JP5981870B2 - 車両の変速制御装置 - Google Patents
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Description
変速ショックの発生原理を以下に説明する。
特許文献1に示されるような従来例の自動二輪車で1速から2速にシフトアップする状況を想定する。駆動系部品のレシオの例を図15に示す。クラッチアウタの回転数初期値を1500rpmとする。なお、レシオとクラッチアウタの回転数初期値は便宜的なものである。特に回転数初期値は運転者の運転の仕方に応じて様々な値を取り得る。
シフトアップ中のカウンタ軸トルクの推移を図13に、シフトUP時の駆動系部品の回転数推移を図14にそれぞれ示す。クラッチアウタとクラッチセンタとの回転数差を「クラッチ回転数差」と定義する。
まず、図14のカウンタ軸トルクと回転数推移に注目する。
(1)シフトアップ動作前、その時のNe−Th(エンジン回転数−スロットル開度)に応じてクラッチアウタ回転数が1500rpmになっており、一定のカウンタ軸トルクが発生している。駆動系部品の回転数は、クラッチが接続状態のため、すべりが無いと仮定するとクラッチセンタの回転数も1500rpmである。クラッチセンタはメイン軸と一体に回転する。カウンタ軸は、メイン軸によって駆動され、その回転数は1速のギア比3に応じて500rpmとなる。後輪は、カウンタ軸によって駆動され、その回転数は最終減速比2.5に応じて200rpmとなる。
(2)変速が開始され、クラッチが切れると、エンジンからカウンタ軸への駆動力がかからなくなり、カウンタ軸トルクは一旦0になる。駆動系部品の回転数は、実施例が機械式スロットルのため、簡易的にNeが一定のままと仮定すると、クラッチアウタは1500rpmが維持される。ところが、(2)の状態では、クラッチが切断されているため、メイン軸、カウンタ軸、後輪はエンジン(クラッチアウタの回転)によって駆動されるものではなくなる。クラッチオフ状態では、後輪側が変速機側を駆動する格好となる。ここで、車速が一定のままで後輪回転数が200rpmで一定と仮定すると、カウンタ軸の回転数は最終減速比2.5に応じて、500rpmとなり、メイン軸(クラッチセンタ)の回転数は1速の減速比3に応じて1500rpmとなる。結果、クラッチオフ状態でもギアポジションが1速の時点ではクラッチ回転数差は0である。
(3)次に、クラッチが切れた状態のまま、ギアポジションが2速に移動する。クラッチが切れた状態であるため、カウンタ軸トルクは0のままである。駆動系部品の回転数は、クラッチアウタは1500rpmで維持される。(3)の状態でも、後輪側が変速機側を駆動する格好であるため、後輪回転数が200rpmだと、カウンタ軸の回転数は最終減速比2.5に応じて、500rpmとなる。ここで、ギアポジションが2速に移動すると、メイン軸(クラッチセンタ)の回転数は2速の減速比1.5に応じて750rpmとなる。つまり、1速であった(2)の状態よりもクラッチセンタの回転数が下がる。結果、クラッチオフ状態でギアポジションが2速になった時点で、(クラッチアウタ 1500rpm)−(クラッチセンタ 750rpm)=(クラッチ回転数差750rpm)のクラッチ回転数差が発生する。
(4)クラッチが接続されると、クラッチ回転数差がクラッチによって吸収される。多板クラッチは回転数の異なる2つの回転体を、その容量に応じて滑らせながら同じ回転数に合わせて接続していくものであるが、クラッチ容量が大きいと、単位時間当たりのクラッチ回転数差を大きく減じせしめることができる。この際、クラッチ接続に伴い回転数が上げられる側の軸は瞬間的に加速されるため、当該軸のトルクは、クラッチ回転数差が吸収される間、大きく立ち上がる。反対に、クラッチ容量が小さいと、クラッチは滑りやすいため、単位時間当たりのクラッチ回転数差の減少が小さくなる。この際、クラッチ接続に伴い回転数が上げられる側の軸は段々と加速されるため、当該軸のトルクの立ち上がりは低めとなる。回転数差を吸収するための時間は長くなる。
すなわち、回転数差吸収中のカウンタ軸トルクはクラッチ容量によって決まり、クラッチ容量が大きいとカウンタ軸トルクは大きくなり、クラッチ容量が小さいとカウンタ軸トルクは小さくなる。
