JP5974573B2 - 非水系二次電池用負極材、非水系二次電池用負極及び非水系二次電池 - Google Patents
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Description
[2]本発明は、炭素質粒子(A)100質量部に対して、酸化珪素粒子(B)1〜50質量部を含む、前記[1]記載の非水系二次電池用負極材に関する。
[3]本発明は、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)との質量比が95:5〜5:95である、前記[1]又は[2]記載の非水系二次電池用負極材に関する。
[4]本発明は、球形化黒鉛(A1)の50%粒子径(d50)Rgと、酸化珪素粒子(B)の50%粒子径(d50)Rsとの比Rs/Rgが、0.001〜5である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材に関する。
[5]本発明は、酸化珪素粒子(B)が一般式SiOx(xは0.5≦x≦1.6である)で示される、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材に関する。
[6]本発明は、球形化黒鉛(A1)の50%粒子径(d50)Rgが2〜30μmであり、酸化珪素粒子(B)の50%粒子径(d50)Rsが0.01〜10μmである、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材に関する。
[7]本発明は、球形化黒鉛(A1)のアスペクト比が2.09以下であり、鱗片状黒鉛(A2)のアスペクト比が2.1〜10である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材に関する。
[8]本発明は、鱗片状黒鉛質粒子(A2)の短径の長さが0.9〜15μmである、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材に関する。
[9]本発明は、集電体と、該集電体上に形成された活物質層とを備える非水系二次電池用負極であって、前記活物質層が、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材を含有することを特徴とする非水系二次電池用負極に関する。
[10]本発明は、イオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水系二次電池であって、前記負極が、前記[9]に記載の非水系二次電池用負極であることを特徴とする、非水系二次電池に関する。
炭素質粒子(A)は、少なくとも球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物である。
球形化黒鉛(A1)は、具体的な形状、種類及び物性は特に制限されない。形状の具体的な例としては、球状、楕円状又は塊状等が挙げられる。中でも粒子が球に近い形状であることが好ましい。球形化黒鉛(A1)の製法は問わないが、例えば特許第3534391号公報に記載されたような力学的エネルギー処理を加えて球形化処理をした球形化黒鉛や、この球形化黒鉛に、有機化合物を混合し、該有機化合物を炭素化することによって製造される表面の少なくとも一部に炭素層を備えた複合型の球形化黒鉛を用いてもよい。ここで、「表面の少なくとも一部に炭素層を備えた」は、炭素層が黒鉛粒子の一部又は全部に層状に覆う形態のみならず、炭素層が表面の一部又は全部に付着・添着する形態をも包含する。炭素層は、表面の全部を被覆するように備えていてもよく、一部を被覆あるいは付着・添着してしてもよいが、好ましくは、表面の全部を被覆している。このような球形化黒鉛としては、例えば球形化黒鉛の表面の少なくとも一部に非晶質炭素からなる炭素層を備えた複合型の球形化黒鉛(「非晶質炭素被覆球形化黒鉛」ともいう)や、球形化黒鉛子の表面の少なくとも一部に黒鉛からなる炭素層を備えた複合型の球形化黒鉛(「黒鉛被覆球形化黒鉛」ともいう)を使用することができる。本発明において球形化黒鉛(A1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、炭素層が黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に炭素層を備えていることを、確認するためには、例えば、SEM写真等でも確認する事ができる。
<球形化黒鉛(A1)の物性>
(a−1)50%粒子径
