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JP5997417B1 - 真空アーク成膜装置および成膜方法 - Google Patents

真空アーク成膜装置および成膜方法 Download PDF

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JP5997417B1 JP2016538119A JP2016538119A JP5997417B1 JP 5997417 B1 JP5997417 B1 JP 5997417B1 JP 2016538119 A JP2016538119 A JP 2016538119A JP 2016538119 A JP2016538119 A JP 2016538119A JP 5997417 B1 JP5997417 B1 JP 5997417B1
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Abstract

アーク放電を用いて基板上にta−C膜を形成する真空アーク成膜装置は、ターゲット部を保持する保持部と、前記ターゲット部から放出された電子が流入するアノード部と、前記ターゲット部と前記アノード部との間に、アーク放電によってプラズマを発生させる電流を供給する電源とを有し、前記アーク放電の際に前記電源が供給する電流は、直流電流に、140Hz以下のパルス周波数のパルス電流を重畳したものである。

Description

本発明は、真空アーク成膜装置および保護層の成膜方法に係り、特に磁気記録媒体の表面保護層の形成に適した真空アーク成膜装置および表面保護層の成膜方法に関する。
表面保護層にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が好適とされ、スパッタリング法や化学的気相成長法(CVD法)で形成された保護層が適用されている。磁気記録層と磁気ヘッドとの間の磁気的隙間の狭小化によって記録密度を増大させることができるため、表面保護層の薄膜化が必要となる。そのため、極薄膜でも耐久性が満足できる保護膜が要求されており、表面保護層として、従来よりも耐久性および耐食性に優れたta−C(テトラヘドラル・アモルファスカーボン)膜を用いることが検討されている。
真空アーク成膜装置を用いてta−C膜を形成する場合、陰極ターゲットとして炭素を用いることが知られている。アーク放電時には陰極ターゲット表面に形成されるアークスポット(陰極点)からは炭素イオン(陰極材料のイオン)の他にパーティクル(陰極材料微粒子)が放出される。このパーティクルが基板表面に付着すると薄膜の均一性が低下する。基板へのパーティクル付着を防ぐ方法として、例えば特許文献1では、湾曲した輸送用磁場フィルタの内壁部分にパーティクルを除去するためのバッフルを備えることが開示されている。
WO96/26531
輸送用磁場フィルタ内に流入したパーティクルのうち、バッフルで除去されないものは基板処理チャンバ内に放出され、被処理基板へ付着するおそれがある。
本発明の目的は、真空アーク成膜装置を用いた基板へのパーティクル付着を低減できる膜の成膜方法、および、真空アーク成膜装置を提供することにある。本発明の他の目的は、耐食性に優れた緻密な膜を形成できる膜成膜方法、および、真空アーク成膜装置を提供することにある。
本発明の第1の側面に係る真空アーク成膜装置は、アーク放電を用いて基板上にta−C膜を形成する真空アーク成膜装置であって、ターゲットが配置されるターゲット部と、前記ターゲット部から放出された電子が流入するアノード部と、前記ターゲット部と前記アノード部との間にアーク放電によってプラズマを発生させる電流を供給する電源と、を有し、前記アーク放電の際に前記電源が供給する電流は、直流電流に、140Hz以下のパルス周波数のパルス電流を重畳したものである。
本発明の第2の側面に係る成膜方法は、ターゲットとアノード部の間に電流を供給して生じさせたアーク放電を用いて、基板上にta−C膜を形成する成膜方法であって、前記アーク放電の際に前記電流は、直流電流に、140Hz以下のパルス周波数のパルス電流を重畳したものである。
本発明の第3の側面に係る真空アーク成膜装置は、アーク放電を用いて基板上に膜を形成する真空アーク成膜装置であって、ターゲット部を保持する保持部と、前記ターゲット部から放出された電子が流入するアノード部と、前記ターゲット部と前記アノード部との間に、アーク放電によってプラズマを発生させる電流を供給する電源と、を有し、前記電源は、前記アーク放電を開始させるときは、直流電流にパルス電流を重畳してなる直流パルス電流を前記ターゲット部と前記アノード部との間に供給し、その後、前記直流パルス電流の最大値よりも小さい最大値を有する電流を前記ターゲット部と前記アノード部との間に供給する。
