添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、一例として、画像処理装置(信号処理装置)を備えるデジタルカメラ(撮像装置)に対して本発明を適用する場合について説明する。ただし本発明は、画像信号以外の信号(例えば音声信号等)を処理する信号処理装置及び信号処理方法に対しても同様に適用することが可能である。
図1は、コンピュータに接続されるデジタルカメラを示すブロック図である。本例のデジタルカメラ10では、撮像素子26が搭載されるカメラ本体(撮像本体)14に光学系の一例であるレンズユニット12が交換可能に装着され、カメラ本体14に画像処理装置が設けられている。
すなわちデジタルカメラ10は、交換可能なレンズユニット12と、撮像素子26を具備するカメラ本体14とを備え、レンズユニット12のレンズユニット入出力部22とカメラ本体14のカメラ本体入出力部30とを介し、レンズユニット12とカメラ本体14とが電気的に接続される。
レンズユニット12は、光学系を構成するレンズ16及び絞り17と、この光学系を制御する光学系操作部18とを具備する。光学系操作部18は、レンズユニット入出力部22に接続されるレンズユニットコントローラ20と、各種の情報(光学系情報等)を記憶するレンズユニット記憶部21と、光学系を操作するアクチュエータ(図示省略)とを含む。レンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14からレンズユニット入出力部22を介して送られてくる制御信号に基づき、アクチュエータを介して光学系を制御し、例えばレンズ移動によるフォーカス制御やズーム制御、絞り17の絞り量制御、等を行う。またレンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14からレンズユニット入出力部22を介して送られてくる制御信号に基づき、レンズユニット記憶部21に記憶される各種情報を読み出してカメラ本体14(本体コントローラ28)に送信する。
カメラ本体14の撮像素子26は、集光用マイクロレンズ、R(赤)G(緑)B(青)等のカラーフィルタと、イメージセンサ(フォトダイオード;CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等)とを有する。この撮像素子26は、レンズユニット12の光学系(レンズ16、絞り17等)を介して照射される被写体像の光を電気信号に変換し、画像信号(原画像データ)を本体コントローラ28に送る。
本体コントローラ28は、詳細については後述するが(図2参照)、デジタルカメラ10の各部を統括的に制御するデバイス制御部としての機能と、撮像素子26から送られてくる画像データの画像処理を行う画像処理部としての機能とを有する。
デジタルカメラ10は、さらに、撮影等に必要なその他の機器類(シャッター等)を具備し、それらの機器類の一部はユーザによって確認及び操作可能なユーザインターフェース29を構成する。ユーザインターフェース29はレンズユニット12及び/又はカメラ本体14に配置可能であり、図1に示す例においてはカメラ本体14にユーザインターフェース29が設けられている。ユーザは、ユーザインターフェース29を介し、撮影等のための各種設定(EV値(Exposure Value)等)の決定及び変更、撮影指示、ライブビュー画像及び撮影画像の確認、等を行うことができる。ユーザインターフェース29は本体コントローラ28に接続され、ユーザによって決定及び変更された各種設定及び各種指示が本体コントローラ28における各種処理(デバイス制御処理、画像処理等)に反映される。
本体コントローラ28において画像処理された画像データは、カメラ本体14に設けられる本体記憶部31に記憶され、必要に応じ、入出力インターフェース32を介してコンピュータ92等に送られる。本体記憶部31は任意のメモリ体によって構成され、メモリカード等の交換可能メモリが好適に用いられる。本体コントローラ28から出力される画像データのフォーマットは特に限定されず、RAW、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、TIFF(Tagged Image
File Format)等の任意のフォーマットとしうる。また本体コントローラ28は、いわゆるExif(Exchangeable Image File Format)のように、ヘッダ情報(撮影情報(撮影日時、機種、画素数、絞り値等)等)、主画像データ及びサムネイル画像データ等の複数の関連データを相互に対応づけて1つの画像ファイルとして構成し、その画像ファイルを出力してもよい。
コンピュータ92は、カメラ本体14の入出力インターフェース32及びコンピュータ入出力部93を介してデジタルカメラ10に接続され、カメラ本体14から送られてくる画像データ等のデータ類を受信する。コンピュータコントローラ94は、コンピュータ92を統括的に制御し、デジタルカメラ10からの画像データを画像処理し、インターネット96等のネットワーク回線を介してコンピュータ入出力部93に接続されるサーバ97等との通信を制御する。コンピュータ92はディスプレイ95を有し、コンピュータコントローラ94における処理内容等が必要に応じてディスプレイ95に表示される。ユーザは、ディスプレイ95の表示を確認しながらキーボード等の入力手段(図示省略)を操作することにより、コンピュータコントローラ94にデータやコマンドを入力可能である。これによりユーザは、コンピュータ92や、コンピュータ92に接続される機器類(デジタルカメラ10、サーバ97)を制御可能である。
サーバ97は、サーバ入出力部98及びサーバコントローラ99を有する。サーバ入出力部98は、コンピュータ92等の外部機器類との送受信接続部を構成し、インターネット96等のネットワーク回線を介してコンピュータ92のコンピュータ入出力部93に接続される。サーバコントローラ99は、コンピュータ92からの制御指示信号に応じ、コンピュータコントローラ94と協働し、コンピュータコントローラ94との間において必要に応じてデータ類の送受信を行い、データ類をコンピュータ92にダウンロードし、演算処理を行ってその演算結果をコンピュータ92に送信する。
各コントローラ(レンズユニットコントローラ20、本体コントローラ28、コンピュータコントローラ94、サーバコントローラ99)は、制御処理に必要な回路類を有し、例えば演算処理回路(CPU(Central Processing Unit)等)やメモリ等を具備する。またデジタルカメラ10、コンピュータ92及びサーバ97間の通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。またコンピュータ92及びサーバ97を一体的に構成してもよく、またコンピュータ92及び/又はサーバ97が省略されてもよい。またデジタルカメラ10にサーバ97との通信機能を持たせ、デジタルカメラ10とサーバ97との間で直接的にデータ類の送受信が行われるようにしてもよい。
図2は、本体コントローラ28の構成例を示すブロック図である。本体コントローラ28は、デバイス制御部34と画像処理部35とを有し、カメラ本体14を統括的に制御する。
デバイス制御部34は、例えば、撮像素子26からの画像信号(画像データ)の出力を制御し、レンズユニット12を制御するための制御信号を生成してカメラ本体入出力部30を介してレンズユニット12(レンズユニットコントローラ20)に送信し、画像処理前後の画像データ(RAWデータ、JPEGデータ等)を本体記憶部31に記憶し、入出力インターフェース32を介して接続される外部機器類(コンピュータ92等)に画像処理前後の画像データ(RAWデータ、JPEGデータ等)を送信する。またデバイス制御部34は、表示部(EVF:Electronic View Finder、背面液晶表示部:ユーザインターフェース29)等、デジタルカメラ10が具備する各種デバイス類を適宜制御する。
一方、画像処理部35は、撮像素子26からの画像信号に対し、必要に応じた任意の画像処理を行う。例えばセンサ補正処理、デモザイク(同時化)処理、画素補間処理、色補正処理(オフセット補正処理、ホワイトバランス処理、カラーマトリック処理、ガンマ変換処理、等)、RGB画像処理(シャープネス処理、トーン補正処理、露出補正処理、輪郭補正処理、等)、RGB/YCrCb変換処理及び画像圧縮処理、等の各種の画像処理が、画像処理部35において適宜行われる。特に本例の画像処理部35は、光学系の点拡がり関数には基づかない鮮鋭化処理(輪郭強調処理)を画像信号(画像データ)に対して行う。
図3は、画像処理部35の構成例を示すブロック図である。
本例の画像処理部35は、信号を周波数に応じて調整する信号処理部40と、信号処理部40を制御するフィルタ処理制御部37とを備える。信号処理部40(信号調整ステップ)は、第1のフィルタ処理を行う第1のフィルタ処理部38(第1フィルタ処理ステップ)と、第1のフィルタ処理とは周波数特性の異なる第2のフィルタ処理を行う第2のフィルタ処理部39(第2フィルタ処理ステップ)とを有する。
第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理は、任意の画像処理フィルタを用いることができ、2次元のFIR(Finite Impulse Response)フィルタが好適に用いられる。第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理の簡単な例としては、処理対象の信号にフィルタを適用して信号ゲインを算出し(フィルタリング処理)、信号ゲインの倍率を調整し(ゲインコントロール処理)、倍率調整後の信号ゲインを原信号に加算する処理が挙げられる。
したがって、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理のうち両方又は一方を、点像復元処理、鮮鋭化処理、ローパスフィルタ処理、等の各種の処理とすることができる。第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理は同一目的のフィルタ処理であってもよいし、異なる目的のフィルタ処理であってもよく、例えば第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理を、任意のシャープネス強調処理(鮮鋭化処理)のためのFIRフィルタ信号処理によって構成してもよい。
