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JP5837890B2 - 神経膠芽腫および星状細胞腫の治療におけるフェノテロールおよびフェノテロール類似体の使用 - Google Patents

神経膠芽腫および星状細胞腫の治療におけるフェノテロールおよびフェノテロール類似体の使用 Download PDF

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JP5837890B2 JP2012557260A JP2012557260A JP5837890B2 JP 5837890 B2 JP5837890 B2 JP 5837890B2 JP 2012557260 A JP2012557260 A JP 2012557260A JP 2012557260 A JP2012557260 A JP 2012557260A JP 5837890 B2 JP5837890 B2 JP 5837890B2
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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2010年3月10日に提出した米国特許仮出願第61/312,642号の恩典を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
分野
本開示は、(R,R)-フェノテロールおよび(R,R)-フェノテロール類似体または(R,S)-フェノテロール類似体の分野に関し、特に、β2-アドレナリン受容体を発現する原発腫瘍などのβ2-アドレナリン受容体を発現する腫瘍の治療におけるそれらの使用方法に関する。
背景
癌は米国において冠動脈疾患に次ぐヒトの死の第二の原因である。世界中で、毎年何百万もの人々が癌で死亡している。米国だけでも、米国癌協会の報告によれば、癌は毎年50万を優に超える人々の死因であり、1年間に120万を超える新しい症例が診断されている。心疾患による死亡は著しく減少している一方で、癌によるものは一般には上昇傾向にある。癌はまもなく一番の死因になると予想される。
多くの一般的な治療剤は血液脳関門を通過することができないため、脳癌は特に治療が難しい。さらに、これらの腫瘍は非常に進行するまで認められないことが多い。例えば、悪性脳腫瘍の大部分は神経膠腫および星状細胞腫であり、診断からの生存期間中央値は12〜15か月であるため、極度に致命的である。神経膠腫および星状細胞腫の治療に対する現行の臨床アプローチは、手術、放射線および化学療法の組み合わせを含むが、これらのアプローチは患者の生存をあまり改善していない。したがって、新規の治療法の開発は薬物開発における重要な領域である。
概要
本開示は、フェノテロールおよび特定のフェノテロール類似体をβ2-アドレナリン受容体(AR)発現に関連する腫瘍を治療するために用い得るという発見に関する。本発明者らは、フェノテロール、特定のフェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの投与が、β2-ARを発現する腫瘍に関連する1つまたは複数の徴候または症状(腫瘍成長など)を抑制することを発見した。この発見を用いて、本発明者らはβ2-ARを発現する腫瘍、例えば、β2-ARを発現する星状細胞腫または神経膠芽腫などのβ2-ARを発現する原発脳腫瘍を治療する開示された方法を開発した。
いくつかの態様において、方法は、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの治療的有効量を投与して、β2-ARを発現する腫瘍に関連する1つまたは複数の徴候または症状を軽減または抑制する(腫瘍成長を抑制することまたは腫瘍体積を減少させることを含む)などの、該腫瘍を治療する段階を含む。
β2-ARへの結合において非常に有効であり、開示される治療法において用いることができる、フェノテロール類似体についての例示的な化学構造を提供する。一例として、フェノテロール類似体は、
以下の一般式:
Figure 0005837890
によって表され、
式中、R1〜R3は独立して、水素、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル(カルバモイル)またはそれらの組み合わせであり、
R4はHまたは低級アルキルであり、
R5は、低級アルキル、
Figure 0005837890
であり、
ここで、X、Y1、Y2およびY3は独立して、水素、-OR6および-NR7R8であり、
R6は独立して、水素、低級アルキル、アシル、アルコキシカルボニルまたはアミノカルボニルであり、R7およびR8は独立して、水素、低級アルキル、アルコキシカルボニル、アシルまたはアミノカルボニルであり、かつ化合物は光学活性である。
いくつかの態様において、R1〜R3は独立して水素であり、R4は低級アルキル(CH3またはCH2CH3など)であり、R5は、低級アルキル、
Figure 0005837890
であり、
式中、X、Y1、Y2およびY3は独立して、水素、-OR6および-NR7R8であり、R6は独立して、水素、低級アルキル、アシル、アルコキシカルボニルまたはアミノカルボニルであり、R7およびR8は独立して、水素、低級アルキル、アルコキシカルボニル、アシルまたはアミノカルボニルであり、かつ化合物は光学活性である。
いくつかの態様において、R1〜R3は独立して水素であり、R4はメチルまたはエチルであり、R5は、
Figure 0005837890
であり、式中、Xは-OHまたは-OCH3である。
いくつかの態様において、R1〜R3は独立して水素であり、R4はメチルまたはエチルであり、R5
Figure 0005837890
である。
いくつかの態様において、方法は、フェノテロール、開示されるフェノテロール類似体のいずれかまたはそれらの組み合わせおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物の治療的有効量を投与して、β2-AR発現を発現する原発脳腫瘍などのβ2-ARを発現する腫瘍を治療する段階を含む。例えば、開示される(R,R)-フェノテロールおよび(R,R)-フェノテロール類似体または(R,S)-フェノテロール類似体(例えば、(R,R)-メトキシ-エチルフェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロール、(R,R)-ナフチルフェノテロール、(R,R)-エチルフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロール)は、β2-ARを発現する神経膠芽腫または星状細胞腫などの、β2-ARを発現する原発脳腫瘍を治療するのに有効である。いくつかの態様において、方法は、β2-AR発現に関連する腫瘍を有する対象、または該腫瘍を発生するリスクがある対象を選択する段階をさらに含む。例えば、腫瘍がβ2-ARを発現することを判定することによって、治療のために対象を選択する。1つの特定の例において、方法は、出血障害を有していない対象を選択する段階をさらに含む。さらなる例において、方法は、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせに加えて、1つまたは複数の治療剤を投与する段階を含む。方法は、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせと別々に、逐次的に、または合わせた組成物中においてなど同時に、1つまたは複数の治療剤を投与することを含み得る。
[本発明1001]
以下の段階を含む、β2-アドレナリン受容体(AR)を発現する原発腫瘍の治療方法:
化合物の治療的有効量を対象に投与して、β2-ARを発現する該原発腫瘍に関連する1つまたは複数の症状を軽減し、それにより該対象の該原発腫瘍を治療する段階であって、
該化合物が、式:
Figure 0005837890
を有し、
式中、R 1 〜R 3 は独立して、水素、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル(カルバモイル)またはそれらの組み合わせであり、
R 4 はHまたは低級アルキルであり、
R 5 は低級アルキル、
Figure 0005837890
であり、
ここで、Y 1 、Y 2 およびY 3 は独立して、水素、低級-OR 6 および-NR 7 R 8 であり、
Xは独立してH、-OR 6 および-NR 7 R 8 より選択され、
R 6 はHまたは低級アルキルであり、
R 7 およびR 8 は独立して、水素、低級アルキル、アルコキシカルボニル、アシルまたはアミノカルボニルであり、かつ
該化合物が光学活性である段階。
[本発明1002]
投与が、(R,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロールの治療的有効量を投与することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
投与が、前記化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 4 が低級アルキルであり、かつR 5
Figure 0005837890
であり、
式中、XはH、-OR 6 または-NR 7 R 8 であり、
R 6 は低級アルキルであり、かつ
R 7 およびR 8 は独立して水素または低級アルキルである、本発明1001の方法。
[本発明1004]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 4 が、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソプロピルより選択される、本発明1003の方法。
[本発明1005]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 4 がメチルである、本発明1004の方法。
[本発明1006]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 5 が、式:
Figure 0005837890
を有し、式中、XがH、-OR 6 または-NR 7 R 8 である、本発明1005の方法。
[本発明1007]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 6 がメチルである、本発明1006の方法。
[本発明1008]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 5 が、
Figure 0005837890
のうちの1つである、本発明1001の方法。
[本発明1009]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 5
Figure 0005837890
である、本発明1001、1004および1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 7 およびR 8 が水素である、本発明1001および1003〜1006のいずれかの方法。
[本発明1011]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 5 が、式
Figure 0005837890
を有する、本発明1005の方法。
[本発明1012]
投与が、化合物の治療的有効量を投与することを含み、該化合物内のR 1 〜R 3 が水素である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
投与が、(R,R)-ナフチルフェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロール、(R,R)-(-)-エチルフェノテロール、(R,R)-(-)-4-メトキシ-1-ナフチルフェノテロール、(R,R)-(-)-2-ナフチルフェノテロール、(R,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロールまたはそれらの組み合わせの治療的有効量を投与することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
基準値と比較して増加したβ2-AR発現を有する、関連する原発腫瘍を治療するのに使用するための、本発明1001〜1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
基準値と比較して増加したβ2-AR発現を有する原発脳腫瘍を治療するのに使用するための、本発明1001の方法。
[本発明1016]
β2-ARを発現する星状細胞腫を治療するのに使用するための、本発明1001の方法。
[本発明1017]
β2-ARを発現する神経膠芽腫を治療するのに使用するための、本発明1001の方法。
[本発明1018]
化合物の治療的有効量の投与前に、β2-ARを発現する腫瘍の治療を必要としている対象を選択する段階をさらに含む、本発明1001〜1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
対象を選択する段階が、化合物の治療的有効量の投与前に、出血障害を有していない対象を選択することを含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記腫瘍に関連する1つまたは複数の症状の抑制が、腫瘍成長を抑制することを含む、本発明1001〜1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
さらなる治療剤を、化合物の投与前、該化合物の投与と同時、または該化合物の投与後などに投与する段階をさらに含む、本発明1001〜1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記さらなる治療剤が、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ストレプトゾシンまたはそれらの組み合わせなどの化学療法剤である、本発明1021の方法。
[本発明1023]
化合物の治療的有効量の投与が、該化合物の治療的有効量を薬学的に許容される担体と共に投与することを含む、本発明1001〜1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
前記対象がヒトである、本発明1001〜1023のいずれかの方法。
前述および他の特徴は、添付の図面を参照して進められる、下記のいくつかの態様の詳細な説明からより明らかとなる。
(S,S)-フェノテロールおよび(R,R)-フェノテロールのクロマトグラフィーによる分離を示す。 図2Aは、(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの紫外線スペクトルである。図2Bは、(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの円二色性スペクトルを示す。 泳動緩衝液への(R,R)-フェノテロールの添加によって生成した[+H]-(±)-フェノテロールのフロンタルクロマトグラフィー溶出プロファイルを提供する。 フェノテロールおよびフェノテロール類似体(化合物2〜7)の立体異性体の化学構造を示す。 化合物47〜51の化学構造を示す。 フェノテロール類似体によるcAMP蓄積の用量依存的刺激を示す。(R,R)-フェノテロール(■)は、1321N1細胞におけるcAMP蓄積の刺激に対する完全アゴニストで、標準のイソプロテレノール(●)またはフォルスコリン(▲)よりも大きいcAMP刺激を示す。(S,S)-フェノテロール(◆)はこれらの細胞における部分アゴニストであることが判明した。 フェノテロール異性体およびフォルスコリンによる[3H]チミジン取り込みの用量依存的阻害を示す。(R,R)-フェノテロール(■)が(S,S)-フェノテロール(▼)およびフォルスコリン(●)のどちらよりも1000倍強力であることを示す。 フェノテロール異性体およびフォルスコリンによる[3H]チミジン取り込みの用量依存的阻害を示す。選択的β2-ARアンタゴニストのICI 118-551が1nM(▼)および3nM(◆)で(R,R)-フェノテロール(■)用量反応曲線において右への平行シフトを誘導することを示す。 P27タンパク質発現レベルの(R,R)-フェノテロール調節を示す。レーンは次の通りであった:レーン1、対照;レーン2、10-10M (R,R)-フェノテロール;レーン3、10-8M (R,R)-フェノテロール;およびレーン4、10-6M (R,R)-フェノテロール。ウェスタンブロットを濃度測定を用いて定量した。バンドの相対濃度を各ウェスタンブロットの上に示す。 ホスホAKTタンパク質発現レベルの(R,R)-フェノテロール調節を示す。レーンは次の通りであった:レーン1、対照;レーン2、10-10M (R,R)-フェノテロール;レーン3、10-8M (R,R)-フェノテロール;およびレーン4、10-6M (R,R)-フェノテロール。ウェスタンブロットを濃度測定を用いて定量した。バンドの相対濃度を各ウェスタンブロットの上に示す。 サイクリンD1タンパク質発現レベルの(R,R)-フェノテロール調節を示す。レーンは次の通りであった:レーン1、対照;レーン2、10-10M (R,R)-フェノテロール;レーン3、10-8M (R,R)-フェノテロール;およびレーン4、10-6M (R,R)-フェノテロール。ウェスタンブロットを濃度測定を用いて定量した。バンドの相対濃度を各ウェスタンブロットの上に示す。 サイクリンAタンパク質発現レベルの(R,R)-フェノテロール調節を示す。レーンは次の通りであった:レーン1、対照;レーン2、10-10M (R,R)-フェノテロール;レーン3、10-8M (R,R)-フェノテロール;およびレーン4、10-6M (R,R)-フェノテロール。ウェスタンブロットを濃度測定を用いて定量した。バンドの相対濃度を各ウェスタンブロットの上に示す。 p-Erk1/2タンパク質発現レベルの(R,R)-フェノテロール調節を示す。レーンは次の通りであった:レーン1、対照;レーン2、10-10M (R,R)-フェノテロール;レーン3、10-8M (R,R)-フェノテロール;およびレーン4、10-6M (R,R)-フェノテロール。ウェスタンブロットを濃度測定を用いて定量した。バンドの相対濃度を各ウェスタンブロットの上に示す。 [3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールは血液脳関門を通過することが示されたため、[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールのIV投与はこの化合物を脳に送達する有効な方法であることを示す。雄スプラーグドーリーラットから単離した脳におけるおよび血漿中の[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールレベルの比較を提供する。[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールの脳(μg当量/g)および血漿(μg当量/ml)レベルを60分間にわたって測定した。各点はラット3匹の平均±s.e.を表す。 SKIDマウスの側腹部に移植した1321N1異種移植片についての(R,R)-メトキシフェノテロール成長抑制を示す。
いくつかの態様の詳細な説明
I.導入
フェノテロール、すなわち5-[1-ヒドロキシ-2[[2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-アミノ]エチル]1,2-ベンゼンジオールは、喘息などの肺障害の治療に伝統的に用いられてきたβ2-ARアゴニストである。この薬物はそれぞれ独立してR配置またはS配置に配列され得る2つのキラル(不斉)炭素を有し、したがってこの薬物は立体異性体として公知の異なる(R,R)、(R,S)、(S,R)および(S,S)型で存在する。フェノテロールは(R,R)-化合物および(S,S)-化合物のラセミ混合物として市販されている。
フェノテロールはβ2-ARに結合し、これを活性化するアゴニストとして作用する。このアゴニスト活性は狭窄した気道を拡張するため、喘息の治療におけるその臨床的使用につながってきた。フェノテロールのさらなる治療的使用が今後詳細に探究されなければならない。
本開示は、フェノテロール、特定のフェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの、β2-ARを発現する腫瘍を治療するための能力を報告する。特に、本開示は、フェノテロールに匹敵するまたはそれよりも高い活性でβ2-ARに結合するフェノテロール類似体を提供する。1つの態様において、光学活性フェノテロール類似体を、ラセミ混合物から実質的に精製する。例えば、光学活性フェノテロール類似体は、精製されて、組成物の90%超、しばしば95%超を示す。これらの類似体は、β2-AR発現増加に関連する原発腫瘍などのβ2-ARを発現する腫瘍を治療するために用いることができる。(R,R)-フェノテロールならびに開示される(R,R)-フェノテロール類似体および(R,S)-フェノテロール類似体(またはそれらの組み合わせ)を用いて、β2-ARを発現する神経膠芽腫または星状細胞腫を含む原発脳腫瘍などの、原発腫瘍を治療し得ることが特に企図される。
II.略語および用語
AR:アドレナリン作動性受容体
CD:円二色性
CoMFA:比較分子場解析(comparative molecular field analysis)
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IAM-PC:固定化人工膜クロマトグラフィー支持体
ICYP:[125I]シアノピンドロール
UV:紫外線
特に説明されない限り、本明細書において使用される全ての技術的用語および科学的用語は、開示される対象が属する分野における当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。化学用語における一般的な用語の定義は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms, 1985、およびThe Condensed Chemical Dictionary, 1981に見出し得る。本明細書において使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形の用語は、文脈が特に明確に示さない限り、複数の指示物を含む。同様に、「または(or)」という単語は、文脈が特に明確に示さない限り、「および(and)」を含むよう意図される。さらに、本明細書において使用される場合、「含む(comprise)」という用語は「含む(include)」を意味する。従って、「AまたはBを含む」は、A、B、またはAおよびBを含むことを意味する。
特に注記される場合を除いて、いずれの量的値も、「約(about)」または「およそ(approximately)」という単語などが記載されているかまたは記載されていないかに関わらず、近似である。本明細書に記載される材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定的であるようには意図されない。いずれの分子重量値また分子質量値も、近似であり、かつ、説明のためにのみ提供される。特に注記される場合を除いて、本発明の方法および技術は、当技術分野において周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書にわたって引用および議論されている種々の一般的およびより具体的な参考文献において記載されている通りに、一般的に行われる。例えば、Loudon, Organic Chemistry, Fourth Edition, New York: Oxford University Press, 2002, pp. 360-361, 1084-1085;Smith and March, March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, Wiley-Interscience, 2001;またはVogel, A Textbook of Practical Organic Chemistry, Including Qualitative Organic Analysis, Fourth Edition, New York: Longman, 1978を参照のこと。
本明細書において開示される種々の態様の再考を容易にするために、特定の用語についての以下の説明を提供する。
アシル:
Rが有機基である、式RC(O)-の基。
アシルオキシ:
Rが置換されてもよいアルキルまたは置換されてもよいアリールであり得る、構造-OC(O)Rを有する基。「低級アシルオキシ」基は、Rが1〜10個(例えば、1〜6個)の炭素原子を含むものである。
投与:
フェノテロールおよび/または1つもしくは複数のフェノテロール類似体を含む薬学的組成物などの組成物を対象に、任意の有効な経路によって供給するかまたは与えること。例示的な投与経路には、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内(ip)、および静脈内(iv)など)、経口、舌下、直腸、経皮、鼻内、膣および吸入経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
アルコキシ:
Rが置換または非置換のアルキルである、構造-O-Rを有する基(または置換基)。メトキシ(-OCH3)は、例示的なアルコキシ基である。置換アルコキシにおいて、Rは、非干渉置換基で置換されたアルキルである。「チオアルコキシ」は、Rが置換または非置換のアルキルである-S-Rを指す。「ハロアルキルオキシ」は、Rがハロアルキルである基-ORを意味する。
アルコキシカルボニル:
Rが、置換されてもよいアルキルまたは置換されてもよいアリールであり得る、式-C(O)ORの基。「低級アルコキシカルボニル」基は、Rが1〜10個(例えば、1〜6個)の炭素原子を含むものである。
アルキル:
特に明確に記載されない限り、1〜15個の炭素原子;例えば、1〜10個、1〜6個、または1〜4個の炭素原子を含む、非環式、飽和、分岐鎖もしくは直鎖の炭化水素基。この用語は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、またはドデシルなどの基を含む。「低級アルキル」という用語は、1〜10個の炭素原始を含むアルキル基を指す。明確に「非置換アルキル」と呼ばない限り、アルキル基は、非置換でもまたは置換されてもよい。アルキル基は、1つまたは複数の置換基(例えば、アルキル鎖中の各メチレン炭素について2個までの置換基)で置換されてもよい。例示的なアルキル置換基としては、例えば、アミノ基、アミド、スルホンアミド、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、メルカプト、トリフルオロメチル、アルキル、アルコキシ(例えば、メトキシ)、アルキルチオ、チオアルコキシ、アリールアルキル、ヘテロアリール、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルスルファノ(alkylsulfano)、ケト、または他の官能基が挙げられる。
アミノカルボニル(カルバモイル):
RおよびR'が互いに独立して、水素または低級アルキル基である、式C(O)N(R)R'の基。
星状細胞腫:
