以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.レジ釣銭機の構成]
図1に外観を示すように、レジ釣銭機1は、大きく分けて上側のレジスタ部2と、下側の釣銭処理部3とにより構成されている。このレジ釣銭機1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作されるようになされている。
なお以下では、レジ係員が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該レジ係員から見て左右及び上下を定義して説明する。
レジスタ部2は、内蔵された制御部5によりレジ釣銭機1全体を統括制御するようになされている。またレジスタ部2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、当該商品を認識するようになされている。
表示操作部6は、液晶ディスプレイ等でなる表示部と、当該液晶ディスプレイに重ねて配置されたタッチパネル等でなる操作部とにより構成されている。
表示操作部6は、認識した商品の名称や金額等を液晶ディスプレイに表示する。また表示操作部6は、表示画面の一部に数字等の入力キーを表示しており、タッチパネル上の入力キーに対応する箇所が押下操作されると、当該入力キーに対応した入力操作を受け付けて制御部5へ送信する。これに応じて制御部5は、商品の数量の増減や金額の修正等の各処理を行うようになされている。
またレジスタ部2には、レシート処理部7が内蔵されている。レシート処理部7は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口7Aから排出するようになされている。
一方、釣銭処理部3は、大きく分けて、左側の硬貨処理部11と、右側の紙幣処理部12と、前側上部の表示操作部13とにより構成されている。
表示操作部13は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。
表示操作部13の表示パネルは、硬貨処理部11及び紙幣処理部12における稼働状況を表示するようになされており、例えば紙幣処理部12において釣銭用の紙幣BLが不足していることや、紙幣BLが詰まったこと、或いはその箇所等を表示する。
表示操作部13の操作ボタンは、レジ係員等による押下操作を介して、例えば紙幣BLの搬送等に関する指示を受け付けるようになされている。
硬貨処理部11は、レジ係員により硬貨投入口15から投入された硬貨を硬貨鑑別部(図示せず)により鑑別して内部の硬貨収納庫に収納すると共に、制御部5から指示された硬貨を内部の硬貨収納庫から取り出し、これを硬貨排出口16から釣銭として排出するようになされている。
また硬貨処理部11は、硬貨投入口15から投入された硬貨のうち硬貨鑑別部(図示せず)において金種を鑑別できなかったリジェクト硬貨を硬貨リジェクト口17から排出するようになされている。
[1−2.紙幣処理部の構成]
紙幣処理部12は、図2に側面図を示すように、紙幣処理部筐体20内に、全体を制御する制御部21、紙幣BLの投入及び排出を行う紙幣入出金部22、紙幣BLを搬送する搬送部23、紙幣BLの種類等を鑑別する紙幣鑑別部24、紙幣BLを収納する紙幣収納庫25A、25B及び25C、リジェクト庫26並びに回収庫27等により構成されている。
制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣処理部12を統括制御するようになされている。
紙幣入出金部22は、紙幣処理部12の前上部に設けられており、紙幣BLの形状に対応した角形の受け皿状に形成された紙幣トレイ22Aを前側へ突出させると共に、回転駆動されるローラや羽根車等を内部に有している。
紙幣入出金部22は、精算時にレジ係員が顧客から預かった紙幣BLが当該紙幣トレイ22A上に載置されると、当該紙幣BLを1枚ずつ内部に取り込み、搬送部23に順次受け渡す。また紙幣入出金部22は、搬送部23から釣銭用の紙幣BLが搬送されてくると、紙幣BLを紙幣トレイ22A上に順次積み重ねるように排出して、レジ係員に取り出させる。
搬送部23は、各種ローラ、プーリ、ベルト及びブレード等によって構成されており、これらが適宜配置されることにより、主に前後方向に沿った搬送路23Wを形成している。
搬送部23は、図示しないモータ及びギヤ等を介して駆動力をローラやベルトへ伝達することにより、紙幣BLの短辺方向を進行方向として搬送路23Wに沿って搬送し、またブレードを適宜回動させることにより、当該紙幣BLの搬送先を切り替えるようになされている。
紙幣鑑別部24は、光学センサや磁気センサ等を有しており、紙幣BLの金種や真偽、或いは損傷の有無や程度等を鑑別し、その鑑別結果を制御部21へ送出する。
これに応じて制御部21は、当該紙幣BLが正当な紙幣BLであれば紙幣収納庫25へ搬送させ、当該紙幣BLが正当でない紙幣BLであれば紙幣入出金部22へ戻し、当該紙幣BLが損傷していればリジェクト庫26へ搬送させるようになされている(詳しくは後述する)。
紙幣収納庫25A、25B及び25C(以下まとめて紙幣収納庫25と呼ぶ)は、内部に空間を形成しており、搬送部23により搬送されてくる紙幣BLを空間内に順次積み重ねて収納するようになされている。因みに各紙幣収納庫25A、25B及び25Cは、紙幣BLが金種別に搬送されることにより、当該紙幣BLを金種別に収納するようになされている。
また紙幣収納庫25は、羽根車やローラ等を適宜回転させることにより、収納されている紙幣BLを1枚ずつ排出し、搬送部23へ受け渡すようになされている。
因みに紙幣処理部12は、いわゆるリサイクル型となっており、運用中に入金された紙幣BLを紙幣収納庫25に収納し、その後当該紙幣BLを釣銭として出金するようになされている。さらに紙幣収納庫25は、紙幣処理部筐体20に固定されており、取り外すことはできず、運用中には内部に収納された紙幣BLを容易に取り出すことができないようになされている。
リジェクト庫26は、紙幣処理部12の前下部、すなわち紙幣入出金部22の下方に設けられており、内部に数十枚程度の紙幣BLを集積できるような空間を形成している。
紙幣鑑別部24において損傷していると鑑別された紙幣BL(以下これをリジェクト紙幣BLRと呼ぶ)は、搬送部23によりリジェクト庫26へ搬送される。これに応じてリジェクト庫26は、搬送されてきたリジェクト紙幣BLRを順次集積して収納するようになされている。
回収庫27は、紙幣処理部12の前下部におけるリジェクト庫26の下方に設けられており、内部に数百枚程度の紙幣BLを集積できるような空間を形成している。
釣銭処理部3では、レジ係員等によって表示操作部13の操作ボタンが押下操作されることにより、紙幣収納庫25に集積された紙幣BLを搬送部23により回収庫27へ搬送させる。これに応じて回収庫27は、順次搬送されてくる紙幣BL(以下これを回収紙幣BLCと呼ぶ)を順次集積して収納するようになされている。
また釣銭処理部3では、レジ係員等によって釣銭用の紙幣BLが回収庫27に収納された上で表示操作部13の操作ボタンが押下操作されると、回収庫27から紙幣BLを1枚ずつ排出し、これを搬送部23により紙幣収納庫25へ順次搬送するようになされている。