本発明の第4の側面に係る成膜方法は、ターゲット部とアノード部の間に電流を供給して生じさせたアーク放電を用いて基板上に膜を形成する成膜方法であって、前記アーク放電を開始させるときは、直流電流にパルス電流を重畳してなる直流パルス電流を前記ターゲット部と前記アノード部との間に供給し、その後、前記直流パルス電流の最大値よりも小さい最大値を有する電流を前記ターゲット部と前記アノード部との間に供給する。
本発明の成膜方法によれば、アーク放電時のパーティクル発生を抑制でき、基板へのパーティクル付着を低減できる。また、成膜速度は低下しないため生産性が低下することがない。本発明の成膜方法は基板へのパーティクル付着が低減するため緻密で耐食性に優れた膜を形成することができる。
本発明の一実施形態に係る真空処理装置の平面図である。 図1の真空処理装置で用いる搬送キャリアの概略図である。 本発明の一実施形態に係る真空アーク成膜装置の概略図である。 図3の真空アーク成膜装置のアーク電流の供給方法を示す配線図である。 図4のアーク電源から出力される電流波形の一例を示す図である。 アーク電流のパルス周波数と被処理基板に付着したパーティクル数の関係を示す図である。 アーク電流のパルス周波数と被処理基板へのta−C膜の成膜速度の関係を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示である。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。以下に、本発明の成膜装置を、真空アーク成膜法(Vacuum Arc Deposition)を用いて被処理物としての基板にta−C膜を形成する成膜装置に適用した実施形態について説明する。
まず、本発明の一実施形態の真空処理装置について図1乃至5を用いて説明する。図1は本実施形態に係る真空処理装置を示す平面図である。本実施形態の真空処理装置はインライン式の成膜装置である。本実施形態の真空処理装置は、複数のチャンバ111〜131がゲートバルブを介して矩形の無端状に連結されている。各チャンバ111〜131は専用又は兼用の排気系によって排気される真空容器である。それぞれのチャンバには、キャリア10に基板1が搭載された状態で、隣り合うチャンバ間で搬送できる搬送装置が一体に構成されている。
搬送装置は、キャリア10を垂直姿勢で搬送する搬送路を有している。基板1は、キャリア10に搭載されて不図示の搬送路に沿って搬送されうる。チャンバ111は、キャリア10への基板1の搭載を行うロードロック室である。チャンバ116は、キャリア10からの基板1の回収を行うアンロードロック室である。基板1は磁気記録媒体としての使用に適したものであり、例えば、中心部分に開口(内周孔部)を有する金属製、若しくはガラス製の円板状部材である。
成膜装置内での基板の処理手順について説明する。まず、ロードロックチャンバ111内で未処理の基板1が最初のキャリア10に搭載される。このキャリア10は密着層形成室117に移動して、基板1に密着層が形成される。最初のキャリア10が密着層形成室117に配置されているときに、次のキャリア10へ、未処理の基板1の搭載動作が行われる。その後、次のキャリア10は密着層形成室117に移動し、基板1に密着層が形成され、ロードロックチャンバ111内でさらに次のキャリア10への基板1の搭載動作が行われる。1タクトタイムが経過する毎に、各キャリア10はチャンバ117〜131を1つずつ移動しながら、順次所定の処理がなされる。
チャンバ117〜131は各種処理を行う処理室である。処理室の具体例としては、基板1に密着層を形成する密着層形成室117、密着層が形成された基板1に軟磁性層を形成する軟磁性層形成室118、119、120、軟磁性層が形成された基板1にシード層を形成するシード層形成室121、シード層が形成された基板1に中間層を形成する中間層形成室123、124、中間層が形成された基板1に磁性膜を形成する磁性膜形成室125、126、127、128、磁性膜の上にta−C膜からなる表面保護層を形成するta−C膜形成室129、ta−C膜の表面を処理する表面処理室130が挙げられる。また、真空処理装置の4つの角の部分に位置するチャンバ112、113、114、115は、基板1の搬送方向を90度転換する方向転換装置を備えた方向転換チャンバである。チャンバ131はキャリアに付着した堆積物を除去するアッシング処理室である。上述しなかった他の処理室は、基板1を冷却する基板冷却室や、基板1を持ち替える基板持替室などとして構成されうる。なお、ta−C膜の表面を処理しない場合は表面処理室130は備えない。