星状細胞で起こる脳の腫瘍。星状細胞腫は原発腫瘍の一例である。星状細胞腫は最も一般的な神経膠腫で、脳のほとんどの部分および時に脊髄で発生し得る。しかし、星状細胞腫は大脳で最もよく見出される。一例において、対象にフェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの治療的有効量を投与し、それにより星状細胞腫成長を抑制することにより、星状細胞腫を抑制する。
β2-アドレナリン受容体(β2-AR):
Gタンパク質共役受容体ファミリーのメンバーであるアドレナリン受容体の亜型。β2-AR亜型は、呼吸器疾患、心血管疾患および早産、ならびに本明細書において開示される腫瘍発生に関与する。β2-ARの発現増加は、治療標的として役立ち得る。現在、いくつかの薬物、例えば、アルブテロール、ホルモテロール、イソプロテルノール(isoproternol)、またはサルメテロールはβ2-ARアゴニスト活性を有する。本明細書において開示されるフェノテロールおよびフェノテロール類似体はβ2-ARアゴニストである。一例において、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせを対象に投与して、β2-ARを発現する腫瘍に、例えば、β2-ARを発現する原発脳腫瘍に関連する1つまたは複数の症状または徴候(β2-AR発現増加など)を軽減または抑制する。
血液脳関門(BBB):
脳および中枢神経系に供給する毛細血管の上皮細胞によって形成される関門。この関門は、水、酸素、二酸化炭素、ならびにグルコース、アルコール、および全身麻酔剤などの非イオン性溶質などの物質を選択的に侵入させるが、他の物質の侵入を阻止する。アミノ酸などのいくつかの低分子は、特定の輸送機序によって関門を通過して取り込まれる。一例において、フェノテロールまたは開示されるフェノテロール類似体は関門を通過することができる。
カルバメート:
RがH、または低級アルキル基もしくはアラルキル基などの脂肪族基である、式-OC(O)N(R)-の基。
化学療法;化学療法剤:
異常な細胞成長を特徴とする疾患の治療において治療的有用性を有する、本明細書において用いられる任意の化学物質。そのような疾患には、腫瘍、新生物および癌ならびに過形成性成長を特徴とする疾患が含まれる。1つの態様において、化学療法剤は、β2-AR発現に関連する腫瘍を含む、固形腫瘍などの新生物を治療するのに有用な剤である。1つの態様において、化学療法剤は、放射性分子である。いくつかの態様において、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせは化学療法剤である。一例において、化学療法剤は、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、またはそれらの組み合わせである。当業者であれば、有用な化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Slapak and Kufe, Principles of Cancer Therapy, Chapter 86 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 14th edition;Perry et al., Chemotherapy, Ch. 17 in Abeloff, Clinical Oncology 2nd ed., (著作権) 2000 Churchill Livingstone, Inc;Baltzer L., Berkery R. (eds): Oncology Pocket Guide to Chemotherapy, 2nd ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1995;Fischer DS, Knobf MF, Durivage HJ (eds): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1993参照)。
対照または基準値:
「対照」とは、試験試料との比較のために用いられる試料または標準を意味する。いくつかの態様において、対照は、健常対象から得た試料、またはフェノテロール、フェノテロール類似体もしくはそれらの組み合わせによる治療に反応しない腫瘍と診断された患者から得た腫瘍組織試料である。いくつかの態様において、対照は、長い歴史のある対照または標準の基準値または一連の値である(β2-ARを発現する腫瘍を持たない対象群、またはフェノテロール、フェノテロール類似体もしくはそれらの組み合わせによる治療に反応しない腫瘍組織中のβ2-ARレベルなどの基準線もしくは正常値を表す試料群などの、以前に試験した対照試料など)。
誘導体:
1つまたは複数の官能基によって他の化学物質と異なる化学物質。好ましくは、誘導体(フェノテロール類似体など)は、それが誘導された分子(フェノテロールまたはフェノテロール類似体など)の生物学的活性(β2-AR刺激など)を保持する。
神経膠芽腫:
原発脳腫瘍の一般的なかつ悪性の型。神経膠芽腫はグレードIV星状細胞腫で、通常は脳内で急速に拡散する。一例において、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの治療的有効量を対象に投与し、それにより神経膠芽腫に関連する1つまたは複数の症状を抑制することで、神経膠芽腫を抑制する。
異性体:
同一の分子式を有するがそれらの原子の結合の順序もしくは性質または空間におけるそれらの原子の配置が異なる化合物は、「異性体」と呼ばれる。空間におけるそれらの原子の配置が異なる化合物は、「立体異性体」と呼ばれる。2つまたはそれ以上のキラル中心を含みかつ互いの鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれる。互いの重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は、「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、炭素原子が4個の異なる基へ結合されている場合、一対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対立体配置を特徴とし得て、CahnおよびPrelogのR順位則およびS順位則によって記載されるか、または分子が偏光面を回転させる様式によって右旋性もしくは左旋性(即ち、それぞれ、(+)もしくは(-)異性体)と呼ばれる。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとしてまたはそれらの混合物として存在し得る。等しい割合のエナンチオマーを含有する混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
本明細書において記載される化合物は、1つまたは複数の不斉中心を有し得;従って、このような化合物は、個々の(R)、(S)、(R,R)、(R,S)-立体異性体またはそれらの混合物として生成され得る。特に記載されない限り、本明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の記載または命名は、個々のエナンチオマーおよびそれらの混合物(ラセミまたはその他)の両方を含むよう意図される。立体化学の測定方法および立体異性体の分離方法は、当技術分野において周知である(例えば、March, Advanced Organic Chemistry, 4th edition, New York: John Wiley and Sons, 1992, Chapter 4を参照のこと)。
任意の:
「任意の」または「任意で」は、その後に記載される事象または状況が起こってもよいが起こらなくてもよいこと、ならびにこの記載が該事象または状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。
薬学的に許容される担体:
本開示において有用である薬学的に許容される担体(ビヒクル)は、従来のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin編, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition (1995)に、1つまたは複数の治療化合物または分子、例えば、1つまたは複数の核酸分子、タンパク質、またはこれらのタンパク質に結合する抗体、およびさらなる薬剤の薬学的送達に好適である組成物および製剤が記載されている。
一般的に、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、薬学的および生理学的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどを含む注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤形態)について、従来の無毒性固体担体は、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、少量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有し得る。
フェニル:
フェニル基は、非置換であってもまたは1、2もしくは3個の置換基で置換されてもよく、置換基は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、脂肪族、ヘテロ脂肪族、チオアルコキシ、ハロ、ハロアルキル(例えば、-CF3)、ニトロ、シアノ、-OR(ここで、Rが水素またはアルキルである)、-N(R)R'(ここで、RおよびR'が互いに独立して、水素またはアルキルである)、-COOR(ここで、Rが水素またはアルキルである)、または-C(O)N(R')R''(ここで、R'およびR''が独立して、水素またはアルキルより選択される)より選択される。
精製された:
「精製された」という用語は、絶対的な純度を必要とせず;むしろ、それは相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製された調製物は、所望の成分、例えば、フェノテロールの(R,R)-エナンチオマーが、前の環境におけるよりも、例えば、(±)-フェノテロール混合物におけるよりも富んでいるものである。所望の成分、例えば、フェノテロールの(R,R)-エナンチオマーは、例えば、試料の少なくとも約70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、95重量%、97重量%、98重量%、または99重量%が所望の成分から構成されている場合、精製されていると考えられる。化合物の純度は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または他の従来の方法によって測定され得る。1つの例において、特定のフェノテロール類似体エナンチオマーは、精製されて、精製された調製物中に存在する他のエナンチオマーの90%超、しばしば95%超である。他の場合には、精製された調製物は本質的に均一であり得、他の立体異性体は1%未満である。
本明細書において記載される化合物は、精製された形態で得られてもよいか、または、シリカゲルおよび/またはアルミナクロマトグラフィーを含む当技術分野において公知のいずれかの手段によって精製されてもよい。例えば、Introduction to Modern Liquid Chromatography, 2nd Edition, SnyderおよびKirkland編, New York: John Wiley and Sons, 1979;およびThin Layer Chromatography, ed. Stahl編, New York: Springer Verlag, 1969を参照のこと。1つの例において、化合物は、他の不純物と比べて試料の少なくとも約70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、95重量%、97重量%、98重量%、または99重量%の純度を有する精製されたフェノテロールまたはフェノテロール類似体を含む。さらなる例において、化合物は、他の不純物と比べて試料の少なくとも約70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、95重量%、97重量%、98重量%、または99重量%の純度を各々が有する少なくとも2つの精製された立体異性体を含む。例えば、化合物は、実質的に精製された(R,R)-フェノテロール類似体および実質的に精製された(R,S)-フェノテロール類似体を含み得る。
対象:
「対象」という用語は、ヒト対象および家畜対象の両方、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウス、およびウシを含む。同様に、用語、哺乳動物は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。
治療的有効量:
指定の剤で治療中の対象において所望の効果を達成するのに十分なその剤の量。例えば、これは、β2-AR発現に関連する神経膠芽腫または星状細胞腫などの原発腫瘍を縮小、抑制、および/または治療するのに有用な(R,R)-フェノテロールまたは(R,R)-フェノテロール類似体もしくは(R,S)-フェノテロール類似体の量であり得る。理想的には、剤の治療的有効量は、対象において実質的な細胞毒性作用を引き起こすことなく、対象において障害を軽減、抑制、および/または治療するのに十分な量である。
対象において障害を軽減、抑制、および/または治療するために有用な組成物の有効量は、治療中の対象、障害の重症度、および治療組成物の投与様式に依存すると考えられる。治療剤の有効量は、腫瘍サイズの減少または脳腫瘍などの腫瘍を有する対象の生理的状態の改善をアッセイするなどの、多くの異なる様式で判定することができる。有効量は様々なインビトロ、インビボまたはインサイチューのアッセイ法により判定することもできる。
組織:
複数の機能的に関連する細胞。組織は懸濁液、半固体、または固体であり得る。組織は、脳またはその一部などの対象から採取した細胞を含む。
腫瘍:
悪性または良性に関わりなく、すべての新生物細胞成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織。原発腫瘍は、腫瘍進行が始まって、進行してこの塊を生じた解剖学的部位で成長する腫瘍である。原発脳腫瘍(神経膠腫とも呼ぶ)は、脳で起こる腫瘍である。例示的な原発脳腫瘍には、星状細胞腫、神経膠芽腫、上衣細胞腫、乏突起細胞腫、および混合膠腫が含まれる。いくつかの例において、β2-AR発現に関連する星状細胞腫または神経膠芽腫などの原発脳腫瘍は、β2-AR発現(β2-AR発現増加など)に関連する。
十分な条件下:
所望の活性を可能にする任意の環境を記載するために用いる語句。一例において、十分な条件下は、フェノテロールおよび/または1つもしくは複数のフェノテロール類似体あるいはそれらの組み合わせを対象に、所望の活性を可能にするのに十分な濃度で投与することを含む。いくつかの例において、腫瘍(原発脳腫瘍など)に関連する徴候または症状を軽減または抑制する所望の活性は、例えば、感受性対象における腫瘍の臨床症状の発生遅延、腫瘍のいくつかもしくはすべての臨床症状の軽減、腫瘍の緩徐な進行(例えば、腫瘍を有する対象の寿命延長により)、腫瘍再発の回数の低減、対象の全般的健康もしくは安寧の改善、または特定の疾患に特異的な当技術分野において周知の他のパラメータによって証明することができる。1つの特定の例において、所望の活性は、星状細胞腫または神経膠芽腫成長などの腫瘍成長を防止または抑制することである。腫瘍成長は、治療が有効と考えられるために、完全に抑制される必要はない。例えば、少なくとも20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%またはそれ以上などの、少なくとも約10%の低下などの、成長の部分的な低下または緩徐化が有効であると考えられる。
III.(R,R)-フェノテロールおよびフェノテロール類似体
A.化学構造
本明細書において開示されるいくつかの例示的なフェノテロール類似体は、式:
Figure 0005837890
を有し、
式中、R1〜R3は独立して、水素、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニルまたはそれらの組み合わせであり、
R4は、Hまたは低級アルキルであり、
R5は、低級アルキル、
Figure 0005837890
であり、
ここで、XおよびYは独立して、水素、低級-OR6および-NR7R8より選択され、
R6は、低級アルキルまたはアシルであり、かつ
R7およびR8は独立して、水素、低級アルキル、アルコキシカルボニル、アシルまたはアミノカルボニルである。
続いて上記のフェノテロール類似体についての一般式に関連して、Yは、-OHであってもよい。
1つの態様において、R5は、1、2または3個の置換基を有してもよい1-ナフチル誘導体または2-ナフチル誘導体である。このようなR5基の例は、式:
Figure 0005837890
によって表され、
式中、Y1、Y2およびY3は独立して、水素、低級-OR6および-NR7R8であり、
R6は、独立してそれぞれの場合で、低級アルキルおよびアシルより選択され、かつ
R7およびR8は独立して、水素、低級アルキル、アルコキシカルボニル、アシルまたはアミノカルボニル(カルバモイル)である。特定の化合物において、Y1、Y2およびY3の少なくとも1つは、-OCH3である。
特定のR5基は、式:
Figure 0005837890
によって表されるものを含み、
式中、R6は、低級アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピルもしくはイソプロピル、またはアシル、例えば、アセチルである。
例示的なR5基としては、
Figure 0005837890
が挙げられる。
1つの例において、R4は低級アルキルであり、R5は、
Figure 0005837890
であり、
式中、XおよびYは独立して、H、低級アルキル -OR6または-NR7R8より選択され、
R6は低級アルキルであり、かつ
R7およびR8は独立して、水素または低級アルキルである。
さらなる例において、R4は、エチル、n-プロピル、およびイソプロピルより選択され、R5は、式:
Figure 0005837890
を有し、式中、Xは、H、-OR6または-NR7R8である。例えば、R6はメチルであり得るか、またはR7およびR8は水素である。
さらなる例において、R5は、式:
Figure 0005837890
を有する。
さらなる態様において、R4は、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソプロピルより選択され、R5は、
Figure 0005837890
を表す。
いくつかの態様において、R1〜R3は独立して水素であり、R4は低級アルキル(CH3またはCH2CH3など)であり、R5は、低級アルキル、
Figure 0005837890
であり、
式中、X、Y1、Y2およびY3は独立して、水素、-OR6および-NR7R8であり、R6は独立して、水素、低級アルキル、アシル、アルコキシカルボニルまたはアミノカルボニルであり、R7およびR8は独立して、水素、低級アルキル、アルコキシカルボニル、アシルまたはアミノカルボニルであり、かつ化合物は光学活性である。
いくつかの態様において、R1〜R3は独立して水素であり、R4はメチルまたはエチルであり、R5は、
Figure 0005837890
であり、
式中、Xは-OHまたは-OCH3である。
いくつかの態様において、R1〜R3は独立して水素であり、R4はメチルまたはエチルであり、R5
Figure 0005837890
である。
インビボで切断されてヒドロキシ基を供給し得るR1〜R3についての好適な基の例としては、非限定的に、アシル、アシルオキシおよびアルコキシカルボニル基が挙げられる。このような切断可能な基を有する化合物は、「プロドラッグ」と呼ばれる。「プロドラッグ」という用語は、本明細書において使用される場合、インビボで(例えば、加水分解によって)ヒドロキシル基へ変換可能である置換基を含む化合物を意味する。種々の形態のプロドラッグが、例えば、Bundgaard, (ed.), Design of Prodrugs, Elsevier (1985);Widder, et al. (ed.), Methods in Enzymology, Vol. 4, Academic Press (1985);Krogsgaard-Larsen, et al., (ed), Design and Application of Prodrugs, Textbook of Drug Design and Development, Chapter 5, 113 191 (1991);Bundgaard, et al., Journal of Drug Delivery Reviews, 8:1 38(1992);Bundgaard, Pharmaceutical Sciences, 77:285 et seq. (1988);およびHiguchi and Stella (eds.) Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems, American Chemical Society (1975)において議論される通り、当技術分野において公知である。
例示的な(R,R)-化合物は、
Figure 0005837890
の化学構造を有する。
XおよびR1〜R3は、上述される通りである。
さらなる例示的な(R,R)-化合物は、化学構造:
Figure 0005837890
を有する。
例示的な(R,S)-化合物は、化学構造:
Figure 0005837890
を有し、式中、XおよびR1〜R3は、上述される通りである。
さらなる例示的な(R,S)-化合物は、化学構造:
Figure 0005837890
を有する。
例示的な(S,R)-化合物は、化学構造:
Figure 0005837890
を有し、式中、XおよびR1〜R3は、上述される通りである。
例示的な(S,S)-化合物は、化学構造:
Figure 0005837890
を有し、式中、XおよびR1〜R3は、上述される通りである。
フェノテロールの種々の立体異性体を示す化学構造の例を以下に提供する。
Figure 0005837890
特定の方法の態様は、(R,R)-フェノテロールのまたは本明細書において記載されるフェノテロール類似体のいずれかの、溶媒和物(例えば、水和物)、薬学的に許容される塩および/または種々の物理的形態の使用を企図する。
1.溶媒和物、塩および物理的形態
「溶媒和物」は、化合物と1つまたは複数の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、種々の程度のイオン結合および共有結合を含み、例えば、共有結合付加物および水素結合された溶媒和物が含まれる。ある場合において、溶媒和物は、例えば1つまたは複数の溶媒分子が結晶固体の結晶格子に組み入れられている場合、単離可能である。「溶媒和物」は、溶液相の溶媒和物および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物としては、エタノール会合化合物、メタノール会合化合物などが挙げられる。「水和物」は、溶媒分子がH2Oである溶媒和物である。
開示される化合物はまた、いくつかの塩形成基が存在する場合、混合塩および/または内部塩を含む、塩を包含する。塩は、一般的に、無毒性である薬学的に許容される塩である。塩は、任意のタイプのもの(有機および無機の両方)、例えば、フマル酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩であり得る。1つの例において、塩は、元素周期表のVII族を形成する非金属(例えば、ハロゲン)を含む。例えば、化合物は、臭化水素酸塩として提供され得る。
塩形成基のさらなる例としては、好適な塩基と塩を形成し得る、カルボキシル基、ホスホン酸基またはボロン酸基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの塩は、例えば、元素周期表のIA、IB、IIAおよびIIB族の金属由来である無毒性金属カチオンを含み得る。1つの態様において、アルカリ金属カチオン、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンもしくはカリウムイオン、またはアルカリ土類金属カチオン、例えば、マグネシウムイオンもしくはカルシウムイオンが使用され得る。塩はまた、亜鉛カチオンまたはアンモニウムカチオンであり得る。塩はまた、好適な有機アミン、例えば、非置換のまたはヒドロキシル置換されたモノアルキルアミン、ジアルキルアミンもしくはトリアルキルアミン、特に、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンもしくはトリアルキルアミンで、または第4級アンモニウム化合物で、例えば、N-メチル-N-エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ-(2-ヒドロキシ-低級アルキル)アミン、ビス-(2-ヒドロキシ-低級アルキル)アミンもしくはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキル)アミン、例えば、モノ-(2-ヒドロキシエチル)アミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミンもしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミンまたはトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ-低級アルキル)アミン、例えば、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン、またはN-メチル-D-グルカミン、または第4級アンモニウム化合物、例えば、テトラブチルアンモニウム塩で形成され得る。
本明細書において開示される例示的な化合物は、無機酸との酸塩基塩を形成し得る少なくとも1つの塩基性基を有する。塩基性基の例としては、アミノ基またはイミノ基が挙げられるが、これらに限定されない。このような塩基性基と塩を形成し得る無機酸の例としては、鉱酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。塩基性基はまた、有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸(sulfo acid)またはホスホ酸(phospho acid)またはN置換スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸と、ならびに、さらに、アミノ酸と、例えば、α-アミノ酸と、ならびにまた、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシメタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-ホスホグリセレートもしくは3-ホスホグリセレート、グルコース-6-ホスフェートまたはN-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)と、または他の酸性有機化合物、例えばアスコルビン酸と、塩を形成し得る。現在の好ましい態様において、フェノテロールは、臭化水素酸塩として提供され、例示的なフェノテロール類似体は、それらのフマル酸塩として提供される。