以下の例では、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理を「鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理」とする。すなわち第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39は、入力される画像信号に対し、鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理を行う(輪郭強調処理ステップ)。第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39で用いられる鮮鋭化フィルタは特に限定されず、公知の輪郭強調フィルタを鮮鋭化フィルタとして使用可能である。この鮮鋭化フィルタは、予め定められる単一フィルタであってもよいし、撮影設定条件(光学特性情報の一例)に応じて複数のフィルタの中から選択されるフィルタであってもよい。したがって、例えばフィルタ処理制御部37、第1のフィルタ処理部38又は第2のフィルタ処理部39が、撮影設定条件に基づいて最適な鮮鋭化フィルタを決定してもよい。また、画像全体で単一の鮮鋭化フィルタが用意されていてもよいし、画像内の位置毎(像高毎)に異なる鮮鋭化フィルタが用意されていてもよい。ただし、信号を調整可能な周波数帯域は、第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理との間で、少なくとも一部において重複し、ゲインのピークを示す周波数は、第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理との間で異なる。
ここでいう撮影設定条件は、例えば絞り情報、ズーム情報、被写体距離情報、及び光学系が有するレンズ種類情報等の「設定条件」、及び撮影感度情報、撮影モード情報、等の「撮影条件」を含みうる。
フィルタ処理制御部37は、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39を制御する。本例のフィルタ処理制御部37は、第1のフィルタ処理における信号のゲインの調整倍率及び第2のフィルタ処理における信号のゲインの調整倍率に基づくトータルゲイン調整率を取得する。またフィルタ処理制御部37は、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理のうちの一方における調整倍率を取得し、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理のうちの他方における調整倍率をトータルゲイン調整率に基づいて算出する。したがって、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39が鮮鋭化処理を行う場合、フィルタ処理制御部37は第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理に係る鮮鋭化処理の信号ゲインの倍率をトータルゲイン調整率に基づいて調整する。
図4は、フィルタ処理強度の調整を説明するための概念図である。図4の「トータル強度」は、所望の画質から決まる最終鮮鋭度目標強度値であり、画像処理全体に対する入力と出力との大きさの比率を直接的又は間接的に示す。本例の「トータル強度」は、撮影設定条件(光学特性情報の一例)に応じて変動しうるが、撮影設定条件(光学特性情報の一例)が決まれば一定の値となる。また「第1のフィルタ処理強度」は第1のフィルタ処理の鮮鋭化強度であり、「第2のフィルタ処理強度」は第2のフィルタ処理による鮮鋭化強度である。
これらのトータル強度、第1のフィルタ処理強度及び第2のフィルタ処理強度は、それぞれ信号処理の前後における信号の変化の程度を表す指標であり、信号の変化の程度を適切に表すことが可能な任意の基準に則って定められる。したがって、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理の各々がフィルタ適用処理及びゲインコントロール処理を含む場合には、「フィルタ適用処理及びゲインコントロール処理」の前後の変化が第1のフィルタ処理強度及び第2のフィルタ処理強度によって表される。
例えば第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理とが並列的に行われ、「第1のフィルタ処理強度」と「第2のフィルタ処理強度」とが「トータル強度」によって定められる場合を想定する。この場合には「第1のフィルタ処理強度+第2のフィルタ処理強度=トータル強度」の関係が成立し、第1のフィルタ処理強度の増減分だけ第2のフィルタ処理強度が増減し、図4に示される第1のフィルタ処理強度と第2のフィルタ処理強度との境界位置(B)が変動しうる。したがって、例えばトータル強度及び第1のフィルタ処理強度が定まれば、両者から最適な第2のフィルタ処理強度を算出することが可能である。同様に、トータル強度及び第2のフィルタ処理強度が定まれば、両者から最適な第1のフィルタ処理強度を算出することが可能である。
なお図4は理解を容易にするために直感的な概念図を示すに過ぎず、第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理とが行われる処理系において「第1のフィルタ処理強度+第2のフィルタ処理強度=トータル強度」の関係が常に成立することを示すものではない。例えば第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理とが直列的に行われる場合、第1のフィルタ処理強度と第2のフィルタ処理強度との積に基づいてトータル強度が定められる。したがって以下の実施形態では、「第1のフィルタ処理強度及び第2のフィルタ処理強度の両者による周波数増幅率」が「トータル強度による周波数増幅率」と一致するように、第1のフィルタ処理強度及び第2のフィルタ処理強度が決められる。
第1のフィルタ処理強度及び第2のフィルタ処理強度の調整は様々な基準で行うことができ、例えば特定の周波数範囲の画像成分における周波数増幅率が同じになるように、トータル強度を定めることができる。
このようにトータル強度を設定して第1のフィルタ処理強度及び第2のフィルタ処理強度を調整することにより、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理を受けた画像の鮮鋭度(解像感)のバラつきを抑え、出力画像(信号)の総合的な質を向上できる。
なお、上述では第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39が周波数特性の異なる同種フィルタ処理(鮮鋭化処理)を行う場合について説明したが、異なる種類のフィルタ処理を行う場合も同様に第1のフィルタ処理強度及び第2のフィルタ処理強度を調整できる。例えば第1のフィルタ処理部38が点像復元処理を行う一方で第2のフィルタ処理部39が鮮鋭化処理を行う場合に、第1のフィルタ処理強度を優先的に設定し、その第1のフィルタ処理強度に応じて第2のフィルタ処理強度を調整することが可能である。この場合、光学系(レンズ16等)のPSFに応じた点像復元処理を高精度に行うことができる。点像復元処理は繊細な処理であり基礎パラメータが正確でないと過補正等の弊害を招き易いが、第1のフィルタ処理強度を優先的に決めることにより、過補正等の弊害を効果的に防げる。一方、第2のフィルタ処理強度を優先的に設定し、その設定された第2のフィルタ処理強度に応じて第1のフィルタ処理強度を調整することも可能である。この場合、弊害の少ない安定した処理である鮮鋭化処理が優先的に行われる。この鮮鋭化処理を優先的に行うケースは、光学特性に優れた精度を持つ光学系(レンズ16等)を用いて撮影を行う場合、撮影シーンが夜景やポートレートの場合、アートフィルタ処理が行われる場合等、点像復元処理による効果が得難い場合や点像復元処理による弊害が出やすい場合に好適である。
第1のフィルタ処理(鮮鋭化処理)及び第2のフィルタ処理(鮮鋭化処理)の調整に関する具体的な実施形態について、以下に説明する。
<第1実施形態>
図5は、第1実施形態に係る画像処理ブロックの構成を示す図である。
本実施形態の画像処理システムモデル(画像処理部35)では、「第1のフィルタ処理ブロック」と「第2のフィルタ処理ブロック」とが直列に接続(カスケード結合)され、両処理ブロックにおいて連続的な信号強度調整が可能となっている。すなわち第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39は直列に設けられ、入力画像信号は第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理のうちの一方の処理(図5に示す例では「第1のフィルタ処理」)を受けた後に他方の処理(図5に示す例では「第2のフィルタ処理」)を受ける。
本例の第1のフィルタ処理は、画像信号に鮮鋭化フィルタ(第1のフィルタ)を適用する処理と、鮮鋭化フィルタの適用によって得られる信号のゲインの倍率を調整倍率に基づいて調整する処理とを含む。すなわち第1のフィルタ処理部38は、第1フィルタ処理実行部42、第1フィルタ処理乗算器43及び第1フィルタ処理加算器44を含む。第1フィルタ処理実行部42は、鮮鋭化フィルタを入力画像データに適用し、画像の増減分データを算出する。第1フィルタ処理乗算器43は、第1フィルタ処理実行部42において算出された増減分データのゲインコントロールを行い、増減分データ及び第1ゲイン調整倍率Uの乗算を行う。第1フィルタ処理加算器44は、第1フィルタ処理実行部42に入力される前の画像信号(入力画像データ)と、第1ゲイン調整倍率Uが乗算された増減分データとの加算を行う。第1のフィルタ処理は、これらの第1フィルタ処理実行部42、第1フィルタ処理乗算器43及び第1フィルタ処理加算器44における一連の処理によって構成される。