球形化黒鉛(A1)の50%粒子径(d50)Rgは、好ましくは2〜30μmであり、より好ましく3〜28μm、更に好ましくは4〜26μmである。この範囲であれば、電極とした場合に、比表面積が大きくなることによる不可逆容量の増加を防ぐことができ、球形化黒鉛(A1)と電解液との接触面積の減少による急速充放電性の低下を防ぐことができる。ここで50%粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定により測定される体積基準のメジアン径をいう。
球形化黒鉛(A1)の短径に対する長径の長さの比であるアスペクト比は、2.09以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下、更に好ましくは1.8以下、特に好ましくは1.7以下である。アスペクト比がこの範囲であると、粒子形状が楕円形、球形に近い状態になり、電極とした場合に粒子間の空隙の連続性が確保されリチウムイオンの移動性が高まり、急速充放電特性に優れた傾向を示す。なお、アスペクト比が大きすぎると、粒子形状が球状や楕円形ではなく、円盤状、板状になっていき、鱗片状黒鉛に近いものになり、粒子間の空隙が屈曲した形状となりリチウムイオンの移動性が悪く、急速充放電特性が劣る傾向を示す。なお、アスペクト比は、粒子の短径に対する長径の長さの比であり、最小値は1となるので、アスペクト比の下限は通常1である。球形化黒鉛(A1)のアスペクト比は後述する実施例の方法を用いて測定することができる。
球形化黒鉛(A1)のタップ密度は、好ましくは0.8g/cm3以上、より好ましくは0.85g/cm3以上である。タップ密度が0.8g/cm3以上であるということは、球形化黒鉛(A1)がほぼ球状であることを示す。球形化黒鉛(A1)のタップ密度が0.8g/cm3以上であると、電極とした場合に、電解液及び酸化珪素粒子を存在させることの可能な好適な間隙を球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とで形成しつつ、電解液中のリチウムイオン等のアルカリイオンの移動性と、充放電時における炭素質粒子(球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2))及び酸化珪素粒子(B)への十分なリチウムイオン等のアルカリイオンの出入りを確保することができ、高容量で、急速放電特性をもたらすことができる。タップ密度は後述する実施例の方法により測定する。
球形化黒鉛(A1)のBET法による比表面積は、好ましくは0.5〜15m2/g、より好ましくは1〜12m2/g、更に好ましくは1.5〜10m2/gである。本明細書において、BET法による比表面積は後述する実施例の方法により測定する。球形化黒鉛(A1)の比表面積を0.5m2/g以上とすることで、リチウムイオン等のアルカリイオンの受け入れ性が良くなり、15m2/g以下とすることで不可逆容量の増加による電池容量の減少を防ぐことができる。
球形化黒鉛(A1)のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上である。X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上であることは、球形化黒鉛(A1a)の結晶性が高いということであり、非晶質炭素材料に見られるような不可逆容量が大きいことによる低容量化を生じない高容量電極となる負極材を得ることができる。X線広角回折法による002面の面間隔(d002)は後述する実施例の方法により測定する。
球形化黒鉛の表面の少なくとも一部を被覆する非晶質炭素のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.40Å以上、Lcが500Å以下であることが好ましい。002面の面間隔(d002)を3.40Å以上、Lcを500Å以下とすることにより、リチウムイオンの受け入れ性が向上することができる。
球形化黒鉛(A1)の真密度は、好ましくは2.1g/cm3以上である。より好ましくは2.15g/cm3以上であり、更に好ましくは2.2g/cm3以上である。真密度は後述する実施例の方法により測定する。真密度が2.1g/cm3以上であるということは、黒鉛粒子の本体の結晶性が高いことを示し、不可逆容量の少ない高容量の負極材を得ることをできる。
力学的エネルギー処理を加えて球形化処理をした球形化黒鉛(A1)は、前記の性状を具備していれば、どのような製法で作製しても問題はないが、例えば、下記の方法で製造することができる。例えば、特許第3534391号公報に記載の電極用炭素材料を用いることができる。具体的には、例えば、鱗片状、塊状又は板状の天然黒鉛、並びに石油コークス、石炭ピッチコークス、石炭ニードルコークス及びメソフェーズピッチ等を2500℃以上に加熱して製造した人造黒鉛に、力学的エネルギー処理を与えることで製造できる。
