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JP5907708B2 - 硬化性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、反応性ケイ素基を含有する反応性可塑剤に関する。さらに本発明は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体と、上記の反応性可塑剤を組み合わせた硬化性組成物に関する。
分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を含有する有機重合体は、室温においても湿分などによる反応性ケイ素基の加水分解反応などを伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状の硬化物が得られるという性質を有することが知られている。
これらの反応性ケイ素基を含有する有機重合体の中で、主鎖骨格がポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、および、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体については、特許文献1等で開示されており、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、コーティング材、塗料などの用途に広く使用されている。
なかでも建築用シーリング材用途では、30年以上にわたり市場でシェアを伸ばしてきた。建築用シーリング材は壁材が温度等の影響により伸び縮みしても追従する必要があることから、低モジュラスかつ高伸びで、しかも復元性が高いことが望ましい。これらの性能を満たしたシーリング材においても、次のような問題が発生する場合がある。外壁の目地に使用された場合、改築・改装等の際に外壁ごと塗料が塗られる場合があり、塗膜の軟化が生じて埃が付着することにより美観を損なう。また、最近の戸建住宅の外壁の主流であるサイディングボードの目地に用いられた場合、長期間の曝露中にシーリング材の硬化物の伸びが低下する。また、屋内外を問わず、高級感を持たせるために壁や床に大理石や御影石が使用される場合があり、施工した後で石表面の色が変色して美観を損なうという事例も生じていた。これらの問題はいずれもフタル酸エステル系可塑剤等のような低分子量化合物の基材への移行が問題とされており改善が求められていた。
近年、フタル酸エステル系可塑剤の代わりに高分子量の可塑剤、高分子量可塑剤の末端もしくは主鎖に反応性ケイ素基を有するいわゆる反応性可塑剤を用いることで上記問題を改善できることがわかってきている(特許文献2〜9)。しかし、これら可塑剤の使用は硬化物のモジュラスを大きく低下させることがあり、それに伴い、復元性が低下してしまうという問題が生じることがある。特に、反応性可塑剤の反応性ケイ素基がメチルジメトキシシランの場合その効果が大きいことがわかってきている。反応性ケイ素基がメチルジメトキシシラン基以外の反応性可塑剤も報告されているが、復元性を向上させる反応性可塑剤は報告されていなかった(特許文献10〜14)。
特許第2708833号公報 特開2004−224985号公報 特開平5−59267号公報 特開平9−95609号公報 特開平9−95619号公報 特開2005−240049号公報 特開平4−57850号公報 特開2004−244528号公報 WO2005/073322号公報 特許第4435591号公報 特開2000−86881号公報 WO2004/060953号公報 WO2005/042607号公報 特開2003−313302号公報
本発明は、主に建築用シーリング材に使用できる有機重合体で、石材等の周辺基材や塗料への汚染を低減し、さらに硬化物が高復元性となる硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、エタノール脱離型反応性ケイ素基を導入した有機重合体を用いることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1).
主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800〜50,000で、分子内にエタノール脱離型反応性ケイ素基を1分子中に平均して0.5〜1.6個含有する有機重合体(A)、
(2).
有機重合体(A)の主鎖がポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであることを特徴とする、(1)に記載の有機重合体、
(3).
有機重合体(A)が、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤を用いて、複合金属シアン化物錯体触媒存在下でプロピレンオキシドを反応させたポリオキシプロピレン系重合体にエタノール脱離型反応性ケイ素基を導入して得られることを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の有機重合体、
(4).
有機重合体(A)が、エタノール脱離型反応性ケイ素基を有機重合体の片方の末端にのみ有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の有機重合体、
(5).
有機重合体(A)が、1分子中に水酸基を2個以上有する開始剤と、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤を併用し、複合金属シアン化物錯体触媒存在下でプロピレンオキシドを反応させたポリオキシプロピレン系重合体に反応性ケイ素基を導入して得られることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の有機重合体、
(6).
1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤が炭素数3〜8のアルコールであることを特徴とする、(3)または(5)のいずれかに記載の有機重合体、
(7).
1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤がn−ブタノールであることを特徴とする、(6)に記載の有機重合体、
(8).
有機重合体(A)が、エタノール脱離型反応性ケイ素基を有機重合体の片方の末端にのみ有する有機重合体と、有機重合体の両方の末端にのみ有する有機重合体を含有し、片方の末端にのみ反応性ケイ素基を持つ有機重合体が50重量%以上含まれることを特徴とする、(1)〜(7)に記載の有機重合体、
(9).
有機重合体(A)のエタノール脱離型反応性ケイ素基がトリエトキシシリル基であることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の有機重合体、
(10).
有機重合体(A)と、主鎖骨格がポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり数平均分子量が5,000〜50,000でメタノール脱離型シリル基を1分子中に平均して1.2〜5個含有する有機重合体(B)とを含む(1)〜(9)のいずれかに記載の硬化性組成物、
(11).
有機重合体(B)100重量部に対して、有機重合体(A)を20〜250重量部含有することを特徴とする、(10)に記載の硬化性組成物、
(12).
有機重合体(B)の反応性ケイ素基が、メチルジメトキシシリル基であることを特徴とする、(10)または(11)のいずれかに記載の硬化性組成物、
(13).
硬化触媒として、4価の錫化合物(C)を含有することを特徴とする、(10)〜(12)のいずれかに記載の硬化性組成物、
(14).
4価の錫化合物(C)がジオクチル錫化合物であることを特徴とする、(13)に記載の硬化性組成物、
(15).
硬化性組成物が1液型の硬化性組成物であることを特徴とする、(10)〜(14)のいずれかに記載の1液型硬化性組成物、
(16).
(1)〜(15)のいずれかに記載の有機重合体または硬化性組成物を用いた建築用シーリング材、
(17).
(1)〜(16)のいずれかに記載の有機重合体または硬化性組成物を用いたサイディングボードに施工されるシーリング材、
(18).
(1)〜(16)のいずれかに記載の有機重合体または硬化性組成物を用いた石目地用シーリング材、
に関する。
本発明ではエタノール脱離型反応性ケイ素基を導入した有機重合体を用いることにより、低モジュラス且つ高い復元性を有し、硬化物の上に塗装した場合に塗膜が汚れず、石材の目地に施工しても石材の変色が生じにくく長期間美観を維持できる硬化性組成物を得ることができる。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明に用いる反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)および有機重合体(B)の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができるが、得られる組成物の硬化性や接着性に優れることから、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選択される1つ以上からなることが好ましい。
具体的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよびスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、または、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;例えばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体や、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることからより好ましい。
(A)成分および(B)成分である有機重合体のガラス転移温度は、特に限定は無いが、20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が20℃を上回ると、冬季または寒冷地での粘度が高くなり作業性が悪くなる場合があり、また、硬化物の柔軟性が低下し、伸びが低下する場合がある。前記ガラス転移温度はDSC測定による値を示す。
また、ポリオキシアルキレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、透湿性が高く1液型組成物にした場合に深部硬化性に優れ、更に接着性にも優れることから特に好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体は最も好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の中でも、ポリオキシプロピレン系重合体が特に好ましい。
本発明の有機重合体(A)中に含有される反応性ケイ素基はエタノール脱離型であり、シラノール縮合触媒によって加速される縮合反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。反応性ケイ素基としては、一般式(1):
−SiR 3−a(OCHCH (1)
(式中、Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または−OSi(R’)で示されるトリオルガノシロキシ基を示す。ここでR’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。aは1〜3の整数である)で示される基である。
本発明の有機重合体(B)中に含有される反応性ケイ素基はメタノール脱離型であり、シラノール縮合触媒によって加速される縮合反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。反応性ケイ素基としては、一般式(2):
−SiR 3−a(OCH (2)
(R、aは前記に同じ。)で表される基が挙げられる。
上記一般式(1)および一般式(2)におけるaは、硬化性の点から、2または3であることが好ましく、特に速硬化性を求める場合には3であることが好ましく、貯蔵中の安定性を求める場合には2であることが好ましい。
また上記一般式(1)(2)におけるRの具体例としては、例えばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R’がメチル基、フェニル基等である−OSi(R’)で示されるトリオルガノシロキシ基、クロロメチル基、メトキシメチル基等が挙げられる。これらの中ではメチル基が特に好ましい。
反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行えばよい。すなわち、例えば以下の方法が挙げられる。
(I)分子中にヒドロキシ基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有する有機重合体を得る。もしくは、不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により不飽和基含有有機重合体を得る。次いで得られた反応生成物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(II)(I)法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体にメルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
(III)分子中にヒドロキシ基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
以上の方法のなかで、(I)の方法、または(III)のうち末端にヒドロキシ基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られる為に好ましい。更に、(I)の方法で得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体は、(III)の方法で得られる有機重合体よりも低粘度で作業性の良い硬化性組成物となること、また、(II)の方法で得られる有機重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(I)の方法が特に好ましい。
