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JP5825043B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、表示装置及び照明装置 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、表示装置及び照明装置に関し、詳しくは、発光効率、発光寿命、色純度に優れ、さらには駆動電圧に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子及びその材料ならびにそのような有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、そのような有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた表示装置及び照明装置に関するものである。
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、ELDという)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要となる。
一方、有機EL素子は発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光、リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能である。更に、有機EL素子は、自己発光型であるために視野角が広くて、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるため、省スペースや携帯性等の観点から注目されている。今後の実用化に向けて、更に低消費電力で効率がよく、高輝度で発光する有機EL素子の開発が望まれている。
このような有機エレクトロルミネッセンス素子には、発光体として励起一重項からの発光を用いる蛍光発光タイプ、励起三重項からの発光を用いるリン光タイプ等が知られている。
励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため、発光性励起種の生成確率としては25%であり、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。
これに対し、励起三重項からのリン光発光を用いる有機EL素子については内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られる可能性があることから、照明用途としても注目されている。このようなリン光発光体はイリジウム錯体又は白金等の遷移金属錯体を中心に検討されており、代表例としてはオルトメタル化イリジウム錯体が挙げられる。
これらの錯体は、発光ホスト材料(または単にホストともいう)と共に発光層内に分散、添加されて使用されるため、リン光ドーパントと呼ばれている。
有機EL素子の性能(発光効率・発光寿命・発光色等)は、ドーパントのみならずホストによっても大きく変わるため、両者の開発は精力的に行われている。
例えば、高い発光効率を得るために、The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00、浜松)では、Ikai等がホール輸送性の化合物をリン光性化合物のホストとして用いている。また、M.E.Tompson等では、各種電子輸送性材料をリン光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。
いずれの方法も、ドーパントとホストを適切に選択して用いることにより、発光素子の発光輝度や発光効率は、従来の素子に比べ大幅に改良されるが、発光素子の発光寿命については、従来の蛍光方式の素子よりも短いという問題点を抱えていた。
特に、青色発光素子の場合、その発光寿命は極端に短くなり、発光効率、発光波長及び発光寿命の全てを満たす青色ドーパントは未だ見出されておらず、その創出が急務である。
また、青色ドーパントの開発とともに、有機EL素子の性能に大きな影響を及ぼす青色ホストの開発も盛んに実施されており、特にカルバゾール誘導体とジベンゾフラン誘導体を組み合わせたホストが主な材料として検討されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、炭素原子と同族のケイ素原子やゲルマニウム原子を含有したホスト材料の開発も行われており、これらはワイドバンドギャップを有することから青色ドーパントへの適合が検討されている(例えば、特許文献2、3参照)。
国際公開第2011/004639号 特許第4177310号公報 国際公開第2007/142083号
しかしながら、上記した従来の化合物によっても、有機EL素子の発光効率や発光寿命の向上は不十分であり、さらなる飛躍が求められる。
したがって、本発明の目的は、発光効率が高く、長寿命な有機EL素子を提供することである。
本発明の上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
一般式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R9は置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。但し、R1〜R8のうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される。
一般式(2)中、Lは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は1つのアリーレン基と1つのヘテロアリーレン基とが結合した基を表し、Ar1〜Ar3は、アリール基又はヘテロアリール基を表す。但し、Lで表されるアリーレン基は、m−フェニレン基又はo−フェニレン基の何れかの基を表し、Lで表されるヘテロアリーレン基は、ピリジレン基又は下記一般式(3)で表される基の何れかの基を表す。Lが1つのアリーレン基と1つのヘテロアリーレン基とが結合した基である場合、1つのアリーレン基、m−フェニレン基又はo−フェニレン基の何れかの基を表し、1つのヘテロアリーレン基は、ピリジレン基又は下記一般式(3)で表される基の何れかの基を表す。Zは、ケイ素又はゲルマニウムを表す。
一般式(3)中、Rm及びRoは、置換基を表す。n及びpは、各々独立に0〜3の整数である。Xは、酸素原子、硫黄原子、N−R、SiRR、PR(=O)又はPRを表し、Rは芳香族炭化水素環基を表す。
また、本発明の他の態様によれば、
一対の電極の間に、発光層を含む有機層が挟持され、該有機層のうち少なくとも一層に上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
また、本発明の更に他の態様によれば、
上記有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記有機層のうち少なくとも一層をウェットプロセスで形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
また、本発明の更に他の態様によれば、
上記有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする表示装置が提供される。
また、本発明の更に他の態様によれば、
上記有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする照明装置が提供される。
本発明によれば、発光効率が高く、長寿命な有機EL素子を提供することができる。
本発明の表示装置の構成の一例を示した概略斜視図である。 図1に示す表示部の構成の一例を示した概略斜視図である。 本発明の有機EL素子を用いた照明装置の一例を示す概略斜視図である。 本発明の有機EL素子を用いた照明装置の一例を示す概略斜視図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。
本発明において、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vi)陽極//正孔輸送層/陽極バッファー層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vii)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
発光層は、ユニットを形成して発光層ユニットとしてもよい。更に、発光層間には非発光性の中間層を有していてもよく、中間層は電荷発生層を含んでいてもよい。
本発明の有機EL素子としては白色発光であることが好ましく、これらを用いた照明装置であることが好ましい。
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層もしくは複数層を設けることができる。
電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料、電子注入材料も含む)としては陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、電子輸送層の構成材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
電子輸送層に用いられる従来公知の材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、カルボリン誘導体、を含むアザカルバゾール誘導体等が挙げられる。ここで、アザカルバゾール誘導体とは、カルバゾール環を構成する炭素原子の1つ以上が窒素原子で置き換わったものを示す。
前記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引性基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も電子輸送材料として用いることができる。
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも電子輸送材料として用いることができる。
また、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいい、例えば、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett法))等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。