ところでリジェクト庫26及び回収庫27は、紙幣処理部筐体20に対し着脱自在に構成された紙幣カセット28内に設けられている。
紙幣カセット28は、全体として直方体状に構成されており、その内部における上側をリジェクト庫26とし、その下側を回収庫27としている。
紙幣処理部筐体20における前下部、すなわち紙幣入出金部22の下方には、紙幣カセット28よりも僅かに大きい直方体状の空間20Aが形成されている。この空間20Aは、上下及び左右並びに後方が壁面により閉塞される一方、前方が開放されている。
紙幣カセット28は、レジ係員等の操作により、紙幣処理部筐体20の前方で位置を合わせて後方向へ移動されることにより、空間20A内に装着されるようになされている(図1、図2)。この装着状態において紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20内の搬送部23との間で紙幣BLを受け渡すことができる。
また紙幣カセット28は、レジ係員等の操作により、紙幣処理部筐体20に対し取出方向としての前方向へ移動されると、図3に示すように当該空間20A内から取り出されるようになされている。すなわち紙幣処理部12では、紙幣処理部筐体20から紙幣カセット28を取り出すことにより、リジェクト庫26及び回収庫27を一体に取り出し得るようになされている。
紙幣処理部筐体20の前面における空間20Aの左側には、カセット取出鍵29Kにより施錠又は解錠し得るカセット取出錠29が設けられている。
カセット取出錠29は、紙幣カセット28が紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された状態でカセット取出鍵29Kを用いて施錠されることにより、当該紙幣カセット28の所定箇所と係合し、当該空間20A内からの取出を禁止する。
一方カセット取出錠29は、紙幣カセット28が紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着され施錠された状態でカセット取出鍵29Kを用いて解錠されることにより、当該紙幣カセット28の所定箇所との係合を解除し、当該空間20A内からの取出を可能とする。
このように紙幣処理部12では、リジェクト庫26及び回収庫27が設けられた紙幣カセット28を紙幣処理部筐体20に装着し、また当該紙幣処理部筐体20から取り出し得るようになされている。
[1−3.紙幣カセットの構成]
紙幣カセット28は、上述したように全体として直方体状に構成されており、また図4に示すように、上下左右及び後方を塞ぐ筐体30の内部に空間31を形成している。
筐体30は、上下左右及び後方の各側板が比較的強固に構成されており、空間31内に紙幣BLが収納された際に、容易に破壊されることなく紙幣BLを保護し得るようになされている。
筐体30の後方上寄りの箇所には、紙幣BLが通過できる孔や所定のローラ等でなる搬送部30Aが設けられている。搬送部30Aは、搬送部23(図2)から受け渡された紙幣BLを前方へ進行させ、空間31内へ放出する。
空間31は、仕切板32により上下に仕切られ、当該仕切板32の上側がリジェクト庫26となっており、また当該仕切板32の下側が回収庫27となっている。
仕切板32は、上下に薄い板状に形成されており、その後側部分が上方へ向けて折り曲げられている。また仕切板32は、前側に設けられた回動軸32Aを中心に、後端を上下に変位させるように回動し得るようになされている。
この仕切板32は、上方へ回動されると、図4に実線で示したように、その後端部分を搬送部30Aよりも上方に位置させる。このとき紙幣カセット28は、搬送部30Aにより搬送される紙幣BLを仕切板32よりも下側へ放出することにより、当該紙幣BLを回収庫27に集積する。
また仕切板32は、下方へ回動されると、図4に破線で示したように、その後端部分を搬送部30Aよりも下方に位置させる。このとき紙幣カセット28は、搬送部30Aにより搬送される紙幣BLを仕切板32よりも上側へ放出することにより、当該紙幣BLをリジェクト庫26に集積する。
紙幣カセット28の前面には、空間31を閉塞する前面扉33が設けられている。前面扉33は、全体として紙幣カセット28の前面を全般的に覆うような、前後方向に比較的薄い板状に形成され、且つ比較的強固に構成されている。
前面扉33は、その後下方に左右方向に貫通する回動孔33Aが形成されている。一方、筐体30の下側板における前方上側には、左右方向に貫通する回動孔30Bが形成されている。そして回動孔33A及び回動孔30Bには、細長い円柱状の軸34が共に挿通されている。かかる構成により前面扉33は、筐体30に対し、軸34を回動中心として回動することができる。
また前面扉33の左右中央における上方には、外扉鍵としての前面扉開閉鍵35Kにより施錠又は解錠し得る前面扉開閉錠35が設けられている。
前面扉開閉錠35は、前面扉33が筐体30及び空間31の前方を塞いだ状態(以下これを閉塞状態と呼ぶ)において前面扉開閉鍵35Kを用いて施錠されることにより、筐体30の上側板に設けられた所定の係合箇所と係合し、前面扉33の回動を妨げ閉塞状態に維持する。
また前面扉開閉錠35は、前面扉33が閉塞状態にあり且つ施錠された状態において前面扉開閉鍵35Kを用いて解錠されることにより、筐体30の上側板における係合箇所との係合を解除し、前面扉33の回動を可能とする。
前面扉33は、空間31の前方を塞ぐ閉塞状態(図3及び図4)であり、且つ前面扉開閉錠35が解錠された状態において、その上端を前方へ倒すよう回動されることにより、図5及び図6に示すように、筐体30の前面を開放する(以下これを開放状態と呼ぶ)。
因みに前面扉33は、紙幣カセット28が紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された状態及び当該空間20A内から取り出された状態のいずれにおいても、前面扉開閉錠35が解錠されていれば、他の部分と干渉することなく開放することができる。
このときリジェクト庫26は、前面扉33が開放されると、前方から内部へアクセスすること、すなわちレジ係員等の指先でリジェクト紙幣BLRを把持等して取り出すことが可能となる。
一方、回収庫27は、図5及び図6に示したように、前面扉33のみが開放された段階では、内扉36により前方を閉塞された状態となる。
内扉36は、前面扉33と同様に前後方向に比較的薄い板状でなるものの、前面扉33よりも上下方向に短く、仕切板32の近傍を上端とするように構成されている。また内扉36は、左右方向の長さが前面扉33よりも短くなされており、筐体30の左側板に近接するように、すなわち当該筐体30の右側板から所定の隙間を空けるように設けられている。
さらに内扉36は、その前下方に左右方向に貫通する回動孔36Aが形成されており、この回動孔36Aに回動孔30B及び33Aと共に軸34が挿通されている。
かかる構成により内扉36は、前面扉33と筐体30との間、すなわち当該前面扉33よりも内側において、当該前面扉33と同様に軸34を回動中心として回動することができる。その一方で内扉36は、筐体30の前方を塞ぐ閉塞状態では、前面扉33と異なり、仕切板32よりも下方の回収庫27のみを閉塞し、リジェクト庫26については開放した状態を保つようになされている。