被覆率(質量%)=100−(K×D)/((K+T)×N)×100
この式において、Kはタールピッチとの混合に供した黒鉛粒子の質量(Kg)、Tは黒鉛粒子との混合に供した被覆原料であるタールピッチの質量(kg)、DはKとTの混合物のうち実際に焼成に供した混合物量、Nは焼成後の炭素層を黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に備えた球形化黒鉛の質量を示す。
鱗片状黒鉛(A2)は、黒鉛の結晶性が完全に近い結晶を示すように高純度化した天然黒鉛と、人工的に形成した黒鉛とがあり、天然黒鉛であることが好ましい。本明細書において鱗片状とは、鱗片状黒鉛(A2)の短径に対する長径の長さの比である平均アスペクト比が2.1以上のものをいう。
鱗片状黒鉛(A2)の50%粒子径(d50)Rgは、好ましくは2〜30μmであり、より好ましくは3〜28μm、更に好ましくは4〜26μmである。この範囲であれば、電極とした場合に、比表面積が大きくなることによる不可逆容量の増加を防ぐことができる。また、鱗片状黒鉛(A2)の50%粒子径(d50)Rgが大きすぎると、鱗片状黒鉛(A2)を混合した電極用材料をバインダーや水、或いは有機溶媒を加えてスラリー状として塗布する工程で、大粒子に起因したスジ引きや凹凸を生じることがある。ここで50%粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定により測定される体積基準のメジアン径をいう。
粒子の短径に対する長径の長さの比であるアスペクト比は、2.1〜10が好ましい。アスペクト比は、2.3〜9であることがより好ましく、2.5〜8であることが更に好ましい。アスペクト比がこの範囲であると、少なくとも球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物により、酸化珪素粒子が存在可能となる好適な間隙を形成しつつ、点接触する球形化黒鉛(A1)の間に面及びエッジが接触する鱗片状黒鉛(A2)が存在し、部分的に鱗片状黒鉛(A2)が球形化黒鉛(A1)間に跨って球形化黒鉛(A1)を橋渡すように接触して電極とすることができ、充放電の繰り返しにより、球形化黒鉛(A1)の体積変化により点接触している球形化黒鉛(A1)同士が離れた場合であっても、鱗片状黒鉛(A2)による橋渡しによって、導電パスを確保し、サイクル特性を向上することができる。鱗片状黒鉛(A2)のアスペクト比は後述する実施例の方法を用いて測定することができる。
鱗片状黒鉛(A2)のタップ密度は、好ましく0.1g/cm3以上であり、より好ましくは0.15g/cm3以上である。また、鱗片状黒鉛(A2)のタップ密度は、好ましくは0.2g/cm3以下であり、より好ましくは2.0g/cm3以下、更に好ましくは1.6g/cm3以下である。鱗片状黒鉛(A2)のタップ密度が上記範囲内であると、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物により、酸化珪素粒子(B)が存在可能となる間隙を形成しつつ、球形化黒鉛(A1)の粒子間を跨いで橋渡す構造を形成した場合であっても、電極の強度を低下させることなく、充放電による酸化珪素粒子(B)、球形化黒鉛(A1)及び鱗片状黒鉛(A2)の体積変化を上記構造が吸収し、体積変化に伴って生じる電極活物質の劣化を抑制することができ、サイクル特性を向上することができる。タップ密度は後述する実施例の方法により測定する。
鱗片状黒鉛(A2)のBET法による比表面積は好ましくは1〜40m2/gである。鱗片状黒鉛(A2)のBET法による比表面積は2〜35m2/gであることがより好ましく、3〜30m2/gであることが更に好ましい。鱗片状黒鉛(A2)のBET法による比表面積は、リチウムイオン等のアルカリイオンの受け入れ性が良くなり、40m2/g以下とすることで不可逆容量の増加による電池容量の減少を防ぐことができる。BET法比表面積は後述する実施例の方法により測定する。
鱗片状黒鉛(A2)のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は0.337nm以下である。一方黒鉛の002面の面間隔の理論値は0.335nmであるため、黒鉛の002面の面間隔は通常0.335nm以上である。また、鱗片状黒鉛(A2)のX線広角回折法によるLcは90nm以上、好ましくは95nm以上である。002面の面間隔(d002)が0.337nm以下であると、鱗片状黒鉛(A2)の結晶性が高いことを示し、高容量となる負極材を得ることができる。また、Lcが90nm以上である場合にも、結晶性が高いことを示し。高容量となる負極材を得ることができる。X線広角回折法による002面の面間隔(d002)と、Lcは後述する実施例の方法により測定する。
