図1は、ガス試料中の微量ガスの監視及び/又は検出を行うための例示的な装置10のブロック図を示す。装置10は、サリン、タブン、ソマン、サルファマスタード、及びVX神経ガスなどの微量物質を検出するのに使用されてもよい。装置10は、たとえば、バイオガス中のシロキサンのレベルを検出するのに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、固体又は液体の物質の蒸気を検出してもよい。装置10は、吸収分光計及び/又はフーリエ変換赤外線(FTIR)分光計であってもよい。例示的な実施形態では、装置10は、光源14と、干渉計18と、試料セル22と、ガス試料26の供給源と、検出器30と、プロセッサ34と、ディスプレイ38と、ハウジング42とを含む。様々な実施形態では、装置10を使用して微量のガスを擬陽性又は擬陰性がもしあっても、擬陽性又は擬陰性をほとんど使用せずに短時間で検出してもよい。
様々な実施形態では、光源14は放射ビーム(たとえば、赤外線放射ビーム)を生成してもよい。光源14は、レーザ又はインコヒーレントな光源であってもよい。1実施形態では、光源はグローバー、すなわち、約1000℃に加熱されて黒体放射を生成する不活性固体である。グローバーは、炭化ケイ素から形成されてもよく、電力を加えられてもよい。システムのスペクトル範囲は約600cm−1から約5000cm−1の間であってもよい。システムの分解能は2cm−1及び約4cm−1であってもよい。1実施形態では、検出システムは微量ガスの検出時に微量ガスのより高い分解能のスペクトルを記録してもよい。より高い分解能のスペクトルは微量ガスを特定する助けになることができる。
様々な実施形態では、放射の光源14と干渉計18は単一の機器を構成してもよい。いくつかの実施形態では、干渉計18は当技術分野で広く知られているマイケルソン干渉計である。1実施形態では、干渉計18はエムケイエスインストルメンツインコーポレイティッド社(MKS Instruments, Inc.)[米国マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington)所在]から市販されているBRIK干渉計である。BRIK干渉計は、入射放射を分割し合成するコンバイナと、放射を変調するための可動コーナーキューブと、中央バーストを特定するのに使用される白色光源と、コーナーキューブの速度を監視するための垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)とを含んでもよい。BRIK干渉計は、傾斜及び側方運動エラーの影響を受けず、また熱的変動の影響を受けず、したがって、干渉計の丈夫さを高めることができる。
1実施形態では、干渉計18は、放射光源、固定鏡、可動鏡、光学モジュール、及び検出器モジュール(たとえば、検出器30)を含むモジュールであってもよい。干渉計モジュールは、その光源によって生成されかつ試料(たとえば、試料セル22内に含まれる試料26)を透過するすべての光学周波数を測定することができる。放射は、光学モジュール(たとえば、ビームスプリッタ)に向けられ、光学モジュールは放射を2条のビーム、すなわち、第1の信号と第2の信号に分割することができる。可動鏡は、電磁エネルギーからなる最初は実質的に同一の2条のビーム間の可変光路長差を形成する。可動鏡は通常、一定の速度で移動又は走行させられる。第1の信号が第2の信号とは異なる距離を伝搬した(この実施形態では、可動鏡が移動することに起因する)後、光学モジュールによって第1の信号と第2の信号を再結合し、2条のビームが干渉することによって変調された強度を有する放射測定信号を生成することができる。この干渉信号は、試料を通過し、検出器によって測定される。様々な試料(たとえば、固体、液体、又は気体)が存在すると
、検出器によって検出されるような放射の強度を変調することができる。したがって、検出器の出力は、固定鏡と可動鏡の相対位置によって確立される光路差ならびに試料によって生成される電磁信号の変調に応じて可変時間依存信号になる。この出力信号はインターフェログラムとして表すことができる。
インターフェログラムは、受け取られるエネルギー強度と可動鏡の位置を対比したプロットとして表すことができる。当業者は、インターフェログラムを時間の関数である信号と呼ぶ。インターフェログラムは、可動鏡の変位によって生成される可変光路差の関数である。通常、望ましくは可動鏡の位置を一定の速度で移動させるので、当業者はインターフェログラムを「時間ドメイン」信号と呼ぶ。インターフェログラムは、光源によって放出されかつ試料を通過するエネルギーのすべての波長の和として理解されてもよい。コンピュータ又はプロセッサは、フーリエ変換(FT)の数学的方法を使用して、インターフェログラムを試料を通して吸収されるか又は試料を透過する光を特徴付けるスペクトルに変換することができる。個々の種類の分子はエネルギーの特定の波長を吸収するので、インターフェログラム及び対応するスペクトルに基づいて試料に存在する分子を判定することが可能である。同様に、試料によって吸収されるか又は試料を透過するエネルギーの大きさを使用して試料中の分子の濃度を求めてもよい。
様々な実施形態では、干渉計を使用せずに干渉信号が形成される。吸収分光計を使用して光学信号が記録され、微量化学種に関する情報が、試料採取領域を透過した信号から導出される。たとえば、吸収スペクトル又は差分スペクトルを使用してよい。
様々な実施形態では、試料セル22は屈曲光路及び/又は多重パス吸収セルであってもよい。試料セル22は、光学構成要素のシステムを囲むアルミニウム製ハウジングを含んでよい。いくつかの実施形態では、試料セル22は、米国特許第5440143号に記載され、開示が本願明細書に援用する屈曲経路光学分析ガスセルである。
様々な実施形態では、ガス26の試料の供給源は大気であってもよい。試料セル22又はガス試料採取システムは、周囲の空気を収集して試料セル22の試料採取領域に導入してもよい。ガスの試料は、試料セル22の入口46及び出口50を含む流れシステムを使用して所定の流量で試料セル22に導入されてもよい。
様々な実施形態では、検出器30は赤外線検出器であってもよい。いくつかの実施形態では、検出器30は冷却検出器である。たとえば、検出器30は低温冷却検出器(たとえば、テルル化カドミウム水銀(MCT)検出器)、Stirling(商標)冷却検出器、又はペルティエ冷却検出器であってもよい。1実施形態では、検出器は重水素硫酸トリグリシン(DTGS)検出器である。1実施形態では、検出器は、微量ガスを検出するのに必要な感度をもたらすことができる16μmの切欠きを有する0.5mm Stirling冷却MCT検出器である。スターリング冷却MCT検出器の相対応答性(すなわち、波長の関数としての応答性の比)は対象となる主波長領域(たとえば、8.3μm〜12.5μm)全体にわたって少なくとも80%である。さらに、Stirling冷却MCT検出器のD*値は少なくとも3x1010cmHz1/2W−1であってもよい。D*は、検出器等価ノイズパワーにアクティブ要素面積の二乗を掛けた値の逆数として定義されてもよい。
プロセッサ34は、検出器30から信号を受け取り、微量ガスのスペクトル・フィンガープリントによって微量ガスを特定するか、又は試料内の特定の物質の相対濃度又は絶対濃度を示してもよい。プロセッサ34は、たとえば、パーソナルコンピュータ上で動作する信号処理ハードウェア及び定量化分析ソフトウェアであってもよい。プロセッサ34は処理ユニット及び/又はメモリを含んでもよい。プロセッサ34は、試料内の複数のガス
の濃度を算出しつつスペクトルを連続的に取得して処理してもよい。プロセッサ34は、微量ガスの特定、微量ガスのスペクトル、及び/又は微量ガスの濃度などの情報をディスプレイ38に送ってもよい。プロセッサ34は、スペクトル濃度時刻歴をグラフ及び表フォーマットで保存するとともに測定されたスペクトル及びスペクトル残差を保存してもよく、これらは表示されてもよい。プロセッサ34は、様々な他のデータを後で再処理又は再検討できるように収集し保存してもよい。ディスプレイ38は、陰極線管ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、フラットスクリーンディスプレイ、又は当技術分野で周知の他の適切なディスプレイであってもよい。
様々な実施形態では、ハウジング42は、携帯性、頑丈さ、及び軽量のうちの1つ又は複数を有する検出システムを実現するように構成されてもよい。ハウジング42は、ハンドルを含んでよく、かつ/又はプルカートもしくはハンドトラックなどの搬送機構に容易に固定することができる。ハウジング42は、搬送されかつ/又は落下した場合に光学系がずれるか又は構成要素が破壊されるのを妨げるほど頑丈であってもよい。様々な実施形態では、装置10は、重量が40ポンド(18.14kg)程度であってもよい。1実施形態では、装置10は完全内蔵型である(たとえば、試料を収集し、スペクトルを記録し、スペクトルを処理し、試料に関する情報を表示するのに必要なハウジング42内のすべての構成要素を含む)。
図2は、装置10に使用できる光学構成の例示的な実施形態を示す。光源14(たとえば、グローバー)からの放射は第1の鏡52によって(たとえば、臭化カリウム・ビームスプリッタを含む)干渉計18に向けられる。放射ビームは放物面鏡54(PM)によって第1の折畳みミラー58に向けられ、試料セル22内に向けられる。放射ビームは、試料セルから出射し、第2の折畳みミラー62によって楕円鏡66(EM)に向けられ、楕円鏡66は放射ビームを検出器30に向ける。
代表的な1実施形態では、放物面鏡54は有効焦点距離が約105.0mmであり、みかけの焦点距離が約89.62mmであり、約74.2mmの偏心値を有してもよい。放物面鏡54の直径は約30.0mmであってもよく、反射角は約45°であってもよい。
1実施形態では、楕円鏡66は、長半径が約112.5であり、短半径が約56.09であり、楕円の傾斜角が約7.11°であり得る。楕円鏡66の直径は約30.0mmであってもよく、反射角(主光線)は約75°であってもよい。
様々な実施形態では、第1の折畳み鏡58は直径が約25mmであり、第2の折畳み鏡62は直径が約30mmである。
鏡及び光学系は金のコーティング、銀のコーティング、又はアルミニウムのコーティングを含んでもよい。1実施形態では、楕円鏡及び放物面鏡は金でコーティングされ、平坦な折畳み鏡は銀でコーティングされる。
様々な実施形態では、試料セルは対物鏡表面74と視野鏡表面78とを含んでもよい。対物鏡表面74は実質的に球形で凹状であってもよい。視野鏡表面78は、凹状であってもよく、対物鏡表面74と向かい合う関係に位置してもよい。対物鏡表面74は、表面74と表面78の間を伝搬する放射ビームのスループットを最大にするように少なくとも1つの平面における各焦点の一致度を高める少なくとも1つの円筒状構成要素を含んでもよい。1実施形態では、対物鏡表面74は、実質的に球状の複数の凹状反射性対物鏡表面を含み得、各表面は、放射ビームのスループットを最大にするように少なくとも1つの平面における焦点の一致度を高める円筒状構成要素を含んでもよい。対物鏡表面の湾曲の中心は視野鏡表面78の後方に位置してよい。少なくとも1つの平面における焦点の一致度を高めることによって、歪み、非点収差、球面収差、及びコマをよりうまく制御することが
でき、より高いスループットを実現することができる。円筒状構成要素を追加すると、1つの平面における有効曲率半径を小さくすることができ、したがって、反射表面に入射した光が直交面における焦点によりうまく接近することが可能になる。1実施形態では、対物鏡表面74に円筒状構成要素が重畳され、2つの直交面において様々な曲率半径が形成される。対物鏡表面74はトロイダル形に近づく輪郭を有してもよい。
試料セル22の総光路長は約5mから約15mの間であってよい。ただし、用途に応じてこれよりも長い光路長及びこれよりも短い光路長を使用してもよい。詳細な1実施形態では、試料セル22は、対物鏡表面74と視野鏡表面78との間の総パス数が約48回であることによる約10.18mの総光路長を有する。試料セル22の光学系は0.5mmの検出器及び1ステラジアンの集光角が得られるように最適化されてもよい。検出器光学系倍率比は約8:1であってもよい。対物鏡表面74及び視野鏡表面78は、約800cm−1〜1200cm−1の間で公称反射率が約98.5%である金のコーティングを有してもよい。試料セルの内部体積は約0.2Lから約0.8Lの間であってもよい。ただし、用途に応じてこれよりも多い体積及びこれよりも少ない体積を使用してもよい。詳細な1実施形態では、体積は約0.45Lである。
