比は、硫化物系固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
結晶構造として、例えば、特開2002−109955に開示されているLi7PS6構造、Li4P2S6構造、Li3PS4構造、Li4SiS4構造、Li2SiS3構造、特開2005−228570やWO2007/066539に開示されているLi7P3S11構造が好ましい。
上記結晶構造であれば、非晶体よりイオン伝導度が高くなるからである。
硫化物系固体電解質の結晶化度が50%未満の場合は、結晶化によりイオン伝導度を高くするという効果が少なくなるためである。
結晶化度は、NMRスペクトル装置を用いることにより測定できる。具体的には、硫化物系固体電解質の固体31P−NMRスペクトルを測定し、得られたスペクトルについて、70−120ppmに観測される共鳴線を、非線形最少二乗法を用いたガウス曲線に分離し、各曲線の面積比を求めることにより測定できる。
以下、硫化物系固体電解質の原料として、Li2S及びP2S5を用いた硫化物系固体電解質について説明する。
また、水溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを10℃〜100℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成できる(特願2009−238952)。
一方、特開2010−163356に記載の硫化リチウムの製法で製造した硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩等の含有量が非常に少ないため、精製せずに用いても良い。
好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号に記載された精製法等が挙げられる。具体的には、上記のようにして得られた硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。
溶融急冷法は、例えば、特開平6−279049、WO2005/119706に記載されている。具体的には、P2S5とLi2Sを所定量乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物系ガラス固体電解質が得られる。
反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは、1〜12時間である。
MM法は、例えば、特開平11−134937、特開2004−348972、特開2004−348973に記載されている。
具体的には、P2S5とLi2Sを所定量乳鉢にて混合し、例えば、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、硫化物系ガラス固体電解質が得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温で反応を行うことができる。そのため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス固体電解質を得ることができるという利点がある。
また、MM法では、ガラス固体電解質の製造と同時に、ガラス固体電解質を微粉末化できるという利点もある。
MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、特開2010−90003に記載されているように、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
また、特開2009−110920や特開2009−211950に記載されているように、原料に有機溶媒を添加してスラリー状にし、このスラリーをMM処理してもよい。
また、特開2010−30889に記載のようにMM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
MM処理時の原料温度が60℃以上160℃以下になるようにすることが好ましい。
スラリー法は、WO2004/093099、WO2009/047977に記載されている。
具体的には、所定量のP2S5粒子とLi2S粒子を有機溶媒中で所定時間反応させることにより、硫化物系ガラス固体電解質が得られる。
ここで、特開2010−140893に記載されているように、反応を進行させるため、原料を含むスラリーをビーズミルと反応容器との間で循環させながら反応させてもよい。
また、WO2009/047977に記載されているように、原料の硫化リチウムを予め粉砕しておくと効率的に反応を進行させることができる。
また、特願2010−270191に記載されているように、原料の硫化リチウムの比表面積を大きくするために溶解パラメーターが9.0以上の極性溶媒(例えば、メタノール、ジエチルカーネート、アセトニトリル)に所定時間浸漬してもよい。
