(実施形態1)
本実施形態の通信システムは、たとえば図2に示すように、2線式の通信線10に接続される伝送ユニット1と、重畳端末2および通信端末3とを備えている。この通信システムでは、基本的に、通信端末3は通信線10を伝送される伝送信号(第1プロトコルの信号)を用いて通信を行い、重畳端末2は伝送信号に重畳される重畳信号(第2プロトコルの信号)を用いて通信を行う。
図2は、通信システムがオフィスビル等において照明器具4を制御するための照明システムに適用された例を示している。図2の例では、伝送ユニット1は各エリア(たとえばフロア)に1台ずつ設けられ、各伝送ユニット1に接続された通信線10に通信端末3および重畳端末2が複数台ずつ接続されている。
また、伝送ユニット1は、その上位装置となる省エネコントローラ5に接続されている。省エネコントローラ5は、エリア(たとえばフロア)ごとに設けられており、上記通信システムを適用した照明システムの他、空調装置(図示せず)についても統括的に監視制御を行う。複数のエリアの省エネコントローラ5は、ブラウザ機能を有したパーソナルコンピュータ(図示せず)にインターネットあるいはLANなどのネットワークを介して接続され、パーソナルコンピュータから監視可能に構成されている。
複数台の通信端末3は、伝送ユニット1に対して通信線10を介して並列接続されている。伝送ユニット1および通信端末3は、伝送ユニット1から通信端末3へのデータ伝送と通信端末3から伝送ユニット1へのデータ伝送とが時分割で行われる時分割多重伝送システム(以下、「基本システム」という)を構築する。以下ではまず、基本システムの概略構成について説明する。
基本システムにおいて、通信端末3は、壁スイッチ等のスイッチ(図示せず)の監視入力を監視する監視用の端末と、リレー(図示せず)を有し負荷(ここでは照明器具4)のオンオフ制御等を行う制御用の端末との2種類に分類される。本実施形態では、同一の通信線10に対し監視用の通信端末3と制御用の通信端末3とが複数台ずつ接続されている場合を例に説明する。ここで、通信端末3は予め個別に割り当てられた自身のアドレスを、各々のメモリ(図示せず)に記憶している。なお、監視用の通信端末3は、スイッチに限らず、人感センサや明るさセンサ等のセンサで自動的に発生する監視入力を監視する構成であってもよい。
伝送ユニット1は、図1に示すように、伝送信号を通信線10に送出する伝送通信部11と、通信端末3へデータを送信する送信部12と、通信端末3からデータを受信する受信部13と、記憶部14と、制御部15とを備えている。また、本実施形態では、伝送ユニット1は、重畳信号を用いて通信を行う重畳通信部16をさらに備えており、通信端末3とだけでなく重畳端末2との間でも通信可能に構成されている。制御部15は、伝送通信部11、送信部12、受信部13、重畳通信部16の動作を制御する。本実施形態では、伝送ユニット1は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。なお、図1では通信端末3の図示を省略している。
伝送ユニット1は、監視用の通信端末3と制御用の通信端末3とをアドレスによって対応付けた制御テーブルを記憶部14に記憶している。ただし、たとえば監視用の通信端末3が複数回路のスイッチを有する場合、通信端末3に固有の端末アドレスだけでは、この通信端末3のスイッチが全て該当することになり、実際に操作された唯一のスイッチを特定することはできない。
そこで、監視用の通信端末3においては、実際に操作された唯一のスイッチを特定できるように、スイッチごとに負荷番号が割り振られ、通信端末3の端末アドレスの後に負荷番号が付加されたアドレスをスイッチ固有のアドレス(識別子)として用いる。同様に、制御用の通信端末3においてはリレーごとに負荷番号が割り振られ、通信端末3の端末アドレスの後に負荷番号が付加されたアドレスをリレー固有のアドレス(識別子)とする。制御テーブルでは、スイッチ固有のアドレスとリレー固有のアドレスとが一対一あるいは一対多に対応付けられる。
続いて、基本システムの動作について説明する。
伝送ユニット1は、図3に示すように時間軸方向において複数の領域に分割された形式の電圧波形からなる時分割方式の伝送信号を、通信線10に対して繰り返し送信する。すなわち、伝送信号は、予備割込帯101と、予備帯102と、送信帯103と、返信帯104と、割込帯105と、短絡検出帯106と、休止帯107との7つの領域からなる複極(±24V)の時分割多重信号である。なお、図示例では伝送信号における割込帯105から始まって返信帯104で終わる各区間を1フレーム(F1,F2,・・・)としている。