1実施形態では、放射ビームを試料セル22に入射し試料セル22を通過するように向けて試料セル22の入射スリット上の放射ビームに集束させ、かつ/又は放射ビームを検出器の方へ向けるのに使用される鏡及び光学系は、試料セルの光学的特性に整合するように最適化されてもよく、それによって、放射のスループットを最大にして検出システムの感度を高めることができる。
たとえば、1実施形態では、適切に位置合わせされた光学構成は、効率が約88.8%であり得る。本明細書では、効率は、放出角度範囲内の放出された光線の総数に対する画像に入射する光線の数の比であってもよい。1実施形態では、折畳み鏡58,62ならびに検出器30の位置は調整可能であってもよく、したがって、干渉計18と放物面鏡54と試料セル22と検出器30との間の様々な機械的公差誤差を補償することが可能になる。1実施形態では、以下の公称(設計)光学距離を使用してスループットを最適化してもよい。
・検出器から楕円鏡までの距離(X1)が約21.39mm。
・楕円鏡から折畳み鏡までの距離(X2)が約132.86mm。
・折畳み鏡から試料セル(視野鏡の表面)までの距離(X3)が約70.00mm
・試料セル光路長が約10181.93mm。
・試料セルから折畳み鏡までの距離(X4)が約70mm。
・折畳み鏡から放物面鏡までの距離(X5)が約35mm。
図3は、試料セル22に試料を導入するための例示的な流れシステム82の例示的な実施形態を示す。流れシステム82は、ガス配管110に連結された、フィルタ86と、流量センサ90と、任意の加熱要素90と、ガスセル22と、圧力センサ98と、弁102と、ポンプ106とを含む。矢印は流れの方向を示す。流れシステム82の構成要素のうちの1つ又は複数には、除染温度に耐え、CWA及びTICの腐食性に抵抗し、シロキサンを凝縮させるのを回避するために、たとえば、Teflon(商標)、ステンレススチール、及びKalretz(商標)などの濡れ性部分を含めてもよい。
フィルタ86はモットコーポレーション(Mott Corporation)[コネティカット州ファーミントン(Farmington)]から市販されているインライン2μmステンレススチール・フィルタであってもよい。流量センサ90は、ステンレススチール濡れ性部品を含む質量流量センサ、たとえば、マクミランカンパニー(McMillan Company)[テキサス州ジョージタウン(Georgetown)]から
市販されている流量センサであってもよい。加熱要素94はワットローエレクトリックマニュファクチャリングカンパニー(Watlow Electric Manufacturing Company)[モンタナ州セントルイス(St.Louis)]から市販されているラインヒータであってもよい。圧力センサ98は、エムケイエスインストルメンツ(MKS Instruments)[マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington)]から市販されているBaratron(商標)圧力センサであってもよい。弁102は、ステンレススチールであってもよく、Teflon(商標)製Oリングを含んでよく、たとえ、スウェージロック(Swagelok)社[オハイオ州ソロン(Solon)]から市販されている弁であってもよい。ガス配管110はスウェージロック(Swagelok)社から市販されている直径が3/8”(9.5mm)の配管であってもよい。
ポンプ106は、加熱されたヘッドを有する「マイクロ」ダイアフラムポンプであってもよい。エアディメンジョンズインコーポレイティッド社(Air Dimensions,Inc.)[フロリダ州ディアフィールドビーチ(Deerfield Beach)]から市販されているDia−Vac(商標)B161ポンプを使用してよい。1実施形態では、ハーグレイブステクノロジーコーポレーション(Hargraves Technology Corporation)[ノースカロライナ州ムーアスヴィル(Mooresville)]から市販されている小形ダイアフラムポンプを使用してもよい。例示的な実施形態では、ポンプ106は、試料セル22に空気を引き込むように試料セル22の下流側に位置してもよい。いくつかの実施形態では、加熱されたヘッドを有さないポンプを使用してもよい。いくつかの実施形態では、ガス試料を加圧しない場合、ポンプは必要とされない。そのような状況では、ガス試料の上部圧力は試料をガスセル内を推進させるようになっている。その結果、システム内のあらゆる漏れを分析器に押し込むのではなく、分析器から引き離し、分析器の内部構成要素を汚染する可能性を最低限に抑えることができる。さらに、ポンプのエラストマに対する意図されない化学反応の不要な生成物が試料セル22に進入するのを防止することができる。
様々な実施形態では、流れシステム82を通過する流量は2L/分から10L/分の間であってもよい。ただし、用途に応じてこれよりも多い流量及びこれよりも少ない流量を使用してもよい。1実施形態では、流量は3L/分から6L/分の間である。試料の圧力は約1気圧であってよい。ただし、用途に応じてこれよりも高い圧力及びこれよりも低い圧力を維持してもよい。いくつかの実施形態では、試料セルを最高4気圧などの高圧で動作させてもよい。試料セルの動作温度は約10℃から約40℃の間であってもよい。ただし、用途に応じてこれよりも高い温度及びこれよりも低い温度を維持してもよい。1実施形態では、検出システムは試料を約40℃から約180℃の間に加熱するための加熱要素を含んでもよい。1実施形態では、装置の汚染を除去するために温度を約150℃まで上昇させもよい。
様々な実施形態では、試料セル光路長は約5mから約12mの間であってもよい。視野鏡表面と対物鏡表面との間の間隔は、ガス試料採取流量によって制限されることがある。1実施形態では、間隔が16cmでパス回数が32である5.11mの試料セルは内部体積が約0.2Lであってもよい。別の実施形態では、パス回数が同じである場合、パス回数が32で間隔が20.3cmであるときは体積が約0.4Lになり得る。さらに別の実施形態では、間隔が25.4cmである場合、体積は約0.6Lになり得る。適切な量の「新鮮な」周囲ガスを少なくとも10秒おきに供給することができる流量を求めてもよい。ただし、これよりも少ない試料採取率を実現してもよい。様々な実施形態では、最適なガス交換率を実現するように流量(たとえば、2L/分から10L/分の間)を最適化してもよい。たとえば、1実施形態では、ガス交換率は検出時間間隔が20秒の場合少なくとも80%である。1実施形態では、ガス交換率は検出時間間隔が10秒の場合約80%
から約95%の間である。
光路長/NEA比は、検出システムの感度を定量化するための測定基準として使用されてもよい。光路長は、メートル単位で測定された試料セルの総ビーム光路長であり、NEAは、吸光度単位(AU)で測定されたノイズ等価吸光度である。感度が検出システムの偶然誤差(ランダムノイズとも呼ばれる。検出器及び電子機器のノイズ)によって制限されるのであれば、検出限界は光路長/NEA比に反比例し得る。たとえば、この比が2倍になった場合、ppb又はmg/cm3単位の特定の試料の検出限界が2分の1になる。したがって、これは感度性能の適切な定量化計量である。この計量では、たとえばガス加圧及び冷却トラッピングなどの高度な試料採取技術による感度向上を考慮しない。
検出器ノイズ及びデジタル化ノイズなどのシステムノイズの制限を考慮して、光路長/NEA比を様々なシステム構成について最適化することができる。最適化できるパラメータには流量、試料セル体積、光路長、試料セルにおけるパス回数、光学構成、鏡反射率、鏡反射材料、及び使用する検出器が含まれる。たとえば、最適な検出器は、サイズ、コスト、及び耐用年数の制約内で最高のD*値及び速度(より短い応答時間)を有する検出器である。
検出器ノイズが制限された分光計の場合、光路長/NEA比の感度はD*値に比例する。検出器帯域幅は最高スキャン速度を決定することができ、最高スキャン速度は許容測定期間内に実行できる最大データ平均化数を決定する。検出器又は電子機器ノイズが制限されたシステムでは、感度は一般に、平均化スキャン数、又はたとえば、これらのスキャンを実行する時間の平方根に従って高くなる。1実施形態において、スターリング冷却検出器では、光路長/NEA感度比が少なくとも1.5x105m/AUになり得る。DTGS検出器は、低コストでありかつ保守不要寿命が長いので安価な代替手段になり得る。ただし、DTGS検出器はD*値がより小さくかつより低速である可能性がある。
光路長/NEA値は、視野鏡表面と対物鏡表面との間の距離及びこれらの表面間のパスの数を最適化することによって求めてもよい。図4は、様々な表面間隔、たとえば、6.3インチ(16.0cm)、8インチ(20.3cm)、及び10インチ(25.4cm)についての鏡反射の関数としての光路長/NEAのグラフを示す。図4に示すように、最大光路長/NEA値はパス回数が約92であるときに生じる。しかし、パス回数が92であるとき、鏡表面における反射損失によって光の25%のみが透過する。詳細な1実施形態では、試料セルは透過率が約50%から約60%の間である。鏡反射率が98.5%である場合、60%の透過率は、図4に垂直線で表されている約32回のパスに相当する。50%の透過率は約48回のパスに相当する。表1は、試料中の微量ガスを検出するための試料採取システムを実現するためのパラメータの例示的な組合せを示す。
表1 試料中の微量ガス検出システムの試料採取を実現するパラメータの例示的な組合せ
光路長/NEA比はmg/m3又は濃度の10億分の1(ppb)単位の検出限界に変換されてもよい。そのような変換に使用される方法は、予想ピーク吸光度と予想NEA値の比較である。装置10を使用してシロキサン、サリン、タブン、ソマン、サルファマスタード、及びVX神経ガスなどの微量の物質を約500ppよりも低い濃度で検出することができる。様々な実施形態において、濃度は約10ppbから約500ppbの間であってもよい。ただし、システム及び用途に応じてこれよりも高い濃度及びこれよりも低い濃度を検出してもよい。いくつかの実施形態では、濃度は種に応じて5ppbから約50ppbの間であってもよい。たとえば、装置10は微量のサリンを約8.6ppbから約30ppbの間の濃度で検出することができ、微量のタブンを約12.9ppbから約39ppbの間の濃度で検出することができ、微量のソマンを約7.3ppbから約22.8ppbの間の濃度で検出することができ、微量のサルファマスタードを約36.7ppbから約370.6ppbの間の濃度で検出することができ、微量のVX神経ガスを約12.9ppbから約43.9ppbの間の濃度で検出することができる。
ガス交換率、すなわち、試料セルに供給される新鮮なガスの蓄積量の測定値を光路長/NEA比と組み合わせて、「Z秒間に検出されたXmg/m3(又はppb)のガスY」として明示された検出システム応答時間を得ることができる。検出システム応答時間は測定時間と計算時間(たとえば、約5秒)とを含む。表2は、サリン、タブン、ソマン、サルファマスタード、及びVX神経ガスなどの様々な物質についての例示的な検出システム応答時間を示す。
表2 本発明の検出システムを使用して測定された微量ガスについての例示的な検出システム応答時間(すべての応答時間は秒単位である)
図5は、微量ガスの濃度対ステップ・プロフィール入力を使用する時間のグラフである(たとえば、微量ガスは測定サイクルの開始時に試料セルに進入する)。測定期間「A」は、データが収集されかつ/又はインターフェログラムが記録される時間である。計算期間「B」は、インターフェログラムがスペクトルに変換され、スペクトル分析が行われてアラームレベル及び/又は濃度値を求めるのを可能にするデータが生成されるときである。
図6は、一連の測定値のタイムラインを示す。物質1が試料セルに進入し、測定期間1中に検出される。計算期間1の間にインターフェログラムが分析される。測定期間1の間に物質2が試料セルに進入する。物質2は、十分に濃度が高い場合、測定期間1の残りの部分の間に検出され得る。物質2は、検出不能である場合、その後の測定期間、たとえば、測定期間2の間に検出され、その後の計算期間、たとえば、計算期間2の間にインターフェログラムが分析される。
1実施形態では、各読取り値を一定の所定の間隔で時間的に分離することができる。様々な実施形態では、この間隔は、約1秒から約1分の間であってよい。ただし、用途に応じてこれよりも短い間隔又はこれよりも長い間隔を使用してもよい。いくつかの実施形態では、間隔は約5秒、約10秒、又は約20秒である。したがって、応答時間は、この間隔ならびに物質が検出システムによっていつ検出可能になるかによって決まる。
