JP5951266B2 - 勾配情報取得方法、勾配情報記憶済記憶媒体を作成する方法、勾配情報取得装置およびプログラム - Google Patents
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Description
ここで、軌道は必ずしも図面どおりに施工されない。そのため、軌道施工完了後に勾配を実測し、実測値を勾配情報として制御装置に与える必要がある。
そして、検測車の走行により、曲線情報だけでなく、分岐情報も含めた保線設備データの取得が可能となることで、分岐情報を測量する手間が省ける、とされている。さらに、得られたデータと比較することにより、以前の保線設備データが検査可能となることで、データの信頼性を向上させ、不具合の早期発見が可能となる、とされている。
また、かかる検測車を用いない場合、人手で勾配を測定することが考えられる。しかしながら、人手による勾配の測定には非常に時間がかかってしまう。
鉄道車両100は、通信部(速度測定値取得部)110と、速度計130と、モータ140と、制御装置150とを具備する。勾配情報取得装置300は、通信部310と、処理部320とを具備する。処理部320は、速度算出部323と、パラメータ値取得部324と、勾配情報取得部325とを具備する。
なお、ここでいう鉄道車両は、典型的には列車であるが、連結されずに走行する鉄道車両であってもよい。
速度計130は、鉄道車両100の速度を測定し、得られた測定値を制御装置150に出力する。速度計130は、例えば、鉄道車両100の車輪の単位時間当たりの回転数に基づいて鉄道車両100の速度を測定する。
制御装置150は、鉄道車両100の運転員の操作等に従って、モータ140や、鉄道車両100の具備する制動装置等を制御する。また、制御装置150は、モータ動作状況情報としてのノッチ段数指令値と、速度計130が測定した鉄道車両100の速度情報とを、通信部110に出力することで、勾配情報取得装置300に送信する。
勾配情報取得装置300が取得した勾配情報は、例えば、制御装置150がデジタルATCにおける制限速度を算出する際に用いられる。
速度算出部323は、鉄道車両100の走行経路の勾配を示す関数を含む運動方程式を用いて、当該鉄道車両100の速度の計算値を求める(鉄道車両100の走行をシミュレートする)。なお、速度算出部323が、当該運動方程式を用いて、当該鉄道車両100の速度の計算値を求める処理ステップは、本発明における速度算出ステップに該当する。
図2は、軌道開通時の作業工程の例を示す説明図である。同図に示す作業工程において、作業者(軌道の設置や、鉄道車両走行のための調整を行う者)は、まず、開通させる軌道の設計を行う(ステップS111)。特に、作業者は、当該軌道のレールを敷く位置を決定し、また、軌道に設ける各装置の仕様や設置場所を決定する。なお、ここでは、開通させる軌道が、勾配情報取得装置300による勾配情報取得対象の軌道に該当する。
次に、作業者は、ステップS111における設計に基づいて、施工(レールおよび各装置の設置や、装置間の配線等)を行う(ステップS112)。
例えば、作業者は、開通させる軌道の各位置における高度(例えば標高)を地図から読み取って、勾配変化点の位置と高度とを求める。そして、作業者は、開通させる軌道を勾配変化点毎に区切った各区間について、設計上の勾配を算出する。
但し、ステップS112の施工工程において、軌道が必ずしも設計どおりに施工されるとは限らない。このため、ステップS121で得られた設計上の勾配、ひいてはステップS122で生成された車上データは、誤差を含み得る。
そして、作業者は、ステップS122で生成した車上データを、ステップS132で得られた勾配情報に基づいて修正する(ステップS133)。例えば、作業者は、ステップS132で得られた勾配情報に基づいて、新たに車上データを生成しなおし、ステップS122で生成した車上データに置き換えて制御装置150に記憶させる。
実測データに基づいて得られた勾配情報から車上データを生成することで、より正確に鉄道車両(例えば鉄道車両100)を制御し得る。