駆動系部品の回転数は、クラッチセンタが1500rpmで維持されるとすると、メイン軸、カウンタ軸、後輪の回転数はまたエンジン側(クラッチセンタ)によって駆動されるように切り替わる。その結果、(3)の時点で750rpmだったクラッチセンタがクラッチ容量に応じた時間で1500rpmまで加速されていく。
(5)クラッチ回転数差吸収後、変速が終了すると、ギアは変速前よりも1段高くなる。そのため、カウンタ軸トルクは(1)の時点よりも低くなる。駆動系部品の回転数は、クラッチアウタ回転数が1500rpmで維持されるとすると、クラッチ回転数差が吸収されたためクラッチセンタの回転数も1500rpmとなる。クラッチセンタはメイン軸と一体に回転するため、カウンタ軸の回転数は2速のギア比1.5に応じて1000rpmとなり、後輪の回転数は最終減速比2.5に応じて400rpmとなる。
ここで、(3)〜(5)間の後輪の回転数に着目すると、(4)の過程で、後輪回転数は200rpmから400rpmに上がっている。すなわち、加速が生じている。この加速が急速であると、カウンタ軸トルクが急に上がるため、変速ショックとなる。
次に、図13の加速度振幅に注目してタイムチャートを見る。(1)シフトアップ前はカウンタ軸トルクが一定のため、加速度振幅はない。(2)、(3)変速が開始されクラッチが切れると、カウンタ軸トルクがゼロになるため、体感加速度は下がるように振れる。(4)回転数差吸収中の体感加速度は、クラッチ容量に応じたカウンタ軸トルクに応じた値へと追従するように振れる。(5)その後、体感加速度は、シフトアップ完了後のカウンタ軸トルクに応じた値へと追従するように振れる。
変速ショックを抑える観点では、クラッチ回転数差吸収中のクラッチ容量が可変であることが重要となる。その理由は、変速前後のカウンタ軸トルクは運転状態によって高かったり低かったりするが、クラッチ回転数差吸収中はクラッチ容量に応じてカウンタ軸トルクが決まるため、クラッチ容量が一定であると、上記(4)回転数差吸収中と、(5)クラッチ接続完了時に、運転状態によっては加速度振幅が大きくなってしまうためである。
クラッチ容量が可変である場合、変速ショックを抑えるためには、回転数差吸収中のクラッチ容量が変速前後のカウンタ軸トルクの間にくるようにすると良い。このようにすることで、回転数差吸収中のカウンタ軸トルクを変速前後のカウンタ軸トルクになじませることができ、加速度振幅を可及的に抑えることができる。反対に、クラッチ容量が変速前後のカウンタ軸トルクのバンドから離れる程、加速度振幅は大きくなっていき変速ショックを感じやすくなる。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、クラッチ容量を変化させて変速ショックを低減可能な車両の変速制御装置を簡単な構造で実現できるようにすることを目的とする。
本発明によれば、リフターカムを平坦部に位置するよう制御することで、クラッチ容量を、クラッチ切断位置とクラッチ接続位置との間の所定の中間容量に容易にセットできる。平坦部ではリフターカムの回動に対してリフト量が一定であり、平坦部はある程度の範囲を持って設けられるため、平坦部に対応するスピンドル角に制御することは、比較的容易となる。従って、システム部品や制御が比較的簡素なものであっても、クラッチ容量を容易に設定値に合わせることができ、変速ショックを低減可能な変速制御装置とすることができる。
本発明によれば、スピンドル角制御部は、リフターカムを、推定エンジントルクに応じて複数の平坦部の内の1つに位置するように制御するため、エンジントルクに基づいてクラッチ容量を選択でき、変速ショックを低減できる。
本発明によれば、推定エンジントルクが所定のエンジントルクよりも大きいと推定された場合、スピンドル角制御部はリフターカムが第1の平坦部に位置するように制御するため、エンジントルクが大きな場合には、リフト量が小さな第1の平坦部に対応した比較的大きなクラッチ容量を得ることができる。これにより、変速前後の大きなエンジントルクに適したクラッチ容量にでき、変速ショックを低減できる。