様々な実施形態では、検出システムは、微量ガスの検出、脅威レベル、時刻、物質の影響を受ける恐れがある部屋又は建物内の人の数、特定の測定用途又はシナリオ、又はそれらの組合せなどの外部因子に基づく1つ又は複数のパラメータを採用してよい。たとえば、高脅威条件では、より短い間隔を使用して検出時間を最短にし、微量物質の検出可能性を最高にしてもよい。低脅威状況では、検出システムの寿命を維持し、誤アラーム(誤陽性又は誤陰性)の可能性を低減させることのできるより長い間隔を使用してもよい。
さらに、特定の物質についてのしきい値レベルを超える個々の測定値によって、より短い時間で追加の測定を行うことができるように検出システムが間隔を短くするのをトリガすることができる。様々な実施形態では、第1のスペクトルを第1の分解能又は感度で記録してもよい。汚染物質が検出された場合、それぞれより高い分解能又は感度で第2のスペクトルを記録してもよい。さらに、検出器は、より高い温度で動作し、それによって検出器の感度を低下させる待機モードを有してもよい。外部因子によってトリガされたときには、検出器の温度を低下させて検出器の感度を向上させることができる。
様々な実施形態では、検出システムは外部因子又は知覚される脅威に基づいてスキャンの回数を変更することができる。たとえば、スキャンの回数を増やして検出システムの感度を向上させてもよい。1実施形態では、検出システムはこれらの追加のスキャンを記録
しつつより高い分解能で動作することができる。1実施形態では、各スキャンにおいて平均の個数又は個々のスキャンの回数を増やしてもよい。
様々な実施形態では、検出システムは、スペクトルの低周波数領域(たとえば、1300cm−1よりも低い)をデジタル化するにすぎず、したがって、より高速にスキャンすることができる。電子フィルタ又は検出器の応答関数を使用してより高い周波数領域(たとえば、1300cm−1よりも大きい)を除去してもよく、それによってエイリアシングを予防するか又は最低限に抑えることができる。
いくつかの実施形態では、検出システムはスペクトルの一部において微量ガスの存在を検出することができる。スペクトルの第2の部分を分析して微量ガスの存在を確認しかつ/又は微量ガスの濃度レベルを求めてもよい。
1実施形態では、検出システムを小形の自給多重ガス分析器としてパッケージングすることができる。たとえば、検出システムは大気質を記録し、図表化し、分析し、報告するための診断ツールであってもよい。図7及び図8は、大気質、たとえば、微量ガスの周囲空気を監視するための例示的な検出システムを示す。図7を参照すると分かるように、検出システムは、ハウジング42’と、第1のディスプレイ38’と、第2のディスプレイ38”と、ガス入口46’と、ガス出口50’と、外部デバイスに連結されるポート118とを含む。
ハウジング42’は、頂部パネル122と、側部パネル126と、底部パネル130(図8に示す)とを含む三次元矩形ボックスであってもよい。頂部パネル122は、ヒンジによって側部パネル126から取外し可能であり、したがって、ハウジング42’は使用時に開放されてもよい。頂部パネル122の外部表面は、外部表面に取り付けられるか又は外部表面に埋め込まれた第1のディスプレイ38’及び第2のディスプレイ38”を含んでもよい。第1のディスプレイ38’は、たとえば、タッチスクリーン・ディスプレイを有する液晶ディスプレイ(LCD)であってもよい。第1のディスプレイ38’は、検出システムを動作させるためのコマンドを受け取ってもよく、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示してもよい。第2のディスプレイ38”は、たとえば、脅威レベル、アラームステータス、及び/又は検出システム状態ステータスを示すように点灯される一連のLEDを含む発光ダイオード(LED)ディスプレイであってもよい。たとえば、第2のディスプレイ38”は、アラームステータスを示す第1の一連の緑色LED、黄色LED、及び赤色LED、ならびにセンサ状態ステータスを示す第2の一連の緑色LED、黄色LED、及び赤色LEDを含んでもよい。様々な実施形態では、ハウジング42’は周囲空気を取り込むための穴を画定してよい。この穴を使用してガスの試料を流れシステムに導入し試料セルにおける検出を可能にすることができる。
図8は、頂部パネル122がヒンジによって開放されたときの頂部パネル122及び底部パネル130の内部図を示す。底部パネルは、光学構成要素を収納するための光学系ボックス134を含む内部本体を含む。光学系ボックス134は、アルミニウムシェル(たとえば、6061−T6)から形成されてもよい。1実施形態では、光学系ボックス134は気密のボックスである。図8に示すように、光学系ボックス134は光源14’と、干渉計18’と、試料セル22’と、検出器30’と、放物面鏡54’と、第1の折畳み鏡58’と、第2の折畳み鏡62’と、楕円鏡66’と、対物鏡表面74’と、視野鏡表面78’とを含む。光学系ボックス134は、ガス流量を調整するための弁138と、圧力センサ98’と、ポンプ106’と、ガス配管110と、連結を行うための取付け具142とを含む流れシステムを含んでもよい。様々な構成要素及びファン150用の電源146を底部パネル130に取り付けてもよい。検出システムは静止空気中で動作させることができ、ファン150はシステムの内部温度を維持することができる。底部パネル13
0は、頂部パネル122とインターフェースをとるコネクタ154も含む。
図8に示すように、頂部パネル122には電子構成要素が取り付けられてもよい。たとえば、頂部パネル122はデータ取得モジュール158と、鏡運動制御モジュール162と、単一ボードコンピュータ166と、配電モジュール170と、ハードライブ172とを含んでもよい。データ取得モジュール158は前置増幅器と、アナログ・デジタル変換器と、データ取得ボードとを含んでもよい。前置増幅器は、検出器30’から受け取られたアナログ信号を増幅してもよい。アナログ信号は、アナログ・デジタル変換器を使用してデジタル信号に変換されてもよい。データ取得ボードはネットバーナー社(Netburner)[カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)]から市販されているNetburnerプロセッサボードであってもよい。単一ボードコンピュータ166は、Windows(登録商標)を実行し、ユーザにGUIを提示する容易に入手可能なPCマザーボードであってもよい。
配電モジュール170は、システム内の他のモジュールへの電力を処理し分配してもよく、検出システムの機能を監視するのに使用される状態センサ及びステータスセンサを実現してもよい。たとえば、配電モジュール170は、AC電力をシステム電源146及びファン150に分配してもよく、温度コントローラ174、たとえば、ドワイヤーインストルメンツインコーポレイティッド社(Dwyer Instruments,Inc.)[インディアナ州ミシガンシティ(Michigan City)]から市販されているLove Controls(商標)を制御してもよい。配電モジュール170はまた、試料セル圧力、エアフィルタにおける差圧、試料セル温度、及び検出器温度を監視し、出力をA/D変換し、結果を単一ボードコンピュータ166に送り返す。配電モジュール170は、単一ボードコンピュータ166からのコマンドの下でStirling冷却検出器の冷却器を制御してもよい。頂部パネル122は試料セル温度送信機を含んでもよい。
データ処理は、頂部パネル122に取り付けられ、データのリアルタイム分析を可能にし得るモジュールを使用して行うことができる。スペクトルライブラリは約300個から約400個の間のガスのスペクトル・フィンガープリントを含んでもよい。しかしながら、スペクトルを記録する場合、より多くのガスを追加してもよい。データ処理は、MATLAB又はC++などの標準的なコンピュータ・プログラミング言語によって行うことができる。記録されたスペクトルをMATLABに転送してスペクトル後処理を行い、ガス濃度、スペクトル残差、及び/又は誤アラームレートを算出してもよい。様々な実施形態では、検出システムの動作時に誤アラームが生じる回数は1年間で約6回未満である。誤アラームは、ノイズ、異常スペクトル作用、分析コード、モデルエラー、スペクトルライブラリのエラー、又は未知の干渉物質によって生じることがある。
コンピュータ・ソフトウェアは、グラフィカル遠隔制御機能を有するJava(登録商標)ベースのプラットフォーム上で動作してもよい。コンピュータ・ソフトウェアは、ユーザログイン、ウェブベースのGUI、アラーム・トリガリング、及び/又は検出システムから遠くに配置されてもよいクライアント・コンピュータへのEthernet(商標)インターフェースを含む標準的なサービスを組み込んでもよい。コンピュータ・ソフトウェアは、遠隔健康管理診断を実行してもよい。さらに、ポート118を使用して、データ処理及びデータ分析を実行することのできるスタンドアロン・コンピュータにシステムを接続してもよい。
ハウジング42’は、50Gの衝撃に耐えるように設計される。1実施形態では、ハウジング42’は長さが約406mmであり、幅が約559mmであってもよい。検出システムの質量は約20kgであってもよい。ハウジング42’は壁、可動カート、又は手押
し車に取付け可能であってもよく、手動で又は機械的引上げ装置を使用して運ぶためのハンドル(図示せず)を含んでもよい。1実施形態では、ハウジングを建物の空調システムの一部として取り付けてもよい。検出器が汚染物質の存在を検知すると、その汚染物質を考慮した救済措置を講じることができる。たとえば、アラームが鳴って建物を排気してもよく、又は空調システム内の空気流を増大させて汚染物質を公共区域から吹き飛ばすか又は微量ガスを許容レベルまで希釈してもよい。
様々な実施形態では、検出システムは、汚染が生じた場合に高温で動作させてシステムの汚染を除去してもよい。システムは、試料セル及び流れシステムを約150℃から約200℃の間まで加熱することができ、一方、電子機器及び光学構成要素を含む残りの構成要素が約70℃よりも低い温度に維持されるように構成されてもよい。たとえば、約150°まで加熱された構成要素は、周囲の構成要素から絶縁され、電子機器の損傷及び光学構成要素の再調整又は損傷を防止することができる。試料セル及び流れシステムが高温で動作すると、汚染物質の脱着を迅速化することができる。1実施形態では、システムの汚染が除去されている間検出システムを動作させてもよく、したがって、汚染除去の進行を監視することができる。1実施形態では、検出システムは汚染除去の間窒素ガス又は周囲空気によってパージされる。ガスは水分(たとえば、相対湿度が約30%以上)を含んでもよい。様々な実施形態では、システムは、約2時間未満で汚染を除去することができ、使用可能な状態に戻す準備を整えることができる。
1実施形態では、検出システムにおける汚染物質の濃度を求めてもよく、汚染物質の濃度が汚染値を超える場合、少なくとも試料領域を汚染除去温度まで加熱して汚染物質を除去してもよい。汚染物質の濃度は、試料領域を加熱する間監視されてもよく、汚染物質の濃度が汚染除去値に達したときに加熱を低減又は終了させてもよい。汚染値は、検出システムの実行を抑制する物質の濃度であってもよい。汚染除去値は、汚染物質の影響を受けずに検出システムを動作させることのできる物質の濃度であってもよい。
様々な実施形態では、検出システムの試料セルを高圧で動作させてもよい。光路長/NEA比は変化しないが、同じ光路長を有する試料セル内に存在できる微量ガス試料の量が増えるにつれて検出システムの感度を向上させることができる。これによって、基準線に対してより大きい吸光信号を生成することができる。試料セルの体積をそのままに維持しつつ流量を増やすことによって、圧力を高めてもよい。
視野鏡表面及び対物鏡表面は、圧力を高めるときに視野鏡表面及び対物鏡表面の位置が実質的に変化しないように固定的に取り付けられてもよい。たとえば、視野鏡表面及び対物鏡表面は、これらの表面を保持するロッド上に取り付けられてもよい。さらに、試料セルは実質的に気密であってもよい。試料セル内の対物鏡表面及び視野鏡表面は試料ガス中に露出させてもよく、それによって、視野鏡表面及び対物鏡表面の各々の裏面に陽圧を加えて高圧での変形を防止することができる。様々な実施形態では、この圧力は1気圧から約10気圧の間であってもよい。1実施形態では、この圧力は4気圧である。
いくつかの実施形態では、2つの異なる圧力での信号を測定してもよく、これらの信号の比を求めてもよい。この信号の比によって基準線ノイズの除去、感度の向上、及び/又は基準線信号に対する微量ガスの吸収プロフィールの振幅の増大が可能になる。