より具体的には、勾配情報取得装置300は、試験走行データとして、モータ動作状況情報としてのノッチ段数指令値と、鉄道車両100の速度情報とを取得する。ここで、モータ140が制御装置150の制御に従って動作することで、鉄道車両100は、軌道の勾配の影響を受けながら走行する。そして、鉄道車両100は、制御装置150がモータ140を制御する際のノッチ段数指令値と、速度計130が測定した鉄道車両100の速度情報とを、勾配情報取得装置300に送信し、勾配情報取得装置300はこれらの情報を取得する。
例えば、勾配情報取得装置300は、式(1)に示される運動方程式を予め記憶している。
また、xドットは、時間による変数xの1階微分(すなわち、鉄道車両100の速度)を示し、xダブルドットは、時間による変数xの2階微分(すなわち、鉄道車両100の加速度)を示す。
また、関数f(xドット,n(t))は、モータ特性(力行・回生)を示し、関数n(t)は、時刻tにおけるモータ140に対する指令値を示す。この関数n(t)の値としては、モータ動作状況情報によって示される、時刻tにおけるノッチ段数指令値を用いる。
また、関数r(xドット)は、鉄道車両100が速度xドットで走行する際の、空気抵抗などの走行抵抗(勾配抵抗および回生抵抗を除く)を示す。また、関数b(t)は、時刻tにおいて鉄道車両100に作用する制動力を示す。
図4は、モータ140の特性の例を示す説明図である。同図に示すように、モータ140の速度vにおける加速度A(v)は、加速度の定数A0と、速度の定数V1およびV2とを用いて、式(2)のように示される。
なお、後述する、勾配を示す関数gの調整パラメータと同様、モータの特性を示すパラメータ定数(例えば、A0、V1およびV2)の値を、最適化手法を用いて求めるようにしてもよい。
また、関数rは、例えば、定数a、bおよびcを用いて式(3)のように記述される。
図5は、関数gの調整パラメータとしての勾配変化点の位置および高度の例を示す説明図である。同図において、定数x1、x2、x3は、それぞれ、勾配情報取得対象の軌道における距離を示し、定数y1、y2、y3は、それぞれ、x1、x2、x3の位置における軌道の高度を示す。
例えば、作業者が、軌道設計(図2のステップS111)に基づいて、勾配変化点を特定し、各勾配変化点における距離と高度とを調整パラメータとして関数gを設定して、勾配情報取得装置300(速度算出部323)に予め記憶させておく。
そして、勾配情報取得装置300(パラメータ値取得部324)は、式(5)に基づいて速度の計算値vsiの評価値J(評価関数J(x1、y1、x2、・・・、xm、ym)の値。但し、x1、y1、x2、・・・、xm、ymは、関数gの調整パラメータ)を算出する。
そして、勾配情報取得装置300(パラメータ値取得部324)は、準ニュートン法に基づいて、速度算出部323に計算値vsiの計算を繰り返し行わせ、評価値Jが最小となるパラメータ値(x1、y1、x2、・・・、xm、ymの値)を求める。
評価値Jが最小となるパラメータ値が求まると、勾配情報取得装置300(こう鉄道車両100)は、得られたパラメータ値に基づいて、軌道の各位置における勾配を求める。
図6は、勾配情報取得装置300が勾配情報を取得する処理手順を示すフローチャートである。同図の処理において、まず、通信部310が、試験走行データとして、鉄道車両100の速度情報(速度計130の測定値)と、モータ動作状況情報としてのノッチ段数指令値とを受信し、受信した試験走行データを、処理部320に出力する(ステップS211)。
そして、パラメータ値取得部324は、ステップS212で得られた鉄道車両100の速度の計算値vsiと、ステップS211で得られた鉄道車両100の速度の測定値viとの差を、式(5)に基づいて評価し(ステップS213)、評価値Jが最小か否かを判定する(ステップS214)。
一方、ステップS214において、評価値Jが最小であると判定した場合(ステップS214:YES)、パラメータ値取得部324は、当該速度計算時のパラメータ値(評価値Jの最小値が得られた際の、関数gのパラメータ値)を、勾配情報取得部325に出力し、勾配情報取得部325は、当該パラメータ値に基づいて、軌道の勾配を求める(ステップS215)。
その後、同図の処理を終了する。
これにより、鉄道車両100は、鉄道車両100の速度情報や、モータ140の動作状況を示す情報といった、通常の車両で取得可能な情報を取得すればよい。従って、鉄道車両100として、特殊な車両(専用の検測車)を必要とせず、営業用車両を用いることができるので、鉄道車両100の製造コストや輸送コストを抑えることができる。