予備割込帯101は2次割込の有無を検出するための期間、予備帯102は割込帯105および短絡検出帯106に合わせて設定された期間であり、送信帯103は通信端末3にデータを伝送するための期間である。返信帯104は通信端末3からの返送データを受信するタイムスロットであり、割込帯105は後述の割込信号の有無を検出するための期間であり、短絡検出帯106は短絡を検出するための期間である。休止帯107は処理が間に合わないときのための期間である。
伝送ユニット1は、常時は、モードデータが通常モードである伝送信号を送信し、この伝送信号の送信帯103に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて通信端末3に順次アクセスする常時ポーリングを行う。常時ポーリングの際には、送信帯103に含まれるアドレスデータが自身のアドレスに一致した通信端末3は、この送信帯103に含まれるデータを受信し、次の(同一フレームの)返信帯104にて返送データを伝送ユニット1に送信する。ここで、通信端末3は、伝送信号の返信帯104に同期した電流モードの信号(適当な低インピーダンスを介して通信線10を短絡することにより送出される信号)により返送データを送信する。なお、通信端末3の内部回路の電源は、通信線10を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される。
一方、監視用の通信端末3は、監視入力を検出すると、伝送信号の割込帯105に同期して割込信号を発生する。以下、図2の通信システムにおいて、監視用の通信端末3で割込信号が発生した場合の基本システムの動作について、図3および図4を参照して説明する。
伝送ユニット1は、伝送信号の第1フレームF1の割込帯105にて監視用の通信端末3で発生した割込信号を検出すると(図3および図4のS11)、伝送信号の送信帯103に含まれるモードデータを通常モードから割込ポーリングモードに切り替える。割込ポーリングモードにおいては、伝送ユニット1は、送信部12にて、アドレスの上位ビットからなる返送要求データを伝送信号の送信帯103で送信し(S12)、アドレス(上位ビット)をサイクリックに変化させながらアドレスサーチを行う。割込信号を発生した通信端末3は、返送要求データ中のアドレス(上位ビット)が自身のアドレスの上位ビットに一致していれば、第1フレームF1の返信帯104にて自身のアドレスの下位ビットを返送データとして伝送ユニット1に送信する(S13)。これにより伝送ユニット1は、第1フレームF1において割込信号を発生した通信端末3のアドレスを、返送データとして受信部13にて受信することになる。
伝送ユニット1は、割込信号を発生した通信端末3のアドレスを取得すると、次の第2フレームF2の送信帯103にて、そのアドレスを指定して通信端末3に対して送信部12から返送要求データを送信する(S14)。通信端末3は、自身のアドレスを含む返送要求データを受信すると、これに応答して、第2フレームF2の返信帯104にて監視入力に対応したスイッチの負荷番号およびオンオフの別を含む監視データを返送データとして伝送ユニット1に送信する(S15)。
伝送ユニット1は、受信部13にて監視データからなる返送データを受信すると、この監視データに制御テーブル上で対応する制御用の通信端末3に対して、次の第3フレームF3の送信帯103にて制御データを送信する(S16)。これにより、制御データを受信した通信端末3は、制御データに従って照明器具4をオンオフ制御する。
上述したように、基本システムでは、ポーリング・セレクティング方式のプロトコル(第1プロトコル)に従い、伝送ユニット1を介して通信端末3同士(監視用の端末と制御用の端末)が通信を行うこととなる。
ところで、本実施形態に係る通信システムでは、重畳端末2は、上記基本システムと通信線10を共用しつつ、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信を行う。