(I)の方法において用いるヒドロシラン化合物の具体例としては、例えば、(A)成分の合成にはトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、メトキシメチルジエトキシシラン、クロロメチルジエトキシシラン、(B)成分の合成にはトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、メトキシメチルジメトキシシラン、クロロメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン類があげられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちでは(A)成分には硬化性組成物の硬化性および復元性の観点からトリエトキシシランが好ましい。(B)成分には入手し易く、得られる有機重合体を含有する硬化性組成物の硬化性、貯蔵安定性、伸び特性、引張強度が高いという観点からメチルジメトキシシランが好ましい。また、得られる硬化性組成物の硬化性および復元性の観点からはトリメトキシシランが好ましい。
(II)の合成法としては、例えば、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、有機重合体の不飽和結合部位に導入する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えば、(A)成分の合成にはγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、(B)成分の合成にはγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(III)の合成法のうち末端にヒドロキシ基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば、特開平3−47825号公報に示される方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、例えば、(A)成分の合成にはγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシラン、(B)成分の合成にはγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
トリメトキシシラン等の一つのケイ素原子に3個の加水分解性基が結合しているシラン化合物は不均化反応が進行する場合がある。不均化反応が進むと、ジメトキシシランのような不安定な化合物が生じ、取り扱いが困難となることがある。しかし、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランでは、このような不均化反応は進行しない。このため、ケイ素含有基としてトリメトキシシリル基など3個の加水分解性基が一つのケイ素原子に結合している基を用いる場合には、(II)または(III)の合成法を用いることが好ましい。
一方、一般式(3):
H−(SiR O)SiR −R−Si(OCH (3)
(2m+2個のRは、それぞれ独立に炭化水素基であり、入手性およびコストの点から、炭素原子数1から20の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1から8の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数1から4の炭化水素基が特に好ましい。Rは2価の有機基であり、入手性およびコストの点から、炭素原子数1から12の2価の炭化水素基が好ましく、炭素原子数2から8の2価の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数2の2価の炭化水素基が特に好ましい。また、mは0から19の整数であり、入手性およびコストの点から、1が好ましい)で表されるシラン化合物は、不均化反応が進まない。この為、(I)の合成法で、3個の加水分解性基が1つのケイ素原子に結合している基を導入する場合には、一般式(3)で表されるシラン化合物を用いることが好ましい。一般式(3)で示されるシラン化合物の具体例としては、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−[2−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−[2−(トリメトキシシリル)ヘキシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが挙げられる。
反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)は直鎖状が好ましく、また、有機重合体(B)は直鎖状、または分岐を有してもよいが、本発明の効果がよりよく発現するためには、直鎖状であることが好ましい。
(A)成分の数平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算において800から50,000程度、より好ましくは1,000から30,000であり、特に好ましくは2,000から11,000である。(A)成分の数平均分子量が800未満では、汚染性の改善効果が不十分な傾向があり、またコスト的に好ましくない。一方、15,000を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
一方、(B)成分の数平均分子量は、上記と同じ測定方法において、5,000から50,000程度、より好ましくは、8,000から30,000程度、特に好ましくは10,000から25,000である。(B)成分の数平均分子量が5,000未満では、硬化物の伸びが低く、建築用シーリング材として適さない傾向にある。一方、30,000を越えると、高粘度となり、特に低温での作業性が悪く、建築用シーリング材として使用する場合に「糸引き」と呼ばれるような課題が生じ、好ましくない。
本発明では、通常の可塑剤の代替として作用することができ、汚染性課題を生じないためには、有機重合体(A)に含有される反応性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して0.5〜1.6個であることが好ましく、好ましくは0.6〜1.3個、さらに好ましくは0.8〜1.0個であり、重合体の両末端に存在してもよいが、反応性可塑剤としてモジュラスを大きく低下させる場合には、片末端にのみ存在することが好ましく、しかもケイ素基が含まれない成分がなるべく少ないことが好ましい。すなわち、有機重合体(A)中に含まれる反応性ケイ素基の数は1個に近いことが好ましい。
一方、有機重合体(B)に含有される反応性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1.2〜5個であることが好ましく、好ましくは1.3個以上3個、さらに好ましくは1.4〜2個である。(B)成分に含有される反応性ケイ素基が1.2個未満では、モジュラスが低くなりすぎ、それに伴い復元性も低下するため好ましくない。一方、5個を越えると、高モジュラスとなるため建築用シーリング材として適さない傾向にある。
前記(I)の項で使用する有機重合体として、1分子中に1個のみ水酸基等の活性水素を有する有機重合体を使用することが好ましい。また、(A)成分を実機で製造するにあたり、1分子中に1個のみ活性水素を有する有機重合体を開始剤として使う際に、仕込み量が少なくて十分な攪拌が保障されない場合は、1分子中に活性水素を2個以上有する化合物を併用しても良い。このような場合は、1分子中に平均して2個の反応性ケイ素基を含有する有機重合体が混在するが、平均して1分子中に反応性ケイ素基が0.5〜1.2個になるように調整されれば特に問題はない。この場合、有機重合体(A)は有機重合体の片方の末端にのみ反応性ケイ素基を有する有機重合体を50重量%以上含有することが望ましく、好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。有機重合体の片方の末端にのみ反応性ケイ素基を有する有機重合体の含有率が50重量%未満である場合、反応性ケイ素基の導入量によっては、汚染性の改善効果が不十分となったり、もしくは高モジュラスとなるため建築用シーリング材として適さない傾向にある。
1分子中に1個のみ活性水素を含有する開始剤として、下記のような化合物が挙げられる。すなわち、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールなどの一価の1 級、2 級、3 級アルコール。アリルアルコール、メタリルアルコール、プロペニルアルコールなどの1価の不飽和基含有アルコール類。及び、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1 , 3 − プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1 , 4 − ブタンジオール、1 , 5 − ペンタンジオール、1 , 6 − ヘキサンジオール、1 , 4 − シクロヘキサンジオールなどをモノアリルエーテル化した前記のモノアリルエーテル化体やモノビニルエーテル化した前記のモノビニルエーテル化体などの1 価の不飽和基含有アルコール類、及びモノアルキルエーテル化した前記のモノアルキルエーテル化体などの1価の飽和アルコール類、等であるが、これらに限られるものではない。活性水素基の種類としては、反応性や入手性の点から、アルコール類が好ましく、特に炭素数が3〜7のアルコール類が最も好ましい。炭素数1ないし2のアルコールは沸点が低く、液体として安定になりにくいため開始剤として適さない。一方、炭素数が8以上のアルコールの場合は、得られた有機重合体に反応性ケイ素基を導入する場合に反応性が低くなる傾向がある。アルコールの中では、n−ブタノールが最も好ましい。
また、上記に述べたように低分子量アルコールを用いると、実機で製造するにあたり課題が出る場合がある。そのような場合は、片末端にのみ水酸基を有するポリエーテル系重合体の方が都合が良い。分子量としては、1,000〜5,000程度の重合体が使用でき、例えば三洋化成工業のポリオキシプロピレンモノブチルエーテル(商品名:ニューポール)が好適に使用できる。
このような開始剤を用いて有機重合体を合成すれば、反応性ケイ素基を1分子中に1個有する成分の含有率の高い有機重合体を得ることができる。
反応性ケイ素基は、有機重合体分子鎖の主鎖の末端あるいは側鎖の末端にあってもよいし、また、両方にあってもよい。特に、反応性ケイ素基が分子鎖の主鎖の末端にのみあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる有機重合体成分の有効網目長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなり、好ましい。
前記ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に一般式(4):
−R−O− (4)
(Rは、炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、重合体の全ての繰り返し単位中に一般式(4)で表される繰り返し単位が50重量%以上存在することが好ましい。一般式(4)におけるRは、炭素原子数1から14の、更には2から4の、直鎖状もしくは分岐アルキレン基が好ましい。一般式(4)で示される繰り返し単位の具体例としては、
−CHO−、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CHC(CHO−、−CHCHCHCHO−
等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特にシーリング材等に使用される場合には、プロピレンオキシド重合体を主成分とする重合体から成るものが非晶質であることや比較的低粘度である点から好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11−060722号に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等があげられるが、特に限定されるものではない。
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法は、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同55−13468号、同57−164123号、特公平3−2450号、米国特許3632557、米国特許4345053、米国特許4366307、米国特許4960844等の各公報に提案されているもの、また特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−218632号、特開平3−72527号、特開平3−47825号、特開平8−231707号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体が例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
上記の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
前記飽和炭化水素系重合体は芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、その骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素原子数2から6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物とを共重合させた後、水素添加するなどの方法により得ることができるが、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましく、イソブチレン系重合体が特に好ましい。
主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体であるものは、耐熱性、耐候性、耐久性、および、湿気遮断性に優れる特徴を有する。
イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、他単量体との共重合体でもよいが、ゴム特性の面からイソブチレンに由来する繰り返し単位を50重量%以上含有するものが好ましく、80重量%以上含有するものがより好ましく、90から99重量%含有するものが特に好ましい。
飽和炭化水素系重合体の合成法としては、従来、各種重合方法が報告されているが、特に近年多くのいわゆるリビング重合が開発されている。飽和炭化水素系重合体、特にイソブチレン系重合体の場合、Kennedyらによって見出されたイニファー重合(J.P.Kennedyら、J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed. 1997年、15巻、2843頁)を用いることにより容易に製造することが可能であり、分子量500から100,000程度を、分子量分布1.5以下で重合でき、分子末端に各種官能基を導入できることが知られている。