薬学的に許容される塩を形成するためのさらなる対イオンは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995に見出される。1つの局面において、薬学的に許容される塩を使用することは、組成物の浸透圧を調節するためにも役立ち得る。
ある態様において、本方法において使用される化合物は、多形で提供される。従って、化合物は、2つまたはそれ以上の物理的形態、例えば、異なる結晶形態、結晶、液晶または非晶質(アモルファス)形態で提供され得る。
2.医薬の製造のための使用
上述の化合物のいずれか(例えば、(R,R)-フェノテロールもしくはフェノテロール類似体またはそれらの水和物もしくは薬学的に許容される塩)またはそれらの組み合わせは、対象のβ2-AR刺激のためのまたは原発脳腫瘍(例えば、星状細胞腫または神経膠芽腫)の治療のための医薬の製造における使用を意図する。このような医薬に好適な製剤、これから利益を得ることができる対象、および他の関連する特徴は、本明細書の他の箇所に記載される。
B.合成方法
開示されるフェノテロール類似体は、当技術分野において公知の任意の方法によって合成され得る。開示される化合物を合成するために有用な一般的に知られている化学合成スキームおよび条件を提供する多くの一般的な参考文献が、入手可能である(例えば、Smith and March, March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, Wiley-Interscience, 2001;またはVogel, A Textbook of Practical Organic Chemistry, Including Qualitative Organic Analysis, Fourth Edition, New York: Longman, 1978を参照のこと)。
本明細書において記載される化合物は、クロマトグラフィーの手段、例えば、HPLC、分取薄層クロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを含む、当技術分野において公知である手段のいずれかによって精製され得る。順相および逆相ならびにイオン性樹脂を含む、任意の好適な固定相が使用され得る。最も典型的には、開示される化合物は、オープンカラムクロマトグラフィーまたは分取クロマトグラフィーによって精製される。
フェノテロール類似体の好適な例示的な合成を以下に提供する。
スキームI:
(R)-3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリンもしくは(S)-3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリンから形成されたエポキシドと、適切なベンジル保護された2-アミノ-3-ベンジルプロパン(1〜5)の(R)-エナンチオマーもしくは(S)-エナンチオマーまたはN-ベンジル-2-アミノヘプタン(6)の(R)-エナンチオマーもしくは(S)-エナンチオマーとのカップリングを含む、1〜6の4個の立体異性体の例示的な合成。
Figure 0005837890
スキームII:
2-フェネチルアミンを使用する(R)-7および(S)-7の例示的な合成。得られた化合物は、Pd/Cにおける水素化によって脱保護され、かつフマル酸塩として精製され得る。
Figure 0005837890
スキームIIIは、スキームIIに使用されるキラル構築ブロックについての例示的な合成を記載する。(R)-3',5'-ジベンジルオキシフェニル-ブロモヒドリンエナンチオマーおよび(S)-3',5'-ジベンジルオキシフェニル-ブロモヒドリンエナンチオマーを、ホウ素-メチルスルフィド錯体(BH3SCH3)および(1R,2S)-cis-1-アミノ-2-インダノールまたは(1S,2R)-cis-1-アミノ-2-インダノールを使用した3,5-ジベンジルオキシ-α-ブロモアセトフェノンのエナンチオ特異的還元によって得た。要求される(R)-2-ベンジルアミノプロパンおよび(S)-2-ベンジルアミノプロパンを、対イオンとして(R)-マンデル酸または(S)-マンデル酸を使用したrac-2-ベンジルアミノプロパンのエナンチオ選択的結晶化によって調製した。
Figure 0005837890
IV.薬学的組成物
開示される(R,R)-フェノテロールおよびフェノテロール類似体は、少なくとも、β2-ARを発現する原発脳腫瘍(例えば、星状細胞腫または神経膠芽腫)を含むβ2-ARを発現する(β2-AR発現増加など)腫瘍の治療に有用であり得る。従って、少なくとも1つの開示されるフェノテロール化合物および/または類似体を含む薬学的組成物もまた、本明細書において記載する。
薬学的組成物についての製剤は、当技術分野において周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin編, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition, 1995には、(R,R)-フェノテロールおよび開示されるフェノテロール類似体の薬学的送達に好適である例示的な製剤(およびそれらの成分)が記載されている。これらの化合物の少なくとも1つを含む薬学的組成物は、ヒトまたは獣医学における使用のために製剤化され得る。開示される薬学的組成物の特定の製剤は、例えば、投与様式(例えば、経口または非経口)および/または治療される障害(例えば、原発脳腫瘍などのβ2-AR発現に関連する腫瘍)に依存し得る。ある態様において、製剤は、少なくとも1つの有効成分、例えば、フェノテロール化合物に加えて、薬学的に許容される担体を含む。
開示される方法および組成物に有用である薬学的に許容される担体は、当技術分野において従来のものである。薬学的担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、薬学的および生理学的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどを含む注射可能な流体を含む。固体組成物、例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤形態について、従来の無毒性固体担体は、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、任意で、少量の無毒性補助物質または賦形剤、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など;例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有し得る。他の非限定的な賦形剤としては、非イオン性可溶化剤、例えば、クレモフォール、またはタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物が挙げられる。
開示される薬学的組成物は、薬学的に許容される塩として製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、遊離塩基の所望の薬理学的活性を有する化合物の遊離塩基形態の無毒性塩である。これらの塩は、無機酸または有機酸から誘導され得る。好適な無機酸の非限定的な例は、塩酸、硝酸、臭化水素酸、硫酸、ヨウ化水素酸およびリン酸である。好適な有機酸の非限定的な例は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、サリチル酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、アスパラギン酸(asparagic acid)、アスパラギン酸(aspartic acid)、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などである。他の好適な薬学的に許容される塩のリストは、Remington 's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995に見出される。薬学的に許容される塩はまた、組成物の浸透圧を調節するために役立ち得る。
開示される薬学的組成物の剤形は、選択される投与様式によって決定される。例えば、注射可能な流体に加えて、経口剤形が使用され得る。経口製剤は、液体、例えば、シロップ剤、液剤もしくは懸濁剤、または固体、例えば、散剤、丸剤、錠剤もしくはカプセル剤であり得る。このような剤形を調製する方法は、当業者に公知であるか、または明らかである。
開示される化合物を含む薬学的組成物のある態様は、正確な投薬量の個々の投与に好適な単位剤形で製剤化され得る。投与される(R,R)-フェノテロールなどの有効成分の量は、治療される対象、障害の重篤度、および投与様式に依存し、当業者に公知である。これらの範囲内で、投与される製剤は、治療される対象において所望の効果を達成するに有効な量で本明細書において開示される抽出物または化合物を含有する。
特定の例において、経口投与のために、組成物は、治療される対象への投薬量の症状調節のために、有効成分を約1.0〜約50 mg、特に有効成分を約2.0 mg、約2.5 mg、5 mg、約10 mg、または約50 mg含有する錠剤の形態で提供される。1つの例示的な経口投薬レジメンにおいて、有効成分を約1 mg〜約50 mg(例えば、約2 mg〜約10 mg)含有する錠剤が、1日2〜4回、例えば、2回、3回または4回、投与される。
他の例において、非経口投与に適した用量は、非経口で投与する約1mg/kg、約2mg/kg、約5mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約80mg/kgまたは約100mg/kgを含む、約10mg/kgから約80mg/kgの用量などの、1キログラムあたり約1ミリグラム(mg/kg)から約100mg/kgである。しかし、約0.5mg/kgから約200mg/kgを含む、約0.1から約500mg/kgなどの、約0.001mg/kgから約1g/kgなどの、他のより高いまたはより低い用量も用い得る。
1つまたは複数の開示される組成物を含む組成物の単回投与または複数回投与を、治療医によって選択される用量レベルおよびパターンで実施することができる。一般に、複数用量を投与する。特定の例において、組成物を1日1回非経口投与する。しかし、組成物を1日2回、1日3回、1日4回、1日6回、1日おき、1週間に2回、1週間に1回、または1か月に1回投与することもできる。治療は典型的には少なくとも1か月、より多くの場合には2か月または3か月、時には6か月または1年の間続けることになり、無期限に、すなわち慢性的に続けることもある。治療の反復クールも可能である。
1つの態様において、薬学的組成物を、β2-ARを発現する腫瘍治療用の第2の剤を同時投与することなく投与する。1つの具体的な非限定的な例において、1つまたは複数の開示される組成物を、他の剤を同時投与することなく、例えば、同様に腫瘍を標的とすることが公知のさらなる剤を同時投与することなく投与する。他の具体的な非限定的な例において、開示された薬学的組成物の治療的有効量を、さらなる治療法(化学療法剤、さらなるβ2-ARアゴニスト、抗炎症剤、抗酸化剤、または当業者には公知の他の剤などであるが、それらに限定されるわけではない)を含む、さらなる剤と同時に投与する。例えば、開示された化合物を、化学療法剤、抗酸化剤、抗炎症剤またはそれらの組み合わせとの組み合わせで投与する。
他の例において、開示される薬学的組成物を、補助療法として投与する。例えば、1つまたは複数の開示される化合物を含む薬学的組成物を、腫瘍成長を防止または遅延させるために、対象に毎日経口投与する。1つの特定の例において、等しい分量の2つまたはそれ以上の開示される化合物を含む組成物を対象に供給する。一例において、等しくない分量の2つまたはそれ以上の開示される化合物を含む組成物を対象に供給する。例えば、組成物は等しくない分量の(R,R)-フェノテロール誘導体ならびに(S,R)-フェノテロール誘導体および/または(R,S)-誘導体を含む。1つの特定の例において、組成物は(R,R)-フェノテロール誘導体((R,R)-メトキシ-エチルフェノテロール 1または(R,R)-メチルオキシ-フェノテロール 1の割合など)よりも多い量の(S,R)-フェノテロール誘導体または(R,S)-フェノテロール誘導体((S,R)-メトキシ-エチルフェノテロール 約3または(S,R)-メチルオキシ-フェノテロール 3の割合など)を含む。そのような治療法は、腫瘍再発を抑制する、予防するまたは減少させるために、無期限に対象に施すことができる。
V.使用方法
本開示は、原発腫瘍などのβ2-ARを発現する腫瘍に関連する1つまたは複数の徴候または症状を軽減または抑制する段階を含む、障害を治療する方法を含む。いくつかの例において、原発腫瘍は、β2-AR発現の増加などの、β2-ARを発現する原発脳腫瘍である。一例において、β2-ARを発現する原発脳腫瘍は星状細胞腫である。他の例において、β2-ARを発現する原発脳腫瘍は神経膠芽腫である。
開示される方法は、薬学的に許容される担体中において、かつ原発腫瘍などのβ2-ARを発現する腫瘍を治療するのに有効な量で、対象に(R,R)-フェノテロールなどのフェノテロール、開示されるフェノテロール類似体またはそれらの組み合わせ(および、任意で1つまたは複数の他の薬剤)を投与する段階を含む。腫瘍の治療は、(例えば、腫瘍またはその転移のサイズまたは体積を減少させることにより)そのような腫瘍の存在に関連する徴候または症状を防止または軽減することを含む。いくつかの例において、そのような成長低下は腫瘍の転移を減少させるもしくは緩徐化することができるか、または腫瘍のサイズもしくは体積を、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、または95%減少を含む、10%〜90%、20%〜80%、30%〜70%、40%〜60%の間などの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、または少なくとも75%減少させることができる。別の例において、治療は、例えば、腫瘍が転移する能力を低下させることにより、対象における腫瘍の侵襲活性を低下させることを含む。いくつかの例において、本明細書において開示される方法を用いた治療は、対象の生存期間を延長する。
開示される方法において有用な投与経路には、上に詳細に記載する、静脈内(iv)、腹腔内(ip)、直腸、局所、眼、鼻、および経皮などの経口および非経口経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
(R,R)-フェノテロールなどのフェノテロール、もしくは開示されるフェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの有効量は、少なくとも、特定の使用方法、治療中の対象、腫瘍の重症度、および治療組成物の投与様式に依存すると考えられる。組成物の「治療的有効量」は、治療中の対象において所望の効果を達成するのに十分である指定の化合物の量である。例えば、これは、対象において原発脳腫瘍成長および/または原発脳腫瘍に関連する1つもしくは複数の症状を予防または抑制するために必要な、(R,R)-フェノテロール、開示されるフェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの量であり得る。理想的には、(R,R)-フェノテロールまたは開示されるフェノテロール類似体の治療的有効量は、宿主細胞において実質的な細胞毒性効果を引き起こすことなしに、対象において原発脳腫瘍などの腫瘍および/または腫瘍に関連する1つもしくは複数の症状を予防または抑制するために十分な量である。
開示されるフェノテロール化合物または薬学的組成物の治療的有効量は、当業者であれば、本明細書の実施例において開示される適用可能な化合物のIC50と少なくとも同じぐらい高い濃度を達成することを目標にして、決定することができる。用量範囲の例は、単一または分割用量で経口的に約0.001〜約10mg/kg体重である。特定の例において、用量範囲は、単一または分割用量で経口的に約0.005〜約5mg/kg体重である(およそ70kgの平均体重を想定;平均を超えるかまたは平均未満の体重の個人について、値を適宜調節する)。経口投与の場合、組成物を、治療中の対象への用量の症状による調節のために、例えば、活性成分を約1.0〜約50mg、特に活性成分を約2.5mg、約5mg、約10mg、または約50mg含有する錠剤の形で提供する。1つの例示的な経口投薬法において、活性成分を約1mg〜約50mg含有する錠剤を、1日2〜4回、例えば、2回、3回または4回投与する。
他の例において、非経口投与に適した用量は、非経口で投与する約1mg/kg、約2mg/kg、約5mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約80mg/kgまたは約100mg/kgを含む、約10mg/kgから約80mg/kgの用量などの、1キログラムあたり約1ミリグラム(mg/kg)から約100mg/kgである。しかし、約0.5mg/kgから約200mg/kgを含む、約0.1から約500mg/kgなどの、約0.001mg/kgから約1g/kgなどの、他のより高い用量またはより低い用量も用い得る。
1つまたは複数の開示される組成物を含む組成物の単回投与または複数回投与を、治療医によって選択される用量レベルおよびパターンで実施することができる。一般に、複数用量を投与する。特定の例において、組成物を1日1回非経口投与する。しかし、組成物を1日2回、1日3回、1日4回、1日6回、1日おき、1週間に2回、1週間に1回、または1か月に1回投与することもできる。治療は、典型的には少なくとも1か月、より多くの場合には2または3か月、時には6か月または1年の間続けることになり、無期限に、すなわち慢性的に続けることもある。治療の反復クールも可能である。
任意の特定の対象に対する投薬の具体的な用量レベルおよび頻度は、変動することもあり、かつ、具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、対象の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事、投与の様式および時間、排出速度、薬物併用、ならびに治療を受けている対象の状態の重症度を含む様々な因子に依存する。
対象の選択
例えば、β2-ARを発現する腫瘍を有する対象、または該腫瘍を発生するリスクがある対象などの、腫瘍抑制を必要としている対象を選択するために、開示される治療法を開始する前に対象をスクリーニングすることができる。簡単に言うと、方法は、対象が腫瘍抑制を必要としているかどうかを判定するために彼らをスクリーニングする段階を含む。原発脳腫瘍を含む原発腫瘍などのβ2-ARを発現する腫瘍を有する対象、または該腫瘍を発生するリスクがある対象を選択する。一例において、臨床徴候、臨床検査、または両方によって対象を腫瘍と診断する。例えば、頭痛、嘔吐、発作、眩暈、体重減少および様々な関連する愁訴などの特徴的な臨床徴候によって原発脳腫瘍などの腫瘍を診断することができる。診断は一般には、磁気共鳴映像法(MRI)などの画像分析により、組織学によって確認する。いくつかの例において、脳内出血などの出血障害を有していない対象を選択する。
一例において、β2-ARを発現する腫瘍を有する対象から、そのような腫瘍を有することが疑われる対象からまたはそのような腫瘍を獲得するリスクがあると特定された対象から得た試料中において、β2-AR発現を検出することによるなどのβ2-ARを発現する腫瘍を検出することにより、開示される治療法を必要としている対象を選択する。例えば、原発腫瘍非存在下でのβ2-AR発現と比べた場合の、β2-AR発現における10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%増加またはそれ以上などの、10%〜90%、20%〜80%、30%〜70%、40%〜60%を含む、少なくとも10%の増加などの増加の検出は、腫瘍を本明細書において提供される組成物および方法を用いて治療し得ることを示している。他の例において、対象においてMRIまたはポジトロン放射断層撮影(PET)により、星状細胞腫または神経膠芽腫などの原発脳腫瘍を検出することにより、対象を選択する。
本明細書において開示される治療剤(フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせを含むものなど)の投与前に、予備スクリーニングは必要ない。
例示的な腫瘍
例示的腫瘍には、原発脳腫瘍などの原発腫瘍を含むβ2-ARを発現し得る腫瘍が含まれる。原発脳腫瘍には、星状細胞腫、神経膠芽腫、上衣細胞腫、乏突起細胞腫、および混合膠腫が含まれる。β2-AR発現に関連する腫瘍のさらなる可能性のある型には、急性白血病(11q23陽性急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ性白血病など)、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無痛性および高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、脊髄形成異常症候群、ヘアリーセル白血病および脊髄形成異常を含む白血病などの、血液腫瘍が含まれる。
β2-ARを発現し得る可能性のある固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑液膜種、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ様悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌(基底細胞様乳癌、導管性癌および乳房の小葉癌を含む)、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、クロム親和性細胞腫 脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺腫、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫、星状細胞腫、神経髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫など)などの、肉腫および癌腫が含まれる。いくつかの例において、腫瘍は、β2-ARを発現する脳癌、乳癌または多発性骨髄腫である。β2-ARを検出可能な抗体を用いたウェスタンブロットおよび組織学的検査を含む当業者には公知の日常的方法により、β2-ARを発現する腫瘍を特定することができる。
評価
1つまたは複数の治療法の実施後、腫瘍成長の低下、腫瘍体積の減少または腫瘍に関連する1つもしくは複数の臨床症状の軽減について、β2-ARを発現する腫瘍(例えば、原発腫瘍)を有する対象をモニターすることができる。特定の例において、対象を治療の7日後に開始して1回または複数回分析する。画像分析を含む本明細書において記載されるものを含む当技術分野において公知の任意の方法を用いて、対象をモニターすることができる。
さらなる治療およびさらなる治療剤
特定の例において、対象が治療に対して安定であるか、またはわずかな反応、混合反応もしくは部分的反応を有する場合、再評価後に、以前に行った治療と同じスケジュールおよび製剤で、対象の生存期間を含む所望の期間、再治療することができる。部分的反応は、腫瘍サイズまたは体積を含む、原発脳腫瘍などの腫瘍に関連する1つまたは複数の徴候または症状の、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも70%の軽減などの軽減である。
いくつかの例において、方法は、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの治療的有効量を、さらなる治療と共に投与する段階をさらに含む。特定の例において、β2-ARを発現する腫瘍を予防または抑制する剤の治療量の投与前、投与中、または投与後に、対象は1つまたは複数の他の治療法を受けることができる。一例において、対象は、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせを含む組成物の治療量の投与前に、腫瘍を除去または縮小するための1つまたは複数の治療を受ける。
そのような治療法の例には、腫瘍の除去または縮小のための外科的治療(外科的切除、寒冷療法、または化学塞栓術など)、ならびに放射線療法剤、抗新生物化学療法剤、抗生物質、アルキル化剤および抗酸化剤、キナーゼ阻害剤、ならびに他の剤を含み得る抗腫瘍薬学的治療が含まれるが、それらに限定されるわけではない。用い得るさらなる治療剤の特定の例には、微小管結合剤、DNA挿入剤または架橋剤、DNA合成阻害剤、DNAおよび/またはRNA転写阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤、ならびに遺伝子調節剤が含まれる。これらの剤(治療的有効量で投与する)および治療は単独または組み合わせで用いることができる。そのような剤の方法および治療的用量は、当業者には公知であり、かつ熟練した医師が決定することができる。
「微小管結合剤」とは、チューブリンと相互作用して微小管形成を安定化または不安定化し、それにより細胞分裂を阻害する剤を意味する。開示される治療法と一緒に用い得る微小管結合剤の例には、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン(ナベルビン)、エポチロン、コルヒチン、ドラスタチン15、ノコダゾール、ポドフィロトキシンおよびリゾキシンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような化合物の類似体および誘導体も用いることができ、当業者には公知である。例えば、適切なエポチロンおよびエポチロン類似体は国際公報番号国際公開公報第2004/018478号に記載されている。パクリタキセルおよびドセタキセル、ならびに米国特許第6,610,860号;同第5,530,020号;および同第5,912,264号によって教示されるパクリタキセルの類似体などのタキソイドを用いることができる。
以下のクラスの化合物は、本明細書に開示される方法において有用である。アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシンならびにそれらの誘導体および類似体を含むが、それらに限定されるわけではない、適切なDNAおよび/またはRNA転写調節剤も、開示される治療法と組み合わせて用いるのに適している。対象に投与し得るDNA挿入剤および架橋剤には、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ブレオマイシン、クロランブシル、シクロホスファミドならびにそれらの誘導体および類似体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。治療剤としての使用に適したDNA合成阻害剤には、メトトレキセート、5-フルオロ-5'-デオキシウリジン、5-フルオロウラシルおよびそれらの類似体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。適切な酵素阻害剤の例には、カンプトテシン、エトポシド、ホルメスタン、トリコスタチンならびにそれらの誘導体および類似体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。アルキル化剤の例には、カルムスチンまたはロムスチンが含まれる。遺伝子調節に影響をおよぼす適切な化合物には、ラロキシフェン、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ミフェプリストンならびにそれらの誘導体および類似体などの、1つまたは複数の遺伝子の発現の増加または低下を引き起こす剤が含まれる。キナーゼ阻害剤には、成長因子のリン酸化および活性化を防止する、グリバック(Gleevac)、イレッサ(Iressa)、およびタルセバ(Tarceva)が含まれる。