重畳端末2は、図1に示すように、メモリ21と、重畳信号を用いた通信を行う(端末側)重畳通信部22と、少なくとも伝送信号を受信可能な(端末側)伝送通信部23と、インタフェース部24と、(端末側)制御部25とを備えている。インタフェース部24には、後述する計測ユニット6等が接続される。制御部25は、重畳通信部22、伝送通信部23、インタフェース部24の動作を制御する。本実施形態では、重畳端末2は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリ21に記憶されたプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。
ここにおいて、重畳信号は、伝送信号に比べて、周波数が十分に高い信号であって(伝送信号の)1フレーム当たりに伝送可能なデータ量が十分に多い。そのため、重畳信号による通信は、伝送信号による通信に比べて通信速度を高速化でき、たとえばアナログ量のように比較的データ量の多い情報の伝送に適している。そこで、本実施形態では、重畳端末2は、電圧、電流、電力等を計測する計測ユニット(多回路エネルギーモニタ)6の計測結果の伝送を行う。
具体的には、複数台の重畳端末2は、計測ユニット6に接続された監視用の端末と、計測ユニット6の計測結果を表示する表示パネル(フロア統合パネル)7に接続された表示用の端末とに分類されている。表示パネル7は、計測ユニット6の計測結果をたとえば表やグラフなどの種々の形式で表示する。本実施形態では、同一の通信線10に対し監視用の重畳端末2と表示用の重畳端末2とが複数台ずつ接続されている場合を例に説明する。なお、ここでは表示用の重畳端末2は、表示パネル7と共通の筐体に収納されることで表示パネル7と一体化されているが、この構成に限らず、表示パネル7とは別の筐体に収納されインタフェース部24に表示パネル7が接続される構成であってもよい。
上記構成によれば、監視用の重畳端末2は、重畳信号を用いて計測ユニット6の計測結果をたとえば定期的に表示パネル7に伝送し、表示パネル7に計測ユニット6の計測結果を表示させることができる。また、表示パネル7は、タッチパネルディスプレイ(図示せず)を有しており、ユーザからの操作入力を受け付けることで、ユーザの所望する情報を表示するように構成されている。そのため、表示用の重畳端末2は、表示パネル7に対するユーザの操作入力に応じて送信要求を出し、この送信要求の応答として重畳信号を用いて取得した計測ユニット6の計測結果を、表示パネル7に表示させることもできる。
重畳端末2は、予め個別に割り当てられた自身のアドレスを、各々のメモリ21に記憶している。ただし、通信端末3と重畳端末2とでは設定可能なアドレス領域が区別されている。以下では、通信システム全体として「1」〜「128」のアドレスが使用可能であって、そのうち「1」〜「64」までが通信端末3のアドレス領域、「65」〜「128」が重畳端末2のアドレス領域として割り当てられている場合を想定して説明する。
なお、重畳端末2に関しては、1台の重畳端末2に複数台のセンサや負荷が接続されている場合、重畳端末2に固有のアドレスが割り当てられるのではなく、センサあるいは負荷ごとに固有のアドレスが割り当てられている。つまり、たとえば4台のセンサ(計測ユニット6等)が接続された重畳端末2には、「65」、「66」、「67」、「68」というように合計4つのアドレスが割り当てられることになる。
また、本実施形態の重畳端末2は、伝送通信部23により、通信端末3と同様に伝送ユニット1との間で伝送信号を用いて双方向に通信可能に構成されている。つまり、重畳端末2は、重畳信号を用いた通信だけでなく、伝送信号による伝送ユニット1との通信も可能である。
また、重畳端末2は、基本システムで用いられる伝送信号を監視し、伝送信号のデータ伝送状況(以下、「ステート」という)を解析する機能を有している。ここでは、重畳端末2は伝送通信部23にて伝送信号を監視する。重畳端末2は、ステートの解析結果から重畳信号の重畳に適した重畳可能帯にあるか否かを判断し、重畳可能帯と判断されたタイミングで、重畳通信部22にて伝送信号に重畳信号を重畳する。
本実施形態においては、重畳端末2は、原則、伝送信号のうち予備割込帯101と予備帯102と休止帯107とを重畳可能帯として重畳信号の重畳に用いる。つまり、予備割込帯101と予備帯102と休止帯107とは、重畳信号が重畳されても第1プロトコルの通信に影響がなく、重畳信号も伝送信号の影響を受けにくい。