因みに紙幣カセット28では、前面扉33及び内扉36の双方が筐体30の前方を塞ぐ閉塞状態にある場合、図4に示したように、前面扉33の後面と内扉36の前面とを極めて近接させ、或いは当接させている。これにより紙幣カセット28では、前面扉33が閉塞状態にある場合、必然的に内扉36も閉塞状態となるため、リジェクト紙幣BLRと回収紙幣BLCとの混在を防止することができる。
内扉36の前面には、左右に移動ガイド41及び42がそれぞれ設けられている。移動ガイド41及び42は、いずれも全体として左右方向に長い板状部材を中心に構成され、その上下両辺から後方へ向けて前後方向に短い側板がそれぞれ延設されており、当該側板の後端において内扉36の前面に固定されている。
また移動ガイド41及び42は、左右に所定の間隔を空け、上下方向の位置を互いに揃えるように配置されている。すなわち移動ガイド41及び42は、それぞれ内扉36の前面において断面が長方形状の移動孔を左右方向に貫通させ、且つ双方の移動孔を互いに左右方向に連通させている。
移動ガイド41及び42の移動孔には、閂43が挿通されている。閂43は、全体として左右方向に長い直方体状に構成されると共に、左右の中央近傍における下側部分がえぐられたような形状となっている。
また閂43は、左右方向の断面形状が移動ガイド41及び42により形成された移動孔よりも一回り小さくなっている。すなわち閂43は、当該移動ガイド41及び42の制限により、内扉36に対し主に左右方向に移動できるようになされている。
さらに閂43は、左右方向の長さが内扉36よりも長くなっている。このため閂43は、左端部43Aを内扉36の左端近傍に位置させた場合、右端部43Bを内扉36の右端よりも外方へ突出させる(図6)。
また閂43は、図7に示すように、右端部43Bを内扉36の右端近傍に位置させた場合、左端部43Aを内扉36の左端よりも外方へ突出させる。
因みに閂43は、移動ガイド41及び42により左右方向への移動範囲が制限されており、最も右方向へ移動された場合、左端部43Aを内扉36の左端から僅かに突出させた状態(図6)となり、最も左方向へ移動された場合、右端部43Bを内扉36の右端よりも僅かに右側に位置させた状態(図7)となる。
また閂43と内扉36との間には、コイルばねでなるスプリング44が設けられている。スプリング44は、自然状態から伸長された状態で、一端が閂43に取り付けられると共に他端が内扉36に取り付けられており、内扉36に対し閂43を右方向へ付勢している。
すなわち閂43は、スプリング44の付勢力により、外部から力が加えられていないときには最も右側に位置し(図6)、左方向への外力が加えられている間のみ一時的に左側に移動するものの(図7)、この外力が加えられなくなると右方向へ移動して再び最も右側に位置する(図6)。
一方、筐体30の右側板における前方内側には、左方向(すなわち内側)へ向けて、爪部30Cが立設されている。爪部30Cは、左右の長さ、すなわち筐体30の右側板からのいわば爪の長さが比較的短く、内扉36の右端と筐体30の右側板との隙間を塞ぎつつ、当該内扉36と干渉しないようになされている。
また爪部30Cは、内扉36から右側へ突出した閂43の右端部43B(図7)の前面よりも僅かに前方に当該爪部30Cの後側面が位置するよう、前後方向の厚さや取付位置等が調整されている。
このため閂43は、スプリング44の付勢力により右方向へ付勢されると、係合部としての右端部43Bを内扉36の右端よりも突出させることにより、当該右端部43Bを被係合体としての爪部30Cと係合させる。これにより閂43は、内扉36の回動を禁止して閉塞状態に保つことができる。
また閂43は、外力が加えられて左方向へ移動されると、右端部43Bを内扉36の右端よりも左側に位置させることにより、当該右端部43Bと爪部30Cとの係合を解除する。これにより閂43は、図8に示すように、内扉36を回動させ開放状態とすることができる。
因みに閂43は、左右の中央近傍におけるえぐられた部分にレジ係員等の指を掛けさせることにより、左方向へ外力を加えやすいようになされている。また閂43は、内扉36の前面に設けられているため、前面扉33が閉塞されるとレジ係員等による操作が防止されることになる。
このように内扉36は、閂43の右端部43Bと爪部30Cとの係合により閉塞状態を維持する一方、当該閂43を左方向へ移動させることにより右端部43Bと爪部30Cとの係合を解除し回動を可能とするようになされている。
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、レジ釣銭機1の釣銭処理部3における紙幣処理部12は、紙幣処理部筐体20の空間20Aに対し紙幣カセット28を着脱可能に構成すると共に、当該紙幣カセット28内の上側及び下側にそれぞれリジェクト庫26及び回収庫27を設けた。
紙幣カセット28の前面には、当該紙幣カセット28の前面におけるほぼ全てを覆い軸34を中心に回動可能な前面扉33を設けると共に、当該前面扉33よりも内側に、回収庫27の前方のみを覆い軸34を中心に回動可能な内扉36を設けた。さらに内扉36には、左右方向に移動可能な閂43を設けた。
紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20の空間20Aに装着された状態及び当該空間20Aから取り出された状態のいずれにおいても、前面扉開閉鍵35Kにより前面扉開閉錠35が解錠されるだけで、前面扉33を開放状態とすることができる(図5、図6)。
すなわち紙幣カセット28は、前面扉33を開放状態とするだけで、リジェクト庫26の前方を開放することができ、レジ係員等に当該リジェクト庫26内のリジェクト紙幣BLRを取り出させることができる。
その一方、紙幣カセット28は、このとき内扉36により回収庫27の前方を閉塞している。内扉36は、スプリング44の付勢力により閂43を右方向に付勢して右端部43Bを当該内扉36の右端から突出させ、当該右端部43Bを爪部30Cと係合させることにより、回動が禁止される。
特に紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着されている場合(図6)、閂43における当接部としての左端部43Aが空間20Aの左内壁20AXに当接し、いわばリミッタとして機能することにより当該閂43の左方向への移動が抑制される。このため紙幣カセット28は、閂43に左方向への外力が加えられたとしても、右端部43Bと爪部30Cとの係合を解除しない。
すなわち紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着されている場合、内扉36を閉塞状態に保持することができ、レジ係員等に対し、リジェクト紙幣BLRの取出を許容する一方、回収庫27内に収納されている回収紙幣BLCの取出を禁止してその有高を保証し続けることができる。
一方紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20の空間20A内から取り出された場合、閂43の左端部43Aをいずれの部材にも当接させなくなり、いわばリミッタが解除された状態となる。
