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JP5965671B2 - カールアンテナ - Google Patents

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JP5965671B2 JP2012044997A JP2012044997A JP5965671B2 JP 5965671 B2 JP5965671 B2 JP 5965671B2 JP 2012044997 A JP2012044997 A JP 2012044997A JP 2012044997 A JP2012044997 A JP 2012044997A JP 5965671 B2 JP5965671 B2 JP 5965671B2
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Description

本発明は、小型化を実現したカールアンテナに関する。
既存のカールアンテナ素子としては、非特許文献1及び2に示すような線状材を周回させたカールアンテナ素子が開発されている。また、非特許文献3に示すように、カールスロットアンテナをガラス基板上に形成したカールアンテナが開発されている。
IEEE Proceeding online No. 19971329 IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION, VOL. 41, NO.11, NOVENBER 1993 2011年電子情報通信学会総合大会 通信論文集1
非特許文献1〜3に開示されたアンテナは、新規なアンテナを開発したものであり、その基本構成の特性を向上させるためのものであるが、最近、これらのアンテナをRF-ID(Radio Frequency Identification)に適用する試みがなされている。
これらのアンテナをRF-IDに適用するには、アンテナから送信された電磁波を受信するアンテナ付の電子タグを商品に貼り付けたり糸で吊るしたりし、上述したアンテナから電磁波を前記電子タグに向けて放射し、その電磁波を受けて前記電子タグから応答用の電磁波放射がなされ、これを受信することでその商品の情報を読み取ったり書き込んだりするシステムへの試みがなされている。
上述したRF−IDシステムにおいては、管理者が所持するハンディターミナルに上述したアンテナを組み込んで質問器とする必要がある。前記ハンディターミナルは管理者が所持するものであるから、そのハンディターミナルのサイズを片手で把持できるサイズに小型化することが必要である。
従って、小型化サイズのハンディターミナルに上述したアンテナが組み込まれるものであるから、ハンディターミナルのサイズに合わせてアンテナのサイズも小型化する必要があり、小型化を実現したアンテナが要求されている。
本発明の目的は、小型化サイズのハンディターミナルなどに電子部品の搭載に影響を与えないサイズに小型化し、さらにはグランド板の小型化、カールアンテナ素子とグランド板との組合せによる小型化を実現したカールアンテナを提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係るカールアンテナは、信号を送受信するカールアンテナにおいて、x−y面内に周回して形成された周回部分(1d)と、前記周回部分(1d)の巻き始端(1a)と巻き終端(1b)との間に形成されたオーバーラップ領域(1e)とを有し、
前記オーバーラップ領域(1e)を折り曲げ部(5 ,5 ・・・5 )で形成し、前記巻き始端(1a)と前記巻き終端(1b)との折り曲げ部(5 ,5 ・・・5 )を凹凸状に互いに近接して対峙させ、且つ前記オーバーラップの領域(1e)の巻き始端(1a)と巻き終端(1b)とを電気的に絶縁して近接した状態で確保したことを特徴とする。
以上のように本発明によれば、カールアンテナ素子の少なくとも巻き始端と巻き終端のオーバーラップ領域を折り曲げ部で形成しているため、前記折り曲げ部により前記オーバーラップ領域に必要な長さを確保して、カールアンテナの主要部をなす周回部分の周囲長を前記折り曲げ部によって短縮することができる。
さらに、前記巻き始端と巻き終端の折り曲げ部を互いに近接して対峙させているため、前記オーバーラップ領域の巻き始端と巻き終端との間隔を狭く設定して軸比を改善することができ、カールアンテナを小型化しても所望の軸比を得ることができ、カールアンテナ素子の特性を劣化させることなくアンテナを小型化することができる。
(a)は、本発明の実施形態に係るカールアンテナに用いるカールアンテナ素子を示す正面図、(b)はオーバーラップ領域に折り曲げ部を設けた場合の軸比を示す特性図である。 (a)は、本発明の実施形態に係るカールアンテナに用いるカールアンテナ素子を示す斜視図、(b)は同正面図、(c)は、(b)のA―B線に沿う断面図である。 (a)は、図2に示すカールアンテナ素子に本発明の実施形態に係るグランド板を組み合わせたカールアンテナを示す斜視図、(b)は、図3(a)に示すカールアンテナ素子の放射パターンを示す特性図である。 (a)は、図2に示すカールアンテナ素子と、既存のプリント基板に形成されるアース板とを組み合わせたカールアンテナを上方から鳥瞰して図示した正面図、(b)は、図4(a)に示すカールアンテナ素子の放射パターンを示す特性図である。 (a)は、図3(a)に示すグランド板を改善して図2に示すカールアンテナ素子と組み合わせたカールアンテナを上方から鳥瞰して図示した正面図、(b)は、同斜視図である。 (a)は、図5(a)に示すカールアンテナの軸比を示す特性図、(b)は、図5(a)に示すカールアンテナの放射パターンを示す特性図である。 (a)は、本発明の実施形態に係るカールアンテナにおいて軸比を改善したカールアンテナを示す正面図、(b)は、図7(a)に示すカールアンテナの軸比を示す特性図である。 (a)は、軸比を改善した変更例を示す斜視図、(b)は、図8(a)に示す変更例による軸比を測定した特性図である。 (a)は、軸比を改善した変更例を示す斜視図、(b)は、図9(a)に示す変更例による軸比を測定した特性図である。 本発明の実施形態に係るカールアンテナ素子及びグランド板とを組み合わせてカールアンテナの小型化を実現した例を示すものであり、図10(a)は折り曲げる前のグランド板を示す斜視図、図10(b)は、図10(a)に示すグランド板を立体的に折り曲げた状態を示す斜視図、図10(c)はカールアンテナ素子及びグランド板とを組み合わせたカールアンテナを示す斜視図である。 図10に示すカールアンテナの変更例を示す誘電体層の底面側から見た斜視図である。 図10に示すカールアンテナの変形例を示す斜視図である。 図2に示すカールアンテナ素子のオーバーラップの領域をショートさせた変更例を示す正面図である。 (a)は、本発明の実施形態に係るカールアンテナの応用例を示す正面図、(b)は、図14(a)のカールアンテナを示す斜視図である。 (a)は、本発明の実施形態に係るカールアンテナの他の応用例を示す正面図、(b)は、図14(a)及び図15(b)に示す応用例における軸比を示す特性図である。 (a)は、図5(a)に示すカールアンテナの変更例を示す斜視図、(b)は、図16(a)の主要部を拡大して示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
上述したRF−IDシステムにおいては、管理者が所持するハンディターミナルにアンテナを組み込むことになり、前記ハンディターミナルは管理者が所持するものであるから、そのハンディターミナルのサイズを片手で把持できるサイズに小型化することが必要である。
本発明の実施形態に係るカールアンテナにおいて、主要部をなす構成要素はカールアンテナ素子1であり、そのカールアンテナ素子1がカールアンテナにおいて大部分を占めている。確かに、カールアンテナ素子1は前方への指向性を考慮すると、グランド板2と組み合わせることとなるが、グランド板2については、それに相当する部材を流用することが可能である。
上述の理由について説明する。上述したハンディターミナルには、カールアンテナ以外にも電子デバイスが組み込まれるのである。その電子デバイスとしては、商品に取り付けた電子タグとの通信を処理する回路、ハンディターミナルに装備された液晶ディスプレイの表示を制御する回路、通信により取得した商品に関するデータを処理・記憶する回路等が組み込まれる。これらの回路は、例えばプリント基板に実装されるものであり、そのプリント基板には、これらの回路に共通な接地電極をなすアース板が形成されるものであり、そのアース板のプリント基板における専有面積はかなり大きいものである。したがって、プリント基板のアース板をカールアンテナのグランド板として流用することが可能である。
このようなことを考慮すると、カールアンテナの主要部をなすカールアンテナ素子の寸法を小型化することが肝要であることが分かる。アンテナ素子については、小型化すれば、軸比が劣化することが分かっている。したがって、単純にアンテナ素子を小型化するだけでは、アンテナの特性を劣化させてしまうことになる。
アンテナの劣化を考慮すると、アンテナを小型化するとともに副次的に軸比を改善する必要がある。
そこで、本発明の実施形態では、信号を送受信するカールアンテナの主要部をなすカールアンテナ素子の小型化を実現し、その小型化した構成に軸比改善のための新たな構成を加えることなく軸比をも改善する構成を構築したものである。
図1及び図2に基づいて、カールアンテナ素子を小型化する構成することを具体的に説明する。
図1(a)及び図2に示すカールアンテナ素子1は、給電点4から立ち上がる立ち上がり部1cと、前記立ち上がり部1cの周りに周回する周回部分1dと、前記周回部分1dの巻き始端1aと巻き終端1bとの間に形成されるオーバーラップ領域1eと、前記立ち上がり部1cと前記周回部分1dの巻き始端1aとを結合する結合辺1fとを有している。
図2に示すように、カールアンテナ素子1の立ち上がり部1cは、給電点4からz方向(図2の上方方向)に立ち上がって形成され、立ち上がり部1cからの給電を受ける周回部分1dは、x−y面(図2の水平面)内に前記立ち上がり部1cの周りに周回して形成され、前記立ち上がり部1cと周回部分1dとの間に結合辺1fが形成されている。
前記周回部分1dは、前記立ち上がり部1cの周りに周回した周囲長が使用波長に対応させて所期値の長さ、すなわち約1.1λ(λ:使用波長)を確保する必要がある。
前記カールアンテナ素子1からの放射が円偏波である場合には、前記オーバーラップの領域1eは、巻き始端1aと巻き終端1bとを電気的に絶縁して近接した状態で確保される。
図1(a)において、前記オーバーラップ領域1eの間隔を長短調整した結果、オーバーラップ領域1eがカールアンテナの小型化・軸比の改善に寄与することを突き止めた。
そこで、図1において、前記カールアンテナ素子1の巻き始端1aと巻き終端1bとの間に形成されるオーバーラップ領域1eを折り曲げ部5,5・・・5で形成し、前記巻き始端1aと前記巻き終端1bとの折り曲げ部5,5・・・5を凹凸状に互いに近接して対峙させた。
