JP5837437B2 - 非水系二次電池用セパレータおよび非水系二次電池 - Google Patents
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別の提案として、網目状支持体を内包し、電解液に膨潤し該電解液を保持する有機高分子からなる多孔膜からなるセパレータを用いる技術が知られている(特許文献2及び3参照)。また、特許文献4〜6では、電極との接着性の改善等の観点から、2種類のポリフッ化ビニリデン系樹脂を組み合わせて接着性多孔質層を形成する技術が開示されている。
また、特許文献4〜6の構成では、接着性多孔質層の表面が緻密膜であり、同層の内部ではこれよりも大きな粗大孔が形成された、いわゆるフィンガースキン構造となっている。この構造の場合、接着性多孔質層の表面が緻密なので電極との接着性は確保できるが、表面部分でのイオンの移動が困難であり、また、多孔質層全体として不均一な孔構造であるためイオンの移動も不均一となり、電池の性能が十分に得られない場合がある。
1. 不織布基材と、この基材の少なくとも表面に形成され、かつポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、前記接着性多孔質層は、(1)フッ化ビニリデンおよびヘキサフロロプロピレンを共重合成分として含み、かつ、ヘキサフロロプロピレンの含有量が1.5mol%以下であるポリフッ化ビニリデン系樹脂Aと、(2)フッ化ビニリデンおよびヘキサフロロプロピレンを共重合成分として含み、かつ、ヘキサフロロプロピレンの含有量が1.5mol%超であるポリフッ化ビニリデン系樹脂Bと、を含み、前記セパレータは、空孔率が50〜70%であり、前記接着性多孔質層は、平均孔径が1〜200nmであることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
2. 前記接着性多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂Aが15〜85重量部とポリフッ化ビニリデン系樹脂Bが85〜15重量部とからなることを特徴とする上記1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
3. 前記接着性多孔質層の重量が3〜10g/m2であることを特徴とする上記1または2いずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。
4. 上記1〜3のいずれかに記載のセパレータを用いた非水系二次電池。
5. 電極とセパレータが接着されており、アルミラミネートフィルム外装となっていることを特徴とする上記4記載の非水系二次電池。
本発明において、不織布基材を構成する材料はポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等のポリエステル系材料、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系材料、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリアミドやポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、及びポリエーテルイミド等の耐熱性高分子、あるいはこれらの混合物を使用することができる。特に、不織布としてはポリエステル系材料を主成分としたものが好ましい。ここで主成分とは、不織布基材においてポリエステル系材料が50重量%以上を占めることを意味し、残部としてポリオレフィン系材料等を混合して含ませることができる。中でも、ポリエチレンテレフタラート、またはポリエチレンテレフタラートとポリオレフィン系材料の混合が好適である。
本発明では、接着性多孔質層が、(1)フッ化ビニリデンおよびヘキサフロロプロピレンを共重合成分として含み、かつ、ヘキサフロロプロピレンの含有量が1.5mol%以下であるポリフッ化ビニリデン系樹脂Aと、(2)フッ化ビニリデンおよびヘキサフロロプロピレンを共重合成分として含み、かつ、ヘキサフロロプロピレンの含有量が1.5mol%超であるポリフッ化ビニリデン系樹脂Bと、を含むことが重要である。これら2種類のポリフッ化ビニリデン系樹脂を混合することによって、おのおの1種類のポリフッ化ビニリデン系樹脂を適用した場合に比べて、電極との接着性が格段に向上する。
上記のような比較的分子量の高いポリフッ化ビニリデン系樹脂は、好ましくは乳化重合あるいは懸濁重合、特に好ましくは懸濁重合により得ることができる。
本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層の多孔構造は重要な技術要素であり、その平均孔径は1〜200nmである。ここで、接着性多孔質層とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含んで構成されており、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっている層を意味する。このような接着性多孔質層は、不織布の少なくとも表面に形成されている、すなわち、接着性多孔質層は不織布の片面または両面に形成されているか、あるいは、さらに不織布の内部にも含まれて全体として不織布を内包した状態で形成されていてもよい。また、平均孔径は、多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡により、倍率30000倍で撮影して得た写真から無作為に開孔20箇所を選んで直径を測定し、直径の平均値を求めて平均孔径とした。孔の形状は円形に限らず、楕円形や異形になることもありうる。この場合の孔の直径とは、該楕円形の長軸方向の長さと短軸方向の長さの平均をその孔径として算出する。また、孔の形状が円形でも楕円形でもないときには円または楕円に近似して直径を算出する。
本発明の非水系二次電池用セパレータは、上述したように、不織布基材と、この基材の少なくとも表面に形成され、かつポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備えている。ここで、接着性多孔質層は、電解液を含んだ状態で熱プレスによって電極と接着する接着層であるため、セパレータの最外層として存在する必要がある。当然、正極および負極の両方とセパレータを接着させた方がサイクル寿命の観点から好ましいので、不織布基材の両面に接着性多孔質層を形成した方が好ましく、さらに不織布基材を接着性多孔質層中に完全に内包させた方が好ましい。
該ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量は3.0〜10.0g/m2の範囲が好適である。3.0g/m2より少ないと電極との接着性が十分でなくなることがある。また、10.0g/m2より多いとイオンの透過性を阻害し電池の負荷特性が低下する傾向にあるので好ましくない。
上述した本発明の非水系二次電池用セパレータは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層を形成し、さらにこれと不織布基材を複合化する必要があるが、例えば、これは以下のような方法によって達成される。
