JP5951870B1 - 偏光板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】逆カールを有しないか、又は逆カールが抑制された偏光板を製造することができる方法を提供する。【解決手段】第1熱可塑性樹脂フィルムを加熱処理する工程と、第1熱可塑性樹脂フィルムを加湿処理する工程と、偏光フィルムの一方の面上に第1熱可塑性樹脂フィルムを積層し、偏光フィルムの他方の面上に第1熱可塑性樹脂フィルムよりも温度23℃、相対湿度55%での平衡水分率の低い第2熱可塑性樹脂フィルムを積層する工程とをこの順に含む偏光板の製造方法である。【選択図】図1
Description
本発明は、偏光フィルムと、その上に積層される熱可塑性樹脂フィルムとを含む偏光板の製造方法に関する。
近年、スマートフォンのようなモバイル端末は、デザインや携帯性の面から大画面化、スリム化が急速に進みつつある。限られた厚みで長時間の駆動を実現するために、使用される偏光板についても高輝度化、薄型軽量化が要望されている。
偏光板としては従来、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにトリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルムを接着剤により貼合したものが一般的に用いられている。しかし近年では、薄膜化、耐久性、コスト、生産性等の観点から、TAC以外の樹脂からなる保護フィルムも使用されるようになっている(例えば、特許文献1)。
偏光板は、それが置かれる環境に敏感であり、環境条件によっては、弓なりに反る変形を生じやすい。本明細書では、この変形を「カール」ともいう。偏光板は、薄膜になるほどカールを生じやすい傾向にある。カールには、「正カール」及び「逆カール」の2種類がある。偏光板には、液晶セルなどの画像表示素子に貼合される側の第1主面と、これとは反対側の第2主面とが存在するところ、「正カール」とは第1主面側を凸とするカールであり、「逆カール」とは第2主面側を凸とするカールである。偏光板に逆カールが生じていると、これを粘着剤層を介して画像表示素子に貼合する際、貼合ミスを生じたり、粘着剤層と画像表示素子との界面に気泡が混入したりする不具合を起こしやすくなる。これらの不具合を抑え、偏光板と画像表示素子との貼合を生産性良く実施するためには、偏光板はフラットであることが最も好ましいが、生じているカールが正カールである分には、上記不具合及び生産性の点で特に問題はない。
なお、特許文献2には、偏光板に発生するスジ状凹凸を抑制するために、偏光フィルムと保護フィルムとの積層に先立って、保護フィルムの水分率を所定の範囲内に調整することが記載されている。
本発明の目的は、逆カールを有しないか、又は逆カールが抑制された偏光板を製造することができる方法を提供することにある。
本発明は、以下の偏光板の製造方法を提供する。
[1] 第1熱可塑性樹脂フィルムを加熱処理する工程と、
前記第1熱可塑性樹脂フィルムを加湿処理する工程と、
偏光フィルムの一方の面上に前記第1熱可塑性樹脂フィルムを積層し、前記偏光フィルムの他方の面上に前記第1熱可塑性樹脂フィルムよりも温度23℃、相対湿度55%での平衡水分率の低い第2熱可塑性樹脂フィルムを積層する工程と、
をこの順に含む、偏光板の製造方法。
[1] 第1熱可塑性樹脂フィルムを加熱処理する工程と、
前記第1熱可塑性樹脂フィルムを加湿処理する工程と、
偏光フィルムの一方の面上に前記第1熱可塑性樹脂フィルムを積層し、前記偏光フィルムの他方の面上に前記第1熱可塑性樹脂フィルムよりも温度23℃、相対湿度55%での平衡水分率の低い第2熱可塑性樹脂フィルムを積層する工程と、
をこの順に含む、偏光板の製造方法。
[2] 前記第2熱可塑性樹脂フィルムは、前記加湿処理を施していないものである、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記第1熱可塑性樹脂フィルムは、セルロース系樹脂フィルムを含む、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記第2熱可塑性樹脂フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記加熱処理時の温度は、前記加湿処理時の温度以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記加熱処理する工程において前記第1熱可塑性樹脂フィルムは、温度50℃以上、相対湿度50%以下の環境下で加熱処理される、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記加湿処理する工程において前記第1熱可塑性樹脂フィルムは、温度40℃以上、相対湿度60%以上の環境下で加湿処理される、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記第1熱可塑性樹脂フィルム及び前記第2熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方は、接着剤層を介して前記偏光フィルム上に積層される、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、逆カールを有しないか、又は逆カールが抑制された偏光板を製造することができる。
図1を参照して、本発明に係る偏光板の製造方法は、次の工程:
(1)第1熱可塑性樹脂フィルムを加熱処理する加熱処理工程S100、
(2)第1熱可塑性樹脂フィルムを加湿処理する加湿処理工程S200、及び
(3)偏光フィルムの一方の面上に第1熱可塑性樹脂フィルムを積層し、偏光フィルムの他方の面上に第2熱可塑性樹脂フィルムを積層する積層工程S300、
をこの順に含む。第2熱可塑性樹脂フィルムには、第1熱可塑性樹脂フィルムよりも平衡水分率が低いものを用いる。ここでいう平衡水分率は、温度23℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管されたフィルムの平衡水分率を乾燥重量法により測定したものである。
(1)第1熱可塑性樹脂フィルムを加熱処理する加熱処理工程S100、
(2)第1熱可塑性樹脂フィルムを加湿処理する加湿処理工程S200、及び
(3)偏光フィルムの一方の面上に第1熱可塑性樹脂フィルムを積層し、偏光フィルムの他方の面上に第2熱可塑性樹脂フィルムを積層する積層工程S300、
をこの順に含む。第2熱可塑性樹脂フィルムには、第1熱可塑性樹脂フィルムよりも平衡水分率が低いものを用いる。ここでいう平衡水分率は、温度23℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管されたフィルムの平衡水分率を乾燥重量法により測定したものである。
加熱処理に引き続いて加湿処理した第1熱可塑性樹脂フィルムを偏光フィルムの一方の面に積層し、他方の面に第2熱可塑性樹脂フィルムを積層する本発明の製造方法によれば、得られる偏光板の逆カールを低減又は防止することができる。逆カールとは、上述のように、液晶セルなどの画像表示素子に貼合される側とは反対側である第2主面を凸にして偏光板が弓なりに反る変形をいい、通常この変形は、偏光板の枚葉体において生じる。長尺の原料フィルム(第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム、並びに偏光フィルム)を用いて長尺の偏光板を製造する場合において、逆カールとは、典型的には長尺の偏光板から裁断して得られる偏光板枚葉体に生じる逆カールをいう。
本発明に係る製造方法によって得られる偏光板の層構成の一例を図2に示す。図2に示される偏光板は、偏光フィルム5と、その一方の面に第1接着剤層15を介して貼合される第1熱可塑性樹脂フィルム10と、他方の面に第2接着剤層25を介して貼合される第2熱可塑性樹脂フィルム20とを含む両面保護偏光板1である。両面保護偏光板1において第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20は、偏光フィルム5の保護を担う光学フィルム、すなわち保護フィルムであることができ、接着剤を用いて偏光フィルム5の表面に接着することができる。本発明に係る製造方法によって得られる偏光板の他の層構成については後述する。
以下、図3を参照しながら各工程について説明する。図3は、本発明に係る偏光板の製造方法及びそれに用いる製造装置の一例を模式的に示す側面図である。図3における矢印は、フィルムの搬送方向を示す。一般に、偏光板は、図3に示されるように、長尺の原料フィルムを連続的に巻き出して搬送しながら各工程における処理を施すことにより、長尺品として連続的に製造することができる。ただし本発明の製造方法は、このような長尺の原料フィルムを用いた連続生産に限定されるものではなく、枚葉フィルムを用いた方法であってもよい。
(1)加熱処理工程S100
本工程は、第1熱可塑性樹脂フィルム10を加熱処理する工程である。本発明は、第1熱可塑性樹脂フィルム10に対して加湿処理を施す前に加熱処理を施すことを1つの特徴としており、これによって偏光板の逆カール(典型的には、第1熱可塑性樹脂フィルム10側の主面を凸とするカール)を効果的に抑制又は防止することができ、また、加湿処理のみを施す場合に比べて偏光板の逆カールをより効果的に抑制又は防止することができる。
本工程は、第1熱可塑性樹脂フィルム10を加熱処理する工程である。本発明は、第1熱可塑性樹脂フィルム10に対して加湿処理を施す前に加熱処理を施すことを1つの特徴としており、これによって偏光板の逆カール(典型的には、第1熱可塑性樹脂フィルム10側の主面を凸とするカール)を効果的に抑制又は防止することができ、また、加湿処理のみを施す場合に比べて偏光板の逆カールをより効果的に抑制又は防止することができる。