以上のように、前記カールアンテナ素子1の巻き始端1aと巻き終端1bのオーバーラップ領域1eを折り曲げ部5,5・・・5で形成しているため、前記折り曲げ部5,5・・・5により前記オーバーラップ領域1eに必要な長さを確保して、前記オーバーラップ領域1eの周回部分1dの周方向での長さを短縮することができ、カールアンテナ素子1の主要部をなす周回部分1dの周囲長を前記折り曲げ部5,5・・・5によって短縮することができる。これにより、カールアンテナ素子1を小型化することができた。
さらに、前記巻き始端1aと巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5を互いに近接して対峙させているため、前記オーバーラップ領域1eの巻き始端1aと巻き終端1bとの間隔を狭く設定して軸比を改善することができ、カールアンテナ素子1を小型化しても所望の軸比を得ることができ、カールアンテナ素子1の特性を劣化させることなくカールアンテナを小型化することができた。
前記カールアンテナ素子1をプリント基板のアース板と組み合わせて軸比を測定したところ、軸比4であった(図1(b))。非特許文献1に示されたカールアンテナの軸比が4であるから、上述したカールアンテナ素子1の巻き始端1aと巻き終端1bとの間に形成されるオーバーラップ領域1eを折り曲げ部5,5・・・5で形成し、前記巻き始端1aと前記巻き終端1bとの折り曲げ部5,5・・・5を凹凸状に互いに近接して対峙させる構成は、カールアンテナ素子の主要部をなすカールアンテナ素子1の小型化に寄与することができ、しかも、オーバーラップ領域1eに折り曲げ部5,5・・・5を設けた構成に何ら新たな構成を追加することなく軸比の改善に有効であることが分かった。
前記巻き始端1aと巻き終端1bに折り曲げ部5,5・・・5を設けるにあたっては、その全長に複数設ける、或いは一部に複数設けてもよく、さらには、前記巻き始端1aと巻き終端1bの全長に1個の折り曲げ部5を設けても良いものである。
次に、図1(a)及び図2からも明らかなように、前記カールアンテナ素子1の主要部をなす構成要素は、周回部分1dであり、カールアンテナ素子1のサイズに大きな影響を与えていることが分かる。
そこで、前記カールアンテナ素子1の周回部分1dに折り曲げ部3,3,・・・3を形成した。
以上のように、前記カールアンテナ素子1の周回部分1dを折り曲げ部3,3・・・3で形成しているため、前記折り曲げ部3,3・・・3により前記周回部分1dに必要な長さを確保して、前記周回部分1dの周方向での長さを短縮することができ、カールアンテナ素子の主要部をなす周回部分1dの周囲長を前記折り曲げ部3,3・・・3によって短縮することができる。これにより、カールアンテナ素子1を小型化することができた。
さらに、前記オーバーラップ領域1eを折り曲げ部5,5・・・5で形成することを前提として、前記周回部分1dの折り曲げ部3,3,・・・3と前記オーバーラップ領域1eの折り曲げ部5,5・・・5との関係を解析した。
その結果、前記周回部分1dの折り曲げ部3,3,・・・3と前記オーバーラップ領域1eの折り曲げ部5,5・・・5との間に相互関係があり、その相互関係により軸比を4以下に改善できることがわかった。
前記周回部分1dに折り曲げ部3,3・・・3を設けるにあたっては、その全長に複数設ける、或いは一部に複数設けてもよく、さらには、前記周回部分1dの全長に1個の折り曲げ部3を設けても良いものである。
前記カールアンテナ素子1には図1(a)及び図2に示すように、前記カールアンテナ素子1の前記立ち上がり部1cと前記周回部分1dとを結合する結合辺1fを有している。前記結合辺1fの位置は、前記周回部分1dよりも内側に位置して前記立ち上がり部1cと前記周回部分1dとの間に設けられる。
前記結合辺1fは、前記立ち上がり部1cからの給電を周回部分1dに伝送するものであって、周回部分1dに流れる電流の位相に関係するものであるから、前記結合辺1fの周回部分1dに対する取付角度が理論上90度に設定されている。したがって、前記結合辺1fの前記周回部分1dに対する位置関係を確保する必要がある。
そこで、図1(a)に示すように、前記結合辺1fに複数の折り曲げ部6,6・・・6を形成して前記結合辺1fの長さ方向の寸法を短縮している。
従って、前記結合辺1fの長さ方向の寸法を短縮しているため、カールアンテナ素子1の周回部分1dの周囲長が短縮されて周回部分1dと立ち上がり部1cとの距離が短くなり、両者が接近しても、結合辺1fが周回部分1dと立ち上がり部1cとの間に、前記結合辺1fの前記周回部分1dに対する位置関係を崩すことなく、組み付けることができ、前記周回部分1dによる偏波に悪影響を及ぼすことなくカールアンテナを小型化することができるものである。
さらに、前記オーバーラップ領域1eを折り曲げ部5,5・・・5で形成することを前提として、前記結合辺1fの折り曲げ部6,6,・・・6と前記オーバーラップ領域1eの折り曲げ部5,5・・・5との関係を解析した。
その結果、前記結合辺1fの折り曲げ部6,6,・・・6と前記オーバーラップ領域1eの折り曲げ部5,5・・・5との間に相互関係があり、その相互関係により軸比を4以下に改善できることがわかった。
前記結合辺1fの折り曲げ部6,6,・・・6を設けるにあたっては、その全長に複数設ける、或いは一部に複数設けてもよく、さらには、前記周回部分1dの全長に1個の折り曲げ部3を設けても良いものである。
次に、前記オーバーラップ領域1eを折り曲げ部5,5・・・5で形成することを前提として、前記結合辺1fの折り曲げ部6,6,・・・6と前記前記周回部分1dの折り曲げ部3,3,・・・3と前記オーバーラップ領域1eの折り曲げ部5,5・・・5との関係を解析した。