さらに、重畳端末2は、通信端末3と同様に伝送信号の割込帯105に同期して割込信号を発生可能に構成されており、割込信号により確保された返信帯104についても重畳可能帯として重畳信号の重畳に用いることができる。すなわち、重畳端末2は、伝送通信部23にて伝送信号を用いた通信も可能であるから、割込帯105に同期して割込信号を発生することによって、次の(同一フレームの)返信帯104を自身と伝送ユニット1との通信用に確保できる。重畳端末2は、このようにして確保した返信帯104を重畳可能帯として用いることにより、返信帯104にて通信端末3から伝送ユニット1に送信される返送データと重畳信号との干渉を回避できる。
返信帯104は、他の重畳可能帯と同様、重畳信号が重畳されても第1プロトコルの通信に影響がなく、重畳信号も伝送信号の影響を受けにくい。しかも、返信帯104は、予備割込帯101や予備帯102や休止帯107に比べて、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が長く、伝送信号の1フレームに占める割合が大きいので、重畳信号の重畳に適している。なお、具体的な数値を例示すると、返信帯104の時間幅は約6.5msであり、重畳端末2は、重畳信号により700μsに5バイトのデータを重畳できるとすれば、1回の返信帯104中に46バイトのデータを送信できることになる。この場合、伝送信号のフレーム周期を約15msとすれば、伝送速度は約24kbpsとなる。
その他の領域(送信帯103と割込帯105と短絡検出帯106)は、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が相対的に短く、重畳信号が重畳されると第1プロトコルの通信に影響を与えやすい。また上記他の領域に重畳信号が重畳されると、重畳信号も伝送ユニット1と通信端末3との間で授受される信号(割込信号や送信データ)の影響を受けやすい。そのため、本実施形態では、予備割込帯101、予備帯102、休止帯107並びに返信帯104以外の領域は、重畳信号の重畳には使用されない領域(以下、「重畳不可帯」という)とする。
重畳通信部22は、重畳信号によりデータを送信するデータ送信部、および重畳信号により送信されたデータを受信するデータ受信部として機能する。重畳通信部22は、ステートの解析結果から重畳可能帯と判断されたときに限って重畳信号を送信するように構成されている。重畳端末2は、このように伝送信号に同期して重畳可能帯にのみ重畳信号を重畳させることにより、共通の通信線10を使用する第1プロトコルの通信と第2プロトコルの通信との干渉を回避する。
なお、伝送信号の立ち上がりおよび立ち下がりの期間も、高調波ノイズの影響や信号の電圧反転に伴う過渡応答の影響などにより、重畳信号を重畳するのに適していない。したがって、重畳端末2は、予備割込帯101、予備帯102、休止帯107並びに返信帯104の中でも、領域の切り替わり(立ち上がり)後の所定の回避時間(たとえば300μs)については、重畳不可帯と判断する。
重畳端末2への電源供給は、通信端末3と同様に伝送ユニット1から通信線10を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される方式(集中給電方式)によって為される。ただし、この構成に限らず、重畳端末2への電源供給は、商用電源を整流し安定化することによって供給される方式(ローカル給電方式)で為されてもよい。
ところで、本実施形態の通信システムでは、伝送ユニット1と複数台の重畳端末2とのうちの1台は、重畳信号を用いて重畳端末2と直接通信するマスタノードとして機能するための権限であるマスタ権を有している。
通常時においては、マスタ権は伝送ユニット1に与えられており、伝送ユニット1がマスタノードとして機能する。そのため、通常時において複数台の重畳端末2間でデータを伝送する場合、伝送ユニット1は、重畳通信部16により複数台の重畳端末2のうちの一の重畳端末2から重畳信号を用いてデータを取得し、このデータを他の重畳端末2に重畳信号を用いて送信する。言い換えれば、伝送ユニット1がマスタノードとして機能する通常時においては、複数台の重畳端末2同士は互いに直接通信するのではなく、伝送ユニット1を介して通信を行う。