第1熱可塑性樹脂フィルム10は、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムである。第1熱可塑性樹脂フィルム10を構成する熱可塑性樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。その他の「(メタ)」を付した用語においても同様である。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。より具体的な例は、ポリプロピレン系樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)、ポリエチレン系樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)を含む。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロース系樹脂とは、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等の原料セルロースから得られるセルロースの水酸基における水素原子の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロース有機酸エステル又はセルロース混合有機酸エステルをいう。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、及びそれらの混合エステル等からなるものが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する、上記セルロース系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。好適なポリエステル系樹脂の例は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性、透明性を有する樹脂である。ポリカーボネート系樹脂は、光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を含む重合体である。該重合体は、典型的にはメタクリル酸エステルを含む重合体である。好ましくはメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合が、全構造単位に対して、50重量%以上含む重合体である。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、他の重合性モノマー由来の構成単位を含む共重合体であってもよい。この場合、他の重合性モノマー由来の構成単位の割合は、好ましくは全構造単位に対して、50重量%以下である。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得るメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、メタクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る上記他の重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル、及びその他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を挙げることができる。他の重合性モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレン等のビニル系化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物が挙げられる。その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
第1熱可塑性樹脂フィルム10は、偏光フィルム5の一方の面に積層貼合される、偏光フィルム5を保護するための保護フィルムであることができ、あるいは、偏光フィルム5の表面を一時的に保護しておくための仮保護フィルムであることもできる。仮保護フィルムである第1熱可塑性樹脂フィルム10は、偏光板を構築した後、所望の時期に剥離除去される。また、第1熱可塑性樹脂フィルム10は、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる熱可塑性樹脂フィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。第1熱可塑性樹脂フィルム10は、その表面に積層される、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
第1熱可塑性樹脂フィルム10の厚みは通常1〜100μmであるが、強度や取扱性等の観点から5〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。この範囲内の厚みであれば、偏光フィルム5を機械的に保護し、偏光板が湿熱環境下に曝されたときの偏光フィルム5の収縮を抑制することができる。第1熱可塑性樹脂フィルム10の厚みが小さいほど、偏光板はカールを生じやすくなるが、本発明によれば、第1熱可塑性樹脂フィルム10の厚みが例えば40μm以下、さらには30μm以下と薄くても得られる偏光板の逆カールを効果的に抑制又は防止することができる。
第1熱可塑性樹脂フィルム10は、後述する積層工程S300で用いる第2熱可塑性樹脂フィルム20よりも平衡水分率が高いフィルムである。本明細書において平衡水分率は、温度23℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管されたフィルムの水分率を乾燥重量法で測定したものであり、具体的には、下記式:
平衡水分率(重量%)={(保管後のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/保管後のフィルム重量}×100
に従って求められる。乾燥とは、フィルムを105℃で2時間乾燥させる処理をいう。少なくとも平衡水分率のより高い第1熱可塑性樹脂フィルム10に対して加熱処理及びこれに続く加湿処理を施し、かかる第1熱可塑性樹脂フィルム10を用いて偏光板を製造する本発明の方法によれば、得られる偏光板の逆カールを抑制又は防止することができる。
平衡水分率(重量%)={(保管後のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/保管後のフィルム重量}×100
に従って求められる。乾燥とは、フィルムを105℃で2時間乾燥させる処理をいう。少なくとも平衡水分率のより高い第1熱可塑性樹脂フィルム10に対して加熱処理及びこれに続く加湿処理を施し、かかる第1熱可塑性樹脂フィルム10を用いて偏光板を製造する本発明の方法によれば、得られる偏光板の逆カールを抑制又は防止することができる。
第1熱可塑性樹脂フィルム10と第2熱可塑性樹脂フィルム20とは、前記の方法で測定される平衡水分率の差が0.5重量%以上であること、すなわち第1熱可塑性樹脂フィルム10の平衡水分率は第2熱可塑性樹脂フィルム20よりも0.5重量%以上大きいことが好ましい。これにより、後述する加湿処理工程S200において第1熱可塑性樹脂フィルム10の水分率をより効果的に高めることができ、逆カールの抑制又は防止により有利となる。上記平衡水分率の差は、より好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは1.5重量%以上である。
第1熱可塑性樹脂フィルム10は、平衡水分率が1.5重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましい。これにより、後述する加湿処理工程S200において第1熱可塑性樹脂フィルム10の水分率をより効果的に高めることができ、逆カールの抑制又は防止により有利となる。第1熱可塑性樹脂フィルム10の平衡水分率は、通常5重量%以下である。
平衡水分率の差が0.5重量%以上である熱可塑性樹脂フィルムの組み合わせとしては、例えば、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と環状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と(メタ)アクリル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)とポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と鎖状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと環状ポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ等を挙げることができる。第1熱可塑性樹脂フィルム10と第2熱可塑性樹脂フィルム20の平衡水分率の差は、通常5重量%以下である。
熱可塑性樹脂フィルムの平衡水分率は、その材質(フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類)のほか、フィルムの厚み、フィルム表面に付設することができる表面処理層(コーティング層)の有無や材質などによっても調整することができる。
また第1熱可塑性樹脂フィルム10は、第2熱可塑性樹脂フィルム20よりも透湿度が高いフィルムであることが好ましい。本明細書において透湿度は、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定される温度40℃、相対湿度90%での透湿度である。少なくとも透湿度のより高い第1熱可塑性樹脂フィルム10に対して加熱処理及びこれに続く加湿処理を施し、かかる第1熱可塑性樹脂フィルム10を用いて偏光板を製造する本発明の方法によれば、得られる偏光板の逆カールの抑制又は防止により有利となる。
第1熱可塑性樹脂フィルム10と第2熱可塑性樹脂フィルム20とは、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定される温度40℃、相対湿度90%での透湿度の差が30g/(m2・24hr)以上であること、すなわち第1熱可塑性樹脂フィルム10の透湿度は第2熱可塑性樹脂フィルム20よりも30g/(m2・24hr)以上大きいことが好ましい。これにより、後述する加湿処理工程S200において第1熱可塑性樹脂フィルム10の水分率をより効果的に高めることができ、逆カールの抑制又は防止により有利となる。上記透湿度の差は、より好ましくは50g/(m2・24hr)以上であり、さらに好ましくは100g/(m2・24hr)以上である。