鱗片状黒鉛(A2)の真密度(測定法は後述の実施例のとおり)は好ましくは2.1g/cm3以上、より好ましくは2.15g/cm3以上、更に好ましくは2.2g/cm3以上である。真密度が2.1g/cm3以上の結晶性の高い黒鉛であると、不可逆容量の少ない高容量の負極材を得ることができる。
鱗片状黒鉛(A2)の短径の長さは、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下である。また、鱗片状黒鉛(A2)の短径の長さは、好ましくは0.9μm以上である。鱗片状黒鉛(A2)の短径の長さが0.9〜15μmであると、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物により、酸化珪素粒子(B)が存在可能となる好適な間隙を形成しつつ、面又はエッジが接触する鱗片状黒鉛(A2)が部分的に球形化黒鉛(A1)の粒子間を跨いで橋渡すように接触した電極とすることができ、充放電の繰り返しにより、球形化黒鉛(A1)の体積変化が生じても導電性パスを確保することができるとともに、存在する酸化珪素粒子の体積変化を、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とのによって形成された間隙が吸収し、体積変化に伴って生じる電極活物質の劣化を抑制することができ、サイクル特性を向上することができる。更に、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とのによって形成された間隙により、リチウムイオン等のアルカリイオンの拡散パスが確保され、レート特性を向上することができる。鱗片状黒鉛(A2)の短径の長さが大きすぎると、間隙に存在する酸化珪素粒子の体積変化を十分吸収することができず、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)との接触が保たれず、導電パス切れを起こす可能性が発現する。鱗片状黒鉛(A2)の短径の長さの測定は、後述する実施例の方法を用いてアスペクト比の測定を行う際に短径を測定する方法と同様の方法で行うことができる。
鱗片状黒鉛(A2)は、前述の性状であれば、どのような製法で作製しても問題ない。例えば、鱗片状、塊状又は板状の天然黒鉛、或いは、例えば石油コークス、石炭ピッチコークス、石炭ニードルコークス、メソフェーズピッチ等を2500℃以上に加熱して製造した人造黒鉛を、必要により、不純物除去、粉砕、篩い分けや分級処理を行うことで得ることができる。
球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)の質量比(球形化黒鉛(A1):鱗片状黒鉛(A2))は、95:5〜5:95であることが好ましい。球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)の質量比が前記範囲であると、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物により、酸化珪素粒子(B)が存在可能となる好適な間隙を形成しつつ、球形化黒鉛(A1)の粒子間を跨いで、鱗片状黒鉛(A2)が球形化黒鉛(A1)を橋渡すように接触して電極とすることができる。球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)との質量比は、より好ましくは90:10〜10:90であり、更に好ましくは85:15〜15:85である。
酸化珪素粒子(B)は、二酸化珪素(SiO2)を原料とし、金属珪素(Si)及び/又は炭素を用いてSiO2を熱還元することにより得られる、SiOxのxの値が0<x<2で表される珪素酸化物からなる粒子の総称である。珪素(Si)は、黒鉛と比較して理論容量が大きく、更に非晶質珪素酸化物は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
(a−3)酸化珪素粒子(B)の50%粒子径(d50)Rs
