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JP5946288B2 - 新規ヒドロキサム酸誘導体及びその用途 - Google Patents

新規ヒドロキサム酸誘導体及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、ヒストン脱メチル化酵素であるKDM7の阻害活性及び抗癌作用を有する新規ヒドロキサム酸誘導体、及び該誘導体を用いた医薬(特にKDM7阻害剤及び抗癌剤)に関する。
ヒストンは、真核生物においてDNAを折りたたんでクロマチン構造を形成するタンパク質であり、様々な酵素の働きによって化学修飾されている。これにより、クロマチン構造が変化し、遺伝子の発現が制御されると考えられている。近年、こうしたエピジェネティックな遺伝子制御に関する様々な知見が発見されている。
これらのなかでも、ヒストンリシン残基のメチル化は、エピジェネティックな遺伝子発現制御において中心的な役割を果たしている。ここで、メチル化されたヒストンリシン残基については、トリメチル化体、ジメチル化体及びモノメチル化体の3種のメチル化体が存在しており、クロマチン構造及び転写に関しては、それぞれのメチル化体が異なった影響を与えることが示唆されている。
ここで、ヒストンリシン残基のメチル化反応は、ヒストンメチル化酵素が担っている。従来、このヒストンのメチル化修飾は不可逆的な反応であると考えられていた。ところが最近、フランビン依存性ヒストン脱メチル化酵素、α−ケトグルタル酸依存性ヒストン脱メチル化酵素(JHDM)等が発見され、反応式(A):
Figure 0005946288
で示されるように、ヒストンリシン残基のメチル化及び脱メチル化は、メチル化酵素及び脱メチル化酵素による酵素的可逆反応により制御されていることが明らかとなった(非特許文献1)。
α−ケトグルタル酸依存性ヒストン脱メチル化酵素(JHDM)の生物学的機能の詳細については未だ明らかとなっておらず、特に、JHDMの一種であるKDM7(KDM7a、及び、KDM7b(PHF8とも言う))の詳細についてはほとんど明らかになっていない。しかしながら、siRNAによるKDM7の欠損は、骨肉種細胞の増殖を抑制することが明らかになった(非特許文献2)。また、前立腺癌細胞においてKDM7をノックダウンさせると、細胞増殖阻害がみられることも報告された(非特許文献3)。これらのことから、KDM7阻害剤(特にKDM7選択的阻害剤)は、その酵素の働きを調べるバイオプローブとして有効であるのみならず、新たな作用機序の抗癌剤等の治療薬としても期待できるため、活発に研究が進められている。
現在知られているJHDM阻害剤としては、
N−オキサリルグリシン(NOG):
Figure 0005946288
2,4−ピリジンジカルボン酸(PCA):
Figure 0005946288
等が知られている(非特許文献4及び5)。
しかしながら、これらの化合物は、JHDM阻害剤として知られているものの、KDM7阻害活性は低く、選択性にも乏しかった。
一方、JHDM阻害剤としては、本発明者らが発見したヒドロキサム酸誘導体(NCDM−32):
Figure 0005946288
等も知られている。
以上のように、現在知られているJHDM阻害剤は、KDM7阻害活性を十分有するとは言えず、また、選択性にも乏しい。そのため、バイオプローブとして使用することが困難であり、また、新たな作用機序の抗癌剤として使用するにも副作用のおそれが懸念される。
特開2011−168581号公報
Shi, Y. Nat. Rev. Genet. 2007, 8, 829. Weijun Feng et al, Nat. Struct. Mol. Biol. 2010, 17, 445. Bjorkman, M. et al, Oncogene 2011, 1. Cloos, P. A. et al, Nature 2006, 442, 307. Rose, N. R. et al, J. Med. Chem. 2008, 51, 7053.
以上のように、KDM7阻害活性を十分に有する化合物は、現在まで知られていない。また、抗癌剤として使用するためには、KDM7阻害活性を有するとともに、癌細胞の細胞膜を通過できるような化合物であることが要請される。
そのため、本発明は、ヒストン脱メチル化酵素であるKDM7の阻害活性及び癌細胞増殖抑制作用を有する新規ヒドロキサム酸誘導体、及び該誘導体を用いた医薬(特にKDM7阻害剤及び抗癌剤)を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する新規ヒドロキサム酸誘導体(下記一般式(I)で示される化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグ)が、KDM7を阻害する(特に選択的に阻害する)こと、この新規ヒドロキサム酸誘導体は、癌細胞の増殖を阻害することを見出した。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下に示す新規ヒドロキサム酸誘導体、並びにそれを用いたKDM7阻害剤及び医薬を包含する。
項1.一般式(I):
Figure 0005946288
[式中、Rは直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又はアリール基;nは6以上の整数である。]
で示される化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグ。
項1−1.KDM7が関与する疾患(特に癌)の予防又は治療用である項1に記載の化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグ。
項2.項1又は1−1に記載の化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグを含有する医薬。
項2−1.KDM7が関与する疾患(特に癌)の予防又は治療剤である、項2に記載の医薬。
項3.抗癌剤である、項2に記載の医薬。
項4.項1又は1−1に記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有するKDM7阻害剤。
項5.項1又は1−1に記載の化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグを含有する生物試験用試薬。
項6.項1又は1−1に記載の化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグの有効量を摂取又は投与する、KDM7が関与する疾患(特に癌)の予防又は治療方法。
項7.医薬(特にKDM7が関与する疾患(癌等)の予防又は治療剤)を製造するための項1又は1−1に記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の使用。
本発明の新規ヒドロキサム酸誘導体(上記一般式(I)で示される化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグ)は、KDM7を阻害(特に選択的に阻害)する作用を有している。このため、KDM7の阻害作用(特に選択的阻害作用)に基づくバイオプローブ、医薬(特に抗癌剤)等として有用である。実際、本発明の新規ヒドロキサム酸誘導体は、癌細胞の細胞膜を通過し、増殖を抑制する作用を有している。
試験例3における、ウェスタンブロッティングによるKDM7の阻害活性評価の結果を示す。
1.新規化合物(ヒドロキサム酸誘導体)
本発明の化合物は、一般式(I):
Figure 0005946288
[式中、Rは直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又はアリール基;nは6以上の整数である。]
で示される化合物である。
一般式(I)において、Rは直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又はアリール基である。
Rにおける直鎖アルキル基とは、炭素数1〜6(好ましくは1〜4)程度の直鎖アルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。Rが直鎖アルキル基である場合には、後述のC2nと合計で、炭素数9〜26程度のアルキル基を構成することが好ましい。
Rにおける分岐鎖アルキル基とは、炭素数3〜6(好ましくは3〜5)程度の分岐鎖アルキル基が好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基等が挙げられる。
Rにおける環状アルキル基とは、炭素数3〜10(好ましくは3〜7)程度の環状アルキル基が好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
Rにおけるアリール基とは、炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度のアリール基が好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