第1熱可塑性樹脂フィルム10は、透湿度が300g/(m2・24hr)以上であることが好ましく、400g/(m2・24hr)以上であることがより好ましい。これにより、後述する加湿処理工程S200において第1熱可塑性樹脂フィルム10の水分率をより効果的に高めることができ、逆カールの抑制又は防止により有利となる。また、透湿度が300g/(m2・24hr)以上であることは、水系接着剤を用いて第1熱可塑性樹脂フィルム10と偏光フィルム5とを貼合する場合において、水系接着剤からなる層を効率良く乾燥させることができ、生産性を高めることができる点で有利である。第1熱可塑性樹脂フィルム10の透湿度は、通常5000g/(m2・24hr)以下である。
透湿度の差が30g/(m2・24hr)以上である熱可塑性樹脂フィルムの組み合わせとしては、例えば、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と環状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と(メタ)アクリル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)とポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と鎖状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと環状ポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ等を挙げることができる。第1熱可塑性樹脂フィルム10と第2熱可塑性樹脂フィルム20の透湿度の差は、通常5000g/(m2・24hr)以下である。
熱可塑性樹脂フィルムの透湿度は、その材質(フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類)のほか、フィルムの厚み、フィルム表面に付設することができる表面処理層(コーティング層)の有無や材質などによっても調整することができる。
本工程における第1熱可塑性樹脂フィルム10の加熱処理は、第1熱可塑性樹脂フィルム10を所望の温度にまで加熱できる限り、その手段は特に制限されない。図3に示されるように加熱処理は、例えば加熱炉70に第1熱可塑性樹脂フィルム10を導入することによってこれを加熱する処理であることができる。加熱炉70は、好ましくは炉内温度を制御可能なものである。加熱炉70は、例えば、熱風の供給などにより炉内温度を高めることができる熱風オーブンである。
また、第1熱可塑性樹脂フィルム10の加熱処理は、凸曲面を有する1又は2以上の加熱体に該フィルムを密着させる処理や、ヒーターを用いて該フィルムを加熱する処理であってもよい。上記加熱体としては、熱源(例えば、温水などの熱媒や赤外線ヒーター)を内部に備え、表面温度を高めることができるロール(例えば、表面が金属で構成されたガイドロールなどの熱ロール)を挙げることができる。上記ヒーターとしては、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーターなどを挙げることができる。図3には、加熱炉70内に第1熱可塑性樹脂フィルム10を導入し、該フィルムを炉内のガイドロール60に沿って搬送させながら加熱処理する例を示している。
中でも、所望の温度に炉内温度が調整された加熱炉70内に第1熱可塑性樹脂フィルム10を導入し、該フィルムを炉内にある1又は2以上のガイドロール60に沿って搬送させながら加熱する方法や、該フィルムを搬送させながら凸曲面を有する1又は2以上の加熱体に密着させて加熱する方法は、第1熱可塑性樹脂フィルム10の表面を、後述する積層工程S300の前に平滑化できる点で好ましい。すなわち、第1熱可塑性樹脂フィルム10などの原料フィルムは、製造時に微小な表面凹凸を有していたり、製造後の保管工程で表面に微小な凹凸を生じることがあるところ、本工程において上記方法を用いて第1熱可塑性樹脂フィルム10の表面を平滑化することにより、偏光板の外観品質を改善できるとともに、偏光フィルム5との密着性を高めることができる。
加熱処理時の温度T1-1(例えば、加熱炉70の炉内温度、熱ロールの表面温度など)、及び加熱処理によって到達する第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度T1-2は、後述する加湿処理工程S200での加湿処理時の温度T2-1(例えば、加湿炉80の炉内温度)以上であることが好ましく、加湿処理時の温度T2-1より高いことがより好ましい。また、温度T1-1及びT1-2は、加湿処理によって到達する第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度T2-2以上であることが好ましく、温度T2-2より高いことがより好ましい。これにより、得られる偏光板の逆カールをより効果的に抑制又は防止することができる。すなわち、上述の温度の関係を充足することにより、加湿処理工程S200導入時の第1熱可塑性樹脂フィルム10の表面に結露が生じることを防止できるため、所望の温湿度条件下での加湿処理をフィルム全体にわたって確実に実施することができる。これによって逆カールの抑制・防止効果が高まる。T1-1、T1-2は、T2-1、T2-2よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましく、30℃以上高いことがさらに好ましい。
なお、加熱処理時の温度T1-1と、加熱処理によって到達する第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度T1-2とは、好ましくは同じか、又はほぼ同じ温度である。また、加湿処理時の温度T2-1と、加湿処理によって到達する第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度T2-2とは、好ましくは同じか、又はほぼ同じ温度である。
加湿処理工程S200において第1熱可塑性樹脂フィルム10の表面に結露が発生すると、水の蒸発潜熱により、その結露部分においてフィルムの温度が所望値まで上がらず、その結果、所望の温湿度条件下での加湿処理ができなくなるため、逆カールの抑制・防止効果が低下するか、又は逆カールを抑制できなくなる。また、加熱処理工程S100を実施することなく、例えば常温(23℃)の第1熱可塑性樹脂フィルム10を加湿処理工程S200に導入し、かつ結露の生じないような温湿度条件下で加湿処理を行う場合には、加湿処理が不十分となり、偏光板の逆カールを抑制することができない。
また、第1熱可塑性樹脂フィルム10の表面に結露が生じると、偏光板における該表面に結露跡(結露が生じ、それが乾燥した後に残る乾燥跡)が残って偏光板の外観品質を低下させる。加熱処理に引き続いて加湿処理した第1熱可塑性樹脂フィルムを用いて偏光板を製造する本発明の方法によれば、この結露跡の発生を低減させることもできる。
加熱処理時の温度T1-1、及び加熱処理によって到達する第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度T1-2は、通常50〜150℃であり、好ましくは60〜130℃であり、より好ましくは70〜120℃である。温度T1-1、T1-2が50℃未満であると、上述の温度の関係(T1-1、T1-2≧T2-1、T2-2)を充足させることが難しくなるか、又は当該関係を充足させること自体は可能であっても、加湿処理工程S200において適切な温湿度条件下で加湿処理を行うことができず、結果、逆カールの抑制・防止効果が低下する傾向にある。また、温度T1-1、T1-2が50℃未満であると、第1熱可塑性樹脂フィルム10の表面の平滑化が不十分になりやすい。一方、温度T1-1、T1-2が150℃を超えると、第1熱可塑性樹脂フィルム10に熱劣化が生じるおそれがあるとともに、加湿処理工程S200において第1熱可塑性樹脂フィルム10を効果的に加湿できないことがある。加湿処理工程S200において第1熱可塑性樹脂フィルム10を効果的に加湿処理する観点から、温度T1-1、T1-2は、さらに好ましくは110℃以下であり、特に好ましくは100℃以下である。
本工程での加熱処理は、相対湿度50%以下、好ましくは45%以下の環境下で実施される。換言すれば、相対湿度50%以下の環境下で行う加熱処理を、本明細書では「加熱処理」といい、この点で、相対湿度がこれより高い(例えば、相対湿度60%以上の)環境下で、好ましくは加熱しながら加湿する加湿処理工程S200での「加湿処理」とは区別される。加熱処理環境の相対湿度は、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下(例えば5%以下)である。
本工程での加熱処理の時間は、例えば2〜300秒程度であり、好ましくは5〜120秒程度である。加熱処理の時間があまりに短いと、第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度T1-2を上述の温度まで到達させることが難しくなる。あまりに長い加熱処理時間は、第1熱可塑性樹脂フィルム10に熱劣化を生じさせるおそれがあり、また、長いフィルム搬送路を要するため、偏光板製造設備の過度の大型化を招くおそれがある。加熱処理の時間とは、加熱炉70内でのフィルムの滞留時間、加熱体に密着させる時間、又はヒーターを用いてフィルムを加熱する時間などをいう。
(2)加湿処理工程S200
本工程は、加熱処理後の第1熱可塑性樹脂フィルム10に対して加湿処理を施す工程である。加湿処理とは、第1熱可塑性樹脂の水分率を上昇させる処理をいう。上述のように、加熱処理に引き続いて加湿処理を行うことにより偏光板の逆カールを効果的に抑制又は防止することができ、また、加湿処理のみを施す場合に比べて偏光板の逆カールをより効果的に抑制又は防止することができる。