本発明によれば、推定エンジントルクが所定のエンジントルクよりも小さいと推定された場合、スピンドル角制御部はリフターカムが第2の平坦部に位置するように制御するため、エンジントルクが小さな場合には、リフト量が大きな第2の平坦部に対応した比較的小さなクラッチ容量を得ることができる。これにより、変速前後の小さなエンジントルクに適したクラッチ容量にでき、変速ショックを低減できる。
また、エンジントルクに基づいてクラッチ容量を選択でき、変速ショックを低減できる。
また、リフト量が小さな第1の平坦部に対応した比較的大きなクラッチ容量を得ることができるため、変速前後の大きなエンジントルクに適したクラッチ容量にでき、変速ショックを低減できる。
さらに、リフト量が大きな第2の平坦部に対応した比較的小さなクラッチ容量を得ることができるため、変速前後の小さなエンジントルクに適したクラッチ容量にでき、変速ショックを低減できる。
図1は、本発明の実施の形態に係る変速制御装置を備えた自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10は、ヘッドパイプ(不図示)に回動可能に軸支されたハンドル11と、ハンドル11により操舵される前輪12と、駆動輪である後輪13と、運転者が着座するシート14と、後輪13にチェーン15を介して駆動力を供給するパワーユニット16と、パワーユニット16の制御を行う制御ユニット17(制御部)と、バッテリ18とを有する。
図2はパワーユニット16の断面平面図である。図2では、左右方向が車幅方向、上方向が車両前方、下方向が車両後方に相当する。
パワーユニット16は、走行駆動力を発生するエンジン21と、発電機22と、エンジン21のクランク軸23に設けられた発進クラッチ24と、発進クラッチ24を介して出力されたクランク軸23の駆動力を変速して出力する自動変速機Tとを備える。
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてアクチュエータ部54の制御が行われ、変速機構50が自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチ27が運転者によって操作されることで変速が行われる。
変速機構50では、駆動ギア58b及び従動ギア59cのスライドに応じて、メイン軸56及びカウンタ軸57間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
カウンタ軸57の端部にはスプロケット67が設けられ、スプロケット67はチェーン15を介して後輪13に回転を伝達する。
エンジン21は、クランク軸23の回転速度を検出するエンジン回転数センサ45(図9)、及び、カウンタ軸57の回転速度を検出するカウンタ軸回転数センサ68を備える。また、自動二輪車10は、吸気装置のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ(不図示)を備える。カウンタ軸回転数センサ68、エンジン回転数センサ45、及び、上記スロットル開度センサは、検出値を制御ユニット17に供給する。カウンタ軸回転数センサ68の検出値に減速比を考慮することで、車速が算出される。
図2及び図3を参照し、アクチュエータ部54は、モーター70と、クランクケース30c内を車幅方向に延びるシフトスピンドル71と、モーター70の回転を減速してシフトスピンドル71を駆動する歯車列(不図示)とを備える。
シフトスピンドル71は、クランクケース30cの左側壁30e及びクランクケースカバー30dに両端を軸支されるとともに、メイン軸56のベアリング64bを支持する中間壁部30fによってもその中間部を軸支されている。クランクケースカバー30dには、シフトスピンドル71の回転位置を検出するスピンドル角度センサ72が設けられている。
ギアシフトアーム73は、シフトフォーク60a,60b等を介してシフトドラム63に連結されており、アクチュエータ部54によってギアシフトアーム73が回動されることで、シフトドラム63が回転し、変速が行われる。
ギアシフトアーム73は、回動アーム75の内側円筒部75aの外周面に嵌合する外側円筒部73aと、外側円筒部73aから周方向外側に延出されるアーム部73bとを有する。
ギアシフトアーム73は、回動アーム75に対して相対回転可能に設けられ、回動アーム75の押圧部75cは、ギアシフトアーム73のアーム部73bに形成された規制開口部73cに挿通される。