Rとしては、上記のうち、KDM7阻害活性の観点からは、メチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が好ましく、シクロプロピル基、シクロヘプチル基等が特に好ましい。
また、Rとしては、上記のうち、癌細胞(KYSE150細胞、Hela細胞等)増殖抑制活性の観点からは、分岐鎖アルキル基又は環状アルキル基が好ましく、特にイソプロピル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等がより好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が特に好ましい。
一般式(I)において、nは6以上の整数である。nを6以上の整数とすれば、十分なKDM7阻害活性を有するが、癌細胞増殖抑制活性を考慮すると、好ましくは7以上の整数である。このように、本発明の化合物において、アルキレン鎖を長くすることにより、KDM7阻害活性をより向上させるとともに、癌細胞増殖抑制作用を向上させることもできる。なお、nの上限値は特に制限されるわけではないが、通常20程度、好ましくは10程度である。
上記のなかでも、本発明の化合物としては、KDM7阻害活性の観点からは、
一般式(I−1):
Figure 0005946288
[式中、R’はメチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基又はシクロヘプチル基(特にシクロプロピル基又はシクロヘプチル基);nは6以上の整数(特に6〜10の整数)である。]
で示される化合物が好ましい。
上記のなかでも、本発明の化合物としては、癌細胞増殖抑制活性の観点からは、
一般式(I−2):
Figure 0005946288
[式中、R”は分岐鎖アルキル基又は環状アルキル基(なかでもイソプロピル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロヘプチル基(特にシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロヘプチル基));nは7以上の整数(特に7〜10の整数)である。]
で示される化合物が好ましい。
特に、後述の実施例1〜12で示す化合物が好ましい。
本発明の化合物は、上記一般式(I)で表される化合物、その塩、その水和物、その溶媒和物、そのプロドラッグ、光学異性体等のいずれをも包含する。また、本発明の化合物では、様々な結晶多形を取り得る。
塩としては、塩基付加塩が好ましく採用できる。
具体的には、本発明の化合物における酸性基である末端カルボキシル基に対して、薬学的に許容可能な塩基性化合物と塩を形成することができる。このような塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基塩、メグルミン塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩等の有機塩基塩等が挙げられる。
プロドラッグとは、化合物末端の基を別の基に置換することで生体内に吸収されやすくした化合物を言う。このプロドラッグは、生体内に吸収された後に加水分解されることで本発明の化合物を再生し、本発明の効果を奏する。
このようなプロドラッグとしては、例えば、一般式(I)で示される化合物において、末端のカルボキシル基のエステル化物、つまり末端のカルボキシル基を一般式(a):
−COOR
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基等)である。]
で示される構造の基とした化合物等が挙げられる。
また、一般式(I)で示される化合物において、ヒドロキサム酸の水酸基(窒素に結合した水酸基)のエステル化物、つまりヒドロキサム酸の水酸基を一般式(b):
−OR
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基等)である。]
で示される構造の基とした化合物等が挙げられる。
2.製造方法
一般式(I)で示される本発明の化合物は、例えば、以下の反応式(B):
Figure 0005946288
[式中、R及びnは前記に同じ;R及びRは同じか又は異なり、Rはカルボキシル基の保護基であり、Rはヒドロキサム酸の水酸基の保護基;Xはハロゲン原子;Mは金属原子]
により製造することができる。
前記反応式(B)において、Rはカルボキシル基の保護基であり、Rはヒドロキサム酸の水酸基の保護基である。これら保護基は、同じでもよいし、異なっていてもよい。保護基としては、特に制限されるわけではないが、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基等)、シリル基(tert−ブチルジフェニルシリル基等)、アルコキシアルキル基(メトキシメチル基等)、ベンジル基、トリフェニルメチル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
これら保護基は、一般式(6)で示される化合物を製造するまでの工程で脱保護されにくく、且つ、その後脱保護しやすい基が好ましい。具体的には、Rがアルキル基(特にメチル基、tert−ブチル基等)又はベンジル基等で、Rがベンジル基の組み合わせが好ましい。また、Rがtert−ブチル基で、Rがベンジル基の組み合わせが特に好ましい。
前記反応式(B)において、Xはハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、好ましくは臭素原子である。
前記反応式(B)において、Mは金属原子、好ましくはアルカリ金属原子(リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等)、特にナトリウム原子である。
[工程1:化合物(1)⇒化合物(2)]
Figure 0005946288
[式中、R〜Rは前記に同じである。]
この工程では、一般式(1)で示される化合物と、一般式(7):
NHOR
[Rは前記に同じである]
で示される化合物とを反応させればよい。
この際、一般式(7)で示される化合物として、安定性のために塩酸塩等の酸性物質を使用する場合には、第三級アミン(トリエチルアミン等)、無機塩基(炭酸カリウム等)等の塩基性物質も併用することが好ましい。
この反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等の環状エーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、ジオキサン等が好ましい。
この工程においては、一般式(7)で示される化合物の添加量は、一般式(1)で示される化合物1モルに対して1〜5モル程度とするのが好ましい。
この反応は、還流下に1〜48時間程度行うのが好ましい。また、反応雰囲気は、水を排した雰囲気とすることが好ましい。具体的には、不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等)が好ましい。
[工程2:化合物(3)⇒化合物(4)]
Figure 0005946288
[式中、X、M及びnは前記に同じである。]
この工程では、一般式(3)で示される化合物のカルボキシル基の末端を金属に置換する。一般式(3)で示される化合物をそのまま後述の工程3に使用すると、工程3で一般式(5)で示される化合物が得られないからである。具体的には、一般式(3)で示される化合物と金属アルコキシド、特にアルカリ金属アルコキシド(ナトリウムエトキシド等)とを反応させることが好ましい。
この反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒等が好ましい。
この工程においては、金属アルコキシドの添加量は、一般式(3)で示される化合物1モルに対して1〜5モル程度とするのが好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、0〜100℃程度が好ましい。反応時間は特に制限されないが、1〜24時間程度が好ましい。また、反応雰囲気は、特に制限されないが、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)、空気雰囲気等を採用できる。
[工程3:化合物(4)⇒化合物(5)]
Figure 0005946288
[式中、R、X、M及びnは前記に同じである。]
この工程では、一般式(4)で示される化合物に、金属化合物を用いて、一般式(4)で示される化合物中のハロゲンを所望の基に置換するとともに金属を水素で置換する。
金属化合物としては、マグネシウム化合物と銅化合物の混合試薬が好ましい。
マグネシウム化合物としては、例えば、一般式(8):
RMgX
[式中、Rは前記に同じ;Xはハロゲン原子を示す。]
で表されるアルキルマグネシウム化合物が挙げられる。
は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)であり、好ましくは臭素原子である。