本工程は、加熱処理後の第1熱可塑性樹脂フィルム10に対して加湿処理を施す工程である。加湿処理とは、第1熱可塑性樹脂の水分率を上昇させる処理をいう。上述のように、加熱処理に引き続いて加湿処理を行うことにより偏光板の逆カールを効果的に抑制又は防止することができ、また、加湿処理のみを施す場合に比べて偏光板の逆カールをより効果的に抑制又は防止することができる。
第1熱可塑性樹脂フィルム10の加湿処理は、図3に示されるように、加湿炉80に第1熱可塑性樹脂フィルム10を導入することによってこれを加湿する処理など、相対湿度が調整された環境下に置く処理であることができる。加湿炉80は、好ましくは炉内の相対湿度を制御可能なものであり、より好ましくはさらに炉内温度を制御可能なものである。加湿炉80は、例えば、熱風の供給などにより炉内温度を高めることができ、かつ炉内の水分調整によって炉内の相対湿度を制御できるオーブンである。
加熱処理と加湿処理とのインターバルは、加熱処理された第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度が加湿処理工程導入時においても維持されるか、又は大きく低下しないようできるだけ短いことが好ましい。図3には、加熱炉70から出た第1熱可塑性樹脂フィルム10をすぐさま加湿炉80に導入し、該フィルムを炉内のガイドロール60に沿って搬送させながら加湿処理する例を示している。加湿炉80を用いた加湿処理における温度調整のために、熱風の代わりに上述のヒーターを用いたり、上述の加熱体(例えば熱ロール)を用いることもできる。
上記相対湿度が調整された環境、例えば加湿炉80内は、少なくとも50%を超える相対湿度に調整され、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上の相対湿度に調整される。これにより、第1熱可塑性樹脂フィルム10の加湿処理を効果的に行うことができる。上記相対湿度が調整された環境の相対湿度は、通常99%以下であり、好ましくは95%以下である。相対湿度があまりに高いと、第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度によっては結露を生じる場合がある。
加湿処理時の温度T2-1(上記相対湿度が調整された環境の温度)、及び加湿処理によって到達する第1熱可塑性樹脂フィルム10の温度T2-2は、通常35℃以上であり、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは45℃以上である。温度T2-1、T2-2が35℃以上であることにより、加湿処理を効率良く行うことができる。一方、温度T2-1、T2-2があまりに高いと、上述の温度の関係(T1-1、T1-2≧T2-1、T2-2)を充足させることが難しくなることから、温度T2-1、T2-2は、好ましくは90℃以下であって上述の温度の関係を充足する範囲内であり、より好ましくは80℃以下であって上述の温度の関係を充足する範囲内である。
本工程での加湿処理の時間は、例えば5〜500秒程度であり、好ましくは20〜300秒程度である。加湿処理の時間があまりに短いと、第1熱可塑性樹脂フィルム10の加湿(水分率上昇)が不十分となる。また、あまりに長い加湿処理時間は、長いフィルム搬送路を要するため、偏光板製造設備の過度の大型化を招くおそれがある。加湿処理の時間とは、加湿炉80内でのフィルムの滞留時間などをいう。
加湿処理工程S200後の第1熱可塑性樹脂フィルム10の好ましい水分率は、該フィルムの平衡水分率(より典型的には該フィルムの材質)に依存する。加湿処理によって第1熱可塑性樹脂フィルム10は、好ましくは、偏光板が製造後に保管される通常の環境下(温度23℃程度、相対湿度55%程度)における平衡水分率よりも高い水分率に調整される。例えば第1熱可塑性樹脂フィルム10がトリアセチルセルロースフィルムである場合、加湿処理後の水分率は、好ましくは1〜5重量%であり、より好ましくは2〜4重量%である。水分率は、平衡水分率と同様に乾燥重量法によって測定され、具体的には、下記式:
水分率(重量%)={(乾燥処理前のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/乾燥処理前のフィルム重量}×100
に従って求められる。乾燥とはフィルムを105℃で2時間乾燥させる処理をいう。
水分率(重量%)={(乾燥処理前のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/乾燥処理前のフィルム重量}×100
に従って求められる。乾燥とはフィルムを105℃で2時間乾燥させる処理をいう。
第1熱可塑性樹脂フィルム10は、加湿処理工程S200後の積層工程S300においても、加湿処理後の水分率を保持又はおよそ保持していることが望ましい。
(3)積層工程S300
図3を参照して本工程は、偏光フィルム5の一方の面上に第1熱可塑性樹脂フィルム10を積層し、偏光フィルム5の他方の面上に第2熱可塑性樹脂フィルム20を積層する工程である。
図3を参照して本工程は、偏光フィルム5の一方の面上に第1熱可塑性樹脂フィルム10を積層し、偏光フィルム5の他方の面上に第2熱可塑性樹脂フィルム20を積層する工程である。
(3−1)偏光フィルム
偏光フィルム5は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものであることができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
偏光フィルム5は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものであることができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80.0〜100.0モル%の範囲であることができるが、好ましくは90.0〜100.0モル%の範囲であり、より好ましくは98.0〜100.0モル%の範囲である。ケン化度が80.0モル%未満であると、得られる偏光板の耐水性及び耐湿熱性が低下し得る。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは1500〜8000であり、さらに好ましくは2000〜5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度もJIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が100未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超では溶媒への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの形成が困難となり得る。
偏光フィルム5に含有(吸着配向)される二色性色素は、ヨウ素又は二色性有機染料であることができる。二色性有機染料の具体例は、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックを含む。二色性色素は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。二色性色素は、好ましくはヨウ素である。
偏光フィルム5は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋処理する工程;及び、架橋処理後に水洗する工程、を経て製造することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、上述したポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものである。製膜方法は、特に限定されるものではなく、溶融押出法、溶剤キャスト法のような公知の方法を採用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは、例えば10〜150μm程度であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、架橋処理の前又は架橋処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素が含有された水溶液(染色溶液)に浸漬する方法が採用される。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理(膨潤処理)を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この染色水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり通常0.01〜1重量部である。また、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり通常0.5〜20重量部である。染色水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む染色水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。染色水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり通常1×10-4〜10重量部であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この染色水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。