反応時間は、好ましくは1時間以上16時間以下、より好ましくは、2時間以上14時間以下である。
非プロトン性有機溶媒としては、非プロトンの非極性有機溶媒(例えば、炭化水素系有機溶媒)、非プロトン性の極性有機化合物(たとえば、アミド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,有機イオウ化合物,環式有機リン化合物等)を、単独溶媒として、又は、混合溶媒として、好適に使用することができる。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
これらのうち、特にトルエン、キシレンが好ましい。
具体的には、上記で得られた硫化物系固体電解質(ガラス)を所定の温度で熱処理し、硫化物系結晶化ガラス(ガラスセラミックス)を生成させる。
また、加熱は、露点−40℃以下の環境下で行うことが好ましく、より好ましくは露点−60℃以下の環境下で行うことが好ましい。
また、加熱時の圧力は、常圧であってもよく、減圧下であってもよい。
また、雰囲気は、空気であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。
さらに特開2010−186744に記載されているように溶媒中で加熱してもよい。
例えば、特開2002−109955に開示されている方法により上記結晶構造を有する結晶化ガラスを製造することができる。
尚、固体電解質粒子の平均粒径とは、体積基準平均粒径(MeanVolumeDiameterという。)である。本発明の固体電解質粒子の測定方法は、レーザー回折式粒度分布測定方法により行うことが好ましい。
ここで、レーザー回折式粒度分布測定方法は、組成物を乾燥せずに粒度分布を測定することができ、組成物中の粒子群にレーザーを照射してその散乱光を解析することで粒度分布を測定することができる。
本発明では、乾燥した固体電解質粒子を用いて該イオン伝導性物質の平均粒径を測定する。
レーザー回折式粒度分布測定装置がMalvernInstrumentsLtd社製マスターサイザー2000である場合の測定例は以下の通りである。
上記混合物を十分混合した後、「乾燥した固体電解質粒子」を添加して粒子径を測定する。「乾燥した固体電解質粒子」の添加量は、マスターサイザー2000で規定されている操作画面で、粒子濃度に対応するレーザー散乱強度が規定の範囲内(10〜20%)に収まるように加減して加える。この範囲を超えると多重散乱が発生し、正確な粒子径分布を求めることができなくなるおそれがある。また、この範囲より少ないとSN比が悪くなり、正確な測定ができないおそれがある。マスターサイザー2000では、「乾燥した固体電解質粒子」の添加量に基き、レーザー散乱強度が表示されるので、上記レーザー散乱強度に入る添加量を見つけるとよい。
「乾燥した固体電解質粒子」の添加量はイオン伝導性物質の種類等により最適量は異なるが、概ね0.01g〜0.05g程度である。
導電助剤としては、デンカブラックやケッチェンブラック等のカーボンブラック系や、導電性酸化物粒子、銀粒子、導電ポリマー等が挙げられる。
また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
バインダーを使用することにより、集電体や電解質層との密着性が向上する。
溶媒を使用することにより、塗布により電極層を形成することができる。
活物質と電極複合材料が少ないと、活物質の性能を十分に発揮できない場合がある。一方、多すぎると、電池としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
例えば、正極と負極の両方にリチウム供給源でない活物質を用いて全固体電池を製造する場合には、{(正極に含まれる活物質の理論容量)×(正極に含まれる活物質の量)}と{(負極に含まれる活物質の理論容量)×(負極に含まれる活物質の量)}のうち、少ない方の値をリチウム粒子の理論容量で割った値がリチウム粒子の配合量として理想となる。
しかし、活物質の理論容量の全てを使用しない場合には、利用する活物質の容量をリチウム粒子の理論容量で割った量であってもよい。尚、下記するようにリチウム粒子の配合量の上限は、リチウム粒子の全てのリチウムが活物質に吸蔵されることがないので、下記のリチウム粒子の配合量の上限が好ましい。
・リチウム粒子の配合量
{(正極に含まれる活物質の理論容量)×(正極に含まれる活物質の量)}と{(負極に含まれる活物質の理論容量)×(負極に含まれる活物質の量)}のうち、少ない方の値をリチウム粒子の理論容量で割った値(以下、「X1」という。)の5倍以下
X1は、より好ましくは3倍以下、更に好ましくは、1.5倍以下である。
X1の下限は、特に制限されないが、例えば、0.01倍以上、0.02倍以上、0.03倍以上、0.1倍、0.2倍を挙げることができる。