このとき紙幣カセット28は、前面扉33が開放された状態で閂43に左方向への外力が加えられると、当該閂43を左方向へ移動させることにより、左端部43Aを内扉36の左端よりも左へ突出させると共に右端部43Bを内扉36の右端よりも左側へ移動させて(図7)、当該右端部43Bと爪部30Cとの係合を解除する。
この状態で紙幣カセット28は、内扉36の上端を前方へ倒すよう外力が加えられると、軸34を中心に当該内扉36を回動させ、図8に示すように、筐体30の前面における下側部分、すなわち回収庫27の前方を開放する。
このとき回収庫27では、前方から内部へアクセスすること、すなわちレジ係員や専門の紙幣回収係員等により、回収紙幣BLCを把持等して取り出すことや、釣銭用として紙幣収納庫25へ搬送すべき紙幣BLを収納することが可能となる。
このように紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された場合には閂43の左端部43Aを左内壁20AXに当接させて内扉36の閉塞状態を保持する一方、当該空間20A内から取り出された場合には、右端部43Bと爪部30Cとの係合を解除して当該内扉36を開放させることができる。
特に紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20の空間20Aに対する装着又は取出における移動方向が前後方向であるのに対し、閂43の左端部43Aを左内壁20AXに当接させる際の当接方向を当該前後方向と異なる左方向とした。
紙幣カセット28については、例えば空間20A内における装着位置に関し、移動方向である前後方向にある程度の余裕が設けられ、装着状態における前後の位置精度が低くなってしまうこと、いわゆるがたつきを有することが考えられる。
しかしながら空間20Aでは、直方体状の紙幣カセット28が前後方向へ移動されると共に装着時における位置を安定させるべく、左内壁20AXが広い範囲に渡り一様に形成されており、当該紙幣カセット28の装着時にその左側面を左内壁20AXに極めて近接させ、又は当接させる。
このため紙幣カセット28は、空間20A内に装着されている限り、前後にある程度変位したとしても、左端部43Aを左内壁20AXに確実に当接させ続けることができ、右端部43Bと爪部30Cとの係合を確実に維持することができる。
また紙幣カセット28では、左内壁20AXを利用することにより、当該紙幣カセット28が空間20A内に装着されるだけで閂43の移動を制限することができるので、錠等を別途設ける必要が無く、構成を極めて簡素化でき低コスト化を図ることができる。
ところで紙幣カセット28では、仮に閂43の右端部43B及び爪部30Cの係合箇所を軸34の近傍のみとした場合、内扉36の上端近傍に外力が加えられた際に、支点から作用点までの距離よりも支点から力点までの距離の方が長い、いわゆる「てこの原理」により係合部分が破壊されてしまう恐れがあった。
これに対し実際の紙幣カセット28では、閂43の右端部43B及び爪部30Cを、軸34から離れた箇所である内扉36の上端近傍においても係合させるようにしたことにより、支点から作用点までの距離よりを支点から力点までの距離とほぼ同等とすることができるので、このような破壊を未然に防止することができる。
また紙幣カセット28では、閂43をスプリング44により右方向へ付勢することにより、内扉36が閉塞状態にあれば、自動的に右端部43Bを爪部30Cに係合させるようにした。
これにより紙幣カセット28は、内扉36が閉塞状態に有れば外力が加えられない限りその閉塞状態を極力維持することができる。また紙幣カセット28は、閂43の左端部43Aを積極的に内扉36の左端へ近づけ、その大部分を収納することができるので、紙幣処理部筐体20の空間20A内へ装着される際に当該紙幣処理部筐体20と衝突することによる損傷を未然に防止することもできる。
さらに紙幣カセット28では、閂43を内扉36に設けたことにより、回収庫27内の空間等を占有せずに済むため、当該回収庫27内における回収紙幣BLCの収納枚数を維持することができる。
かくして紙幣処理部12では、紙幣カセット28が空間20Aに装着されたときには内扉36の開放を禁止する一方、紙幣カセット28が空間20Aから取り出されたときには当該内扉36の開放を許可することができる。
これにより紙幣処理部12では、紙幣カセット28が空間20Aに装着されている限り、前面扉33が開放されたとしても回収庫27内の回収紙幣BLCの有高を保証し続けることができる。また紙幣処理部12では、回収紙幣BLCの取出をリジェクト紙幣BLRの取出から独立させることができるので、運用上の自由度を高めることができる。
以上の構成によれば、紙幣処理部12の紙幣カセット28は、前面扉33を閉塞状態としたときにはリジェクト庫26及び回収庫27の双方を閉塞する一方、前面扉33を開放状態としたときには、リジェクト庫26の前方のみを開放し、回収庫27の前方を内扉36により閉塞したままとする。紙幣カセット28は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された場合には、閂43の左端部43Aを左内壁20AXに当接させて内扉36の閉塞状態を保持する一方、空間20A内から取り出された場合には、閂43が左方向へ移動されることにより右端部43Bと爪部30Cとの係合を解除して内扉36を回動させ、回収庫27の前方を開放することができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるレジ釣銭機101は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、釣銭処理部3の紙幣処理部12に代わる釣銭処理部103の紙幣処理部112を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣処理部112は、紙幣処理部12と比較して、紙幣カセット28に代わる紙幣カセット128を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[2−1.紙幣カセットの構成]
紙幣カセット128は、紙幣カセット28と比較して、筐体30、仕切板32及び内扉36に代えて筐体130、仕切板132及び内扉136を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
内扉136は、図6と対応する図9に示すように、第1の実施の形態による内扉36と異なり、筐体130における左右それぞれの側板に対し隙間を殆ど空けないように設けられている。
因みに図9は、紙幣カセット128が紙幣処理部筐体20の空間20Aに装着された状態を表している。また図9では、説明の都合上、前面扉33を省略している。
内扉136の前面には、移動ガイド41及び42、閂43並びにスプリング44に代わる移動ガイド141及び142、閂143並びにスプリング144が設けられている。
移動ガイド141及び142、閂143並びにスプリング144は、いずれも内扉36の前面に設けられた移動ガイド41及び42、閂43並びにスプリング44を前面から見て反時計回りに90度回転させると共に、内扉136における上下方向の長さに合わせてそれぞれの上下方向の長さを短縮させたような構成となっている。