なお第1のフィルタ処理部38は、任意の手法により第1ゲイン調整倍率Uを画像データに反映することができ、本実施形態及び他の実施形態において、上記手法の代わりに上記手法と等価な他の手法を採用してもよい。例えば、光鮮鋭化フィルタを入力画像データに適用して得られる画像データ(入力画像データ+増減分データ)に対して第1ゲイン調整倍率Uの乗算を行う一方で、入力画像データに倍率(1−U)の乗算を行い、両者を加算するようにしてもよい。
一方、本例の第2のフィルタ処理は、画像信号に鮮鋭化フィルタ(第2のフィルタ)を適用する処理と、鮮鋭化フィルタの適用によって得られる信号のゲインの倍率を調整倍率に基づいて調整する処理とを含む。すなわち第2のフィルタ処理部39は、第2フィルタ処理実行部46、第2フィルタ処理乗算器47及び第2フィルタ処理加算器48を含む。本例においては第1のフィルタ処理後の画像データが、入力画像データとして第2フィルタ処理実行部46に入力される。第2フィルタ処理実行部46は、鮮鋭化フィルタを入力画像データに適用して画像の増減分データを算出する。第2フィルタ処理乗算器47は、第2フィルタ処理実行部46において算出された増減分データのゲインコントロールを行い、増減分データ及び第2ゲイン調整倍率Vの乗算を行う。第2フィルタ処理加算器48は、第2フィルタ処理実行部46に入力される前の画像データ(第1のフィルタ処理後の画像信号)と、第2ゲイン調整倍率Vが乗算された増減分データとの加算を行って出力画像データを生成する。第2のフィルタ処理は、これらの第2フィルタ処理実行部46、第2フィルタ処理乗算器47及び第2フィルタ処理加算器48における一連の処理によって構成される。
なお、第1ゲイン調整倍率Uの反映手法と同様に、第2のフィルタ処理部39は、任意の手法により第2ゲイン調整倍率Vを画像データに反映することができ、本実施形態及び他の実施形態において、上記手法の代わりに上記手法と等価な他の手法を採用してもよい。例えば、鮮鋭化フィルタ(輪郭強調フィルタ)を入力画像データに適用して得られる画像データ(入力画像データ+増減分データ)に対して第2ゲイン調整倍率Vの乗算を行う一方で、入力画像データに倍率(1−V)の乗算を行い、両者を加算するようにしてもよい。
なお、第1フィルタ処理実行部42及び第2フィルタ処理実行部46において用いられる鮮鋭化フィルタは任意の手法により決められるが、本例の第1フィルタ処理実行部42及び第2フィルタ処理実行部46の各々は、単一の鮮鋭化フィルタを保持して使用する。
フィルタ処理制御部37は、第1のフィルタ処理(第1フィルタ処理乗算器43)における調整倍率を外部入力パラメータに基づいて定め、第1のフィルタ処理における調整倍率とトータルゲイン調整率とに基づいて第2のフィルタ処理(第2フィルタ処理乗算器47)における調整倍率を算出する。すなわち、本例のフィルタ処理制御部37は強度自動調整部52を含み、強度自動調整部52には第1フィルタ処理調整変数(ディテール鮮鋭度調整変数)G及びトータルゲイン調整率(トータル鮮鋭度目標値)Dが入力される。
第1フィルタ処理調整変数Gは、第1のフィルタ処理部38(第1フィルタ処理乗算器43)において使用する第1ゲイン調整倍率Uの基礎を構成するデータである。トータルゲイン調整率Dは、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vに基づいて定められるデータであり、後述の第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを決定するための基準となる。第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dの各々は、ユーザインターフェース29を介してユーザによって指定されてもよいし、フィルタ処理制御部37等により光学特性情報に基づいて決定されてもよい。したがって、光学特性情報に応じて異なる値の第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dがフィルタ処理制御部37(本体コントローラ28)等によって選択されてもよい。また第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dを予め定めておく一方で、ユーザがユーザインターフェース29を介して第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dを適宜調整可能としてもよい。
ここでいう「光学特性情報」は、光学系が有するレンズ16の種類情報、光学系の個体差情報、その他の撮影設定条件、等を含みうる。この光学特性情報は任意の記憶部に記憶され、例えばレンズユニット12の記憶部(レンズユニット記憶部21)に光学特性情報が記憶されてもよいし、カメラ本体14の記憶部(本体記憶部31)に光学特性情報が記憶されてもよい。したがってフィルタ処理制御部37(本体コントローラ28)等において、第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dは、記憶部(光学系記憶部、本体記憶部)に記憶される光学特性情報に基づいて定められてもよい。
なお光学特性情報(撮影設定条件等)は、任意の方式で、フィルタ処理制御部37(強度自動調整部52)、第1のフィルタ処理部38(第1フィルタ処理実行部42)及び第2のフィルタ処理部39(第2フィルタ処理実行部46)に入力される。例えば、本体コントローラ28のデバイス制御部34及び画像処理部35のうち光学特性情報を管理する制御処理部(図示せず)から、フィルタ処理制御部37、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39に光学特性情報を必要に応じて送信してもよい。
強度自動調整部52は、第1フィルタ処理調整変数Gに基づいて第1ゲイン調整倍率Uを決定し、第1ゲイン調整倍率U(第1フィルタ処理調整変数G)及びトータルゲイン調整率Dに基づいて第2ゲイン調整倍率Vを決定する(ただし、「第1ゲイン調整倍率U≧0」及び「第2ゲイン調整倍率V≧0」を満たす)。具体的には、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vによって定義されるトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭度評価関数)がトータルゲイン調整率Dと等しくなるように、第2ゲイン調整倍率Vを探索することによって第2ゲイン調整倍率Vが決定される。
なお強度自動調整部52は、第1フィルタ処理実行部42及び第2フィルタ処理実行部46の各々において使用される鮮鋭化フィルタの周波数特性を取得する。例えば、第1フィルタ処理実行部42及び第2フィルタ処理実行部46において使用される鮮鋭化フィルタが固定されている場合、強度自動調整部52は各鮮鋭化フィルタの周波数特性を予め記憶しておくことにより取得してもよい。また第1フィルタ処理実行部42及び第2フィルタ処理実行部46において使用される鮮鋭化フィルタが強度自動調整部52に送信され、強度自動調整部52は、受信した鮮鋭化フィルタを解析することにより鮮鋭化フィルタの周波数特性を取得してもよい。強度自動調整部52は、トータル鮮鋭度評価値に基づいて第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを決定する際に、第1フィルタ処理実行部42及び第2フィルタ処理実行部46において使用する鮮鋭化フィルタの周波数特性を考慮する。具体的には、強度自動調整部52は、トータル鮮鋭度評価値に鮮鋭化フィルタの周波数特性を反映させ、その鮮鋭化フィルタの周波数特性を反映したトータル鮮鋭度評価値に基づいて、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを決定する。
そして強度自動調整部52は、決定した第1ゲイン調整倍率Uを第1フィルタ処理乗算器43に送信し、第2ゲイン調整倍率Vを第2フィルタ処理乗算器47に送信する。第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vは、それぞれ第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39における強度調整パラメータである。したがって第1フィルタ処理乗算器43及び第2フィルタ処理乗算器47は、強度自動調整部52から送られてくる第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを使用して乗算処理を行う。
強度自動調整部52における第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vの決定は、例えば以下のフローに従って行うことができる。
第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39における画像処理に先立って、まず強度自動調整部52(フィルタ処理制御部37)が第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dを取得する。本例においては、第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dが予めユーザによって指定される。ユーザによる第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dの指定方法は特に限定されず、例えば第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dを指定するためのスライダ等の調整手段をユーザインターフェース29(背面表示部等)に表示し、ユーザがその調整手段を介した操作を行うことにより第1フィルタ処理調整変数G及びトータルゲイン調整率Dを簡易に定めることも可能である。