酸化珪素粒子Bの50%粒子径(d50)Rsは、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜9μm、更に好ましくは0.5〜8μmである。50%粒子径(d50)が前記範囲内であると、電極とした場合に、炭素質粒子(A)によって形成された間隙に酸化珪素粒子(B)が存在し、充放電によるリチウムイオン等のアルカリイオンの吸蔵・放出に伴う酸化珪素粒子(B)の体積変化を炭素質粒子(A)によって形成された間隙が吸収して、体積変化による負極活物質の劣化を抑制し、結果としてサイクル特性を向上することができる。ここで50%粒子径(d50)Rsは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定により測定される体積基準のメジアン径をいう。
酸化珪素粒子(B)のBET法により比表面積は0.5〜60m2/gであることが好ましく、1〜40m2/gであることがより好ましい。酸化珪素粒子(B)のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電極とした場合に、電解液内のリチウムイオン等のアルカリイオンの移動性と、充放電時における炭素質粒子(A)及び酸化珪素粒子(B)への十分なリチウムイオン等のアルカリイオンの出入りとを確保することができ、高容量化を実現することができる。酸化珪素粒子のBET法による比表面積が0.5m2/gを下回ると、酸化珪素粒子(B)が比較的大きくなり、炭素質粒子(A)によって形成された間隙に酸化珪素粒子(B)が存在し難しくなる。一方、比表面積が60m2/gを上回ると、酸化珪素粒子(B)が小さくなりすぎて、充放電時にリチウムイオン等のアルカリイオンの出入りによる酸化珪素粒子(B)の膨張・収縮の体積変化を繰り返すことによる活物質の劣化の抑制が困難になる場合がある。BET法比表面積は後述する実施例の方法により測定する。
酸化珪素粒子(B1)は、本発明の特性を満たすものであれば、製法は問わないが、例えば特許第3952118号公報に記載されたような方法によって製造された酸化珪素粒子(B)を使用することができる。具体的には、二酸化珪素粉末と、金属珪素粉末を特定の割合で混合し、この混合物を反応器に充填した後、常圧あるいは特定の圧力に減圧し、1000℃以上に昇温し、保持してSiOxガスを発生させ、冷却析出させて、一般式SiOx(xは0.5≦x≦1.6)粒子を得ることができる。析出物は、力学的エネルギー処理を与えることで粒子とすることができる。
酸化物粒子(B2)は、前記二酸化珪素粒子(B1)の表面の少なくとも一部に非晶質炭素からなる炭素層を備えた複合型の酸化物粒子(B2)であり、複合型の酸化物粒子(B2)を製造する方法としては、二酸化珪素粒子(B1)に石油系や石炭系のタールやピッチ、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、フェノール樹脂、セルロース等の樹脂を必要により溶媒等を用いて混合した後、非酸化性雰囲気で500℃〜3000℃、好ましくは700℃〜2000℃、より好ましくは800〜1500℃で焼成することで酸化物粒子(B2)を製造することができる。
本発明において、球形化黒鉛(A1)の50%粒子径(d50)Rgと、酸化珪素粒子(B)の50%粒子径(d50)Rsとの比Rs/Rgは、0.001〜5であることが好ましい。より好ましくは0.01〜4、更に好ましくは0.05〜3、特に好ましくは0.1〜2である。比Rs/Rgが前記範囲内であると、電極とした場合に、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物によって、球形化黒鉛(A1)同士と、球形化黒鉛(A1)の間を橋渡すように接触した鱗片状黒鉛(A2)との間隙に、酸化珪素粒子(B)を存在させることができ、理論容量が炭素質粒子(A)(球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2))よりも大きく、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りのしやすい酸化珪素粒子(B)の存在によって、更なる高容量化を実現することができる。充放電によるリチウムイオン等のアルカリイオンの吸蔵・放出に伴う酸化珪素粒子(B)の体積変化は、炭素質粒子(A)により形成された間隙が吸収するため、酸化珪素粒子(B)の体積変化に伴う電極の劣化を抑制し、結果としてサイクル特性を向上させることができる。また、充放電によりリチウムイオン等のアルカリイオンが出入りした場合であっても、鱗片状黒鉛(A2)によって導電パス、リチウムイオン等のアルカリイオンの拡散パスを確保することができ、急速充放電特性と、高容量化を実現することができる。