蓄力カラー78は、蓄力スプリング80側に軸方向へ突出するカラー側係止部78aと、カラー側係止部78aとは反対側へ軸方向に突出するクラッチ側ドグ歯78bとを有する。
蓄力スプリング80は、ねじりコイルバネであり、一端が回動アーム75のアーム側係止部75bに係止され、他端が蓄力カラー78のカラー側係止部78aに係止される。
シフトドラムセンサ63aの検出結果に基づいて変速の完了が検知されると、シフトスピンドル71は逆回転され、ギアシフトアーム73は元の位置に復帰するとともに、クラッチ機構51が接続される。
リフターカムプレート84は、クラッチレバー81のレバー部81b先端に設けられたピン86に連結される連結部84aと、ベース部材83に面するリフター部84bとを有する。リフター部84b及びベース部材83の互いに対向する面には、ボール85を狭持するカム部84c,83aがそれぞれ形成されている。リフターカムプレート84は、中央に設けられたガイド穴84dに、ベース部材83のガイド軸83bが嵌合することで、軸方向の移動をガイドされる。また、リフター部84bの先端部には、ボールベアリング87が設けられており、リフターカムプレート84は、ボールベアリング87を介してクラッチ機構51に接続される。
クラッチレバー81のクラッチ側ドグ穴81cは、蓄力カラー78のクラッチ側ドグ歯78bよりも周方向に大きな幅を有しており、クラッチ側ドグ歯78bは、蓄力カラー78が所定の角度だけ回転した時に初めてクラッチ側ドグ穴81cを周方向に押圧し、クラッチレバー81を回動させる。ここで、蓄力カラー78の上記所定の角度は、蓄力スプリング80が十分な力を蓄力する角度よりも大きな角度である。すなわち、本実施の形態では、蓄力スプリング80の蓄力が完了した後に、クラッチレバー81が回動されてクラッチ機構51が切断され、蓄力が開放される。このため、迅速に変速を行うことができる。
図2〜図4に示すように、メイン軸56の軸端には、クランク軸23のプライマリギア37に噛み合うプライマリドリブンギア69が、メイン軸56に対して相対回転可能に軸支されている。
クラッチ機構51は、プライマリドリブンギア69に固定されるカップ状のクラッチアウタ91と、クラッチアウタ91の径方向内側に設けられ、メイン軸56に一体に固定されるクラッチセンタ92と、メイン軸56の軸方向に移動可能なプレッシャプレート93と、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92との間に設けられるクラッチ板94と、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢するメインスプリング95と、クラッチを切断する方向にプレッシャプレート93を移動させるリフタープレート96と、リフタープレート96とプレッシャプレート93との間に狭持されるレリーズスプリング97と、クラッチ板94とプレッシャプレート93との間に狭持されるジャダースプリング98と、プレッシャプレート93に一体に固定されるバックトルクリミット部材99とを備える。クラッチセンタ92及びプレッシャプレート93は組み合されて一体となり、クラッチアウタ91の内側に配置されるクラッチインナ90を構成する。
クラッチセンタ92は、メイン軸56に固定される円筒状のハブ部92aと、ハブ部92aの軸端部からクラッチアウタ91の内周面近傍まで径方向外側に延びる円板状の受け板部92bとを備える。受け板部92bには、レリーズスプリング97が挿通されるバネ通し孔92cが形成されている。バネ通し孔92cは、受け板部92bの周方向に並べて複数形成されている。また、受け板部92bは、クラッチ板94を受ける受け面92dを外周部に有する。クラッチセンタ92は、スプライン嵌合及びナット89によってメイン軸56に固定されており、メイン軸56に対し、相対回転不能且つ軸方向に移動不能である。
各内側摩擦板94bは、プレッシャプレート93の内側円筒部93bの外周面にスプライン嵌合によって支持されており、プレッシャプレート93の軸方向に移動可能且つプレッシャプレート93に対して回転不能に設けられている。