二色性色素による染色後の架橋処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。架橋剤の好適な例はホウ酸であるが、ホウ砂のようなホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いることもできる。架橋剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤含有水溶液における架橋剤の量は、水100重量部あたり通常2〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、この架橋剤含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。架橋剤含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり通常0.1〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。架橋剤含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
架橋処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、架橋処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、1〜40℃程度である。
水洗後に乾燥処理を施して、偏光フィルム5が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機による乾燥、熱ロールに接触させることによる乾燥、遠赤外線ヒーターによる乾燥などであることができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、50〜90℃が好ましい。
偏光フィルム5の厚みは、通常2〜40μm程度である。偏光板の薄膜化の観点から、偏光フィルム5の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。偏光フィルム5の厚みが小さいほど、偏光板はカールを生じやすくなるが、本発明によれば、偏光フィルム5の厚みが例えば15μm以下、さらには10μm以下と薄くても得られる偏光板の逆カールを効果的に抑制又は防止することができる。
乾燥処理によって、偏光フィルム5の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5〜20重量%であり、8〜15重量%であることが好ましい。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルム5の可撓性が失われ、偏光フィルム5がその乾燥後に損傷したり、破断したりする場合がある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光フィルム5の熱安定性に劣る場合がある。ここでいう水分率は、乾燥重量法によって測定され、その測定方法は、上述のとおりである。
(3−2)第2熱可塑性樹脂フィルム
第2熱可塑性樹脂フィルム20は、第1熱可塑性樹脂フィルム10と同様、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成される。第2熱可塑性樹脂フィルム20を構成し得る熱可塑性樹脂の具体例については、第1熱可塑性樹脂フィルム10について記述したものが引用される。ただし、第2熱可塑性樹脂フィルム20を構成する熱可塑性樹脂は、該フィルムの温度23℃、相対湿度55%での平衡水分率が第1熱可塑性樹脂フィルム10の平衡水分率よりも低くなるように選択される。
第2熱可塑性樹脂フィルム20は、第1熱可塑性樹脂フィルム10と同様、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成される。第2熱可塑性樹脂フィルム20を構成し得る熱可塑性樹脂の具体例については、第1熱可塑性樹脂フィルム10について記述したものが引用される。ただし、第2熱可塑性樹脂フィルム20を構成する熱可塑性樹脂は、該フィルムの温度23℃、相対湿度55%での平衡水分率が第1熱可塑性樹脂フィルム10の平衡水分率よりも低くなるように選択される。
第2熱可塑性樹脂フィルム20は、第1熱可塑性樹脂フィルム10と同様、保護フィルム、仮保護フィルム、又は位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであり得る。第2熱可塑性樹脂フィルム20は、その表面に積層される、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。第2熱可塑性樹脂フィルム20の厚みは通常1〜100μmであるが、強度や取扱性等の観点から5〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。第2熱可塑性樹脂フィルム20の厚みが小さいほど、偏光板はカールを生じやすくなるが、本発明によれば、第2熱可塑性樹脂フィルム20の厚みが例えば40μm以下、さらには30μm以下と薄くても得られる偏光板の逆カールを効果的に抑制又は防止することができる。
上述のように、熱可塑性樹脂フィルムの平衡水分率(及び透湿度)は、その材質(フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類)、フィルムの厚み、フィルム表面に付設することができる表面処理層(コーティング層)の有無や材質などによって調整することができる。従って、第1熱可塑性樹脂フィルム10と第2熱可塑性樹脂フィルム20とは平衡水分率が互いに異なるものであるが、同じ熱可塑性樹脂で構成される場合がある。
第2熱可塑性樹脂フィルム20の平衡水分率は、通常0.05〜1.5重量%であり、好ましくは0.05〜1重量%である。また第2熱可塑性樹脂フィルム20の透湿度は、通常1〜350g/(m2・24hr)であり、好ましくは5〜200g/(m2・24hr)である。かかる平衡水分率及び透湿度を達成し得る第2熱可塑性樹脂フィルム20を構成する熱可塑性樹脂の例は、環状ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂などである。
第2熱可塑性樹脂フィルム20に対して、積層工程S300の前に、第1熱可塑性樹脂フィルム10と同様の加湿処理、又は加熱処理と加湿処理との組み合わせを施してもよいが、偏光板の逆カールを抑制又は防止する観点からは、第2熱可塑性樹脂フィルム20に対して加湿処理、又は加熱処理と加湿処理との組み合わせを実施しないことが好ましい。ただし、第2熱可塑性樹脂フィルム20に対して第1熱可塑性樹脂フィルム10と同様の加熱処理を施すことにより、第2熱可塑性樹脂フィルム20の表面を平滑化することができる。
(3−3)積層工程
図3を参照して、本工程における偏光フィルム5への第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の積層は、例えば、各原料フィルムの長尺品を用いて、これらを連続的に搬送しながら連続的に行うことができる。各原料フィルムは、それらの長手方向が搬送方向となるように搬送される。フィルムの搬送経路には適宜、走行するフィルムを支持するガイドロール(フリーロール)60や、必要に応じてニップロール等の駆動ロールが設けられる。通常、偏光フィルム5の搬送方向(フィルム長手方向)と第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の搬送方向(フィルム長手方向)とは平行である。
図3を参照して、本工程における偏光フィルム5への第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の積層は、例えば、各原料フィルムの長尺品を用いて、これらを連続的に搬送しながら連続的に行うことができる。各原料フィルムは、それらの長手方向が搬送方向となるように搬送される。フィルムの搬送経路には適宜、走行するフィルムを支持するガイドロール(フリーロール)60や、必要に応じてニップロール等の駆動ロールが設けられる。通常、偏光フィルム5の搬送方向(フィルム長手方向)と第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の搬送方向(フィルム長手方向)とは平行である。
第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の双方が保護フィルム又は光学機能を併せ持つ保護フィルムである場合、第1,第2熱可塑性樹脂フィルム10,20は通常、それぞれ第1,第2接着剤層15,25を介して偏光フィルム5に積層貼合される。具体的には、図3に示されるように、第1熱可塑性樹脂フィルム10、偏光フィルム5及び第2熱可塑性樹脂フィルム20を、それらの長手方向(搬送方向)が平行となるように重ねて一対の貼合ロール40,40間に通すことにより、積層されたフィルムを上下から押圧することによってフィルムの積層貼合を行うことができるのであるが、この際、貼合ロール40,40間に通す手前で、第1注入装置90、第2注入装置91を用いて、偏光フィルム5と第1熱可塑性樹脂フィルム10との間、及び偏光フィルム5と第2熱可塑性樹脂フィルム20との間にそれぞれ第1接着剤50、第2接着剤55を注入することにより接着剤層を介在させる。
積層後、接着剤層を乾燥及び/又は硬化させることにより、図2に示される両面保護偏光板1が得られる。第1接着剤層15は第1接着剤50から形成され、第2接着剤層25は第2接着剤55から形成される。
なお、接着剤からなる層を介在させるための方法は、注入装置90,91を用いた注入に限定されるものではなく、例えば接着剤の粘度等に応じて、ドクターブレード法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、カンマコーター法、グラビアコート法、ディップコート法、流延法のような塗工方式を適宜選択し、重ね合わされる少なくとも一方のフィルムの貼合面に接着剤を塗工するようにしてもよい。
偏光フィルム5に第1,第2熱可塑性樹脂フィルム10、20を積層貼合するに先立って、偏光フィルム5及び/又は第1,第2熱可塑性樹脂フィルム10、20の貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面活性化処理を行ってもよい。この表面活性化処理により、偏光フィルム5と第1,第2熱可塑性樹脂フィルム10、20との接着性を高めることができる。