また、勾配情報取得装置300が勾配情報を求めた軌道について、勾配を人手で測定する必要が無い。この点で、比較的短時間で勾配情報を得ることができる。そして、勾配情報取得装置300が、試験走行データに基づいて軌道の勾配を求めることで、より正確な勾配を得ることができる。
また、勾配情報取得装置300が、速度最小となるパラメータ値を求める際に用いる最適化手法は、準ニュートン法に限らない。例えば、最急降下法や、Nelder−Mead法など、様々な最適化手法を用いることができる。
また、運動方程式におけるパラメータ毎に、評価値Jに与える影響度(感度)が大きく異なる場合、影響度が同程度となるようにスケール合わせを行うようにしてもよい。
図7は、関数gの調整パラメータの、もう1つの例を示す説明図である。同図において、定数x1、x2、x3は、それぞれ、勾配情報取得対象の軌道における距離を示し、定数y1、y2、y3は、それぞれ、区間x1〜x2、x2〜x3、x3〜における軌道の勾配を示す。
例えば、作業者が、軌道設計(図2のステップS111)に基づいて、勾配変化点を特定し、各勾配変化点における距離と各区間における勾配とを調整パラメータとして関数gを設定して、勾配情報取得装置300(速度算出部323)に予め記憶させておく。
このように、関数gのパラメータとして、勾配変化点の位置および高度以外のパラメータを用いても、勾配情報取得装置300は、同様に軌道の勾配を求め得る。
図8は、勾配情報取得装置300が、速度計130の測定値を補正して用いる場合の、勾配情報取得システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図に示される構成では、図1に示される構成に加えて、処理部320が速度計補正部422を具備し、また、車上子120と地上子220とが明示されている。
なお、車上子120と地上子220とは、車上子120が地上子220に接近したこと(地上子220を踏んだこと)を検出可能な装置であればよい。例えば、車上子120と地上子220とは、それぞれ、デジタルATC(Automatic Train Control)などのATCにおける車上子と地上子(トランスポンダ)とであってもよい。従って、勾配測定のために専用の車上子や地上子を設けなくてよい。
例えば、速度計補正部422は、式(6)に基づいて評価値Jpが最小となる、速度計補正量cの値および車両初期位置誤差x0の値を求める。
但し、速度計補正部422が補正量を求める際の最適化手法は、最小二乗法に限らない。速度計補正部422が、他の非線形最適化手法を用いて補正量を求めるようにしてもよい。
例えば、勾配情報取得装置300が、鉄道車両100の走行開始直後の起動抵抗が大きく正確なモデル化を行えない場合、鉄道車両100の走行開始直後の区間を勾配情報取得対象から除外することで、より正確な勾配情報を求め得る。また、鉄道車両100の制動装置の特性を正確にモデル化できない場合、勾配情報取得装置300が、制動装置稼動区間(ブレーキがかけられた区間)を勾配情報取得対象から除外することで、より正確な勾配情報を求め得る。
区間決定部521は、勾配を求める対象の走行経路のうち勾配情報取得装置300が勾配(勾配情報)を求める区間を決定する。なお、区間決定部521が、勾配を求める対象の走行経路のうち勾配情報取得装置300が勾配(勾配情報)を求める区間を決定する処理ステップは、本発明における区間決定ステップに該当する。
ここで、時間a1は、鉄道車両100が走行を開始した直後の時間であり、起動抵抗が大きい。そこで、区間決定部521は、この時間a1に対応する区間を、勾配情報取得対象から除外している。また、時間a3および時間a5において、鉄道車両100の制動装置が稼動している。そこで、区間決定部521は、これら時間a3および時間a5に対応する区間を、勾配情報取得対象から除外している。そして、区間決定部521は、残りの区間(時間a2対応する区間、および、時間a4に対応する区間)を、勾配情報取得対象の区間として選択している。
また、各区間における初期値は、式(8)のように示される。
速度算出部323は、この運動方程式に基づいて、式(9)に示される鉄道車両100の速度の計算値vsjiを求める。