例えば、正極にリチウムを含まない活物質を使用したリチウムイオン電池の場合、リチウム粒子の配合量は、対極となる負極容量の5倍以下、好ましくは3倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下、最も好ましくは1.2倍以下の容量に相当する量である。
尚、負極容量は下記式で得られる。
負極容量=「負極に含まれる負極活物質の理論容量[Ah・g−1]」×「負極に含まれる負極活物質の重量(g)」
例えば、負極の容量がX2だとすると、リチウム粒子の配合量は、X2/リチウム粒子の理論容量となる。
リチウム粒子の理論容量は2000〜3863mAh/gであり、好ましくは2500〜3800mAh/gである。
リチウム粒子の理論容量が高いということは、リチウム粒子に含まれるリチウム金属の含有量が多いということである。
配合するリチウム粒子の量を減らすという観点からは、リチウム粒子の理論容量が高いほうが良い。
一方、上記したように、リチウム粒子の安定化を図るためには、リチウム粒子の理論容量が「リチウム金属の理論容量」より少し低い方がよい。例えば、リチウム金属粒子の表面に皮膜を形成する場合には、この皮膜の理論容量は、0またはリチウム金属の理論容量より低いため、上記したように「リチウム金属の理論容量」より少し低くなる。
本発明の組成物からなる層は、リチウムイオン電池の正極側及び負極側のどちらに形成してもよい。
尚、本発明の組成物からなる層は、リチウムイオン電池の正極側及び負極側のどちらに形成してもよい。
尚、他の含有物質は、上述した固体電解質やバインダー等を意味する。
固体電解質の配合量は、リチウム粒子と溶媒を除く組成物全体に対して0質量%〜80質量%が好ましく、さらに好ましくは、10質量%〜70質量%であり、特に好ましくは15質量%〜60質量%である。
溶媒の使用量は、溶媒を除く組成物全体を100質量部とした場合、20質量部〜90質量部が好ましく、特に、30質量部〜80質量部が好ましい。
本発明の電極は、リチウム粒子と、活物質及び複合材料の少なくとも一方を含む。リチウム粒子、活物質及び複合材料に関しては、上述した本発明の組成物で使用するものと同じである。
本発明の電極からリチウム粒子を除いた成分全体に占める、活物質と電極複合材料の配合量は、20質量%〜100質量%である。好ましくは、30質量%〜90質量%であり、特に好ましくは40質量%〜85質量%である。活物質と電極複合材料が少ないと、活物質の性能を十分に発揮させることができないおそれがある。一方、多すぎると、電池としてのエネルギー密度が低下してしまう。
本発明の電極からリチウム粒子を除いた成分全体に占める、固体電解質の配合量は、0質量%〜80質量%である。好ましくは、10質量%〜70質量%であり、特に好ましくは15質量%〜60質量%である。
より具体的に、正極活物質にリチウムを含まない活物質を使用する場合のリチウム粒子の配合量は、対極となる負極容量の5倍以下、好ましくは3倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下、最も好ましくは1.2倍以下の容量に相当する量である。
正極活物質にリチウムを含む活物質を使用する場合のリチウム粒子の配合量は、対極となる負極の初期不可逆容量の10倍以下、好ましくは5倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下の容量に相当する量である。初期不可逆容量はリチウム粒子を含まない電池を作製することで測定可能である。
例えば、本発明の電極を使用したリチウムイオン電池の場合、集電体、正極層、固体電解質層及び負極層を備える電池が例示できる。正極層及び負極層の少なくとも一方が本発明の電極であればよい。
正極層としては、正極活物質を含む電極を使用する。負極層としては、負極活物質を含む電極を使用する。正極層及び負極層の一方には、リチウム粒子を含まない公知の電極を使用してもよい。
固体電解質層としては、上述した本発明の組成物で使用する固体電解質、例えば、ポリマー系固体電解質、酸化物系固体電解質又は硫化物系固体電解質が使用できる。
固体電解質層は、バインダーを含んでいてもよく、また、複数種の固体電解質を使用してもよい。
集電体、正極層、固体電解質層及び負極層については、上述したとおり、公知の材料を使用できる。
・リチウム粒子を含む層を1層形成したリチウムイオン電池の層構成例
1. 正極層/リチウム粒子を含む層/電解質層/負極層
2. 正極層/電解質層/リチウム粒子を含む層/負極層
3. リチウム粒子を含む層/正極層/電解質層/負極層
4. 正極層/電解質層/負極層/リチウム粒子を含む層
・リチウム粒子を含む層を2層形成したリチウムイオン電池の層構成例
5. リチウム粒子を含む層/正極層/リチウム粒子を含む層/電解質層/負極層
6. リチウム粒子を含む層/正極層/電解質層/リチウム粒子を含む層/負極層
7. 正極層/リチウム粒子を含む層/電解質層/負極層/リチウム粒子を含む層
8. 正極層/電解質層/リチウム粒子を含む層/負極層/リチウム粒子を含む層
製造例1
(1)硫化リチウム(Li2S)の製造