上記のアルキルマグネシウム化合物は、通常、テトラヒドロフラン等の不活性溶媒中、アルキルハライドとマグネシウム金属(Mg)とを反応させて得られるグリニャール試薬を用いることができ、公知の方法を採用することができる。
また、銅化合物としては、LiCuCl、CuCl、CuBr、CuI等を使用できる。
この反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、テトラヒドロフラン等が好ましい。
この工程においては、金属化合物の添加量は、一般式(4)で示される化合物1モルに対して1〜5モル程度とするのが好ましい。マグネシウム化合物と銅化合物の混合試薬を使用する場合には、マグネシウム化合物と銅化合物の量をそれぞれ1〜5モル程度とするのが好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、−50〜50℃程度が好ましい。反応時間は特に制限されないが、1〜24時間程度が好ましい。また、反応雰囲気は、水を排した雰囲気とすることが好ましい。具体的には、不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等)が好ましい。
Rがともに直鎖アルキル基である一般式(5)で示される化合物については、市販品を使用することも可能である。
[工程4:化合物(2)+化合物(5)⇒化合物(6)]
Figure 0005946288
[式中、R、R、R及びnは前記に同じである。]
この工程では、一般式(2)で示される化合物と一般式(5)で示される化合物とを縮合反応させる。この際、公知の縮合剤として、カルボジイミド化合物、トリアゾール化合物等を共存させてもよい。
この反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、ジメチルホルムアミド等が好ましい。
この工程においては、一般式(5)で示される化合物の添加量は、一般式(2)で示される化合物1モルに対して1〜5モル程度とするのが好ましい。また、縮合剤の添加量は、一般式(2)で示される化合物1モルに対して1〜5モル程度とするのが好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、0〜100℃程度が好ましい。反応時間は特に制限されないが、1〜24時間程度が好ましい。また、反応雰囲気は、特に制限されないが、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)、空気雰囲気等を採用できる。
[工程5:化合物(6)の脱保護]
以上のように一般式(6)で示される化合物を得た後、保護基であるR及びRを脱保護することにより、一般式(I)で示される本発明の化合物を得ることができる。また、R及びRの片方のみを脱保護した化合物を得た場合、脱保護していない保護基がアルキル基の場合には、得た化合物はプロドラッグとして使用し得る。
脱保護は、公知の方法を採用することができる。例えば、保護基がベンジル基の場合、水素/Pd−C、金属ナトリウム/アンモニア、ヨウ化トリメチルシラン、水素化リチウムアルミニウム、三臭化ホウ素、三フッ化ホウ素等と反応させるのが好ましい。また、保護基がtert−ブチル基の場合、トリフルオロ酢酸、ジクロロメタン、塩酸等と反応させるのが好ましい。保護基がメチル基の場合、三フッ化ホウ素、ヨウ化トリメチルシラン、ピリジン塩酸塩等と反応させるのが好ましい。
また、本発明の化合物を得た後、公知の方法により、塩、水和物、溶媒和物、プロドラッグ等を得ることができる。
3.KDM7阻害剤及び医薬
本発明は、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物(ヒドロキサム酸誘導体)を含む医薬製剤(医薬組成物)をも提供する。かかる医薬製剤は、薬学的に許容される添加物、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の通常用いられる希釈剤又は賦形剤を使用して、本発明の化合物を一般的な医薬製剤に配合することにより得られる。
本発明による医薬製剤の投与経路は限定されず、この製剤は、製剤の形態、患者の年齢及び性別、疾患の状態並びにその他の条件に応じた方法で投与することができる。例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤を経口で投与する。注射剤は静脈内、筋肉内、皮内、皮下若しくは腹腔内に投与する。坐剤は直腸内に投与する。
本発明の医薬の投与量は、薬効を発現する有効量であれば特に限定されないが、通常は、有効成分である一般式(I)で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物(ヒドロキサム酸誘導体)の重量として、一般に経口投与の場合には一日あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5〜50mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2〜3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
本発明の一般式(I)で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物(ヒドロキサム酸誘導体)は、従来の化合物では認識されていないKDM7(KDM7a及びKDM7b)を阻害する作用(特に選択的に阻害する作用)を有しているため、KDM7(KDM7a及びKDM7b)の阻害作用(特に選択的阻害作用)に基づく医薬として有用である。特に、癌の予防及び/又は治療剤等として有用である。また、本発明の一般式(I)で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物(ヒドロキサム酸誘導体)は、従来の化合物では認識されていないKDM7(KDM7a及びKDM7b)を阻害する作用(特に選択的に阻害する作用)を有しているため、その酵素の働きを調べるバイオプローブとしても有用である。
次に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1:3−(N−ヒドロキシ−10−メチルウンデカンアミド)プロパン酸(NCDM−53a)
Figure 0005946288
以下の経路にしたがい、目的化合物を得た。
Figure 0005946288
具体的には以下のとおりである。
工程1:3-(ベンジルオキシアミノ)プロパン酸tertブチル(2a)
アクリル酸tertブチル(1a; 11.5 g)、O-ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩(4.8 g)、トリエチルアミン(5 mL)を1,4-ジオキサン(50 mL)に溶解し、22時間加熱還流した。反応液に水(50 mL)を加え、酢酸エチル(200 mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50 mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製し、表題化合物(3.3 g, 収率44%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.35 (5H, m), 5.83 (1H, broad s), 4.70 (2H, s), 3.17 (2H, m), 2.50 (2H, m), 1.44 (9H, s)。
工程2:9-ブロモノナン酸ナトリウム塩(4a)
9-ブロモノナン酸(3a; 960 mg)をエタノール(10 mL)に溶解し、ナトリウムエトキシド(約20%エタノール溶液, 1.38 g)を加え、室温で1.5時間攪拌した。濃縮後、析出物をジエチルエーテルで洗浄し、70℃で減圧下乾燥し、表題化合物(991 mg, 収率94%)を得た。
1H NMR (CD3OD, 500 MHz, δ; ppm) 3.42 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.14 (2H, t, J= 7.6 Hz), 1.86-1.80 (2H, m), 1.59 (2H, m), 1.43 (2H, m), 1.33 (6H, m)。
工程3:10-メチルウンデカン酸(5a)
前工程で得られた9-ブロモノナン酸ナトリウム塩(4a; 500 mg)を無水THF(3.0 mL)に懸濁させ、0.1Mテトラクロロ銅(II)ジリチウム溶液(200μL)を加え、-10℃で攪拌した。その後、0.75Mイソプロピルマグネシウムブロマイド溶液(3.9 mL)を滴下し、-10℃でさらに2時間攪拌した。水(20 mL)を加え、ジエチルエーテル(50 mL)で抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)で洗浄した。水層に2N塩酸(50 mL)を加え酸性にした後、ジエチルエーテル(100 mL)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後減圧濃縮し、表題化合物(113 mg, 収率29%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 9.70 (1H, broad s), 2.35 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.67-1.61 (2H, m), 1.51 (1H, sep, J= 6.4 Hz),1.32-1.12 (12H, m), 0.86 (6H, d, J = 6.4 Hz) 。