バックトルクリミット部材99は、内側円筒部93bの内周面に嵌合する円筒部99aと、円筒部99aの底に設けられる底板部99bとを有する。底板部99bの中央には、ハブ部92aが挿通される孔部99cが形成されている。底板部99bにおいて孔部99cの周囲には、プレッシャプレート93を貫通してクラッチセンタ92の受け板部92bに臨むカム部99dが複数形成されている。カム部99dは、受け板部92bに固定されたリフターピン119に係合する。
後輪13側から所定値以上のバックトルクが作用すると、プレッシャプレート93がクラッチセンタ92に対して相対回転することで、カム部99dがリフターピン119上を摺動し、プレッシャプレート93はクラッチ切断方向に移動する。バックトルクリミッタ機構によれば、バックトルクに起因する変速ショックを低減できる。
メインスプリング95は、リング状の皿バネであり、バックトルクリミット部材99の底板部99bとリテーナー103との間で狭持される。詳細には、メインスプリング95は、クラッチセンタ92のハブ部92aとプレッシャプレート93の内側円筒部93bとの間に配置され、外径部がバネ受け部材104を介してバックトルクリミット部材99に支持され、内径部がリテーナー103に支持される。
メインスプリング95は、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92とでクラッチ板94を狭持する方向、すなわち、クラッチを接続する方向へプレッシャプレート93を付勢する。
ベアリング支持孔部96aには、ボールベアリング87の外輪が嵌着され、ボールベアリング87の内輪は、リフターカムプレート84のリフター部84bの外周面に嵌着されている。このため、リフタープレート96は、リフターカムプレート84と共に軸方向に移動可能であるとともにリフターカムプレート84に対して相対回転可能である。
レリーズスプリング97は、プレッシャプレート93を挟んでメインスプリング95の反対側に配置されており、メインスプリング95とは逆方向、すなわち、クラッチを切断する方向へプレッシャプレート93を付勢する。通常の状態(クラッチ接続状態)におけるレリーズスプリング97の付勢力は、0または、メインスプリング95の付勢力に比して十分小さい値に設定されている。
シフトスピンドル71(図3)の回転に伴いクラッチレバー81が回動されてリフターカムプレート84が軸方向に移動すると、リフタープレート96は、ボールベアリング87を介して押圧され、隙間Gを小さくする方向にリフトされる。
リフタープレート96が隙間Gを小さくする方向へリフトされて、レリーズスプリング97の付勢力がメインスプリング95の付勢力よりも大きくなると、プレッシャプレート93は、クラッチ切断方向への移動を開始する。リフタープレート96は、レリーズスプリング97と共働して、リフタープレート96のリフト位置によりクラッチ容量を低減させる。
図5に示すように、クラッチ機構51では、リフタープレート96のリフトの開始の直後に、クラッチ容量は1から減少し始める。リフタープレート96が連続的にリフトされた場合、リフト量の増加に比例してレリーズスプリング97のクラッチ切断方向への付勢力は増加し、クラッチ容量は1から半クラッチ状態を経て0まで線形的に減少する。本実施の形態では、クラッチは、隙間Gが0になる前、すなわち、バネ座部96bがレリーズボス100の当接面100aに当接する前に切断され、クラッチ容量が0になるように設定されている。
このように、レリーズスプリング97を介してプレッシャプレート93を押圧することで、剛体を介してプレッシャプレート93を押圧する場合に比して、緩やかに且つ高精度にクラッチ容量を減少させることができる。
リフターカムプレート84のリフター部84bは円板状に形成されており、連結部84aは、リフター部84bの外周部の一部から径方向外側に突出して形成されている。ボール85に当接するカム部84cは、ガイド穴84dの周囲おいて、周方向の複数箇所(本実施の形態では3個所)に分かれて配置されている。各カム部84cの形状は同一形状である。ボール85は、カム部84cに対応して3個所に設けられる。連結部84aには、クラッチレバー81のピン86が連結されるガイド孔84eが形成されている。