電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。この電子輸送層は前記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
以下、本発明の有機EL素子の電子輸送層の形成に好ましく用いられる従来公知の化合物(電子輸送材料)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、本発明の有機EL素子の電子輸送層の形成に更に好ましく用いられるのは下記の一般式(R−1)で表される化合物である。
前記一般式(R−1)において、G〜Gは窒素原子又は−C(Rs)=を表し、該G〜Gの少なくとも1つは窒素原子を表す。Rrは置換基であって、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることが好ましい。Rsは水素原子又は置換基を表し、Rsで表される置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることが好ましく、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることがより好ましい。
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層の膜厚の総和は特に制限はないが、膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、好ましくは2nm〜5μmの範囲に調整され、更に好ましくは2nm〜200nmの範囲に調整され、特に好ましくは5nm〜100nmの範囲に調整される。
発光層の形成には、後述する発光ドーパントやホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、湿式塗布法(ウェットプロセスともいい、例えば、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett法))等により形成することができる。
本発明の有機EL素子の発光層には、発光ドーパント(リン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光発光性ドーパント基ともいう)や蛍光ドーパント等)化合物と、発光ホスト化合物とを含有することが好ましい。
(1)発光性ドーパント化合物
発光性ドーパント化合物(発光ドーパントともいう)について説明する。
発光性ドーパントとしては、蛍光ドーパント(蛍光性化合物ともいう)、リン光ドーパント(リン光発光体、リン光性化合物、リン光発光性化合物等ともいう)を用いることができる。
(1.1)リン光ドーパント(リン光発光ドーパントともいう)
本発明に係るリン光ドーパントについて説明する。
本発明に係るリン光ドーパント化合物は、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられる。
1つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こって発光性ホス
ト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。
もう1つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、リン光ドーパント化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型である。
いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明の目的効果を損なわない範囲で、本発明の有機EL素子に係る発光層には、以下の特許公報に記載されている化合物等を併用してもよい。
例えば、国際公開第00/70655号、特開2002−280178号公報、特開2001−181616号公報、特開2002−280179号公報、特開2001−181617号公報、特開2002−280180号公報、特開2001−247859号公報、特開2002−299060号公報、特開2001−313178号公報、特開2002−302671号公報、特開2001−345183号公報、特開2002−324679号公報、国際公開第02/15645号、特開2002−332291号公報、特開2002−50484号公報、特開2002−332292号公報、特開2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−338588号公報、特開2002−170684号公報、特開2002−352960号公報、国際公開第01/93642号、特開2002−50483号公報、特開2002−100476号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−359082号公報、特開2002−175884号公報、特開2002−363552号公報、特開2002−184582号公報、特開2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−241751号公報、特開2001−319779号公報、特開2001−319780号公報、特開2002−62824号公報、特開2002−100474号公報、特開2002−203679号公報、特開2002−343572号公報、特開2002−203678号公報等である。
(1.2)蛍光ドーパント
蛍光ドーパント(蛍光性化合物ともいう)としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等や、レーザー色素に代表される蛍光量子収率が高い化合物が挙げられる。
(1.3)従来公知の発光ドーパントとの併用
また、発光ドーパントは、複数種の化合物を併用して用いてもよく、構造の異なるリン光ドーパント同士の組み合わせや、リン光ドーパントと蛍光ドーパントを組み合わせて用いてもよい。
ここで、発光ドーパントとして、使用可能な発光ドーパントの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
(2)ホスト化合物
本発明の有機EL素子の発光層に含まれるホスト化合物とは、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であることが好ましく、更に好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。
ホスト化合物は、1種の化合物が単独で用いられてもよいし、または複数種の化合物が併用して用いられてもよい。
本発明に用いられる発光ホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも1つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
また、本発明に用いられるホスト化合物は、低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
本発明においては、発光層を3層有していても良く、その場合にはホスト化合物は発光層ごとに異なっていてもよいが、同一の化合物であると、優れた駆動寿命特性及び色度安定性を得られることから好ましい。
また、前記ホスト化合物は、その最低励起3重項エネルギー(T1)が、2.7eVより大きいことがより高い発光効率を得られることから好ましい。本発明でいう最低励起3重項エネルギーとは、ホスト化合物を溶媒に溶解し、液体窒素温度において観測したリン光発光スペクトルの最低振動バンド間遷移に対応する発光バンドのピークエネルギーを言う。
本発明においては、ガラス転移点が90℃以上の化合物が好ましく、更には130℃以上の化合物が優れた駆動寿命特性を得られることから好ましい。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子においては、ホスト材料はキャリアの輸送を担うため、キャリア輸送能を有する材料が好ましい。キャリア輸送能を表す物性としてキャリア移動度が用いられるが、有機材料のキャリア移動度は、一般的に電界強度に依存性が見られる。電界強度依存性の高い材料は、正孔と電子注入・輸送バランスを崩しやすい為、中間層材料、ホスト材料は、移動度の電界強度依存性の少ない材料を用いることが好ましい。
ここで、本発明者らは上記した本発明の課題に対し、発光特性及び耐久性の向上を妨げる要因について考察した。その結果、素子中において、炭素原子とSi原子との結合を含む化合物をホスト化合物として用いている場合、炭素原子とSi原子の結合が切断されることで素子の性能が不十分になっているものと推測した。
ホスト化合物のフロンティア軌道(HOMOやLUMO)には、電子や正孔が存在し、これは分子全体としてはカチオン状態と考えられる。このようなカチオン状態は基底状態に比較し、高エネルギー状態にあり、分子の構造変化(振動等)が生じることが予想され、特にHOMOやLUMOが存在する部分の構造変化が大きいことが予想される。この構造変化の結果、C−Si結合が切断され、結果として素子の発光特性及び耐久性が不十分になっているものと考えられる。
本発明者らは上記の考察に対し、HOMOやLUMOとC−Si結合の分離を目的に、連結基を導入した化合物(後述する一般式(1)で表される化合物)を用いたところ、素子の耐久性は飛躍的に向上し、同時に発光効率の向上も認められた。
更に、驚くべきことに本発明の化合物を発光層内に用いた場合、駆動時の電圧上昇が抑制されること、さらには発光スペクトルの半値幅が狭くなることが判明した。詳細は未だ明確ではないが本発明の化合物が共存することでドーパントの分散性が向上したためと推測される。構造的な観点から見ると、通常のホスト化合物が全体に平板状の分子であるのに対し、本発明の化合物は特徴的な球状の部分構造を有し、平板状部分と球状部分が分子内に共存することが特徴として挙げられる。このような特徴が有機分子同士の相互作用を適度に調節し、球状分子であるドーパントの分散性を向上させ、上記のような性能向上が見られたものと推測しているが、詳細については鋭意検討中である。
(2.1)一般式(1)で表される化合物
本発明の有機EL素子用材料について以下説明する。
本発明の有機EL素子用材料は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)において、R1〜R8は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。