ただし、マスタ権は伝送ユニット1に固定的に与えられているのではなく、伝送ユニット1は、複数台の重畳端末2のうちの1台の重畳端末2からのマスタ要求への応答として、この重畳端末2へマスタ権を一時的に移譲するように構成されている。つまり、マスタ権は、伝送ユニット1から複数台の重畳端末2のうちいずれかの重畳端末2に一時的に移譲可能である。伝送ユニット1からマスタ権が移譲された重畳端末2は、マスタノードとして機能し、重畳信号を用いて他の重畳端末2との間で直接通信を行う。
本実施形態の通信システムは、マスタ権が伝送ユニット1に与えられ伝送ユニット1がマスタノードとして機能する状態(以下、「第1動作モード」という)では、重畳端末2同士がマスタノードたる伝送ユニット1を介して互いに通信する。一方、マスタ権が重畳端末2に与えられ重畳端末2がマスタノードとして機能する状態(以下、「第2動作モード」という)では、本実施形態の通信システムは、マスタノードたる重畳端末2と他の重畳端末2とが伝送ユニット1を介さず直接通信する。
以下に、第1動作モードと第2動作モードとのそれぞれにおける通信システムの動作について、図1を参照して説明する。ここでは、表示用の重畳端末201が、表示パネル7に対するユーザからの操作入力を受けて、監視用の重畳端末202から計測ユニット6の計測結果(たとえば消費電力の瞬時値)を取得する際の動作を例に説明する。
第1動作モードにおいては、重畳端末201は、表示パネル7に対するユーザからの操作入力を受けて、伝送信号の割込帯105に同期して割込信号を発生する。割込信号を検出した伝送ユニット1は、次の送信帯103で伝送信号により返送要求データを送信する。割込信号を発生した重畳端末201は、次の返信帯104で重畳信号を用いて伝送ユニット1に送信要求を出す(図1のS21)。ここで、送信要求は、送信を要求するデータの種類、たとえばいずれの計測ユニット6の計測結果を要求するかを表している。
送信要求を受けた伝送ユニット1は、次の休止帯107と予備割込帯101と予備帯102とに同期して、送信要求に従って計測ユニット6の計測結果を重畳信号により監視用の重畳端末202に要求する(S22)。伝送ユニット1からの要求を受けた重畳端末202は、次の休止帯107と予備割込帯101と予備帯102とに同期して、計測ユニット6の計測結果を重畳信号により伝送ユニット1に送信する(S23)。伝送ユニット1は、計測ユニット6の計測結果を受信すると、次の休止帯107と予備割込帯101と予備帯102とに同期して、計測結果を重畳信号により重畳端末201に送信(転送)する(S24)。
このように、第1動作モードにおいては、表示用の重畳端末201は、監視用の重畳端末202から、計測ユニット6の計測結果をマスタノードとしての伝送ユニット1経由で取得することができる。その際、マスタノードたる伝送ユニット1と、重畳端末201,202との間では、上述したようなS21〜S24の4ステップの通信が行われることになる。
一方、第2動作モードにおいては、表示用の重畳端末201がマスタ権を有し、マスタノードとして機能する。この重畳端末201は、表示パネル7に対するユーザからの操作入力を受けて、監視用の重畳端末202に対し、計測ユニット6の計測結果を要求する送信要求を重畳信号により直接送信する(図1のS31)。重畳端末201からの送信要求を受けた重畳端末202は、計測ユニット6の計測結果を重畳信号により重畳端末201に直接送信する(S32)。ここで、両重畳端末201,202は、重畳信号を用いた通信を、伝送信号の返信帯104もしくは休止帯107と予備割込帯101と予備帯102とに同期して行う。
このように、第2動作モードにおいては、表示用の重畳端末201は、マスタノードとして機能し、監視用の重畳端末202から、伝送ユニット1を通さずに計測ユニット6の計測結果を直接取得することができる。その際、マスタノードたる重畳端末201と重畳端末202との間では、上述したようなS31〜S32の2ステップの通信が行われることになる。
次に、本実施形態の通信システムのマスタ権の移譲に関する構成および機能の詳細について説明する。
伝送ユニット1は、マスタ権を有している間、つまりマスタノードとして機能する間のみ、記憶部14内のマスタフラグをオンする。重畳端末2は、マスタ権を有している間、つまりマスタノードとして機能する間のみ、メモリ21内のマスタフラグをオンする。言い換えれば、伝送ユニット1および重畳端末2は、自身のマスタフラグがオンの期間のみ、マスタノードとして機能する。