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体の製法としては、例えば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開平1−197509号、特許公報第2539445号、特許公報第2873395号、特開平7−53882号の各明細書などに記載されているが、特にこれらに限定されるものではない。
上記の反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、例えば、γ−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルジエトキシメチルシラン等を用いることができるが、高モジュラス、低伸びとなってしまうため、その比率は10%以下であることが好ましく、更には、用いないことがより好ましい。上記の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、重合体の全ての繰り返し単位中に50重量%以上存在することが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとともに、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。該ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等のスチレン系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマーおよび(メタ)アクリル酸系モノマーからなる重合体が好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマーおよびメタクリル酸エステルモノマーからなる(メタ)アクリル系重合体であり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーからなるアクリル系重合体である。一般建築用等の用途においては配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル系モノマーが更に好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途にはその比率は40%以下にするのが好ましく、更には30%以下にするのがより好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は40%以下にするのが好ましい。ケイ素含有ビニル系モノマーは高モジュラス、低伸びとなってしまうため、その比率は10%以下であることが好ましく、更には、用いないことがより好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(重量比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体が挙げられる。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の合成法としては、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。但し、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いる通常のフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るためには、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁などが挙げられる。
反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製法としては、例えば、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に、連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法を用いた製法が開示されている。また、特開平9−272714号公報等に、原子移動ラジカル重合法を用いた製法が開示されているが、特にこれらに限定されるものではない。上記の反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。具体的には、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体、からなる群から選択される2種以上をブレンドしてなる有機重合体も使用できる。
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体の製造方法は、特開昭59−122541号、特開昭63−112642号、特開平6−172631号、特開平11−116763号公報等に提案されているが、特にこれらに限定されるものではない。好ましい具体例は、反応性ケイ素基を有し分子鎖が実質的に、下記一般式(5):
−CH−C(R)(COOR)− (5)
(Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素原子数1から8のアルキル基を示す)で表される炭素原子数1から8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記一般式(6):
−CH−C(R)(COOR)− (6)
(Rは前記に同じ、Rは炭素原子数9以上のアルキル基を示す)で表される炭素原子数9以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体に、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体をブレンドして製造する方法である。
前記一般式(5)のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素原子数1から8、好ましくは1から4、さらに好ましくは1または2のアルキル基があげられる。なお、Rのアルキル基は単独でもよく、2種以上混合していてもよい。
前記一般式(6)のRとしては、例えば、ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素原子数9以上、通常は10から30、好ましくは10から20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、Rのアルキル基はRの場合と同様、単独でもよく、2種以上混合したものであってもよい。
該(メタ)アクリル酸エステル系重合体の分子鎖は実質的に一般式(5)および一般式(6)の単量体単位からなるが、ここでいう「実質的に」とは該共重合体中に存在する一般式(5)および一般式(6)の単量体単位の合計が50重量%をこえることを意味する。一般式(5)および一般式(6)の単量体単位の合計は好ましくは70重量%以上である。
また、一般式(5)の単量体単位と一般式(6)の単量体単位の存在比は、重量比で95:5から40:60が好ましく、90:10から60:40がさらに好ましい。
該共重合体に含有されていてもよい一般式(5)および一般式(6)以外の単量体単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体は、特開平1−168764号、特開2000−186176号公報等に提案されているが、特にこれらに限定されるものではない。
更に、反応性ケイ素官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体の製造方法としては、他にも、反応性ケイ素基を有する有機重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行う方法が利用できる。この製造方法は、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報に具体的に開示されているが、これらに限定されるものではない。
一方、有機重合体の主鎖骨格中には本発明の効果を大きく損なわない範囲でウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。
前記ウレタン結合成分としては特に限定されないが、イソシアネート基と活性水素基との反応により生成する基(以下、アミドセグメントともいう)を挙げることができる。
前記アミドセグメントは一般式(7):
−NR−C(=O)− (7)
(Rは有機基または水素原子を表す)で表される基である。
前記アミドセグメントとしては、具体的には、イソシアネート基とヒドロキシ基との反応により生成するウレタン基;イソシアネート基とアミノ基との反応により生成する尿素基;イソシアネート基とメルカプト基との反応により生成するチオウレタン基などを挙げることができる。また、本発明では、上記ウレタン基、尿素基、および、チオウレタン基中の活性水素が、更にイソシアネート基と反応して生成する基も、一般式(7)の基に含まれる。
アミドセグメントと反応性ケイ素基を有する有機重合体の工業的に容易な製造方法を例示すると、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて、ポリウレタン系主鎖の末端にイソシアネート基を有する重合体とした後、あるいは同時に、該イソシアネート基の全部または一部に一般式(8):
W−R−SiR 3−a (8)
(R、aは前記と同じ。XはOCHまたはOCHCHであり、R10は2価の有機基であり、より好ましくは炭素原子数1から20の炭化水素基である。Wはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれた活性水素含有基である)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法により製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特公昭46−12154号(米国特許3632557号)、特開昭58−109529号(米国特許4374237号)、特開昭62−13430号(米国特許4645816号)、特開平8−53528号(EP0676403)、特開平10−204144号(EP0831108)、特表2003−508561(米国特許6197912号)、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平11−100427号、特開2000−169544号、特開2000−169545号、特開2002−212415号、特許第3313360号、米国特許4067844号、米国特許3711445号、特開2001−323040号等が挙げられる。
また、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に一般式(9):
O=C=N−R10−SiR 3−a (9)
(R10、R、X、aは前記に同じ)で示される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物とを反応させることにより製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特開平11−279249号(米国特許5990257号)、特開2000−119365号(米国特許6046270号)、特開昭58−29818号(米国特許4345053号)、特開平3−47825号(米国特許5068304号)、特開平11−60724号、特開2002−155145号、特開2002−249538号、WO03/018658、WO03/059981等が挙げられる。
末端に活性水素含有基を有する有機重合体としては、末端にヒドロキシ基を有するオキシアルキレン重合体(ポリエーテルポリオール)、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、末端にヒドロキシ基を有する飽和炭化水素系重合体(ポリオレフィンポリオール)、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、および、ポリオレフィンポリオールは、得られる有機重合体のガラス転移温度が比較的低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。特に、ポリエーテルポリオールは、得られる有機重合体の粘度が低く作業性が良好であり、深部硬化性および接着性が良好である為に特に好ましい。また、ポリアクリルポリオールおよび飽和炭化水素系重合体は、得られる有機重合体の硬化物の耐候性、耐熱性が良好である為により好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、いかなる製造方法において製造されたものでも使用することが出来るが、全分子平均で分子末端当り少なくとも0.7個のヒドロキシ基を末端に有するものが好ましい。具体的には、従来のアルカリ金属触媒を使用して製造したオキシアルキレン重合体や、複合金属シアン化物錯体やセシウムの存在下、少なくとも2つのヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物などの開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて製造されるオキシアルキレン重合体などが挙げられる。
上記の各重合法の中でも、複合金属シアン化物錯体を使用する重合法は、より低不飽和度で、Mw/Mnが狭く、より低粘度でかつ、高耐酸性、高耐候性のオキシアルキレン重合体を得ることが可能であるため好ましい。
前記ポリアクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を骨格とし、かつ、分子内にヒドロキシ基を有するポリオールを挙げることができる。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001−207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温、高圧で連続塊状重合によって得た、いわゆるSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。具体的には、東亞合成(株)製のアルフォンUH−2000等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