第1フィルタ処理調整変数Gは、第1フィルタ処理乗算器43で使用される第1のフィルタ処理の第1ゲイン調整倍率Uをコントロールするための基礎データ(制御値)である。本例においては後述するように、例えば第1ゲイン調整倍率Uの値が特定の閾値よりも大きい場合を除き、第1ゲイン調整倍率Uと第1フィルタ処理調整変数Gとは等しい(第1ゲイン調整倍率U=第1フィルタ処理調整変数G)。第1フィルタ処理調整変数Gが0(ゼロ)の場合は、第1のフィルタ処理がオフにされていることに相当する。この第1のフィルタ処理における第1ゲイン調整倍率Uは、連続的な値をとるように変化してもよいし、離散的な値をとるように変化してもよいし、オン又はオフ(「特定倍率」か「0(ゼロ)」か)により変化してもよく、第1ゲイン調整倍率Uを任意の方式により変更可能な処理回路等を実装することが可能である。
またトータルゲイン調整率Dは、画像処理システム(第1のフィルタ処理部38及び第
2のフィルタ処理部39)全体においてベースとなる鮮鋭度を定めるデータである。
一方、第1フィルタ処理実行部42において使用される第1のフィルタ(鮮鋭化処理における輪郭強調成分を抽出するためのフィルタ)の周波数特性をψ(ωx,ωy)として、第2フィルタ処理実行部46において使用される第2のフィルタの周波数特性をφ(ωx,ωy)とする。この場合、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39(鮮鋭化処理)を組み合わせた図5に示す画像処理システム全体の周波数特性は、以下の式1によって表される。
「F(ωx,ωy|U,V)」は、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vをパラメータとした(ωx,ωy)(x方向及びy方向に関する周波数)についての関数を示し、この関数は画像処理システムの構成に依存して決定される。
第1フィルタ処理乗算器43において用いられる第1ゲイン調整倍率U及び第2フィルタ処理乗算器47において用いられる第2ゲイン調整倍率Vの決定は、以下の式2によって定義されるトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭率)C(U,V)を一定の値(トータルゲイン調整率D)に保つように実施される。
ここで「w(ωx,ωy)」は任意の重み関数であり、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)は、システム全体の周波数特性の重み付き演算によって定義される。重み関数w(ωx,ωy)は、視覚的に有意な周波数成分において大きな値となるように設計されることが好ましい。上記の式2で定義されるトータル鮮鋭度評価値C(U,V)を用いることによって、第1のフィルタ処理の強度を変化させても、注目している周波数帯域においては、周波数強調の程度が変化せず鮮鋭度の大きな乖離は発生しない。一方、重み関数w(ωx,ωy)が比較的小さい周波数帯域では、ユーザの調整により画質の差異が目立ち易くなる。
上述を踏まえ、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vの値は次のように決定できる。すなわち強度自動調整部52は、入力される第1フィルタ処理調整変数Gに基づいて第1ゲイン調整倍率Uの値を決定し、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)がトータルゲイン調整率Dとなるように第2ゲイン調整倍率Vの値を決定する。したがって、第1ゲイン調整倍率Uの値が大きくなると第2ゲイン調整倍率Vの値が小さくなり、第1ゲイン調整倍率Uの値が小さくなると第2ゲイン調整倍率Vの値が大きくなる。ただし第1ゲイン調整倍率Uの値が大き過ぎると、第2ゲイン調整倍率Vの値をゼロ「0」にしてもトータル鮮鋭度評価値C(U,V)を一定に保てない場合が発生しうる。すなわち、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)を一定に保つことが可能な第1ゲイン調整倍率Uの範囲には制限が存在しうる。
第1ゲイン調整倍率Uの上限値を「UMAX」と表記すると、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)は「C(UMAX,0)=D」の関係を満たすため、第1ゲイン調整倍率Uの最大値は以下の式3に示すように制限される。
上記の式3は、第1フィルタ処理調整変数Gが第1ゲイン調整倍率Uの上限値UMAX以下の場合には第1フィルタ処理調整変数Gを第1ゲイン調整倍率Uに設定し(U=G)、第1フィルタ処理調整変数Gが第1ゲイン調整倍率Uの上限値UMAXを超える場合には第1ゲイン調整倍率Uの上限値UMAXを第1ゲイン調整倍率Uに設定する(U=UMAX)ことを示す。
第2ゲイン調整倍率Vの値は、トータル鮮鋭度評価値が「C(U,V)=D」の関係を満たす第2ゲイン調整倍率Vを探すことにより算出される。これは1次方程式の解を求めることに等しく、強度自動調整部52は、第2ゲイン調整倍率Vを容易に求められる。第2ゲイン調整倍率Vの算出の難易度は、システム全体の周波数特性F(ωx,ωy|U,V)の定義に依存する。この周波数特性F(ωx,ωy|U,V)が非線形関数となって上記の等式を厳密に成立させる第2ゲイン調整倍率Vを探すのが難しい場合、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)をトータルゲイン調整率Dに最も近づける第2ゲイン調整倍率Vを採用するという定式化が行われてもよい。
上述の一連の処理によって、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)を一定(トータルゲイン調整率D)に保つ第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを算出することができる。
以上説明したように本実施形態によれば、トータル鮮鋭度(トータル鮮鋭度評価値)に基づいて第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vが定められるため、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理による画像(出力画像)の鮮鋭度のバラつきが抑えられ、出力画像における総合的な解像度や画質を安定化できる。
特にシステム全体の周波数レスポンスのうち、特定の重みをつけた周波数帯域のレスポンスを一定に保ったまま周波数特性全体の形状を変化させて、システム全体の周波数レスポンスを柔軟に調整することが可能である。したがって、例えばベースとなる鮮鋭度を維持しながらディテールの鮮鋭度を調整するなどの応用も可能である。また、主要な周波数帯域における重み付けが大きくなるようにトータル鮮鋭度評価値を定めることにより、主要な周波数帯域における鮮鋭化強度が一定化され、鮮鋭度の乖離が過大になることを防げる。
また第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを調整することにより、鮮鋭化フィルタを変更することなく、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理全体における周波数特性を連続的に変化させることもできる。したがって、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを調整することにより、所望の周波数特性を簡便に実現することができる。そのため、多くの周波数特性を実現するために、多数の鮮鋭化フィルタ(第1のフィルタ及び第2のフィルタ)を準備及び保持しておく必要がなく、また鮮鋭化フィルタ(第1のフィルタ及び第2のフィルタ)を動的に設計する必要もない。
また2つの画像処理(第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理)の強度調整パラメータの制御は、一般に「2変数」の制御が必要となり、制御の自由度は「2」となる。しかしながら本実施形態に係る強度調整処理によれば、予め記憶されるトータルゲイン調整率Dがユーザの操作を介することなく自動的に強度自動調整部52に供給される場合、必要とされる制御の自由度は「1」となる。すなわち第1フィルタ処理調整変数Gを決めるだけで、トータルゲイン調整率Dに基づいて適切な鮮鋭化強度(第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率V)を定めることが可能である。これにより、ユーザが直感的に操作し易いユーザインターフェース29を提供することも可能である。
なお上述の例においては、第1ゲイン調整倍率Uを第1フィルタ処理調整変数Gによって定め、第2ゲイン調整倍率Vを第1ゲイン調整倍率U及びトータルゲイン調整率Dから算出しているが、第2ゲイン調整倍率Vの基礎データが強度自動調整部52に入力されてもよい。すなわち、第1フィルタ処理調整変数Gの代わりに、第2フィルタ処理調整変数が強度自動調整部52に入力されてもよい。この場合、強度自動調整部52は、入力される第2フィルタ処理調整変数に基づいて第2ゲイン調整倍率Vを定め、第1ゲイン調整倍率Uを第2ゲイン調整倍率V及びトータルゲイン調整率Dから算出することができる。
<第2実施形態>
本実施形態に係るフィルタ処理制御部37は、信号処理部40(第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39)の前後における画像信号の比率を、ある特定の周波数(第1の周波数)において特定のレスポンス目標比率に調整することにより、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを求める。
本実施形態において、図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図6は、画像処理の周波数特性を例示する図であり、(a)は第1のフィルタ処理(第1フィルタ処理実行部42)における「周波数−ゲイン」関係例を示し、(b)は第2のフィルタ処理(第2フィルタ処理実行部46)における「周波数−ゲイン」関係例を示し、(c)は第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理(信号処理部40)全体における「周波数−ゲイン」関係例を示す。
本実施形態の画像処理は、上述の第1実施形態に係る画像処理の一部が簡易化され、ある特定の周波数に注目し、その注目周波数に関して「第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率V」をピンポイント調整する。