前述の分類の1つまたは複数に入ってもまたは入らなくてもよい、他の治療剤、例えば、抗腫瘍剤も、開示される治療法と組み合わせた投与に適している。例として、そのような剤には、アドリアマイシン、アピゲニン、ラパマイシン、ゼブラリン、シメチジン、ならびにそれらの誘導体および類似体が含まれる。
一例において、開示される治療法(フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの投与など)の実施前に、腫瘍(原発脳腫瘍など)の少なくとも一部を外科的に除去する(例えば、寒冷療法による)か、放射線照射するか、化学的に治療(例えば、化学塞栓術により)するか、またはそれらの組み合わせを行う。例えば、β2-AR発現に関連する原発脳腫瘍を有する対象は、開示される治療法の実施前に外科的に切除した腫瘍の少なくとも一部を有し得る。一例において、1つまたは複数の化学療法剤を、フェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせを含む組成物による治療後に投与する。別の特定の例において、対象は、原発脳腫瘍を有し、開示される治療法の投与と同時に放射線療法、化学塞栓療法、または両方を実施される。
本開示の対象を、下記の非限定的な実施例によってさらに説明する。
実施例1
材料および方法
試薬
フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ベンズアミジン、ロイペプチン、ペプスタチンA、MgCl2、EDTA、トリズマ塩酸塩(Tris-HCl)、(±)-プロプラノロールおよび最小必須培地(MEM)を、Sigma Aldrich (St. Louis, MO)から得た。卵ホスファチジルコリン脂質(PC)をAvanti Polar Lipids (Alabaster, AL)から得た。(±)-フェノテロールをSigma Aldrichから購入し、かつ[3H]-(±)-フェノテロールをAmersham Biosciences (Boston, MA)から得た。有機溶媒n-ヘキサン、2-プロパノールおよびトリエチルアミンを、超純粋HPCL等級溶媒としてCarlo Erba(Milan, Italy)から得た。ウシ胎仔血清およびペニシリン-ストレプトマイシンを、Life Technologies (Gaithersburg, MD)から購入し、かつ[125I]-(±)-ヨードシアノピンドロール(ICYP)をNEN Life Science Products, Inc. (Boston, MA)から購入した。
(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの調製および同定
(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールを、アミローストリス-(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)キラル固定相(CHIRALPAK(登録商標)AD CSP, Chiral Technologies, West Chester, PA;CHIRALPAKは、Daicel Chemical Industries Ltd., Exton, PAの登録商標である)を含有するHPLCカラム(25 cm×0.46 cm i.d.)を用いるキラルHPLC技術を使用して、(±)-フェノテロールから調製した。クロマトグラフィーシステムは、コンピュータワークステーションに接続された、JASCO(登録商標)PU-980溶媒送達システムおよびλ=230 nmに設定されたJASCO(登録商標)MD-910多波長検出器から構成された。JASCOは、JASCO, Inc., Tokyo, Japanの登録商標である。20μl試料ループを有するRheodyneモデル7125インジェクターを使用して、前記クロマトグラフィーシステムに0.2〜0.3 mg (±)-フェノテロールを注入した。移動相は、0.1%トリエチルアミンを含むn-ヘキサン/2-プロパノール(88/12 v/v)であり、流速は、1 mL/分であり、前記システムの温度はカラムヒーター/チラー(Model 7955, Jones Chromatography Ltd., UK)を使用して25℃に維持した。分離された(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールを、クロマトグラフィーカラムから溶離されたそれぞれのピークとして10mL画分回収した。2mL中間画分を回収し、回収された異性体のエナンチオマー純度を向上させるために廃棄した。
分割された(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの立体化学的立体配置を、JASCO(登録商標)J-800分光偏光計で得られた円二色性(CD)測定値を使用して確認した。(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールを2-プロパノールに溶解し、かつ測定値を、室温で1 cm路長を使用して得た。
固定化β2-ARフロンタルクロマトグラフィー
固定化されたβ2-ARを含有する液体クロマトグラフィーカラムを、以前に記載された技術(Beigi et al., Anal. Chem., 76: 7187-7193, 2004)を使用して調製した。手短には、ヒトβ2-ARをコードするcDNAがトランスフェクトされているHEK 293細胞から、細胞膜を得た。micro BCA法によって測定した場合、5〜7 mg総タンパク質に対応する細胞ペレット懸濁液を、カラムを作製するために使用した。MgCl2(2 mM)、ベンズアミジン(1 mM)、ロイペプチン(0.03 mM)、ペプスタチンA(0.005 mM)およびEDTA(1 mM)を含有するTris-HCl[50 mM、pH 7.4]から構成された10 mL緩衝液において、前記膜を調製した。
180 mgアリコートの固定化人工膜クロマトグラフィー支持体(IAM-PC、12μm粒径、300Å細孔径、Regis Chemical Co., Morton Grove, IL製)および80μM PCを、前記膜調製物へ添加し、かつ得られた混合物を室温で3時間撹拌し、(5 cm長)ニトロセルロース透析膜(MWカットオフ10,000 Da、Pierce Chemical, Rockford, IL)へ移し、かつ4℃で24時間、EDTA(1 mM)、MgCl2(2mM)、NaCl(300 mM)およびPMSF(0.2 mM)を含有するTris-HCl[50 mM、pH 7.4]から構成された1 Lの透析緩衝液中に配置した。透析工程を、新鮮な緩衝液を使用して2回繰り返した。
透析後、混合物を、120×gで3分間遠心分離し、上澄みを廃棄し、かつ固定化された受容体を保持する膜を含有するIAM支持体のペレットを回収した。EDTA(1 mM)およびMgCl2(2 mM)を含有するTris-HCl[10 mM、pH 7.4]から構成された2 mLクロマトグラフィーランニングバッファーに前記ペレットを再懸濁し、かつ該懸濁液を、蠕動ポンプを使用して0.3 mL/分の流速でHR 5/2クロマトグラフィーガラスカラム(Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)に注入した。エンドアダプター(end adaptor)を構築し、0.4 mLのゲル総容積を作製した。使用しない場合、カラムを4℃で保存した。
全て連続的に接続された、HPLCポンプ(10-AD, Shimadzu Inc., Columbia, MD)、50μL試料ループを有する手動制御化FPLCインジェクター(Amersham Biotechnology, Uppsala, Sweden)、充填された固定化受容体カラムおよびオンライン放射性フロー検出器(IN/US, Tampa, FL)から構成されたクロマトグラフィーシステム中に、固定化β2-AR固定相を含有するカラムを配置した。フロンタルクロマトグラフィー研究において、溶離プロファイルがプラトー領域を示すまで、5〜7 mLの試料量を継続的に適用した。ランニングバッファーは、EDTA(1 mM)とMgCl2(2 mM)とマーカーリガンドである0.05 nM [3H]-(±)-フェノテロールとを含有するTris-HCl[10 mM、pH 7.4]から構成された。(R,R)-フェノテロールまたは(S,S)-フェノテロールを、0.1 nM、80.0 nM、240 nMおよび700 nMの連続濃度で前記ランニングバッファーへ添加し、かつ前記カラムへ適用した。固定化受容体カラムを、各試料注入の合間に、それぞれ、添加された(R,R)-フェノテロールまたは(S,S)-フェノテロール無しで、約80 mLのランニングバッファーで平衡化した。全てのクロマトグラフィー研究を、0.2 mL/分の流速で室温において行った。
データを分析し、非線形等式(1)を使用して結合部位数および解離定数を求めた。
Figure 0005837890
式中、Viは溶質溶離体積であり、Vminは飽和点での溶離体積であり、Pは利用可能な結合部位数であり、Mはマーカーリガンドの濃度であり、かつKdはリガンドの解離定数である。
リガンド置換結合
ヒトβ2-ARのアデノウイルス感染の24時間後、HEK293細胞を、溶解緩衝液、EGTA[5 mM]含有Tris-HCl[5 mM、pH 7.4]に収集し、かつ氷上において15ストロークでホモジナイズした。試料を30,000×gで15分間遠心分離し、膜をペレット化した。膜を、結合緩衝液、NaCl(120 mM)、KCl(5.4 mM)、CaCl2(1.8 mM)、MgCl2(0.8 mM)、およびグルコース(5 mM)を含有するTris-HCl[20 mM、pH 7.4]に再懸濁し、かつ-80℃においてアリコートで保存した。結合アッセイ法を、飽和量(1〜300 pM)のβ-AR特異的リガンド[125I]シアノピンドロール(ICYP)を使用して、5〜10μgの膜タンパク質において行った。競合結合について、5〜10μgの膜タンパク質を、50μMのGTPγs(非加水分解性グアノシン三リン酸)で前処理し、次いで125ICYP(50 pM)および種々の濃度のフェノテロールまたはその異性体と共に総量250 μLでインキュベートした。非特異的結合を、20μMプロプラノロールの存在下で測定した。反応を、37℃で1時間、250μLの結合緩衝液中において行った。膜懸濁液へ氷冷したTris-HCl[10 mM、pH 7.4]を添加し、続いてガラス繊維フィルター(Whatman GF/C)を通して迅速に真空濾過することによって、結合反応を終了させた。各フィルターを、追加の7 mLの氷冷したTris-HCl[10 mM、pH 7.4]で3回洗浄した。湿ったフィルターの放射能をガンマカウンターにおいて測定した。全てのアッセイ法を2回通り行い、受容体密度を何ミリグラムかの膜タンパク質まで標準化した。ICYPについての最大結合部位数(Bmax)およびKdを、飽和結合等温線のScatchard分析によって測定した。競合研究からのデータを、GRAPHPAD PRISM(登録商標)ソフトウェア(GRAPHPAD PRISMは、GraphPad Software, Inc., San Diego, CAの登録商標である)を用いて、1部位競合結合曲線または2部位競合結合曲線を使用して分析した。
実施例2
(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの精製および同定
本実施例は、高度のエナンチオマー純度への(±)-フェノテロールからの(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの分割を実証する。
実施例1に記載のクロマトグラフィー条件を使用して、(±)-フェノテロールを、AD-CSPにおいて、その成分エナンチオマー、(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールへ分離した。図1に示す通り、2つの立体異性体が、1.21のエナンチオ選択性因子(α)および1.06の分割因子(Rs)で分割された。クロマトグラフィーピークの観察されたテーリングのために、2mLの中間画分を回収し、かつ廃棄した。回収されたピークを、同一のクロマトグラフィー条件を使用して分析し、かつデータによって、両方のエナンチオマーが>97%立体化学純度で調製されたことが実証された。
単離された画分の絶対立体配置の割当(assignment)を、それらのキロプチカル特性を使用して行った。両方の画分の紫外線(UV)スペクトルは、約280および230で同一の最大値を含み、2つのエナンチオマーについて同一のUV発色団を示している。円二色性(CD)スペクトルは、より保持されなかったエナンチオマー画分について、約280および215 nmで負のCDバンドを示し、一方、スペクトルは230および200 nmで正である。CDバンドのサインは、最も保持されたフェノテロール画分について逆転され、これによって前記2つの画分のエナンチオマー性質が確認される。2つのエナンチオマー画分の最も低いエネルギーUVおよびCDスペクトルを、それぞれ、図2Aおよび2Bに示す。より保持されなかったクロマトグラフィー画分は、約280 nmで負のCDバンドを示し、一方、最も保持されたクロマトグラフィー画分のCDスペクトルは、同一の波長で正のCDバンドを含んだ(図2B)。これらの結果は、画分の各々がフェノテロールエナンチオマーの1つを含有したことを示している。
最も低いエネルギーCDバンドのサインは、キラルベンジル誘導体についてのBrewster-Buta/Smith-Fontanaセクター則(Brewster and Buta, J. Am. Chem. Soc, 88: 2233-2240, 1996)を適用することによって、分離されたフェノテロールエナンチオマーの絶対立体配置を割り当てるために使用され得る。このセクター則は、ヒドロキシル部分またはアミン部分のいずれかを有する、ベンジル化合物の1Lb電子遷移に関連するCDバンドのサインを予想するために使用され、単一の立体中心を含む立体配座的に可動な芳香族化合物へ主に適用された。フェノテロールの場合、2つの立体中心が存在する。しかし、観察された光学活性は、芳香族環と立体中心との距離のため、主にアリールカルビノール部分によって決定されると考えられる。この規則の適用によって、280 nmで負のCDバンドを示したより保持されなかった画分中に含有されたフェノテロールエナンチオマーを(S,S)絶対立体配置と割り当て、280 nmで正のCDバンドを示した最も保持された画分中に含有されたフェノテロールエナンチオマーを(R,R)絶対立体配置と割り当てることができた。この割当を(S,S)-フェノテロールおよび(R,R)-フェノテロールの独立合成によって確認した。
これらの研究は、(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールが、高度のエナンチオマー純度へ(±)-フェノテロールから分離され得ることを示している。
実施例3
固定されたβ2-ARへの(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの結合のクロマトグラフィーによる測定
本実施例は、(R,R)-フェノテロールが、臨床的に使用される薬物(±)-フェノテロールのβ2-AR結合を担っていることを実証する。
β2-AR HEK-293細胞系から得られた固定化膜を含有する液体クロマトグラフィー固定相の調製、特徴決定および適用は、以前に報告された(Beigi et al., Anal. Chem., 76: 7187-7193, 2004)。例えば、Beigiら(Anal. Chem., 76: 7187-7193, 2004)は、フロンタル置換クロマトグラフィーが、固定化されたβ2-ARへの2つのβ2-ARアンタゴニスト、(S)-プロプラノロールおよびCGP 12177 Aの結合についての解離定数(Kd)を測定するために使用され得ることを実証した。マーカーリガンドとしてCGP 12177Aを使用するゾーン(zonal)置換クロマトグラフィーは、移動相への(S)-プロプラノロールの添加が(R)-プロプラノロールの添加よりも大きな置換を生じさせたので、固定化されたβ2-ARがそのエナンチオ選択性を保持することを実証した(同上)。移動相への(±)-フェノテロールの添加もまた、固定化されたβ2-ARの立体配座変化を生じさせることが示された(同上)。静止状態から活性状態へのβ2-ARならびに大抵のGタンパク質共役受容体のアゴニスト誘発性立体配座変化が記載された(Ghanoui et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 98: 5997-6002, 2001)。
本研究では、固定化されたβ2-ARカラムを、置換研究の開始前に、マーカーリガンドである[3H]-フェノテロールを含有するランニングバッファーで平衡化した。フロンタル置換クロマトグラフィーを使用して算出された結合データは、受容体の活性状態への(R,R)-フェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの結合を反映すると考えた。フロンタルクロマトグラフィーにおいて、クロマトグラフィートレースの初期フラット部分は、固定化された標的に、本研究ではβ2-ARに特異的であるマーカーリガンドの結合、ならびに固定化された膜フラグメントにおける他の部位への非特異的結合を示す。特定結合部位の飽和によってブレークスルーフロント(breakthrough front)が生じ、続いて、新たな平衡の構築を示すプラトーが生じる。移動相への第2の化合物の添加は、該化合物がβ2-ARへの結合について前記マーカーと競合する場合、クロマトグラフィートレースを左へシフトさせる。このシフトの大きさとマーカーリンガンドの濃度との関係は、標的についての前記置換物の結合親和性および活性結合部位数を算出するために使用され得る(Moaddel and Wainer, Anal. Chem. Acata, 546: 97-105, 2006)。
図3(曲線1)に示される通り、ランニングバッファーへの[3H]-フェノテロールの添加によって、予想されたフロンタルクロマトグラフィートレースを生じた。ランニングバッファーへの逓増濃度の(R,R)-フェノテロールの連続添加によって、より少ない保持容量へのクロマトグラフィートレースの対応するシフトが生じた(図3、曲線2〜4)。大きさおよびシフトならびに(R,R)-フェノテロールの対応する濃度を、等式1を使用して分析し、かつ算出された解離定数Kdは472 nMであり、利用可能な結合部位の量[P]は1カラム当たり176 pmolであった;r2=0.9999(n=2)。
ランニングバッファーへの逓増濃度の(S,S)-フェノテロールの連続添加によって、より短い保持時間へのクロマトグラフィートレースの対応するシフトが生じなかった。従って、(S,S)-フェノテロールは、固定化されたβ2-ARについて顕著な親和性を有しなかった。
クロマトグラフィー結果を実証するために、標準膜結合研究を、前記固定化β2-ARカラムを作製するために使用したのと同一のHEK-293細胞系から得られた膜を使用して行った。データは単一の結合部位の存在を反映し、(平均値±SD)Kdは、(R,R)-フェノテロールについて457±55 nM(n=4)、(S,S)-フェノテロールについて109,000±10,400 nM(n=4)であった。これらのデータは、固定化細胞膜カラムにおけるフロンタルアフィニティークロマトグラフィーが、標的受容体へのリガンド結合の大きさおよびエナンチオ選択性を測定するために使用され得ることを示している。さらに、フロンタルアフィニティークロマトグラフィーおよびリガンド競合結合研究からの結果は両方とも、(R,R)-フェノテロールが、臨床的に使用される薬物(±)-フェノテロールのβ2-AR結合を担っていることを実証している。
実施例4
合成
一般的手順:
全ての反応を、市販等級の試薬および溶媒を使用して行った。テトラヒドロフラン(THF)をナトリウムおよびベンゾフェノンにおいて還流することによって乾燥した。ジクロロメタンを水素化カルシウムにおいて還流することによって乾燥した。紫外線スペクトルをCary 50 Concentration分光光度計において記録した。旋光度をRudolph Research Autopol IVにおいて行った。内部標準としてテトラメチルシランを使用してVarian Mercury VMX 300MHz分光光度計においてNMRスペクトルを記録した。NMR多重度は、以下の略語を使用して報告された:s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;p、五重線;m、多重線;apt.、見掛け上;およびbr、ブロード。低分解能質量スペクトルを、エレクトロスプレー(ESI)および大気圧化学イオン化(APCI)プローブの両方を備えたFinnigan LCQDuo LC MS/MS大気圧化学イオン化(API)四重極イオントラップMSシステムにおいて得た。分析HPLCデータは、PDA検出を備えたWaters 2690 Separations Moduleを使用して得た。方法(a):ThermoHypersil BDS 100 x 4.6 mm C18カラム、H2O/CH3CN/TFA。方法(b):Brownlee Phenyl Spheri-5 100 x 4.6 mm、水/アセトニトリル/TFA。方法(c):Vydac 150 x 4 mm C18カラム、H2O/イソプロパノール/TFA。方法(d):CHIRALPAK(登録商標)AD-H 250 x 10 mm、95/5/0.05 CH3CN/イソプロパノール/ジエチルアミン。Merckシリカゲル(230-400メッシュ)をオープンカラムクロマトグラフィーに使用した。
3',5'-ジベンジルオキシ-α-ブロモアセトフェノン(46)
45 mLのCHCl3中の2.4 mL(46 mmol)のBr2の溶液を、40 mLのCHCl3中の9.66 g(29 mmol)の3',5'-ジベンジルオキシアセトフェノン(45)の冷却された撹拌溶液へ1時間にわたって滴下した。得られた溶液を、十分に撹拌しながら1時間にわたって室温へ加温し、次いで100 mLの冷H2Oへ注ぎ、かつ分液漏斗へ移し、ここでCHCl3画分を単離し、鹹水溶液で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、かつ10.8 gまで濃縮した。この物質を、500 gのシリカゲルへ適用し、CHCl3で溶離して、2.65 g(22%)の化合物46を白色固体として得た。
Figure 0005837890
化合物46の3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリン[(R)-8、(S)-8]へのエナンチオ選択的還元についての一般的手順
アルゴン雰囲気下で、ジエチルエーテル中の5.0 Mホウ素-メチルスルフィド錯体(BH3SCH3)約0.06 mL(0.316 mmol, 10 mol%)を、3 mLの乾燥THF中の25 mg(0.16 mmol, 5 mol%)の適切なcis-1-アミノ-2-インダノールの溶液へ一度に添加した。この物質をアルゴン下で30分にわたって20 mLの乾燥THF中の1.3 g(3.16 mmol)の3',5'-ジベンジルオキシ-α-ブロモアセトフェノンの溶液へ添加し、同時に、約0.05 mL パルスで、0.45 mLの5.0 Mホウ素-メチルスルフィド錯体を添加した。得られた溶液をアルゴン下で2時間撹拌し、次いで、ガス発生を制御しながら、3 mLのメタノールで反応停止した。溶媒を真空中で除去し、得られた残渣を、30 mLのCHCl3に溶解し、かつ25 mLの0.2 M硫酸、続いて20 mLの鹹水で洗浄し、次いで乾燥し(Na2SO4)、濾過し、かつ蒸発させた。
(R)-(-)-3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリン[(R)-8]
エナンチオ選択的還元触媒として(1R,2S)-(+)-cis-1-アミノ-2-インダノールを用いて調製して、1.02 g(78%)の(R)-8が微細な白色粉末として生じた。
Figure 0005837890
(S)-(+)-3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリン[(S)-8]
エナンチオ選択的還元触媒として(1S,2R)-(-)-cis-1-アミノ-2-インダノールを用いて調製して、1.07 g(82%)の(S)-8が微細な白色粉末として生じた。
Figure 0005837890
4-ベンジルオキシフェニルアセトン(34)
10.0 g(41.3 mmol)の4-ベンジルオキシフェニル酢酸(31)へ、20 mLの無水酢酸および20 mLのピリジンを添加し、これを撹拌しながらアルゴン雰囲気下で6時間加熱還流した。溶媒を蒸発させ、かつ残渣をCHCl3(50 mL)に溶解し、かつ1N NaOH(2×50 mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過し、かつ11.8 gの琥珀色オイルになるまで蒸発させた。170℃へ設定されたオイルバス中において0.1 mm Hgで真空蒸留し、続いて、8/2 CH2Cl2-ヘキサンで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって、2.68 g(27%)が生じた。
Figure 0005837890
フェニルアセトン(35)
20.4 g(0.15 mol)のフェニル酢酸、無水酢酸(70 mL)およびピリジン(70 mL)の溶液を、撹拌しながらアルゴン雰囲気下で6時間加熱還流した。溶媒を蒸発させ、かつ残渣を、CHCl3(100 mL)に溶解し、1N NaOH(2×100 mL)で洗浄し、かつ有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過し、かつ蒸発させて、20.4 gが生じた。160℃へ設定されたオイルバス中において0.1 mm Hgで真空蒸留し、続いて、1/1 ヘキサン/CH2Cl2で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって、5.5 g(27%)が生じた。
Figure 0005837890
1-ナフタレン-1-イル-プロパン-2-オン(36)
37.2 g(20 mmol)のナフトエ酸(33)、無水酢酸(100 mL)およびピリジン(100 mL)の溶液を、撹拌しながらアルゴン雰囲気下で6時間加熱還流した。溶媒を蒸発させ、残渣をCHCl3(200 mL)に溶解し、かつ1N NaOH(2×150 mL)で洗浄し、有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過し、かつ蒸発させて、34.6 gが生じた。170℃へ設定されたオイルバス中において0.5 mm Hgで蒸留し、続いて、1/1 ヘキサン/CH2Cl2で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって、9.7 g(26%)が生じた。