具体的に、まずポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶媒に溶解して、塗工液を作製する。この塗工液を不織布基材上へ塗工し、適切な凝固液に浸漬する。これにより、相分離現象を誘発しながら、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を固化させる。この工程でポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる層は多孔構造となっている。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥することで接着性多孔質層を不織布基材上に一体的に形成することができる。
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明のセパレータを用いたことを特徴とする。
本発明において、非水系二次電池は、正極および負極の間にセパレータが配置され、これらの電池素子が電解液と共に外装内に封入された構成となっている。非水系二次電池としてはリチウムイオン二次電池が好適である。
(ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層の平均孔径)
多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス株式会社:商品名「VE8800」)により、倍率30000倍で撮影して得た写真から、無作為に開孔20箇所を選んで直径を測定し、すべての直径の平均値を求めて平均孔径とした。
接触式の厚み計(LITEMATIC ミツトヨ社製)を用いて測定した。測定端子は直径5mmの円柱状のものを用い、測定中には7gの荷重が印加されるように調整して行った。
サンプルを10cm×10cmに切り出し、その重量を測定した。重量を面積で割ることで目付を求めた。
セパレータの目付から基材の目付を差し引くことでポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量を求めた。
非水系二次電池用セパレータ及び基材の空孔率は、下記式1から求めた。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100… (式1)
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m2)、ds:真密度(g/cm3)、t:膜厚(μm)である。
具体的に、例えばPET不織布基材とポリフッ化ビニリデン系樹脂のみからなる多孔質層とを積層させた複合セパレータについては、当該複合セパレータの空孔率ε(%)は以下の式2から算出した。
ε={1−(Wa/1.38+Wb/1.78)/t}×100 … (式2)
ここで、WaはPET不織布基材の目付(g/m2)、Wbはポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量(g/m2)、tは膜厚(μm)である。ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層の空孔率を算出する場合は、Wa=0(g/m2)であり、tはポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層の厚み、すなわちセパレータの膜厚から基材の膜厚を引いた値とすればよい。
JIS P8117に従い、ガーレ式デンソメータ(G−B2C 東洋精機社製)にて測定した。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂Aとして、クレハ化学社製のKFポリマー #9300(フッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン=98.9/1.1mol% 重量平均分子量195万)を用いた。ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bとして、ARKEM社製のKYNAR 2801(フッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン=95.2/4.8mol% 重量平均分子量47万)を用いた。ポリフッ化ビニリデン系樹脂A/ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを80/20重量比として、該ポリフッ化ビニリデン系樹脂を5重量%でジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3重量比である混合溶媒に溶解し、塗工液を作製した。これを繊度0.2dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維に繊度0.06dtexバインダー用PET短繊維をブレンドし、湿式抄造法により製膜、カレンダーロール掛けした不織布状シート(平均膜厚16μm、目付7g/m2)の両面に等量塗工し、水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13重量比の凝固液(40℃)に浸漬することで固化させた。これを水洗、乾燥することで本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータは、ポリエステルからなる不織布基材が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質層中に内包された構造となっていた。
このセパレータについて、接着性多孔質層を構成する樹脂A,B中のヘキサフロロプロピレン(HFP)の含有量、両樹脂の混合比、セパレータの膜厚および目付け、接着性多孔質層の平均孔径、セパレータの空孔率、接着性多孔質層(PVDF樹脂)の重量、セパレータのガーレ値の測定結果を表1に示す。なお、以下の実施例および比較例のセパレータについても同様に表1にまとめて示す。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂A/ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを60/40重量比とした以外は実施例1と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂A/ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを40/60重量比とした以外は実施例1と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂A/ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを20/80重量比とした以外は実施例1と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
該ポリフッ化ビニリデン系樹脂を7.5重量%でジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3重量比である混合溶媒に溶解し、塗工液を作製した以外は、実施例4と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