試料セルにおいて第1の圧力で周囲空気の試料中を伝搬する放射ビームの第1の信号を測定する。試料セルを周囲空気によって第2の圧力まで加圧する。周囲空気の試料中を伝搬する放射ビームの第2の信号を試料セルにおいて第2の圧力で測定する。第1の信号と第2の信号を組み合わせて微量ガスの存在を示す信号を求めてもよい。たとえば、これらの信号を組み合わせて微量ガスに関する吸収プロフィールを生成してもよい。1実施形態
では、放射ビームは干渉信号を含んでもよい。微量ガスの吸収プロフィールを干渉信号から求めてもよい。1実施形態では、第1の圧力は約1気圧であり、第2の圧力は約1気圧から10気圧の間である。詳細な1実施形態では、第1の圧力は約1気圧であり、第2の圧力は約4気圧である。
様々な実施形態では、圧力を高めたときに試料セルの光学的位置合わせは実質的に変化しないままであるので、第1の信号は第2の信号の基準線信号として使用される。いくつかの実施形態では、基準線信号は、第1の信号と第2の信号の両方の基準線信号として測定され使用される。
様々な実施形態では、流れシステムは、ガス状試料をその飽和温度よりも低い温度に冷却することによって、対象となるガス状試料を捕捉するためのコールドフィンガを含んでもよい。多くの揮発性物質は−75℃以下で凝縮する。1実施形態では、試料セルのガス出口に低温コールドトラップが確立される。指定された期間又は収集期間の後で、1種又は数種の捕捉されたガスを加熱することによって急速に気化させるか又は試料セル内に「フラッシュバックさせ」てもよく、スペクトル測定を行ってもよい。この技術では、試料セルを大気圧に維持しつつ目標ガスの量を約1桁又は2桁増加させることができる。1実施形態では、連続的な流量測定はある間隔、たとえば、約10秒おきに行われ、一方、フラッシングはそれよりも長い時間間隔で生じる。
様々な実施形態では、検出システムは長波長パスフィルタを含んでもよい。A/D変換器によるノイズは検出器によるノイズと同程度であってもよい。長波長パスフィルタを組み込むと、より高い波数領域を遮断することができ、インターフェログラム・センターバースト値を小さくすることによりデジタイザ・ダイナミックレンジ要件を低減させることによって感度を向上させることができる。光学フィルタを有さない検出器のダイナミックレンジは約600cm−1から約5000cm−1の間であってもよい。対象となる有毒物質の多くは1500cm−1よりも小さい値で検出可能であるので、長波長パスフィルタを使用して感度を得ることによって、1500cm−1よりも高いスペクトルを無くすことができる。たとえば、カットオフ周波数が約1667cm−1である容易に入手可能な標準的な長波長パスフィルタでは、光路長/NEA比の利得は約20%〜約30%であってもよい。さらに、長波長パスフィルタを使用すると、検出器をより高い利得、たとえば、特定の検出器によって実現可能な最高の利得で動作できるようにすることによって、検出システムの信号対雑音比を向上させることができる。様々な実施形態では、MCT検出器又はDTGS検出器などの低感度検出器を使用してより高い周波数領域におけるスペクトルを記録してもよい。
バイオ燃料を使用してタービン発電機のエンジンを駆動してもよい。バイオガスには一般に、たとえば、100分の1レベルのCO2及びH2Oを含む炭化水素(たとえば、CH4)などの種が含まれる。バイオガスにはシラン含有炭化水素及びシロキサン化合物が含まれる。消化装置によって生成されたバイオガスには環状シロキサン(たとえば、D3−シロキサン〜D6−シロキサン)が存在することがある。埋立地から得られるバイオガスには線状シロキサン(たとえば、「直鎖」L2−シロキサン〜L6−シロキサン)、環状シロキサン、及び/又はトリメチルシラノール(TMS)を含めてもよい。バイオガス中のTMS及びシロキサン化合物の濃度は、100万分の1(ppm)レベルから10億分の1(ppb)レベルまでの範囲であってもよい。TMSとシロキサン化合物は、タービン内で酸化されたときに一緒にSiO2粒子を生成し、過度の磨耗及び割れを推進する。したがって、バイオ燃料処理システムがバイオ燃料をTMS及びシロキサンに関して連続的に監視することによって、TMS及びシロキサン化合物を早期に検出し測定するのを可能にし得る。システムはスタンドアロン・プロセッサ(たとえば、図1のプロセッサ34)を使用してTMS及びシロキサンの濃度を定量化してもよい(たとえば、バイオ燃料
中のシロキサン不純物のレベルをppmレベルからppbレベルまでの範囲で検出するスタンドアロンFTIR)。
図9は、バイオガス中のケイ素含有化合物(たとえば、シロキサン)を監視するための例示的な方法を示すフローチャートを示す。この方法は、試料セル(たとえば、図1及び図3の試料セル22)に非吸光性ガス(たとえば、窒素又はヘリウム)を供給するステップを含む(ステップ205)。非吸光性ガスは対象となる指定された波長範囲において赤外線放射を実質的に吸収しないガスである。この方法は、試料セルから第1のスペクトル測定値を得る(たとえば、バックグラウンド機器応答)ステップも含む(ステップ210)。試料セルにバイオガスを供給する(ステップ215)。バイオガスは(たとえば、TMS、L2−シロキサン、L3−シロキサン、L4−シロキサン、L5−シロキサン、D3−シロキサン、D4−シロキサン、D5−シロキサン、又はD6−シロキサンからなる群から選択される)少なくとも1つのケイ素含有化合物を含む。この方法は、試料セルから第2のスペクトル測定値を得ることも含む(ステップ220)。非吸光性ガスからの第1のスペクトル測定値と第2のスペクトル測定値(たとえば、試料セルに供給されるバイオガスからなる試料ガスから得られる測定値)の比に基づいて第1の吸収スペクトルが生成される(ステップ225)。少なくとも、バイオガス中の少なくとも1つのケイ素含有化合物の既知の濃度に関する第1の個別の吸収スペクトルに基づいて第2の吸収スペクトルが生成される(ステップ230)。バイオガス中の少なくとも1つのケイ素含有化合物(たとえば、シロキサン又はTMS)の濃度は、第1の吸収スペクトル及び第2の吸収スペクトルを使用することによって算出される(ステップ235)。たとえば、CLS及び/又は直接的なスペクトル比較を行うその他の方法を使用すると、あり得る干渉物質/ガスのすべてがまずスペクトル(たとえば、第1の吸収スペクトル)から除去された後で少なくとも1つのケイ素含有化合物の濃度を算出することができる。代替として、干渉物質/ガスは除去されず、スペクトルフィッティング・ルーチンにおいて使用される。
非吸光性ガスとバイオガスの両方を試料セルに供給してもよく(ステップ205及びステップ215)、それによってスペクトル測定値を得ることができる(ステップ210及びステップ220)。バイオガスはたとえば、動物の排泄物、廃水、又は埋立地から得てもよい。一般に、データ取得期間(スペクトル測定値を得るための期間)が長いほど検出限界が低くなる(たとえば、より低い濃度の種を検出することができる)。データ取得期間が長いほど厳密な測定が可能になる(たとえば、信号対雑音比が高くなる)。たとえば、ノイズがランダムである場合(ホワイトノイズ)、信号対雑音比は取得期間の平方根に応じて高くなる。第2のスペクトル測定値(たとえば、ステップ220)は約10秒から約90秒の取得期間にわたって得てもよい。いくつかの実施形態では、試料セルからの第2のスペクトル測定値は、約8ミクロンから約12ミクロンまでの波長範囲において得られる。第2のスペクトル測定値を得るステップは、試料セルから赤外線信号を取得すること(たとえば、バイオガスからなるガスの試料を得ること)を含んでもよい。
少なくとも1つのケイ素含有化合物の濃度は、リアルタイムに(たとえば、数秒又は数分で得られたTMS又はシロキサン化合物の濃度を定量化した結果)現地で(たとえば、インラインで又はバイオガスの供給源と流体連通するデバイスにおいて、かつ試料ガスを収集するための容器又は吸収媒体の必要なしに)算出されてもよい(たとえば、ステップ235)。試料セル及びプロセッサ(たとえば、図1のプロセッサ34)をバイオガスの供給源と流体連通させてもよく、試料を得て(たとえば、既存のGC/MS方法などによって)分析のために現地から搬送する必要なしに供給源の所で/供給源の実質的に近くで分析を行ってもよい。試料を得て分析する(たとえば、シロキサンの濃度、TMSの濃度、及び/又は試料中のすべてのケイ素含有化合物の濃度を算出する)時間は、バイオガス混合物中のレベルでケイ素含有化合物を正確に定量化するのに必要な最終的な信号対雑音比に応じて数秒から数分のスケールであってもよい。たとえば、信号対雑音比が特定の濃
度を厳密に測定するのに十分ではない場合、取得時間を延ばしてノイズをさらに低減させる(たとえば、信号対雑音比を高くする)ことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのケイ素含有化合物の濃度がしきい値に達したときにタービン発電機を停止させる。
いくつかの実施形態では、プロセッサ(たとえば、図1のプロセッサ34)を使用してバイオガス中の少なくとも1つのケイ素含有化合物の濃度を算出してもよい(ステップ235)。分光法(たとえば、FTIR分光法)と数学(たとえば、多重回帰分析)と組み合わせたケモメトリックスによって、バイオガス中のケイ素含有化合物に関する明確な定量情報を生成してもよい。たとえば、プロセッサを使用して、第1の吸収スペクトル及び第2の吸収スペクトルを用いて多重回帰分析を行ってバイオガス中の少なくとも1つのケイ素含有化合物の濃度を算出する。多重回帰分析は、クラシカル最小二乗(CLS)、部分最小二乗(PLS)、逆最小二乗(ILS)、主成分分析(PCA)、及び/又はその他のケモメトリック・アルゴリズムを使用して行われてもよい。
(たとえば、ステップ230で得られる)第2の吸収スペクトルは、少なくとも、第1の個別の吸収スペクトル、及び1つ又は複数の追加のシロキサン化合物(たとえば、L2−シロキサン、L3−シロキサン、L4−シロキサン、L5−シロキサン、D3−シロキサン、D4−シロキサン、D5−シロキサン、又はD6−シロキサン)、トリメチルシラノール(TMS)などのケイ素含有アルコール、たとえば、芳香族化合物及び塩素化炭化水素を含む炭化水素化合物、水、又は二酸化炭素に関するに関する個々の吸収スペクトルに基づいて生成されてもよい。第2の吸収スペクトルは、シロキサン化合物、TMS、炭化水素化合物、水、又は二酸化炭素の既知の濃度に基づくモデル(たとえば、バイオガス中の物質の個々の吸収スペクトルを表すモデル)であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の吸収スペクトルは、少なくとも、(たとえば、シロキサン化合物に関する)第1の個別の吸収スペクトル及び/又は1つもしくは複数の追加のシロキサン化合物、TMS、炭化水素化合物(たとえば、メタンもしくはエタン)、水、もしくは二酸化炭素に関する個々の吸収スペクトルに基づくモデルである。
いくつかの実施形態では、第2の吸収スペクトルが第1の吸収スペクトルと実質的に同様になるように(たとえば、モデル吸収スペクトルを測定吸収スペクトルに数学的に当てはめる)少なくとも1つのシロキサン化合物の濃度の値を求める(たとえば、ステップ235)。一例として、少なくとも1つのシロキサン化合物の濃度を表す少なくとも1つの変数を与え、第2の吸収スペクトルが第1の吸収スペクトルと実質的に同様になるように(たとえば、第2の吸収スペクトルを第1の吸収スペクトルに数学的に当てはめる)少なくとも1つの変数の値(たとえば、濃度の値)を求めることによって、少なくとも1つのシロキサン化合物の濃度を算出してもよい。
たとえば、一変量分析技術と多変量分析技術の両方に基づく様々な異なる種類の定量分析を使用してスペクトル測定値を実際の化学的組成に直接リンクしてもよい。一変量方法は、スペクトル曲線の下方のスペクトルピーク高さ又は領域をバイオガス中の種の既知の化学量に関する同じ特性と相関させることを含む。いくつかの実施形態では、これをたとえば、最小二乗回帰を使用してバイオガス中の様々な種の実際の濃度を予測する定量モデルを開発することによって行ってもよい。代替実施形態において使用できる別の一変量方法は、明示的な線形加法モデル(たとえば、以下の数式1において説明するベールの法則)に基づくK行列又はクラシカル最小二乗(CLS)である。CLSは、スペクトル領域内のすべての化学成分に関する回帰においてスペクトルのより大きい部分(又はスペクトル全体)を使用する。
CLSには、たとえば未知の濃度によってモデル精度が低下するので、適切な予測モデ