硫化リチウムは、特開平7−330312号公報の第1の態様(2工程法)の方法に従って製造した。具体的に、撹拌翼のついた10リットルオートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。
続いて、この反応液を窒素気流下(200cc/分)で昇温し、反応した硫化水素の一部を脱硫化水素化した。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に、反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。脱硫化水素反応が終了後(約80分)反応を終了し、硫化リチウムを得た。
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥し、精製硫化リチウムを得た。
得られた精製硫化リチウムの不純物含有量をイオンクロマトグラフ法により測定したところ、亜硫酸リチウム(Li2SO3)、硫酸リチウム(Li2SO4)及びチオ硫酸リチウム(Li2S2O3)の各硫黄酸化物の総含有量が0.13質量%であり、N−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)の含有量は0.07質量%であった。
上記で製造したLi2SとP2S5(アルドリッチ製)をモル比で70:30となるように混合し、得られた混合物約1gを直径10mmのアルミナ製ボール10個と共に45mLのアルミナ製容器に入れ密閉した。
密閉したアルミナ容器を、遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)にて、窒素中、室温(25℃)にて、回転速度を370rpmとし、20時間メカニカルミリング処理することで、白黄色の粉末であるリチウム・リン系硫化物ガラス固体電解質を得た。さらに、解砕処理を行い、粗粒子をふるいで除去した。このときの回収率は83%であった。
得られた固体電解質ガラス粒子のガラス転移温度をDSC(示差走査熱量測定)により測定したところ、220℃であった。また、固体電解質ガラス粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行った結果、原料Li2Sのピークは観測されず、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。
このガラスセラミックス粒子のイオン伝導度は、1.3×10−3S/cmであった。イオン伝導度は交流インピーダンス法により測定した結果から、算出した。
製造例1(2)で製造したLi2SとP2S5(アルドリッチ製)をモル比で75:25となるように混合し、300℃で2時間の加熱処理を実施しなかった他は製造例1と同様にして、固体電解質ガラス粒子を製造した。(平均粒径15μm)。
尚、固体電解質ガラス粒子の回収率は82%であり、X線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)では、原料Li2Sのピークは観測されず、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。また、得られたガラス粒子のイオン伝導度は、0.3×10−3S/cmであった。
製造例1(2)で製造したLi2SとP2S5(アルドリッチ製)をモル比で80:20となるように混合し、300℃で2時間の加熱処理を実施しなかった他は製造例1と同様にして、固体電解質ガラス粒子を製造した(平均粒径35μm)。
尚、固体電解質ガラス粒子の回収率は87%であり、X線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)では、原料Li2Sのピークは観測されず、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。また、得られたガラス粒子のイオン伝導度は、1.7×10−4S/cmであった。
(1)硫黄と多孔質炭素の複合体の製造
硫黄(アルドリッチ製、純度99.998%)0.700gと多孔質炭素(ケッチェンブラック(KB)EC600JD、ライオン社製)0.300gを乳鉢で混合した後、混合物を密閉性のステンレス容器に入れ、電気炉にて加熱処理した。加熱条件は室温から10℃/分にて150℃まで昇温し、150℃で6時間保持した後、300℃まで10℃/分で昇温し、2.75時間保持、その後自然冷却し、複合体を得た。
上記(1)で製造した複合体0.5gと、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末0.5gをミルポットに入れ、遊星型ボールミル(フリッチュ製:型番P−7)でアルゴン中、室温(25℃)にて、回転速度を370rpmとし、10時間メカニカルミリング処理した。
処理後、ミルポットから混合物0.5gを取り出し、リチウム粒子0.152gと乳鉢で混合することで正極材料を得た。