その結果、前記結合辺1fの折り曲げ部6,6,・・・6と前記前記周回部分1dの折り曲げ部3,3,・・・3と前記オーバーラップ領域1eの折り曲げ部5,5・・・5とが軸比の改善に相互関係することが分かった。
この構成によれば、軸比を4以下であって、2.5〜3に改善することが可能であることが分かった。
さらには、前記オーバーラップ領域1eに折り曲げ部5,5・・・5を、前記結合辺1fに折り曲げ部6,6,・・・6を、前記周回部分1dに折り曲げ部3,3・・・3をそれぞれ形成してあるため、前記オーバーラップ領域1eの周回部分1dの周方向での長さを短縮でき、前記周回部分1dの周方向での長さを短縮でき、前記結合辺1fの長さ方向での長さを短縮することができ、カールアンテナ素子1のサイズを大幅に小型化することができる。
さらに、カールアンテナ素子1の小型化を図るために、図2に示すように、前記オーバーラップ領域1eの全長に折り曲げ部5,5・・・5を設け、前記結合辺1fの全長に折り曲げ部6,6,・・・6を設け、前記周回部分1dに折り曲げ部3,3・・・3を設けた。
以上のように、前記オーバーラップ領域1eの全長に折り曲げ部5,5・・・5を、前記結合辺1fの全長に折り曲げ部6,6,・・・6を、前記周回部分1dの全周に折り曲げ部3,3・・・3をそれぞれ形成してあるため、前記オーバーラップ領域1eの周回部分1dの周方向での長さを短縮でき、前記周回部分1dの周方向での長さを短縮でき、前記結合辺1fの長さ方向での長さを短縮することができ、カールアンテナ素子1のサイズを大幅に小型化することができる。
因みに非特許文献1,2に記載されたカールアンテナの周囲長が約1.1λ(λ:使用波長)であったが、以上の構成では、カールアンテナにおけるカールアンテナ素子の周囲長を約0.63λ(λ:使用波長)に短縮できた。
さらに、前記オーバーラップ領域1eの全長に折り曲げ部5,5・・・5を、前記結合辺1fの全長に折り曲げ部6,6,・・・6を、前記周回部分1dの全周に折り曲げ部3,3・・・3をそれぞれ形成し、これらの折り曲げ部の相互関係を調整することにより、図6(a)に示すように、軸比を1.5まで改善することができた。
以上の解析結果からして、カールアンテナ素子の少なくとも巻き始端と巻き終端のオーバーラップ領域を折り曲げ部で形成し、巻き始端と巻き終端の折り曲げ部を互いに近接して対峙させた構成は、カールアンテナ素子を小型化することができ、その構成に新たな構成を付加しないため、副次的に軸比の改善に貢献できることが分かる。
前記オーバーラップ領域1eの折り曲げ部に対して、前記結合辺1fの折り曲げ部、前記周回部分1dの折り曲げ部の相互関係を調整する場合には、これらの折り曲げ部の長さや折り曲げ量,形状,個数等を軸比の改善要素とすると、周回部分1dの折り曲げ部の軸比改善要素>結合辺1fの折り曲げ部の軸比改善要素>オーバーラップ領域1eの折り曲げ部の軸比改善要素、の関係に設定することが望ましい。
図1(a)及び図2においては、前記カールアンテナ素子1の周回部分1dは、立ち上がり部1cの周りに四角形状に周回させて形成し、前記折り曲げ部3,3,・・・3,前記折り曲げ部5,5・・・5及び前記折り曲げ部6,6・・・6は、左右に蛇行させることにより鈎型形状による凹凸形状に形成している。図1(a)及び図2に示す実施形態は一例であって、前記周回部分1dを周回させる形状は四角形状に限られるものではなく、多角形状に形成してもよい。また、記折り曲げ部3,3,・・・3,前記折り曲げ部5,5・・・5及び前記折り曲げ部6,6・・・6の凹凸形状は、鈎型形状に限られるものではなく、三角形状による凹凸形状に形成してもよいものである。また、記折り曲げ部3,3,・・・3,前記折り曲げ部5,5・・・5及び前記折り曲げ部6,6・・・6は、図2に示すように左右に蛇行させて折り曲げる長さを不均等に折り曲げて形成しても良く、或いは均等に折り曲げてもよく、さらには幅寸法を異ならせてもよい。
また、オーバーラップ領域1eの折り曲げ部、周回部分1dの折り曲げ部、結合辺1fの折り曲げ部を水平面上で左右に蛇行させて形成したが、これに限られるものではなく、図2の+z方向と−z方向との上下方向に蛇行させて形成してもよいものである。
また、巻き始端と巻き終端との折り曲げ部を凹凸状に互いに近接して対峙させたが、巻き始端と巻き終端の折り曲げ部を上下方向に同一形状に形成して互いに近接して対峙させてもよいものである。
また、図1(a)及び図2では、カールアンテナ素子のオーバーラップ領域,周回部分及び結合辺を基板上にスクリーン印刷によるパターンによって形成したが、カールアンテナ素子のオーバーラップ領域,周回部分及び結合辺を打ち抜き加工によって形成してもよいものである。これらの加工方法においては、立ち上がり部の上端を結合辺の一端に接合してカールアンテナ素子として組み立てる。
なお、本発明の実施形態に係るカールアンテナ素子1は、電磁波を放射する送信用と、外来の電磁波を受信する受信用とに用いられるものであり、また、前記給電点4は、送信の際に図示しない電子デバイスからの送信用信号をカールアンテナ素子1の立ち上がり部1cに給電するとともに、カールアンテナ素子1で受信した立ち上がり部1cからの受信信号を信号処理用の電子デバイス(図示略)に伝送する機能を実行する。
上述した記載内容では、プリント基板に形成されるアース板をカールアンテナのグランド板2として流用することが可能であることを記述した。これは、図2(c)に基づいて説明すると、グランド板2としてのアース板7をカールアンテナ素子1の後方に配置して指向性を向上させている。