ここで、基本的な構成として、伝送ユニット1は、マスタ権を重畳端末2に移譲することでマスタノードでなくなり、その後、マスタ権を移譲した重畳端末2からマスタ権が返還されると再びマスタノードに移行するように構成されている。つまり、伝送ユニット1は、マスタ権を有している間はマスタノードとして機能し、マスタ権を重畳端末2に移譲している間はマスタノードとしての機能を喪失する。
また、重畳端末2は、基本的には、マスタ権を取得した後、マスタノードに移行し、マスタノードとして実行すべきタスクが完了すると、マスタ権を伝送ユニット1に返還するように構成されている。つまり、重畳端末2は、マスタ権を有している間はマスタノードとして機能し、マスタノードとして実行すべきタスクが完了したことをもって、マスタ権を元の伝送ユニット1に返還してマスタノードとしての機能を喪失する。
具体的に説明すると、図5に示すように伝送ユニット1は、複数台の重畳端末2のうちのいずれか1台の重畳端末2からマスタ要求を受けると(図5のS41)、この重畳端末2へマスタ要求への応答としてマスタ権を移譲する(S42)。このとき、伝送ユニット1は、自身のマスタフラグをオフにし、マスタ権の移譲通知をマスタ要求の送信元の重畳端末2に送信することにより、自身のマスタ権を重畳端末2に移譲する。
重畳端末2は、伝送ユニット1からマスタ権を取得すると、つまり移譲通知を受信すると、マスタノードに移行するための移行処理を行い(S43)、自身のマスタフラグをオンにする。重畳端末2は、移行処理が完了すれば、マスタ権を取得したことを通知するための応答信号を伝送ユニット1に送信する(S44)。重畳端末2は重畳信号により応答信号を送信する。マスタノードに移行した重畳端末2は、他の重畳端末2との間で直接通信を行うことで、他の重畳端末2からのデータの取得などの所望のタスク(処理)を実行する(S45)。
マスタノードに移行した重畳端末2は、マスタノードとして実行すべきタスクが完了すると、マスタ権を伝送ユニットに返還(移譲)する(S46)。このとき、マスタノードとしての重畳端末2は、自身のマスタフラグをオフにし、マスタ権の返還通知を伝送ユニット1に送信することにより、自身のマスタ権を伝送ユニット1に返還(移譲)する。伝送ユニット1は、重畳端末2からマスタ権を取得すると、つまり返還通知を受信すると、マスタノードに移行するための移行処理を行い(S47)、自身のマスタフラグをオンにする。
このように、通信システムにおいては、1つのマスタ権が伝送ユニット1−重畳端末2間で双方向に移譲されることにより、伝送ユニット1および複数台の重畳端末2のうちマスタ権を有する1台のみがマスタノードとして機能する。言い換えれば、マスタ権は、同一の通信線10に接続された1台の伝送ユニット1および複数台の重畳端末2のうちのいずれか1台にのみ与えられ、これら伝送ユニット1および複数台の重畳端末2のうちの2台以上に同時に与えられることはない。
ここにおいて、重畳端末2は、伝送ユニット1からの定期的なポーリングと、割込信号とを選択的に用いてマスタ要求を出すように構成されている。つまり、重畳端末2は、伝送ユニット1からの定期的なポーリングへの応答としてマスタ要求を送信してもよいし、伝送信号の割込帯105に同期して割込信号を発生し、次の返信帯104で伝送ユニット1にマスタ要求を出してもよい。
ポーリングを用いる場合、重畳端末2は、伝送信号の送信帯103に含まれるアドレスデータが自身のアドレスに一致すると、次の返信帯104あるいは予備割込帯101、予備帯102、休止帯107の重畳可能帯に、マスタ要求を伝送ユニット1に送信する。この場合、重畳端末2は、予備割込帯101と予備帯102と休止帯107とからなる重畳可能帯においては重畳信号を用いてマスタ要求を送信し、返信帯104においては重畳信号あるいは伝送信号を用いてマスタ要求を送信する。
一方、割込信号を用いる場合、重畳端末2は、伝送信号の割込帯105に同期して割込信号を発生する。割込信号を検出した伝送ユニット1は、次の送信帯103で伝送信号により返送要求データを送信する。割込信号を発生した重畳端末2は、次の返信帯104で重畳信号を用いて伝送ユニット1にマスタ要求を送信する。