リフターカムプレート84は、シフトスピンドル71の正転または逆転に伴い、クラッチレバー81のピン86を介して操作され、ガイド穴84dに嵌合するガイド軸83bを中心に回動し、カム部84cがボール85上を滑ることで、軸方向に移動する。すなわち、リフターカムプレート84は、クラッチレバー81の回転方向の移動量をリフターカムプレート84の軸方向の移動量に変換する。そして、リフターカムプレート84の軸方向の移動量は、カム部84cの形状によって決まる。
カム部84cは、複数のクラッチ容量を得られるように、複数の段部を有する階段状のカムプロフィールを備える。
カム部84cは、クラッチ機構51のクラッチ接続状態に対応した接続段部110(クラッチ接続位置)を基準位置として有する。接続段部110は、カム部84cの最も深い位置に形成された段部であり、接続段部110にボール85が係合した状態では、クラッチ機構51は完全に接続されている。カム部84cには、接続段部110を基準位置とし、シフトダウン方向及びシフトアップ方向が、接続段部110の周方向の両側に設定されている。本実施の形態では、カム部84cは、シフトスピンドル71が正転するとシフトアップ方向に回動し、シフトスピンドル71が逆転するとシフトダウン方向に回動する。ここで、「シフトアップ方向」は、ボール85がリフターカムプレート84に対して相対的にシフトアップ方向に移動する方向であり、実際のリフターカムプレート84の回動方向はシフトアップ方向とは逆の方向であるが、以下の説明では、図7中に矢印で示す方向をシフトアップ方向とする。同様に、「シフトダウン方向」は、ボール85がリフターカムプレート84に対して相対的にシフトダウン方向に移動する方向であり、実際のリフターカムプレート84の回動方向はシフトダウン方向とは逆の方向であるが、以下の説明では、図7中に矢印で示す方向をシフトダウン方向とする。
接続段部110に隣接してシフトアップ方向には、接続段部110に近い順に、接続段部110よりも高い段部である第1容量段部111(第1の平坦部)と、第1容量段部111よりも高い段部である第2容量段部112(第2の平坦部)と、第2容量段部112よりも高い段部である切断段部113(クラッチ切断位置)とが形成されている。
接続段部110と第1容量段部111と第2容量段部112と切断段部113との間は、互いに略等しい角度の斜面部115,116,117によってそれぞれ接続されている。また、斜面部115,116,117の上端及び下端は曲面状に滑らかに形成されている。接続段部110とシフトダウン用段部114とは、斜面部118によって接続されている。斜面部118の上端及び下端は曲面状に滑らかに形成されている。斜面部118の傾斜度は斜面部115,116,117の傾斜度よりも大きい。ボール85は、斜面部115,116,117,118上を滑らかに移動する。
切断段部113とシフトダウン用段部114との高さは同一であり、図6に示すように、一つの切断段部113は、隣接する他のカム部84cのシフトダウン用段部114に連続している。
また、第1容量段部111は、リフターカムプレート84のリフト方向の軸線に直交する平坦面により構成される第1容量範囲R1を有し、第1容量範囲R1内では、一定のリフト量L1が得られる。第1容量範囲R1が得られるシフトスピンドル71の第1角度範囲A1(図8)は、第1容量段部111の幅に対応した一定の幅を有する。このため、シフトスピンドル71の回転角度、周辺部品及び制御方法等の精度をそれほど高くしなくとも、リフト量L1を得て、半クラッチ状態にできる。
また、第2容量段部112は、リフターカムプレート84のリフト方向の軸線に直交する平坦面により構成される第2容量範囲R2を有し、第2容量範囲R2内では、一定のリフト量L2が得られる。第2容量範囲R2が得られるシフトスピンドル71の第2角度範囲A2は、第2容量段部112の幅に対応した一定の幅を有する。このため、シフトスピンドル71の回転角度、周辺部品及び制御方法等の精度をそれほど高くしなくとも、リフト量L2を得て、半クラッチ状態にできる。
また、切断段部113は、リフターカムプレート84のリフト方向の軸線に直交する平坦面により構成される切断範囲R3を有し、切断範囲R3内では、一定のリフト量L3が得られる。切断範囲R3が得られるシフトスピンドル71の第3角度範囲A3は、切断段部113の幅に対応した一定の幅を有する。このため、シフトスピンドル71の回転角度、周辺部品及び制御方法等の精度をそれほど高くしなくとも、リフト量L3を得て、クラッチ機構51を切断状態にできる。