ここでいう注目周波数は特に限定されず、例えば視覚特性上有意な周波数を注目周波数に設定することができる。また注目周波数の数も限定されず、単数であってもよいし、複数であってもよい。
この画像処理は、具体的には、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)の式(上記「式2」参照)の重み関数w(ωx,ωy)を次のように定義することにより実現可能である。
上記式4において「δ(x)」はクロネッカーのデルタ関数を示し、「ω0」は特定の周波数f0におけるx方向の周波数を示す。上記式4は、周波数に関し、x方向の周波数のみを参照する。これは、鮮鋭化フィルタの周波数特性が等方的であると想定しているため、特定の方向(上記式4においては「x方向」)について参照すれば十分だからである。
上記式4において表される重み関数を用いることによって、図6(c)に示す通り、第1フィルタ処理調整変数Gがいかなる値であったとしても、画像処理システム全体の周波数特性に関して、常に、特定の周波数f0において特定のゲイン(トータルゲイン調整率D)となる。
第1のフィルタ処理全体(第1のフィルタ処理部38)の周波数特性は、第1フィルタ処理実行部42によるフィルタ処理と第1フィルタ処理乗算器43によるゲインコントロール処理とによって決定され、第1フィルタ処理実行部42の周波数特性(図6(a)参照)の倍率が第1ゲイン調整倍率Uによって調整されることにより定まる。同様に、第2のフィルタ処理全体(第2のフィルタ処理部39)の周波数特性は、第2フィルタ処理実行部46によるフィルタ処理と第2フィルタ処理乗算器47によるゲインコントロール処理とによって決定され、第2フィルタ処理実行部46の周波数特性(図6(b)参照)の倍率が第2ゲイン調整倍率Vによって調整されることにより定まる。したがって画像処理システム全体の周波数特性(図6(c)参照)は、第1フィルタ処理実行部42及び第2フィルタ処理実行部46の周波数特性(図6(a)及び(b)参照)に適用される第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vをコントロールすることにより調整可能である。
強度自動調整部52における第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vの調整は、特定の周波数f0においてトータルゲイン調整率Dを実現するという制限はあるが、具体的な調整例は1つには定まらない。例えば、画像の高周波成分を強調したい場合には、図6(c)の「調整例1」に示すように、その高周波成分を強調するゲインが達成されるように第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vが決定される。一方、画像の高周波成分は強調せずに、低周波〜中周波の成分を強調したい場合には、図6(c)の「調整例2」に示すように、その低周波〜中周波の成分に重点的にゲインが適用される第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vが決定される。
他の構成は、図5に示す第1実施形態と同様である。
以上説明したように本実施形態によれば、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理を経た出力画像における鮮鋭度のバラつきを抑え、画質を安定化できる。
特に特定の周波数f0におけるゲインが固定されるので、例えば「ベースとなる低周波の鮮鋭度を一定に保ちつつ高周波の鮮鋭度を調整する」などの手法をとることができ、画像処理全体の周波数特性を柔軟にコントロールすることが可能である。例えば、スライダ等の操作手段をユーザインターフェース29に表示してユーザがこの操作手段を介して第1フィルタ処理調整変数Gを調整可能とすることにより、画像信号のうちベースとなる低周波の鮮鋭度を一定にしたまま高周波の鮮鋭度を調整することもできる。
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る画像処理ブロックの構成を示す図である。
本実施形態において、図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39は並列に設けられる。画像信号は第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39に入力され、第1のフィルタ処理による画像信号の増減分データと、第2のフィルタ処理による画像信号の増減分データとが加算される。
本実施形態の画像処理部35は鮮鋭化調整部63を有する。鮮鋭化調整部63は、第1のフィルタ処理部38からの画像データの増減分データと第2のフィルタ処理部39からの画像データの増減分データとを加算する第1加算器61と、第1加算器61から出力される加算後増減分データと入力画像データとを加算する第2加算器62とを含む。
上述の構成の本実施形態においては、画像信号に対する「第1フィルタ処理実行部42及び第1フィルタ処理乗算器43による第1のフィルタ処理」と「第2フィルタ処理実行部46及び第2フィルタ処理乗算器47による第2のフィルタ処理」とが並列的に行われ、各処理においては画像信号(入力画像データ)との差分値に相当する増減分データが算出される。第1のフィルタ処理による画像信号の増減分データと第2のフィルタ処理による画像信号の増減分データとは第1加算器61によって加算され、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理の全体による画像データの増減分データが算出される。この「処理全体による画像データの増減分データ」と画像信号(入力画像)とが第2加算器62によって加算され、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理が施された画像信号(出力画像)が生成される。
他の構成は、図5に示す第1実施形態と同様である。例えば、第1フィルタ処理乗算器43及び第2フィルタ処理乗算器47において使用される第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vは、強度自動調整部52によって適宜定められる。
本例の画像処理システム全体の周波数特性は、以下の式5によって表される。
上記式5において、第1のフィルタ処理部38の周波数特性が「U×ψ(ωx,ωy)」によって表され、第2のフィルタ処理部39の周波数特性が「V×φ(ωx,ωy)」によって表される。したがって第1加算器61による加算処理は「U×ψ(ωx,ωy)+V×φ(ωx,ωy)」の周波数特性に基づいており、第2加算器62による加算処理は「1+U×ψ(ωx,ωy)+V×φ(ωx,ωy)」の周波数特性に基づいている。
以上説明したように本実施形態においても、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39が直列的に配置される場合と同様に、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理を経た出力画像における鮮鋭度のバラつきが抑えられ、画質を安定化できる。また第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39が並列的に配列されても、例えば画像信号のうちベースとなる低周波の鮮鋭度を一定にしたまま高周波の鮮鋭度を調整する、などのコントロールが可能である。
<第4実施形態>
本実施形態に係る画像処理部35は、画像信号の非線形処理を行う非線形処理部を更に備え、2段フィルタ処理システム(第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39)において非線形処理が導入されている。この非線形処理部は、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39のうち少なくともいずれか一方に含まれるが、下記では第1のフィルタ処理部38に非線形処理部65が設けられる例について説明する。
非線形な処理は一般に加減乗除の演算処理のみからは構成されず、例えばLUT(ルックアップテーブル)の参照や条件分岐を伴う処理が含まれうる。非線形処理は、アーティファクトやノイズの抑制を目的として行われることが多く、例えば「画像信号のうちクリップ閾値を超える画像信号値(画素値)をクリップ閾値に調整するクリップ処理」を非線形処理として行ってもよい。
図8は、第4実施形態に係る画像処理ブロックの構成を示す図である。図9は、画像処理の周波数特性を例示する図であり、(a)は第1のフィルタ処理(第1フィルタ処理実行部42)における「周波数−ゲイン」関係例を示し、(b)は第2のフィルタ処理(第
2フィルタ処理実行部46)における「周波数−ゲイン」関係例を示す。
本実施形態において、図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本例の第1のフィルタ処理(第1のフィルタ処理部38)は、鮮鋭化フィルタによって抽出された画像信号の強調成分に対する強調倍率の適用、その強調倍率適用後の画像強調成分に対する非線形処理の適用、及び非線形処理後の画像強調成分と元画像との合成、という一連の処理を含む。
すなわち画像信号(入力画像データ)は第1フィルタ処理実行部42に入力されて第1のフィルタによるフィルタリング処理が行われ、第1のフィルタ処理による画像信号の増減分データが算出される。その増減分データは第1フィルタ処理乗算器43に入力され、増減分データ及び第1ゲイン調整倍率Uの乗算が第1フィルタ処理乗算器43によって行われ、乗算後の増減分データが非線形処理部65に入力される。
非線形処理部65は、入力された増減分データに対するクリップ処理(非線形処理)を行い、入力された増減分データ(画像データ)のうち特定のクリップ閾値を超えるデータがクリップ閾値に調整される。なお、クリップ閾値は予め定められて非線形処理部65が記憶していてもよいし、ユーザがユーザインターフェース29を介してクリップ閾値を直接的又は間接的に指定してもよい。クリップ処理後の画像信号の増減分データは第1フィルタ処理加算器44において第1フィルタ処理実行部42に入力される前の画像信号(入力画像データ)に加算され、第1のフィルタ処理後の画像信号(画像データ)が算出される。