Si粉末(高純度化学研究所製,99.9%,D50径:4.5μm)0.700gと製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末0.300gを混合し、負極材料を得た。
製造例1で製造した硫化物系固体電解質60mgを直径10mmのプラスティック製の円筒に投入し、加圧成型し、固体電解質層を形成した。
その後、上記(2)で作製した正極材料を円筒に9.0mg投入し再び加圧成型し、固体電解質層と正極の積層体を形成した。
固体電解質層の、正極が形成されていない面側に、上記(3)で作製した負極材料を円筒に4.3mg投入して再び加圧成型し、正極、固体電解質層及び負極の三層構造を有するリチウムイオン電池を作製した。
(1)正極材料の作製
実施例1(2)において、メカニカルミリング処理後にリチウム粒子と混合しなかった他は、同様にして正極材料を得た。
Si粉末(高純度化学研究所製,99.9%,D50径:4.5μm)0.700gと製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末0.300gとリチウム粒子0.304gを乳鉢で混合することで負極材料を得た。
上記(1)で作製した正極材料6.9mg、及び上記(2)で作製した負極材料を6.4mg使用した他は、実施例1(4)と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。
(1)正極材料の作製
製造例1(2)で得られた硫化リチウム1.0gとデンカブラック(DB、電気化学工業製)0.300gと製造例1で製造した硫化物系固体電解質1.0gをミルポットに入れ、遊星型ボールミル(フリッチュ製:型番P−7)でアルゴン中、室温(25℃)にて、回転速度を370rpmとし、10時間メカニカルミリング処理して正極材料を作製した。
Si粉末(高純度化学研究所製,99.9%,D50径:4.5μm)0.700gと製造例1(Li7P3S11)で製造した硫化物系固体電解質粉末0.300gとリチウム粒子0.122gを混合し、負極材料を得た。
上記(1)で作製した正極材料7.9mg、及び上記(2)で作製した負極材料を4.8mg使用した他は、実施例1(4)と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。
(1)リチウム粒子を含む正極材料(組成物)の作製
製造例1(2)で得られた硫化リチウム1.0gとデンカブラック(DB、電気化学工業製)0.300gと製造例1で製造した硫化物系固体電解質1.0gをミルポットに入れ、遊星型ボールミル(フリッチュ製:型番P−7)でアルゴン中、室温(25℃)にて、回転速度を370rpmとし、10時間メカニカルミリング処理した。
その後、ミルポットから混合物1.15gを取り出し、リチウム粒子0.061gと乳鉢で混合することで正極材料を得た。
Si粉末(高純度化学研究所製,99.9%,D50径:4.5μm)0.700gと製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末0.300gとを混合し、負極材料を得た。
上記(1)で作製した正極材料8.4mg、及び上記(2)で作製した負極材料を4.3mg使用した他は、実施例1(4)と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。
(1)リチウム粒子を含む正極材料(組成物)の作製
LiNi0.80Co0.15Al0.05O2粒子70mgと製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末30mgと、リチウム粒子1.098mgとを乳鉢で混合し正極材料を作製した。
黒鉛60mgと製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末40mgを乳鉢で混合し負極材料を作製した。
上記(1)で作製した正極材料14.432mg、及び上記(2)で作製した負極材料を12.1mg使用した他は、実施例1(4)と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。
(1)正極材料の作製
LiNi0.80Co0.15Al0.05O2粒子70mgと製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末30mgとを乳鉢で混合し正極材料を作製した。
黒鉛60mgと製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末40mgとリチウム粒子1.098mgとを乳鉢で混合し負極材料を作製した。