Figure 0005837890
2-ベンジルアミノプロパン類(37〜39、42、43)の調製についての一般的手順
0℃へ冷却したCH2Cl2(c=0.5 M)中の適切なケトン(1 eq)へ、氷HOAc(1 eq)続いてベンジルアミン(1 eq)およびNaBH(AcO)3(1.4 eq)を添加した。反応混合物を、室温へ加温し、かつアルゴン下で20時間撹拌した。反応混合物を冷却し(氷浴)、10%NaOH(5 eq)を滴下し、次いでCH2Cl2へ抽出し、鹹水で洗浄した。次いで、生成物を、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、かつ蒸発させた。
1-(4-ベンジルオキシ)-2-ベンジルアミノプロパン(37)
4-ベンジルオキシ-フェニルアセトン(34;2.0 g, 8.3 mmol)から調製して、2.61 g(95%)を黄褐色固体として生成した。
Figure 0005837890
1-フェニル-2-ベンジルアミノプロパン(38)
フェニルアセトン(35;5.5 g, 41 mmol)から調製して、8.4 g(91%)を黄褐色固体として生成した。
Figure 0005837890
1-(1'-ナフチル)-2-ベンジルアミノプロパン(39)
1-ナフタレン-1-イル-プロパン-2-オン(36;5.0 g, 27.1 mmol)から調製して、7.0 g(94%)を黄褐色固体として生成した。
Figure 0005837890
1-(4'-メトキシフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン(42)
4-メトキシフェニル-アセトン(40;2.75 g, 13.1 mmol)から調製して、2.31 g(97%)を生成した。
Figure 0005837890
1-(4'-ニトロフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン(43)
4-ニトロフェニル-アセトン(41;4.95 g, 28 mmol)から調製して、7.32 g(98%)を琥珀色オイルとして生成した。
Figure 0005837890
2-ベンジルアミノプロパン類[(R)-10〜14、(S)-10〜14]のエナンチオマー分離についての一般的手順
適切なラセミ2-ベンジルアミノプロパン(1 eq)を、メタノール(c=0.5 M)中の適切な光学的に活性であるマンデル酸(1 eq)と混合し、かつ溶液が均質化されるまで還流し、次いでRTまで冷却した。結晶を濾過し、回収し、かつメタノール(c=0.3 M)から2回再結晶化させて、光学的に活性である2-ベンジルアミノプロパン・マンデル酸塩を生成した。NMRおよび回転データを回収するために、マンデル酸塩を10%K2CO3およびCHCl3に分配し、有機抽出物を乾燥し(Na2SO4)、かつ蒸発させることによって、前記塩を遊離アミンへ変換した。
(R)-(-)-1-(4'-ベンジルオキシ)-2-ベンジルアミノプロパン[(R)-10]
2.13 g(6.42 mmol)の1-(4-ベンジルオキシ)-2-ベンジルアミノプロパン(37)の試料を、972 mg(6.42 mmol)の(R)-(-)-マンデル酸と反応させて、後処理後、295 mg(エナンチオマー存在量に基づいて28%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(S)-(+)-1-(4'-ベンジルオキシ)-2-ベンジルアミノプロパン[(S)-10]
(R)-10の分離からの洗浄液を、濃縮し、かつクロロホルム50 mLおよび10%K2CO3水溶液50 mLに分配した。有機物を鹹水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、かつ1.70 g(5.1 mmol)になるまで蒸発させた。有機物を782 mg(5.1 mmol)の(S)-(+)-マンデル酸(前述)と共に還流し、かつ3回結晶化させて、670 mgの(S)-アミン・(S)-マンデル酸塩を得た。(S)-アミン・(S)-マンデル酸塩をエーテル中において粉砕し、次いでクロロホルム30 mLおよび10%K2CO3水溶液20 mLに分配した。有機分配物を鹹水で洗浄し、次いで乾燥し(Na2SO4)、濾過し、かつ蒸発させて、366 mgの遊離アミン(エナンチオマー存在量に基づいて33%)が生じた。
Figure 0005837890
(R)-(-)-1-(4'-メトキシフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン[(R)-11]
3.02 g(11.8 mmol)の1-(4'-メトキシフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン(42)の試料を、1.8 g(11.8 mmol)(S)-(+)-マンデル酸と反応させて、後処理後、530 mg(エナンチオマー存在量に基づいて35%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(S)-(+)-1-(4'-メトキシフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン[(S)-11]
3.36 g(13.2 mmol)のラセミ体1-(4'-メトキシフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン(42)の試料を、2.0 g(13.2 mmol)の(R)-(-)-マンデル酸と反応させて、後処理後、740 mg(エナンチオマー存在量に基づいて44%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(R)-(-)-1-(4'-ニトロフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン[(R)-12]
2.0 g(7.3 mmol)の1-(4'-ニトロフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン(43)の試料を、1.13 g(7.3 mmol)の(S)-(+)-マンデル酸と反応させて、後処理後、486 mg(エナンチオマー存在量に基づいて49%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(S)-(+)-1-(4'-ニトロフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン[(S)-12]
2.0 g(7.3 mmol)の1-(4'-ニトロフェニル)-2-ベンジルアミノプロパン(43)の試料を、1.13 g(7.3 mmol)の(R)-(-)-マンデル酸と反応させて、後処理後、640 mg(エナンチオマー存在量に基づいて65%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(R)-(-)-1-フェニル-2-ベンジルアミノプロパン[(R)-13]
2.62 g(11.6 mmol)の1-フェニル-2-ベンジルアミノプロパン(38)の試料を、1.77 g(11.6 mmol)の(S)-(+)-マンデル酸と反応させて、後処理後、747 mg(エナンチオマー存在量に基づいて57%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(S)-(+)-1-フェニル-2-ベンジルアミノプロパン[(S)-13]
5.0 g(22.2 mmol)のラセミ1-フェニル-2-ベンジルアミノプロパン(38)の試料を、3.4 g(22.2 mmol)の(R)-(-)-マンデル酸と反応させて、後処理後、2.15 g(エナンチオマー存在量に基づいて86%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(R)-(-)-1-(1'-ナフチル)-2-ベンジルアミノプロパン[(R)-14]
(S)-14の分離から回収した洗浄液を濃縮し、かつクロロホルム40 mLおよび10%K2CO3水溶液40 mLに分配した。有機分配物を20 mLの鹹水で洗浄し、次いで乾燥し(Na2SO4)、1.16 g(4.2 mmol)の遊離アミンが得られ、これを640 mg(4.2 mmol)の(S)-(+)-マンデル酸と反応させた。588 mg(エナンチオマー存在量に基づいて46%)の遊離アミンが得られた。
Figure 0005837890
(S)-(+)-1-(1'-ナフチル)-2-ベンジルアミノプロパン[(S)-14]
2.6 g(9.4 mmol)の1-(1'-ナフチル)-2-ベンジルアミノプロパン(39)の試料を、1.44 g(9.4 mmol)の(R)-(-)-マンデル酸と反応させて、後処理後、420 mg(エナンチオマー存在量に基づいて21%)の遊離アミンが生じた。
Figure 0005837890
(R)-(-)-2-ベンジルアミノヘプタン[(R)-15]
0.65 mL(4.4 mmol)の(R)-(-)-2-アミノヘプタン(R-44)の試料、0.44 mL(4.4 mmol)のベンズアルデヒドおよび0.1 mLのHOAcを、40 mLのCH2Cl2中において混合し、次いで0℃へ冷却した。反応混合物へ2.75 mg(13 mmol)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを一度に添加し、これをアルゴン下において室温で28時間撹拌した。反応混合物を30 mLのCH2Cl2で希釈し、氷浴中において冷却し、かつ80 mLの5%NaOH(水溶液)を添加した。画分を分離し、有機物を乾燥し(Na2SO4)、かつ638 mg(71%)の(R)-15になるまで蒸発させた。
Figure 0005837890
(S)-(+)-2-ベンジルアミノヘプタン[(S)-15]
0.15 mL(1 mmol)の(S)-(+)-2-アミノヘプタン((S)-44)の試料、0.1 mL(1 mmol)のベンズアルデヒドおよび0.1 mLのHOAcを10 mLのCH2Cl2中において混合し、かつ0℃へ冷却し、次いで650 mg(3 mmol)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを一度に添加した。反応混合物をアルゴン下において室温で28時間撹拌した。混合物を、10 mLのジクロロメタンで希釈し、氷浴中において冷却し、かつ20 mLの5%NaOH(水溶液)を添加した。画分を分離し、有機物を乾燥し(Na2SO4)、かつ154 mg(70%)になるまで蒸発させた。
Figure 0005837890
フェノテロール類似体の調製、手順A
エポキシドを形成するために、適切な3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリン((R)-8)または(S)-8(1 eq)を、1:1 THF/MeOH(c=0.3 M)中においてK2CO3(1.4 eq)と混合し、かつアルゴン下において室温で2時間撹拌した。溶媒を除去し、かつ残渣をトルエンおよびH2Oに分配した。トルエン画分を単離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、かつ蒸発させた。残渣を適切な遊離ベンジルアミン(R)-または(S)-10〜15、28(0.95 eq)と共に十分な量のトルエンに溶解し、かつ高真空下で再度蒸発させ、微量のH2Oを除去した。得られた無色残渣をアルゴン下で20時間120℃へ加熱し、冷却し、かつ1H NMRおよび質量分析によって調べ、カップリングを確認した。残渣を加熱しながらEtOH(c=0.07 M)に溶解し、かつParrフラスコに移し、ここで、それを24時間10%(wt)Pd/C(10 mg cat/65 mg ブロモヒドリン)において50 psiの水素で水素化した。完全な脱ベンジル化を、質量分析によって確認した。混合物をセライトで濾過し、濾過ケーキをイソプロパノールでリンスし、かつ濾液を濃縮した。残渣を1:1 イソプロパノール/EtOH(c=0.2 M)に溶解し、かつ0.5 eqのフマル酸と共に30分間還流した。反応物を冷却し、かつ溶媒を除去した。粗物質をオープンカラムクロマトグラフまたは分取クロマトグラフによって精製した。
(R,R)-1および(S,S)-1のカラム分離、手順B
75 mgのフェノテロールHBrの試料を、1.5 mLの95/5/0.05 CH3CN/イソプロパノール/HNEt2に溶解し、かつwaters 2690 Separations Module, PDA(280 nmに設定)を使用するCHIRALPAK(登録商標)AD-H 10 x 250 mm 5μm半分取カラムへ100μL注入で適用した。溶離溶媒は、95/5/0.05 CH3CN/イソプロパノール/HNEt2、5 mL/分であった。(S,S)および(R,R)異性体についての保持時間は、それぞれ、4.8分および7.8分であった。
(R,R)-(-)-フェノテロール[(R,R)-1]
手順Bに従って得られて、蒸発後に40 mgを回収した。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)H2O中0.1%ジエチルアミン、0.50 mL/分、254 nm、tR 2.90分、99%純粋;(d)tR 7.8分、>99%純粋。
(S,S)-(+)-フェノテロール[(S,S)-1]
手順Bに従って得られて、蒸発後に35 mgが生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)H2O 中0.1%ジエチルアミン、0.50 mL/分、254 nm、tR 2.72分、>99%純粋;(d)tR 4.8分、>99%純粋。
(R,S)-(-)-フェノテロールフマレート[(R,S)-1]
手順Aに従って(R)-8および(S)-10から調製して、168 mg(64%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)70/30/0.05. 1.00 mL/分、282 nm、tR 1.35分、>99%純粋;(b)50/50/0.05. 1.0 ml、0.50 mL/分、254 nm、tR 2.72分、>99%純粋;(d)tR 4.8分、1.00 mL/分、280 nm、tR 2.10分、97.5%純粋。
(S,R)-(+)-フェノテロールフマレート[(S,R)-1]
手順Aに従って(S)-8および(R)-10から調製して、104 mg(39%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)70/30/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.35分、95.9%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、280 nm、tR 2.06分、99%純粋。
(R,R)-(-)-1-p-メトキシフェニル-2-(β-3',5'-ジヒドロキシ-フェニル-β-オキシ)エチルアミノ-プロパンフマレート[(R,R)-2]
手順Aに従って(R)-8および(R)-11から調製して、172 mg(38%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)70/30/0.05、1.0 mL/分、282 nm、tR 1.54分、96.5%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.51分、95.9%純粋。
(S,S)-(+)-1-p-メトキシフェニル-2-(β-3',5'-ジヒドロキシ-フェニル-β-オキシ)エチルアミノ-プロパンフマレート[(S,S)-2]
手順Aに従って(S)-8および(S)-11から調製して、318 mg(53%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)70/30/0.05、1.0 mL/分、282 nm、tR 1.67分、96.0%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.51分、97.1%純粋。
(R,S)-(-)-1-p-メトキシフェニル-2-(β-3',5'-ジヒドロキシ-フェニル-β-オキシ)エチルアミノプロパンフマレート[(R,S)-2]
手順Aに従って(R)-8および(S)-11から調製して、160 mg(38%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)70/30/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.40分、99%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.51分、96.1%純粋。
(S,R)-(+)-1-p-メトキシフェニル-2-(β-3',5'-ジヒドロキシフェニル-β-オキシ)エチルアミノプロパンフマレート[(S,R)-2]
手順Aに従って(S)-8および(R)-11から調製して、200 mg(51%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)70/30/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.42分、97.7%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.52分、97.8%純粋。
(R,R)-(-)-5-{2-[2-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチルアミノ]-1-ヒドロキシエチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,R)-3]
手順Aに従って(R)-8および(R)-12から調製して、88 mg(42%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)80/20/0.05、0.70 mL/分、276 nm、tR 2.07分、95.5%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、282 nm、tR 2.60、97.16%純粋。
(S,S)-(+)-5-{2-[2-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチルアミノ]-1-ヒドロキシエチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,S)-3]
手順Aに従って(S)-8および(S)-12から調製して、56 mg(25%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)80/20/0.05、0.7 mL/分、276 nm、tR 2.01分、<99%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、282 nm、tR 2.50分、99.4%純粋。
(R,S)-(-)-5-{2-[2-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチルアミノ]-1-ヒドロキシエチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,S)-3]
手順Aに従って(R)-8および(S)-12から調製して、72 mg(35%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)80/20/0.05、0.7 mL/分、276 nm、tR 2.08分、95.0%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、282 nm、tR 2.51分、97.4%純粋。
(S,R)-(+)-5-{2-[2-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチルアミノ]-1-ヒドロキシエチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,R)-3]
手順Aに従って(S)-8および(R)-12から調製して、93 mg(42%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)70/30/0.05、1.00 mL/分、280 nm、tR 1.45分、99%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、282 nm、tR 2.63分、95.33%純粋。
(R,R)-(-)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチル-2-フェニルエチルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,R)-4]
手順Aに従って(R)-8および(R)-13から調製して、92 mg(26%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)50/50/0.05、1.00 mL/分、282 nm;tR 1.73分;99%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.46分、97.5%純粋。
(S,S)-(+)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチル-2-フェニルエチルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,S)-4]
手順Aに従って(S)-8および(S)-13から調製して、184 mg(51%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)50/50/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.49分;98.4%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.35分、99%純粋。
(R,S)-(-)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチル-2-フェニルエチルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,S)-4]
手順Aに従って(R)-8および(S)-13から調製して、170 mg(45%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)50/50/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.53分、99%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.46分、98.5%純粋。
(S,R)-(+)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチル-2-フェニルエチルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,R)-4]
手順Aに従って(S)-8および(R)-13から調製して、212 mg(59%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)50/50/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.51分、99%純粋;(b)50/50/0.05、2.0 mL/分、276 nm、tR 1.43分、99%純粋。
(R,R)-(-)-5-{1-ヒドロキシ-2-[1-メチル-2-(1-ナフチル)エチルアミノ]エチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,R)-5]
手順Aに従って(R)-8および(R)-14から調製して、135 mg(46%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)60/40/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 2.08分、95.7%純粋;(b)50/50/0.05、1.5 mL/分、282 nm、tR 2.20分、99%純粋。
(S,S)-(+)-5-{1-ヒドロキシ-2-[1-メチル-2-(1-ナフチル)エチルアミノ]エチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,S)-5]
手順Aに従って(S)-8および(S)-14から調製して、118 mg(40%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)60/40/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 2.35分、98.9%純粋;(b)50/50/0.05、1.5 mL/分、282 nm、tR 2.26分、97.2%純粋。
(R,S)-(-)-5-{1-ヒドロキシ-2-[1-メチル-2-(1-ナフチル)エチルアミノ]エチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,S)-5]
手順Aに従って(R)-8および(S)-14から調製して、114 mg(39%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)60/40/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tr 2.30分、98.6%純粋;(b)50/50/0.05、1.5 mL/分、282 nm、tR 2.36分、99%純粋。
(S,R)-(+)-5-{1-ヒドロキシ-2-[1-メチル-2-(1-ナフチル)エチルアミノ]エチル}-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,R)-5]
手順Aに従って(S)-8および(R)-14から調製して、123 mg(42%)が生じた。
Figure 0005837890
HPLC:(a)60/40/0.05、1.0 mL/分、282 nm、tR 1.95、95.7%純粋;(b)50/50/0.05、1.5 mL/分、282 nm、tR 2.29分、95.7%純粋。
(R,R)-(-)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチルヘキシルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,R)-6]
手順Aに従って(R)-8および(R)-15から調製して、45 mg(29%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(c)70/30/0.1、1.0 mL/分、276 nm、tR 2.18分、96.6%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、279 nm、tR 2.06分、98.9%純粋。