該ポリフッ化ビニリデン系樹脂を10重量%でジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3重量比である混合溶媒に溶解し、塗工液を作製した以外は、実施例4と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂A/ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを90/10重量比とした以外は実施例1と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
共重合組成がフッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン=98.0/2.0mol%となるようなポリフッ化ビニリデン系樹脂を懸濁重合にて作製した。これをポリフッ化ビニリデン系樹脂Aとして用いた以外は実施例2と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂A/ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを100/0重量比として塗工液を作製した。得られた塗工液を20℃にて24時間放置した。放置前後で塗工液の粘度をB型粘度計で測定したところ、放置後粘度の放置前粘度に対する比は、2.24であった。ここで測定温度は20℃とし、せん断速度は2.64s−1とした。この塗工液を使用した。それ以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。なお、使用した塗工液の保存安定性が悪く、均一に塗工することが困難であった。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂A/ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを0/100重量比とした以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。
(負極の作製)
負極活物質である人造黒鉛300g、バインダーであるスチレン−ブタジエン共重合体の変性体を40重量%含む水溶性分散液7.5g、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3g、適量の水を双腕式混合機にて攪拌し、負極用スラリーを作製した。この負極用スラリーを負極集電体である厚さ10μmの銅箔に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、プレスして負極活物質層を有する負極を作製した。
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末を89.5g、導電助剤のアセチレンブラック4.5g、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(KFポリマー W#1100 クレハ化学社製)を6重量%となるようにNMPに溶解した溶液をポリフッ化ビニリデンの重量が6重量%となるように双腕式混合機にて攪拌し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを正極集電体である厚さ20μmのアルミ箔に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、プレスして正極活物質層を有する正極を作製した。
上記のように作製した正極と負極にリードタブを溶接し、上記の実施例および比較例で作製したセパレータを正負極間に介してこれらを接合させ、電解液をしみ込ませてアルミパック中に真空シーラーを用いて封入した。ここで、電解液は1M LiPF6 エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(3/7重量比)を用いた。これを熱プレス機により電極1cm2当たり20kgの荷重をかけ、90℃、2分の熱プレスを行うことで電池を作製した。
電解液に1M LiBF4 プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート=1/1重量比を用い、この電解液を上記の実施例および比較例で作製したセパレータに含浸させた。これをリードタブ付きのアルミ箔電極に挟みアルミパックに封入して試験セルを作製した。この試験セルの抵抗を交流インピーダンス法(測定周波数:100kHz)により20℃にて測定した。結果を表2にまとめて示す。
上記のようにして作製した非水系二次電池について、熱プレス後の電池を解体し剥離強度を測定することで、接着性を評価した。結果を表2にまとめて示す。なお、表2では、実施例1のセパレータについての正極と負極に対する剥離強度の平均値を100として、各セパレータについての正極と負極に対する剥離強度の平均値を相対的に評価した値を示した。
上記のようにして作製した非水系二次電池について、25℃にてサイクル試験を実施した。充電条件は1C、4.2Vの定電流定電圧充電、放電条件は1C、2.75Vカットオフの定電流放電とした。ここでサイクル特性の指標は100サイクル後の容量維持率とした。結果を表2にまとめて示す。
上記のようにして作製した非水系二次電池について、25℃にて0.2Cの放電容量を基準にした2Cの相対放電容量を測定した。結果を表2にまとめて示す。なお、電池の負荷特性試験の結果は、接着後のイオン透過性の指標にもなる。
Claims (4)
- 不織布基材と、この基材の少なくとも表面に形成され、かつポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、
前記接着性多孔質層は、
(1)フッ化ビニリデンおよびヘキサフロロプロピレンを共重合成分として含み、かつ、ヘキサフロロプロピレンの含有量が1.5mol%以下であるポリフッ化ビニリデン系樹脂Aと、
(2)フッ化ビニリデンおよびヘキサフロロプロピレンを共重合成分として含み、かつ、ヘキサフロロプロピレンの含有量が1.5mol%超であるポリフッ化ビニリデン系樹脂Bと、を含み、
前記接着性多孔質層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂Aを15〜85重量部含み、ポリフッ化ビニリデン系樹脂Bを85〜15重量部含み、
前記セパレータは、空孔率が50〜70%であり、前記接着性多孔質層は、平均孔径が47〜150nmであることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。 - 前記接着性多孔質層の重量が3〜10g/m 2 であることを特徴とする請求項1記載の非水系二次電池用セパレータ。
- 請求項1または請求項2に記載のセパレータを用いた非水系二次電池。
- 電極とセパレータが接着されており、アルミラミネートフィルム外装となっていることを特徴とする請求項3記載の非水系二次電池。
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