工程4:3-(N-ベンジルオキシ-10-メチルウンデカンアミド)プロパン酸tertブチル(6a)
前工程で得られた10-メチルウンデカン酸(5a; 190 mg)および工程1で得られた3-(ベンジルオキシアミノ)プロパン酸tertブチル(2a; 239 mg)をジメチルホルムアミド(2.0 mL)に溶解し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(274 mg)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(193 mg)を加え、80℃で17時間攪拌した。反応液に水(2.0 mL)を加え、酢酸エチル(30 mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(20 mL)で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:酢酸エチル=5:1)で精製し、表題化合物(448 mg, 収率定量的(q.y.))を得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.38 (5H, m), 4.82 (2H, s), 3.91 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.53 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.35 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.56-1.48 (3H, m), 1.41 (9H, s), 1.25 (10H, m), 1.15-1.12 (2H, m), 0.86 (6H, d, J = 6.7 Hz)。
工程5:3-(N-ヒドロキシ-10-メチルウンデカンアミド)プロパン酸tertブチル(6b)
前工程で得られた3-(N-ベンジルオキシ-10-メチルウンデカンアミド)プロパン酸tertブチル(6a; 442 mg)を酢酸エチル(12 mL)に溶解し、5%パラジウム炭素(240 mg)を加え、水素雰囲気下、室温で1.5時間攪拌した。反応液をセライトで濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=1:2)で精製し、表題化合物(257 mg, 収率73%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.86 (2H, m), 2.65 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.46-2.40 (2H, m), 1.58 (2H, m), 1.55-1.48 (1H, sep, J = 6.7 Hz), 1.46 (9H, s), 1.30-1.25 (10H, m), 1.15-1.12 (2H, m), 0.86 (6H, d, J = 6.7 Hz)。
工程6:3-(N-ヒドロキシ-10-メチルウンデカンアミド)プロパン酸(NCDM−53a)
前工程で得られた3-(N-ヒドロキシ-10-メチルウンデカンアミド)プロパン酸tertブチル(6b; 250 mg)をジクロロメタン(1.0 mL)に溶解し、氷冷下で4N塩酸ジオキサン溶液(1.0 mL)を滴下した。その後、室温で13時間攪拌し、反応液を減圧濃縮し、表題化合物(213 mg, 収率定量的(q.y.))を白色固体として得た。
mp 73-77℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.94 (2H, m), 2.80 (2H, m), 2.47-2.42 (2H, m), 1.64 (2H, m), 1.51 (1H, sep, J = 6.7 Hz), 1.30-1.25 (10H, m), 1.15 (2H, m), 0.86 (6H, d, J = 6.4 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 177.12, 174.49, 44.59, 39.04, 32.45, 31.42, 29.88, 29.54, 29.38, 27.98, 27.39, 25.30, 24.62, 22.66; MS (FAB) m/z 288 (MH+); HRMS calcd. for C15H30O4N, 288.21748, found 288.21602; HPLC tR = 13.12 min (Gradient (I), purity 97.1%)。
実施例1の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7a:2.9 μM
KDM7b:16.3 μM
JMJD2A:92 μM
JMJD2C:55 μM
JARID1A:115 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:33 μM
Hela:26 μM
であった。
実施例2:3−(N−ヒドロキシ−10−メチルウンデカンアミド)プロパン酸メチル(NCDM−53b)
Figure 0005946288
アクリル酸tertブチルの代わりにアクリル酸メチルを用い、実施例1の工程1〜5と同様の方法により表題化合物(総収率11%)を黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.94 (2H, m), 3.73 (3H, s), 2.75 (2H, m), 2.47 (2H, m), 1.59 (4H, m), 1.51 (1H, sep, J = 6.7 Hz), 1.30-1.25 (8H, m), 1.15 (2H, m), 0.86 (2H, d, J = 6.7 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 52.39, 44.59, 39.04, 32.57, 29.88, 29.54, 29.39, 27.98, 27.39, 25.30, 24.68, 22.66; MS (EI) m/z301 (MH+); HRMS calcd. for C16H31O4N, 301.22531, found 301.22442; HPLC tR= 11.81 min (Gradient (II), purity 97.9%)。
実施例2の化合物について、後述の試験例2を行ったところ、
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:23 μM
Hela:22 μM
であった。
実施例3:3−(N−ヒドロキシ−8−メチルノナンアミド)プロパン酸(NCDM−54a)
Figure 0005946288
10-メチルウンデカン酸の代わりに8-メチルノナン酸を用い、実施例1の工程4〜6と同様の方法により表題化合物(総収率47%)を白色固体として得た。
mp 73-74℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.94 (2H, m), 2.80 (2H, m), 2.47-2.42 (2H, m), 1.63 (2H, m), 1.51 (1H, sep, J = 6.7 Hz), 1.33-1.28 (6H, m), 1.17-1.14 (2H, m), 0.86 (6H, d, J= 6.7 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 177.05, 174.24, 44.31, 38.97, 32.43, 31.36, 29.62, 29.38, 27.95, 27.24, 25.29, 24.65, 22.64; MS (FAB) m/z 260 (MH+); HRMS calcd. for C13H26O4N, 260.18618, found 260.18483; HPLC tR= 10.26 min (Gradient (I), purity 98.3%)。
実施例3の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:17.4 μM
JMJD2A:79 μM
JMJD2C:57 μM
JARID1A:116 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:94 μM