一般式(1)において、R1〜R8で表される置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基(アリール基ともいい、例えば、フェニル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基等)、非芳香族複素環基、芳香族複素環基(ヘテロアリール基ともいい、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、ハロゲン原子、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、ウレイド基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、アルキルホスホリル基、アリールホスホリル基、アルキルチオホスホリル基又はアリールチオホスホリル基等が挙げられ、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ハロゲン原子、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が好ましく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基がより好ましく、芳香族複素環基、アミノ基が更に好ましい。
また、一般式(1)において、R1〜R8で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニリル基が好ましい。
同様に、R1〜R8で表される芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基が好ましく、ピリジル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基がより好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基が更に好ましい。
同様に、R1〜R8で表されるアミノ基としては、ジアリールアミノ基が好ましく、ジフェニルアミノ基がより好ましい。
なお、これらの基は、さらに上記の置換基によって置換されていてもよいし、また、それらが互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(1)において、R9は、置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。
R9で表されるアリール基又はヘテロアリール基としては、フェニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
ここで、一般式(1)におけるR1〜R8の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される。
一般式(1)におけるR1〜R8のうち、R1、R3〜R6、R8の何れかが一般式(2)で表されることが好ましく、R3〜R6の何れか1つが一般式(2)で表されることより好ましく、R4又はR5が一般式(2)で表されることが最も好ましい。
一般式(1)におけるR1〜R8は、それぞれ、水素原子、置換基及び一般式(2)で表される構造の何れの組み合わせであってもよいが、R2及びR7が水素原子であることが好ましい。さらには、R1〜R4の何れかが一般式(2)で表される場合、R5〜R8のうち何れか1つが置換基であり、それ以外が水素原子であることが好ましい。
一般式(2)において、Lは、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される構造とを連結する連結基であって、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又はアリール基とヘテロアリール基とが結合した基を表す。ここで、アリーレン基、ヘテロアリーレン基とは、各々アリール基、ヘテロアリール基から更に水素原子を1つ除いた2価の連結基を表す。
一般式(2)において、Lで表されるアリーレン基としては、炭素原子数が6〜15であることが好ましく、炭素原子数が6〜12であることがより好ましい。具体的には、Lで表されるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
また、一般式(2)において、Lで表されるヘテロアリーレン基としては、ピリジレン基、チエニレン基、キノリレン基、ジベンゾフリレン基、ジベンゾチエニレン基、カルバゾリレン基、カルボリニレン基、ジアザカルバゾリレン基であることが好ましく、ピリジレン基、ジベンゾフリレン基、ジベンゾチエニレン基、カルバゾリレン基、カルボリニレン基であることがより好ましい。また、一般式(2)においてLで表されるヘテロアリーレン基は、他のアリーレン基と結合して連結基を構成していてもよく、このようなアリーレン基としてフェニレン基が好ましい。
なお、これらの連結基は、さらに上記の置換基によって置換されていてもよい。
一般式(2)において、Ar1〜Ar3は、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
一般式(2)において、Ar1〜Ar3は、それぞれ互いに異なっていても同一であっていてもよいが、同一であることがより好ましい。また、Ar1〜Ar3としては、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることが最も好ましい。また、Ar1〜Ar3は互いに結合して環を形成することはない。
一般式(2)において、Zは、ケイ素又はゲルマニウムを表し、ケイ素であることが好ましい。
(2.2)一般式(2−1)〜(2−3)で表される化合物
一般式(2)は下記一般式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表されることが好ましい。
一般式(2−1)〜(2−3)において、L1〜L3は、各々独立に単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又はアリーレン基とヘテロアリーレン基とが結合した基を表し、当該L1〜L3を介して一般式(1)におけるR1〜R8の何れかと連結している。
一般式(2−1)〜(2−3)において、L1〜L3としては、上記の一般式(2)におけるLで表される連結基と同様のものを挙げることができる。
L1〜L3としては、単結合又はヘテロアリーレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。L1〜L3がヘテロアリーレン基である場合、ヘテロアリーレン基の分子量としては、100〜450であることが好ましく、100〜300であることがより好ましく、150〜250であることが更に好ましい。
また、一般式(2−1)〜(2−3)において、L1〜L3で表される連結基としては、下記一般式(3)で表される構造を挙げることができる。
一般式(3)において、Rm及びRoは、置換基を表し、置換基としては、上記した一般式(1)においてR1〜R8で表される置換基と同様のものを挙げることができる。
Rm及びRoで表される置換基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基が好ましく、芳香族複素環基、アミノ基がより好ましい。
Rm及びRoで表される芳香族複素環基としては、ピリジル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基が好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基がより好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基が更に好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基が特に好ましい。
同様に、Rm及びRoで表されるアミノ基としては、ジアリールアミノ基が好ましく、ジフェニルアミノ基がより好ましい。
一般式(3)において、n及びpは、0〜3の整数であり、0又は1であることが好ましく、0であることが最も好ましい。
一般式(3)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、N−R、SiRR、PR(=O)又はPRを表し、好ましくは、酸素原子、硫黄原子又はN−Rであり、より好ましくは、酸素原子又は硫黄原子である。なお、Rは芳香族炭化水素環基を表し、好ましくはフェニル基である。
(2.3)一般式(4)又は(5)で表される化合物
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例として下記一般式(4)又は(5)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(4)又は(5)において、トリフェニルシリル基は、フェニレン基を介してカルバゾリル基の3位又は4位と結合している。結合部位に関してはオルト位、メタ位、パラ位の何れでも良いが、オルト位又はメタ位で結合することが好ましく、メタ位で結合することが最も好ましい。
一般式(4)又は(5)において、R41〜R44及びR51〜R54は、水素原子又は置換基を表し、置換基としては、上記した一般式(1)においてR1〜R8で表される置換基と同様のものを挙げることができる。
R41〜R44及びR51〜R54で表される置換基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が好ましく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基がより好ましく、芳香族複素環基、アミノ基が更に好ましい。
R41〜R44及びR51〜R54で表される芳香族複素環基としては、ピリジル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基が挙げられ、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基が好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基がより好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基が更に好ましい。