第1接着剤50、第2接着剤55としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。第1接着剤50と第2接着剤55とは、同種の接着剤あってもよいし異種の接着剤であってもよい。異種の接着剤を用いる場合には偏光板のカールが生じやすくなるが、本発明によれば、このような場合にも偏光板の逆カールを効果的に抑制又は防止することができる。
水系接着剤は、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものである。好ましく用いられる水系接着剤は、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた接着剤組成物である。
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、当該ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂であることができるほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体であってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂を接着剤成分とする水系接着剤は通常、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液である。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤は、接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂のような硬化性成分や架橋剤を含有することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を好適に用いることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、「スミレーズレジン650」(田岡化学工業(株)製)、「スミレーズレジン675」(田岡化学工業(株)製)、「WS−525」(日本PMC(株)製)等が挙げられる。これら硬化性成分や架橋剤の添加量(硬化性成分及び架橋剤としてともに添加する場合にはその合計量)は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合には、接着性向上の効果が小さくなる傾向にあり、また、当該添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して100重量部を超える場合には、接着剤層が脆くなる傾向にある。
また、接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合の好適な例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する接着剤である。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、偏光板が有する接着剤層は、当該接着剤の硬化物層である。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する接着剤であることができ、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性接着剤である。ここでいうエポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
好適に使用できるエポキシ系化合物の具体例は、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物を含む。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、又はこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。また、活性エネルギー線硬化性接着剤が(メタ)アクリル系化合物のようなラジカル重合性硬化性成分を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の一方は、偏光フィルム5の表面を一時的に保護しておくための仮保護フィルムであってもよい。この場合、積層工程S300においては、偏光フィルム5と仮保護フィルムとの間に接着剤を介在させるのではなく、代わりに揮発性液体を介在させるか、又は何も介在させずに仮保護フィルムを積層させる。仮保護フィルムは、偏光フィルム5から剥離可能なフィルムであり、偏光板製造後、所望の時期に(例えば、偏光板を液晶セルに貼合するときに)剥離除去される。「剥離可能」とは、偏光フィルム5及び仮保護フィルムを破損又は傷めることなく、偏光フィルム5と仮保護フィルムとを分離できることを意味する。
一例として、第2熱可塑性樹脂フィルム20を仮保護フィルムとし、積層工程S300を行った後、仮保護フィルムを剥離除去して得られる片面保護偏光板2の層構成を図4に示す。
仮保護フィルムを用いる場合、積層工程S300において、偏光フィルム5と仮保護フィルムとの間に揮発性液体を介在させることが好ましい。これにより、何も介在させない場合に比べて、偏光板を製造する過程で偏光フィルム5が破断したり、偏光フィルム5を含むフィルム積層体にシワが生じたりする不具合を抑制できる。
偏光フィルム5と仮保護フィルムとの間の剥離力は、例えば0.01〜0.5N/25mmであり、好ましくは0.01〜0.2N/25mm、より好ましくは0.01〜0.15N/25mmである。剥離力が0.01N/25mm未満であると、偏光フィルム5と仮保護フィルムとの密着力が小さいため、仮保護フィルムの部分的な剥がれが生じたり、仮保護フィルム付の片面保護偏光板をロール状にした状態で保管中に偏光フィルム5が延伸方向に沿って裂けたりすることがある。また、剥離力が0.5N/25mmを超えると、偏光フィルム5から仮保護フィルムを剥離するのが困難となるため、仮保護フィルムを剥離する際に偏光フィルム5が延伸方向に沿って裂け易くなる。
上記剥離力は、仮保護フィルム付の片面保護偏光板を25mm幅にカットして測定サンプルを取得し、(株)島津製作所製の精密万能試験機「オートグラフAGS−50NX」を用いて、測定サンプルの仮保護フィルムと片面保護偏光板とを掴み、180°方向に剥がすときの力を測定することにより求められる。剥離力の測定は、剥離速度300mm/minで温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で行われる。
介在させた揮発性液体は、積層工程S300の後に揮発除去させる。これにより、仮保護フィルム付の片面保護偏光板が得られる。図5に、仮保護フィルム付の片面保護偏光板3の層構成の一例を示す。図5の例において、第2熱可塑性樹脂フィルム20が仮保護フィルムである。揮発性液体は、加熱によって揮発除去させることができる。この加熱処理によって、仮保護フィルムは、偏光フィルム5の表面に直接、適度な密着力をもって積層される。加熱温度は、例えば30〜90℃である。
揮発性液体は、上記加熱処理によって揮発し得る液体であり、好ましくは偏光フィルム5に悪影響を与えない液体である。悪影響を与えないのであれば、帯電防止剤を添加してもよい。揮発性液体の例を挙げれば、例えば、水や、水と親水性液体との混合物等である。親水性液体は、加熱処理後に残留しないものであることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、1-ブタノール、テトロヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ギ酸、酢酸等が挙げられる。
(4)その他の工程
偏光フィルム5と第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム10,20との積層貼合に水系接着剤を用いる場合には、積層工程S300の後、水系接着剤中に含まれる水を除去するための乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥温度は、例えば30〜90℃である。偏光フィルム5上に揮発性液体を介して仮保護フィルムを積層する場合、この乾燥工程は、揮発性液体を揮発除去するための上述の加熱処理を兼ねていてもよい。乾燥工程後、例えば20〜50℃、好ましくは30〜45℃の温度で養生する養生工程を設けてもよい。
偏光フィルム5と第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム10,20との積層貼合に水系接着剤を用いる場合には、積層工程S300の後、水系接着剤中に含まれる水を除去するための乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥温度は、例えば30〜90℃である。偏光フィルム5上に揮発性液体を介して仮保護フィルムを積層する場合、この乾燥工程は、揮発性液体を揮発除去するための上述の加熱処理を兼ねていてもよい。乾燥工程後、例えば20〜50℃、好ましくは30〜45℃の温度で養生する養生工程を設けてもよい。
偏光フィルム5と第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム10,20との積層貼合に活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合には、積層工程S300の後、必要に応じて乾燥工程を行い、次いで活性エネルギー線を照射することによって活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させる硬化工程を行う。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する紫外線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤からなる接着剤層への活性エネルギー線照射強度は、接着剤の組成によって適宜決定されるが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2となるように設定されることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱及び接着剤の硬化時の発熱による接着剤層の黄変や偏光フィルム5の劣化を生じるおそれが少ない。