ルを開発できるようにするには、スペクトル的にアクティブであるすべての成分の濃度が既知であり、較正モデルに含まれる必要があるという制限がある。このこと及び一変量モデルを使用する際に生じることがある他の問題を回避するには、通常、多変量技術の方が有用である。ある多変量方法では、多重線形回帰(MLR)(P行列又は逆最小二乗(ILS)とも呼ばれる)を使用して対象となる化学成分の濃度のみを用いてモデルを作成する(たとえば、エイチ.マーク(H.Mark)Analytical Chemistry、58、2814、1986参照)。この技術では、既知の濃度のみを使用して不要な効果なしにモデルを作成することができるが、このモデルは、各成分を記述するのに使用できる波長の数が制限される。
(フレデリックスら(Fredericks et al.)Applied Spectroscopy、39:303、1985に記載されているように)(CLSモデルの能力と同様に)スペクトルの大きい領域を使用して対象となる組成を表す能力を(MLRモデルの能力と同様に)対象となる組成のみに対処する能力を組み合わせる他の多変量技術を代替実施形態において使用してもよい。1実施形態では、主成分回帰(PCR)が(フレデリックスら(Fredericks et al.)Applied Spectroscopy、39:303、1985に記載されているように)使用される。この方法は、主成分分析(PCA)を使用してスペクトル分解を行い、その後、PCAスコア行列に対する既知の濃度値の回帰を実施することに基づく。具体的には、PCRを用いる場合、まずPCAをスコア行列T及びローディング行列PをもたらすX行列によって構成する。次のステップでは、Yデータによる多重線形回帰において第1のスコアベクトルのうちのいくつかのスコアベクトルを使用する。PCAの最初のいくつかの構成要素がYに対するXの情報の大部分を実際に要約する構成要素である場合、PCRは立体データに対する部分最小二乗(PLS)とほぼ同様に良好に働く。このことについて以下に説明する。
別の実施形態では、PLSを使用してスペクトルデータに基づいて病変組成の実際の濃度値を得ることができる(たとえば、ダブリュー.リンドバーグ、ジェイ.パーソン、及びエス.ウォルド(W.Lindberg、J.Persson、及びS.Wold)Analytical Chemistry、55:643、1983年;ピー ゲラディ及びビー コワルスキー(P Geladi and B Kowalski)Analtical Chemica Acta、35:1、1986年;ならびにハーランド及びトーマス(Haaland and Thomas)Analytical Chemistry、60:1193,1202、1988年を参照されたい)。PLSはPCRに類似しているが、PLSを用いる場合、スペクトル情報と濃度情報の両方がこの方法の開始時に分解され、得られたスコア行列が2つのグループ間で交換される。これによって、濃度情報と相関されたスペクトル情報にモデル内でより重い重みが与えられ、したがって、PCRよりも正確なモデルが得られる。PLSアルゴリズムの核となるものは、非線形反復部分最小二乗(NIPALS)(たとえば、ウォルド(Wold)Perspectives in Probability and Statistics、ジェイ ガニ(J Gani)(編)(Academic Press、London、pp520−540、1975)又は単純部分最小二乗(SIMPLS)(ヨング(Jong)Chemon.Intell.Lab.Syst.、18:251、1993)アルゴリズムを介して実施されるスペクトル分解ステップである。
PCA分析、PCR分析、MLR分析、及びPLS分析のさらなる詳細は、本明細書に援用する「Multi− and Megavariate Data Analysis,Part I、Basic Principles and Applications」エリクソンら(Eriksson et al.)、Umetrics Academy、2006年1月及び「Multi− and Megavariate Dat
a Analysis、Part II,Advanced Applications
and Method Extensions」エリクソンら(Eriksson et al.)、Umetrics Academy、2006年3月に記載されている。
上述のように、様々なケモメトリック・アルゴリズム(たとえば、PCA、PCR、MLR、PLS)を使用してバイオガス中の1つ又は複数のケイ素含有化合物の濃度を算出してもよい。ケモメトリック・アルゴリズム方法は、全体的な吸収率(たとえば、バイオガスから得られたスペクトル測定値に基づく測定スペクトル)を各組成種(たとえば、シロキサン、TMS、メタン)の吸収率に当てはめ、各組成種の計算濃度を求めるのに利用される。ベールの法則は次式の通りである。
が波数
における種iの吸光度であり、
はその波数における種の吸収率であり、bは光路長であり、ciは種の濃度である。したがって、既知の濃度での種の吸光度を測定することによって、既知の濃度及び所与の波長(たとえば、波数)に関する種の吸収率を求めることが可能である。ある波長範囲についての既知の濃度での種の吸光度を測定することによって吸収スペクトルを生成することができる。
試料中に複数の種(たとえば、分子)がある場合、数式1は、試料(たとえば、試料セル内の試料ガス)の測定吸光度が試料中のすべての種の吸光度の和であることを反映するように修正されてもよい。一例として、バイオガスが1つ又は複数のケイ素含有化合物、芳香族化合物及び塩素化炭化水素を含む炭化水素化合物、水、及び二酸化炭素を含む場合、バイオガス試料の測定吸光度はバイオガス中の種のすべての吸光度の和(たとえば、ケイ素含有化合物、炭化水素化合物、水、及び二酸化炭素)である。したがって、定量分析を使用してバイオガス中の様々なケイ素含有化合物の実際の濃度を予測してもよい。
ケモメトリック・アルゴリズムを使用して試料中の種の濃度を求めてもよい。たとえば、ケモメトリック・アルゴリズムを数式1及び/又はその他の数式に使用して、(たとえば、すべての干渉成分が除去された後にモデルスペクトルを数学的に測定スペクトルに当てはめることによって)モデルスペクトル(たとえば、第2の吸収スペクトル)が測定ス
ペクトル(たとえば、第1の吸収スペクトル)と実質的に同様になるような濃度の値を求めてもよい。
1実施形態では、PLSを使用してシロキサン(及び/又はバイオガス中の他の化合物)の濃度を算出する。図10は、スペクトル測定値を含む行列X及び濃度情報を含む行列Yによって表されるスペクトル情報の非線形反復部分最小二乗(NIPALS)分解を表す図である。PLSモデルのPLS成分は、NIPALSアルゴリズム(又は他の同様の分解アルゴリズム)を使用して従来通り算出される。PLSでは、2つのデータ行列X及びYを線形多変量モデルによって互いに関係付ける。手短に言えば、線形モデルは従属変数又は応答変数y又は1組の応答変数Yと1組の予測変数Xとの関係を指定する。たとえば、応答変数yは濃度であり、予測変数Xはスペクトル測定値1002a〜1002nである。Yにおける数1.0及び0.45は、対応するスペクトルにおけるガス成分の計算濃度である。NIPALSアルゴリズムには、行列−ベクトル乗算(たとえば、X’y)からなる多数の変形例がある。S及びUはそれぞれ、スペクトル情報及び成分情報から得られるスコア行列である。Sにおける数0.39及び−0.37は、最初の1組のスペクトルの線形組合せを表す基本ベクトルのスカラー(スコア)修正子である。これらの数は、S及びUを満たす数の第1の行の例にすぎない。この例では、観測された1組のスペクトル全体が2つの基底ベクトルに分解され、したがって、2つの数がある。PCx表現における対応する行にこれらの数を掛けた場合、最初のスペクトルが再生される(たとえば、最小ノイズ)。他の実施形態では、1組の観測されたスペクトルを任意の数の基底ベクトルに分解してもよい。PCx及びPCyは、それぞれスペクトル情報及び成分情報に関して得られる主成分(又は潜在変数/固有ベクトル)である。PCxは潜在変数1004a〜1004fを含む。図中の他の符号は、スペクトルの数(n)、スペクトルあたりのデータポイントの数(p)、成分の数(m)、及び最後の潜在変数/固有ベクトルの数(f)の符号である。
スペクトルデータ及び濃度/組成データの第1の分解によってX行列及びY行列の各々の潜在変数及びスコアを生成し、スペクトル情報(S)のスコア行列を濃度情報(U)を含むスコア行列と交換する。PCx及びPCyから得られた潜在変数をそれぞれX行列及びY行列から引く。次いで、これらの新たに減算された行列を使用して、データを表すのに十分な潜在変数がPCx及びPCyから求められるまでラウンドごとに次の潜在変数及びスコアを算出する。各分解ラウンドの前に、新しいスコア行列を交換し、PCx及びPCyから得られた新しい潜在変数を小さくされたX行列及びY行列から削除する。
スコア行列を交換するとスペクトル情報が濃度情報に相関付けられるので、PLS分解から求められた潜在変数(又は基底ベクトル)の最終的な数(f)は、交換されるスコア行列によって濃度情報と高度に相関付けられる。有利なことに、スコア行列を交換すると、互いに自然に相関付けられた行列の両方の組に基底ベクトルが残る。PCx行列及びPCy行列は、モデルを作成するのに使用される組成に対して高度に相関付けられたスペクトルの変形例を含む。第2の1組の行列、S及びUは、各スペクトルに存在する潜在変数変形例の各々の量を表す実際のスコアを含む。PLSモデルではS行列値が使用される。
1実施形態では、PLS方法を使用してバイオガス中のシロキサン化合物の実際の成分を予測する。たとえば、PLSアルゴリズムを使用してバイオガスの化学的含有量を直接予測するか、又はたとえば、存在する化合物(たとえば、ケイ素含有化合物、芳香族化合物及び塩素化炭化水素を含む炭化水素化合物、水、又は二酸化炭素)の百分率の形で予測してもよい。
別の実施形態では、CLSを使用してモデルスペクトル及び測定スペクトルに基づいてシロキサン(及び/又はその他の化合物)の濃度を算出する。いくつかの実施形態では、
試料は混合物中に2つの成分及び/又は種(s1及びs2)を含む。バイオガスは2つよりも多くの成分/種を含んでもよい(たとえば、バイオガスは様々な種のケイ素含有化合物、炭化水素化合物などを含んでもよい)。ただし、説明を明確にするために、以下の例では、2つの成分を仮定する。
試料が2つの種を含む場合、種は少なくとも2つの波数が異なるはずである。1実施形態では、各波長における吸光度の関係に基づきCLSを使用して、2つの波数の吸光度をモデル化することができる。たとえば、第1の波長の吸光度は、第1の波長における第1の種s1の吸収率、第1の波長における第2の種s2の吸光度、光路長(たとえば、上記に図2〜図4に関して説明したような試料セル22の光路長)、第1の種s1の濃度、第2の種s2の濃度、及び第1の波長の回帰分析によって得られる残差の関係に基づく。同様に、たとえば、第2の波長の吸光度は、第2の波長における第1の種s1の吸収率、第2の波長における第2の種s2の吸光度、光路長、第1の種s1及び第2の種s2の濃度、ならびに第2の波長の回帰分析によって得られる残差の関係に基づく。
光路長が一定である場合、各波長の吸光度を求めるときに光路長は考慮されない。その代わり、第1の波長の吸光度は、第1の波長における第1の種s1の吸収係数と、第1の波長における第2の種s2の吸収係数と、第1の種s1と第2の種s2の濃度と、第1の波長の回帰分析によって得られる残差との関係に基づく。同様に、第2の波長の吸光度は、第2の波長における第1の種s1の吸収係数と、第2の波長における第2の種s2の吸収係数と、第1の種s1及び第2の種s2の濃度と、第2の波長の回帰分析によって得られる残差との関係に基づく。
上述の関係を使用すると、既知の濃度における試料の吸光度を測定することによってある波長について吸収係数を求めることができる。次いで、このような吸収係数を使用して試料中の種s1及びs2の未知の濃度を測定する/求めることができる。たとえば、2つの波長において試料の吸光度(たとえば、測定スペクトル)を測定し、それぞれの波数の吸光度の値を得てもよい。吸光係数は既知であるので、吸光度値と一緒に使用して種の濃度を算出してもよい。
上述のように、バイオガスは2つよりも多くの成分/種を含んでもよい。そのような場合、吸光度、吸収係数、及び濃度の値は以下の行列を使用してモデル化されてもよい。
上式において、「A行列」はスペクトル吸光度の行列であり、「K行列」は吸光係数を表す行列であり、「C行列」は濃度を表す行列である。試料(スペクトル)の数は「n」によって表され、較正に使用される波長の数は「p」によって表され、種/成分の数は「m」によって表される。数式6は簡略化され試料中の種の濃度を算出するのに使用されてもよい。
C=A・K−1 数式3