非線形処理部65によって行われるクリップ処理は、以下の式6によって示すように、画像信号がクリップ閾値θ(≧0)以上の値をとらないように制限する処理である。
上記式6によって表されるクリップ処理関数CLIP(x)によれば、画像信号の信号成分(x)の絶対値がクリップ閾値θよりも小さい場合(|x|<θ)、その信号成分はクリップ処理によって調整されずに保持され、非線形処理部65から「x」が出力される。一方、画像信号の信号成分(x)の絶対値がクリップ閾値θ以上の場合(|x|≧θ)、その信号成分は符号関数(signum function)によって調整され、非線形処理部65から「sign(x)×θ」が出力される。
本例のフィルタ処理制御部37(強度自動調整部52)はこのクリップ処理(非線形処理)を考慮し、クリップ閾値θに応じて、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理のうちの少なくともいずれか一方における調整倍率(第1ゲイン調整倍率U、第2ゲイン調整倍率V)を決定してもよい。
他の構成は、図5に示す第1実施形態と同様である。例えば、第2のフィルタ処理部39における第2フィルタ処理実行部46のフィルタリング処理、第2フィルタ処理乗算器47の乗算処理及び第2フィルタ処理加算器48の加算処理は、上述の第1実施形態と同様に行われる。
なお、本例においては第1のフィルタ処理部38に非線形処理部65が設けられるが、非線形処理部は、第2のフィルタ処理部39にのみ設けられてもよいし、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39の双方に設けられてもよい。ただし、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39の双方で非線形処理が行われると、画像処理システム全体の周波数レスポンス近似式が複雑になり、トータル鮮鋭度評価値C(U,V)を一定の値に保ちながら第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを決定する制御が難しくなってしまう可能性がある。
図8に示す構成を有する画像処理システム(画像処理部35)に対してハイコントラストな波形(画像信号)が入力される場合、第1フィルタ処理実行部42及び第1フィルタ処理乗算器43による処理によって、ハイコントラスト波形信号の強調成分は比較的大きな振幅を持つ。しかしながら、非線形処理部65においてクリップ処理が行われることによりハイコントラスト波形信号の強調成分は制限され、前段に設けられる第1フィルタ処理実行部42及び第1フィルタ処理乗算器43による信号強調効果が弱められる。一方、第2のフィルタ処理部39においては非線形な処理が行われることなく、第2フィルタ処理実行部46及び第2フィルタ処理乗算器47によってハイコントラスト波形信号は強調される。したがって、ハイコントラスト波形信号に対しては、第1のフィルタ処理部38よりも第2のフィルタ処理部39による影響が大きくなり、第2のフィルタ処理部39による周波数強調作用が支配的になる。
一方、図8に示す画像処理システムに対してローコントラストな波形(画像信号)が入力される場合、第1フィルタ処理実行部42及び第1フィルタ処理乗算器43による処理によって信号が強調されるが、ローコントラストであるため、強調成分の振幅は比較的小さい。したがって、第1フィルタ処理実行部42及び第1フィルタ処理乗算器43による処理を受けたローコントラスト波形信号は、非線形処理部65におけるクリップ処理による制限を受けにくく、実質的にクリップされずに非線形処理部65を通過し易い。したがって、ローコントラスト波形信号に対しては、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39が協調して双方による信号処理効果(鮮鋭化効果)が相乗的に作用する。
なお、図8に示す例においては第1のフィルタ処理部38にのみ非線形処理部65が設けられるが、第2のフィルタ処理部39にのみ非線形処理部(クリップ処理部)65が設けられる場合も同様である。この場合、ハイコントラスト波形信号に対しては第2のフィルタ処理部39よりも第1のフィルタ処理部38による影響が大きくなり易く、ローコントラスト波形信号に対しては第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39が相乗的に作用する。
このように、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39の一方にのみ非線形処理部65を設けた場合、ハイコントラスト周波数特性とローコントラスト周波数特性とを異ならせることができる。したがって、例えばユーザが調整変数(例えば第1フィルタ処理調整変数G)を指定してゲイン調整倍率(例えば第1ゲイン調整倍率U)を求める場合、ユーザが調整変数を指定する処理部(例えば第1のフィルタ処理部38)には非線形処理部65を設けず、ユーザが調整変数を指定しない処理部(例えば第2のフィルタ処理部39)に非線形処理部65を設けることにより、ユーザの希望を画像信号により効果的に反映させることができる。
非線形処理を行う画像処理部が信号処理系に含まれる場合、その信号処理系の周波数特性を正確に求めることは原理的に不可能であり、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vの強度自動算出処理が適用できない場合がある。したがって非線形処理が行われる場合、特定の入力波形に対する出力波形から、内部の周波数特性を近似的に評価し、その近似的な評価によって得られる周波数特性を利用することにより、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vの自動算出処理を行ってもよい。この場合、システム全体の周波数特性F(ωx,ωy|U,V)を求める必要があり、特定の入力波形に対するシステムの周波数レスポンス近似式を数式によって表現することが求められる。このシステムの周波数レスポンス近似式の精度は、非線形処理の具体的な内容に依存する。
例えば、図8に示すクリップ処理を含む画像処理システムにおいて、予め特性を把握している入力波形(画像信号)を使用し、上述の第2実施形態のように特定の周波数f0において特定の値(トータルゲイン調整率D)を持つように重み関数w(ωx,ωy)を定義する場合(上記の「式4」参照)、画像処理システム全体の周波数特性を以下の式7によって近似的に表すことができることを本件発明者は経験的に知得した。
上記の式7において、「A」はクリップ閾値θと入力画像信号の鮮鋭度(ボケ度)に依存する定数である。また「min(U×ψ(ωx,ωy),A)」は「U×ψ(ωx,ωy)」及び「A」のうち小さい方を示す関数である。
上記式7を用いて、上述の第2実施形態に係る「「第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率V」の注目周波数f0に関するピンポイント調整」を行うと、ハイコントラストな入力波形(画像信号)に対する周波数特性(ハイコントラスト周波数特性)は、第1フィルタ処理調整変数Gがいかなる値であっても大きく変化せず、ベースとなる鮮鋭度は変化しにくい。一方、ローコントラストな画像信号に対する周波数特性(ローコントラスト周波数特性)は、第1フィルタ処理調整変数Gが大きくなると増幅される。
図10は、画像処理の周波数特性を例示する図であり、(a)はハイコントラスト波形信号に対する調整例を示す図であり、(b)はローコントラスト波形信号に対する調整例を示す図である。図10(a)及び(b)の調整例1と調整例2を比較すると、(a)のハイコントラスト波形信号においては調整例1と調整例2との間において周波数特性(「周波数−ゲイン」特性)はほとんど変わらないが、(b)のローコントラスト波形信号においては調整例1と調整例2とにおいて周波数特性が比較的大きく変化する。
このように本例によれば、第1フィルタ処理調整変数Gを調整することによって、画像信号のうちハイコントラスト成分をあまり変えずに、ローコントラスト成分によるディテール強調度をコントロールすることができる。
以上説明したように本実施形態によれば、第1のフィルタ処理部38及び/又は第2のフィルタ処理部39において非線形処理が行われる場合であっても、第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを的確に求めることができる。すなわち、フィルタ適用部(第1フィルタ処理実行部42、第2フィルタ処理実行部46)よりも後段において非線形処理が行われても、画像信号の特定の入力波形に対する周波数特性がおおよそ一定となるように第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを調整することができ、特定の周波数f0において所望のゲイン(トータルゲイン調整率D)を得ることができる。
なお、ユーザインターフェース29に表示されるスライダなどの操作手段を介してユーザが第1フィルタ処理調整変数Gを調整可能とすることにより、簡便に、ベースとなるハイコントラストの鮮鋭度を一定に保ちつつ、ローコントラストの鮮鋭度のみを独立して調整することができる。
なお上述の例においては、第1のフィルタ処理(第1フィルタ処理実行部42及び第1フィルタ処理乗算器43)の周波数特性と第2のフィルタ処理(第2フィルタ処理実行部46及び第2フィルタ処理乗算器47)の周波数特性とが異なる場合(図9参照)について説明したが、本実施形態では第1のフィルタ処理の周波数特性と第2のフィルタ処理の周波数特性が同じであってもよい。すなわち、第1のフィルタ処理部38及び/又は第2のフィルタ処理部39に非線形処理ブロックが含まれる場合には、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理の周波数特性が同じであっても、図8に示す処理構成によって所望の周波数成分調整を行うことが可能である。
<他の変形例>