そして、パラメータ値取得部324は、式(10)に示される評価値J’のように、勾配情報取得対象の各区間において鉄道車両100の速度の計算値と測定値との差を評価する評価値を用いて、当該計算値と測定値の差を最小とするパラメータ値(勾配の関数gのパラメータ値)を求める。
なお、区間決定部521が勾配情報取得対象外に決定した区間は、例えば、人手で勾配の測定を行う。
この場合、試験走行を行う方向によって制動装置の稼動する区間が異なり、区間決定部521が、より多くの区間を勾配情報取得対象の区間に決定することが期待される。これにより、人手で勾配の測定を行う区間が減少し、より速やかに勾配情報を得られ、また、勾配の測定を行う人的負荷を軽減させることができる。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
100 鉄道車両
110 通信部
120 車上子
130 速度計
140 モータ
150 制御装置
220 地上子
300 勾配情報取得装置
310 通信部
320 処理部
323 速度算出部
324 パラメータ値取得部
325 勾配情報取得部
422 速度計補正部
521 区間決定部
Claims (7)
- 鉄道車両の速度の測定値を取得する速度測定値取得ステップと、
前記鉄道車両の走行経路の勾配を示す関数を含む運動方程式を用いて、前記鉄道車両の速度の計算値を求める速度算出ステップと、
前記速度の計算値と前記速度の測定値との差が最小となる、前記勾配を示す関数のパラメータ値を求めるパラメータ値取得ステップと、
前記パラメータ値取得ステップにて取得した、前記勾配を示す関数のパラメータ値に基づいて前記走行経路の勾配を求める勾配情報取得ステップと、
を具備することを特徴とする勾配情報取得方法。 - 前記速度測定値取得ステップは、
速度計による前記鉄道車両の速度の測定値を取得する速度計測定値取得ステップと、
前記鉄道車両が所定の位置を走行する時刻の情報を取得する走行時刻取得ステップと、
前記走行時刻取得ステップにて取得したデータに基づいて、前記速度計の測定値を補正して前記鉄道車両の速度の測定値を求める速度計測定値補正ステップと、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の勾配情報取得方法。 - 勾配を求める対象の走行経路のうち前記勾配情報取得方法にて勾配を求める区間を決定する区間決定ステップを具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の勾配情報取得方法。
- 前記区間決定ステップにて、前記勾配を求める対象の走行経路の両方向各々について前記勾配情報取得方法にて勾配を求める区間を決定することを特徴とする請求項3に記載の勾配情報取得方法。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の勾配情報取得方法を実行するステップと、
前記請求項1から4のいずれか一項に記載の勾配情報取得方法を実行するステップで得られた勾配を示す情報を記憶媒体に記憶するステップと、
を具備することを特徴とする、勾配情報記憶済記憶媒体を作成する方法。 - 鉄道車両の速度の測定値を取得する速度測定値取得部と、
前記鉄道車両の走行経路の勾配を示す関数を含む運動方程式を用いて、前記鉄道車両の速度の計算値を求める速度算出部と、
前記速度の計算値と当該速度の測定値との差が最小となる前記勾配を示す関数のパラメータ値を求めるパラメータ値取得部と、
前記パラメータ値取得部が取得した前記勾配を示す関数のパラメータ値に基づいて前記走行経路の勾配を求める勾配情報取得部と、
を具備することを特徴とする勾配情報取得装置。 - 勾配情報取得装置としてのコンピュータに、
鉄道車両の速度の測定値を取得する速度測定ステップと、
前記鉄道車両の走行経路の勾配を示す関数を含む運動方程式を用いて、前記鉄道車両の速度の計算値を求める速度算出ステップと、
前記速度の計算値と当該速度の測定値との差が最小となる前記勾配を示す関数のパラメータ値を求めるパラメータ値取得ステップと、
前記パラメータ値取得ステップにて取得した前記勾配を示す関数のパラメータ値に基づいて前記走行経路の勾配を求める勾配情報取得ステップと、
を実行させるためのプログラム。
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