上式において、K−1はK行列の逆数である。数式2のK行列は、個々の種の濃度が既知である試料の吸光度を測定し、以下の数式を使用することによって解かれてもよい。
K=A・C−1 数式4
個々の種(たとえば、たとえばバイオガス中に存在するシロキサン化合物、炭化水素化合物、水、又は二酸化炭素)の濃度が既知である場合、「C行列」は既知である。「A行列」は、たとえば、図1の検出システム(たとえば、FTIR分光計)を使用して得られるスペクトル測定値に基づいて作成されてもよい。したがって、A行列及び既知の濃度によるC行列の逆数を使用した場合、数式4を使用してK行列が求められる。
K行列を数式4から算出した後、数式3を使用して試料中の濃度を算出する。(たとえば、既知の濃度を有する試料を使用して数式4から算出された)K行列の逆数を使用して、個々の種の濃度が未知である試料中の種(たとえば、バイオガス中のシロキサン)の濃度を算出する。検出システム(たとえば、図1のシステム)を使用して試料(たとえば、試料バイオガス)のスペクトル測定値を得てもよい。試料中の個々の種の吸光度のまとめたものを表すA行列は、スペクトル測定値に基づいて生成される。K行列の逆数及びA行列を数式3において使用して試料中の個々の種の濃度を算出する。
図11は、920ppbのD4−シロキサン、400ppbのD5−シロキサン、65%のメタン、35%の二酸化炭素、1400ppmのエタン、340ppmのプロパン、及び65ppmのブタンを含む廃水消化ガス化合物のCLS(すなわち、クラシカル最小二乗)分析結果のグラフである。グラフは、吸光度の値(y軸)を波長(すなわち、波数)(x軸)の関数として示す。曲線300は測定スペクトルを表し、曲線305はメタンの個別の吸収スペクトルであり、曲線310は二酸化炭素の個別の吸収スペクトルであり、曲線315はエタンの個別の吸収スペクトルであり、曲線319はプロパンの個別の吸収スペクトルであり、曲線320はブタンの個別の吸収スペクトルであり、曲線325はD4−シロキサンの個別の吸収スペクトルであり、曲線330はD5−シロキサンの個別の吸収スペクトルである。残差値が比較的小さいため、モデル吸収スペクトルが測定スペクトル300と重なり合うので、組成スペクトル305、310、315、320、325、及び330の和を表すモデル吸収スペクトルは、図を明確にするために示されていない。
図11に示すスペクトルなどのデータを使用してシロキサン化合物(たとえば、D4−シロキサン及びD5−シロキサン)の濃度を算出してもよい。測定/観測スペクトル300を使用して数式7及び数式10のA行列の値を追加してもよい。既知の濃度についての個々の種の個々の吸収スペクトル305、310、315、320、325、及び330を使用して数式7及び数式10のK行列及び/又はP行列の値を追加してもよい。したがって、測定A行列ならびに計算K行列及び/又はP行列を使用して測定スペクトル中の個々の種の既知の濃度の値を求める。
別の実施形態では、ILSを使用して試料中の種の濃度を算出してもよい。CLSでは、吸光度は従属変数である。ILSでは、濃度が従属変数になる。たとえば、第1の種s1の濃度は、(2つの波長数における第1の種s1の吸収率の関数である)線形逆係数と、第1の波長及び第2の波長における吸光度と、第1の種s1の回帰分析から得られる残差との関係に基づく。これは、試料中にいくつかの種があるときには以下の行列に簡略化される。
C=P・A+EC 数式5
数式5において、Cは濃度の行列であり、Pは線形逆係数であり、Aは吸光度の行列であり、Eは残差の行列である。CLSの場合と同様に、試料の既知の濃度を使用してP行列を求めてもよい。このシナリオでは、(たとえば、残差が零に十分に近くなったことを示すしきい値を設定することによって)残差が零に十分に近くなるまでILSモデルを再
計算することができ、かつ数式5を次式のように修正できるので、残差を零と仮定してもよい。
P=C・A−1 数式6
個々の種の既知の濃度を使用すると、C行列の値が得られる。A行列は、(たとえば、FTIR分光計などの図1の検出システムを使用して)既知の濃度を有する試料から得られたスペクトル測定値に基づいて作成される。したがって、P行列は、試料中の種の既知の濃度から測定されたスペクトルに基づいて数式6を使用して算出されてもよい。
次いで、P行列を数式5に使用して試料中の種の未知の濃度について解いてもよい。具体的には、FTIRシステムなどの(たとえば、図1の)検出システムを使用して、個々の種の未知の濃度を有する試料からスペクトル測定値を得てもよい。スペクトル測定値を使用してA行列中の吸光度の値を追加してもよい。P行列は、既知の濃度に基づいて数式6を使用して算出され、P行列を数式5において使用してC行列を算出し、それによって試料中の個々の種の濃度の値を得てもよい。
上述のような例示的な技術のいずれかを組み込んだ上記の図1のシステムなどのシステムを使用して、バイオガス中のケイ素含有化合物(たとえば、シロキサン)を定量化し監視してもよい。このシステムは、たとえば、第1の放射ビームの光源(たとえば、図1の光源14)と、干渉計(たとえば、図1の干渉計18)と、試料セル(たとえば、図1のセル22)と、流れ機構(たとえば、図3の流れシステム82)と、冷却検出器(たとえば、図1の検出器30)と、プロセッサ(たとえば、図1のプロセッサ34)と、光源、干渉計、試料セル、冷却検出器、及びプロセッサが配設されたハウジング(たとえば、図1のハウジング42)とを含んでもよい。干渉計は、光源から第1の放射ビームを受け取り、干渉信号(たとえば、干渉計信号)からなる第2の放射ビーム(たとえば、試料セル内で合計で約48回反射され、約10.18メートルの有効光路長を生成する第2のビーム)を形成する。試料セルは干渉計と光学的に連絡する。流れ機構は、非吸光性ガス(たとえば、対象となる指定された波長範囲において赤外線を実質的に吸収しないガス)の流れ及び試料セル内のバイオガス(たとえば、試料セルに導入された加圧された(たとえば、3psig〜5psig)試料(たとえば、400mLのバイオガス)、バイオガスの対流時間は約5秒程度)の第2の流れを確立する。検出器(たとえば、冷却検出器)は、試料セルと光学的に連絡し、試料セル内の非吸光性ガス中を伝搬する第1の干渉信号及び試料セル内の試料ガス中を伝搬する第2の干渉信号を受け取り、試料ガスはバイオガスからなる。プロセッサは、検出器(たとえば、低温(たとえば、Stirling(商標)エンジン)冷却MCT(テルル化カドミウム水銀)検出器)と電気的に接続し、バイオガス中の少なくとも1つのシロキサン化合物の濃度を算出する。プロセッサは、ケモメトリック技術(たとえば、CLS技術及びILS技術など)を使用して第1の吸収スペクトル及び第2の吸収スペクトルに基づいてバイオガス中の少なくとも1つのシロキサン化合物の濃度を算出する。第1の吸収スペクトルは、検出器から得られる第1の干渉信号と第2の干渉信号の比に基づく。第2の吸収スペクトルは、少なくとも、少なくとも1つのシロキサン化合物の既知の濃度に関する個別の吸収スペクトルに基づく。
いくつかの実施形態では、試料セル(たとえば、上記に図2に関して説明した光学構成を有する図1のセル22)は、試料セルの第1の端部における凹状反射性視野鏡表面(たとえば、図2の視野鏡表面78)と、視野鏡表面と対向関係にある試料セルの第2の端部における実質的に球形の凹状反射性対物鏡表面(たとえば、図2の対物鏡表面74)とを含み、対物鏡表面は、視野鏡表面及び対物鏡表面の各々での複数の反射を介して試料セル内を伝搬する第2の放射ビームのスループットを最大にするように少なくとも1つの平面内の焦点の一致度を高める円筒形構成要素を有する。
1実施形態において、コンピュータ可読製品は、情報担体又は機械可読記憶デバイス上で有形に具現化され、バイオガス検出システム(たとえば、図1のシステム)のデジタル信号プロセッサ(たとえば、図1のプロセッサ34)上で動作可能である。コンピュータ可読製品は、デジタル信号プロセッサに試料採取セル(たとえば、図1のセル22)内の非吸光性ガスから得た(たとえば、図1の検出器30からの)第1のスペクトル測定値を受け取らせるように動作可能な命令を含み、非吸光性ガスは、対象となる指定された波長範囲において赤外線を実質的に吸収しない。コンピュータ製品は、デジタル信号プロセッサに、試料採取セル内のバイオガスからなる試料ガスから得た第2のスペクトル測定値を受け取らせ、第1のスペクトル測定値と第2のスペクトル測定値の比に基づいて第1の吸収スペクトル(たとえば、測定吸収スペクトル)を生成させてもよい。少なくとも、少なくとも1つのシロキサン化合物の既知の濃度に関する第1の個別の吸収スペクトルに基づいて第2の吸収スペクトル(たとえば、モデル吸収スペクトル)を生成/形成してもよい。コンピュータ製品は、プロセッサに上述のケモメトリック技法を使用して1つ又は複数のシロキサン化合物の濃度を算出させてもよい(たとえば、多重回帰分析を実行し、第2の吸収スペクトルを第1の吸収スペクトルに数学的に当てはめてバイオガス中の少なくとも1つのシロキサン化合物の濃度を算出する)。
上述のように、試料セル内のバイオガスのスペクトル測定値に基づく吸収スペクトル及びバイオガス中の個々の成分/種に関する個々のスペクトル(たとえば、たとえばシロキサン及びケイ素含有化合物、炭化水素化合物、水、又は二酸化炭素などのバイオガス中の種の個々のスペクトル)を使用して試料中の個々の種の濃度を算出してよい。図11に示すスペクトルなどの吸収スペクトルを使用して、(たとえば、使用される1つ又は複数の分析方法に応じた濃度範囲及び/又は様々なスペクトル混合物に基づく)個々の吸収スペクトルをまとめたものを表す較正された吸収スペクトル(たとえば、上記に図9に関して説明した第2の吸収スペクトル)に基づくモデルを生成してもよい。具体的には、未知のバイオガスのスペクトル測定値に基づく吸収スペクトルを使用して上述のようなA行列を生成し、たとえば、数式7及び数式11を使用してシロキサンの濃度を算出してもよい。種の既知の濃度による測定値に基づいて得られた個々のスペクトルを使用して個々の種を表すモデルスペクトルを生成してもよい。既知の濃度に関する個々のスペクトルを使用して、上記に数式8及び数式12において説明したようなP行列又はK行列を算出してもよい。このモデルは、たとえば、たとえば数式7及び数式11を使用してシロキサンの濃度を算出するのに使用できる(たとえば、種の既知の濃度を使用することによって求められる)P行列又はK行列を含んでもよい。図11は、本発明の例示的な実施形態による、バイオガス中のシロキサン化合物の濃度を定量化するのに使用できるデータのスペクトルを示す。試料中の各吸収種は、固有の吸収対周波数分布(すなわち、吸収スペクトル)を有する。ケモメトリック・アルゴリズム(たとえば、多重回帰分析)を使用すると、各成分を特徴付け定量化することができ、したがって、干渉性吸収体(たとえば、メタン又はエタンなどの炭化水素化合物)が存在する場合でもシロキサン化合物の個々の種を検出することができる。
一般に、上記に図9に関して説明したバイオガス中のケイ素含有化合物を監視するための方法は、既知の濃度を有するすべての既知のケイ素含有化合物及び炭化水素化合物の個々の吸収スペクトルに基づいて第2の吸収スペクトルを生成することを含む(ステップ230)。したがって、第2の吸収スペクトルは、すべての考えられる環状シロキサン化合物及び線状シロキサン化合物ならびに所与の試料中に存在させることのできる(たとえば、種分化手法)TMSなどの他のケイ素含有化合物を表す。この種分化手法を使用して、たとえば、上記に数式2〜数式4に関して説明したCLS(クラシカル最小二乗)分析又は上記に数式5及び数式6に関して説明したILS(すなわち、逆最小二乗)分析を用いることによって試料中のケイ素含有化合物の各種(たとえば、シロキサン及び/又はTMS)の濃度を算出してよい(ステップ235)。
種分化手法を使用することの1つの欠点は、試料中の低レベル濃度(たとえば、0.02ppm−v未満)のケイ素含有化合物を検出できないことである。たとえば、モデル化時に第1の吸収スペクトルにおいてすべての既知のシロキサン化合物を使用するが、少なくとも1つのシロキサンが実際の試料に存在しないか又は他の成分に類似している場合、相互相関作用によって、特に低濃度における試料中のシロキサンの様々な種の正確な測定が妨げられる可能性がある。種分化手法の別の欠点は、分析時の任意の時間に存在させることのできるすべての未知のケイ素含有化合物を第2の吸収スペクトルの一部として含める必要があることである。この結果生じる相互相関作用は、シロキサン、TMS、及びその他のケイ素含有化合物の濃度に寄与する各種の分析全体にノイズを注入させ、それによって、低ppbレベルにおいて化学的検出を行う能力を低下させる可能性がある。