上述の実施形態は例示に過ぎず、他の構成に対しても本発明を適用することが可能である。
図11は、一変形例に係る画像処理ブロックの構成を示す図である。
上述の実施形態においては第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39に同種の画像処理(鮮鋭化処理)が行われる例について示したが、第1のフィルタ処理部38及び第2のフィルタ処理部39において異なる種類の画像処理が行われてもよい。例えば、第1のフィルタ処理部38において点像復元処理を行って、第2のフィルタ処理部39において鮮鋭化処理を行ってもよい。この場合、第1フィルタ処理実行部42では、撮影光学系の点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理が第1のフィルタ処理として行われ、用いられる復元フィルタは画像信号の撮影取得における撮影設定条件に基づいて決定される。復元フィルタ及び撮影設定条件の取得手法は特に限定されず、例えば図11に示すように、復元フィルタ選択部53に撮影設定条件Sが入力され、復元フィルタ選択部53が複数の復元フィルタを記憶する復元フィルタ記憶部58から撮影設定条件Sに対応する復元フィルタXを選択し、第1フィルタ処理実行部42及び強度自動調整部52に送信するようにしてもよい。
なお、点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理は特に限定されず、光学系の点拡がり現象による画質劣化を低減する処理だけではなく、例えば撮影時のブレ(手ブレ、又は被写体ブレ等)による画質劣化を低減する処理であってもよい。したがって、復元フィルタの基礎となる点拡がり関数は、光学系の点光源に対する応答を表す関数に限られず、撮像装置による撮影時に検出される被写体の動き量(例えば手ブレや被写体ブレなどに起因する被写体の動き量)を反映した関数としてもよい。このため、第1のフィルタ処理部38及び/又は第2のフィルタ処理部39において点像復元処理が行われる場合、光学系の点拡がり現象によってボケた画像から鮮鋭な画像を取得するボケ回復処理やブレ画像から鮮鋭な画像を取得する電子式手ブレ補正処理を行うことが可能である。
また、第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理のうち少なくともいずれか一方における調整倍率(第1ゲイン調整倍率U、第2ゲイン調整倍率V)は、画像信号の撮影取得における撮影設定条件に基づいて決定されてもよい。例えば図11に示すように、レンズユニット12のレンズユニット記憶部21に、複数の第1フィルタ処理調整変数Gを記憶する第1フィルタ強度リスト記憶部67を設け、撮影設定条件Sが入力される調整変数選択部69が、撮影設定条件Sに対応する第1フィルタ処理調整変数Gを第1フィルタ強度リスト記憶部67から選択して強度自動調整部52に供給してもよい。またレンズユニット12のレンズユニット記憶部21に、複数の第2ゲイン調整倍率V0を記憶する第2フィルタ強度リスト記憶部60を設け、撮影設定条件Sが入力される第2フィルタ強度選択部54が、撮影設定条件Sに対応する第2ゲイン調整倍率V0を第2フィルタ強度リスト記憶部60から選択して強度自動調整部52に供給してもよい。この場合、「第1のフィルタ処理部38における処理を実質的にオフにした場合の第2ゲイン調整倍率V0」を第2フィルタ強度リスト記憶部60に記憶することにより、第2フィルタ強度選択部54から強度自動調整部52に送られる第2ゲイン調整倍率V0をトータルゲイン調整率Dとして使用することも可能である。
また上述の各実施形態においてはデジタルカメラ10において第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを自動調整計算する例について説明したが、出荷前にメーカ側において予めその自動調整計算を行い、算出した第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vのパラメータ全てをデジタルカメラ10(レンズユニット記憶部21、本体記憶部31等)に記憶保持させてもよい。例えば「第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率V」と「撮影設定条件S」とを対応付けたテーブルをデジタルカメラ10は記憶保持し、強度自動調整部52はこのテーブルを参照して撮影設定条件Sから第1ゲイン調整倍率U及び第2ゲイン調整倍率Vを求めることができる。この場合、デジタルカメラ10(画像処理部)において用いられるパラメータを生成するパラメータ生成方法は、「第1のフィルタ処理における信号のゲインの調整倍率及び第2のフィルタ処理における信号のゲインの調整倍率に基づくトータルゲイン調整率を取得するステップ」と、「第1のフィルタ処理及び第2のフィルタ処理のうちの一方における調整倍率を取得し、第1のフィルタ処理及び前記第2のフィルタ処理のうちの他方における調整倍率をトータルゲイン調整率に基づいて算出するステップ」と、を備える。これらのステップは、例えば上述の第1実施形態に係る強度自動調整部52と同様にして実行可能である。
また、本明細書に記載の実施形態同士を適宜組み合わせてもよく、第1実施形態〜第4実施形態及び変形例のうち、任意の形態同士が組み合わされてもよい。
また、上述の各機能構成は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の各装置及び処理部(本体コントローラ28、デバイス制御部34、画像処理部35(フィルタ処理制御部37、第1のフィルタ処理部38、第2のフィルタ処理部39)等)における画像処理方法(画像処理手順)をコンピュータに実行させるプログラム、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的記録媒体)、或いはそのプログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することができる。
また、本発明を適用可能な態様はデジタルカメラ及びコンピュータ(サーバ)には限定されず、撮像を主たる機能とするカメラ類の他に、撮像機能に加えて撮像以外の他の機能(通話機能、通信機能、その他のコンピュータ機能)を備えるモバイル機器類に対しても本発明を適用することが可能である。本発明を適用可能な他の態様としては、例えば、カメラ機能を有する携帯電話機やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯型ゲーム機が挙げられる。以下、本発明を適用可能なスマートフォンの一例について説明する。
<スマートフォンの構成>
図12は、本発明の撮像装置の一実施形態であるスマートフォン101の外観を示す図である。図12に示すスマートフォン101は、平板状の筐体102を有し、筐体102の一方の面に表示部としての表示パネル121と、入力部としての操作パネル122とが一体となった表示入力部120を備える。また、係る筐体102は、スピーカ131と、マイクロホン132、操作部140と、カメラ部141とを備える。なお、筐体102の構成はこれに限定されず、例えば、表示部と入力部とが独立した構成を採用したり、折り畳み構造やスライド機構を有する構成を採用することもできる。
図13は、図12に示すスマートフォン101の構成を示すブロック図である。図13に示すように、スマートフォンの主たる構成要素として、無線通信部110と、表示入力部120と、通話部130と、操作部140と、カメラ部141と、記憶部150と、外部入出力部160と、GPS(Global Positioning System)受信部170と、モーションセンサ部180と、電源部190と、主制御部100とを備える。また、スマートフォン101の主たる機能として、基地局装置BSと移動通信網NWとを介した移動無線通信を行う無線通信機能を備える。
無線通信部110は、主制御部100の指示に従って、移動通信網NWに収容された基地局装置BSに対し無線通信を行うものである。係る無線通信を使用して、音声データ、画像データ等の各種ファイルデータ、電子メールデータなどの送受信や、Webデータやストリーミングデータなどの受信を行う。
表示入力部120は、主制御部100の制御により、画像(静止画像及び動画像)や文字情報などを表示して視覚的にユーザに情報を伝達し、表示した情報に対するユーザ操作を検出する、いわゆるタッチパネルであって、表示パネル121と、操作パネル122とを備える。
表示パネル121は、LCD(Liquid Crystal Display)、OELD(Organic Electro−Luminescence Display)などを表示デバイスとして用いたものである。操作パネル122は、表示パネル121の表示面上に表示される画像を視認可能に載置され、ユーザの指や尖筆によって操作される一又は複数の座標を検出するデバイスである。係るデバイスをユーザの指や尖筆によって操作すると、操作に起因して発生する検出信号を主制御部100に出力する。次いで、主制御部100は、受信した検出信号に基づいて、表示パネル121上の操作位置(座標)を検出する。
図12に示すように、本発明の撮像装置の一実施形態として例示しているスマートフォン101の表示パネル121と操作パネル122とは一体となって表示入力部120を構成しているが、操作パネル122が表示パネル121を完全に覆うような配置となっている。係る配置を採用した場合、操作パネル122は、表示パネル121外の領域についても、ユーザ操作を検出する機能を備えてもよい。換言すると、操作パネル122は、表示パネル121に重なる重畳部分についての検出領域(以下、表示領域と称する)と、それ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分についての検出領域(以下、非表示領域と称する)とを備えていてもよい。
なお、表示領域の大きさと表示パネル121の大きさとを完全に一致させてもよいが、両者を必ずしも一致させる必要はない。また、操作パネル122が、外縁部分と、それ以外の内側部分の2つの感応領域を備えていてもよい。さらに、外縁部分の幅は、筐体102の大きさなどに応じて適宜設計されるものである。更にまた、操作パネル122において採用される位置検出方式としては、マトリクススイッチ方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などが挙げられ、いずれの方式を採用することもできる。