すなわち移動ガイド141及び142は、いずれも全体として左右方向に長く上下方向に短い板状部材を中心に構成され、その左右両辺から後方へ向けて前後方向に短い側板がそれぞれ延設されており、当該側板の後端において内扉136の前面に固定されている。
また移動ガイド141及び142は、上下に所定の間隔を空け、左右方向の位置を互いに揃えるように配置されている。すなわち移動ガイド141及び142は、内扉136の前面において断面が長方形状の移動孔をそれぞれ上下方向に貫通させ、且つ双方の移動孔を上下方向に連通させている。
移動ガイド141及び142の移動孔には、閂143が挿通されている。閂143は、第1の実施の形態における閂43と異なり、全体として上下方向に長い直方体状に構成されている。
また閂143は、上下方向の断面形状が移動ガイド141及び142により形成された移動孔よりも一回り小さくなっている。すなわち閂143は、当該移動ガイド141及び142の制限により、内扉136に対し主に上下方向に移動できるようになされている。
さらに閂143は、上下方向の長さが内扉136よりも長くなっている。このため閂143は、下端部143Aを内扉136の下端近傍に位置させた場合、上端部143Bを内扉136の上端よりも上方へ突出させる。
また閂143は、図7と対応する図10に示すように、上端部143Bを内扉136の上端近傍に位置させた場合、下端部143Aを筐体130の下側面よりも下方へ突出させる。
因みに閂143は、移動ガイド141及び142により上下方向への移動範囲が制限されており、最も上方向へ移動された場合、下端部143Aを内扉136の下端から僅かに突出させた状態(図9)となり、最も下方向へ移動された場合、上端部143Bを内扉136の上端よりも僅かに下方に位置させた状態(図10)となる。
また閂143と内扉136との間には、第1の実施の形態と同様、コイルばねでなるスプリング144が設けられている。スプリング144は、自然状態から伸長された状態で、一端が閂143に取り付けられると共に他端が内扉136に取り付けられており、内扉136に対し閂143を上方向へ付勢している。
すなわち閂143は、スプリング144の付勢力により、外部から力が加えられていないときには最も上側に位置し(図9)、下方向への外力が加えられている間のみ一時的に下側に移動するものの(図10)、この外力が加えられなくなると上方向へ移動して再び最も上側に位置する(図9)。
一方、仕切板132の前端における左右中央には、下方向へ向けて、第1の実施の形態における爪部30Cと対応する爪部132Cが立設されている。爪部132Cは、上下の長さ、すなわち仕切板132からのいわば爪の長さが比較的短く、仕切板132の前端における下面と内扉136の上端との間に収まるよう、すなわち内扉136の上端と干渉しないようになされている。
また爪部132Cは、内扉136の上端から上方へ突出した閂143の上端部143B(図9)の前面よりも僅かに前方に当該爪部132Cの後側面が位置するよう、前後方向の厚さや取付位置等が調整されている。
このため閂143は、スプリング144の付勢力により上方向へ付勢されると、係合部としての上端部143Bを内扉136の上端よりも上方へ突出させることにより、当該上端部143Bを被係合体としての爪部132Cと係合させる。これにより閂143は、第1の実施の形態と同様、内扉136の回動を禁止して閉塞状態に保つことができる。
また閂143は、外力が加えられて下方向へ移動されると、上端部143Bを内扉136の上端よりも下方に位置させることにより、当該上端部143Bと爪部132Cとの係合を解除する。これにより閂143は、第1の実施の形態(図8)と同様に、内扉136を回動させ開放状態とすることができる。
このように内扉136は、閂143の上端部143Bと爪部132Cとの係合により閉塞状態を維持する一方、当該閂143を下方向へ移動させることにより上端部143Bと爪部132Cとの係合を解除し回動を可能とするようになされている。
[2−2.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態による紙幣カセット128は、内扉136の前面に上下方向に移動可能な閂143を設けた。
内扉136は、スプリング144の付勢力により閂143を上方向に付勢して上端部143Bを当該内扉136の上端から突出させ、当該上端部143Bを爪部132Cと係合させることにより、回動が禁止される。
特に紙幣カセット128は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着されている場合(図9)、閂143における当接部としての下端部143Aが空間20Aの下内壁20AYに当接し、いわばリミッタとして機能することにより当該閂143の下方向への移動が抑制される。このため紙幣カセット128は、閂143に下方向への外力が加えられたとしても、上端部143Bと爪部132Cとの係合を解除しない。
すなわち紙幣カセット128は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着されている場合、第1の実施の形態と同様に内扉136を閉塞状態に保持することができ、レジ係員等に対し、リジェクト紙幣BLRの取出を許容する一方、回収庫27内に収納されている回収紙幣BLCの取出を禁止してその有高を保証し続けることができる。
一方紙幣カセット128は、紙幣処理部筐体20の空間20A内から取り出された場合、閂143の下端部143Aをいずれの部材にも当接させなくなり、いわばリミッタが解除された状態となる。
このとき紙幣カセット128は、閂143に下方向への外力が加えられると、当該閂143を下方向へ移動させることにより、下端部143Aを筐体130の下側面よりも下方へ突出させると共に上端部143Bを内扉136の上端よりも下方へ移動させて(図10)、当該上端部143Bと爪部132Cとの係合を解除する。
この状態で紙幣カセット128は、内扉136の上端を前方へ倒すよう外力が加えられると、第1の実施の形態と同様に当該内扉136を前方へ回動させ、回収庫27の前方を開放する。
このとき回収庫27では、前方から内部へアクセスすること、すなわちレジ係員や専門の紙幣回収係員等により、回収紙幣BLCを把持等して取り出すことや、釣銭用として紙幣収納庫25へ搬送すべき紙幣BLを収納することが可能となる。
このように紙幣カセット128は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された場合には閂143の下端部143Aを下内壁20AYに当接させて内扉136の閉塞状態を保持する一方、当該空間20A内から取り出された場合には、上端部143Bと爪部132Cとの係合を解除して当該内扉136を開放させることができる。
また紙幣カセット128は、紙幣処理部筐体20の空間20Aに対する装着又は取出における移動方向が前後方向であるのに対し、閂143の下端部143Aを下内壁20AYに当接させる際の当接方向を当該前後方向と異なる下方向とした。
このため紙幣カセット128は、空間20A内に装着されている限り、前後にある程度変位したとしても、下端部143Aを下内壁20AYに確実に当接させ続けることができ、第1の実施の形態と同様に内扉136を確実に閉塞状態に維持することができる。