本発明の非水系二次電池用負極材は、炭素質粒子(A)(球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2))100質量部に対して、酸化珪素粒子(B)1〜50質量部含むことが好ましい。非水系二次電池用負極材は、炭素質粒子(A)100質量部に対して、酸化珪素粒子(B)が、より好ましくは1.2〜40質量部、更に好ましくは1.5〜30質量部、特に好ましくは2〜20質量部である。非水系二次電池用負極材が、炭素質粒子(A)100質量部に対して、酸化珪素粒子(B)を前記範囲で含むものである場合には、電極とした場合に、炭素質粒子(A)によって形成された間隙に酸化珪素粒子(B)を存在させることができ、さらなる高容量化の実現と、サイクル特性を向上させることができる。
本発明の非水系二次電池用負極材は、炭素質粒子(A)(球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2))100質量部に対して、酸化珪素粒子(B)1〜50質量部含む混合物のタップ密度は、好ましくは0.6〜1.8g/cm3、より好ましくは0.7〜1.7g/cm3、更に好ましくは0.8〜1.8g/cm3である。タップ密度が前記範囲内であると、電極とした場合に、炭素質粒子(A)によって形成された間隙に電解液及び酸化珪素粒子(B)を存在させた状態となり、高容量化を実現することができる。
本発明の非水系二次電池用負極材は、炭素質粒子(A)と、酸化珪素粒子(B)とを含み、炭素質粒子(A)が、少なくとも球形化黒鉛(A1)と、鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物である。球形化黒鉛(A1)と、鱗片状黒鉛(A2)と、酸化珪素粒子(B)とを同時に混合してもよく、球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを混合した後、酸化珪素粒子(B)を混合してもよく、球形化黒鉛(A1)と酸化珪素粒子(B)とを混合した後、鱗片状黒鉛(A2)を混合してもよく、鱗片状黒鉛(A2)と酸化珪素粒子(B)とを混合した後、球形化黒鉛(A1)を添加して混合してもよい。
本発明に係る負極材を用いて負極を作製するには、負極材に結着樹脂を配合したものを水若しくは有機系溶剤でスラリーとし、必要によりこれに増粘材を加えて集電体に塗布し、乾燥すればよい。
本発明に係る非水系二次電池は、上記の負極を用いる以外は、常法に従って作製することができる。正極材料としては基本組成がLiCoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO2で表されるリチウムニッケル複合酸化物、LiMnO2やLiMn2O4で表されるリチウムマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物、並びにこれらの複合酸化物混合物、更にはTiS2、FeS2、Nb3S4、Mo3S4、CoS2、V2O5、CrO3、V3O3、FeO2、GeO2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2等を用いればよい。これらの正極材料に結着樹脂を配合したものを適当な溶媒でスラリー化して集電体に塗布・乾燥することにより正極を作製できる。なおスラリー中にはアセチレンブラックやケッチェンブラック等の導電材を含有させるのが好ましい。また所望により増粘材を含有させてもよい。増粘材及び結着樹脂としてはこの用途に周知のもの、例えば負極の作製に用いるものとして例示したものを用いればよい。正極材料100質量部に対する配合比率は、導電剤は0.5〜20質量部、特に1〜15質量部が好ましく、増粘材は好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部であり、結着樹脂は水でスラリー化するときは好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部であり、N−メチルピロリドン等の結着樹脂を溶解する有機溶媒でスラリー化するときには好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部である。正極集電体としては、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル等やこれらの合金を用いればよい。なかでもアルミニウム、チタン、タンタルやその合金を用いるのが好ましく、アルミニウムないしはその合金を用いるのが最も好ましい。
本実施例においては、負極を集電体の膜面に対して垂直に切断、研磨し、その断面写真を撮影し、撮影された写真の画像解析により、炭素質粒子(A)断面の長径、短径(粒を100点測定した。