図2にキャリア10の概略を示す。キャリア10は2枚の基板1が同時に搭載されうる。キャリア10は、基板1を保持する金属製のホルダー201を2つと、ホルダー201を支持して搬送路上を移動するスライダ202とを有している。ホルダー201に設けられた複数の弾性部材(板ばね)203で基板1の外周部の数カ所を支持できるため、基板1の表裏の成膜面を遮ることなくターゲットに対向した姿勢で保持できる。
搬送装置は、搬送路に沿って並べられた多数の従動ローラと、磁気結合方式により動力を真空側に導入する磁気ネジ303(図3参照)を備えている。キャリア10のスライダ202には永久磁石204が設けられている。回転する磁気ネジ303のらせん状の磁場をスライダ202の永久磁石204と磁気結合させた状態で、磁気ねじを回転させるとスライダ202(キャリア10)を従動ローラに沿って移動させることができる。なお、キャリア10及び搬送装置の構成としては特開平8−274142号公報に開示された構成を採用しうる。もちろん、リニアモータやラックアンドピニオンを用いた搬送装置を用いてもよい。
ta−C膜形成室129は、基板1の電位を変更する電圧印加部を備えている。キャリア10のホルダーに保持された基板1は、導電性の弾性部材(板ばね)203を介してホルダー201と電気的に接続されている。弾性部材203の電位を変更することで基板1の電位を変更できる。電圧印加部は、基板電圧印加電源302(図3参照)、もしくはアースに接続された電極を、ホルダー201に接触させる装置である。ホルダー201は接地電位でもよい。また、ホルダー201には、直流電源、パルス電源または高周波電源などから選択される電源を用いて各種の電力を印加してもよい。
図3は真空アーク成膜装置の概略図である。図3を用いて本実施形態の真空アーク成膜装置について説明する。真空アーク成膜装置は、ta−C膜形成室129と、ta−C膜形成室129に対して内部が連通するように連結されたフィルタ部310と、フィルタ部310に対して内部が連通するように連結されたソース部320を有する。ta−C膜形成室129内には、基板1を搭載したキャリア10を所定位置に移動できる搬送装置(例えば磁気ネジ303)が設けられている。排気系301は、ta−C膜形成室129内を真空排気できるターボ分子ポンプ等の真空ポンプである。
フィルタ部310は電子および炭素イオンを基板1に向けて輸送する通路であり、フィルタ部310を囲むようにフィルタコイル312や永久磁石等の磁場形成部が設けられている。また、フィルタ部310の内部(真空側)にはバッフル(不図示)が設けられている。磁場形成部は電子、およびイオンを輸送するための磁場を形成する。本実施形態の磁場形成部は、フィルタ部310の外側(大気側)に設けられているが、内部(真空側)にも配置されうる。
フィルタ部310の形状は、電子および炭素イオンを輸送する磁場形成部を有するものであれば特に限定されない。本実施形態のフィルタ部310は、二次元的に湾曲されたシングルベンド型を用いたが、直線型やダブルベンド型、または三次元的に湾曲されたものにも適用できる。ビーム走査用磁場コイル360は、フィルタコイル312の外側に配置され、電子および炭素イオンを偏向走査するための磁場形成部である。この偏向走査は、基板1に対して均一に炭素イオンを照射するためである。ソース部320は、炭素イオン発生部であり、電子および炭素イオンを生成するためのカソードターゲット部340と、アノード電極を備えるアノード部330と、可動アノード電極331と、安定化コイル350を有する。
カソードターゲット部340は、カソードであるとともにターゲットでもある。カソードターゲット部340は、保持部HUによって保持される。カソードターゲット部340は、炭素イオン供給ソースである。カソードターゲット部340は、例えば、グラファイトターゲットでありうる。また、カソードターゲット部340は、アーク放電時の加熱を防ぐために水冷されうる。アノード部330は、カソードターゲット部340とは絶縁されている。アノード部330の形状は、フィルタ部310への電子および炭素イオンの輸送を遮るものでなければ、特に限定されない。本実施形態では、筒状のアノードを用いた。また、アノード部330の構成材料は、アーク放電で発生したプラズマによって溶融されず、導電性を有する材料であれば、特定のものに限定されない。アノード部330は、例えば、グラファイト材料で構成されうる。