(S,S)-(+)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチルヘキシルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,S)-6]
手順Aに従って(S)-8および(S)-15から調製して、96 mg(43%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(c)70/30/0.1、1.0 mL/分、276 nm、tR 2.16分、97.0%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、279 nm、tR 2.11分、99%純粋。
(R,S)-(-)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチルヘキシルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R,S)-6]
手順Aに従って(R)-8および(S)-15から調製して、83 mg(38%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(c)70/30/0.1、1.0 mL/分、276 nm、tR 2.16分、97.0%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、279 nm、tR 2.07分、96.2%純粋。
(S,R)-(+)-5-[1-ヒドロキシ-2-(1-メチルヘキシルアミノ)エチル]-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S,R)-6]
手順Aに従って(S)-8および(R)-15から調製して、81 mg(38%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(c)70/30/0.1、1.0 mL/分、276 nm、tR 2.16分、99%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、279 nm、tR 2.02分、95.7%純粋。
(R)-(-)-5-(1-ヒドロキシ-2-フェネチルアミノエチル)-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(R)-7]
(R)-8および28から調製して、37 mg(15%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)80/20/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.47分、96.7%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、272 nm、tR 2.78分、95.1%純粋。
(S)-(+)-5-(1-ヒドロキシ-2-フェネチルアミノエチル)-1,3-ベンゼンジオールフマレート[(S)-7]
(S)-8および28から調製して、51 mg(17%)が生じた。
Figure 0005837890
;HPLC:(a)80/20/0.05、1.00 mL/分、282 nm、tR 1.47分、98.6%純粋;(b)50/50/0.05、1.0 mL/分、272 nm、tR 2.74分、98.8%純粋。
(R,R)-(-)-エチルフェノテロール
Figure 0005837890
MS:(LCQ DUO ESI陽イオン質量スペクトル)M/z (rel):318 (100, M+H)。HPLC 1:カラム:Varian Sunfire C18 100x4.6;70/30/0.1 水/アセトニトリル/TFA;1.0 mL/分;Det:278 nm;2.76分(フマレート、6.99%)、3.57分(90.11%);純度:97.1%。HPLC 2:カラム:Chiralpak IA 250x10;90/10/0.05 アセトニトリル/メタノール/TFA;2.0 mL/分;Det:278 nm;5.26(RR異性体、92.37%)、7.11分(フマレート、5.02%);純度97.5%。比旋光度:[α]D=-15.6(遊離アミン、0.5%MeOH)。
(R,S)-(-)-エチルフェノテロール
Figure 0005837890
MS:(LCQ DUO ESI陽イオン質量スペクトル)M/z (rel):318 (100, M+H)。HPLC 1:カラム:Varian Sunfire C18 100x4.6;70/30/0.1 水/アセトニトリル/TFA;1.0 mL/分;Det:278 nm;2.79分(フマレート、3.34%)、3.56分(96.11%);純度:99.5% HPLC 2:カラム:Chiralpak IA 250x10;90/10/0.05 アセトニトリル/メタノール/TFA;2.0 mL/分;Det:278 nm;5.88(RS異性体、97.08%)、7.12分(フマレート、2.92%);純度>99%。比旋光度:[α]D=-7.2(遊離アミン、0.5%MeOH)。
C22H25NO4O・0.5C4H4O4
Figure 0005837890
UV:(メタノール), λmax (ε):298 nm (4,970), 286 (9,920), 234 (22,600), 210 (42,500)。MS:(LCQ DUO ESI陽イオン質量スペクトル)M/z (rel): 368 (100, M+H)。比旋光度:[α]D=-28.8 (遊離アミン;0.5%MeOH)。
C22H25NO4・0.5C4H4O4
Figure 0005837890
UV:(メタノール), λmax (ε):298 nm (5,430), 286 (5,710), 233 (25,100), 210 (43,200)。MS:(LCQ DUO ESI陽イオン質量スペクトル)M/z (rel): 368 (100, M+H)。比旋光度:[α]D=-15.8 (遊離アミン;0.5%MeOH)。
1〜6の4つの立体異性体の合成における工程は、(R)-3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリンもしくは(S)-3',5'-ジベンジルオキシフェニルブロモヒドリンから形成されたエポキシドと適切なベンジル保護された2-アミノ-3-ベンジルプロパン(1〜5)の(R)-エナンチオマーもしくは(S)-エナンチオマーまたはN-ベンジル-2-アミノヘプタン(6)の(R)-エナンチオマーもしくは(S)-エナンチオマーとのカップリングであった(スキームI)。
Figure 0005837890
(R)-7および(S)-7の合成を、2-フェネチルアミンを使用して行った(スキームII)。このアプローチは、ホルモテロールの立体異性体、化合物47、図5の合成についてTrofastら(Chirality 3: 443-450, 1991)によって開発されたものと類似していた。次いで、得られた化合物をPd/C上での水素化によって脱保護し、かつフマル酸塩として精製した。
Figure 0005837890
合成において使用したキラル構築ブロックは、スキームIIIを使用して作製した。(R)-3',5'-ジベンジルオキシフェニル-ブロモヒドリンエナンチオマーおよび(S)-3',5'-ジベンジルオキシフェニル-ブロモヒドリンエナンチオマーは、ホウ素-メチルスルフィド錯体(BH3SCH3)および(1R,2S)-cis-1-アミノ-2-インダノールまたは(1S,2R)-cis-1-アミノ-2-インダノールのいずれかを使用した3,5-ジベンジルオキシα-ブロモアセトフェノンのエナンチオ特異的還元によって得た。必要とされた(R)-2-ベンジルアミノプロパン類および(S)-2-ベンジルアミノプロパン類は、対イオンとして(R)-マンデル酸または(S)-マンデル酸のいずれかを使用したrac-2-ベンジルアミノプロパン類のエナンチオ選択的結晶化によって調製した。
Figure 0005837890
実施例5
β1アドレナリン作動性受容体およびβ2アドレナリン作動性受容体についての例示的なフェノテロール類似体の結合親和性
本実施例は、フェノテロール類似体が、フェノテロールと比べてβ2-ARについて同等かそうでなければより大きな結合親和性を有することを実証する。
β1-ARおよびβ2-ARにおけるそれらの結合親和性を測定するために、化合物を各々3回まで試験した。標準化合物および未知化合物を用いた競合曲線に、少なくとも6つの濃度を含めた(3回通り)。各化合物について、その試験化合物について得られた個々の競合曲線を含むグラフを作成した。IC50値およびHill係数を、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用して算出した。Ki値を、Cheng-Prusoff変換(Biochem Pharmacol 22: 3099-3108, 1973)を使用して算出した。各試験において、標準化合物が96ウエルプレートにおいて同時に実行された。標準化合物がその化合物についての確立された平均値に近いIC50値を有さなかった場合、試験全体を廃棄し、かつ再び繰り返した。
β1-AR結合を、以前に記載された手順(Beer et al., Biochem. Pharmacol. 37: 1145-1151, 1988)に従ってラット皮質膜において行った。手短には、体重250〜350 gの雄性スプラーグドーリーラットの首を切断し、かつそれらの脳を迅速に取り出した。大脳皮質を氷上で解剖し、重量を量り、かつおよそ30 mlの50 mM Tris-HCl、pH 7.8を含有する50 ml試験管へ速やかに移した(室温で)。組織をポリトロンでホモジナイズし、かつ4℃において20,000×gで12分間遠心分離した。ペレットを、同一の様式で再び洗浄し、かつアッセイ緩衝液(20 mM Tris-HCl、10 mM MgCl2、1 mM EDTA、0.1 mMアスコルビン酸、pH 7.8)中において1 ml当たり20 mg(元の湿重量)の濃度で再懸濁させた。皮質膜調製物中に存在するβ2部位を遮断するために、30 nM ICI 118-551もまたアッセイ緩衝液へ添加した。100μlの試験薬物および100μlの[3H]CGP-12177(1.4 nM最終濃度)を含有するウェルへ、0.8 mlの組織ホモジネートを添加した。25℃で2時間後、インキュベーションを急速濾過によって終了させた。非特異的結合を10μMプロプラノロールによって測定した。
ヒトβ2-ARをコードするcDNAが安定にトランスフェクトされたHEK 293細胞(Dr. Brian Kobilka, Stanford Medical Center, Palo Alto, CAによって提供)を、以前に記載された通りに(Pauwels et al., Biochem. Pharmacol. 42: 1683-1689, 1991)、10%ウシ胎仔血清(FBS)、0.05%ペニシリン-ストレプトマイシン、および400μg/ml G418を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において増殖させた。細胞を150×25 mmプレートからこすり落とし、かつ500×gで5分間遠心分離した。ペレットを、Polytronで50 mM Tris-HCl、pH 7.7中においてホモジナイズし、27,000×gで遠心分離し、かつ同一の緩衝液に再懸濁させた。後者のプロセスを繰り返し、かつペレットを、120 mM NaCl、5.4 mM KCl、1.8 mM CaCl2、0.8 mM MgCl2、および5 mMグルコースを含有する25 mM Tris-HCl(pH 7.4)に再懸濁させた。結合アッセイ法は、1.0 mlの量で0.3 nM [3H]CGP-12177を含有した。非特異的結合を1μMプロプラノロールによって測定した。
上述の方法に従って、Ki値として表される結合親和性を、マーカーリガンドとして[3H]CGP-12177を用い、ヒトβ2-ARをコードするcDNAが安定にトランスフェクトされたHEK 293細胞系(Pauwels et al., Biochem. Pharmacol. 42: 1683-1689, 1991)から得られた膜を使用して測定した。得られたIC50値およびHill係数を、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用して各試験化合物について算出し、かつKi値を、Cheng-Prusoff変換(Biochem Pharmacol 22: 3099-3108, 1973)を使用して算出した。
Ki=IC50/(1+L/Kd)+等式1
式中、Lは[3H]CGP-12177の濃度であり、Kdは[3H]CGP-12177の結合親和性である。各試験化合物を3回アッセイした。
化合物1〜4および6の立体異性体についてのβ2-ARに対する相対的結合親和性は、
Figure 0005837890
であった(図4;下記表1)。この立体選択性は、ホルモテロール立体異性体の以前に報告された効果(Trofast et al., Chiralty 3: 443-450, 1991)およびイソプロテレノール誘導体PTFAM、化合物48、図5を用いた結合研究からの結果(Eimerl et al., Biochem. Pharmacol. 36: 3523-3527, 1987)と一致している。化合物5で、R,R異性体およびR,S異性体のKi値の間で有意な差異は見られず、従って、順序は、R,R=R,S>S,R>S,Sであった。(R)-7についてのKi値は(S)-7よりも大きく、これは、β-OH部分を含む立体中心でR配置を有するβ2-ARについての確立されたエナンチオ選択的結合選好と一致している(Eimerl et al., Biochem. Pharmacol. 36: 3523-3527, 1987;Wieland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 9276-9281, 1996;Kikkawa et al., Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998;およびZuurmond et al., Mol. Pharmacol. 56: 909-916, 1999を参照のこと)。
(表1)Ki±SEM(nM)、n=3として算出された、本研究で合成した化合物のβ2-ARへの結合親和性。フェノテロール異性体のβ1およびβ2アドレナリン作動性結合親和性の比較
Figure 0005837890
R,R異性体のみを比較した場合、(R,R)-5は、試験した化合物のうち最も高い相対親和性を有したが、(R,R)-5および(R,R)-1間の差異は統計的有意性に達しなかった(表1)。サブマイクロモル親和性を有する唯一の他の(R,R)立体異性体は、(R,R)-2であり、これは、(R,R)-5(p=0.0051)および(R,R)-1(p=0.0291)よりも有意により低い結合親和性を有したが、(R,R)-2についての平均Ki値は、(R,R)-1のそれよりもわずか23%だけ高い。p-OH部分をメチルエーテルへ変換する最小効果は、Schirrmacherら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 13: 2687-92, 2003)からの以前のデータと一致している。以前の研究において、rac-1は、インビトロ活性の有意な損失なしに[18F]-フルオロエトキシエーテルへ変換され、かつ試験測定値の精度内では、誘導体化は、β2-ARへのrac-1の結合親和性を変化させないと結論付けられた。
β1-ARについての、Ki値として表される結合親和性を、マーカーリガンドとして[3H]-CGP-12177を用いてラット皮質膜を使用して測定した(Beer et al., Biochem. Pharmacol. 37: 1145-1151, 1988)。(R,R)-5についての算出されたKiは3,349 nMであり、残りの試験化合物の全てについての結合親和性は>10,000 nMであった(表1)。β2-AR結合研究からのデータとは異なり、前記化合物の立体化学と関連し得る明確な傾向はなかった。
β2-ARおよびβ1-ARについての前記化合物の相対的選択性を、比率Kiβ1/Kiβ2を使用して測定した(表1)。特に興味深いのは、β2-ARについてのサブマイクロモル親和性を有する4つの化合物、(R,R)-1、(R,R)-2、(R,R)-5および(R,S)-5についての比率であり、これらは、ぞれぞれ、46、43、14および46であった。(R,R)-1および(R,R)-2についての結果は、β2-AR選択的アゴニスト(R,R)-TA-2005、化合物49、図5についての53という以前報告されたKiβ1/Kiβ2比率と一致している。
(R,R)-5に比べて3倍増加した選択性が(R,S)-5によって示されたので、(R,R)-5についての観察されたβ2-AR選択性低下は予想外であった。47の立体異性体を用いた以前の研究は、(R,R)-異性体および(R,S)-異性体は両方とも、β1-ARに比べてβ2-ARについて高度の選択性を有し、(R,R)-異性体の選択性は(R,S)-異性体のそれよりも大きいことを示した(Trofast et al., Chirality 3: 443-450, 1991)。これは、化合物1および2について当てはまるが、5については逆である。(S,R)-5が同様の選択性を有し(19倍)、β2-ARについてのその親和性は(R,R)-5よりも7倍だけより弱く、それぞれ、1783 nMおよび241 nMであることに注目することもまた興味深い。
これらの研究は、(R,R)-ナフチルフェノテロール類似体または(R,S)-ナフチルフェノテロール類似体が、フェノテロールの任意のアイソフォームよりも、β2-ARについてより高い結合親和性を有することを実証している。(R,R)-メトキシ フェノテロール類似体は、(R,R)-フェノテロールと同様の、β2-ARについてのKiを有する。従って、このような類似体は、β2-ARアゴニストの成功の見込みのある候補物であり、市販の(±)-フェノテロールで現在治療されている障害を治療するために恐らく使用され得る。
実施例6
比較分子場解析
本実施例は、開示される化合物を分析するための比較分子場解析(CoMFA)の使用を示す。
選択された標的における立体異性体および/またはエナンチオマーの相対的活性の分析に適用可能な3D QSAR技術である比較分子場解析を使用して、開示される化合物を分析した。
SYBYL 7.2.(TRIPOS Inc., St. Louis, MO)において実施する場合のCoMFAを行った。全ての誘導体の分子モデルを、ModelBuild手順を使用してHyperChem v.6.03(HyperCube Inc., Gainesville, FL)において作製して、足場の同一立体配座を確実にした。モデルをSYBYLへ抽出し、かつ部分原子電荷(Gasteiger-Huckel型)が算出された。フェノテロール分子のコアにおける2つの不斉炭素原子(-C*-CH2-NH-C*-CH2-)を共通構造として使用して、リガンドモデルを並べた。2つのタイプの分子場(立体的および静電気的)を、各構造を囲むグリッド(2Å間隔)格子において標本化した。距離依存誘電率を静電気算出に使用し、立体エネルギーおよび静電エネルギーの両方について30 kcal/molのエネルギーカットオフを設定した。
得られたデータベースに適用した部分最小二乗相関手順によって、4つの統計的に有意な成分が抽出され、かつ以下の検定パラメータを最善の解決法のために得た:R2=0.920、F(4,21)=60.380、推定値の標準誤差=0.223、交差検定された(リーブ・ワン・アウト(leave-one-out))R2=0.847。一般的に、静電場は、解釈される分散の48.1%を占め、立体場は51.9%を占める。得られた3D QSARモデルは、研究データ、R2=0.920およびF=60.380と十分な統計的相関を示し、かつ、交差検定されたR2値(Q2)=0.847および予測値の標準誤差(SEP)=0.309によって示される通り十分な予測力を示す(表2)。
(表2)CoMFAモデルによって予測されたpKd
Figure 0005837890
第1段階において、前記モデルを使用して、立体異性体間の識別を担う領域を同定した。CoMFA手順は、各キラル中心に接近して配置されたいくつかの異なる不斉領域を作製した。第1のキラル中心(βヒドロキシル基を有する)は、分子の後ろの電気陽性領域によって囲まれている。電気陽性領域は、水素結合形成と関連し得、偽受容体(pseudoreceptor)の好ましいドナー特性または好ましくないアクセプター特性を示す。この場合、電気陽性場の位置は、モデルの面の後ろのβ-OH部分の配向(キラル中心でS配置)が、受容体とのH結合形成を妨害することを示している。電気陽性領域は、第1のキラル中心の後ろの立体的に好ましくない領域と密接に関連している。これは、前記モデルが、R配置にあるβ-ヒドロキシル基についての選好を実証するというさらなる表示である。この中心におけるR配置についての選好は、以前のモデルおよび研究データと一致しており、これらは、R配置がβ-AR受容体における機能活性のために好ましいことを実証した(Eimerl et al., Biochem. Pharmacol. 36: 3523-3527, 1987;Wieland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 9276-9281, 1996;Kikkawa et al., Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998;およびZuurmond et al., Mol. Pharmacol. 56: 909-916, 1999を参照のこと)。
CoMFAモデルはまた、第2のキラル中心の効果も実証した。好ましい立体配置が結合データから誘導され得、ここで、化合物1〜4および6については、(R,R)-異性体が、それらのそれぞれの(R,S)-異性体と比べてより高い親和性を有し、一方、(R,R)-5および(R,S)-5についてのKi値は等しかった(表1)。従って、このモデルにおいて、より活性な異性体は、CoMFAモデルの図の面外に向いている、分子のアミノアルキル部分における立体中心にメチル部分を有するものである。これは、分子の第2のキラル中心の後ろの立体的不利領域によって表され、この部位におけるR配置についての選好を示す。
本研究において、フェノテロール分子のアミノアルキル部分のみを変更し、それにより、重要なCoMFA領域が、該分子のこの局面と関連している。得られた分析において、4つ全ての相互作用領域が芳香族部分の近くにおいて同定され、全てが、研究した誘導体の結合作用様式に関する仮説を作成するために使用され得る。
前記モデルにおいて、-OH置換基またはOCH3置換基に近い領域を包囲する大きな電気陽性領域は、これらの部分への偽受容体のH結合ドナー特性を示す。これらの相互作用は、O-誘導体である化合物1および2の、化合物3および4と比べて相対的に高い結合親和性を担い、後者の化合物において、p-アミノ置換基は、試験条件下で正に帯電されるべきである。
両方ともが芳香族系の2つの側面において平行に配置された、大きな電気陰性領域および別の電気陽性領域は、恐らく、例えば、ナフチル環などの、β2-ARと電子が豊富な芳香族部分との間のπ-πまたはπ-水素結合相互作用を示す。これは、本研究において試験された他の化合物と比べて化合物1、2および5の増加した親和性と一致している。この相互作用の規則は、(R,R)-5および(R,S)-5についてのKi値が(R,R)-1および(R,R)-2と等しかったという観察によって示唆される(表1)。
2つの立体領域は、静電気領域の近くに配置され、それぞれの領域における嵩高さを一方は好みかつ他方は好まない。このことは、前記分子のアミノアルキル部分の結合も立体的に制限されることを示している。
β2-ARへのアゴニストおよびアンタゴニストの結合が、部位特異的変異誘発技術および分子モデリング技術を使用して研究された(Eimerl et al., Biochem. Pharmacol. 36: 3523-3527, 1987;Wieland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 9276-9281, 1996;Kikkawa et al., Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998;Zuurmond et al., Mol. Pharmacol. 56: 909-916, 1999;Kontoyianni et al., J. Med. Chem. 39: 4406-4420, 1996;Furse et al., J. Med. Chem. 46: 4450-4462, 2003;およびSwaminath et al. J. Biol. Chem. 279: 686-691, 2004)。アゴニストの「カテコール」部分の結合は、TM3、TM5およびTM6と同定された膜貫通(TM)ヘリックスによって作製される結合領域内で生じるという一般的な合意が存在する。結合プロセスは、Gタンパク質活性化へ至る立体配座変化を生じさせる連続する事象である(Furse et al., J. Med. Chem. 46: 4450-4462, 2003)。このプロセスにおける重要な局面は、アゴニストのキラル炭素におけるヒドロキシル部分とTM6におけるAsn-293残基との相互作用であり、この相互作用について、R配置がキラル炭素で好ましい(Eimerl et al. , Biochem. Pharmacol. 36: 3523-3527, 1987;Kikkawa et al., Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998;およびSwaminath et al. J. Biol. Chem. 279: 686-691, 2004)。フェノテロール分子の「カテコール」部分はこの研究において変化されなかったので、CoMFAモデルにおいて、第1の立体中心におけるR配置が最も安定な複合体において好ましいということになる。
β2-ARアゴニストの結合および機能の研究の大多数は、小さなN-アルキル置換基、例えば、メチル、イソプロピルおよびt-ブチルを用いて行われた(Kontoyianni et al., J. Med. Chem. 39: 4406-4420, 1996を参照のこと)。しかし、これらの化合物はβ2-ARで活性である一方、それらはサブタイプ選択的ではない。これは、化合物49、50および51(図5)について測定されたKiβ1/Kiβ2比率によって示され、それぞれ、53、1.7および1.3であった(Kikkawa, et al. Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998)。p-メトキシフェニル部分の除去は、選択性を低下させただけでなく、それぞれのβ2Ki値が12 nM、170 nMおよび6300 nMであったので、親和性も低下させた(Kikkawa, et al. Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998)。