一般式(8)のケイ素化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N−フェニル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等のヒドロキシ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;等が挙げられる。また、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平10−204144号(EP0831108)、特開2000−169544号、特開2000−169545号に記載されている様に、各種のα,β−不飽和カルボニル化合物と一級アミノ基含有シランとのMichael付加反応物、または、各種の(メタ)アクリロイル基含有シランと一級アミノ基含有化合物とのMichael付加反応物もまた、一般式(8)のケイ素化合物として用いることができる。
一般式(9)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルメチルイソシアネート等が挙げられる。また、特開2000−119365号(米国特許6046270号)に記載されている様に、一般式(8)のケイ素化合物と、過剰の前記ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる化合物もまた、一般式(9)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物として用いることができる。
上記の方法で得られる有機重合体は、主鎖骨格中に一般式(10):
−NR10−C(=O)− (10)
(R10は水素原子または置換あるいは非置換の有機基を表す)で表される基を有する。この構造は極性が比較的高いため、硬化物の強度や基材への接着性が高くなる傾向にあり望ましい。
有機重合体(A)の配合部数は、有機重合体(B)100重量部に対して、20〜250重量部であることが好ましく、好ましくは25〜150重量部、さらに好ましくは30〜80重量部である。(A)成分の配合部数が、(B)成分に対して20重量部未満では、十分な復元性が得られないため好ましくない。一方、250重量部を越えると、ゲル分率の低下が起こり、それに伴い汚染性の悪化が生じるため建築用シーリング材として適さない傾向にある。
本発明の硬化性組成物では、シラノール縮合触媒を使用する。シラノール縮合触媒の代表として4価の錫化合物(C)が挙げられる。4価の錫化合物の具体例としては、ジメチル錫ジアセテート、ジメチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)等の4価の錫化合物;であるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、毒性が低いとされるジオクチル錫系化合物が好ましく、更に硬化性の観点からジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)が好ましく、作業性の観点からジオクチル錫ジラウレートが好ましい。
上記に示した4価の錫化合物以外の、硬化触媒も使用することができる。その具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)などのチタン化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類が挙げられる。また、カルボン酸および/またはカルボン酸金属塩を硬化触媒として使用することもできる。また、WO2008/078654号公報に記載されているようなアミジン化合物も使用できる。アミジン化合物の例として、1−(o−トリル)ビグアニド、1−フェニルグアニジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記硬化触媒の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.1から10重量部、好ましくは0.2から8重量部、更に好ましくは0.3から5重量部である。0.1重量部未満では適切な硬化性が発現しなくなり、10重量部を越えると硬化が速すぎて、適切な硬化物を形成できず、所望の性能が十分発揮できなくなるためである。
本発明では、可塑剤を使用してもよい。可塑剤の例としては、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸ジイソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類をあげることができる。
また、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、フタル酸ビスブチルベンジル等のフタル酸エステル類も使用することはできるが、人体や環境への影響を考慮すると、これらの使用量は少ない方が好ましく、使用しないことが望ましい。また、上記のフタル酸エステル類を水添加して得られる、シクロヘキサンジカルボキシレートは、安全性を憂慮せずに使用することができる。この可塑剤は、BASF社からHexamoll DINCHという商品名で販売されており、容易に入手することができる。
上記で挙げたような比較的低分子量の可塑剤は、硬化性組成物を施工した周辺の基材を汚染することがあるため、使用量は少ない方が望ましい。特に多孔質の石材が汚染が出易い傾向にあり、御影石や大理石、サイディングボード等は可塑剤の染み出しが生じ易く、美観を損なうことがある。このような美観の低下を抑えるためには、フタル酸エステル系可塑剤のような低分子量可塑剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して200重量部以下、好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下である。汚染性を生じない硬化性組成物を得たい場合は、低分子量可塑剤は全く使用しないことが最も望ましい。
硬化性組成物上に塗料を塗布する場合は、汚染性を低下させない範囲でフタル酸エステル系可塑剤を併用することが好ましい。併用することで、塗膜の密着性が向上し、剥がれの問題が改善できるためである。具体的には、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して1から20重量部が好ましく、2から15重量部がさらに好ましく、3から10重量部が最も好ましい。
また、本硬化性組成物には、高分子可塑剤を使用することができる。高分子可塑剤を使用すると重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持する。更に、該硬化物にアルキド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良できる。高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;分子量500以上、更には1,000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールあるいはこれらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの高分子可塑剤のうちで、(A)成分および(B)成分の重合体と相溶するものが好ましい。この点から、ポリエーテル類やビニル系重合体が好ましい。また、ポリエーテル類を可塑剤として使用すると、表面硬化性および深部硬化性が改善され、貯蔵後の硬化遅延も起こらないことから好ましく、中でもポリプロピレングリコールがより好ましい。また、相溶性および耐候性、耐熱性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でもアクリル系重合体および/またはメタクリル系重合体が好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステルなどアクリル系重合体が更に好ましい。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法が更に好ましい。また、特開2001−207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温、高圧で連続塊状重合によって得た、いわゆるSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。この可塑剤は、東亞合成株式会社からアルフォンという商品名で販売されている。
高分子可塑剤の数平均分子量は、好ましくは500から15,000であるが、より好ましくは800から10,000であり、更に好ましくは1,000から8,000、特に好ましくは1,000から5,000である。最も好ましくは1,000から3,000である。分子量が低すぎると熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できず、アルキド塗装性が改善できない。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が悪くなる。高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.80未満が好ましい。1.70以下がより好ましく、1.60以下がなお好ましく、1.50以下が更に好ましく、1.40以下が特に好ましく、1.30以下が最も好ましい。
数平均分子量はビニル系重合体の場合はGPC法で、ポリエーテル系重合体の場合は末端基分析法で測定される。また、分子量分布(Mw/Mn)はGPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また低分子可塑剤と高分子可塑剤を併用してもよい。なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
高分子量可塑剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して5から150重量部、好ましくは10から120重量部、更に好ましくは20から100重量部である。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、150重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する。
また、特開2004−51701号公報または特開2004−66749号公報などに記載の熱膨張性微粒中空体を使用することができる。熱膨張性微粒中空体とは、炭素原子数1から5の炭化水素などの低沸点化合物を高分子外殻材(塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、または塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体)で球状に包み込んだプラスチック球体である。本組成物を用いた接着部分を加熱することによって、熱膨張性微粒中空体の殻内のガス圧が増し、高分子外殻材が軟化することで体積が劇的に膨張し、接着界面を剥離させる役割を果たす。熱膨張性微粒中空体の添加により、不要時には加熱するだけで簡単に材料の破壊を伴わずに剥離でき、且つ有機溶剤を一切用いないで加熱剥離可能な接着性組成物が得られる。
本発明の硬化性組成物には、アミノシランを添加することができる。アミノシランとは、分子中に反応性ケイ素基とアミノ基を有する化合物であり、通常、接着付与剤と称される。これを使用することで、各種被着体、すなわち、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタルなどの無機基材や、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの有機基材に用いた場合、ノンプライマー条件またはプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示す。ノンプライマー条件下で使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。他にも物性調整剤、無機充填材の分散性改良剤等として機能し得る化合物である。
アミノシランの反応性ケイ素基の具体的な例としては、既に例示した基を挙げることができるが、メトキシ基、エトキシ基等が加水分解速度の点から好ましい。加水分解性基の個数は、2個以上、特に3個以上が好ましい。アミノシランの具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等のアミノ基含有シラン類;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン型シラン類を挙げることができる。
これらのうち良好な接着性を確保するためには、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。アミノシランは1種類のみ使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランは他のアミノシランに比べて刺激性があることが指摘されており、このアミノシランを減量する代わりに、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを併用することで刺激性を緩和させることができる。
アミノシランの配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して1〜20重量部程度が好ましく、更に2〜10重量部がより好ましい。アミノシランの配合量が1重量部未満であると十分な接着性が得られない場合がある。一方、配合量が20重量部を越えると、硬化物がもろくなって十分な強度が得られなくなり、また硬化速度が遅くなる場合がある。
本発明の組成物には、アミノシラン以外の接着付与剤を使用することができる。
アミノシラン以外の接着付与剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等を挙げることができる。また、上記シラン類を部分的に縮合した縮合体も使用できる。さらに、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
本発明に用いるシランカップリング剤は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲で使用される。特に、0.5〜10重量部の範囲で使用するのが好ましい。