同様に、R41〜R44及びR51〜R54で表されるアミノ基としては、ジアリールアミノ基が好ましく、ジフェニルアミノ基であることがより好ましい。
一般式(4)又は(5)において、R49及びR59は、置換基を表し、置換基としては、上記した一般式(1)においてR1〜R8で表される置換基と同様のものを挙げることができる。
R49及びR59で表される置換基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ピリジル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基がより好ましく、フェニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基が更に好ましい。
(2.4)一般式(6)で表される化合物
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例として下記一般式(6)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(6)において、Rmは、置換基を表し、置換基としては、上記した一般式(1)においてR1〜R8で表される置換基と同様のものを挙げることができる。
Rmで表される置換基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基が好ましく、芳香族複素環基、アミノ基がより好ましい。
Rmで表される芳香族複素環基としては、ピリジル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基が好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基がより好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基が更に好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基が特に好ましい。
同様に、Rmで表されるアミノ基としては、ジアリールアミノ基が好ましく、ジフェニルアミノ基がより好ましい。
一般式(6)において、nは、0〜3の整数であり、0又は1であることが好ましく、0であることが最も好ましい。
一般式(6)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、N−R、SiRR、PR(=O)又はPRを表し、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、N−Rであり、より好ましくは、N−Rである。なお、Rは芳香族炭化水素環基を表し、好ましくはフェニル基である。
一般式(6)において、R61〜R64は、水素原子又は置換基を表し、置換基としては、上記した一般式(1)においてR1〜R8で表される置換基と同様のものを挙げることができる。
R61〜R64で表される置換基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基が好ましく、芳香族複素環基がより好ましい。
R61〜R64で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基が好ましい。
R61〜R64で表される芳香族複素環基としては、ピリジル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基が好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基がより好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基が更に好ましく、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基が特に好ましい。
一般式(6)において、R69は、置換基を表し、このような置換基として、上記した一般式(1)においてR1〜R8で表される置換基と同様のものを挙げることができる。
R69で表される置換基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ピリジル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基がより好ましく、フェニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基が更に好ましい。
上記した本発明の有機EL素子用材料は、有機EL素子の有機層において、何れの層に用いられていてもよいが、発光層、電子輸送層、正孔輸送層に用いられることが好ましく、発光層、正孔輸送層に用いられることがより好ましく、発光層に用いられることが更に好ましい。更に、本発明の有機EL素子用材料は、発光層中のホスト材料としてリン光ドーパントと共に用いられることが最も好ましい。
(2.5)具体例
以下、本発明に係る有機EL素子用材料の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
(2.6)合成例
以下に、本発明の有機EL素子用材料の合成例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。上記した化合物(1),(40)の合成方法を例にとって説明する。
(2.6.1)中間体3−(トリフェニルシリル)フェニルボランの合成
窒素気流下、300mlの4頭フラスコに脱水ジエチルエーテル(EtO)100ml、m−ジブロモベンゼン9.6gを加え、ドライアイス/アセトン浴で冷却した。この溶液にn−ブチルリチウム(n−BuLi、1.65Min Hexane)26mlを、内温−65℃以下を保持し、滴下した。反応溶液を−65℃以下で30分撹拌後、室温に戻し30分撹拌後、再度ドライアイス/アセトン浴で冷却した。この溶液にトリフェニルシリルクロライド10.0gを脱水EtO100mlに溶解した溶液を、内温−60℃以下を保持しながら滴下した。滴下終了後、室温に戻し、一晩撹拌した。この反応溶液に水100mlを加え、有機層を分液後、水及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。固形物を濾別し、ろ液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製し、目的の3−ブロモフェニルトリフェニルシラン10.9gを得た(収率90%)。得られた化合物の構造はNMR測定により確認した。
NMR(400MHz、CDCl):7.66(s、1H)、7.56−7.53(m、7H)、7.48−7.35(m、10H)、7.26−7.24(t、1H)
続いて、窒素気流下、500mlの4頭フラスコに3−ブロモフェニルトリフェニルシラン9.4g、脱水テトラヒドロフラン(THF)300mlを加え、ドライアイス/アセトン浴で冷却した。この溶液にn−BuLi(1.65Min Hexane)20mlを、内温−70℃以下を保持しながら滴下し、更にそのまま1時間撹拌した。さらにこの溶液にトリメトキシボラン4.4gをTHF50mlと混合した溶液を、内温−65℃以下を保持しながら滴下した。さらに−65℃以下で30分撹拌後、室温へ戻し一晩撹拌した。この溶液に水50ml、2N塩酸50mlを順に加え、30分撹拌した後、有機層を分液し、水、食塩水でそれぞれ2回ずつ洗浄した。さらに硫酸マグネシウムを加え、乾燥した後、これを濾別し、ろ液を減圧濃縮した。粗成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的の3−(トリフェニルシリル)フェニルボラン5.2gを得た(収率67%)。得られた化合物の構造はNMRにより確認した。
(2.6.2)本発明の化合物(1)の合成
200mlの3頭フラスコにトルエン100mlを加え、窒素バブリングにより脱気したのち、別途合成した3,6−ジブロモ−9−フェニルカルバゾール1.0g、3−(トリフェニルシリル)フェニルボラン2.4gを加え、さらに炭酸カリウム1.0g、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)250mgを加えた後、8時間加熱還流した。反応終了後、放冷し、水100ml、トルエン100mlを加え、有機層を分液し、水、食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。固形物を濾別し、ろ液を減圧濃縮し、組成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的の本発明の化合物(1)を1.2g得た(収率53%)。得られた化合物の構造はNMR及びMass測定により確認した。
なお、後述する有機EL素子の作製においては、本発明の化合物(1)をさらにGPC精製した後、昇華精製したサンプルを用いた。
(2.6.3)本発明の化合物(40)の合成
100mlの3頭フラスコにジメチルスルホキシド50mlを加え、窒素バブリングにより脱気したのち、別途合成した3−(8−ブロモジベンゾフラニル)−9−フェニルカルバゾール1.5g、3−(トリフェニルシリル)フェニルボラン1.7gを加え、さらに炭酸カリウム0.85g、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)130mgを加えた後、内温120℃で3時間加熱した。反応終了後、放冷し、水300ml、トルエン200mlを加え、有機層を分液、水、食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。固形物を濾別し、ろ液を減圧濃縮し、組成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的の本発明の化合物(40)を1.5g得た(収率66%)。得られた化合物の構造はNMRにより確認した。
NMR(400MHz、CDCl):8.43(s、1H)、8.26−8.22(m、2H)、8.15(m、1H)、7.91(s、1H)、7.83−7.72(m、3H)、7.67−7.38(m、28H)、7.34−7.31(m、1H)
なお、後述する有機EL素子の作製においては、本発明の化合物(40)をさらにGPC精製した後、昇華精製したサンプルを用いた。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。