しかし、組込にあたっては、カールアンテナ素子1の小型化ばかりではなく、グランド板2の小型化の要求が想定される。
上述した要求に応じられるグランド板2を小型化する構成を図3及び図4に基づいて説明する。図4(a)に示すように、図2に示すカールアンテナ素子1と、既設のプリント基板に形成された例えば一枚もののアース板7とを組み合わせて、そのアース板7の一辺を0.3λに設定した場合(周囲長で表すと、1.2λ)、図4(b)に示すように、カールアンテナ素子1の前後方向(図2の+z方向及び−z方向に)に放射されて所望の指向性を得ることができなかった。
そこで、本発明の実施形態では図3(a)に示すように、グランド板2に複数の開口2aを設けて、カールアンテナ素子1の後方(−z方向)にグランド板2を配置している。
図3(a)に示すカールアンテナ素子1とグランド板2とを組み合わせた場合、図3(b)に示す放射パターンから明らかなように、グランド板2が有効に機能することにより、指向性を改善できることが分かった。
図3(a)に示すように、グランド板2に複数の開口2aを設けた場合、グランド板2は、図3(b)に示すように所望の指向性を得ることができるばかりでなく、グランド板2の面積を図4(a)に示すアース板7の面積と同一面積で図3(b)に示す放射パターンを得ることができることが分かった。図3(a)のグランド板2の一辺は0.3λ(周囲長で表すと、1.2λ)となっている。
因みに、一枚板の開口が無い、板金やプリント基板に形成されたアース板の場合、一般的には、その一辺を0.4〜0.5λ以上(周囲長で表すと、1.6〜2.5λ)に設定しなければ、カールアンテナ素子の所望の指向性を得ることができなかった。
以上のように、図3(a)に示すように複数の開口2aを設けたグランド板2は、カールアンテナ素子1とグランド板2とを組み合わせることにより、カールアンテナ素子1の所望の指向性を得ることができるばかりでなく、グランド板2を小型化でき、結果としてカールアンテナの小型化を実現できるものである。
さらに、前記グランド板2をさらに小型化する改善を図5及び図6に基づいて説明する。図5に示すように、前記グランド板2は、閉塞したループ辺2bと、給電点7を通って前記ループ辺2bに結合した結合辺2cとを有している。さらに、前記結合辺2cに折り曲げ部8,8・・・8を設けている。
図5(b)に示すように、グランド板2とカールアンテナ素子1とを組み合わせ、前記グランド板2に同軸ケーブル9の外導体9aを、前記カールアンテナ素子1の立ち上がり部1cに同軸ケーブル9の内導体9bを接続し、前記グランド板2と前記外導体9aとの接続箇所を前記給電点7、前記立ち上がり部1cと前記内導体9bとの接続箇所を給電点4として給電を行って特性試験を行った。
特性試験を行うに当たって、寸法を次のように設定した。カールアンテナ素子1の周囲長を0.63λ(λ:使用波長)、結合辺1fの長さを0.087λ、立ち上がり部1cの長さを0.072λ、グランド板2のループ辺2bの周囲長を1.1λ、結合辺2cの長さを0.23λにそれぞれ設定し、受信周波数を920MHzに設定した。図5(a)に示すグランド板2のループ辺2bの一辺は0.27λ(周囲長で表すと、1.08λ)となっている。
図6(a)から分かるように、周波数920MHz付近で共振し、その軸比は約1.5であった。その放射パターンを図6(b)に示す。
図6の結果から明らかなように、図5に示すグランド板2は実用に適したものであることが分かる。
さらに、図5に示すグランド板2の周囲長は1.08λであるから、図4(a)に示すアース板7の周囲長1.2λと比較すると、小型化できたことが分かる。
さらに、図5に示すグランド板2をさらに小型化する改善を図7に基づいて説明する。図7(a)に示すグランド板2では、結合辺2cに設ける折り曲げ部8,8・・・8の個数を増加させて、結合辺2cの長さをさらに拡張している。
グランド板2のループ辺2bの周囲長を0.75λに設定した。図7(b)から分かるように、周波数920MHz付近で共振し、その軸比を約1まで改善することができた。
図7(b)の結果から明らかなように、図7(a)に示すグランド板2は実用に適したものであることが分かる。
さらに、図7(a)に示すグランド板2の周囲長が0.75λであるから、図4(a)に示すアース板7の周囲長1.2λと比較すると、さらに、小型化できたことが分かる。
以上の説明において、図1,図2,図3及び図7に示すカールアンテナ素子1は、図5(b)に示すように、その立ち上がり部1cが同軸ケーブル9の内導体9bに接続され、グランド板2が同軸ケーブル9の外導体9aに接続されて給電が行われるものである。
また、図1,図2,図3及び図7におけるカールアンテナ素子1において、同軸ケーブル9の内導体9bを結合辺1fまで延長させて同軸ケーブル9の内導体9bを結合辺1fに接続させることにより、同軸ケーブル9の内導体9bを立ち上がり部1cに流用するようにしてもよいものである。
次に、カールアンテナ素子1におけるさらなる軸比の改善を図8に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、カールアンテナ素子1の周回部分1dにおける巻き始端1aと巻き終端1bとには、それぞれ折り曲げ部5,5・・・5がそれぞれ形成され、それぞれの折り曲げ部5,5・・・5を電気的に絶縁して接近させてオーバーラップさせることにより、周回部分1dにおける巻き始端1aと巻き終端1bとにオーバーラップ領域1eを確保している。