これらの欠点を考慮して、バイオガス試料(埋立地ガス又は消化ガス)中のケイ素含有化合物を検出/監視するための別の方法を提供する。この方法では、試料中に存在する各ケイ素含有化合物の濃度を算出する代わりに、1つ又は複数の総濃度値を算出する。総濃度値は、たとえば、試料中のシロキサンの総濃度の単一の値、試料中の他のケイ素含有種の総濃度の単一の値、及び/又はすべてのケイ素含有種の総濃度の単一の値を含んでもよい。単一の値は、種分化手法とは異なり、対象となるバイオガスに一般に存在するケイ素含有化合物及び/又は炭化水素化合物のすべてを使用するのではなく、これらの既知の化合物の部分集合に対応する1つ又は複数の吸収スペクトルに基づいて求められてもよい。具体的には、この方法では、すべてのケイ素含有化合物及び/又は炭化水素化合物の既知の濃度を使用して、たとえば、種分化方法に使用されるようなCLSに基づいてバイオガス試料を当てはめるのではなく、既知のケイ素含有化合物及び/又は炭化水素化合物の選択された部分集合のみを使用してフィッティング分析を行う。
図12は、バイオガス試料中のケイ素含有化合物を監視するための他の例示的な方法を示すフローチャート300を示す。この方法は、試料セル(たとえば、図1及び図3の試料セル22)に非吸光性ガス(たとえば、窒素又はヘリウム)を供給するステップを含む(ステップ305)。非吸光性ガスは、対象となる指定された波長範囲において赤外線を実質的に吸収しないガスである。この方法は、試料セルから第1のスペクトル測定値を取り出す(たとえば、バックグラウンド機器応答)ステップ(ステップ310)も含む。試料セルにバイオガスを供給する(ステップ315)。バイオガスは、濃度が未知である(たとえば、L2−シロキサン、L3−シロキサン、L4−シロキサン、L5−シロキサン、D3−シロキサン、D4−シロキサン、D5−シロキサン、又はD6−シロキサンからなる群から得られる)少なくとも1つのシロキサン化合物などの少なくとも1つのケイ素含有化合物を含む。この方法は、試料セルから第2のスペクトル測定値を得ることも含む(ステップ320)。第1の吸収スペクトルは、非吸光性ガスから得られる第1のスペクトル測定値と第2のスペクトル測定値(たとえば、試料セルに供給されるバイオガスからなる試料ガスから得られる測定値)との比に基づいて生成される(ステップ325)。いくつかの実施形態では、図12のフローチャート300のステップ305,310,315,320,325はそれぞれ、図9のフローチャート200のステップ205,210,215,220,225と実質的に同じである。
引き続き図12を参照すると、吸収スペクトルのサロゲート集合を判定する(ステップ330)。サロゲート集合中の各吸収スペクトルは既知のケイ素含有化合物の個別の吸収スペクトルに基づくが、上記に図9に関して説明した種分化手法とは異なり、すべての既知のケイ素含有化合物がこのサロゲートに含まれこの方法で使用されるとは限らない。ここでは、吸収スペクトルのサロゲート集合を生成するためのサロゲート手法を使用する。サロゲート手法では、モデル化段階で使用すべき既知のケイ素含有化合物(たとえば、シロキサン化合物)の部分集合のみを選択することを含む。この部分集合は、たとえば、D
3−シロキサン、D4−シロキサン、D5−シロキサン、D6−シロキサン、L2−シロキサン、L3−シロキサン、L4−シロキサン、L5−シロキサン、及びトリメチルシラノール(TMS)を含むより大きい集合から選択されてもよい。既知のケイ素含有化合物のより大きいグループから選択されるケイ素含有化合物の部分集合に関する吸収スペクトルを以下、サロゲート集合と呼ぶ。いくつかの実施形態では、すべての既知のケイ素含有化合物から3つから5つのシロキサン化合物のみをサロゲート集合に含めるシロキサン化合物として選択する。サロゲート集合に含まれるシロキサン化合物は1つだけであってもよい。いくつかの実施形態では、サロゲート集合は、たとえば、メタン、エタン、ブタン、プロパンを含む既知の炭化水素化合物のより大きい集合のうちの部分集合からなる。別の例では、既知の炭化水素のより大きい集合はメタン、トルエン、エタノール、及びメタノールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、サロゲート集合は既知のシロキサン化合物及び/又は炭化水素化合物の部分集合からなる。いくつかの実施形態では、サロゲート集合は、既知のシロキサン化合物、既知の炭化水素化合物、及び/又はTMSの部分集合からなる。一般に、モデルにおいて使用される吸収スペクトルのサロゲート集合は、既知のケイ素含有化合物(シロキサン及びTMSを含む)及び/又は炭化水素化合物の部分集合の各化合物の個別の吸収スペクトルに基づく。
サロゲート集合に含めるケイ素含有化合物及び/又は炭化水素化合物としてどのケイ素含有化合物及び/又は炭化水素化合物を選択するかは試料の種類に依存し得る。たとえば、埋立地バイオガスの場合、サロゲート集合は、a)L2−シロキサン、L3−シロキサン、及びD4−シロキサン、b)L2−シロキサン、D3−シロキサン、及びD4−シロキサン、又はc)L2−シロキサン、D3−シロキサン、及びD5−シロキサンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、埋立地の埋立年数に応じて、サロゲート集合にTMSも追加する。消化バイオガスの場合、サロゲート集合には、a)D3−シロキサン、D5−シロキサン、及びL3−シロキサン、b)D4−シロキサン、D5−シロキサン、及びL3−シロキサン、又はc)D3−シロキサン、D5−シロキサン、及びL2−シロキサンを含んでもよい。
シロキサン化合物と同様に、サロゲート集合中の1つ又は複数の炭化水素化合物をバイオガス試料の種類に基づいて選択してもよい。たとえば、選択される炭化水素化合物は、どの炭化水素化合物がバイオガス中に存在する可能性が高いかに応じて決まり得る。埋立地バイオガスの場合、サロゲート集合中の炭化水素化合物には、限定はしないが、炭化水素化合物の約10ppmから最大で約1%レベル(場合によってはそれよりも高いレベル)のエタノール、メタノール、トルエン、及び/もしくはfreon(商標)、最大で95%のメタン、ならびに/又は約5%から最大で約50%のCO2を含めてもよい。消化ガスの場合、サロゲート集合中の炭化水素化合物には、限定はしないが、炭化水素化合物の約100ppmから最大で約1%レベル(場合によってはそれよりも高いレベル)のエタン、プロパン、及び/もしくはブタン、ならびに/又は約10%から最大で約50%のCO2を含めてもよい。
特定の試料のサロゲート集合に含めるケイ素含有化合物及び/又は炭化水素化合物としてどのケイ素含有化合物及び/又は炭化水素化合物を選択するかは、実験によって、たとえば、選択されるサロゲート化合物のスペクトルピークがバイオガス試料中の化合物のスペクトルピークのうちの1つ又は複数と一致するかどうかに基づいて判定されてもよい。たとえば、化合物のサロゲート集合はGC/MSを使用してガス成分を検査することによって求められてもよい。バイオガス試料がすでに加圧されている場合、ポンプは不要になる。1実施形態では、FTIR分光計は、スキャンレート10秒〜20秒、スキャン回数平均値36回〜72回で動作する。これによって検出限界を非常に低くすることができる。バイオガス試料は、加熱されずにFTIR分光計のガスセルに入力されてもよい。ガスセルはたとえば40℃で加熱されてもよい。スペクトルは35℃から40℃で測定されて
もよい。試料におけるスペクトルは、検出限界をより低くするように約10.18mのガスセル光路長を使用して約4cm−1の分解能で収集されてもよい。FTIR分光計上にメタンを流してもよく、バイオガスにおける観測メタンスペクトルを40%から最高で100%に及ぶ各システムの較正に使用してもよい。これによって良好なスペクトル減算結果を得ることができる。たとえば、高いメタンレベルが存在する場合でも、シロキサン濃度及び/又は総ケイ素濃度の検出限界を低くして非常に少ない残差及び小さいスペクトル細部を推定することができる。
いくつかの実施形態では、サロゲート集合に含められるケイ素含有化合物又は炭化水素化合物として選択されるケイ素含有化合物又は炭化水素化合物はバイオガス試料に存在する可能性が高いが、このことは必要とされない。すなわち、サロゲート集合内のケイ素含有化合物又は炭化水素化合物が試料に存在する必要はない。いくつかの実施形態では、サロゲート集合のライブラリが維持され、各サロゲート集合を特定の種類のバイオガス試料に使用してもよい。たとえば、L2−シロキサン、D3−シロキサン、及びD4−シロキサンを含むサロゲート集合を使用して、バイオガスをいつ/どこで収集するかにかかわらず任意の埋立地バイオガスをモデル化してもよい。
第1の吸収スペクトルを求め(ステップ325)、吸収スペクトルのサロゲート集合を求め(ステップ330)、第1の吸収スペクトル及び吸収スペクトルのサロゲート集合を使用することによってバイオガスのすべてのシロキサン化合物の総濃度を算出する(ステップ335)。すべてのケイ素含有化合物の総濃度を算出してもよい。CLS、PLS、ILS、PCA、及び/又は直接的なスペクトル比較を行うその他の方法を使用すると、干渉物質/ガスがモデル化方法を介して除去された後で(たとえば、メタン、CO2、特定の干渉性炭化水素などを除去する)試料中のすべてのシロキサン種及び/又はケイ素含有種の総濃度を表す単一の数を求めることができる。総濃度は、吸収スペクトルのサロゲート集合が第1の吸収スペクトルと比較され、フィッティング・ルーチンから求められたスペクトル特徴の差が最小限度に抑えられるように求められてもよい。いくつかの実施形態では、基準線値又はオフセット値の少なくとも一方がフィッティング・ルーチンにおけるフィッティング・パラメータとしても使用される。一例として、上記に数式2〜数式4を参照して説明したCLS分析において、サロゲート集合において使用される化合物の数がより少ないことを考慮して、サロゲート手法では、種分化手法と比較してA行列、K行列、及びC行列の寸法を小さくする。いくつかの実施形態では、バイオガス試料中のシロキサンの総濃度を算出するために、C行列内の各サロゲートシロキサンの得られるそれぞれの濃度値のすべてを合計して総シロキサン値を生成する。この総シロキサン値はppm又はmg/m3として表してもよい。いくつかの実施形態では、バイオガス試料中のケイ素含有化合物の総濃度を表す総ケイ素値を算出してもよい。この値は、まずサロゲートがケイ素分子を含む場合に各サロゲート濃度をその特定の成分に存在するケイ素の量だけ補正することによって求められてもよい。次いで、C行列内のTMSサロゲート、他のケイ素含有サロゲート、及びシロキサンサロゲートの各濃度を合計して総ケイ素値を生成する。いくつかの実施形態では、濃度をケイ素含有成分として個別に合計し、総ケイ素値を生成し、シロキサン含有成分として総シロキサン値を生成してもよい。一般に、当業者は、上記に種分化手法を参照して説明した分析技法(たとえば、CLS、PLS、ILS、又はPCA)に基づくサロゲート手法を使用して試料中のシロキサン化合物の総濃度及び/又はケイ素含有化合物の総濃度をどのように算出したらよいかを容易に判定することができる。
方法300は、値を特定の係数によってスケーリングすることなど、ステップ335において求められた総シロキサン値及び/又は総ケイ素値に補正係数を適用する任意のステップ(ステップ340)を含んでもよい。補正係数は、分析されるバイオガスの種類、サロゲート集合において使用されるシロキサン化合物、サロゲート集合において使用される
炭化水素化合物、又はそれらの任意の組合せに基づいて決定されてもよい。たとえば、補正係数は、既知の濃度のシロキサン化合物を含むバイオガスを同じバイオガスについてステップ335において求められたシロキサン濃度と有すると比較することによって算出されてもよい。比較に基づいて、補正係数が必要であるかどうかを判定し、必要である場合、補正係数がどのようであるべきかを判定してもよい。いくつかの実施形態では、埋立地ガスなどのある種のバイオガスについて補正係数が求められた後、同じ補正係数を他の埋立地ガスの分析に使用してもよい。いくつかの実施形態では、様々なサロゲート集合にそれぞれに異なる補正係数が使用される。いくつかの実施形態では、補正係数は、たとえば、現地試験の結果としてバイオガス試料ごとに修正を施される。