例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体及び導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料を用いることもできる。
本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層は、前記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
正孔輸送層の膜厚については、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。この正孔輸送層は前記材料の一種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもでき、例えば、特開平4−297076号、特開2000−196140号、同2001−102175号の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
本発明においては、このようなp性の高い正孔輸送層を用いることが、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
以下に、本発明の有機EL素子の正孔輸送層の形成に好ましく用いられる化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、前記有機化合物薄膜の基本的な構成層の他に、必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、前記電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子における正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
正孔阻止層には、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(ここで、アザカルバゾール誘導体とは、カルバゾール環を構成する炭素原子の1つ以上が窒素原子で置き換わったものを示す)を含有することが好ましい。
また、本発明においては、複数の発光色の異なる複数の発光層を有する場合、その発光極大波長が最も短波にある発光層が、全発光層中、最も陽極に近いことが好ましいが、このような場合、当該最短波層と当該最短波層の次に陽極に近い発光層との間に正孔阻止層を追加して設けることが好ましい。
更には、当該位置に設けられる正孔阻止層に含有される化合物の50質量%以上が、前記最短波発光層のホスト化合物に対しそのイオン化ポテンシャルが0.3eV以上大きいことが好ましい。
イオン化ポテンシャルは、化合物のHOMO(最高占有軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義され、例えば、下記に示すような方法により求めることができる。
(1)米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)を用い、キーワードとしてB3LYP/6−31G*を用いて構造最適化を行うことにより算出した値(eV単位換算値)として求めることができる。この計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いためである。
(2)イオン化ポテンシャルは光電子分光法で直接測定する方法により求めることもできる。例えば、理研計器社製の低エネルギー電子分光装置「Model AC−1」を用いて、あるいは紫外光電子分光として知られている方法を好適に用いることができる。
一方、電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ、電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前記正孔輸送層の構成を、必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明において、正孔阻止層、電子阻止層の膜厚としては、好ましくは3nm〜100nmであり、更に好ましくは3nm〜30nmである。
《注入層:正孔注入層(陽極バッファー層)、電子注入層(陰極バッファー層)》
注入層には、正孔注入層と電子注入層がある。
注入層は、陽極と発光層又は正孔輸送層との間、陰極と発光層又は電子輸送層との間に必要に応じて設けられる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のため、電極と有機層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123頁〜166頁)にその詳細が記載されている。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウム、フッ化ナトリウムやフッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
注入層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
また、正孔注入層及び電子注入層に用いられる材料は、他の材料と併用して用いることも可能であり、例えば、正孔輸送層や電子輸送層中に混合して用いることも可能である。
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。
このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で、透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状パターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極のシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に、膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
《陰極》
一方、陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質として用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極のシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は、通常10nm〜5μmの範囲が好ましく、更に好ましくは50nm〜200nmの範囲である。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極の何れか一方が、透明又は半透明であると、発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《支持基板》
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等、種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。
好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の皮膜又はその両者のハイブリッド皮膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が10−3ml/(m・24h・MPa)以下、水蒸気透過度が10−5g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に、バリア膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ処理法、大気圧プラズマ処理法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ処理法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用してもよく、有機EL素子からの発光色を、蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
《有機EL素子の製造方法》
有機EL素子の製造方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔
阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極から構成される有機EL素子の製造方法について説明する。
まず、適当な基体上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1.0μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように形成させて、陽極を作製する。
次に、この陽極上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等の有機化合物を含有する薄膜を順次形成させる。
本発明の有機EL素子においては、本発明に係る一般式(1)で表される化合物を発光層に用いる場合の発光層や、陰極と該陰極に隣接する電子輸送層は、湿式法により塗布・成膜されることが好ましい。
湿式塗布法としては、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法等があるが、精密な薄膜が形成可能で、且つ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・ツー・ロール方式適性の高い方法が好ましい。また、層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。
本発明に係る有機EL素子材料を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができる。分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
これらの層を順次形成した後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
また、順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた多色の表示装置に、直流電圧を印加する場合には陽極を+、陰極を−の極性として、電圧2V〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