図9に示すように、自動変速機Tは、発進クラッチ24、プライマリギア37、クラッチ機構51、メイン軸56、変速機構50、カウンタ軸57、チェーン15、スプロケット67及び後輪13を備え、クランク軸23の動力を後輪13まで機械的に伝達する駆動伝達部130と、変速機構50及びクラッチ機構51を機械的に操作する行うアクチュエータ機械部55と、アクチュエータ機械部55を制御する電装部131とを備える。アクチュエータ機械部55及び電装部131は、変速制御装置140を構成する。
電装部131は、制御ユニット17と、ハンドル11に設けられるハンドルスイッチ132と、エンジン回転数センサ45と、モーター70と、スピンドル角度センサ72と、シフトドラムセンサ63aと、カウンタ軸回転数センサ68とを備える。ハンドルスイッチ132は、モードスイッチ26及びシフトセレクトスイッチ27を備える。
制御ユニット17は、ハンドルスイッチ132、エンジン回転数センサ45、スピンドル角度センサ72、シフトドラムセンサ63a及びカウンタ軸回転数センサ68からの信号に基づいて、モーター70を制御し、変速操作及びクラッチ操作を自動で行う。
制御ユニット17は、エンジン回転数センサ45、スピンドル角度センサ72、シフトドラムセンサ63a及びカウンタ軸回転数センサ68から入力された信号を処理する車体センサインターフェイス部120と、エンジントルク推定部121と、目標ギアポジション決定部122と、変速モード決定部123と、クラッチ制御モード決定部124とを備える。
また、車体センサインターフェイス部120は、スピンドル角度センサ72から得られた信号を、実スピンドル角として、クラッチ制御モード決定部124及び後述のスピンドル角制御部127に出力する。
変速モード決定部123は、現在のギアポジションと目標ギアポジションとに基づいて、シフトアップするシフトアップモード及びシフトダウンするシフトダウンモードのいずれかを決定し、決定した変速モードをクラッチ制御モード決定部124に出力する。
さらに、変速モード決定部123は、シフトアップモード時には、シフトアップ用目標クラッチ容量を、エンジントルク推定値が所定のエンジントルクTq(図11)よりも大きいと推定された場合には上記「大容量」に決定し、エンジントルク推定値が所定のエンジントルクTqよりも小さいと推定された場合には上記「小容量」に決定し、決定したシフトアップ用目標クラッチ容量をクラッチ制御モード決定部124に出力する。
クラッチ制御モード決定部124は、シフトスピンドル71のスピンドル角、エンジン回転数、クラッチ滑り回転数、変速モード及びシフトアップ用目標クラッチ容量に基づいて、クラッチ制御モードを決定する。具体的には、クラッチ制御モードは、「最大容量」でクラッチを接続する最大容量モードと、「大容量」でクラッチを接続する大容量モードと、「小容量」でクラッチを接続する小容量モードとの3つのモードがあり、クラッチ制御モード決定部124は、決定したクラッチ制御モードを目標クラッチ容量決定部125に出力する。
目標スピンドル角決定部126は、目標クラッチ容量を、目標スピンドル角に変換し、目標スピンドル角をスピンドル角制御部127に出力する。
スピンドル角制御部127は、シフトスピンドル71のスピンドル角が目標スピンドル角となるように、アクチュエータ機械部55のモーター70をフィードバック制御する。これにより、シフトスピンドル71が目標スピンドル角となり、目標クラッチ容量が得られる。
変速に伴い、制御ユニット17は、モーター70を駆動し、リフターカムプレート84をシフトアップ方向に回動させることで、ボール85を接続段部110(図7)から切断段部113(図7)に移動させる。これにより、クラッチリフター52がリフトされてクラッチ機構51が切断されるとともに、シフター53、蓄力機構74及びシフトドラム63を介して変速機構50の歯車列が1速から2速に切り替えられる。その後、クラッチ機構51は再び接続されるが、この接続について次に説明する。