Hela:160 μMより大きい
であった。
実施例4:3−(N−ヒドロキシ−9−メチルデカンアミド)プロパン酸(NCDM−55a)
Figure 0005946288
9-ブロモノナン酸の代わりに8-ブロモオクタン酸を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物(総収率42%)を白色固体として得た。
mp 78-79℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.93 (2H, m), 2.80 (2H, m), 2.47-2.42 (2H, m), 1.62 (2H, m), 1.51 (1H, sep, J = 6.7 Hz), 1.31-1.26 (8H, m), 1.15 (2H, m), 0.86 (6H, d, J = 6.7 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 177.10, 174.43, 44.61, 39.02, 32.45, 31.42, 29.76, 29.40, 27.97, 27.36, 25.30, 24.62, 22.66; MS (FAB) m/z 274 (MH+); HRMS calcd. for C10H20O4N2, 274.20183, found 274.20331; HPLC tR = 12.78 min (Gradient (I), purity 96.7%)。
実施例4の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:14.5 μM
JMJD2A:120 μM
JMJD2C:49 μM
JARID1A:56 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:29μM
Hela:40μM
であった。
実施例5:3−(N−ヒドロキシ−11−メチルドデカンアミド)プロパン酸(NCDM−56a)
Figure 0005946288
9-ブロモノナン酸の代わりに10-ブロモデカン酸を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物(総収率23%)を白色固体として得た。
mp 86-88℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.94 (2H, m), 2.80 (2H, m), 2.42 (2H, m), 1.65 (2H, m), 1.51 (1H, sep, J = 6.7 Hz), 1.30-1.25 (12H, m), 1.15 (2H, m), 0.86 (6H, d, J = 6.7 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 173.86, 44.69, 44.24, 39.06, 32.45, 31.01, 29.93, 29.67, 29.51, 29.38, 27.98, 27.42, 25.26, 22.67; MS (FAB) m/z 302 (MH+); HRMS calcd. for C16H32O4N, 302.23313, found 302.23263; HPLC tR = 18.43 min (Gradient (I), purity 95.8%)。
実施例5の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:13.9 μM
JMJD2A:110 μM
JMJD2C:120 μM
JARID1A:170 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:18 μM
Hela:29 μM
であった。
実施例6:3−(N−ヒドロキシ−12−メチルトリデカンアミド)プロパン酸(NCDM−57a)
Figure 0005946288
9-ブロモノナン酸の代わりに11-ブロモウンデカン酸を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物(総収率32%)を白色固体として得た。
mp 89-90℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.93 (2H, m), 2.79-2.76 (2H, m), 2.47-2.42 (2H, m), 1.63 (2H, m), 1.51 (1H, sep, J = 6.7 Hz), 1.30-1.26 (14H, m), 1.15 (2H, m), 0.86 (6H, d, J = 6.7 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 177.15, 174.55, 44.59, 39.07, 33.73, 32.45, 29.95, 29.71, 29.65, 29.53, 29.38, 27.98, 27.43, 25.29, 24.71, 22.67; MS (FAB) m/z 316 (MH+); HRMS calcd. for C17H34O4N, 316.24878, found 316.24720; HPLC tR = 21.75 min (Gradient (I), purity 95.3%)。
実施例6の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:15.4 μM
JMJD2A:120 μMより大きい
JMJD2C:79 μM
JARID1A:314 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:27 μM
Hela:31 μM
であった。
実施例7:3−(N−ヒドロキシ−デカンアミド)プロパン酸(NCDM−58a)
Figure 0005946288
10-メチルウンデカン酸の代わりにデカン酸を用い、実施例1の工程4〜6と同様の方法により表題化合物(総収率24%)を白色固体として得た。
mp 84-85℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.93 (2H, m), 2.80-2.76 (2H, m), 2.47-2.42 (2H, m), 1.61 (2H, m), 1.30-1.27 (12H, m), 0.88 (3H, t, J = 7.0 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 177.20, 174.61, 44.50, 32.42, 31.88, 31.60, 29.46, 29.37, 29.28, 25.31, 24.66, 22.67, 14.11; MS (FAB) m/z 260 (MH+); HRMS calcd. for C13H26O4N, 260.18618, found 260.18719; HPLC tR= 10.37 min (Gradient (I), purity 96.8 %)。
実施例7の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:11.7 μM
JMJD2A:100 μM
JMJD2C:32 μM
JARID1A:64 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:55 μM
Hela:109 μM
であった。
実施例8:3−(N−ヒドロキシ−9−シクロヘキシルノナンアミド)プロパン酸(NCDM−59a)
Figure 0005946288
イソプロピルマグネシウムブロマイド溶液の代わりにシクロヘキシルマグネシウムブロマイド溶液を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物(総収率47%)を白色固体として得た。
mp 94-96℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.94 (2H, m), 2.81 (2H, m), 2.43 (2H, m), 1.69-1.67 (7H, m), 1.26-1.17 (16H, m), 0.86 (2H, m);13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 174.35, 168.35, 44.57, 44.33, 37.68, 37.55, 33.47, 32.20, 31.36, 31.04, 29.94, 29.53, 29.37, 26.86, 26.78, 26.47, 25.31, 24.63; MS (FAB) m/z 328 (MH+); HRMS calcd. for C18H34O4N, 328.24878, found 328.25015; HPLC tR = 21.86 min (Gradient (I), purity 97.8%)。
実施例8の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:15.3 μM