したがって、重畳端末2は、定常時にはマスタ要求の送信にポーリングを用いることにより、通信端末3と伝送ユニット1との通信に影響を与えることなくマスタ要求を伝送ユニット1に送信することができる。また、重畳端末2は、マスタ要求の送信に割込信号を用いることにより、重畳端末2が新規に追加された場合やマスタ権を早期に確保する必要がある場合にも対応できる。
さらに本実施形態では、伝送ユニット1は、マスタ権が重畳端末2に移譲されてから所定の返還時間以内に返還されなければ、返還時間が経過した時点でマスタ権を強制的に復帰させるように構成されている。具体的には、伝送ユニット1は、図6に示すように、マスタ権が重畳端末2に移譲されたことをトリガにして返還時間の計時(S48)を開始する。それから、伝送ユニット1は、重畳端末2からマスタ権が返還されるか否か、つまり返還通知の有無を監視し、返還時間が経過するまでの間にマスタ権が返還される(返還通知を受信する)と、マスタノードに移行する(図5参照)。一方、マスタ権が返還されることなく(返還通知を受信することなく)返還時間が経過すると、伝送ユニット1は、図6に示すようにマスタ権が返還されなくても(返還通知を受信しなくても)、マスタ権を自ら強制的に復帰させてマスタノードに移行する(S47)。
なお、伝送ユニット1は、マスタ権が重畳端末2に移譲されたことをトリガにして返還時間の計時を開始すればよく、たとえば移譲通知を重畳端末2に送信した時点、あるいは応答信号を重畳端末2から受信した時点で返還時間の計時を開始する。
また、重畳端末2は、マスタ権を取得したときに伝送ユニット1に送信する応答信号に、マスタノードとして実行すべきタスクが完了するまでに掛かる時間長さを表す時間情報を含めるように構成されている。つまり、重畳端末2は、マスタ権の移譲通知を受信したときに、マスタ権の移譲元(移譲通知の送信元)である伝送ユニット1に対し重畳信号を用いて応答信号を送信するので、この応答信号に時間情報を含めて送信する。
これにより、伝送ユニット1は、時間情報を含む応答信号を受信することになり、重畳端末2がマスタノードとして実行すべきタスクの完了までに掛かる時間長さ、言い換えれば重畳端末2にマスタ権が占有される時間長さ(占有時間)を知ることができる。そのため、伝送ユニット1は、重畳端末2でのマスタ権の占有時間に基づいてたとえば返還時間の長さを設定できる。つまり、伝送ユニット1は、たとえば重畳端末2でのマスタ権の占有時間に一定時間αを加えて返還時間に設定することにより、マスタ権の移譲後、占有時間を経過し、さらに一定時間αが経過してもマスタ権が返還されない場合、マスタ権を強制的に復帰させる。
以上説明した本実施形態の通信システムによれば、接続された伝送ユニット1および複数台の重畳端末2のうちマスタ権を有する1台のみがマスタノードとして機能し、マスタ権は伝送ユニット1と重畳端末2との間で双方向に移譲可能である。
そのため、この通信システムは、複数台の重畳端末2が一斉に通信を行うことにより重畳信号同士が干渉することを回避できる。すなわち、本実施形態の構成によれば、マスタ権を有さない重畳端末2は、重畳信号を用いて自由に通信できるのではなく、通信システム内で唯一のマスタノード(マスタ権を有する伝送ユニット1または重畳端末2)との間でのみ直接通信可能となる。言い換えれば、マスタ権を有する伝送ユニット1または重畳端末2が、通信システム内での重畳信号を用いた通信を統制するので、マスタ権を有さない重畳端末2が重畳信号を用いた通信を勝手に行うことはない。したがって、本実施形態の通信システムは、同一の重畳可能帯に複数台の重畳端末2が一斉にデータ送信を行うことによる重畳信号同士の干渉(コリジョン)の発生を回避できる。
また、重畳端末2にマスタ権が与えられた状態(第2動作モード)では、重畳端末2同士は伝送ユニット1を介さずに直接通信でき、通信線10上の通信トラフィックの増大を抑制できる。つまり通信トラフィックが低減されるため、通信システムは、第2動作モードでは重畳端末2間の通信速度を高速化できる。
一方で、伝送ユニット1にマスタ権が与えられた状態(第1動作モード)では、重畳端末2同士は伝送ユニット1を介して通信することになる。そのため、伝送ユニット1は、1台の重畳端末2から取得したデータを、記憶部14に蓄積し、複数台の重畳端末2に対して転送することが可能である。したがって、伝送ユニット1は、たとえば監視用の重畳端末2から取得したデータを複数台の表示用の重畳端末2間で共有させる際、表示用の重畳端末2がそれぞれ監視用の重畳端末2と通信する場合に比べて、通信トラフィックを低減できる。つまり、一対多の重畳端末2間でのデータの授受を行うような場合には、通信システムは、伝送ユニット1をマスタノードとして機能させることで、通信トラフィックを低減でき通信速度の高速化を図ることができる。