可動アノード電極331は、カソードターゲット部340とアノード部330との間にアーク放電を誘起させるための電極である。アーク放電は、次のような手順で発生させることができる。アノード部330の外側に退避していた可動アノード電極331をカソードターゲット部340に向かって駆動して機械的に接触させる。その後、アーク電流を流入させた状態で引き離す。これにより、アーク放電を発生させることができる。そして、アノード部330とカソードターゲット部340との間での電子電流もしくはイオン電流を維持することにより、アーク放電を維持することができる。
安定化コイル350は、カソードターゲット部340の放電面側(フィルタ部310側)の逆側に配置されたアーク放電を安定させるための磁場形成部である。安定化コイル350には、安定化コイル350で発生させる磁場とフィルタコイル312で発生させる磁場とが互いに逆方向の磁場になるように、電流が供給される。この逆方向の磁場により、アークスポットの挙動を制御するとともに、カソードターゲット部340とアノード330との間に低負荷な電流経路を確保し、アーク放電を安定化させる。本実施形態では、磁場形成部として電磁コイルを用いたが、安定化コイル350を永久磁石で構成してもよい。また、本実施形態では、ソース部320の外側(大気側)に設けられているが、内部(真空側)にも配置されうる。
図4はアーク電流の供給方法を説明するための模式配線図である。カソードターゲット部340は、アーク放電時のアーク電流を供給するアーク電源410(定電流制御電源)のマイナス端子に接続されている。アノード部330および可動アノード電極331は、同電位となるようにアーク電源410のプラス端子に接続される。ここで、該プラス端子は、接地電位となっている。アーク電源410とカソードターゲット部340との間には、電圧および電流を計測する計測器420が接続されている。アーク電源410は直流電流および直流パルス電流を供給するものである。ここで、アーク電流とは、カソードターゲット部340とアノード部330との間でアーク放電している際にアーク電源410から供給される電流である。直流パルス電流とは、パルス電流が重畳された直流電流である。
図5はアーク電源410から出力されカソードターゲット部340に供給されるアーク電流の波形の例を示す図である。カソードターゲット部340には直流パルス電流がアーク電流として供給される。この電流波形において、電流値が低いベース電流値はIb、ベース電流値Ibに重畳されるパルス電流値はIp−Ib、パルス電流の周期はT、パルス幅はT1、パルス周波数はf(=1/T)、デューティー比はD=T1/Tである。直流パルス電流値はベース電流値Ibにパルス電流値Ip−Ibが重畳される電流値であるためIpである。
直流パルス電流値Ipは、アーク放電を発生させた後に放電維持できる電流値とし、ベース電流値Ibは直流パルス電流Ipより低い電流値とし、発生したアーク放電が消失しない程度の小さな電流値とすることもできる。これは、アーク放電は一旦発生するとアークスポットが一定時間存在しているので、その間はアーク電流値を下げてもアーク放電が消失しにくいからである。アーク放電している間のアーク電圧値は一定であり、この電圧値はアーク放電を発生させる際にアーク電源410から供給される電圧値よりも低い値である。アーク電圧値は電極材料で決まる値である。
本実施形態の真空アーク成膜装置を使用したta−C膜の成膜方法を例示的に説明する。アーク放電を発生させる際には、アノード部330の外側に退避していた可動アノード電極331をカソードターゲット部340に向かって駆動させカソードターゲット部340に接触させる。フィルタコイル312および安定化コイル350には、ソース部320内に互いに逆方向の磁場が形成れるように直流電流が供給される。アーク電源410からカソードターゲット部340に直流パルス電流と所定の電圧が供給され、可動アノード電極331をカソードターゲット部340から引き離してアーク放電を発生させる。アーク放電が発生すると、カソードターゲット部340が炭素材料であるので、アーク放電により炭素イオンを含むプラズマが生成され、これと同時にパーティクルが発生する。一例において、可動アノード電極331をカソードターゲット部340に接触させた状態(アーク発生させるとき)で、可動アノード電極331とカソードターゲット部340との間に65Vの電圧が印加され、可動アノード電極331をカソードターゲット部340から引き離した後(アーク放電が発生した後)に、可動アノード電極331とカソードターゲット部340との間に、20−40Vの範囲内で選択された電圧が印加される。