JMJD2A:120 μMより大きい
JMJD2C:81 μM
JARID1A:89 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:19 μM
Hela:21 μM
であった。
実施例9:3−(N−ヒドロキシ−9−フェニルノナンアミド)プロパン酸(NCDM−60a)
Figure 0005946288
以下の経路にしたがい、目的化合物を得た。9-フェニルノナン酸を得た後、該化合物を用いて目的化合物を得た。
Figure 0005946288
具体的には以下のとおりである。
工程3’:9-フェニルノナン酸
実施例1の工程2で得られた9-ブロモノナン酸ナトリウム塩(4a; 1.0 g)、トリス(2,4-ペンタンジオナト鉄)(III)(67 mg)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(44 mg)、ヘキサメチレンテトラミン(27 mg)を無水テトラヒドロフラン(6.0 mL)に懸濁させ、氷冷下で1.0Mフェニルマグネシウムブロマイド(4.9 mL)を20分かけて滴下した。2.5時間攪拌した後、水(15 mL)を加え、ジエチルエーテル(40 mL)で抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)で洗浄した。水層に2N塩酸(50 mL)を加え酸性にした後、ジエチルエーテル(100 mL)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後減圧濃縮し、表題化合物(610 mg, 収率67%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.29-7.25 (2H, m), 7.18-7.16 (3H, m), 2.60 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.34 (2H, m), 1.64-1.61 (4H, m), 1.39-1.28 (8H, m)。
工程4’:3−(N−ヒドロキシ−9−フェニルノナンアミド)プロパン酸(NCDM−60a)
次に、10-メチルウンデカン酸の代わりに工程3’で得られた9-フェニルノナン酸を用い、実施例1の工程4〜6と同様の方法により表題化合物(総収率33%)を白色固体として得た。
mp 87-88℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.18-7.17 (5H, m), 3.93 (2H, m), 2.80 (2H, m), 2.59 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.46-2.41 (2H, m), 1.60 (4H, m), 1.31 (8H, m); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 177.15, 174.53, 142.88, 128.40, 128.23, 125.57, 44.40, 35.96, 31.83, 31.47, 29.34, 29.27, 29.16, 25.28, 24.68, 22.65; MS (FAB) m/z 322 (MH+); HRMS calcd. for C18H28O4N, 322.20183, found 322.20252; HPLC tR = 15.19 min (Gradient (I), purity 96.1%)。
実施例9の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:28.1 μM
JMJD2A:65 μM
JMJD2C:22 μM
JARID1A:85 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:41 μM
Hela:67 μM
であった。
実施例10:3−(N−ヒドロキシ−9−シクロペンチルノナンアミド)プロパン酸(NCDM−62a)
Figure 0005946288
イソプロピルマグネシウムブロマイド溶液の代わりにシクロペンチルマグネシウムブロマイド溶液を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物(総収率30%)を白色固体として得た。
mp 101-102℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.93 (2H, m), 2.79 (2H, m), 2.42 (2H, m), 1.72 (4H, m), 1.60-1.55 (3H, m), 1.53-1.48 (2H, m), 1.30-1.26 (12H, m), 1.06-1.04 (2H, m); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 176.76, 174.28, 44.62, 44.23, 40.18, 36.26, 32.74, 32.44, 32.17, 31.32, 31.05, 29.90, 29.53, 29.38, 28.79, 25.21, 24.62; MS (FAB) m/z 314 (MH+); HRMS calcd. for C17H32O4N, 314.23313, found 314.23329; Anal. Calcd. for C17H31NO4: C, 65.14; H, 9.97; N, 4.47. Found: C, 64.75; H, 9.95; N, 4.53。
実施例10の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:73.4 μM
JMJD2A:120 μMより大きい
JMJD2C:78 μM
JARID1A:28 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:9.4 μM
Hela:20 μM
であった。
実施例11:3−(N−ヒドロキシ−9−シクロヘプチルノナンアミド)プロパン酸(NCDM−63a)
Figure 0005946288
イソプロピルマグネシウムブロマイド溶液の代わりにシクロヘプチルマグネシウムブロマイド溶液を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物(総収率32%)を白色固体として得た。
mp 86-87℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.94 (2H, m), 2.79 (2H, m), 2.41 (2H, m), 1.68-1.55 (8H, m), 1.49-1.37 (5H, m), 1.30-1.25 (10H, m), 1.18-1.11 (4H, m); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 174.01, 168.27, 60.43, 44.57, 44.25, 39.28, 38.24, 34.68, 32.17, 31.32, 31.04, 29.96, 29.55, 29.37, 28.58, 27.42, 26.59, 25.29, 24.63; MS (FAB) m/z 342 (MH+); HRMS calcd. for C19H36O4N, 342.26443, found 342.26507; HPLC tR = 20.82 min (Gradient (III), purity 98.7%)。
実施例11の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:5.1 μM
JMJD2A:99 μM
JMJD2C:120 μMより大きい
JARID1A:55 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:14 μM
Hela:14 μM
であった。
実施例12:3−(N−ヒドロキシ−9−シクロプロピルノナンアミド)プロパン酸(NCDM−64a)
Figure 0005946288
イソプロピルマグネシウムブロマイド溶液の代わりにシクロプロピルマグネシウムブロマイド溶液を用い、実施例1と同様の方法により表題化合物(総収率13%)を白色固体として得た。
mp 86-87℃; 1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.94 (2H, m), 2.79 (2H, m), 2.42 (2H, m), 1.64 (4H, m), 1.37-1.29 (10H, m), 1.19-1.15 (2H, m), 0.64 (1H, m), 0.40-0.36 (2H, m); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm); 176.88, 173.92, 44.62, 44.26, 38.06, 34.75, 29.63, 29.47, 29.36, 26.50, 25.27, 24.63, 10.96, 4.36; MS (FAB) m/z 286 (MH+); HRMS calcd. for C15H28O4N, 286.20183, found 286.20242; HPLC tR = 10.27 min (Gradient (II), purity 96.1%)。