上記(1)で作製した正極材料14.3mg、及び上記(2)で作製した負極材料を12.232mg使用した他は、実施例1(4)と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質(ガラスセラミックス)粉末に代えて製造例2で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例2で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例2で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例3と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例2で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例4と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例2で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例5と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例2で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例6と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質(ガラスセラミックス)粉末に代えて製造例3で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例3で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例3で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例3と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例3で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例4と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例3で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例5と同様にリチウムイオン電池を作製した。
正極材料及び負極材料の作製において、製造例1で製造した硫化物系固体電解質粉末に代えて製造例3で製造した硫化物系固体電解質粉末を用いた他は、実施例6と同様にリチウムイオン電池を作製した。
尚、実施例1〜2、7〜8、13〜14については充放電電位範囲を0.6−2.65Vとし、実施例3〜4、9〜10、15〜16については充放電電位範囲を0.5−3.3Vとし、実施例5〜6、11〜12、17〜18については充放電電位範囲を2.5−4.2Vとした。
製造例1及び2の固体電解質を用いた場合、それぞれの活物質の理論容量近くまで放電が可能であった。また、製造例3の固体電解質でも作動が確認された。
製造例4
以下の複合体(A−1)〜(A−4)を製造した。
(A−1)硫黄/炭素/固体電解質の複合体
硫黄粉末70重量部、ケッチェンブラック粉末(EC600JD、ライオン社製)30重量部をプレミキシングした後、実施例1(1)と同条件にて加熱処理を行い硫黄/炭素複合体を得た。
次に、この硫黄/炭素複合体50重量部、製造例1で作製した硫化物系固体電解質粉末50重量部を直径10mmのジルコニアボールと混ぜ合わせ、遊星型ボールミル(伊藤製作所社製LP−4)で、220rpm、10時間メカニカルミリング処理を行い、硫黄/炭素/固体電解質複合体を得た。
固体電解質粉末を製造例2で作製した固体電解質(75:25)に変更した他は、(A−1)と同様にして硫黄/炭素/固体電解質複合体を得た。
製造例1(2)で作製した硫化リチウム100重量部、デンカブラック(電気化学工業製)30重量部、製造例1で作製した硫化物系固体電解質100重量部を、直径10mmのジルコニアボールと混ぜ合わせ、遊星型ボールミル(伊藤製作所社製LP−4)で、220rpm、20時間メカニカルミリング処理を行い、硫化リチウム/炭素/固体電解質複合体を得た。
固体電解質粉末を製造例2で作製した固体電解質(75:25)に変更した他は、(A−3)と同様にして硫化リチウム/炭素/固体電解質複合体を得た。
製造例5
以下の正極合材スラリー(B−1)〜(B−4)を製造した。
(B−1)硫黄系正極合材スラリー
製造例4で作製した複合体(A−1)100重量部、PVDF−HFP(20)樹脂溶液(イソブチロニトリル溶媒に「Kynar2500−20(アルケマ製)」を5wt%溶解)106重量部を、T.K.フィルミクス56−50型(プライミクス社製)を用いて、周速30m/sで30秒間分散処理を行い、正極合材スラリーを製造した。
複合体(A−1)を複合体(A−2)に変更した他は、複合体(B−1)と同様してスラリーを製造した。