変速モード決定部123は、変速モードをシフトアップモードに決定しているとともに、エンジントルク推定値X1が所定のエンジントルクTqよりも大きいことに基づいて、シフトアップ用目標クラッチ容量を「大容量」に決定している。
なお、歯車列が2速に切り替えられている変速機構50は、公知の間欠送り機構(不図示)によってロックされるとともにシフトスピンドル71の回転から切り離されるため、「大容量」の状態にするためにリフターカムプレート84及びシフトスピンドル71がシフトダウン方向に回動された場合にも影響を受けない。
変速に伴い、制御ユニット17は、モーター70を駆動し、リフターカムプレート84をシフトアップ方向に回動させることで、ボール85を接続段部110(図7)から切断段部113(図7)に移動させている。
変速モード決定部123は、変速モードをシフトアップモードに決定しているとともに、エンジントルク推定値X2が所定のエンジントルクTqよりも小さいことに基づいて、シフトアップ用目標クラッチ容量を「小容量」に決定している。
17 制御ユニット(制御部)
51 クラッチ機構(クラッチ)
70 モーター(アクチュエータ)
71 シフトスピンドル
72 スピンドル角度センサ
84 リフターカムプレート(リフターカム)
93 プレッシャプレート
94 クラッチ板
95 メインスプリング
96 リフタープレート
97 レリーズスプリング
110 接続段部(クラッチ接続位置)
111 第1容量段部(第1の平坦部)
112 第2容量段部(第2の平坦部)
113 切断段部(クラッチ切断位置)
121 エンジントルク推定部
127 スピンドル角制御部
140 変速制御装置
T 自動変速機(変速機)
Tq 所定のエンジントルク
X1,X2 エンジントルク推定値(推定エンジントルク)
Claims (4)
- 変速機(T)のシフトスピンドル(71)を駆動するアクチュエータ(70)と、メインスプリング(95)の押圧力によって複数のクラッチ板(94)をクラッチ接続方向へ付勢するプレッシャプレート(93)と、当該プレッシャプレート(93)をクラッチ切断方向へリフトするリフタープレート(96)と、当該リフタープレート(96)をクラッチ切断方向へ付勢するレリーズスプリング(97)との共働によりリフタープレート(96)位置によりクラッチ容量を低減させるクラッチ(51)と、前記シフトスピンドル(71)の回動に伴って、前記リフタープレート(96)をリフトさせるリフターカム(84)と、前記アクチュエータ(70)に回動指令を与える制御部(17)とを備える車両の変速制御装置において、
前記リフターカム(84)のプロフィールは、クラッチ切断位置(113)とクラッチ接続位置(110)との間に前記リフターカム(84)の回動に対してリフト量が一定な平坦部(111,112)を有し、
前記制御部(17)は、前記リフターカム(84)を前記平坦部(111,112)に位置するよう制御するスピンドル角制御部(127)を有することを特徴とする車両の変速制御装置。 - 前記リフターカム(84)の前記平坦部(111,112)は複数設けられ、
エンジントルクを推定するエンジントルク推定部(121)をさらに有し、
前記スピンドル角制御部(127)は、前記リフターカム(84)を、推定エンジントルク(X1,X2)に応じて複数の平坦部(111,112)の内の1つに位置するように制御することを特徴とする請求項1記載の車両の変速制御装置。 - 前記リフターカム(84)の複数の前記平坦部(111,112)は、リフト量が小さな第1の平坦部(111)と、リフト量が大きな第2の平坦部(112)と、を有し、前記推定エンジントルク(X1,X2)が所定のエンジントルク(Tq)よりも大きいと推定された場合、前記スピンドル角制御部(127)は前記リフターカム(84)が前記第1の平坦部(111)に位置するように制御することを特徴とする請求項2記載の車両の変速制御装置。
- 前記推定エンジントルク(X1,X2)が前記所定のエンジントルク(Tq)よりも小さいと推定された場合、前記スピンドル角制御部(127)は前記リフターカム(84)が前記第2の平坦部(112)に位置するように制御することを特徴とする請求項3記載の車両の変速制御装置。
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