活性エネルギー線の照射時間についても、接着剤の組成によって適宜決定されるが、上記照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。
第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の一方に仮保護フィルムを用いて積層工程S300を実施した場合には、上述のように、例えば図5に示されるような仮保護フィルム付の片面保護偏光板3が得られ、そこから仮保護フィルムを剥離除去することにより、例えば図4に示されるような片面保護偏光板2が得られる。なお上述のように、図4及び図5では、第2熱可塑性樹脂フィルム20を仮保護フィルムとしているが、第1熱可塑性樹脂フィルム10が仮保護フィルムとなることもあり得る。この片面保護偏光板2における仮保護フィルムが積層されていた偏光フィルム面に粘着剤層30を積層する工程を設けて、例えば図6に示されるような粘着剤層付の片面保護偏光板4を得ることもできる。この粘着剤層30は、片面保護偏光板を液晶セルに貼合するために用いることができる。
図2に示される両面保護偏光板1においても、第1熱可塑性樹脂フィルム10又は第2熱可塑性樹脂フィルム20の外面に粘着剤層30を積層することができる。この粘着剤層30は、両面保護偏光板1を液晶セルに貼合するために用いることができる。両面保護偏光板1において粘着剤層30は、好ましくは第2熱可塑性樹脂フィルム20の外面に積層される。
粘着剤層30は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分(ベースポリマー)とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。(メタ)アクリル系樹脂には、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
粘着剤層30は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を偏光板の粘着剤層形成面(すなわち、偏光フィルム5、第1又は第2熱可塑性樹脂フィルム10,20)上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。あるいは、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液をセパレートフィルム(離型処理が施された熱可塑性樹脂フィルム)上に塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成した後、これを偏光板の粘着剤層形成面に転写してもよい。いずれの方法においても、粘着剤層30の外面にセパレートフィルムを貼着し、使用時まで粘着剤層30を保護しておくことが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。粘着剤層30の厚みは、通常1〜40μmであるが、偏光板の薄膜化の観点から、3〜25μmとすることが好ましい。
両面保護偏光板1、片面保護偏光板2の第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の外面にプロテクトフィルムを積層する工程を設けてもよい。プロテクトフィルムは、基材フィルムと、その上に積層される粘着剤層とで構成される。プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護するためのフィルムであり、通常、例えば液晶セルなどにプロテクトフィルム付の偏光板が貼合された後にそれが有する粘着剤層ごと剥離除去される。基材フィルムは、熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂などで構成することができる。
また、両面保護偏光板1、片面保護偏光板2の第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム10,20の外面に偏光フィルム以外の他の光学フィルムを積層する工程を設けてもよい。他の光学フィルムの例は、位相差フィルムや輝度向上フィルムなどである。他の光学フィルムは、粘着剤層や接着剤層を介して積層貼合することができる。
本発明に係る製造方法によれば、逆カールが良好に抑制又は防止された偏光板(両面保護偏光板又は片面保護偏光板)の枚葉体を得ることができる。上述のように逆カールとは、液晶セルなどの画像表示素子に貼合される側とは反対側である第2主面を凸とするカールであり、両面保護偏光板1又は片面保護偏光板2において、典型的には、第1熱可塑性樹脂フィルム10側を凸とするカールである。本発明によって得られる偏光板の枚葉体においては、このような第1熱可塑性樹脂フィルム10側を凸とする逆カールが良好に抑制又は防止されており、典型的にはカールを有しないフラットな形状であるか、又は若干、正カールを有する形状であるか、又は逆カールを有しているとしてもその量が若干量である形状となっている。望ましくは、カールを有しないフラットな形状、又は若干の正カールを有する形状である。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、以下の例においてフィルムの平衡水分率、透湿度及び厚み、並びに偏光板のカール量は、以下の方法に従って測定した。
(1)フィルムの平衡水分率
MD長さ150mm×TD長さ100mmの試験片を切り出した。温度23℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管した後のフィルム重量を測定した。その後、105℃で2時間乾燥処理を行い、乾燥処理後のフィルム重量を測定した。乾燥前後のフィルム重量より、下記式:
平衡水分率(重量%)={(乾燥処理前のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/乾燥処理前のフィルム重量}×100
に基づき平衡水分率を求めた。
MD長さ150mm×TD長さ100mmの試験片を切り出した。温度23℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管した後のフィルム重量を測定した。その後、105℃で2時間乾燥処理を行い、乾燥処理後のフィルム重量を測定した。乾燥前後のフィルム重量より、下記式:
平衡水分率(重量%)={(乾燥処理前のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/乾燥処理前のフィルム重量}×100
に基づき平衡水分率を求めた。
(2)フィルムの透湿度
JIS Z 0208に規定されるカップ法により、温度40℃、相対湿度90%での透湿度〔g/(m2・24hr)〕を測定した。
JIS Z 0208に規定されるカップ法により、温度40℃、相対湿度90%での透湿度〔g/(m2・24hr)〕を測定した。
(3)フィルムの厚み
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH−15M」を用いて測定した。
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH−15M」を用いて測定した。
(4)偏光板のカール量
得られた両面保護偏光板から、その吸収軸方向(MD)が各辺に対して45°となるように300mm×200mmの試験片を切り出し、温度25℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。この試験片をその凹面を上にして、すなわち4つの端辺が持ち上がった状態になるように基準面(水平な台)上に置いた。この状態で試験片の4つの角のそれぞれについて基準面からの高さを測定し、それら4つの角の高さの平均としてカール量〔mm〕を求めた。カール量が正の値である場合は、第1熱可塑性樹脂フィルム側が凹となっていることを意味し(正カール)、負の値である場合は、第2熱可塑性樹脂フィルム側が凹となっていることを意味する(逆カール)。なお、実施例2及び3の両面保護偏光板は、第1熱可塑性樹脂フィルム側、第2熱可塑性樹脂フィルム側のどちらを上にしてもカールを生じていなかった。
得られた両面保護偏光板から、その吸収軸方向(MD)が各辺に対して45°となるように300mm×200mmの試験片を切り出し、温度25℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。この試験片をその凹面を上にして、すなわち4つの端辺が持ち上がった状態になるように基準面(水平な台)上に置いた。この状態で試験片の4つの角のそれぞれについて基準面からの高さを測定し、それら4つの角の高さの平均としてカール量〔mm〕を求めた。カール量が正の値である場合は、第1熱可塑性樹脂フィルム側が凹となっていることを意味し(正カール)、負の値である場合は、第2熱可塑性樹脂フィルム側が凹となっていることを意味する(逆カール)。なお、実施例2及び3の両面保護偏光板は、第1熱可塑性樹脂フィルム側、第2熱可塑性樹脂フィルム側のどちらを上にしてもカールを生じていなかった。
<実施例1>
(A)偏光フィルムの作製
長尺のポリビニルアルコールフィルム(平均重合度:約2400、ケン化度:99.9モル%以上、厚み:30μm)を連続的に搬送しながら、乾式で約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100の水溶液に68℃で300秒間浸漬した。引き続き、5℃の純水で5秒間洗浄した後、70℃で180秒間乾燥して、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された長尺の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの厚みは11μmであった。