さらに、図8(a)に示すように、周回部分1dの巻き始端1aの折り曲げ部5,5・・・5と、巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5との幅寸法を異ならせている。
図8(a)に示す例では、巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5の一部5aの幅寸法を、巻き始端1aの折り曲げ部5,5・・・5の幅寸法よりも狭く設定している。さらに、巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5の先端5bを短くし、オーバーラップ量を短くしている。
図8(a)に示す構成による軸比を測定した結果を図8(b)に示す。
図8(b)において、Aは、巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5の幅寸法と、巻き始端1aの折り曲げ部5,5・・・5の幅寸法とを同一幅寸法に設定した場合の軸比である。Bは、図8(a)に示すカールアンテナ素子1、すなわち巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5の一部5aの幅寸法を、巻き始端1aの折り曲げ部5,5・・・5の幅寸法よりも狭く設定した場合の軸比である。
図8(b)から明らかなように、巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5の幅寸法と、巻き始端1aの折り曲げ部5,5・・・5の幅寸法とを同一幅寸法に設定した場合、その軸比が3であったが、図8(a)に示すように巻き終端1bの折り曲げ部5,5・・・5の一部5aの幅寸法を狭く設定すると、その軸比を1.5まで改善することができた。
さらに、カールアンテナ素子1におけるさらなる軸比を改善する場合を図9に基づいて説明する。
図9(a)に示す例では、結合辺1fに設けた複数の折り曲げ部6,6・・・6の長さ方向に対する折り曲げ量Lを、図2に示すカールアンテナ素子1の結合辺1fよりも長く(拡張)設定している。
結合辺1fの折り曲げ部6,6・・・6の折り曲げ量Lを0.013λ(使用波長)に延長(拡張)して、軸比を測定した。その結果を図9(b)に示す。
図9(b)から明らかなように、結合辺1fの折り曲げ部6,6・・・6の折り曲げ量Lを0.017λまで延長させることにより、その軸比を3まで改善することができた。図9(b)に示す構成では、結合辺1fの折り曲げ部6,6・・・6の折り曲げ量Lをさらに延長させることにより、その軸比を0.5まで改善することを確認している。
なお、図8(a)に示す折り曲げ部の幅寸法を変更することなく、図9(a)に示す結合辺1fの折り曲げ部6,6・・・6の折り曲げ量Lを延長させるだけでも、軸比を改善できることが分かった。
図8及び図9に示す例からして、折り曲げ部の幅寸法,折り曲げ部の折り曲げ量を調整することにより、軸比を改善できることが分かる。
次に、上述したカールアンテナ素子1及びグランド板2とを組み合わせてカールアンテナの小型化を実現した例を図10に基づいて説明する。図10(a)は、グランド板2を示す斜視図、図10(b)は、図10(a)に示すグランド板2を立体的に折り曲げ加工した斜視図、図10(c)は、カールアンテナ素子1とグランド板2とをカールアンテナとして組み立てた状態を示す斜視図である。
図10に示す実施形態は、カールアンテナ素子1を境界として誘電体層10,11を形成し、グランド板2の結合辺2c及びループ辺2bを立体的に折り曲げて前記誘電体11の底面11a及び側面11bに沿わせたものである。
具体的に説明すると、図10(a)に示すように、ループ辺2bは、その四隅に柱状部をなす2本の支柱辺2d,2eが内側に向けて形成され、箱を展開した形状をなしている。
図10(b)に示すように、+x・−x方向に沿う折り曲げ線A−A,B−Bに沿って向き合う2辺のループ辺2b,2bと一部の結合辺2cとをカールアンテナ素子1側に立ち上げる方向(z方向)に折り曲げ、2本の支柱部2d,2eを平行に立ち上げて柱状部として折り曲げる。同様に、+y・−y方向に沿う折り曲げ線C−C,D−Dに沿って向き合う2辺のループ辺2b,2bと一部の結合辺2cとをカールアンテナ素子1側に立ち上げる方向(z方向)に折り曲げ、2本の支柱部2d,2eを平行にカールアンテナ素子1側に立ち上げて柱状部として折り曲げる。
図10(b)に示すように、ループ辺2bと結合辺2cとを誘電体層11を取り囲むように立体的に折り曲げることにより、上部に誘電体層11を受け入れる開口をもつ箱状をなすキャビティ構造に組み立てられる。具体的には、結合辺2cが底部の骨組みをなし、一部の結合辺2cのループ辺2b側がカールアンテナ素子1側に立ち上がり、かつ支柱辺2d,2eが四隅の柱状部をなし、4辺のループ辺2bが四隅の柱状部を横方向に繋いた立体構造に組み上がる。
図10(c)に示すように、前記箱状の底部をなす結合辺2cを誘電体層11の底面11aに沿わせ、立ち上がったループ辺2b及び結合辺2cを誘電体層11の側面11bに沿わせる。
図10に示す実施形態では、カールアンテナ素子1を境界として誘電体層10,11を形成しているため、誘電体層10,11の存在により、カールアンテナ素子1のサイズ(周回部分1dの周囲長,結合辺1fの長さ、立ち上がり部1cの高さ)を短縮できる。
さらに、グランド板2の結合辺2c及びループ辺2bを立体的に折り曲げて前記誘電体11の底面11a及び側面11bに沿わせているため、グランド板2の周囲長を短縮することができる。グランド板2は立体的に折り曲げているため、折り曲げた周囲長で表すと、0.652λであり、図7(a)に示すグランド板2の周囲長が0.75λであるとの比較して大幅に短縮できた。