こうして得られた水銀圧入曲線から、Washburnの方程式(D=−(1/P)4γcosψ)を用いて細孔分布を算出した。尚、Dは細孔直径、Pはかかる圧力、γは水銀の表面張力((485dynes/cmを使用)、ψは接触角(140゜を使用))を示す。
〔球形化黒鉛(A1)の作製〕
原料黒鉛として、平均粒子径100μmの鱗片状黒鉛粒子を黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後更に分級処理により微粉を除去して、球形化黒鉛を得た。得られた球形化黒鉛粒子は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.35ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が1.00g/cm3、BET法比表面積7.0m2/g、平均粒子径Rgが16μm、アスペクト比が1.6、タップ密度が1.15g/cm3、BET法比表面積3.5m2/g、真密度2.2g/cm3であった。
天然に産出する黒鉛を、不純物除去、粉砕、分級して得られた鱗片状黒鉛A2を用いた。この鱗片状黒鉛(A2)は、アスペクト比が3.6、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.35nm、Lcが1000nm以上、50%粒子径(d50)Rgが4μm、タップ密度が0.3g/ccであった。鱗片状黒鉛(A2)の短径の長さは、平均1.5μmであった。
酸化珪素粒子(B)は、市販のSiO粒子(SiOxのx=1)粒子(大阪チタニウムテクノロジーズ)を用いた。SiO粒子は、50%粒子径(d50)Rsが6μmであり、BET比表面積が6m2/gであった。
球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)の質量比が78:22であり、炭素質粒子(A)(球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)との合計)100質量部に対して、酸化珪素粒子(B1)12質量部を混合した。具体的には、球形化黒鉛(A1)(50%粒子径(d50)Rg:16μm)0.7g、鱗片状黒鉛(A2)(50%粒子径(d50):4μm)0.2g、酸化珪素粒子(B)(50%粒子径(d50)Rs:6μm)0.1gを乾式混合し、混合物とした。比Rs/Rgは0.375であった。また、前記混合物のタップ密度は、1.0g/cm3であった。
炭素質粒子(A)(球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)の合計)と酸化珪素粒子(B)の前記混合物100質量部と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量%水溶液300質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)48質量%水性ディスパージョン6.25質量部とを、ハイブリダイズミキサーにて、混練し、スラリーとした。このスラリーを厚さ18μmの圧延銅箔上にブレード法で、目付け7〜8mg/cm2となるように塗布し、乾燥させた。その後、負極活物質層の密度1.4〜1.5g/cm3となるようにロードセル付きの250mφロールプレスにてロールプレスし、直径12.5mmの円形状に打ち抜き、110℃で2時間、真空乾燥し、評価用の負極とした。未プレスの状態で、水銀ポロシメーターにより、電極の細孔容積を測定した結果、0.21ml/gであった。前記負極と、対極としてLi箔とを電解液を含浸させたセパレーターを介して重ねて、充放電試験用の電池を作製した。電解液としてはエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:3:4(質量比)混合液に、LiPF6を1モル/リットルとなるように溶解させたものを用いた。
先ず0.12mA/cm2の電流密度で前記正極及び負極に対して5mVまで充電し、更に5mVの一定電圧で電流値が0.012mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.12mA/cm2の電流密度で前記正極及び負極に対して1.5Vまで放電を行った。このサイクルを2回繰り返し、初期調整とした。3サイクル以降は、0.49mA/cm2の電流密度で正極及び負極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で電流値が0.049mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.49mA/cm2の電流密度で正極及び負極に対して1.5Vまで放電を行った。放電容量は、負極重量から負極と同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことで負極活物質重量を求め、この負極活物質重量で前記放電容量を除して、重量当りの放電容量を求めた。