本発明の有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
《封止》
本発明の有機EL素子は、陽極、陰極、及び陽極と陰極との間に設けられる各層を、封止部材によって外気から遮断して封止しておくことが好ましい。
本発明に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということから、ポリマーフィルム、
金属フィルムを使用することが好ましい。
更には、ポリマーフィルムは、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・MPa)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、封止膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。
更に、前記封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。
これら封止膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ処理法、大気圧プラズマ処理法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、中でも、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
《保護膜、保護板》
有機層を挟み支持基板と対向する側の封止膜あるいは封止用フィルムの外側に、有機EL素子の機械的強度を高めるため、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に封止が封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜あるいは保護板を設けることが好ましい。
これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
《光取り出し》
有機EL素子は空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7〜2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%〜20%程度の光しか取り出せないと一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は全反射を起こし、有機EL素子の外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として光が有機EL素子の側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法として、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(米国特許第4,774,435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(特開昭63−314795号公報)、有機EL素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(基板と外界間を含む)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等がある。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(基板と外界間を含む)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明はこれらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度あるいは耐久性に優れた有機EL素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚みで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましく、更には、1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚みは媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは低屈折率の媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。
この方法は回折格子が1次の回折や2次の回折といった所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。これに対し、屈折率分布を二次元的な分布にすると、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては前述の通り、いずれかの層間もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。
このとき、回折格子の周期は媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。
回折格子の配列は正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
《集光シート》
本発明の有機EL素子は、基板の光取り出し側に、例えば、マイクロレンズアレイ状の構造を設けるように加工すること、あるいは集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば、有機EL素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば、液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして、例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。
プリズムシートの形状としては、例えば、基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。
また、発光素子からの光放射角を制御するために、光拡散板・フィルムを集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることができる。
《用途》
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれらに限定するものではない。特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、有機EL素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
また、本発明の有機EL素子が白色素子の場合、白色とは、2度視野角正面輝度を前記方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がX=0.33±0.07、Y=0.33±0.1の領域内にあることを言う。
《表示装置》
本発明の表示装置について説明する。本発明の表示装置は、本発明の有機EL素子を具備したものである。本発明の表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。
多色表示装置の場合は発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、スピンコート法、印刷法である。
表示装置に具備される有機EL素子の構成は、必要に応じて本発明の有機EL素子の中から選択される。また、有機EL素子の製造方法は、前述の本発明の有機EL素子の製造方法の一態様に示したとおりである。
得られた多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2V〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、赤、緑、青発光の3種の有機EL素子を用いることによりフルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス、ディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の有機EL素子から構成される表示装置の構成の一例を示した概略斜視図であって、有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
図1に示すとおり、ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
制御部Bは表示部Aと電気的に接続されている。
制御部Bは、複数の画素それぞれに対し、外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送る。その結果、各画素が走査信号により走査線毎に画像データ信号に応じて順次発光し、画像情報が表示部Aに表示される。
図2は、図1に記載の表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。
表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図2においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料から構成されている。走査線5とデータ線6は互いに格子状に直交して、その直交する位置で画素3に接続されている(詳細は図示していない)。
画素3は、走査線5から走査信号が送信されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並列配置することによって、フルカラー表示が可能となる。
《照明装置》
本発明の照明装置について説明する。本発明の照明装置は、本発明の有機EL素子を有する。
本発明の有機EL素子は共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよく、このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、レーザー発振をさせることにより前記用途に使用してもよい。更に、本発明の有機EL素子は照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