実施例12の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7b:0.7 μM
JMJD2A:120 μMより大きい
JMJD2C:83 μM
JARID1A:55 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:16 μM
Hela:40 μM
であった。
比較例1:N−オクサリルグリシン(NOG)
Figure 0005946288
公知のJHDM阻害剤であるN−オキサリルグリシン(NOG)を比較例1とした。
比較例1の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7a:100 μMより大きい
KDM7b:250 μMより大きい
JMJD2A:253 μM
JMJD2C:523 μM
JARID1A:637 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:238 μMより大きい
Hela:714 μMより大きい
であった。
比較例2:2,4−ピリジンジカルボン酸(PCA)
Figure 0005946288
公知のJHDM阻害剤である2,4−ピリジンジカルボン酸(PCA)を比較例2とした。
比較例2の化合物について、後述の試験例1及び2を行ったところ、
試験例1:酵素阻害活性試験
KDM7a:100 μMより大きい
KDM7b:250 μMより大きい
JMJD2A:4.2 μM
JMJD2C:6.1 μM
JARID1A:104 μM
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:238 μMより大きい
Hela:238 μMより大きい
であった。
比較例3:3−(N−ヒドロキシ−7−メチルオクタンアミド)プロパン酸(NCDM−28a)
Figure 0005946288
特許文献1の実施例21で得た化合物(NCDM−28a)を比較例3とした。
比較例3の化合物について、後述の試験例2を行ったところ、
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:290 μM
Hela:350 μM
であった。
比較例4:3−{[9−(ジメチルアミノ)ノナノイル](ヒドロキシ)アミノ}プロパン酸(NCDM−32a)
Figure 0005946288
特許文献1の実施例6で得た化合物(NCDM−32a)を比較例4とした。
比較例4の化合物について、後述の試験例12を行ったところ、
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
KYSE150:476 μMより大きい
Hela:476 μMより大きい
であった。
試験例1:酵素阻害活性試験
実施例1〜12及び比較例1〜2の化合物について、KDM7a、KDM7b、JMJD2A、JMJD2C及びJARID1Aの阻害活性試験を行った。結果を表1に示す。
(1)KDM7a
KDM7aは、全長のC末端にFLAGタグを付加した組換えタンパク質をコードするバキュロウイルスを作製し、それを感染させた昆虫細胞を用いて発現させた。感染昆虫細胞をホモジェナイザーで溶解し、その可溶性画分を抗FLAG抗体アフィニティークロマトグラフィーに供することにより、精製KDM7a酵素を取得した。
KDM7aの酵素活性は、KDM7aの脱メチル化反応により生成するホルムアルデヒドをNASH試薬(0.2% 2,4-ペンタンジオン、0.1M酢酸、3.89M酢酸アンモニウム)を用いて変換させたジアセチルジヒドロルチジンの定量により測定した。1.5mlチューブ内で、50mM Hepes-KOHバッファー(pH8.0)、70μM FeSO4(NH4)2・6H2O、2mMアスコルビン酸、100μM 2-オキソグルタル酸、1μgコアヒストン(ヒストンH3の9番目のリシン残基がトリチウムラベルしたメチル基で修飾されている)、0.4mg/ml KDM7aからなる50μlの溶液を37℃で1時間インキュベート後、酵素反応を測定した。化合物による阻害活性は、ジメチルスルホキシド添加時の酵素活性を100%として残存活性を測定し、その50%の活性を阻害する濃度(IC50)で示した。なお、比較例4については、濃度100μMの際の阻害活性が60%であった。
(2)KDM7b
KDM7b酵素の活性領域を含む1-610aa部分のN末端にグルタチオンS-トランスフェラーゼを付加した組換えタンパク質をコードする遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを構築し、昆虫細胞に感染させた。感染させた昆虫細胞を超音波処理で溶解し、その可溶性画分をグルタチオンセファロース4Bに結合させて洗浄後、溶出することにより、精製KDM7b酵素を取得した。
KDM7bの酵素活性は、KDM7bの脱メチル化反応の基質として用いた合成メチル化ペプチドのメチル基の脱離をMALDI-TOF質量分析法で解析することにより測定した。0.2mlチューブ内に、10mM Tris-HClバッファー(pH8.0)、150mM KCl、2.5%グリセロール、0.5mMジチオスレイトール、0.05mMフッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)、2.5mMグルタチオン還元型、20μM (+)-iron(II)-L-アスコルビン酸、20μM ZnCl2、0.5mMアスコルビン酸、0.5mM 2-オキソグルタル酸、5μMヒストンH3-リシン4トリメチル/リシン9ジメチルペプチド、0.5mg/ml KDM7bからなる8μlの溶液を37℃で1時間反応させた。この溶液にマトリクス溶液(5mg/ml α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸、37% アセトニトリル、0.12% トリフルオロ酢酸)75μlを加え、30秒間ソニケーション後、1μlをMALDIサンプルプレートにスポットし、風乾した。このプレートをVoyager DE-Pro MALDI-TOF質量分析計(Applied Biosystems社)にセットし、合成メチル化ペプチド基質の脱メチル化反応産物を測定した。化合物による阻害活性は、ジメチルスルホキシド添加時の酵素活性を100%として残存活性を測定し、その50%の活性を阻害する濃度(IC50)で示した。
(3)JMJD2A
JMJD2A酵素は、活性領域を含む1-350aa部分のN末端に6個の連続するヒスチジン残基を含むタグペプチドを付加した組換えタンパク質をコードするプラスミドで形質転換した大腸菌を用いて発現させた。組換え大腸菌を超音波処理で溶解し、その可溶性画分をHisTrapクロマトグラフィーに供することにより、精製JMJD2A酵素を取得した。
JMJD2Aの酵素活性は、JMJD2Aの脱メチル化反応の際に生成するホルムアルデヒドをホルムアルデヒド脱水素酵素により酸化させることで生じる3-アセチルピリジン-アデニンジヌクレオチド(APADH)で定量することにより測定した。384ウエルマイクロタイタープレート内で、20mM Hepes-KOHバッファー(pH7.5)、70μM FeSO4(NH4)2・6H2O、2mMアスコルビン酸、100μg/mlウシ血清アルブミン、0.1mg/ml E.coliホルムアルデヒド脱水素酵素、1mMグルタチオン還元型、1mM 3-アセチルピリジン-アデニンジヌクレオチド酸化型、200μM 2-オキソグルタル酸、50μMヒストンH3-リシン9トリメチルペプチド、0.37mg/ml JMJD2Aからなる30μlの溶液を室温で30分間、経時的に酵素反応を測定した。酵素活性はSpectraMax M2e plate reader (Molecular Devices社)を用いて、生成物の蛍光分析(excitation 370nm、emission 465nm)により測定した。化合物による阻害活性は、ジメチルスルホキシド添加時の酵素活性を100%として残存活性を測定し、その50%の活性を阻害する濃度(IC50)で示した。
(4)JMJD2C
JMJD2C酵素は、活性領域を含む1-350aa部分のN末端に6個の連続するヒスチジン残基を含むタグペプチドを付加した組換えタンパク質をコードするプラスミドで形質転換した大腸菌を用いて発現させた。組換え大腸菌を超音波処理で溶解し、その可溶性画分をHisTrapクロマトグラフィーに供することにより、精製JMJD2C酵素を取得した。