ソース部320には磁場が形成されているため、アーク放電によって生成された電子および炭素イオンはフィルタ部310に流入し、フィルタコイル312で形成された磁場に沿って基板1が配置されるta−C膜形成室129に輸送される。そして、ビーム走査用磁場コイル360で走査された炭素イオンがta−C膜形成室129の所定位置に搬送された基板1に均一に照射されてta−C膜が形成される。ta−C膜が形成された基板は、ta−C膜形成室129から排出される。本実施形態では、アーク放電発生時にプロセスガスを導入していないが、Ar等の不活性ガスをプロセスガスとして導入することもできる。
アーク放電発生時に生じるパーティクルの一つとして、アークスポットから飛散する微粒子(カソード材料の微粒子)が知られている。微粒子には中性微粒子と電荷を帯びた微粒子があり、いずれもアーク放電発生時にアークスポットから放出されたが蒸発には至らなかった物質である。中性微粒子は電荷が中性の微粒子であり、電荷を帯びた微粒子はマイナスあるいはプラスの電荷を持つ微粒子である。パーティクルの発生を低減するには、この微粒子の発生量を少なくすることが重要である。アーク電源410からカソードターゲット部340に供給される直流パルス電流Ipの周波数f、デューティー比D、ベース電流値Ib、パルス電流値Ip−Ib等によって、カソードターゲット部340に形成されるアークスポットの加熱状態を制御することができる。パルス電流を重畳しない直流電流のみを供給した場合は、パルス電流を重畳した電流を供給した場合に比べ、カソードターゲット部340に形成されるアークスポットの加熱範囲が大きくなる。
一方、直流パルス電流の場合は、瞬間的に加熱されるためカソードターゲット部340に形成されるアークスポットの加熱範囲を小さくでき、微粒子の発生を低減することができる。例えば、パルス周波数fは10Hzから140Hzの範囲内、デューティー比Dは20%から80%の範囲内、ベース電流値Ibは15Aから130Aの範囲内、直流パルス電流値Ipは20Aから150Aの範囲内であることが好ましい。
上記の例では、アーク放電の発生後、カソードターゲット部340とアノード部330(可動アノード電極331)との間に直流パルス電流を供給し続けているが、これは一例に過ぎず、電流を途中で変更してもよい。例えば、アーク放電発生時には直流パルス電流を供給し、アーク放電が安定した後に直流電流を供給してもよい。アーク放電の安定後に供給される直流電流は、アーク発生が困難な電流値のアーク電流(低アーク電流)である。低アーク電流で放電させるため、微粒子の発生量を減少させ、基板表面に付着するパーティクル数を減らす効果が期待できる。また、成膜最終段に窒素ガスなどの反応性ガスを導入して最表面に薄い窒化層を形成してもよい。低アーク電流とは、アーク放電を発生させることは出来ないが放電を維持できる直流電流のことである。
また、上記の例では、ta−C膜を形成するが、ta−C膜に代えて他の膜が形成されてもよい。また、パルス波の周波数は、140Hz以下であることが好ましいが、他の周波数であってもよい。アーク電源410は、アーク放電を開始させるときは、直流電流にパルス電流を重畳してなる直流パルス電流をカソードターゲット部340とアノード部330との間に供給し、その後、該直流パルス電流の最大値よりも小さい最大値を有する電流をカソードターゲット部340とアノード部330との間に供給するように構成されうる。
上述した真空処理装置を用いたta−C膜の成膜方法の実施例を以下に説明する。以下の実施例では、上述した実施形態の装置を用いて、基板上に密着層、下部軟磁性層、シード層、中間層、磁気記録層、を順次積層した。次に磁気記録層が形成された基板に表面保護層としてta−C膜を形成した。
アノード部330の外側に退避している可動アノード電極331をカソードターゲット部340に向かって駆動し、カソードターゲット部340に機械的に接触させた。そして、アーク電源410からカソードターゲット部340に矩形波直流パルス電流を供給した。同時にフィルタコイル312および安定化コイル350へ直流電流を供給し、ソース部320に磁場を形成した。さらにビーム走査用磁場コイル360に交流電流を供給した。そして、可動アノード電極331をカソードターゲット部340から引き離してアーク放電を発生させ、フィルタコイル312で形成された磁場で電子および炭素イオンを輸送し、ビーム走査用磁場コイル360で形成された偏向用磁場によりビームを走査してta−C膜形成室129に配置された基板1に均一にta−C膜を形成した。