本発明の硬化性組成物に添加されるシランカップリング剤の効果は、各種被着体、すなわち、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタルなどの無機基材や、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの有機基材に用いた場合、ノンプライマー条件またはプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示す。ノンプライマー条件下で使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。シランカップリング剤以外の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。これら接着性付与剤は添加することにより被着体に対する接着性を改善することができる。
これらのうち、良好な接着性を確保するためには、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
接着性付与剤の使用量としては、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対し、0.01から20重量部程度が好ましく、0.1から10重量部程度がより好ましく、1から重量7部程度が特に好ましい。接着性付与剤の配合量がこの範囲を下回ると、接着性が十分に得られない場合がある。一方、接着性付与剤の配合量がこの範囲を上回ると実用的な深部硬化性が得られない場合がある。
接着性付与剤として、上記の接着性付与剤以外にも、接着性付与剤として、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が使用できる。上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。しかしながら、エポキシ樹脂は添加量に応じて触媒活性を低下させる場合があるため、本発明の硬化性組成物には、エポキシ樹脂の添加量は少ないことが好ましい。エポキシ樹脂の使用量としては、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、実質的に含有していないことが特に好ましい。
本発明で得られる組成物には酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できるが、特にヒンダードフェノール系が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上いずれもBASFジャパン株式会社製);MARK LA−57,MARK LA−62,MARK LA−67,MARK LA−63,MARK LA−68(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS−770,サノールLS−765,サノールLS−292,サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上いずれも三共ライフテック株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。
本発明で得られる組成物には光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。光安定剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも記載されている。
本発明で得られる組成物に光硬化性物質を併用する場合、特に不飽和アクリル系化合物を用いる場合、特開平5−70531号公報に記載されているようにヒンダードアミン系光安定剤として3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが組成物の保存安定性改良のために好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としてはチヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB119FL(以上いずれもBASFジャパン株式会社製);MARK LA−57,LA−62,LA−67,LA−63(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS−765,LS−292,LS−2626,LS−1114,LS−744(以上いずれもBASFジャパン株式会社製)などの光安定剤が例示できる。
本発明で得られる組成物には紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜3重量部である。フェノール系やヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用して使用するのが好ましい。
本発明の組成物には充填剤を添加することができる。充填剤としては、フュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末など樹脂粉末の如き充填剤;ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填剤等が挙げられる。充填剤を使用する場合、その使用量は(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して1から250重量部、好ましくは10から200重量部である。
これら充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤が好ましく、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対し、1から200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で破断伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填剤を、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、5から200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。なお、一般的に炭酸カルシウムは、比表面積の値が大きいほど硬化物の破断強度、破断伸び、接着性の改善効果は大きくなる。もちろんこれら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。炭酸カルシウムを使用する場合、表面処理微細炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムなどの粒径が大きい炭酸カルシウムを併用することが望ましい。表面処理微細炭酸カルシウムの粒径は0.5μm以下が好ましく、表面処理は脂肪酸や脂肪酸塩で処理されていることが好ましい。また、粒径が大きい炭酸カルシウムの粒径は1μm以上が好ましく表面処理されていないものを用いることができる。
組成物の作業性(キレなど)向上や硬化物表面を艶消し状にするために、有機バルーン、無機バルーンの添加が好ましい。これらの充填剤は表面処理することもでき、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用することもできる。作業性(キレなど)向上には、バルーンの粒径は0.1mm以下が好ましい。硬化物表面を艶消し状にするためには、5から300μmが好ましい。
本発明の組成物は硬化物の耐薬品性が良好であるなどの理由により、サイディングボード、特に窯業系サイディングボード、など住宅の外壁の目地や外壁タイルの接着剤、外壁タイルの接着剤であって目地に接着剤がそのまま残るものなどに好適に用いられるが、外壁の意匠とシーリング材の意匠が調和することが望ましい。特に、外壁としてスパッタ塗装、着色骨材などの混入により高級感のある外壁が用いられるようになっている。本発明の組成物に直径が0.1mm以上、好ましくは0.1から5.0mm程度の鱗片状または粒状の物質が配合されていると、硬化物はこのような高級感のある外壁と調和し、耐薬品性が優れるためこの硬化物の外観は長期にわたって持続するすぐれた組成物となる。粒状の物質を用いると砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感がある表面となり、鱗片状物質を用いると鱗片状に起因する凹凸状の表面となる。
鱗片状または粒状の物質の好ましい直径、配合量、材料などは特開平9−53063号公報に記載されているように次の通りである。
直径は0.1mm以上、好ましくは0.1から5.0mm程度であり、外壁の材質、模様等に合わせて適当な大きさのものが使用される。0.2mmから5.0mm程度や0.5mmから5.0mm程度のものも使用可能である。鱗片状の物質の場合には、厚さが直径の1/10から1/5程度の薄さ(0.01から1.00mm程度)とされる。鱗片状または粒状の物質は、シーリング主材内に予め混合されてシーリング材として施工現場に運搬されるか、使用に際して、施工現場にてシーリング主材内に混合される。
鱗片状または粒状の物質は、シーリング材組成物や接着剤組成物等の組成物100重量部に対して、1から200重量部程度が配合される。配合量は、個々の鱗片状または粒状の物質の大きさ、外壁の材質、模様等によって、適当に選定される。
鱗片状または粒状の物質としては、ケイ砂、マイカ等の天然物、合成ゴム、合成樹脂、アルミナ等の無機物が使用される。目地部に充填した際の意匠性を高めるために、外壁の材質、模様等に合わせて、適当な色に着色される。
また、同様の目的でバルーン(好ましくは平均粒径が0.1mm以上のもの)を用いれば砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感がある表面になり、かつ軽量化を図ることができる。バルーンの好ましい直径、配合量、材料などは特開平10−251618号公報に記載されているように次の通りである。
バルーンは、球状体充填剤で内部が中空のものである。このバルーンの材料としては、ガラス、シラス、シリカなどの無機系の材料、および、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サランなどの有機系の材料があげられるが、これらのみに限定されるものではなく、無機系の材料と有機系の材料とを複合させたり、また、積層して複数層を形成させたりすることもできる。無機系の、あるいは有機系の、またはこれらを複合させるなどしたバルーンを使用することができる。また、使用するバルーンは、同一のバルーンを使用しても、あるいは異種の材料のバルーンを複数種類混合して使用しても差し支えがない。さらに、バルーンは、その表面を加工ないしコーティングしたものを使用することもできるし、またその表面を各種の表面処理剤で処理したものを使用することもできる。例えば、有機系のバルーンを炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどでコーティングしたり、無機系のバルーンを接着性付与剤で表面処理することなどが挙げられる。
砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感がある表面を得るには、バルーンは粒径が0.1mm以上であることが好ましい。0.2mmから5.0mm程度や0.5mmから5.0mm程度のものも使用可能である。0.1mm未満のものでは、多量に配合しても組成物の粘度を上昇させるだけで、ざらつき感が発揮されない場合がある。バルーンの配合量は目的とする砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感の程度によって容易に定めることができる。通常、粒径が0.1mm以上のものを組成物中の容積濃度で5から25vol%の範囲となる割合で配合することが望ましい。バルーンの容積濃度が5vol%未満であるとざらつき感がなく、また25vol%を超えると、シーリング材や接着剤の粘度が高くなり作業性が悪く、硬化物のモジュラスも高くなり、シーリング材や接着剤の基本性能が損なわれる傾向にある。シーリング材の基本性能とのバランスが特に好ましい容積濃度は8から22vol%である。
バルーンを用いる際には特開2000−154368号公報に記載されているようなスリップ防止剤、特開2001−164237号公報に記載されているような硬化物の表面を凹凸状態に加えて艶消し状態にするためのアミン化合物、特に融点35℃以上の第1級および/または第2級アミンを添加することができる。
バルーンの具体例は特開平2−129262号、特開平4−8788号、特開平4−173867号、特開平5−1225号、特開平7−113073号、特開平9−53063号、特開平10−251618号、特開2000−154368号、特開2001−164237号、WO97/05201号などの各公報に記載されている。
本発明の組成物がシーリング材硬化物粒子を含む場合も硬化物は表面に凹凸を形成し意匠性を向上させることができる。シーリング材硬化物粒子の好ましい直径、配合量、材料などは特開2001−115142号公報に記載されているように次の通りである。直径は0.1mmから1mm、更には0.2から0.5mm程度が好ましい。配合量は硬化性組成物中に5から100重量%、更には20〜50重量%が好ましい。材料は、ウレタン樹脂、シリコーン、変成シリコーン、多硫化ゴム等を挙げることができシーリング材に用いられるものであれば限定されないが、変成シリコーン系のシーリング材が好ましい。
また、本発明の組成物には、シリケートを用いることができる。このシリケートは、架橋剤として作用し、本発明の(A)成分および(B)成分である有機重合体の復元性、耐久性、および、耐クリープ性を改善する機能を有する。また更に、接着性および耐水接着性、高温高湿条件での接着耐久性を改善する効果も有する。シリケートとしてはテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物が使用できる。シリケートを使用する場合、その使用量は(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.1から20重量部、好ましくは0.5から10重量部である。
シリケートの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)、および、それらの部分加水分解縮合物があげられる。
テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、本発明の復元性、耐久性、および、耐クリープ性の改善効果がテトラアルコキシシランよりも大きい為により好ましい。