複合体(A−1)を複合体(A−3)に変更した他は、複合体(B−1)と同様してスラリーを製造した。
複合体(A−1)を複合体(A−4)に変更した他は、複合体(B−1)と同様してスラリーを製造した。
リチウム粒子含有硫黄系正極合材スラリー(B−5)の製造
複合体(A−1)100重量部、リチウム粉末30.4重量部、PVDF−HFP(20)樹脂溶液(イソブチロニトリル溶媒に「Kynar2500−20」を5wt%溶解)106重量部を、T.K.フィルミクス56−50型(プライミクス社製)を用いて、周速30m/sで60秒間分散処理を行い、正極合材スラリーを製造した。
リチウム粒子含有Li2S系正極合材スラリー(B−6)の製造
複合体(A−1)を複合体(A−3)に変更した他は、複合体(B−5)と同様してスラリーを製造した。
製造例6
以下のシリコン系負極合材スラリー(C−1)を製造した。
Si粉末70重量部、製造例1で作製した硫化物系固体電解質粉末30重量部、PVDF−HFP(15)樹脂溶液(イソブチロニトリル溶媒に「Kynar2751−00(アルケマ製)」を3wt%溶解)100重量部を混合し、遊星型ボールミルを用いて、220rpm、2時間分散処理して負極合材スラリーを製造した。
リチウム粒子含有シリコン系負極合材スラリー(C−2)の製造
負極合材スラリー(C−1)100重量部、リチウム粉末12.9重量部、イソブチロニトリル溶媒10重量部を混合し、T.K.フィルミクス56−50型(プライミクス社製)を用いて、周速20m/sで10秒間分散処理して負極合材スラリーを製造した。
リチウム粒子含有シリコン系負極合材スラリー(C−3)の製造
負極合材スラリー(C−1)100重量部、リチウム粉末5.2重量部、イソブチロニトリル溶媒5重量部を混合し、T.K.フィルミクス56−50型(プライミクス社製)を用いて、周速20m/sで10秒間分散処理して負極合材スラリーを製造した。
製造例7
固体電解質スラリー(D−1)を製造した。具体的に、遊星ボールミル容器に製造例1で作製した硫化物系固体電解質を40質量部、トルエンを60質量部投入し、直径10mmのジルコニアボールを入れて、200rpmで2時間分散処理を行い、固体電解質スラリーとした。
製造例8
アンダーコート層付きアルミ集電体(E−1)を作製した。具体的に、ドクターブレード(塗布幅:150mm、塗布厚:50μm)を用いて、アルミ箔(幅:200mm、厚み:30μm)に導電性塗料(日本黒鉛社製、商品名:バニーハイトUCC−2)を塗布し、150℃、2時間、減圧乾燥して、厚み5μmのアンダーコート層を形成した。
(正極合材シートの作製)
製造例9
ドクターブレード(塗布幅:50mm、塗布厚:250μm)を用いて、アンダーコート層付きアルミ集電体(E−1)に、正極合材スラリー(B−1)を塗布後、100℃で6時間減圧乾燥し、正極合材シートを得た。正極合材の目付け量は、9.7mg/cm2であった。ここで、目付け量とは単位面積当たりの正極合材を構成する材料全ての量を表す。
正極合材スラリーをそれぞれ(B−2)又は(B−3)に変更した以外は、製造例9と同様の方法を用いて正極合材シートを作製した。それぞれの正極合材の目付け量は、9.7g/cm2、11.1g/cm2であった。
正極合材スラリーを(B−5)に変更した以外は、製造例9と同様の方法を用いて正極合材シートを作製した。正極合材の目付け量は、12.6mg/cm2であった。
製造例12
ドクターブレード(塗布幅:50mm、塗布厚:250μm)を用いて、アンダーコート層付きアルミ集電体(E−1)に、負極合材スラリー(C−1)を塗布後、100℃で6時間減圧乾燥し、負極合材シートを得た。負極合材の目付け量は、6.0g/cm2であった。
負極合材スラリーをそれぞれ(C−2)又は(C−3)に変更した以外は、製造例12と同様の方法を用いて負極合材シートを作製した。それぞれの負極合材の目付け量は、9.0g/cm2、6.7g/cm2であった。
実施例26
実施例24で作製した負極合材シートの上に、20×20mmの開口部を設けたPETシート(厚み:200μm)を載せ、硫化物系固体電解質スラリー(D−1)を流し込んで、スキージヘラでならし、風乾した。その後、PETシートを除去し、100℃で2時間減圧乾燥後、負極層及び固体電解質層からなる二層シートを作製した。
この二層シート、及び製造例9で作製した正極合材シートを、それぞれ20×20mmの大きさに切り出し後、電解質層を挟み込むようにして貼り合せ、油圧プレス機を用いて、500MPaの圧力で一体成形した。その後、各集電体に電極タブを取り付け、アルミラミネートフィルムで封止し、電池セルを形成した。得られた電池では、内部短絡が無かった。
正極合材シートを実施例23の電極シートに、負極合材シートを製造例12に記載の電極シートに変更した以外は、実施例26と同様の方法で電池セルを作製した。
正極合材シートを製造例10に記載の電極シートに、負極合材シートを実施例24に記載の電極シートに変更した以外は、実施例26と同様の方法で電池セルを作製した。