さらに紙幣カセット128では、閂143の上端部143B及び爪部132Cを、軸34(図5)から離れた箇所である内扉136の上端近傍において係合させるようにしたことにより、第1の実施の形態と同様、支点から作用点までの距離よりを支点から力点までの距離とほぼ同等とすることができるので、てこの原理を利用した破壊を未然に防止することができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による紙幣カセット128は、第1の実施の形態による紙幣カセット28と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による紙幣カセット128は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された場合には、閂143の下端部143Aを下内壁20AYに当接させ上端部143Bと爪部132Cとの係合を維持して内扉136の閉塞状態を保持する一方、空間20A内から取り出された場合には、閂143が下方向へ移動されることにより上端部143Bと爪部132Cとの係合を解除して内扉136を回動させ、回収庫27の前方を開放することができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態によるレジ釣銭機201は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、釣銭処理部3の紙幣処理部12に代わる釣銭処理部203の紙幣処理部212を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣処理部212は、紙幣処理部12と比較して、紙幣カセット28に代わる紙幣カセット228を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[3−1.紙幣カセットの構成]
紙幣カセット128は、紙幣カセット28と比較して、筐体30、仕切板32及び内扉36に代えて筐体230、仕切板232及び内扉236を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
内扉236は、図9と対応する図11に示すように、第2の実施の形態による内扉136と同様、筐体230における左右それぞれの側板に対し隙間を殆ど空けないように設けられている。
内扉236の前面における左上方には、移動ガイド141及び142、閂143並びにスプリング144に代わる回動軸241、レバー243並びにスプリング244が設けられている。
内扉236の前面における左上方には、前後方向に貫通するように、丸孔状の孔部236Aが穿設されている。この孔部236Aには、短い円柱状の回動軸241が挿通されている。
回動軸241は、その直径が孔部236Aの孔径よりも僅かに小さくなっており、内扉236の前面とほぼ直交する状態を維持したまま、当該内扉236に対し自在に回動し得るようになされている。また回動軸241は、図示しない抜け止め部により、内扉236に対し前後方向へ抜け落ちないようになされている。
回動軸241の前側には、薄板状のレバー243が取り付けられている。レバー243は、全体として、内扉236の前面とほぼ平行な平板状に形成されており、回動軸241の軸芯に中心軸をほぼ一致させた円板状の円板部243Dと、当該円板状部分の外周部から外方へ向けて延設された細長い直方体状の直方体部243Lとを有している。
図11に示したように、レバー243は、直方体部243Lを上方へ向けたとき、その先端部243Bを内扉236の上端よりも上方へ突出させる。またこのときレバー243の直方体部243Lにおける端側部243Aは、内扉236の左端よりも僅かに内側(すなわち右側)に位置している。
一方レバー243は、図10と対応する図12に示すように、回動軸241を中心として、内扉236の前面に対し反時計回りR2へ約90度回動させて直方体部243Lを左方向へ向けた場合、先端部243Bを内扉236の左端よりも外方へ突出させる。
因みにレバー243の回動範囲は、直方体部243Lが回動軸241から上方向へ延びた状態(図11)と左方向へ延びた状態(図12)との間における、約90度の範囲に規制されている。
さらにレバー243と内扉236との間には、ねじりコイルばね(トーションばね)でなるスプリング244が設けられている。スプリング244は、自然状態からねじられた状態で、一端がレバー243に取り付けられると共に他端が内扉236に取り付けられており、レバー243を内扉236の前面に対し時計回りR1に付勢している。
すなわちレバー243は、スプリング244の付勢力により、外部から力が加えられていないときには直方体部243Lを上方向へ向け(図11)、反時計回りR2に外力が加えられている間のみ一時的に直方体部243Lを左方向へ向ける状態にまで回動するものの(図12)、この外力が加えられなくなると時計回りに回動して再びに位置する(図11)。
一方、仕切板132の前端における左端近傍には、下方向へ向けて、第2の実施の形態における爪部132Cと対応する爪部232Cが立設されている。爪部232Cは、第2の実施の形態における爪部132Cと比較して、仕切板232に対する左右方向の設置箇所が異なっている点以外はほぼ同様に構成されている。
このためレバー243は、スプリング244の付勢力により時計回りR1に付勢されると、係合部としての先端部243Bを内扉136の上端よりも上方へ突出させ、当該先端部243Bを被係合体としての爪部232Cと係合させる。これによりレバー243は、第2の実施の形態と同様、内扉236の回動を禁止して閉塞状態に保つことができる。
またレバー243は、外力が加えられて反時計回りR2に回動されると、先端部243Bを内扉236の上端よりも下方に位置させ、当該内扉236の左端よりも左方へ突出させることにより、当該先端部243Bと爪部232Cとの係合を解除する。これによりレバー243は、第1の実施の形態(図8)と同様に、内扉236を回動させ開放状態とすることができる。
このように内扉236は、レバー243の先端部243Bと爪部232Cとの係合により閉塞状態を維持する一方、当該レバー243を反時計回りR2に回動させることにより先端部243Bと爪部232Cとの係合を解除し回動を可能とするようになされている。
[3−2.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態による紙幣カセット228は、内扉236の前面に回動可能なレバー243を設けた。
内扉236は、スプリング244の付勢力によりレバー243の直方体部243Lを上方向へ向けて先端部243Bを当該内扉236の上端から突出させ、当該先端部243Bを爪部232Cと係合させることにより、回動が禁止される。
特に紙幣カセット228は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着されている場合(図11)、レバー243における当接部としての端側部243Aが空間20Aの左内壁20AXに近接している。