前記テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物としては、例えば、通常の方法でテトラアルコキシシランに水を添加し、部分加水分解させて縮合させたものがあげられる。また、オルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物は、市販のものを用いることができる。このような縮合物としては、例えば、メチルシリケート51、エチルシリケート40(いずれもコルコート(株)製)等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本発明の組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、逆に硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特開平5−117521号公報に記載されている化合物をあげることができる。また、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等のアルキルアルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノール等のRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物、特開平11−241029号公報に記載されているトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトール等のヒドロキシ基数が3以上の多価アルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物をあげることができる。
また、特開平7−258534号公報に記載されているようなオキシプロピレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物もあげることができる。更に特開平6−279693号公報に記載されている架橋可能な反応性ケイ素含有基と加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基を有する重合体を使用することもできる。
物性調整剤は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、0.1から20重量部、好ましくは0.5から10重量部の範囲で使用される。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて垂れを防止し、作業性を良くするためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加しても良い。垂れ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。また、特開平11−349916号公報に記載されているような粒子径10から500μmのゴム粉末や、特開2003−155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な組成物が得られる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。チクソ性付与剤は(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、0.1から20重量部の範囲で使用される。
本発明の組成物においては1分子中にエポキシ基を含有する化合物を使用できる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環式エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物およびそれらの混合物等が例示できる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビス(2−エチルヘキシル)−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカーボキシレート(E−PS)、エポキシオクチルステアレ−ト、エポキシブチルステアレ−ト等があげられる。これらのなかではE−PSが特に好ましい。エポキシ化合物は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.5から50重量部の範囲で使用するのがよい。
本発明の組成物には光硬化性物質を使用できる。光硬化性物質を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや耐候性を改善できる。光硬化性物質とは、光の作用によってかなり短時間に分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物等多くのものが知られており、市販の任意のものを採用し得る。代表的なものとしては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が使用できる。不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系またはメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー或いはそれ等の混合物であって、プロピレン(またはブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の単量体または分子量10,000以下のオリゴエステルが例示される。具体的には、例えば特殊アクリレート(2官能)のアロニックスM−210,アロニックスM−215,アロニックスM−220,アロニックスM−233,アロニックスM−240,アロニックスM−245;(3官能)のアロニックスM−305,アロニックスM−309,アロニックスM−310,アロニックスM−315,アロニックスM−320,アロニックスM−325,および(多官能)のアロニックスM−400などが例示できるが、特にアクリル官能基を含有する化合物が好ましく、また1分子中に平均して3個以上の同官能基を含有する化合物が好ましい。(以上アロニックスはいずれも東亞合成株式会社の製品である。)。
ポリケイ皮酸ビニル類としては、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂でありポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル誘導体が例示される。アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はジアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液の他、「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、第93頁から、第106頁から、第117頁から)に詳細な例示があり、これらを単独または混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類などの促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。光硬化性物質は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.1から20重量部、好ましくは0.5から10重量部の範囲で使用するのがよく、0.1重量部以下では耐候性を高める効果はなく、20重量部以上では硬化物が硬くなりすぎて、ヒビ割れを生じる傾向がある。
本発明の組成物には酸素硬化性物質を使用することができる。酸素硬化性物質には空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示でき、空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成し表面のべたつきや硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止するなどの作用をする。酸素硬化性物質の具体例には、キリ油、アマニ油などで代表される乾性油や、該化合物を変性してえられる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどのジエン系化合物を重合または共重合させてえられる1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5からC8ジエンの重合体などの液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させてえられるNBR、SBRなどの液状共重合体や、さらにはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうちではキリ油や液状ジエン系重合体がとくに好ましい。又、酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果が高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩や、アミン化合物等が例示される。酸素硬化性物質の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.1から20重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.5から10重量部である。前記使用量が0.1重量部未満になると汚染性の改善が充分でなくなり、20重量部をこえると硬化物の引張り特性などが損なわれる傾向が生ずる。特開平3−160053号公報に記載されているように酸素硬化性物質は光硬化性物質と併用して使用するのがよい。
本発明の硬化性組成物には、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および、熱膨張性黒鉛などの難燃剤を添加することができる。上記難燃剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
難燃剤は(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、5から200重量部、好ましくは10から100重量部の範囲で使用される。
本発明の組成物には、組成物の粘度を低減し、チクソ性を高め、作業性を改善する目的で、溶剤を使用することができる。溶剤としては、特に限定は無く、各種の化合物を使用することができる。具体例としては、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、石油系溶媒等の炭化水素系溶剤、トリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤が例示される。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
但し、溶剤の配合量が多い場合には、人体への毒性が高くなる場合があり、また、硬化物の体積収縮などが見られる場合がある。従って、溶剤の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、3重量部以下であることが好ましく、1重量部以下であることがより好ましく、溶剤を実質的に含まないことが最も好ましい。
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物または硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防蟻剤、防かび剤などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本明細書にあげた添加物の具体例以外の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開2001−72854号の各公報などに記載されている。
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。作業性の点からは、1成分型が好ましい。
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。前記硬化性組成物が2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体を含有する主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合剤中には若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法または減圧脱水法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、生石灰、酸化マグネシウムなどを使用した脱水法が好適である。かかる脱水乾燥法に加えて、n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加し、水と反応させて脱水してもよい。また、3−エチル−2−メチル−2−(3−メチルブチル)−1,3−オキサゾリジンなどのオキサゾリジン化合物を配合して水と反応させて脱水してもよい。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。アルコキシシラン化合物やオキサゾリジン化合物、および、イソシアネート化合物の添加により、貯蔵安定性が向上する。
脱水剤、特にビニルトリメトキシシランなどの水と反応し得るケイ素化合物の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、0.1から20重量部、好ましくは0.5から10重量部の範囲が好ましい。
本発明の硬化性組成物の調製法には特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、ミキサーやロールやニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が採用されうる。
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状弾性を有する固体へと硬化する。
本発明の硬化性組成物は、粘着剤、建造物・船舶・自動車・道路などのシーリング材、接着剤、型取剤、防振材、制振材、防音材、発泡材料、塗料、吹付材などに使用できる。本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、柔軟性および接着性に優れることから、これらの中でも、シーリング材または接着剤として用いることがより好ましい。