前記電池で、3サイクル以降の充放電サイクルを50回繰り返し、下記式(2)により容量維持率を求め、下記式(3)により50サイクル時の充放電効率を評価した。負極活物質重量は、負極重量から負極と同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことによって求めた。
容量維持率(%)={53サイクル後の放電容量(mAh/g)/3サイクル目の放電容量(mAh/g)}×100 (2)
50サイクル時の充放電効率(%)={53回サイクル時の放電容量(mAh/g)/53サイクル時の充電容量(mAh/g)}×100 (3)
レート特性は、前記放電容量評価によって求めた2サイクル目の放電容量と3サイクル目の放電容量から、下記式(1)に従って求めた。3サイクル目は、0.49mA/cm2の電流密度で正極及び負極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で電流値が0.049mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.49mA/cm2の電流密度で正極及び負極に対して1.5Vまで放電を行った。放電容量は、負極重量から負極と同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことで負極活物質重量を求め、この負極活物質重量で前記放電容量を除して、重量当りの放電容量を求めた。
レート特性(%)={3サイクル目の放電容量(mAh/g)/2サイクル目の放電容量(mAh/g)}×100 (1)
実施例1と同様の球形化黒鉛(A1)100質量部と、酸化珪素粒子(B)12質量部とを混合し、鱗片状黒鉛(A2)を用いていないこと以外は実施例1と同様にして、評価用電池を作製した。
実施例1と同様の鱗片状黒鉛(A2)100質量部と、酸化珪素粒子(B)12質量部とを混合し、非晶質炭素被覆球形化黒鉛(A1)を用いていないこと以外は実施例1と同様にして、評価用電池を作製した。
Claims (9)
- 炭素質粒子(A)と、酸化珪素粒子(B)とを含み、炭素質粒子(A)が、少なくとも球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)とを含む混合物であり、球形化黒鉛(A1)の50%粒子径(d50)Rgと、酸化珪素粒子(B)の50%粒子径(d50)Rsとの比Rs/Rgが、0.001〜5であって、球形化黒鉛(A1)、鱗片状黒鉛(A2)及び酸化珪素粒子(B)のそれぞれが独立した状態の混合物であることを特徴とする非水系二次電池用負極材。
- 炭素質粒子(A)100質量部に対して、酸化珪素粒子(B)1〜50質量部を含む、請求項1記載の非水系二次電池用負極材。
- 球形化黒鉛(A1)と鱗片状黒鉛(A2)との質量比が95:5〜5:95である、請求項1又は2記載の非水系二次電池用負極材。
- 酸化珪素粒子(B)が一般式SiOx(xは0.5≦x≦1.6である)で示される、請求項1〜3のいずれか1項記載の非水系二次電池用負極材。
- 球形化黒鉛(A1)の50%粒子径(d50)Rgが2〜30μmであり、酸化珪素粒子(B)の50%粒子径(d50)Rsが0.01〜10μmである、請求項1〜4のいずれか1項記載の非水系二次電池用負極材。
- 球形化黒鉛(A1)のアスペクト比が2.09以下であり、鱗片状黒鉛(A2)のアスペクト比が2.1〜10である、請求項1〜5のいずれか1項記載の非水系二次電池用負極材。
- 鱗片状黒鉛質粒子(A2)の短径の長さが0.9〜15μmである、請求項1〜6のいずれか1項記載の非水系二次電池用負極材。
- 集電体と、該集電体上に形成された活物質層とを備える非水系二次電池用負極であって、前記活物質層が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用負極材を含有することを特徴とする非水系二次電池用負極。
- イオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水系二次電池であって、前記負極が、請求項8に記載の非水系二次電池用負極であることを特徴とする、非水系二次電池。
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