JMJD2Cの酵素活性は、JMJD2Cの脱メチル化反応の際に生成するホルムアルデヒドをホルムアルデヒド脱水素酵素により酸化させることで生じる3-アセチルピリジン-アデニンジヌクレオチド(APADH)で定量することにより測定した。384ウエルマイクロタイタープレート内で、20mM Hepes-KOHバッファー(pH7.5)、70μM FeSO4(NH4)2・6H2O、2mMアスコルビン酸、100μg/mlウシ血清アルブミン、0.1mg/ml E.coliホルムアルデヒド脱水素酵素、1mMグルタチオン還元型、 1mM 3-アセチルピリジン-アデニンジヌクレオチド酸化型、200μM 2-オキソグルタル酸、50μMヒストンH3-リシン9トリメチルペプチド、0.6mg/ml JMJD2Cからなる30μlの溶液を室温で30分間、経時的に酵素反応を測定した。酵素活性はSpectraMax M2e plate reader (Molecular Devices社)を用いて、生成物の蛍光分析(excitation 370nm、emission 465nm)により測定した。化合物による阻害活性は、ジメチルスルホキシド添加時の酵素活性を100%として残存活性を測定し、その50%の活性を阻害する濃度(IC50)で示した。
(5)JARID1A
JARID1A酵素の活性領域を含む1-797aa部分のN末端に6個の連続するヒスチジン残基を含むタグペプチドを付加した組換えタンパク質をコードする遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを構築し、昆虫細胞に感染させた。感染させた昆虫細胞を超音波処理で溶解し、その可溶性画分をHisTrapクロマトグラフィーに供することにより、精製JARID1A酵素を取得した。
JARID1Aの酵素活性は、JARID1Aの脱メチル化反応の際に生成するホルムアルデヒドをホルムアルデヒド脱水素酵素により酸化させることで生じる3-アセチルピリジン-アデニンジヌクレオチド(APADH)で定量することにより測定した。384ウエルマイクロタイタープレート内で、20mM Hepes-KOHバッファー(pH7.5)、70μM FeSO4(NH4)2・6H2O、2mMアスコルビン酸、100μg/mlウシ血清アルブミン、0.1mg/ml E.coliホルムアルデヒド脱水素酵素、1mMグルタチオン還元型、 1mM 3-アセチルピリジン-アデニンジヌクレオチド酸化型、200μM 2-オキソグルタル酸、50μM ヒストンH3-リシン4トリメチルペプチド、0.64mg/ml JARID1Aからなる30μlの溶液を室温で30分間、経時的に酵素反応を測定した。酵素活性はSpectraMax M2e plate reader (Molecular Devices社)を用いて、生成物の蛍光分析(excitation 370nm、emission 465nm)により測定した。化合物による阻害活性は、ジメチルスルホキシド添加時の酵素活性を100%として残存活性を測定し、その50%の活性を阻害する濃度(IC50)で示した。
Figure 0005946288
試験例2:細胞増殖阻害試験(MTTアッセイ)
ヒト子宮頸癌由来細胞株であるHeLa細胞、及びヒト食道癌由来細胞株であるKYSE150細胞の増殖に対する化合物の阻害活性を測定した。細胞増殖は、3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)アッセイ法により測定した。96ウエルマイクロタイタープレートにHeLa細胞及びKYSE150細胞を1ウエルあたり100μlの10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に5000細胞ずつ播種し、CO2インキュベーターで24時間培養した後、化合物を添加した。48時間培養後、5mg/mlのMTT液を1ウエルあたり10μl入れ、CO2インキュベーターでさらに3時間培養した。可溶化溶液(0.04mol/l 塩酸-イソプロパノール)を1ウエルあたり100μl入れて激しくボルテックス後、FusionαFP(PerkinElmer社)で560nmの吸光度を測定し、細胞の生存量を求めた。化合物による阻害活性は、ジメチルスルホキシド添加時の比色値を100%として残存活性を測定し、その50%の活性を阻害する濃度(IC50)で示した。結果を表2に示す。
Figure 0005946288
試験例3:ウェスタンブロッティング
N2a細胞をOPTI-MEM培地に1.0 x 105cells/mLの濃度で播種し、CO2インキュベーターで24時間培養した後、ジメチルオキサリルグリシン(DMOG;比較例1の化合物に対応)又は実施例8の化合物(NCDM-59a)を添加し、CO2インキュベーターで48時間処理した。なお、DMOG又はNCDM-59aの濃度は、DMOGについては30μM、300μM又は1 mMとし、NCDM-59aについては1μM、10μM又は30μMとした。
培地を吸引除去し、1 x PBSで細胞を洗浄後、再度上澄みを吸引除去した。1 x SDSバッファーを加え細胞を溶解しさらにすり潰したものを99℃で加熱変性処理した。ブラッドフォードプロテインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories)を用いて溶解物の蛋白質量を測定し、SDS-サンプルバッファーにより希釈し同一蛋白質量を含む電気泳動サンプルを調製した。
続いて、市販の4-20% SDS-ポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad Laboratories)にサンプル20μLをアプライし、電気泳動し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad Laboratories)に転写した。ブロッキングバッファー(TBS-Tバッファー、3% スキムミルク)を用いて転写膜を室温で30分処理した後、一次抗体(H3K27me2 一次抗体:CST、1:1000希釈)入りTBSバッファー(3% スキムミルク)中で、4℃で一晩インキュベーションした。TBSバッファーで洗浄したのち、2次抗体(sheep anti-rabbit IgG-horseradish peroxidase conjugates:1:2500希釈)入りTBSバッファー(3% スキムミルク)中で振盪しながら室温で1時間半インキュベーションした。
TBSバッファー、TBS-Tバッファーで洗浄したのち、化学発光法により観察した。
結果を図1に示す。DMOGについては、1mMまで濃度を高くしてもH3K27me2レベルの亢進は見られなかったが、本発明の化合物であるNCDM-59aについては、30μM程度の濃度でH3K27me2レベルの亢進が見られた。

Claims (4)

  1. 一般式(IA):
    Figure 0005946288
    [式中、Rは分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又はアリール基;nは6以上の整数である。]
    、又は一般式(IB):
    Figure 0005946288
    [式中、Rはメチル基又はエチル基;nは6〜10の整数である。]
    で示される化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグ(プロドラッグは、末端のカルボキシル基を一般式(a):
    −COOR
    [式中、R は炭素数1〜6のアルキル基である。]
    で示される構造の基とした化合物、又はヒドロキサム酸の水酸基(窒素に結合した水酸基)を一般式(b):
    −OR
    [式中、R は炭素数1〜6のアルキル基である。]
    で示される構造の基とした化合物である)。
  2. 一般式(I):
    Figure 0005946288
    [式中、Rは直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又はアリール基;nは6以上の整数である。]
    で示される化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグ(プロドラッグは、末端のカルボキシル基を一般式(a):
    −COOR
    [式中、R は炭素数1〜6のアルキル基である。]
    で示される構造の基とした化合物、又はヒドロキサム酸の水酸基(窒素に結合した水酸基)を一般式(b):
    −OR
    [式中、R は炭素数1〜6のアルキル基である。]
    で示される構造の基とした化合物である)を含有する医薬。
  3. 抗癌剤である、請求項に記載の医薬。
  4. 一般式(I):
    Figure 0005946288
    [式中、Rは直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又はアリール基;nは6以上の整数である。]
    で示される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有するKDM7阻害剤。
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