また、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、弾性接着剤、コンタクト型接着剤、スプレー型シール材、クラック補修材、タイル張り用接着剤、粉体塗料、注型材料、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療機器シール材、食品包装材、サイディングボード等の外装材の目地用シーリング材、コーティング材、プライマー、電磁波遮蔽用導電性材料、熱伝導性材料、ホットメルト材料、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、各種成形材料、および、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される液状シール剤等の様々な用途に利用可能である。更に、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、樹脂成形物などの如き広範囲の基質に密着しうるので、種々のタイプの密封組成物および接着組成物としても使用可能である。また、本発明の硬化性組成物は、内装パネル用接着剤、外装パネル用接着剤、タイル張り用接着剤、石材張り用接着剤、天井仕上げ用接着剤、床仕上げ用接着剤、壁仕上げ用接着剤、車両パネル用接着剤、電気・電子・精密機器組立用接着剤、ダイレクトグレージング用シーリング材、複層ガラス用シーリング材、SSG工法用シーリング材、または、建築物のワーキングジョイント用シーリング材、としても使用可能である。
つぎに実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(合成例1)
n−ブタノールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約7,500(送液システムとして東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK−GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)のポリプロピレンオキシド(ポリマーP−1)を得た。続いて、この水酸基を有するポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。
得られた未精製の片末端にのみアリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、片末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約7,500のポリプロピレンオキシド(ポリマーP−2)を得た。
得られたポリマーP−2の100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、トリエトキシシラン3.3重量部と90℃で2時間反応させ、分子中に平均約0.8個のトリエトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーA−1)を得た。
(合成例2)
数平均分子量14,600(上記と同じ方法にて測定)のポリオキシプロピレングリコールとn−ブタノールをそれぞれ重量比で10:1の割合で混合したものを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量7,700のポリプロピレンオキシドの混合物(数平均分子量6,500のポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテルと、数平均分子量18,000のポリオキシプロピレングリコール(重量比は9:1))。続いて、この水酸基を有するポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。
得られた未精製のアリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、片末端にのみアリル基が導入された成分が主成分であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約7,700であるポリプロピレンオキシドの混合物を得た。
得られたアリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、トリエトキシシラン3.3重量部と90℃で2時間反応させ、分子中に平均約0.9個のトリエトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーA−2)を得た。
(合成例3)
合成例1で得られた片末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約7,500のポリプロピレンオキシド(ポリマーP−2)100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン2.1重量部と90℃で2時間反応させ、分子中に平均約0.8個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーA−3)を得た。
(合成例4)
合成例1で得られた分子中に平均約0.8個のトリエトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーA−1)100重量部に対し、0.5wt%の塩酸のメタノール溶液0.24重量%を触媒として使用し、20重量部のメタノールを添加して70℃で2時間混合攪拌して、末端のトリエトキシシリル基をトリメトキシシリル基に変換し、エタノールを減圧脱揮することにより、分子中に平均約0.8個のトリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーA−4)を得た。
(合成例5)
ポリプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約28,500(上記と同じ方法にて測定)のポリプロピレンオキシドを得た。続いて、この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。
得られた未精製のアリル末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約28,500のポリプロピレンオキシド(ポリマーP−3)を得た。
得られたアリル基末端ポリプロピレンオキシド(ポリマーP−3)100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.0重量部と90℃で2時間反応させ、末端に平均約1.6個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーB−1)を得た。
(合成例6)
フラスコに、n−ブチルアクリレート348g、メチルメタクリレート78g、ステアリルメタクリレート75g、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン17g、イソブタノール38gを入れ、さらに重合開始剤としてV−59(和光純薬(株)製)1gを溶かした混合溶液を作成した。攪拌機、温度計、窒素導入口を供えたセパラブルフラスコにイソブタノール88gを入れて90℃に加熱し、窒素をバブリングしてフラスコ系内を窒素で置換した後、攪拌しながら上記のモノマー混合液を4時間かけて滴下し、さらに2時間、後重合を行った。以上により、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約8000(上記と同じ方法にて測定)であり、固形分濃度78%のイソブタノール溶液で、末端に平均約1.0個のトリエトキシシリル基を有するポリアクリル系重合体(ポリマーA−5)を得た。
(合成例7)
フラスコに、n−ブチルアクリレート348g、メチルメタクリレート78g、ステアリルメタクリレート75g、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン12g、イソブタノール38gを入れ、さらに重合開始剤としてV−59(和光純薬(株)製)1gを溶かした混合溶液を作成した。攪拌機、温度計、窒素導入口を供えたセパラブルフラスコにイソブタノール88gを入れて90℃に加熱し、窒素をバブリングしてフラスコ系内を窒素で置換した後、攪拌しながら上記のモノマー混合液を4時間かけて滴下し、さらに2時間、後重合を行った。以上により、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約8000(上記と同じ方法にて測定)であり、固形分濃度78%のイソブタノール溶液で、末端に平均約1.0個のメチルジメトキシシリル基を有するポリアクリル系重合体(ポリマーA−6)を得た。
(合成例8)
フラスコに、n−ブチルアクリレート348g、メチルメタクリレート78g、ステアリルメタクリレート75g、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン13g、イソブタノール38gを入れ、さらに重合開始剤としてV−59(和光純薬(株)製)1gを溶かした混合溶液を作成した。攪拌機、温度計、窒素導入口を供えたセパラブルフラスコにイソブタノール88gを入れて90℃に加熱し、窒素をバブリングしてフラスコ系内を窒素で置換した後、攪拌しながら上記のモノマー混合液を4時間かけて滴下し、さらに2時間、後重合を行った。以上により、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約8000(上記と同じ方法にて測定)であり、固形分濃度78%のイソブタノール溶液で、末端に平均約1.0個のトリメトキシシリル基を有するポリアクリル系重合体(ポリマーA−7)を得た。
(合成例9)
合成例5で得られたアリル基末端ポリプロピレンオキシド(ポリマーP−3)100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、トリエトキシシラン1.2重量部と90℃で2時間反応させ、末端に平均約1.3個のトリエトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーA−8)を得た。
(合成例10)
数平均分子量14,600(上記と同じ方法にて測定)のポリオキシプロピレングリコールとn−ブタノールをそれぞれ重量比で14:1の割合で混合したものを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量12,000のポリプロピレンオキシドの混合物(数平均分子量10,000のポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテルと、数平均分子量23,000のポリオキシプロピレングリコール(重量比は9:1))。続いて、この水酸基を有するポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。
得られた未精製のアリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、片末端にのみアリル基が導入された成分が主成分であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約12,000であるポリプロピレンオキシドの混合物を得た。
得られたアリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、トリエトキシシラン2.2重量部と90℃で2時間反応させ、分子中に平均約0.9個のトリエトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーA−9)を得た。
(合成例11)
数平均分子量3,000(上記と同じ方法にて測定)のポリオキシプロピレングリコールにNaOMeのメタノール溶液を添加し、加熱減圧下メタノールを留去し、ポリプロピレングリコールの末端をナトリウムアルコキシドへ変換した後、塩化メチレンを添加して分子量ジャンプ反応を行った後、塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。
得られた未精製のアリル末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約13,800のポリプロピレンオキシドを得た。
得られたアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.5重量部と90℃で2時間反応させ、末端に平均約1.3個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(ポリマーB−2)を得た。
(実施例1)
合成例5で得られたポリマーB−1を70重量部、合成例1で得られたポリマーA−1を30重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR)120重量部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR−820)20重量部、フタル酸エステル系可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)55重量部、タレ防止剤(楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500)2重量部を混合して充分混練りした後、3本ペイントロールに3回通して分散させ、23℃50%RH条件下に一晩置いたものを主剤とした。この主剤の粘度を測定した後、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A−171)2重量部、接着性付与剤としてγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A−1120)3重量部、硬化触媒としてジオクチル錫ジラウレート(日東化成工業(株)製、商品名:ネオスタンU−810)2重量部を加えて混練し、硬化性組成物を得た。この硬化性組成物の、ダンベル引張物性、復元性、ゲル分率を下記の方法に従って測定した。
(実施例2〜3)
実施例1におけるポリマーA−1、ポリマーB−1の重量部数を表1に示す重量部数に変更した以外は実施例1と同様の方法で硬化性組成物を得て、同様の評価を行った。
(実施例4)(比較例1〜4)
実施例1におけるポリマーA−1の代わりに、表1に示すポリマーを用いること以外は、実施例1と同様の方法で硬化性組成物を得て、同様の評価を行った。
Figure 0005907708
(実施例5)