アミノアルキル置換基がβ2-AR選択性において果たす役割が、部位特異的変異誘発技術および分子モデリング技術を使用して研究された(Kikkawa, et al. Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998;Furse et al., J. Med. Chem. 46: 4450-4462, 2003;およびSwaminath et al. J. Biol. Chem. 279: 686-691, 2004)。モデルリガンドとして(R,R)-49を使用して、Kikkawaらは、化合物49のp-メトキシ酸素とTM7の細胞外末端に配置されたチロシン308(Y308)のヒドロキシル基との間の水素結合形成がβ2-AR選択性の原因であると決定した(Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998)。
FurseおよびLybrandは、β2-ARのデノボモデルを開発し、かつこのサブタイプといくつかのリガンド(アゴニストおよびアンタゴニスト)との分子複合体を調べた(J. Med. Chem. 46: 4450-4462, 2003)。調べられた構造の中で、(R,R)-49は、化合物2と同一のアミノアルキル置換基を有した。(R,R)-49/β2-AR複合体の試験によって、(R,R)-49のp-メトキシ基酸素が、Y308のヒドロキシ基と水素結合を形成することが明らかとなり、これは、Kikkawaら(Mol. Pharmacol. 53: 128-134, 1998)によって提案されたモデルを支持している。モデルにおいて結合された2つの酸素原子間の距離は、3.22 Åであった。しかし、リガンドのメトキシ部分はまた、3つの他の極性残基、TM6中のヒスチジン296(H296)、TM3中のトリプトファン109(W109)およびTM7中のアスパラギン312(N312)に接近して配置され、これらの各々は、(R,R)-49のアミノアルキル部分における芳香族基と相互作用し得る。
FurseおよびLybrandモデルにおいて、リガンドの酸素原子とH296の水素原子との間の距離は5.88Åであり、H296が、(R,R)-49のメトキシ基との相互作用についての代替の水素結合ドナーとして提案された。Y308およびH296はβ2-ARにおいてのみ見出され、β1-ARにおいて見出される対応する残基は、それぞれF359およびK347であるので、H296およびY308の相互作用は、β1/β2選択性の原因として提案された(Furse et al., J. Med. Chem. 46: 4450-4462, 2003)。
β1/β2選択性についての以前の研究が(R,R)-49を使用したので、本発明者らの研究において合成した化合物の(R,R)-立体異性体のサブタイプ選択性を、(R,R)-49のサブタイプ選択性と比較した。本研究からのデータは、Y308および/またはH296とアゴニストのp-置換基上の酸素原子との間の水素結合形成がβ2-AR選択性に関与することを示唆している。相互作用は、(R,R)-1および(R,R)-2で可能であり、これらの化合物についてのKiβ1/Kiβ2比率はそれぞれ43および46であり、これらは、(R,R)-49について測定された53というKiβ1/Kiβ2比率に匹敵する。化合物3、4、6および7についてのKiβ1/Kiβ2比率は<10であり、それらがY308またはH296と水素結合を形成する能力を有しないという事実を反映している。水素結合相互作用はまた、-OH置換基または-OCH3置換基に近い領域を囲む大きな電気陽性領域を同定するCoMFAモデルによって示唆され、偽受容体の水素結合ドナー特性を示している。
本研究からのデータにより、該芳香族部分が受容体と水素結合を形成することができない場合であっても、化合物のアミノアルキル部分における芳香族部分が、Kiおよびサブタイプ選択性に寄与することも示唆される。これは、<3,000 nMであった化合物1〜5の(R,R)-異性体についてのKiβ2値と、9,000 nMであった(R,R)-6のKiβ2値との比較によって、ならびに、化合物6がサブタイプ選択性を示さなかったが、1〜5については≧9であったKiβ1/Kiβ2比率によって実証される(表1)。前記データを説明する1つの可能性のある機序は、π-水素結合形成である。芳香族環のπ電子雲は、水素結合アクセプターとして機能し得、しかし相互作用は通常の水素結合の約半分の強さであると推定された(Levitt and Perutz J. Mol. Biol. 201: 751-754, 1998)。(R,R)-3および(R,R)-4または(R)-7と比べて(R,R)-5についてのより高い親和性およびサブタイプ選択性は、他の芳香族環と比べてナフチル環におけるより大きいπ電子分布と一致している。
CoMFAモデルはまた、両方とも芳香族環に平行に配置された、大きな電気陰性領域および別の電気陽性領域を同定し、これらは、恐らく、例えば、ナフチル環などの、β2-ARと電子が豊富な芳香族部分との間のπ-πまたはπ-水素結合相互作用と関連している。相互作用リガンドとして(R,R)-49を用いてFurseおよびLybrandによって開発されたモデルを使用して、Y308、H296、W109およびN312を、π-πおよび/またはπ-水素結合相互作用の可能性のある原因として同定した。β2-ARモデルにおいて、(R,R)-49におけるp-メトキシ部分とW109およびN312との推定される距離は、それぞれ、4.80Åおよび3.45Åであった。W109およびN312は全てのβ-ARサブタイプにおいて完全に保存されているので、CoMFAモデルによって示唆された相互作用は、観察されたβ1/β2選択性ではなく、他の(R,R)-異性体と比べて(R,R)-1、(R,R)-2および(R,R)-5について増加した親和性の原因ということになり得る。
本研究および得られたCoMFAモデルからのデータは、β2-ARとの試験した化合物の結合プロセスは、アゴニストのアミノアルキル部分におけるキラル中心と受容体における立体的に制限された部位との相互作用を含むことを示している。立体的に制限された部位の存在は、β2-ARとのアゴニスト複合体およびアンタゴニスト複合体についての3Dモデルの開発において得られたデータから以前示唆された(Kobilka, Mol. Pharm. 65: 1060-1062, 2004)。例えば、(R,R)-49、およびアミノアルキル部分における立体中心でメチル基よりも大きな置換基を有する同様の化合物は、リガンド-受容体複合体に不利的に影響する顕著な立体的相互作用を生じさせると示唆された。
β2-ARへのアゴニストの結合は、アゴニストと受容体との間の連続的な相互作用が対応する立体配座変化を生じさせる、多段階の相互に関連するプロセスと記載された(Kobilka, Mol. Pharm. 65: 1060-1062, 2004)。CoMFAモデルは最終のアゴニスト/β2-AR複合体を反映しており、立体的制限部位の効果を理解するために、この部位との相互作用が結合プロセスの結果に対して有する効果を考慮する必要がある。本CoMFAモデルの詳細な説明は、Jozwiakら(J. Med. Chem., 50 (12): 2903 -2915, 2007)に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
アゴニストの「カテコール」部分とTM3、TM5およびTM6によって作製される結合領域(第1の結合領域)との相互作用を仮定すると、これらの相互作用は、立体的制限部位に対してアゴニストのアミノアルキル部分の位置を固定し、かつ恐らくこの部位を作製さえする。CoMFAモデルにおいて、前記部位における立体制限は、アミノアルキル部分のキラル中心のメチル部分に、該モデルの面外へ向くことを強いる。
N原子周りの自由回転のために、メチル部分を有するキラル中心における立体配置は、恐らく、立体制限部位との相互作用を最小化する該分子の能力に影響を与えない可能性がある。しかし、例えば、CoMFAモデルの面外に向いているメチル基との、最小エネルギー立体配座において、第2の結合領域に対するアミノアルキル部分の残りのセグメントの配向は、立体化学によって影響される。実際、R配置およびS配置は、第2の結合領域に対して鏡像関係を生じさせる。この状況は図4に示されており、ここで、(R,R)-5および(R,S)-5の、カテコール、第1のキラル中心およびメチル部分が、互いの上に重ねられている。
β2-AR選択性の原因を解明する研究は、主として(R,R)-49を使用し、サブタイプ選択性に対するキラリティーの効果の1つの以前の研究は、(R,R)-47が(R,S)-47よりも高いβ2-AR選択性を有することを報告した(Trofast et al., Chiralty 3: 443-450, 1991)。従って、β2-ARにおける(R,R)-5および(R,S)-5の観察された等しい親和性および機能活性ならびに(R,S)-5の3倍増加したβ2-AR選択性は、予想外の結果であった。これらの結果の1つの可能性のある説明は、(R,S)-5のナフチル部分が、Y308およびH296によって画定された部分と相互作用せず、β2-AR上の別の部位へ指向し、かつ結合するということである。この相互作用はまた、サブタイプ選択性ならびに増加した結合親和性およびアゴニスト活性を伝達するかまたはこれらに関与する。β2-AR選択性の以前のモデルは(R,R)-異性体のみを使用したので、この部位が見落とされていた可能性がある。
前記データの別の説明は、SokolovおよびZefirovによって提案された「ロッキングテトラヘドロン(rocking tetrahedron)」キラル認識機序によって示唆される(Doklady Akademii Nauk SSSR 319: 1382-1383, 1991)。分子キラル認識へのこのアプローチにおいて、エナンチオマーリガンドは、2つの結合相互作用によってキラルセレクターへ固定される。前記相互作用は、1配向だけが可能となるように、非等価かつ指向性でなければならない。拘束されたエナンチオマーは、依然として、立体配座可動性を有し、キラル中心における残りの部分は、同一ではなく重複する立体体積を排除する。どこでおよびどの程度キラルセレクターがこれらの立体体積と相互作用するかが、プロセスのエナンチオ選択性を決定する。キラルセレクターのキラリティーがリガンドの面に対して垂直な相互作用を配置する場合、エナンチオ選択性は観察されない。垂直からの逸脱が増大するにつれ、R配置またはS配置に対するエナンチオ選択性が増加する。
(R,R)-5および(R,S)-5に関して、CoMFAモデルの立体制限部位および第1の結合領域との相互作用は、第2のキラル中心における残りの構成要素を第2の結合領域に対して、鏡像でありながら、同一の配向に配置する2つの非等価かつ指向性である相互作用である。上述した通り、化合物5の1-ナフチル部分とY308およびH296との相互作用は、観察されたβ2-AR選択性の原因であると考えられる。1-ナフチル環が同一ではなく重複する立体体積を排除する場合、観察されるKiβ2値およびサブタイプ選択性は、以下を示す:(1)Kiβ2-AR値は、1-ナフチル部分とY308およびH296との間のπ-水素結合およびπ-π相互作用、ならびに他の残基、例えば、W109およびN312とのさらなる非β2-AR特異的相互作用の、総計を示すこと;(2)(R,S)-5によって排除された立体体積は、(R,R)-5に比べて、Y308およびH296とナフチル部分のπ雲との相互作用の可能性を増大させること;ならびに(3)(R,R)-5によって排除された立体体積は、(R,S)-5と比べて、非β2-AR特異的部位との相互作用の可能性を増大させること。
第2のキラル中心における立体配置および立体配座に基づくキラル選択性の効果はまた、(R,R)-3、(R,S)-3および(R)-7の親和性およびサブタイプ選択性によって示される(表1)。RからSへの第2のキラル炭素におけるキラリティーの反転によって、(R,R)-3/β2-AR複合体に比べて(R,R)-3/β2-AR複合体のKiβ2値が約3倍低減したが、それらのKiβ1値間に有意差は存在しなかった。(R,S)-3に対する(R,R)-3について観察された、それぞれ(R,S)-3が4に対して(R,R)-3が9である増加したサブタイプ選択性は、Kiβ2値の差異を本質的に反映しており、これは、アミノアルキル鎖の芳香族部分を、第2の結合領域を含む電気陽性領域および電気陰性領域と接触させるために必要とされる増大した立体配座エネルギーの反映であり得るか、またはこの相互作用が生じる可能性の減少であり得る。
第2のキラル中心におけるメチル部分の除去、およびその結果としてこの部位におけるキラリティーの除去((R)-7)は、RからSへこの部位におけるキラリティーを反転させるのと同様の効果を有した。(R)-7についてのKiβ2値は(R,S)-3よりも32%高く、β2-AR選択性における差異はなかった(表1)。これらの結果は、化合物3について、第2のキラル部位におけるR配置の主な効果が、アミノアルキル鎖を第2の結合領域へ指向させることであったことを示唆し、これは、この部位と相互作用する可能性を増大させ、かつこの相互作用を達成するために必要とされる立体配座エネルギーを低下させる。
化合物3と5との差異は、芳香族置換基によって排除された立体領域である。化合物3の場合、フェニル環は、より小さくより線形的な領域を生じさせる一方、化合物5では、1-ナフチル環系は、相対的により大きくより幅広い領域を生じさせる。これらの差異は、さらなる誘導体の合成を導くために使用され得る。
1つの例において、(R,R)-2および(R,S)-5は、新規の選択的β2-ARアゴニストの開発についての可能性のある候補物として選択される。これらの化合物は、分子疎水性、代謝プロファイルおよび輸送体相互作用の変化のために、市販のrac-1と比べて増加したかつ延長された全身曝露を有し得る。
本実施例は、ファルマコフォアモデルを提供し、このモデルは、うっ血性心不全を含む所望の状態の治療における使用を試験され得るβ2-AR選択性を有する新規の化合物の設計についての構造ガイドとして、使用され得る。
実施例7
(R,R)-フェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールの薬物動態研究
本実施例は、雄性スプラーグドーリーラットへの静脈内(IV)ボーラスとして投与される(R,R)-フェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールの血漿濃度を実証する。
(R,R)-フェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールを、静脈内に5 mg/mlの単回投薬量で、頸静脈カニューレ挿入された(JVC)ラットへ投与した(表3を参照のこと)。用量算出(mg/kg)は、治療日に測定した個々の体重に基づいた。薬物動態研究についての研究時間は、6時間であった。血漿試料を、6時間にわたって以下の9つの時点で回収した:所望の用量の投与前;用量の5.00〜5.30分後;用量の15.00〜16.30分後;用量の30.00〜33.00分後;用量の60〜65分後;用量の120〜125分後;用量の240〜245分後;用量の300〜305分後;および用量の360〜365分後。尿を、各治療群において3匹のラットから0〜6時間および6〜24時間回収した。
(表3)(R,R)-フェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールの血漿濃度を測定するための研究条件
Figure 0005837890
ラットへの静脈内投与(5 mg/kg)後の(R,R)-フェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールについての薬物動態パラメータを、2コンパートメントオープンモデルに従って分析した(表4を参照のこと)。2コンパートメントモデルの薬物動態学に従う薬物は、1コンパートメントモデルについて仮定される通りには、身体中に迅速に平衡化しない。2コンパートメントモデルにおいて、薬物は、2つのコンパートメント、セントラルコンパートメントおよび組織、または末梢コンパートメント中へ分布する。セントラルコンパートメントは、血液、細胞外液、および高度に灌流された組織を示す。薬物は、セントラルコンパートメントに迅速かつ均一に分布する。組織または末梢コンパートメントとして公知の、第2のコンパートメントは、薬物がより徐々に平衡化する組織を含有する。2つのコンパートメント間の薬物移動は、一次プロセスによって起こると仮定される。
以下の略語を、下記表4において使用する:α−分布相と関連するマクロ速度定数;β−排出相と関連するマクロ速度定数;A、B−α相およびβ相それぞれと関連するゼロタイムインターセプト;AUC−曲線下面積;T1/2 (K10)−速度定数K10と関連する半減期;K10−排出速度−薬物がセントラルコンパートメントから系を出る速度;K12−薬物がセントラルコンパートメントから組織コンパートメントへ入る速度;K21−薬物が組織コンパートメントからセントラルコンパートメントへ入る速度;V1−セントラルコンパートメントの分布量;V2−組織コンパートメントの分布量;Vss−定常状態での分布量;およびCl−クリアランス。
(表4)ラットへの静脈内投与(5 mg/kg)後の(R,R)-フェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールについての薬物動態パラメータ
Figure 0005837890
表5〜7は、ラットへのIV投与(5 mg/kg)後の(R,R)-フェノテロール、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールの個々の血漿濃度を示す。血漿中の(R,R)-フェノテロールの平均濃度は、(R,R)-メトキシフェノテロール(2.12μg/ml)または(R,S)-ナフチルフェノテロール(2.11μg/ml)の平均濃度と比較して、ラットへのIV投与(5 mg/kg)の5分後では、劇的に低かった(1.34μg/ml)。
(表5)静脈投与(5 mg/kg)後の(R,R)-フェノテロールの個々の血漿濃度
Figure 0005837890
(表6)静脈投与(5 mg/kg)後の(R,R)-メトキシフェノテロールの個々の血漿濃度
Figure 0005837890
(表7)静脈投与(5 mg/kg)後の(R,S)-ナフチルフェノテロールの個々の血漿濃度
Figure 0005837890
データは、2つの誘導体、(R,R)-メトキシフェノテロールおよび(R,S)-ナフチルフェノテロールが、(R,R)-フェノテロールと比較して顕著により高い全身曝露(AUC)およびより長いクリアランスを有することを実証しており、このため、より長く作用する薬物が作製され得る。より長いクリアランス時間が、グルクロン酸化を阻害することの結果であり得ることが示唆される。
実施例8
(R,R)-フェノテロール、特定のフェノテロール類似体またはそれらの組み合わせによる1321N1星状細胞腫細胞成長の抑制
本実施例は、本明細書において開示されるフェノテロールおよび特定のフェノテロール類似体の、インビトロおよびインビボで1321N1星状細胞腫細胞成長を抑制する能力を示す。
選択的β2-AR(β2-AR)アゴニストが、cAMPの直接刺激によって、および/または関連する経路を通じて、神経膠腫および星状細胞腫の成長に影響をおよぼし得る可能性を判定した。以前の試験は、ヒト生検材料由来の樹立された細胞株または一次培養物のいずれかとして維持された神経膠芽腫、ならびにヒト由来1321N1星状細胞腫細胞株において、β2-ARが発現されることを示した。本試験において、U87MG細胞ではβ2-ARの検出可能な発現は検出されず、これらの細胞株のcAMPレベル増加に対する感受性は以前に立証されているため、U87MG細胞株を陰性対照として用いた。本実施例において用いた一般構造およびアゴニストを以下に示す。
Figure 0005837890
ヒトβ2-ARを形質移入されたHEK細胞(HEK-β2-AR、Dr. Brian Kobilka, Stanford Medical Center, Palo Alto, CAによって提供)を、400μg/ml G418とともに10%ウシ胎仔血清(FBS)および0.05%ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。1321N1星状細胞腫細胞株はEuropean Collection of Cell Cultures(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)から入手し、U87MG細胞はAmerican Type Culture Collection(Manassas, VA)から入手した。10%FBSを補足したDMEM中で細胞を培養した。細胞が70〜80%コンフルエントになった時点で薬物処理を実施した。
1321N1細胞から得た細胞膜への結合を、以前に記載された通りに(Jozwiak et al., J. Med. Chem. 50: 2903-2915, 2007)96穴様式で行った。簡単に言うと、細胞を150×25mmプレートからこすり落とし、500×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを2回洗浄し、Tris-HCl[50mM、pH7.7]中でホモジナイズし、粗製膜を27,000×gで10分間遠心分離して回収した。ペレットを、120mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl2、0.8mM MgCl2、および5mMグルコースを含有するTris-HCl[25mM、pH7.4]に再懸濁させた。1.0mLの量の0.3nM [3H]CGP-12177、および試料を含む、結合アッセイ法を三通り行った。非特異的結合を、1μMプロプラノロールを用いて測定した。インキュベーションの全量は1.0mLであり、試料を25℃で60分間インキュベートした。結合アッセイ法におけるタンパク質の量は270μgであった。反応を、Tomtec 96回収器(Orange, CT)を用い、ガラスファイバーフィルターを通したろ過により停止した。結合放射能をPharmacia Biotecベータプレート液体シンチレーション計数器(Piscataway, NJ)で計数し、カウント/分で表した。IC50値を、各フェノテロール類似体の少なくとも6つの濃度を用いて測定し、Graphpad/Prism(ISI, San Diego, CA)を用いて算出した。Ki値をCheng and Prusoffの方法により求めた。
β2-AR仲介性cAMP蓄積を以前に記載された通りに測定した(Jozwiak et al., J. Med. Chem. 50: 2903-2915, 2007)。HEK-β2-AR、1321N1またはU87MG細胞を96穴プレートに播種した。細胞がコンフルエンスに達した時点で、培地を除去し、各ウェルを0.1mLのKrebs-HEPES緩衝液(130mM NaCl、4.8mM KCl、1.2mM KH2PO4、1.3mM CaCl2、1.2mM MgSO4、25mM HEPES、および10mMグルコース、pH7.3)で洗浄した。プレートを緩衝液だけで室温で10分間予備インキュベートし;次いで、四通りの測定のために、緩衝液で希釈した試験化合物をウェルに加えた。プレートを試験化合物と共にさらに10分間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、0.1mLの0.5Mギ酸を加えた。少なくとも1時間後、上清を除去し、凍結乾燥した。cAMPをGilmanのタンパク質キナーゼ結合アッセイ法を用いて定量した。ウェル毎のタンパク質の量をBCAタンパク質定量キット(Thermo Scientific Pierce, Rockford, IL)を用いて測定し、cAMP/mg/ウェルの量を算出するために用いた。
有糸分裂誘発のβ2-AR仲介性阻害を測定するために、HEK-β2-AR、1321N1またはU87MG細胞を96穴プレートにおよそ5,000細胞/ウェルで播種した。48時間後、ウェルを2回洗浄し、培地を無菌水中の薬物10μLを含む新鮮培地で置き換えた。37℃でさらに24時間インキュベートした後、0.25μCiの[3H]-チミジンを各ウェルに加えた。細胞を37℃でさらに2時間インキュベートし、この時点で10×トリプシン10μLを加え、再懸濁した細胞をTomtec 96回収器を用い、ガラスファイバーフィルターを通して回収した。DNA結合放射能を、プレートを、前述の通りに計数した。
細胞周期分布をフローサイトメトリーで分析した。簡単に言うと、細胞をトリプシン処理し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、95%エタノールにより-20℃で24時間固定した。固定した細胞をPBSで洗浄し、0.05%RNアーゼにより37℃で30分間処理し、ヨウ化プロピジウムで染色した。染色した細胞をFACScanレーザーフローサイトメーター(FACSCaliber, BD Biosciences)を用いて分析した。
タンパク質を、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて4〜12%のプレキャストゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)により分離し、次いで電気泳動によりHybond(商標)-P膜(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)上に転写した。ブロットを以下の抗体をプローブに用いて調べた:すべてSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から購入したサイクリンD1(sc-246、マウスポリクローナルIgG)、サイクリンA(sc-596、ウサギポリクローナルIgG)、p27(sc-528、ウサギポリクローナルIgG)およびアクチン(sc=1616、ヤギポリクローナルIgG)、ならびにCell Signaling Technology(Beverly, MA)から購入したp-Akt(Ser473、ウサギポリクローナルIgG)。ECL Plus Western Blotting Detection System of Amersham Biosciences(Piscataway, NJ)および製造者によって推奨される手順を抗原検出のために用いた。タンパク質のバンドを、Alphaimager(商標) S-3400(Alpha Innotech Corp., San Leandro, CA)を用いて得た画像を分析することによって定量した。
(R,R)-フェノテロールおよびフェノテロール類似体(表8)を本明細書において記載される通りに合成した(2009年2月9日に提出した米国特許出願第12/376,945号、Jozwiak et al., J. Med. Chem., 50: 2904-2915, 2007およびJozwiak et al., Bioorg. Med. Chem., 18: 728-736, 2010にも記載されており、これらはそれぞれ全体が参照により本明細書に組み入れられる)。[3H]-CGP-12177はPerkinElmer(Shelton, CT)から購入し、DMEMはLonza Walkersville, Inc.(Walkersville, MD)から購入し、FBSはAtlas Biologicals(Fort Collins, CO)から購入し、ペニシリン-ストレプトマイシンおよびゲネチシン(G418)はInvitrogen(Carlsbad, CA)から購入し、NaClおよびCaCl2はMallinckrodt(Phillipsburg NJ)から購入し、(±)-プロプラノロール、(R)-イソプロテレノール、フォルスコリン、Tris-HCl、トリズマ塩基、PBS、KCl、MgSO4、MgCl2、D-(+)-グルコース、KH2PO4およびHEPESはSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。