(A)偏光フィルムの作製
長尺のポリビニルアルコールフィルム(平均重合度:約2400、ケン化度:99.9モル%以上、厚み:30μm)を連続的に搬送しながら、乾式で約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100の水溶液に68℃で300秒間浸漬した。引き続き、5℃の純水で5秒間洗浄した後、70℃で180秒間乾燥して、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された長尺の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの厚みは11μmであった。
(B)両面保護偏光板の作製
図3に示される偏光板製造装置と同様の装置を用いて、次の手順で両面保護偏光板を作製した。長尺の第1熱可塑性樹脂フィルム〔コニカミノルタオプト(株)製のTACフィルム「KC2UAW」、厚み:25μm、平衡水分率:3.0重量%、透湿度:1207g/(m2・24hr)〕を連続的に搬送しながら、炉内温度95℃、炉内相対湿度3%に設定された加熱炉に導入し、引き続き、炉内温度50℃、炉内相対湿度70%に設定された加湿炉に導入してフィルムの加湿処理を行った。乾燥炉、加湿炉でのフィルムの滞留時間はそれぞれ8秒、12秒とした。加湿炉は加熱炉の直後に設置されており、加湿炉に導入される直前のフィルムの温度は、加熱炉の炉内温度とほぼ同じであった。加熱炉及び加湿炉はともに、熱風の供給によって炉内温度を高めるものである。
図3に示される偏光板製造装置と同様の装置を用いて、次の手順で両面保護偏光板を作製した。長尺の第1熱可塑性樹脂フィルム〔コニカミノルタオプト(株)製のTACフィルム「KC2UAW」、厚み:25μm、平衡水分率:3.0重量%、透湿度:1207g/(m2・24hr)〕を連続的に搬送しながら、炉内温度95℃、炉内相対湿度3%に設定された加熱炉に導入し、引き続き、炉内温度50℃、炉内相対湿度70%に設定された加湿炉に導入してフィルムの加湿処理を行った。乾燥炉、加湿炉でのフィルムの滞留時間はそれぞれ8秒、12秒とした。加湿炉は加熱炉の直後に設置されており、加湿炉に導入される直前のフィルムの温度は、加熱炉の炉内温度とほぼ同じであった。加熱炉及び加湿炉はともに、熱風の供給によって炉内温度を高めるものである。
上記(A)で得られた偏光フィルムを連続的に搬送するとともに、上記加湿処理後の第1熱可塑性樹脂フィルム、及び長尺の第2熱可塑性樹脂フィルム〔JSR(株)製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである商品名「FEKB015D3」、厚み:15μm、平衡水分率:0.8重量%、透湿度:115g/(m2・24hr)、購入物を加熱・加湿処理することなくそのまま使用〕を連続的に搬送し、偏光フィルムと第1熱可塑性樹脂フィルムとの間、及び偏光フィルムと第2熱可塑性樹脂フィルムとの間に水系接着剤を注入しながら、貼合ロール間に通して第1熱可塑性樹脂フィルム/水系接着剤層/偏光フィルム/水系接着剤層/第2熱可塑性樹脂フィルムからなる積層フィルムとした(第1工程)。この積層工程は、第1熱可塑性樹脂フィルムの加湿処理後、10秒以内に行った。
上記の水系接着剤には、ポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)製の商品名「ゴーセファイマー」、平均重合度1100〕を95℃の熱水に溶解して得られた濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液に架橋剤〔日本合成化学工業(株)製のグリオキシル酸ナトリウム〕をポリビニルアルコール粉末10重量部に対して1重量部の割合で混合した水溶液を用いた。
引き続き、得られた積層フィルムを搬送し、熱風乾燥機に通して80℃、300秒の加熱処理を行うことにより水系接着剤層を乾燥させて、両面保護偏光板を得た。
<実施例2〜3、比較例1〜3>
加熱炉及び加湿炉の炉内環境、並びにフィルムの滞留時間を表1に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、両面保護偏光板を製造した。比較例2及び3では、第1熱可塑性樹脂フィルムの加熱処理を行っていない。
加熱炉及び加湿炉の炉内環境、並びにフィルムの滞留時間を表1に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、両面保護偏光板を製造した。比較例2及び3では、第1熱可塑性樹脂フィルムの加熱処理を行っていない。
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた両面保護偏光板のカール量を表1に示す。表1には、加熱炉及び加湿炉の炉内環境、並びにフィルムの滞留時間を併せて記載している。実施例1〜3、比較例1及び比較例3のいずれにおいても、第1熱可塑性樹脂フィルムの表面に結露跡は認められなかった。比較例2においては、第1熱可塑性樹脂フィルムの表面に結露跡が認められた。
<実施例4及び5>
第1熱可塑性樹脂フィルムとしてハードコートフィルム〔コニカミノルタオプト(株)製のTACフィルム「KC2UAW」にハードコート層が形成されたフィルム、厚み:32.4μm、平衡水分率:1.9重量%、透湿度:455g/(m2・24hr)〕を使用し、第2熱可塑性樹脂フィルムとして環状ポリオレフィン系樹脂フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZF14−023」、厚み:22.9μm、平衡水分率:0.1重量%、透湿度:17g/(m2・24hr)〕を使用し、加熱炉及び加湿炉の炉内環境、並びにフィルムの滞留時間を表2に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、両面保護偏光板を製造した。
第1熱可塑性樹脂フィルムとしてハードコートフィルム〔コニカミノルタオプト(株)製のTACフィルム「KC2UAW」にハードコート層が形成されたフィルム、厚み:32.4μm、平衡水分率:1.9重量%、透湿度:455g/(m2・24hr)〕を使用し、第2熱可塑性樹脂フィルムとして環状ポリオレフィン系樹脂フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZF14−023」、厚み:22.9μm、平衡水分率:0.1重量%、透湿度:17g/(m2・24hr)〕を使用し、加熱炉及び加湿炉の炉内環境、並びにフィルムの滞留時間を表2に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、両面保護偏光板を製造した。
1 両面保護偏光板、2 片面保護偏光板、3 仮保護フィルム付の片面保護偏光板、4 粘着剤層付の片面保護偏光板、5 偏光フィルム、10 第1熱可塑性樹脂フィルム、20 第2熱可塑性樹脂フィルム、15 第1接着剤層、25 第2接着剤層、30 粘着剤層、40 貼合ロール、50 第1接着剤、55 第2接着剤、60 ガイドロール、70 加熱炉、80 加湿炉、90 第1注入装置、91 第2注入装置。
Claims (11)
- 厚みが40μm以下の第1熱可塑性樹脂フィルムを加熱処理する工程と、
前記第1熱可塑性樹脂フィルムを加湿処理する工程と、
偏光フィルムの一方の面上に前記第1熱可塑性樹脂フィルムを積層し、前記偏光フィルムの他方の面上に前記第1熱可塑性樹脂フィルムよりも温度23℃、相対湿度55%での平衡水分率が低く、厚みが40μm以下の第2熱可塑性樹脂フィルムを積層する工程と、
をこの順に含む、偏光板の製造方法。 - 前記第2熱可塑性樹脂フィルムは、前記加湿処理を施していないものである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記第1熱可塑性樹脂フィルムは、セルロース系樹脂フィルムを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記第2熱可塑性樹脂フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記加熱処理時の温度は、前記加湿処理時の温度以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記加熱処理時の温度は、前記加湿処理時の温度よりも30℃以上高い、請求項5に記載の製造方法。
- 前記加熱処理する工程において前記第1熱可塑性樹脂フィルムは、温度50℃以上、相対湿度50%以下の環境下で加熱処理される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記加湿処理する工程において前記第1熱可塑性樹脂フィルムは、温度40℃以上、相対湿度60%以上の環境下で加湿処理される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記第1熱可塑性樹脂フィルム及び前記第2熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方は、接着剤層を介して前記偏光フィルム上に積層される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記偏光フィルムの厚みが15μm以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記加湿処理する工程において前記第1熱可塑性樹脂フィルムは、その水分率が、前記第1熱可塑性樹脂フィルムの温度23℃、相対湿度55%での平衡水分率よりも高くなるように加湿処理される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
Priority Applications (3)
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