図10において、カールアンテナ素子1を境界として誘電体層10,11を形成する際には、前記カールアンテナ素子1の背面側の前記誘電体層11の厚さを正面側の前記誘電体層10の厚さより厚く設定している。前記カールアンテナ素子1の前面側とは、図2の+z方向である放射する前方を意味し、前記カールアンテナ素子1の背面側とは、図2の−z方向である放射する後方を意味している。
前記誘電体層11側に放射されるが、グランド板2の存在によって厚い誘電体層11を通してカールアンテナ素子1側に反射され、所望の指向性を得ることができる。因みに、図10に示す例における軸比を測定した結果、軸比が3であった。
図10の実施形態に示すようにグランド板を立体的に折り曲げてキャビティ構造にすることにより、カールアンテナ素子1の供給側、例えば同軸ケーブルに対して抵抗値及びリアクタンス値を調整することができ、カールアンテナ素子の給電側に対するマッチングを取ることができるという効果を奏するものである。さらに、グランド板2をなす結合辺2cのループ辺2b側の端部を上方に折り曲げ、その折り曲げ部2dによるループ辺2bをカールアンテナ素子1側に立ち上げているため、ループ辺2cの周囲長を短縮することができ、カールアンテナ素子1の小型化に寄与することができるものである。
また、図10のグランド板2は、カールアンテナ素子1の方向(+z方向)にグランド板2の向き合う4辺をカールアンテナ素子1側に立ち上がるように立体的に折り曲げる際にグランド板2の4辺を折り曲げたが、これに限られるものではなく、向き合う2辺を立体的に立ち上がるように折り曲げてもよいものである。
図10には、図2に示すカールアンテナ素子1を図示したが、これに限られるものではなく、図1(a)に基づいて説明したカールアンテナ素子1を用いてもよいものである。さらには、誘電体層に形成したカールアンテナ素子1以外の平面型アンテナ素子に図10(a)及び(b)に示すグランド板2を組み合わせてもよいものである。
図10に示す例では、誘電体層10,11を立方体形状に形成したが、その形状は立方体形状に限られるものではなく、カールアンテナの取付位置に応じて種々変更されるものである。それに伴い、グランド板2を折り曲げる立方体の形状も誘電体層の形状に対応させて種々変更するようにしてもよいものである。
さらに、箱型を平面的に展開した際のグランド板2の形状としては図10(a)に示す形状に限られるものではなく、立体的に折り曲げたときにキャビティ構造をなすものであれば、平面的に展開した形状はいずれのものでもよいものである。
図10(c)では、立体的に折り曲げたグランド板2を誘電体層11の側面11bに沿わせるにあたっては、誘電体層11の側面11bに密着させていたが、これに限られるものではない。図11に示すように、グランド板2を誘電体層11の底面11aから上方(カールアンテナ素子1側)に向けて上部開口が徐々に拡大するように角度をもたせて傾斜させて立体的に折り曲げて、グランド板2を誘電体層11の側面11bに沿わせてもよいものである。
図11に示すように、グランド板2を誘電体層11の底面11aから上方(カールアンテナ素子1側)に向けて上部開口が徐々に拡大するように角度をもたせて傾斜させて立体的に折り曲げることにより、放射パターンのサイド部における指向性を改善することができるものであり、結果として、利得を向上させることができるものである。
図11に示すように、グランド板2を傾斜させて折り曲げて放射パターンのサイド部における指向性を改善するには、折り曲げ角度θが30度に設定すると、指向性の改善を最適に行う事ができるが、この角度θを30度を超えて90度の範囲で折り曲げても、指向性の改善を十分に達成することができたことを確認している。
なお、図12(a)に示すように、グランド板2を立体的折り曲げることなく、誘電体層11の底部11aに貼り付けてもよいものである。
図10、図11及び図12(a)に示す例では、誘電体層11を一体ものの誘電体で形成したが、これに限られるものではない。図12(b)に示すように、誘電体層11の一部に空気層12を介在させてもよいものである。この場合、カールアンテナ素子1の後方に配置する誘電体層11を少なくとも2分割し、それらの誘電体層11,11を樹脂製のボルト12とナット13により空気層12を確保しているが、空気層12を誘電体層11に設ける行成は、これに限られるものではない。
以上の説明では円偏波を前提として説明したが、これに限られるものではない。円偏波の場合、カールアンテナ素子1の巻き始端1aと巻き終端1bとに確保したオーバーラップの領域1eは、巻き始端1aと巻き終端1bとを電気的に絶縁して接近して状態に確保していたが、図13に示す実施形態では、前記オーバーラップの領域1eにおける巻き始端1aと巻き終端1bとを電気的にショートさせている。そのショート構造1gにより、円偏波に代えて直線偏波を得ることができるものである。
さらに、本発明の実施形態に係るカールアンテナ素子を用いてマルチバンド化を実現した例を図14及び図15に基づいて説明する。図14及び図15に示すように、カールアンテナ素子として、電気長の異なる少なくとも2個の前記カールアンテナ素子1A,1Bを用いている。2個のカールアンテナ素子を区別するために符号を異ならせているが、その何れもが以上で説明したカールアンテナ素子1の同一構成である。また、図14及び図15(a)では図示を簡略化するために、カールアンテナ素子1A,1Bの周回部分1d,結合辺1f,オーバーラップ領域1eを直線で図したが、これらの周回部分1d,結合辺1f,オーバーラップ領域1eには、図1(a)及び図2に示すように折り曲げ部が形成されているものである。