このため紙幣カセット228は、空間20Aへの装着状態においてレバー243に反時計回りR2の外力が加えられたとしても、端側部243Aを左内壁20AXに当接させることにより、いわばリミッタとして機能させ当該レバー243の回動が抑制される。すなわち紙幣カセット228は、レバー243に反時計回りR2の外力が加えられたとしても、回動することなく、先端部243Bと爪部232Cとの係合を解除しない。
従って紙幣カセット228は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着されている場合、第1及び第2の実施の形態と同様に内扉236を閉塞状態に保持することができ、レジ係員等に対し、リジェクト紙幣BLRの取出を許容する一方、回収庫27内に収納されている回収紙幣BLCの取出を禁止してその有高を保証し続けることができる。
一方紙幣カセット228は、紙幣処理部筐体20の空間20A内から取り出された場合、レバー243の端側部243Aをいずれの部材にも当接させなくなり、いわばリミッタが解除された状態となる。
このとき紙幣カセット228は、レバー243に反時計回りR2の外力が加えられると、当該レバー243を反時計回りR2に回動させることにより、直方体部243Lを左方向へ向けると共に先端部243Bを内扉236の左端よりも外方へ突出させる位置まで回動させて(図12)、当該先端部243Bと爪部232Cとの係合を解除する。
この状態で紙幣カセット228は、内扉236の上端を前方へ倒すよう外力が加えられると、第1及び第2の実施の形態と同様に、当該内扉236を前方へ回動させて回収庫27の前方を開放する。
このとき回収庫27では、前方から内部へアクセスすること、すなわちレジ係員や専門の紙幣回収係員等により、回収紙幣BLCを把持等して取り出すことや、釣銭用として紙幣収納庫25へ搬送すべき紙幣BLを収納することが可能となる。
このように紙幣カセット228は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された場合にはレバー243の端側部243Aを左内壁20AXに当接させて内扉236の閉塞状態を保持する一方、当該空間20A内から取り出された場合には、レバー243の回動により先端部243Bと爪部232Cとの係合を解除して当該内扉236を開放させることができる。
また紙幣カセット228は、紙幣処理部筐体20の空間20Aに対する装着又は取出における移動方向が前後方向であるのに対し、レバー243の端側部243Aを左内壁20AXに当接させる際の当接方向を、第1の実施の形態と同様、当該前後方向と異なる左方向とした。
このため紙幣カセット228は、空間20A内に装着されている限り、前後にある程度変位したとしても、端側部243Aを左内壁20AXに確実に当接させ続けることができ、第1の実施の形態と同様に内扉236を確実に閉塞状態に維持することができる。
さらに紙幣カセット228では、レバー243の先端部243B及び爪部232Cを、軸34(図5)から離れた箇所である内扉236の上端近傍において係合させるようにしたことにより、第1の実施の形態と同様、支点から作用点までの距離よりを支点から力点までの距離とほぼ同等とすることができるので、てこの原理を利用した破壊を未然に防止することができる。
その他の点においても、第3の実施の形態による紙幣カセット228は、第1の実施の形態のよる紙幣カセット28と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第3の実施の形態による紙幣カセット228は、紙幣処理部筐体20の空間20A内に装着された場合には、レバー243の端側部243Aを左内壁20AXに当接させ先端部243Bと爪部232Cとの係合を維持して内扉236の閉塞状態を保持する一方、空間20A内から取り出された場合には、レバー243が反時計回りに回動されることにより先端部243Bと爪部232Cとの係合を解除して内扉236を回動させ、回収庫27の前方を開放することができる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、閂43を左右方向へ移動可能に構成し、右端部43Bを爪部30Cと係合させ、左端部43Aを空間20Aの左内壁20AXに当接させるようにした場合について述べた。また第2の実施の形態においては、閂143を上下方向へ移動可能に構成し、上端部143Bを爪部132Cと係合させ、下端部143Aを空間20Aの下内壁20AYに当接させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれらに限らず、例えば任意の方向に沿って移動する閂を設け、当該閂の一端又は他端のいずれか一方を所定の爪状の部材と係合させ、他方を空間20Aにおける上下左右いずれかの内壁に当接させるようにしても良い。
また上述した第1の実施の形態においては、閂43の一部分である右端部43Bを筐体30の一部である爪部30Cと係合させると共に、当該閂43の一部分である左端部43Aを空間20Aの左内壁20AXに当接させるようにした場合について述べた。さらに第2の実施の形態においては、閂143の一部分である上端部143Bを仕切板132の一部である爪部132Cと係合させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば閂43に代えて、爪部30Cと係合させる係合部品と空間20Aの左内壁20AXに当接させる当接部品とを別体とし、且つ両者を所定のリンク機構等により互いに連動させるよう接続するようにしても良い。この場合、当接部品が空間20Aの左内壁20AXに当接することにより、係合部品が爪部30Cとの係合を維持すれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第3の実施の形態においては、レバー243を内扉236の左上近傍に設け、直方体部243Lを上方向へ向けたときに、先端部243Bを爪部232Cと係合させると共に端側部243Aを紙幣処理部筐体20の左内壁20AXに近接させて回動を抑止するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えばレバー243を内扉236の右下近傍に設けると共に、第1の実施の形態と同様に筐体30の左側板における前端近傍に爪部30Cを設け、直方体部243Lを右方向へ向けたときに、先端部243Bを爪部30Cと係合させると共に端側部を紙幣処理部筐体20の下内壁20AYに近接させて回動を抑止し、内扉236を閉塞状態に維持するようにしても良い。