要するに、本実施形態の通信システムによれば、重畳信号同士の干渉を回避し、且つ通信トラフィックの増大を抑制できるという利点がある。
また、伝送ユニット1は、マスタ権が重畳端末2に移譲されてから所定の返還時間以内に返還されなければ、返還時間が経過した時点でマスタ権を強制的に復帰させるので、マスタ権を与えられた重畳端末2の故障等に対応できる。つまり、重畳端末2の故障等によりマスタ権が伝送ユニット1に正常に返還されない場合でも、伝送ユニット1は、マスタ権を移譲後、返還時間が経過すれば自動的にマスタノードに移行するので、通信システム上にマスタノードが存在しない事態を回避できる。
ただし、重畳端末2は、基本的には、マスタ権を取得後マスタノードとして実行すべきタスクが完了すると、マスタ権を伝送ユニット1に返還する。したがって、重畳端末2は、マスタノードとして実行すべきタスクに掛かる時間がマスタ権の占有時間が返還時間よりも短い場合、返還時間が経過する前にマスタ権を返還することになり、マスタ権を早期に伝送ユニット1へと返還できる。
また、重畳端末2は、伝送ユニット1からマスタ権を取得すると、応答信号を重畳信号により伝送ユニット1に送信するので、比較的多くの情報を応答信号に含めて送信することができる。すなわち、重畳信号は伝送信号に比べて、周波数が十分に高い信号であって(伝送信号の)1フレーム当たりに伝送可能なデータ量が十分に多いため、重畳端末2は、重畳信号を用いることで応答信号に多くの情報を含めて伝送ユニット1に送信できる。
しかも、重畳端末2は、マスタノードとして実行すべきタスクが完了するまでに掛かる時間長さを表す時間情報を、応答信号に含めて送信するので、マスタ権の占有時間を伝送ユニット1に事前に知らせることができる。そのため、伝送ユニット1は、重畳端末2でのマスタ権の占有時間に基づいてたとえば返還時間の長さを設定できる。
(実施形態2)
本実施形態の通信システムは、伝送ユニット1が、マスタ権を取得した重畳端末2の重畳信号による通信状況を監視するように構成されている点で、実施形態1の通信システムと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
すなわち、伝送ユニット1は、第2動作モードにおいて、伝送信号に重畳されている重畳信号を重畳通信部16で受信することにより、マスタノードとしての重畳端末2が他の重畳端末2との間で重畳信号により通信している通信内容を取得(傍受)する。
本実施形態ではさらに、伝送ユニット1は、監視対象である重畳端末2の通信状況から、この重畳端末2でのマスタノードとして実行すべきタスクの完了を検出すると、マスタ権を強制的に復帰させるように構成されている。
具体的には、重畳端末2は、図7に示すようにマスタ権を取得後(図7のS42,S43)、伝送ユニット1に送信する応答信号に、マスタノードとして実行すべきタスクの内容を示すタスク情報を含めて送信する(S44)。伝送ユニット1は、受信した応答信号のタスク情報にて重畳端末2がマスタノードとして実行すべきタスク処理を理解し、そのタスクの完了を重畳端末2の通信状況から検出することにより、マスタノードとして実行すべきタスクの完了を検出する。伝送ユニット1は、マスタ権の移譲後、重畳端末2がマスタノードとして実行すべきタスクの完了を検出すると(S49)、重畳端末2からマスタ権が返還されなくても(返還通知を受信しなくても)、マスタ権を自ら強制的に復帰させてマスタノードに移行する(S47)。
以上説明した本実施形態の通信システムによれば、伝送ユニット1は、重畳端末2でのマスタノードとして実行すべきタスクが完了すれば、直ちにマスタ権を復帰させてマスタノードに移行できる。要するに、伝送ユニット1は、重畳端末2からマスタ権が返還されるのを待つことなく、早期にマスタノードに復帰できるという利点がある。また、本実施形態では、マスタ権を取得した重畳端末2は、マスタノードとして実行すべきタスクの完了後にマスタ権を伝送ユニット1に返還する機能(図5のS46参照)が省略されていてもよい。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。