ここではta−C膜形成室129に配置された基板1の電位は接地電位に対して浮遊電位とした。パルス電流値Ip-Ibは50A、ベースアーク電流値Ibは20A、直流パルス電流値Ipは70A、デューティー比Dは50%とし、パルス周波数fは20Hzから500Hzの範囲とした。直流パルス電流で供給される単位時間あたりの平均アーク電流値は45Aである。アーク電圧値は30Vであった。作製した磁気記録媒体に対して、単位膜厚あたりのパーティクル数および成膜速度を評価した。磁気記録媒体表面に付着した単位膜厚あたりのパーティクル数は、光学式の表面検査装置(Optical Surface Analyzer)によって評価した。膜厚はX線反射率測定装置(XRR)で定量した。
比較例として、アーク電源410からカソードターゲット部340にパルス電流を重畳しない直流電流を供給してアーク放電を発生させ、ta−C膜形成室129に配置された基板1にta−C膜を形成した。このとき実施例の単位時間あたりの平均アーク電流と同じ供給電流とするため、アーク電流値は45Aとした。アーク電圧は30Vであった。作製した磁気記録媒体に対して、単位膜厚あたりのパーティクル数および成膜速度を評価した。単位膜厚あたりのパーティクル数は、光学式の表面検査装置(Optical Surface Analyzer)によって、磁気記録媒体表面に付着したパーティクル数を評価した。膜厚はX線反射率測定装置(XRR)で定量した。
図6は実施例および比較例の成膜方法を適用した場合でのアーク電流のパルス周波数と基板に付着した単位膜厚あたりのパーティクル数の関係を示す図である。図6に示すように基板に付着するパーティクル数は、パルス周波数が140Hz以下になると減少し、60Hzで極小値になることがわかった。また、パルス周波数が100Hz以下になると基板に付着するパーティクル数は比較例の約50%、60Hzでは基板に付着するパーティクル数は比較例の約25%に低減できる。
直流パルス電流のパルス周波数を140Hz以下とし、さらにパーティクルを低減する場合には、20Hzから100Hzの範囲のパルス周波数とし、より好ましくは50Hzから70Hzまでのパルス周波数とすることで基板に付着するパーティクルを低減できることが可能となった。本実施例のta−C膜形成方法では、アーク電源410から直流パルス電流をカソードターゲット部340に供給してアーク放電を発生させた。カソードターゲット部340に形成されるアークスポットの加熱範囲を小さくすることができるため、アークスポットから飛散する蒸発に至らない陰極材料微粒子の発生を低減することができ、基板に付着するパーティクル数を低減することができる。
図7は実施例および比較例の成膜方法を適用した場合でのアーク電流のパルス周波数と基板へのta−C膜の成膜速度の関係を示す図である。図7に示すように被処理基板への成膜速度は、比較例と同等の成膜速度を維持することができ、パルス周波数20Hzから500Hzの範囲で均一である。
本願は、2015年月6月24日提出の日本国特許出願特願2015−126100を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
1 基板
10 キャリア
129 ta−C膜形成室
340 陰極ターゲット部
330 陽極アノード部
331 可動アノード電極
312 フィルタコイル
350 安定化コイル
360 ビーム走査用磁場コイル
410 アーク電源

Claims (3)

  1. アーク放電を用いて基板上にta−C膜を形成する真空アーク成膜装置であって、
    ターゲット部を保持する保持部と、
    前記ターゲット部から放出された電子が流入するアノード部と、
    前記ターゲット部と前記アノード部との間に、アーク放電によってプラズマを発生させる電流を供給する電源と、を有し、
    前記アーク放電の際に前記電源が供給する電流は、直流電流に、50Hzから70Hzの範囲内のパルス周波数のパルス電流を重畳したものであることを特徴とする真空アーク成膜装置。
  2. 請求項1記載の真空アーク成膜装置を備えている真空処理装置。
  3. ターゲット部とアノード部の間に電流を供給して生じさせたアーク放電を用いて、基板上にta−C膜を形成する成膜方法であって、
    前記アーク放電の際に前記電流は、直流電流に、50Hzから70Hzの範囲内のパルス周波数のパルス電流を重畳したものであることを特徴とする成膜方法。
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