合成例5で得られたポリマーB−1と、合成例6で得られたポリマーA−5のイソブタノール溶液を、固形分比(重量比)が80/20の割合になるよう計量して混合し、加熱減圧下でイソブタノールを除去することにより、透明で粘稠な液体を得た。得られた混合ポリマー100重量部に対して、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR)120重量部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR−820)20重量部、フタル酸エステル系可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)55重量部、タレ防止剤(楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500)2重量部を混合して充分混練りした後、3本ペイントロールに3回通して分散させ、23℃50%RH条件下に一晩置いたものを主剤とした。この主剤の粘度を測定した後、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A−171)2重量部、接着性付与剤としてγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A−1120)3重量部、硬化触媒としてジオクチル錫ジラウレート(日東化成工業(株)製、商品名:ネオスタンU−810)2重量部を加えて混練し、硬化性組成物を得た。この硬化性組成物の、ダンベル引張物性、復元性、耐候性を下記の方法に従って測定した。
(比較例5、6)
実施例5におけるポリマーA−1の代わりに、表2に示すポリマーを用いること以外は、実施例5と同様の方法で硬化性組成物を得て、同様の評価を行った。
Figure 0005907708
(実施例6)
プラネタリーミキサーにポリマー100重量部に対して、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR)120重量部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR−820)20重量部、を投入し、減圧下120℃で2時間乾燥を行った。そこへ、合成例11で得られたポリマーB−2を80重量部、合成例9で得られたポリマーA−8を20重量部、フタル酸エステル系可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)55重量部、タレ防止剤(楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500)2重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、商品名「チヌビン326」)1重量部、光安定剤(三共ライフテック株式会社製、商品名「サノールLS770」)1重量部を投入し、減圧下120℃で2時間攪拌を行った。室温まで冷却後、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A−171)2重量部、接着性付与剤としてγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−603)3重量部、硬化触媒としてジオクチル錫ジラウレート(日東化成工業(株)製、商品名:ネオスタンU−810)2重量部を投入し、さらに室温で30分間撹拌した後、カートリッジに充填することにより、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物の粘度、ダンベル引張物性、復元性を下記の方法に従って測定した。
(比較例7)
実施例6におけるポリマーA−8は用いず、B−2を100重量部用いること以外は、実施例6と同様の方法で硬化性組成物を得て、同様の評価を行った。
Figure 0005907708
(実施例7、8)
実施例6におけるポリマーA−8を20重量部用いる代わりに、ポリマーA−9を30重量部用い、B−2を70重量部用いること以外は、実施例6と同様の方法で硬化性組成物を得て、硬化性組成物の粘度、ダンベル引張物性、復元性、貯蔵安定性、耐久性を下記の方法に従って測定した。表4のU−220Hは、日東化成工業(株)製のジブチルスズジアセテートである。
(比較例8、9)
表4に示すポリマー、硬化触媒を用いること以外は、実施例7と同様の方法で硬化性組成物を得て、同様の評価を行った。
Figure 0005907708
以下に、各評価方法について説明する。
(主剤の粘度)
100ml容のカップに泡が入らないように主剤を充填した。BS型粘度計(トキメック社製)とローターNo.7を用いて、23℃50%RH条件下で各組成物の1rpm、2rpm、10rpmでの粘度を測定した。
(引張物性)
上記硬化性組成物を厚さ3mmのシート状試験体にして23℃、50%RH条件に3日間、さらに50℃乾燥機に4日間入れることで完全に硬化させた。3号ダンベル型に打ち抜いた後、島津(株)製オートグラフを用いて引張速度200mm/分で引張試験を行い、50%モジュラス、100%モジュラス、破断時の強度、破断時の伸び(それぞれ、M50、M100、TB、EBと示す)を測定した。
(復元性)
上記の引張物性と同様の作成方法で得た3号ダンベル型試験体について、100%伸張して23℃50%RH条件で24時間保持した。その後、伸張を開放し、1時間後と24時間後に復元した程度を測定した。完全に元の状態に戻った場合は復元性100%、全く復元しなかった場合は0%となる。
(ゲル分率)
上記引張物性で用いた厚さ3mmのシート状試験体の一部を細かく裁断し、不溶分が流出しないように200メッシュ金網で包み込んだ。これを十分量のアセトンに3日浸漬した後、アセトンから取り出してから不溶分を105℃で2時間乾燥した。その乾燥した不溶分の重量を初期重量で割った値の百分率をゲル分率とした。
(耐候性)
上記引張物性で用いた厚さ3mmのシート状試験体の一部1.5cm角に切り取ったものをSWOM耐候性試験機(スガ試験機(株)製、サンシャインウェザーメーターS80)にて840時間暴露した後取り出し、硬化物表面を観察した。表面クラックなどの異常が観察されたものを×、異常が観察されなかったものを○とした。
(貯蔵安定性(硬化性))
23℃、50%RH条件下にて、上記硬化性組成物を厚みが約3mmになるようにヘラを用いて伸ばし、ミクロスパテュラを用いて経時で硬化性組成物の表面に軽く触れ、組成物がミクロスパテュラにつかなくなるまでの皮張り時間を測定した(貯蔵前の硬化性)。次に、硬化性組成物を50℃で8週間保存した後、23℃50%の恒温恒湿条件下に1日間おいた後に、前記と同様の方法で皮張り時間を測定した(貯蔵後の硬化性)。また、貯蔵後の硬化性と貯蔵前の硬化性との変化率をもとめた。
(耐久性)
23℃、50%RH条件下にて、上記硬化性組成物を目地幅10mm、厚さ8mm、長さ50mmとなるようにアルミ基材間へ充填し、表面がU字になるようにかきとった。23℃、50%RH条件で1週間養生し、その後、幅8mm、厚み2mmのアルミ板のおさえを硬化物へ裏面に接着し、3日〜4日23℃で水へつけた後、水から取り出したものを±15%の伸縮が1日1回起こる程度の速度で50℃1週間疲労試験を行った。続いて、水浸漬と疲労試験をもう一度行い、硬化物の表面を観察し、盛り上がったり、筋が入るなどの異常が観察されたものを×、異常が観察されなかったものを○とした。
表1に、両末端に反応性ケイ素基を有する有機重合体(B−1)と種々の反応性可塑剤(ポリマーA−1〜4)もしくは可塑剤(ポリマーP−1)を用いた硬化性組成物の組成とその物性を示す。本発明で主張する片末端にのみトリエトキシシリル基を有するポリマーA−1は、添加しない場合と比べると、添加部数を増やすことで粘度とモジュラスを低下させ、反応性可塑剤として働き、さらに復元性を大きく向上させた(実施例1〜3、比較例1)。従来、モジュラスと復元性は相関関係にあり、低モジュラスでは低復元性を示し、高モジュラスでは高復元性を示すとされていた。しかし、本発明のポリマーA−1は添加により低モジュラスにもかかわらず高い復元性を示し、特に実施例3ではM100が0.16MPaにもかかわらず、解放1h後の復元性で78%、24h後には89%であり、比較例1と比べるとその効果は明らかであった。他の反応性ケイ素基を持つ反応性可塑剤であるA−3とA−4を添加した場合はモジュラスの低下に伴い復元性が低下した(比較例2、3)。これは、本発明のポリマーが反応性ケイ素基の種類が違うポリマーとの組み合わせが復元性向上に重要であり、反応性の違うポリマーを2種類混ぜ合わせることによる効果であると考えられる。また、少量の両末端成分が入るものの、大部分は片末端にのみ反応性ケイ素基を有するポリマーA−2も、ポリマーA−1とほぼ同等の物性を示すことがわかる(実施例4)。反応性ケイ素基を持たないポリマーP−1を可塑剤として用いた場合ゲル分率が大きく低下するために汚染性への影響が危惧されるが、ポリマーA−1、2では高いゲル分率を維持しているため石材等の周辺基材や塗料への汚染性を低減させる効果も期待される。
表2に、両末端に反応性ケイ素基を有する有機重合体(B−1)と種々のアクリル系反応性可塑剤(ポリマーA−5〜7)を用いた硬化性組成物の組成とその物性を示す。実施例5は比較例5と比べると高い復元性を示し、本発明のポリマーA−5が復元性の点で優れていることがわかる。一方、比較例6では伸張の解放24h後の復元性は実施例5と同等であるものの、解放1h後の復元性は実施例5の方が高いため、ポリマーA−5がポリマーA−7よりも優れていると言える。SWOM耐候性試験機にて840時間曝露させたものを比較した場合、実施例5では全くクラックが生じていないのに対し、実施例6、7ではクラックが生じていたことから、耐候性に関してもポリマーA−5が優れている。
両末端にトリエトキシシリル基を有する有機重合体(A−8)を混合した場合、復元性が向上することを確認しており、ポリマーA−8では20%混合するだけで混合しない場合よりも復元率が大きく向上した(表3)。
U−220Hのような活性の高いブチルスズ系の硬化触媒を用いた場合、モジュラスが低下してしまい、それに伴って復元性が低下してしまうが(実施例7,8)、本発明の片末端にトリエトキシシリル基を有する有機重合体A−9を混合した場合、A−9を混合しない比較例9よりもモジュラスは低いが、高い復元性を示した。耐久性試験においては、ポリマーA−9を混合した実施例7,8で全く異常が生じず、比較例8,9において凹みが生じてしまった。この耐久性試験は、実際にサイディングボードなどの伸縮が生じる目地へ施工した場合を想定しており、復元性が高く、且つ、モジュラスが低い場合に良好な結果が得られ、ポリマーA−9を混合することにより、実際の目地への適応性が大きく向上していることがわかる。U−220Hを用いた場合、長期貯蔵により、硬化性が遅くなってしまうが、U−810を用いることで、解決される。
以上、表1〜4より、有機重合体の末端にトリエトキシシリル基を含有する有機重合体を有機重合体の両末端にジメトキシシリル基を含有する有機重合体へ混合することにより、低モジュラス、低粘度、高復元性というシーリング材や接着剤に適した特性の硬化性組成物を提供することを可能とした。また、オクチルスズ系のような比較的活性の低い硬化触媒を用いることで、貯蔵安定性の良い、1液型の硬化性組成物が提供可能となった。

Claims (13)

  1. 主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800〜50,000で、エタノール脱離型反応性ケイ素基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5〜1.0個含有する有機重合体(A)と、
    主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000〜50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2〜5個含有する有機重合体(B)を含み、
    有機重合体(A)の配合部数が、有機重合体(B)100重量部に対して30〜80重量部であることを特徴とする硬化性組成物
  2. 有機重合体(A)の主鎖がポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物
  3. 有機重合体(A)が、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤を用いて、複合金属シアン化物錯体触媒存在下でプロピレンオキシドを反応させたポリオキシプロピレン系重合体にエタノール脱離型反応性ケイ素基を導入して得られることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の硬化性組成物
  4. 1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤が炭素数3〜8のアルコールであることを特徴とする、請求項3に記載の硬化性組成物
  5. 1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤がn−ブタノールであることを特徴とする、請求項に記載の硬化性組成物
  6. 有機重合体(A)のエタノール脱離型反応性ケイ素基がトリエトキシシリル基であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物
  7. 主鎖骨格が分岐状のポリオキシアルキレン系重合体であり、数平均分子量が5,000〜50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2〜5個含有する有機重合体を含まない、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
  8. 硬化触媒として、4価の錫化合物(C)を含有することを特徴とする、請求項のいずれかに記載の硬化性組成物。
  9. 4価の錫化合物(C)がジオクチル錫化合物であることを特徴とする、請求項に記載の硬化性組成物。
  10. 硬化性組成物が1液型の硬化性組成物であることを特徴とする、請求項のいずれかに記載の1液型硬化性組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物を用いた建築用シーリング材。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物を用いたサイディングボードに施工されるシーリング材。
  13. 請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物を用いた石目地用シーリング材。
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