また、本発明の有機EL材料は照明装置として、実質白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光又は蛍光で発光する材料を複数組み合わせたもの、蛍光又はリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでもよいが、本発明に係る白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせ混合するだけでよい。
発光層、正孔輸送層あるいは電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分ける等単純に配置するだけでよく、他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で電極膜等を形成でき、生産性も向上する。
この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が発光白色である。
発光層に用いる発光材料としては特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係る金属錯体、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
《本発明の照明装置の一態様》
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚み300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図3、図4に示すような照明装置を形成することができる。
図3は、照明装置の概略図を示している。
図3に示すとおり、有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている。ガラスカバー102での封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行われる。
図4は、照明装置の断面図を示している。
図4に示すとおり、陰極105及び有機EL層106は、透明電極付きガラス基板107上に形成されている。ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
また、下記の実施例で用いられる化合物の構造は下記式で表される。
《有機EL素子1−1の作製》
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、陽極としてITOを膜厚100nmで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明電極基板を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物として比較1の化合物を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント化合物としてD−50を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlqを200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
次に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDを蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板上に蒸着し、膜厚40nmの正孔輸送層を設けた。
更に、ホスト化合物としての比較1とドーパント化合物としてのD−50をそれぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.012nm/秒で、前記正孔輸送層上に共蒸着して、膜厚40nmの発光層を設けた。
続けてAlqを蒸着速度0.1nm/秒で、前記発光層上に蒸着して、膜厚40nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温とした。
引き続きフッ化リチウムを蒸着して膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、アルミニウムを蒸着して膜厚150nmの陰極を設けて、有機EL素子1−1を作製した。
《有機EL素子1−2〜1−12の作製》
有機EL素子1−1の作製において、ホスト化合物を表1に記載の化合物に変更した。
それ以外は同様にして有機EL素子1−2〜1−12を作製した。
《有機EL素子1−1〜1−12の評価》
作製後、有機EL素子1−1〜1−12の非発光面をそれぞれガラスケースで覆い、厚み1.1mmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図3及び図4に示すような構成からなる照明装置を作製し、これをサンプルとした。
このようにして作製した各サンプルに対し下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)発光効率(外部取り出し量子効率の測定)
有機EL素子を、室温(約23℃〜25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度(L)[cd/m]を測定することにより、外部取り出し量子効率(η)を算出した。発光輝度の測定には、CS−2000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。
発光効率(外部取り出し量子効率)は、有機EL素子1−1の発光輝度を100とする相対値で表した。
(2)発光寿命
有機EL素子を、室温(約23℃〜25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で連続的に発光させ、発光輝度が初期輝度の1/2の輝度になるのに要する時間(半減期τ1/2)を測定し、これを発光寿命の尺度とした。
発光寿命は有機EL素子1−1の半減期を100とする相対値で表した。
(3)半値幅
有機EL素子を、室温(約23℃〜25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光スペクトルを測定し、極大波長の1/2となる強度の2点間の間隔を読み取り半値幅とした。数値が小さい程好ましい。
(4)まとめ
表1に示すとおり、本発明の有機EL素子1−4〜1−6、1−8〜1−12は、比較例の有機EL素子1−1〜1−3と比較して、発光効率に優れ、発光寿命が長い。これは、発光層中の分子凝集が抑制されたためと考えられる。更に、本発明の有機EL素子1−4〜1−6、1−8〜1−12は、スペクトルの半値幅も狭くなっており、発光効率及び発光寿命と同様に分子凝集が抑制されたためと考えられる。
以上から、有機EL素子の発光効率や発光寿命の向上に対して、発光層のホスト化合物として本発明の有機EL素子用材料を使用することが有効であり、同時に半値幅が狭く、色純度の高いスペクトルが得られることがわかる。
《有機EL素子2−1の作製》
実施例1と同様に作成した透明電極基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用い、3000rpm、30秒の条件下でスピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚20nmの正孔輸送層を設けた。
窒素雰囲気下、正孔輸送層上に、3mgの正孔輸送材料HT−1(TPD)と40mgの正孔輸送材料HT−2(α−NPD)とを10mlのトルエンに溶解した溶液を用い、1500rpm、30秒の条件下でスピンコート法により薄膜を形成し、更に180秒間紫外光を照射して光重合・架橋を行い、膜厚約20nmの第2正孔輸送層を設けた。
この第2正孔輸送層上に、ホスト化合物として100mgの比較2と、発光ドーパント化合物として10mgのD−50とを、それぞれ10mlのトルエンに溶解した溶液を用いて、600rpm、30秒の条件でスピンコート法により薄膜を形成した。80℃で1時間真空乾燥し、膜厚約60nmの発光層を設けた。
さらにこの発光層上に、50mgのET−40を10mlのブタノールに溶解した溶液を用いて、1000rpm、30秒の条件下でスピンコート法により薄膜を形成した後、60℃で1時間真空乾燥し、膜厚約30nmの電子輸送層を設けた。
なお、陰極バッファー層及び陰極は、実施例1と同様の方法で形成した。
《有機EL素子2−2〜2−15の作製》
有機EL素子2−1の作製において、ホスト化合物を表2に記載の化合物に変更した。
それ以外は同様にして有機EL素子2−2〜2−15を作製した。
なお、ホスト化合物としての比較1は、溶媒に対して十分な溶解性が得られず、上記有機EL素子2−1の作製と同様の方法では素子を作製できなかった。
《有機EL素子2−1〜2−15の評価》
作製した有機EL素子2−1〜2−15を評価するに際しては、これら各有機EL素子を実施例1の有機EL素子1−1〜1−12と同様に封止し、図3及び図4に示すような照明装置を作製して評価した。
このようにして作製した各サンプルに対し実施例1と同様に発光効率、発光寿命及び半値幅の評価を行った。発光効率及び発光寿命に関しては有機EL素子2−1の各特性値を100とする相対値で表した。
評価結果を表2に示す。
表2に示すとおり、湿式塗布法により各有機層を形成した本発明の有機EL素子2−2−10、2−12〜2−15は、比較例の有機EL素子2−1及び2−2と比較して、発光効率に優れ、発光寿命が長い。これは発光層中での分子凝集が抑制されたためと考えられる。また、実施例1と同様に、本発明の有機EL素子2−2−10、2−12〜2−15は、スペクトルの半値幅が狭くなっている。
以上から、有機EL素子の発光効率や発光寿命の向上に対して、発光層のホスト化合物として本発明の有機EL素子用材料を使用することが有効であることがわかる。また、実施例1との比較から、各有機層を蒸着法に代えて塗布法で形成すると、特に発光寿命に関して本発明の有機EL素子用材料を用いることによる効果が顕著に表れるといえる。
《有機EL素子3−1の作製》
有機EL素子1−1の作製において、正孔輸送層と発光層との間に、第2の正孔輸送層を設けた。第2の正孔輸送層は、比較1を蒸着速度0.2nm/秒で正孔輸送層上に蒸着することにより形成した。また、第2の正孔輸送層の膜厚は10nmとした。
それ以外は同様にして有機EL素子3−1を作製した。
《有機EL素子3−2〜3−9の作製》