希釈試験によって、サロゲート手法は種分化手法と比較してうまく働くことが分かっている。しかし、サロゲート手法に関連する多数の利点がある。1つの利点は、サロゲート手法では、方法を変更又は修正する必要なしに様々な埋立地において現地工程監視が可能になることである。別の利点は、試料が(たとえば、試料を可搬容器内に捕捉するか又はガス流をアルコール溶液中にインピンジさせることによって)処理されることがなく、したがって、試料が処理される場合と比べて、試料中のシロキサン化合物をより正確に定量化することが可能になる。サロゲート手法のもう1つの利点は、バイオガス流から試料を得るうえでキャニスタ及び/又は試料バッグが必要とされないことである。たとえば、シロキサンを吸収しない試料配管を介してバイオガス流と直接接続してもよい。バイオガスは試料配管を介して直接FTIR分析器に移送されてもよい。
さらに、サロゲート手法は、総シロキサン値を600ppbから60ppbに低下させるなど、図9の種分化手法と比較してバイオガス中のシロキサン化合物及び/又はケイ素含有化合物の全体的な検出限界を少なくとも10倍だけ低下させることができる。いくつかの実施形態では、たとえば、FTIR分析を使用して1桁の検出限界を実現することができる。当業者には、FTIR分析がFellgett及びJacquinotの利得(たとえば、スペクトルスループット及び感度が自然に向上する)を含むことが明らかである。そのようなFellgett及びJacquinotの利得と、低温冷却された高感度検出器を使用することが相まって、質の高い検出を行うことができる。
いくつかの実施形態では、サロゲート手法を使用して、ろ過システムの後で生成される埋立地ガス又は消化ガスに存在するシロキサンレベル及び/又は総ケイ素レベルを監視してもよい。ガス流を使用して、タービン、ボイラ、自動車、及び/又は家庭電化製品を駆動してもよく、これらの機器はすべて、シロキサン含有量及び/又はケイ素含有量の監視及び調節を行わなかった場合に損傷する恐れがある。シロキサンレベル及び/又はケイ素レベルは、ガスが圧縮天然ガス配管用の国内輸送パイプラインに進入できるようになる前に分析することが必要になることがある。いくつかの実施形態では、サロゲート手法は、どちらもマサチューセッツ州アンドーバー(Andover)のエムケイエスインストルメンツインコーポレイティッド社(MKS Instruments,Inc.)から市販されているAIRGARD(商標)システム又はMultiGas2030(商標)ファミリ上に実装されてもよい。
図13は、ブレンディングにも使用されたメタン以外のL2−シロキサン、L3−シロキサン、L4−シロキサン、D3−シロキサン、D4−シロキサン、D4−シロキサン、及びD5−シロキサンからなる540ppbの混合物を含むシミュレートされた埋立地ガス試料についての経時的なppm単位の総シロキサン濃度の結果を示す。シロキサン濃度は、図9に示すような種分化方法、又は図12に示すような、補正係数を用いることも用いないこともあるサロゲート手法に関連して、CLS分析手法を使用して求められてもよい。マサチューセッツ州アンドーバー(Andover)のエムケイエスインストルメンツインコーポレイティッド社(MKS Instruments,Inc.)から市販さ
れているMKS MG2030(商標)FTIR分光計を使用して測定値を得てもよい。分光計は、40℃に加熱される5.11mのガスセルを有し、20秒のデータが100秒まで平均化される。図13は、第2の吸収スペクトルの集合が既知のシロキサン化合物及び/又は炭化水素化合物のすべてを含む、種分化手法を使用して求められた総シロキサングラフ1310、2)吸収スペクトルのサロゲート集合が既知のシロキサン化合物及び/又は炭化水素化合物の部分集合のみを含む、補正係数を使用しないサロゲート手法を使用して求められた総シロキサングラフ1320と、3)グラフ1320と同じサロゲート手法を使用して求められたが、補正係数が適用された総シロキサングラフ1330を示す。この合成バイオガス試料では、予想される総シロキサンピーク量は3.24ppm−vになるはずである(すなわち、合成ガス試料中の6つのシロキサンについて540ppbの6倍)。シロキサングラフ1310は、種分化手法によって生成され、3.11ppm−vにおいて非希釈シリンダ値の最大濃度を有する。この場合、予想量(3.24ppm−v)を約4%逸脱するが、これは許容誤差範囲内である。図示のように、補正係数を使用するサロゲート手法によって生成された総シロキサングラフ1330は、種分化によって得られたシロキサングラフ1310と同程度に正確である。この特定の例では、サロゲート方法は、総シロキサン濃度を50ppb−vを中心として分割することから開始してもよい。
図14は、100%メタンを使用して希釈された消化ガス試料の経時的な総シロキサン濃度の結果を示す。消化ガス試料は、約60%のメタンならびにいくらかのエタン及びプロパンと40%の炭素中に、合計で200ppb−v未満でありD4−シロキサンとD5−シロキサンの近似比が75%対25%であるシロキサン化合物を含む。シロキサン濃度はCLS分析手法を使用して求められてもよい。測定値は、マサチューセッツ州アンドーバー(Andover)のエムケイエスインストルメンツインコーポレイティッド社(MKS Instruments,Inc.)から市販されているMKS AIRGARD(商標)システムを使用して得られてもよい。このシステムは、40℃に加熱される10.18mのガスセルを有し、20秒のデータが100秒まで平均化される。図14は、非希釈消化ガスにメタンを付加する際にCO2濃度及びその変化に追従し、消化試料中の非希釈シロキサン合計に基づく総シロキサン値の仮定される変化をプロットすることに基づく希釈係数を使用することによって生成された総シロキサングラフ1410、2)吸収スペクトルの第2の集合がすべての主シロキサン化合物(3つの環状シロキサン成分及び3つの線状シロキサン成分)及び炭化水素化合物の第1の部分集合を含む、種分化手法を使用して求められた総シロキサングラフ1420、3)吸収スペクトルの第2の集合がすべての主シロキサン化合物(3つの環状シロキサン成分及び3つの線状シロキサン成分)及び炭化水素化合物の第2の部分集合を含む、種分化手法を使用して求められた総シロキサングラフ1430、4)吸収スペクトルのサロゲート集合がシロキサン化合物の第1の部分集合及びグラフ1420において使用される炭化水素化合物の第1の部分集合を含む、サロゲート手法を使用して求められた総シロキサングラフ1440、ならびに5)吸収スペクトルのサロゲート集合がシロキサン化合物のサロゲート集合及びグラフ1430において使用される炭化水素化合物の第2の部分集合を含む、サロゲート手法を使用して求められた総シロキサングラフ1450を示す。図14に示すように、グラフ1440,1450は、各々がサロゲート手法を使用して求められ、基準グラフ1410に対する経時的なシロキサン濃度の変化を追跡する。しかし、グラフ1420,1430は、各々が種分化手法を使用して求められ、基準グラフ1410に対する消化ガス中の経時的なシロキサン濃度の変化を追跡する。グラフ1420,1430はまた、サロゲート炭化水素としてどの炭化水素を選択するかによって、グラフ1440,1450によって表される2つのサロゲート方法のいずれよりも大きな影響を受ける。したがって、図14は、特にシロキサン濃度が低ppb−vで変化するときにシロキサン化合物のサロゲート集合(すなわち、部分集合)を使用して総シロキサン濃度を求めると有利であることを示す。
上述のシステム及び方法はデジタル電子回路、コンピュータ・ハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアに実装されてもよい。実装はコンピュータ・プログラム製品として行われてもよい(すなわち、コンピュータ・プログラムは情報担体において有形に具現化される)。実装はたとえば、機械可読記憶デバイスで行われ、かつ/又はデータ処理装置によって実行されるかもしくはデータ処理装置の動作を制御する伝搬信号で行われてもよい。実装はたとえば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、及び/又は複数のコンピュータであってもよい。
コンピュータ・プログラムは、コンパイラ型言語及び/又はインタープリタ型言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書かれてよく、かつスタンドアロンプログラムあるいはサブルーチン、要素、及び/又はコンピューティング環境において使用するのに適したその他のユニットとして導入することを含む任意の形態で展開されてもよい。コンピュータ・プログラムは、1つの現場において1つのコンピュータ又は複数のコンピュータ上で実行されるように展開されてもよい。
方法ステップは、入力データに作用し出力を生成することによって本発明の機能を実現するようにコンピュータ・プログラムを実行する1つ又は複数のプログラマブル・プロセッサによって実施されてもよい。方法ステップを専用論理回路によって実施してもよく、装置を専用論理回路として実装してもよい。回路はたとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)であってもよい。モジュール、サブルーチン、及びソフトウェア・エージェントは、機能を実現するコンピュータ・プログラム、プロセッサ、専用回路、ソフトウェア、及び/又はハードウェアの部分を参照してもよい。
コンピュータ・プログラムを実行するのに適したプロセッサは、一例として、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサの両方と、任意の種類のデジタルコンピュータの1つ又は複数のプロセッサとを含む。一般に、プロセッサは読取り専用メモリ又はランダムアクセスメモリ又はその両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの基本的な要素は、命令を実行するためのプロセッサ、ならびに命令及びデータを記憶するための1つ又は複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータは、データを記憶するための1つ又は複数の大容量記憶デバイス(たとえば、磁気ディスク、磁気光学ディスク、又は光学ディスク)を含んでもよく、1つ又は複数の大容量記憶デバイスからデータを受け取りかつ/又は大容量記憶デバイスにデータを転送するように動作可能に結合されてもよい。
ユーザとの対話を可能にするために、上述の技法がディスプレイ・デバイスを有するコンピュータ上で実施されてもよい。ディスプレイ・デバイスはたとえば、陰極線管(CRT)及び/又は液晶ディスプレイ(LCD)モニタであってもよい。ユーザとの対話はたとえば、ユーザに対する情報の表示と、ユーザがコンピュータに入力を行う(たとえば、ユーザインターフェース要素と対話する)のを可能にするキーボード及びポインティング・デバイス(たとえば、マウス又はトラックボール)であってもよい。他の種類のデバイスを使用してユーザとの対話を実現してもよい。他のデバイスはたとえば、任意の形の感覚フィードバック(たとえば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバック)としてユーザに与えられるフィードバックであってもよい。ユーザからの入力はたとえば、音響入力、発話入力、及び/又は触覚入力を含む任意の形で受け取られてもよい。
上述の技術は、バックエンド構成要素を含む分散コンピューティング・システムにおいて実施されてもよい。バックエンド構成要素はたとえば、データサーバ、ミドルウェア構成要素、及び/又はアプリケーションサーバであってもよい。上述の技法はフロントエン
ド構成要素を含む分散コンピューティング・システムにおいて実施されてもよい。フロントエンド構成要素はたとえば、グラフィカル・ユーザインターフェース、ユーザが例示的な実装形態と対話するのを可能にするウェブブラウザ、及び/又は送信デバイス用のその他のグラフィカル・ユーザインターフェースを有するクライアント・コンピュータであってもよい。システムの各構成要素同士はデジタルデータ通信の任意の形態又は媒体(たとえば、通信ネットワーク)によって相互接続されてもよい。通信ネットワークの例にはローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、有線ネットワーク、及び/又はワイヤレスネットワークが含まれる。
システムはクライアントとサーバとを含んでもよい。クライアントとサーバは一般に互いに離れており、通常通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアント−サーバ関係を有するコンピュータ・プログラムによって生じる。
本発明について特にその好ましい実施形態を参照して図示し説明したが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱せずに実施形態の形態及び詳細に様々な変更を施せることが理解されよう。