すなわち、レバーが爪部と係合するときに向ける方向としてはいずれであっても良く、また爪部についても筐体30側において当該レバーと係合する箇所であればいずれであっても良い。要は、筐体230や仕切板232等に設けた爪部と当該レバーと係合した状態で紙幣カセット228が空間20Aに装着されたときに、当該レバーの一部が空間20Aにおけるいずれかの内壁に当接してその回動が制限される一方、紙幣カセット228が空間20Aから取り出された際に当該レバーを回動させ爪部との係合を解除できれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣カセット28内において、上方にリジェクト庫26を設けると共に下方に回収庫27を設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上方に回収庫27を設けると共に下方にリジェクト庫26を設けるようにしても良い。この場合、内扉36については、回収庫27のみを閉塞しリジェクト庫26を開放したままとするような箇所に設ければ良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、筐体30の右側板における前方に爪部30Cを設け、閂43の右端部43Bを当該爪部30Cに係合させることにより内扉36を閉塞状態に維持するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば筐体30の右側板における前方に係合用の溝を形成して閂43の右端部43Bを当該溝と係合させる等、筐体30側の種々の部材と右端部43Bとを係合させることにより内扉36を閉塞状態に維持するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態においても、例えば仕切板132及び232に溝を形成するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣カセット28の前面扉33及び内扉36をいずれも筐体30の下方に設けた軸34を中心に回動させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば前面扉33の回動軸を筐体30の上側板に設け、或いは前面扉33の回動軸を筐体30の左側板に設けると共に内扉36の回動軸を筐体30の右側板に設ける等、任意の箇所に各扉の回動軸を設けるようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、スプリング44により内扉36に対し閂43を右方向へ付勢するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば板ばねやゴムなどの種々の付勢手段により内扉36に対し閂43を右方向へ付勢するようにしても良く、或いはスプリング44を省略するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態におけるスプリング144及び244についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣カセット28に搬送部30Aを1箇所のみ設けると共に仕切板32を回動可能に構成し、当該仕切板32を回動してリジェクト庫26又は回収庫27のいずれへも紙幣BLを搬送できるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば仕切板32を固定式にすると共に、2個の搬送部30Aをリジェクト庫26及び回収庫27それぞれに対応する箇所に設けるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態における仕切板132及び232についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、回収庫27に収納した紙幣BLを搬送部23へ順次受け渡すことができるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば回収庫27からは紙幣BLを搬送部23へ受け渡さないようにし、紙幣収納庫25に収納する釣銭用の紙幣BLについては紙幣入出金部22から搬送部23を介して順次搬送するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣収納庫25を3個設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣収納庫25を2個や4個以上などの任意の数だけ設けるようにしても良い。紙幣収納庫25の数については、紙幣処理部12の大きさや取り扱う紙幣BLの種類の数等に応じて適宜定めれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣カセット28の前面扉33側に前面扉開閉錠35を設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣カセット28の筐体30側に前面扉開閉錠35を設けるようにしても良い。この場合、紙幣カセット28が紙幣処理部筐体20側の空間20A内に装着された状態及び取り出された状態のいずれにおいても前面扉33の施錠又は解錠をできることが望ましい。さらには、前面扉開閉錠35を省略するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣処理部筐体20側にカセット取出錠29を設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣カセット28側にカセット取出錠29を設けるようにしても良く、要はカセット取出鍵29Kを保有する者など特定の者のみが紙幣カセット28を取り出し得るようにすれば良い。さらには、カセット取出錠29を省略するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、小売店舗の精算所(レジ)等に設置されるレジ釣銭機1の紙幣処理部12に本発明を適用するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば銀行内において窓口業務を担当する銀行員が使用する窓口端末(いわゆる自動テラー現金自動預払機)等、紙幣の授受に関する業務に供する種々の装置に適用するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、媒体としての紙幣BLを内部に収納する紙幣カセット28に本発明を適用するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば商品券や金券、入場券等のような薄い紙状の媒体を内部に収納する種々のカセットに適用するようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、筐体としての筐体30と、回収庫としての回収庫27と、リジェクト庫としてのリジェクト庫26と、外扉としての前面扉33と、内扉としての内扉36と、係止体としての閂43とによって媒体収納装置としての紙幣カセット28を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、回収庫と、リジェクト庫と、外扉と、内扉と、係止体とによって媒体収納装置を構成するようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、本体としての紙幣処理部筐体20と、空間としての空間20Cと、筐体としての筐体30と、回収庫としての回収庫27と、リジェクト庫としてのリジェクト庫26と、外扉としての前面扉33と、内扉としての内扉36と、係止体としての閂43とによって媒体入出装置としての紙幣処理部12を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる本体と、空間と、筐体と、回収庫と、リジェクト庫と、外扉と、内扉と、係止体とによって媒体入出装置を構成するようにしても良い。