正極合材シートを製造例11に記載の電極シートに、負極合材シートを実施例25に記載の電極シートに変更した以外は、実施例26と同様の方法で電池セルを作製した。
集電体の裏側から電極にリチウムをドープさせるために多孔質集電体として銅パンチングシート(開口孔:500μm、開口率:30%、厚み:30μm)を用いた。ドクターブレード(塗布幅:50mm、塗布厚:250μm)を用いて、前述のパンチングシート上に、負極合材スラリー(C−1)を塗布後、100℃で6時間減圧乾燥し、負極合材シートを得た。負極合材の目付け量は、6.8g/cm2であった。
さらに、20×20mmの開口部を設けたPETシート(厚み:200μm)を負極合材層側に載せ、硫化物系固体電解質スラリー(D−1)を流し込んで、スキージヘラでならし、風乾後した。その後、PETシートを除去し、100℃で2時間減圧乾燥後、負極層及び固体電解質層からなる二層シートを作製した。
上述の二層シート、製造例9で作製した正極合材シートを、それぞれ20×20mmの大きさに切り出し後、電解質層を挟み込むようにして貼り合せた後、油圧プレス機を用いて、500MPaの圧力で一体成形した。
次に、リチウム箔を負極合材層とは反対側のパンチングシートに貼り、プレス機により10MPaで貼り合せた。しかしながら、リチウム箔が剥離したため、電池セルを形成できなかった。
リチウム貼り合せ時のプレス圧力を300MPaに変更した以外は、比較例1と同様の方法により電池セルの形成を試みた。しかしながら、短絡が生じたため、電池セルを形成できなかった。
Claims (17)
- 硫化物系の正極活物質と導電性物質を複合化させた電極複合材料と、
リチウム粒子と、
固体電解質と、
を含む組成物。 - 硫化物系の正極活物質及び前記硫化物系の正極活物質と他の物質を複合化させた電極複合材料の少なくとも一方と、
リチウム粒子と、
固体電解質と、を含み、
前記固体電解質が、下記式(1)に示す組成を有する硫化物系固体電解質である、組成物。
Li a M b P c S d …(1)
(式中、MはB、Zn、Si、Cu、Ga及びGeから選択される元素を示す。
a〜dは各元素の組成比を示し、a:b:c:dは1〜12:0〜0.2:1:2〜9を満たす。) - 前記硫化物系の正極活物質が、単体硫黄(S)、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni3S2)、硫化リチウム(Li2S)、有機ジスルフィド化合物、又はカーボンスルフィド化合物である請求項1に記載の組成物。
- 前記他の物質が導電性物質である請求項2に記載の組成物。
- 前記導電性物質が多孔質炭素である請求項1に記載の組成物。
- 前記多孔質炭素が、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック及びチャンネルブラックから選択されるカーボンブラック、又は黒鉛、炭素繊維及び活性炭から選択される炭素である請求項5に記載の組成物。
- 前記固体電解質が、ポリマー系固体電解質、酸化物系固体電解質又は硫化物系固体電解質である請求項1、3、5、6のいずれかに記載の組成物。
- 前記硫化物系固体電解質が結晶化硫化物系電解質である請求項2又は7に記載の組成物。
- 前記硫化物系固体電解質が、硫化リチウムと五硫化二リンを用いた硫化物系固体電解質である請求項2、7、8のいずれかに記載の組成物。
- 前記硫化リチウムと五硫化二リンの割合が、硫化リチウム:五硫化二リン=65:35〜78:22(モル比)である請求項9に記載の組成物。
- 硫化物系の正極活物質と導電性物質を複合化させた電極複合材料と、
リチウム粒子と、
固体電解質と、
を混合する組成物の製造方法。 - 硫化物系の正極活物質及び前記硫化物系の正極活物質と他の物質を複合化させた電極複合材料の少なくとも一方と、
リチウム粒子と、
下記式(1)に示す組成を有する硫化物系固体電解質と、
を混合する組成物の製造方法。
Li a M b P c S d …(1)
(式中、MはB、Zn、Si、Cu、Ga及びGeから選択される元素を示す。
a〜dは各元素の組成比を示し、a:b:c:dは1〜12:0〜0.2:1:2〜9を満たす。) - 硫化物系の正極活物質と導電性物質を複合化させた電極複合材料と、
リチウム粒子と、
固体電解質と、
を含む正極。 - 前記硫化物系の正極活物質が、単体硫黄(S)、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni3S2)、硫化リチウム(Li2S)、有機ジスルフィド化合物、又はカーボンスルフィド化合物である請求項13に記載の正極。
- 前記導電性物質が多孔質炭素である請求項13又は14に記載の正極。
- 請求項13〜15のいずれかに記載の正極を含む電池。
- さらに集電体を備える請求項16に記載の電池。
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