通話部130は、スピーカ131やマイクロホン132を備え、マイクロホン132を通じて入力されたユーザの音声を主制御部100にて処理可能な音声データに変換して主制御部100に出力したり、無線通信部110或いは外部入出力部160により受信された音声データを復号してスピーカ131から出力するものである。また、図12に示すように、例えば、スピーカ131を表示入力部120が設けられた面と同じ面に搭載し、マイクロホン132を筐体102の側面に搭載することができる。
操作部140は、キースイッチなどを用いたハードウェアキーであって、ユーザからの指示を受け付けるものである。例えば、図12に示すように、操作部140は、スマートフォン101の筐体102の側面に搭載され、指などにより押下されるとオンとなり、指を離すとバネなどの復元力によってオフ状態となる押しボタン式のスイッチである。
記憶部150は、主制御部100の制御プログラムや制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称や電話番号などを対応づけたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータや、ダウンロードしたコンテンツデータを記憶し、またストリーミングデータなどを一時的に記憶するものである。また、記憶部150は、スマートフォン内蔵の内部記憶部151と着脱自在な外部メモリスロットを有する外部記憶部152により構成される。なお、記憶部150を構成するそれぞれの内部記憶部151と外部記憶部152は、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、カードタイプのメモリ(例えば、MicroSD(登録商標)メモリ等)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの格納媒体を用いて実現される。
外部入出力部160は、スマートフォン101に連結される全ての外部機器とのインターフェースの役割を果たすものであり、他の外部機器に通信等(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、IEEE1394など)又はネットワーク(例えば、インターネット、無線LAN、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、RFID(Radio Frequency Identification)、赤外線通信(Infrared Data Association:IrDA)(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)(登録商標)、ジグビー(ZigBee)(登録商標)など)により直接的又は間接的に接続するためのものである。
スマートフォン101に連結される外部機器としては、例えば、有/無線ヘッドセット、有/無線外部充電器、有/無線データポート、カードソケットを介して接続されるメモリカード(Memory card)やSIM(Subscriber Identity Module Card)/UIM(User Identity Module Card)カード、オーディオ・ビデオI/O(Input/Output)端子を介して接続される外部オーディオ・ビデオ機器、無線接続される外部オーディオ・ビデオ機器、有/無線接続されるスマートフォン、有/無線接続されるパーソナルコンピュータ、有/無線接続されるPDA、有/無線接続されるパーソナルコンピュータ、イヤホンなどがある。外部入出力部は、このような外部機器から伝送を受けたデータをスマートフォン101の内部の各構成要素に伝達することや、スマートフォン101の内部のデータが外部機器に伝送されるようにしてもよい。
GPS受信部170は、主制御部100の指示に従って、GPS衛星ST1〜STnから送信されるGPS信号を受信し、受信した複数のGPS信号に基づく測位演算処理を実行し、スマートフォン101の緯度、経度、高度からなる位置を検出する。GPS受信部170は、無線通信部110や外部入出力部160(例えば、無線LAN)から位置情報を取得できる場合には、その位置情報を用いて位置を検出することもできる。
モーションセンサ部180は、例えば、3軸の加速度センサなどを備え、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の物理的な動きを検出する。スマートフォン101の物理的な動きを検出することにより、スマートフォン101の動く方向や加速度が検出される。係る検出結果は、主制御部100に出力されるものである。
電源部190は、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の各部に、バッテリ(図示しない)に蓄えられる電力を供給するものである。
主制御部100は、マイクロプロセッサを備え、記憶部150が記憶する制御プログラムや制御データに従って動作し、スマートフォン101の各部を統括して制御するものである。また、主制御部100は、無線通信部110を通じて、音声通信やデータ通信を行うために、通信系の各部を制御する移動通信制御機能と、アプリケーション処理機能を備える。
アプリケーション処理機能は、記憶部150が記憶するアプリケーションソフトウェアに従って主制御部100が動作することにより実現するものである。アプリケーション処理機能としては、例えば、外部入出力部160を制御して対向機器とデータ通信を行う赤外線通信機能や、電子メールの送受信を行う電子メール機能、Webページを閲覧するWebブラウジング機能などがある。
また、主制御部100は、受信データやダウンロードしたストリーミングデータなどの画像データ(静止画像や動画像のデータ)に基づいて、映像を表示入力部120に表示する等の画像処理機能を備える。画像処理機能とは、主制御部100が、上記画像データを復号し、係る復号結果に画像処理を施して、画像を表示入力部120に表示する機能のことをいう。
さらに、主制御部100は、表示パネル121に対する表示制御と、操作部140、操作パネル122を通じたユーザ操作を検出する操作検出制御を実行する。
表示制御の実行により、主制御部100は、アプリケーションソフトウェアを起動するためのアイコンや、スクロールバーなどのソフトウェアキーを表示したり、或いは電子メールを作成するためのウィンドウを表示する。なお、スクロールバーとは、表示パネル121の表示領域に収まりきれない大きな画像などについて、画像の表示部分を移動する指示を受け付けるためのソフトウェアキーのことをいう。
また、操作検出制御の実行により、主制御部100は、操作部140を通じたユーザ操作を検出したり、操作パネル122を通じて、上記アイコンに対する操作や、上記ウィンドウの入力欄に対する文字列の入力を受け付けたり、或いは、スクロールバーを通じた表示画像のスクロール要求を受け付ける。
さらに、操作検出制御の実行により主制御部100は、操作パネル122に対する操作位置が、表示パネル121に重なる重畳部分(表示領域)か、それ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分(非表示領域)かを判定し、操作パネル122の感応領域や、ソフトウェアキーの表示位置を制御するタッチパネル制御機能を備える。
また、主制御部100は、操作パネル122に対するジェスチャ操作を検出し、検出したジェスチャ操作に応じて、予め設定された機能を実行することもできる。ジェスチャ操作とは、従来の単純なタッチ操作ではなく、指などによって軌跡を描いたり、複数の位置を同時に指定したり、或いはこれらを組み合わせて、複数の位置から少なくとも1つについて軌跡を描く操作を意味する。
カメラ部141は、CMOSなどの撮像素子を用いて電子撮影するデジタルカメラである。また、カメラ部141は、主制御部100の制御により、撮像によって得た画像データを例えばJPEGなどの圧縮した画像データに変換し、記憶部150に記録することが可能であり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力することができる。図12に示すようにスマートフォン101において、カメラ部141は表示入力部120と同じ面に搭載されているが、カメラ部141の搭載位置はこれに限らず、表示入力部120の背面に搭載されてもよいし、或いは、複数のカメラ部141が搭載されてもよい。なお、複数のカメラ部141が搭載されている場合には、撮影に供するカメラ部141を切り替えて単独にて撮影が可能であり、或いは、複数のカメラ部141を同時に使用して撮影することもできる。
また、カメラ部141はスマートフォン101の各種機能に利用することができる。例えば、表示パネル121にカメラ部141において取得した画像を表示することや、操作パネル122の操作入力の一つとして、カメラ部141の画像を利用することができる。また、GPS受信部170が位置を検出する際に、カメラ部141からの画像を参照して位置を検出することもできる。さらには、カメラ部141からの画像を参照して、3軸の加速度センサを用いずに、或いは、3軸の加速度センサと併用して、スマートフォン101のカメラ部141の光軸方向を判断することや、現在の使用環境を判断することもできる。勿論、カメラ部141からの画像をアプリケーションソフトウェア内において利用することもできる。
その他、静止画又は動画の画像データにGPS受信部170により取得した位置情報、マイクロホン132により取得した音声情報(主制御部等により、音声テキスト変換を行ってテキスト情報となっていてもよい)、モーションセンサ部180により取得した姿勢情報等などを付加して記憶部150に記録が可能であり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力することもできる。
上述の画像処理部35(フィルタ処理制御部37、第1のフィルタ処理部38、第2のフィルタ処理部39:図3参照)は、例えば主制御部100によって実現可能である。