初期RT-PCR試験は、β2-ARは1321N1細胞中で発現されるが、β1-ARは発現されないことを示した。1321N1細胞におけるβ2-ARの発現は、マーカーリガンドとしての[3H]CGP-12177による置換試験を用いて確認した。飽和試験により、CGP-12177の結合親和性(Kd値)は0.23nMであることが判明した。1321N1細胞膜におけるβ2-ARの発現レベル(Bmax)は32fmol/mgタンパク質であった。β2-AR選択的アンタゴニストのICI 118-551は膜に高い親和性(Kd=0.58nM)および約1.0のヒル係数で結合し、単一の結合部位を示した。U87MG細胞から得た膜への[3H]CGP-12177の観察可能な結合はなく、β2-ARがこの細胞株において発現されないことを示した。
1321N1細胞におけるアゴニスト誘導性cAMP蓄積を、(R)-イソプロテレノールおよび選択したフェノテロール誘導体を用いて試験した。β-ヒドロキシ炭素原子でR配置を有するアゴニストはそれぞれ、cAMP産生の有意な増加を示した(図6)。(R)-イソプロテレノールの算出したEC50cAMP値は16.5nMであった)。フェノテロール類似体のEC50cAMPの値は13.5nMから88.24nMの範囲であった(表8)。しかし、(R,R)-フェノテロールおよび(R,R)-メトキシフェノテロールだけが完全アゴニストで、(R)-イソプロテレノールに比べて>100%の最大cAMP蓄積をもたらしたが、(R,R)-4-メトキシ-1-ナフチルフェノテロール、(R,S)-4-メトキシ-1-ナフチルフェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールによりもたらされたcAMP蓄積はそれぞれ35%、53%、および31%であった。これらの化合物によってもたらされた誘導性cAMP蓄積は、1μMプロプラノロールの添加によって阻止され、ICI 118-551は(R,R)-フェノテロールのアゴニスト活性を競合的に拮抗し、pA2=8.9で、傾きは-1.24±0.30であった。
(表8)1321N1細胞における[3H]-チミジン取り込みの阻害に関連するIC50値で表した(R)-イソプロテレノールおよびフェノテロール類似体の活性、1321N1細胞およびHEK-β2-AR細胞において測定したEC50cAMPとして表したcAMP蓄積の刺激。1321N1細胞において測定したIC50値およびEC50cAMP値をn=4の平均±SDとして示す。
Figure 0005837890
細胞内cAMPのフォルスコリン誘導性の増大は、1321N1細胞株の増殖低下をもたらし、算出したIC50値は170.3±37.2であった(図7A)。フォルスコリンによる試験の結果は、1321N1細胞が細胞内cAMP濃度の増加に感受性であることを示したため、β2-ARアゴニストの1321N1細胞およびU87MG細胞における細胞増殖に対する作用を調べた。この試験において、1321N1細胞をβ2-ARアゴニストと共に22時間インキュベートし、その時点で[3H]-チミジンを加えてさらに2時間インキュベートし、次いで細胞を回収し、[H3]-チミジン取り込みを測定した。[3H]-チミジン取り込みの有意な減少が、試験に用いた化合物すべてについて濃度依存的様式で観察された(図7A)。特に、図7Aは、(R,R)-フェノテロール(■)が(S,S)-フェノテロール(▼)およびフォルスコリン(●)のどちらよりも1000倍強力であることを示している。このデータを用いて[3H]-チミジン取り込みの阻害に関連するIC50値を求め、値は(R)-イソプロテレノールで観察された0.05nMから(S,S)-4-メトキシフェノテロールで観察された337.2nMの範囲であった(表8)。(R,R)-フェノテロールの阻害効果は、β2-ARアンタゴニストのプロプラノロール(1μM)の添加によって阻止され、ICI-118-551によって競合的に阻害された、pA2=8.9、傾き-1.3±0.3、図7B。
1321N1細胞におけるcAMP蓄積の刺激を、有糸分裂誘発阻害試験で用いた19化合物のうちの6つについて調べ、算出したEC50cAMP値およびIC50値を比較した。データのlog-log相関により、2つの値の間に優れた相関性があることが判明し、r2=0.93652であった。1321N1細胞およびHEK-β2-AR細胞で求めた6化合物のEC50cAMP値の間には定量的相違があったが、HEK-β2-AR細胞で求めた19のEC50cAMP値および1321N1細胞で求めた19のIC50値を用いた相関性は繰り返された。2つのデータ組の間でも有意な相関性が観察された、r2=0.72611。結果は、HEK-β2-AR細胞株におけるcAMP刺激と1321N1細胞株における[3H]-チミジン取り込みの阻害との間には有意な関連性があり、HEK-β2-AR細胞株は抗有糸分裂誘発活性の有用なスクリーニング手段であり得ることを示している。
U87MG細胞をβ2-ARアゴニストと共にインキュベートしても[3H]-チミジン取り込みに影響がなく、この細胞株においてβ2-ARが発現されないことと一致している。β2-ARアゴニストはHEK-β2-AR細胞におけるcAMP蓄積の刺激に対し非常に活性であったが、この試験で用いた化合物はこれらの細胞の増殖に対して影響を持たなかったことに留意することは興味深い(表8)。これらの試験は、β2-ARアゴニストがインビトロで1321N1細胞の増殖を抑制することを示した。
1321N1の細胞周期に対する(R,R)-フェノテロールの作用を、細胞を様々な濃度の(R,R)-フェノテロールで20時間処理し、続いてフローサイトメトリー分析を行うことにより判定した。未処理細胞を対照として用いた。(R,R)-フェノテロールはG1停止を誘導し、それに伴い、G1期の細胞が49.8%(対照)から処理細胞では60.6〜76%に増加したのに合わせて、G2期およびS期の細胞の比率が低下した(表9)。結果は、(R,R)-フェノテロールが0.1nMという低い用量でも細胞周期を停止し、cAMP蓄積を刺激し、[3H]-チミジン取り込みを阻害する、化合物の能力に一致していることも示した(表8)。これらの結果は、cAMP類似体によるPKAの活性化が、G1期またはG2期で細胞周期を阻止することにより細胞成長停止を誘導したことを示している。
(表9)1321N1細胞周期動態に対する(R,R)-フェノテロールの効果
Figure 0005837890
1321N1細胞におけるG1停止に関連する選択した分子事象に対する(R,R)-フェノテロールの効果を、ウェスタンブロット分析を用いて調べた。データは、(R,R)-フェノテロールがサイクリン依存性キナーゼ阻害剤およびp27のタンパク質レベルを有意に増加させ(図8A)、AktのSer-473におけるリン酸化を用量依存的様式でナノモル濃度において阻害した(図8B)ことを示している。同じ濃度範囲で、(R,R)-フェノテロールは、サイクリンD1およびサイクリンAのタンパク質発現を下方制御した(図8Cおよび8D)が、マイトジェン活性化キナーゼERK1/2のリン酸化に対してはわずかな効果しかなく、1つの濃度でしか有意性に達しなかった(図8E)。
本試験において、1321N1細胞のフォルスコリンによる処理は、cAMPの基礎の細胞内濃度を0.5nmol/mgタンパク質から約4nmol/mgタンパク質に高め、G1期における細胞周期停止を誘導した。したがって、データは、1321N1細胞の増殖が細胞内cAMPレベルの変化にも感受性であること、これらのレベルがβ2-ARアゴニストを用いた処理により高め得ること、およびこの効果が1321N1細胞中の機能性β2-ARの存在に関連することを示している。β2-AR刺激と有糸分裂誘発の阻害との間の関係は、機能的β2-ARを発現しないU87MG細胞を用いた試験からのデータによって支持された。U87MG細胞の同じβ2-ARアゴニスト系列による処理は、cAMPレベルを高めず、[3H]-チミジン取り込みまたは細胞増殖に対して効果がなかった。加えて、ヒト由来U118神経膠腫細胞株の試験は、これらの細胞においてβ2-ARの低いが有意な発現があることを示している。U118細胞の(R,R)-フェノテロールによる処理は、[3H]-チミジン取り込みを、1321N1細胞で算出した値よりも50倍高いIC50値で阻害し、β2-AR発現のレベルが(R,R)-フェノテロールの定量的阻害活性に影響をおよぼすことを示唆している。
cAMPが細胞成長を停止する機序が、星状細胞腫および他の細胞型において特徴決定されている。これらの試験からのデータは、cAMPがERKおよびPI3Kなどの成長因子仲介性細胞増殖シグナル伝達経路を阻害することにより(Cook and McCormick, Science 262(5136): 1069-1072, 1993;Sevetson et al., J. Mol. Neurosci. 17(3): 1993;Kim et al., J. Biol. Chem. 276(16): 12864-12870, 2001);Stork and Schmitt, Trends Cell Biol. 12(6): 258-266, 2002)、細胞周期阻害剤タンパク質p21cip1(Lee et al., 2000)およびp27kip1(van Oirschot et al., J. Biol. Chem. 276(36): 33854-33860, 2001)のレベルを高めることにより、ならびに/またはサイクリンD1タンパク質のレベルを低下させることにより(L'Allemain et al., Oncogene 14(16): 1981-1990, 1997)、細胞成長を低下させ得ることを示している。
本試験において、(R,R)-フェノテロールを用いた試験からのデータは、サイクリンD1誘導にとって重大であると報告されたERK1/2活性は(R,R)-フェノテロールによってわずかに影響を受けるにすぎないが、それにもかかわらずサイクリンD1は、Aktリン酸化と同様、下方制御されることを示した。反対に、細胞周期阻害剤のp27は上方制御された。1321N1細胞において、cAMPによるサイクリンD1産生の阻害は少なくとも部分的にはPI3K/Akt経路の阻害による可能性がかなり高い。(R,R)-フェノテロールはAktを不活化したため、p27kip1の増加およびサイクリンD1の低下は、これらのタンパク質に対するcAMPの直接作用とAktの不活化による間接的作用との両方を反映している可能性がある。加えて、(R,R)-フェノテロールがサイクリンAのレベルを低下させたという知見は、フェノテロール化合物が細胞周期の複数の期の調節を通じて成長抑制を引き起こすことを示唆している。
本実施例で用いた19の化合物はすべて、HEK-β2-AR細胞における完全β2-ARアゴニストとして以前に特徴決定されており(本明細書におけるものを含む)、EC50cAMP値は0.2nMから580nMの範囲である(Jozwiak et al., J. Med. Chem., 50: 2904-2915, 2007およびJozwiak et al., Bioorg. Med. Chem., 18: 728-736, 2010参照)。本試験において用いた19化合物のうちの6つの、1321N1細胞中のcAMP蓄積を刺激する能力を調べ、結果は、化合物が、HEK-β2-AR細胞と比較した場合にこの細胞株では弱いアゴニストであることを示した(表8)。しかし、試験した化合物のアゴニスト活性には定量的な差があったが、1321N1細胞およびHEK-β2-AR細胞の両方から算出したEC50cAMP値は、観察された[3H]-チミジン取り込みの阻害に相関していた。この知見は、1321N1における弱い部分β2-ARアゴニストであり(図6)、HEK-β2-AR細胞における完全β2-ARアゴニスト(>100%蓄積)であり、かつ有糸分裂誘発の有効な阻害剤である(表8)という、観察された(S,S)-フェノテロールの活性に反映されている。(S,S)-フェノテロールで観察されたデータは、1321N1細胞の細胞分裂を阻止するには、cAMPの非常にわずかな増加で十分であることを示唆している。
以前に記載された技術を用いて、本試験で得たIC50データおよびフェノテロール類似体の関連する分子構造を予備的比較分子場解析に使用して、統計学的に有効なモデルを作成した(R2=0.771;Q2=0.569;F=25.3、SEE=0.491)。HEK-β2-AR細胞株による試験で得たCoMFAモデルとは異なり、本試験の結果は、試験した化合物のIC50値は化合物のフェノテロール分子のキラル中心の両方における立体配置に関連しており、アミノアルキル鎖上の芳香族置換基の構造はほとんど、またはまったく役割を果たしていないことを示唆している。CoMFAモデルにおける相違は、心筋細胞収縮性および[3H]-チミジン取り込みの阻害に対する(R,R)-エチルフェノテロールおよび(S,S)-フェノテロールの効果に反映されている。これらの化合物はいずれもラット心筋細胞収縮性モデルにおいて基本的に不活性で、EC50値はそれぞれ8,551nMおよび55,000nMであるが、1321N1細胞株においては有糸分裂誘発の活性な阻害剤であり、IC50値はそれぞれ1.44nMおよび184.20nMである。特定の理論に縛られることなく、2つの試験システムにおけるこれらの化合物の活性の大きな差は、β2-ARの異なる立体配座の相対的存在量およびフェノテロール類似体のこれらの形態を安定化または誘導する能力であることが企図される。
(R,R)-4-メトキシ-フェノテロールの一連のN-アルキル誘導体に対してさらなる試験を実施し、1321N1([3H]-チミジン取り込み)および心筋細胞モデル(ラット心筋細胞収縮性)における活性について特徴決定した。データは以下の通りであり、すべて(R,R)-異性体についてである:4-メトキシ-エチルフェノテロール:IC50(1321N1)=14nM;EC50(心筋)>10,000nM;および4-メトキシ-イソプロピルフェノテロール:IC50(1321N1)=946nM;EC50(心筋)>10,000nM。
本試験の結果は、β2-ARアゴニストが1321N1細胞株において細胞複製を阻害したこと、この効果がβ2-ARアンタゴニストのプロプラノロールによって阻止されたこと、およびβ2-ARアゴニストがU87MG細胞の成長に対して効果を有していなかったことを示している。結果は、フェノテロール分子上の2つのキラル中心の立体化学が阻害活性のレベルにおいて重要な役割を果たすこと、および1321N1細胞株における有糸分裂誘発の阻害が、以前の試験において調査された受容体のアンタゴニスト結合立体配座とは異なるβ2-ARの立体配座にフェノテロール誘導体が結合することによって起こり得ることも示している。
実施例9
雄スプラーグドーリーラットにおける[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールの脳および血漿の分析
本実施例は、雄スプラーグドーリーラットにおける単回静脈内(IV)投与後の[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールの脳-血漿分布を示す。
雄スプラーグドーリーラット(6週齢、206〜220グラム)を、手動での体重層化手順により、治療群に無作為に割り付けた。[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールの脳-血漿分布を評価するための調査試験デザインの概要を以下の表10に示す。
(表10)雄スプラーグドーリーラットにおける[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールの脳および血漿の分析のための調査試験デザイン
Figure 0005837890
a対照群の動物のみビヒクルを与えた。
b血液および全脳組織を回収するために動物を指定の時間に屠殺した。
試験項目には、室温で保存した(R,R)-メトキシフェノテロール・0.5フマレート(375.42)および4℃から-20℃で保存した[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロール塩化物(353.9)(比放射能57Ci/mmol);ビヒクルは無菌食塩水、0.9%ナトリウム、USPであった。投与製剤を試験当日に調製した。投与製剤中の放射能の量を液体シンチレーションで調べた。試験は1時間続き、血漿中および脳組織中の放射能レベルを試験の最後に評価した。約5mlの全血を採取した。血液試料を心臓穿刺により採取し、抗凝固剤としてK3EDTAを含むチューブに移し、血漿まで処理するまでは氷上に維持した。血漿を生成するために、試料を採取後15分以内に室温、2,500RPMで15分間遠心分離した。血漿を3つのラベルをつけたクライオバイアルに等分し、分析まで保存するための≦-20℃に設定したフリーザーに移すまでは、十分なドライアイス上で保存した。二通りの一定量を秤量し、次いでシンチレーションカクテルと混合した。[3H]放射能を液体シンチレーション計数器で測定した。脳試料を液体窒素中で急速凍結し、分析まで≦-70℃で保存した。全脳組織をホモジナイズし、ホモジネートの重量を求めた。ホモジネートからの二通りの一定量を秤量し、可溶化し、次いでシンチレーションカクテルと混合した。[3H]放射能を液体シンチレーション計数器で測定した。
雄スプラーグドーリーラットに5mg/kg [3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールを静脈内投与し、対応する血漿レベルおよび脳レベルを60分間にわたって測定した。5分後、血漿レベルは、3.25±0.15μg当量/mlで最高となり、その後60分の時点では62%低下して1.24±0.43μg当量/mlであった(表11、図9)。脳における[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールレベルについても、同様であるが、それほど劇的ではない傾向があった。最高値および最低値はそれぞれ0.92±0.10および0.70±0.37μg当量/gであった。脳レベルと血漿レベルとの比較により、15分後にその比はおよそ0.5で安定しているように見えることが判明した。脳で見られた実際の線量パーセントは、任意の所与の動物で0.17%以下であった。
(表11)雄ラットの血漿および脳における[3H]-(R,R)-メトキシフェノテロールレベルおよび線量回復
Figure 0005837890
a未治療のラット(#1〜3)は血漿または脳においてバックグラウンドを上回る放射能がなかった。
b治療されたラットに5mg/kg 3H-メトキシフェノテロールを静脈内投与した。
これらの試験は、(R,R)-メトキシフェノテロールが血液脳関門を通過し得ること、およびそのような化合物ならびに同様の他の関連フェノテロール類似体およびフェノテロールのIV投与が、脳腫瘍を治療するためなどのこれらの化合物を脳に送達する有効な手段であることを示している。
実施例10
SKIDマウスの側腹に移植した1321N1異種移植片の(R,R)-メトキシフェノテロール成長の効果
本実施例は、インビトロで1321N1腫瘍成長を抑制する(R,R)-メトキシフェノテロールの能力を示す。
(R,R)-メトキシフェノテロールをIPにより1日2回投与した(第1〜2日、0mg/kg/日;第3〜10日、30mg/kg/日;および第10〜42日、50mg/kg/日)。図10は、SKIDマウスの側腹に移植した1321N1異種移植片の成長を抑制する(R,R)-メトキシフェノテロールの能力を示す。
これらの試験は、(R,R)-メトキシフェノテロールがインビボで星状細胞腫成長を抑制することを示す。これらの試験は、(R,R)-メトキシフェノテロールが星状細胞腫成長を抑制可能であることを示しているが、当業者であれば、ヒトを含むさらなる対象において、星状細胞腫成長を抑制するほかに、星状細胞腫を治療するために他のフェノテロール類似体およびフェノテロール自体を用いるための支援も提供することを理解するであろう。
実施例11
原発脳腫瘍の治療
本実施例は、原発脳腫瘍に関連する1つまたは複数の徴候または症状を軽減または抑制するための治療的有効量のフェノテロール、フェノテロール類似体またはそれらの組み合わせを含む組成物の投与により、ヒト対象における原発脳腫瘍を治療するために用い得る方法を記載する。特定の方法、用量、および投与様式を提供するが、当業者であれば治療に実質的に影響をおよぼすことなく変動を行い得ることを理解するであろう。
臨床症状に基づいて、星状細胞腫を有する対象を選択する。生体試料を対象から分離し、β2-AR発現をウェスタンブロットまたは組織検査により判定する。陽性結果は、腫瘍をフェノテロール、開示されるフェノテロール類似体またはそれらの組み合わせの投与によって治療し得ることを示す。1つの特定の例において、原発脳腫瘍を有する対象から組織生検を得る。β2-AR発現を試料中において調べる。試料中においてβ2-ARが検出されることにより、(R,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロールを含む組成物の投与で原発脳腫瘍を治療し得ることがわかる。(R,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロールを対象に、最初の10日間は30mg/kg/日および残りの32日間は50mg/kg/日の濃度でIP投与する。次いで、腫瘍成長を治療の7日後、14日後、21日後、30日後および42日後に評価する。一例において、治療の有効性を、コンピューター断層撮影(CT)および特に磁気共鳴映像法(MRI)などの、非侵襲性で高分解能の様式を含む、画像法によって判定する。例えば、造影剤の取り込みをモニターして治療の有効性を判定する。基準値または治療前に測定した値と比較した場合の造影剤の取り込みの少なくとも20%の減少によって示される血液脳関門に対する透過性の低下は、治療が有効であることを示す。同様に、治療前の腫瘍サイズと比較した場合の腫瘍サイズの20%低減は、有効な治療であると考えられる。
実施例12
(R,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロールおよび(S,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロールを含む開示される組成物の補助療法としての使用
本実施例は、悪性星状細胞腫に対して治療を受けたヒト対象における腫瘍成長を低下させるために、防止するためにまたは遅延させるために用い得る方法を記載する。
臨床症状に基づいて、星状細胞腫を有する対象を選択する。悪性星状細胞腫の治療の主な形式は開放手術である。手術候補者でない対象に対しては、放射線または化学療法のいずれかを初期治療として用いる。初期治療の後、対象に、(S,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロール 3に対し(R,R)-4-メトキシ-エチルフェノテロール 1の割合で含む薬学的組成物を毎日、無期限に経口投与する。CTおよびMRIなどの非侵襲性で高分解能の様式を含む画像法によって、腫瘍成長の再発をモニターする。
開示される発明の原理を適用し得る多くの可能性のある態様を考慮すると、例示される態様が本発明の好ましい例にすぎず、かつ本発明の範囲を限定するものとして考えられるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって明確にされる。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲内におよび趣旨に入るすべてを本発明者らの発明として特許請求する。

Claims (14)

  1. ナフチルフェノテロール、メトキシフェノテロール、エチルフェノテロール、4−メトキシ−1−ナフチルフェノテロール、2−ナフチルフェノテロール、4−メトキシ−エチルフェノテロール、またはその立体異性体の1つまたは複数を含む、β2−アドレナリン受容体(AR)を発現する原発腫瘍に関連する1つまたは複数の症状を軽減し、それにより対象の原発腫瘍を治療するための薬学的組成物。
  2. (R,R’)−4−メトキシ−エチルフェノテロール、または(R,S’)−4−メトキシ−エチルフェノテロールの治療的有効量を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
  3. (R,R’)−ナフチルフェノテロール、(R,R’)−メトキシフェノテロール、(R,R’)−(−)−エチルフェノテロール、(R,R’)−(−)−4−メトキシ−1−ナフチルフェノテロール、(R,R’)−(−)−2−ナフチルフェノテロール、(R,R’)−4−メトキシ−エチルフェノテロールもしくはそれらの組み合わせの治療的有効量、または(R,S’)−ナフチルフェノテロール、(R,S’)−メトキシフェノテロール、(R,S’)−(−)−エチルフェノテロール、(R,S’)−(−)−4−メトキシ−1−ナフチルフェノテロール、(R,S’)−(−)−2−ナフチルフェノテロール、(R,S’)−4−メトキシ−エチルフェノテロールもしくはそれらの組み合わせ、または(S,R’)−ナフチルフェノテロール、(S,R’)−メトキシフェノテロール、(S,R’)−(−)−エチルフェノテロール、(S,R’)−(−)−4−メトキシ−1−ナフチルフェノテロール、(S,R’)−(−)−2−ナフチルフェノテロール、(S,R’)−4−メトキシ−エチルフェノテロールもしくはそれらの組み合わせの治療的有効量を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
  4. 基準値と比較して増加したβ2−AR発現を有する、原発腫瘍を治療するのに使用するための、請求項1〜のいずれか一項記載の薬学的組成物。
  5. 基準値と比較して増加したβ2−AR発現を有する原発脳腫瘍を治療するのに使用するための、請求項1記載の薬学的組成物。
  6. β2−ARを発現する星状細胞腫を治療するのに使用するための、請求項1記載の薬学的組成物。
  7. β2−ARを発現する神経膠芽腫を治療するのに使用するための、請求項1記載の薬学的組成物。
  8. 対象がβ2−ARを発現する腫瘍の治療を必要としている、請求項1〜のいずれか一項記載の薬学的組成物。
  9. 対象が出血障害を有していない、請求項記載の薬学的組成物。
  10. 前記腫瘍に関連する1つまたは複数の症状の軽減が、腫瘍成長を抑制することを含む、請求項1〜のいずれか一項記載の薬学的組成物。
  11. さらなる治療剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の薬学的組成物。
  12. 前記さらなる治療剤が、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ストレプトゾシンまたはそれらの組み合わせなどの化学療法剤である、請求項11記載の薬学的組成物。
  13. 薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
  14. 前記対象がヒトである、請求項1〜13のいずれか一項記載の薬学的組成物。
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