電気長の長い前記カールアンテナ素子1Aの立ち上がり部1cから電気長の短い前記カールアンテナ素子1Bの結合辺1fを引き出して、少なくとも上下2段のアンテナとして組み合わせている。そして、前記アンテナのうち上段に位置するカールアンテナ素子1Bの電気長を下段のカールアンテナ素子1Aの電気長よりも長く設定している。
図14においては、カールアンテナ素子1Aと1Bの結合辺1fを同一方向に引き出しているが、図15では、カールアンテナ素子1Aと1Bの結合辺1fを反対方向に引き出している。その他の構成は同じである。
図14及び図15に示すマルチアンテナの場合、図15(b)に示す様に低周波側と高周波側とで共振しており、少なくとも2周波数で送受信が可能である。
さらに、一方のカールアンテナ素子1Aの立ち上がり部1cから他方のカールアンテナ素子1Bの結合辺1fを引き出しているから、カールアンテナ素子1A,1Bを上下に配置した場合、その上下方向(+z方向・−z方向)での厚みを薄くすることができる。
図14及び図15では、下段に位置する電気長の短いカールアンテナ素子1Bとして図2に示すカールアンテナ素子1を用いたが、カールアンテナ素子1Bとしては、図2に示すカールアンテナ素子1に限られるものではない。非特許文献1及び非特許文献2に示すように、カールアンテナ素子の周回部分1dを線材により形成し、その線材からなる周回部分1dの巻き始端1aと巻き終端1bをオーバーラップさせた既存のカールアンテナ素子のものを用いてもよいものである。
図14及び図15には、電気長の異なるカールアンテナ素子を上下二段に組み合わせた例を示したが、これに限られるものはなく、上段に位置する一方のカールアンテナ素子の電気長を下段に位置するカールアンテナ素子の電気長よりも短くすることにより組み合わせることにより、上下に2以上のカールアンテナ素子を配置して組み合わせてもよいものである。
図16に示す実施形態は、カールアンテナ素子1と給電側(例えば同軸ケーブル)との整合性を改善したものである。
図16に示すように、カールアンテナ素子1の一部をグランド板2に短絡させている。具体的に説明すると、カールアンテナ素子1の結合辺1fの一部から柱14を引き出し、その柱14をグランド板2に接続させている。柱14を結合辺1fから引き出す際には、結合辺1fのうち立ち上がり部1cに接近した位置から柱14を引き出している。
図16(a)に示す例において、図16(b)に示すように、結合辺1fとグランド板2との距離Hを0.074λ(λ:使用波長)、同軸ケーブル9の内導体9bと、柱14の短絡位置との距離Wを0.022λに設定して、カールアンテナ素子1と同軸ケーブル9とのマッチングを測定したところ、抵抗値とリアクタンス値が改善されてマッチングが取れていることが分かった。
なお、以上の数値は一例であって、同軸ケーブル9の直径及び柱14の直径などの関係によって上記の数値が変化するものである。
以上のように、本発明によれば、カールアンテナ素子を小型化でき、しかもグランド板も小型化することができ、結果としてカールアンテナの寸法を小型化することに貢献できるものである。
1,1A,1B カールアンテナ素子
1a 巻き始端
1b 巻き終端
1c 立ち上がり部
1d 周回部分
1e オーバーラップの領域
2 グランド板
2a グランド板の開口
2b グランド板のループ辺
2c グランド板の結合辺
3,5,6,8 折り曲げ部
4,7 給電点

Claims (6)

  1. 信号を送受信するカールアンテナにおいて、
    x−y面内に周回して形成された周回部分(1d)と、前記周回部分(1d)の巻き始端(1a)と巻き終端(1b)との間に形成されたオーバーラップ領域(1e)とを有し、
    前記オーバーラップ領域(1e)を折り曲げ部(5,5・・・5)で形成し、前記巻き始端(1a)と前記巻き終端(1b)との折り曲げ部(5,5・・・5)を凹凸状に互いに近接して対峙させ、且つ前記オーバーラップの領域(1e)の巻き始端(1a)と巻き終端(1b)とを電気的に絶縁して近接した状態で確保したことを特徴とするカールアンテナ。
  2. 前記請求項1に記載のカールアンテナにおいて、
    前記カールアンテナ素子の給電点から立ち上がった立ち上がり部に前記カールアンテナ素子の周回部分と結合する結合辺を設けて、該結合辺に折り曲げ部を形成したカールアンテナ。
  3. 前記請求項1又は2の何れかに記載のカールアンテナにおいて、
    前記カールアンテナ素子の周回部分が給電点から立ち上がった立ち上がり部の周りに周回し、前記周回部分に折り曲げ部を形成したカールアンテナ。
  4. 請求項1に記載のカールアンテナにおいて、
    電気長の異なる少なくとも2個の前記カールアンテナ素子を用い、電気長の小さいカールアンテナ素子を前記カールアンテナ素子の立ち上がり部の途中から結合辺を引き出して形成したカールアンテナ。
  5. 請求項1に記載のカールアンテナにおいて、
    前記カールアンテナ素子の周回部分及び結合辺を境界として、前記カールアンテナ素子の前面側及び背面側に誘電体層を設け、前記カールアンテナ素子の背面側の前記誘電体層の厚さを正面側の前記誘電体層の厚さより厚くしたカールアンテナ。
  6. 請求項に記載のカールアンテナにおいて、
    前記カールアンテナ素子の背面側の前記誘電体層に、盤面に複数の開口を設けたグランド板を貼り付けたカールアンテナ。
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