有機EL素子3−1の作製において、第2の正孔輸送層の正孔輸送材料及びホスト化合物を表3に記載の化合物に変更した。
それ以外は同様にして有機EL素子3−2〜3−10を作製した。
《有機EL素子3−1〜3−10の評価》
作製した有機EL素子3−1〜3−10を評価するに際しては、これら各有機EL素子を実施例1の有機EL素子1−1〜1−12と同様に封止し、図3及び図4に示すような照明装置を作製して評価した。
このようにして作製した各サンプルに対し、実施例1と同様に発光効率及び発光寿命の評価を行い、更に下記の評価を行った。なお、表3において発光効率及び発光寿命は、有機EL素子3−1の各特性値を100とする相対値で表した。
有機EL素子を、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、その時の駆動電圧(初期駆動電圧)と発光輝度が50%になった時の駆動電圧とを測定し、ΔV=(初期駆動電圧―輝度50%時の駆動電圧)を算出した。
ΔVは有機EL素子3−1のΔVを100とする相対値で表した。
評価結果を表3に示す。
表3に示すとおり、本発明の有機EL素子用材料を第2の正孔輸送層の正孔輸送材料として用いた有機EL素子3−2は、比較例の有機EL素子3−1と比較して、発光効率及び発光寿命に優れ、更に素子駆動時の電圧上昇が抑制されることがわかる。
また、本発明の有機EL素子用材料を、第2の正孔輸送層及びホスト化合物として用いた有機EL素子3−4、3−5、3−9、3−10は、比較例の有機EL素子3−1、本発明の有機EL素子用材料を第2の正孔輸送層にのみ用いた有機EL素子3−2、本発明の有機EL素子用材料をホスト化合物にのみ用いた有機EL素子3−3と比較して、より発光効率に優れ、発光寿命が長いことがわかる。更に、有機EL素子3−4、3−5、3−9、3−10は、駆動時の電圧上昇も大きく抑えられている。これらの結果は、第2の正孔輸送層の正孔輸送材料として用いた本発明の有機EL素子用材料が正孔輸送性に優れているために得られたものと考えられる。
以上から、有機EL素子の発光効率や発光寿命の向上、素子駆動時の電圧上昇の抑制に対して、本発明の有機EL素子用材料を正孔輸送材料又はホスト化合物として使用することが有効であることがわかる。さらには、本発明の有機EL素子用材料を正孔輸送材料及びホスト化合物の両方に使用することが特に有効であることがわかる。
《フルカラー表示装置の作製》
(1)青色発光素子の作製
実施例1の有機EL素子1−10を青色発光素子とした。
(2)緑色発光素子の作製
実施例1の有機EL素子1−10において、D−50をD−1に変更した。
それ以外は同様にして、緑色発光素子を作製した。
(3)赤色発光素子の作製
実施例1の有機EL素子1−10において、D−50をD−10に変更した。
それ以外は同様にして、赤色発光素子を作製した。
(4)表示装置の作製
上記で作製した赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並列配置し、図1に記載のような形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。
図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。
図2に示すとおり、表示部Aは、同一基板上に複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並列配置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有している。配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料から構成されている。走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
複数の画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスターと駆動トランジスターそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が送信されるとデータ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。このように赤、緑、青の画素3を適宜、並列配置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
得られたフルカラーの表示装置は、駆動することにより、輝度が高く、高耐久性を有し、且つ鮮明なフルカラー動画表示が得られることが確認できた。
《白色発光素子及び白色照明装置の作製》
実施例1に記載の透明電極基板の電極を、20mm×20mmにパターニングし、その上に実施例1と同様にして各層を形成した。
まず、α−NPDを透明基板上に蒸着して膜厚25nmの正孔輸送層を設けた。
次に、ホスト化合物として本発明の化合物(1)の入ったモリブデン製抵抗加熱ボートと、ドーパント化合物としてD−10及びD−26がそれぞれ入ったモリブデン製抵抗加熱ボートをそれぞれ独立に通電して、ホスト化合物である本発明の化合物(1)、発光ドーパントであるD−26、D−10の蒸着速度が100:5:0.6になるように調節し、膜厚30nmの発光層を設けた。
次に、BAlqを用いて膜厚10nmの正孔阻止層を設けた。更に、Alqを用いて膜厚40nmの電子輸送層を設けた。
更に、電子輸送層の上にステンレス鋼製の、透明電極とほぼ同じ形状の正方形穴あきマスクを設置し、フッ化リチウムを蒸着して膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、アルミニウムを蒸着して膜厚150nmの陰極を設けた。
このようにして有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子を、実施例1と同様にして封止し、図3及び図4に示すような照明装置を作製した。
作製した照明装置に通電したところ、ほぼ白色の光が得られ、照明装置として使用できることが確認できた。
《白色発光素子及び白色照明装置の作製》
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
前記透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用い、3000rpm、30秒の条件下でスピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの第1の正孔輸送層を設けた。
この基板を窒素雰囲気下に移し、正孔輸送層上に、50mgの市販のADS254BE(American Dye Source, Inc製)を10mlのトルエンに溶解した溶液を用い、2500rpm、30秒の条件でスピンコート法により薄膜を形成した。更に、60℃で1時間真空乾燥し、第2の正孔輸送層を設けた。
次に、ホスト化合物として本発明の化合物(49)を100mg、D−10を0.5mg及びD−50を18mg、酢酸ブチル10mlに溶解した溶液を用い、1000rpm、30秒の条件下でスピンコート法により薄膜を形成した。更に、60℃で1時間真空乾燥して、発光層を設けた。
更に、25mgのET−10を5mlのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解した溶液を用い、2000rpm、30秒の条件下でスピンコート法により薄膜を形成した後、60℃で1時間真空乾燥して第1電子輸送層を設けた。
続いて、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、モリブデン製抵抗加熱ボートにET−7を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、ET−7の入ったモリブデン製抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記第1電子輸送層上に蒸着して、膜厚20nmの第2電子輸送層を設けた。
なお、蒸着時の基板温度は室温とした。
引き続き、フッ化リチウムを蒸着して膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、アルミニウムを蒸着して膜厚110nmの陰極を設け、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子を、実施例1と同様にして封止し、図3及び図4に示すような照明装置を作製した。
作製した照明装置に通電したところ、ほぼ白色の光が得られ、照明装置として使用できることが確認できた。
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極尽きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
A 表示部
B 制御部

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
    〔一般式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R9は置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。但し、R1〜R8のうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される。〕
    〔一般式(2)中、Lは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は1つのアリーレン基と1つのヘテロアリーレン基とが結合した基を表し、Ar1〜Ar3は、アリール基又はヘテロアリール基を表す。但し、Lで表されるアリーレン基は、m−フェニレン基又はo−フェニレン基の何れかの基を表し、Lで表されるヘテロアリーレン基は、ピリジレン基又は下記一般式(3)で表される基の何れかの基を表す。Lが1つのアリーレン基と1つのヘテロアリーレン基とが結合した基である場合、1つのアリーレン基は、m−フェニレン基又はo−フェニレン基の何れかの基を表し、1つのヘテロアリーレン基は、ピリジレン基又は下記一般式(3)で表される基の何れかの基を表す。Zは、ケイ素又はゲルマニウムを表す。〕
    〔一般式(3)中、Rm及びRoは、置換基を表す。n及びpは、各々独立に0〜3の整数である。Xは、酸素原子、硫黄原子、N−R、SiRR、PR(=O)又はPRを表し、Rは芳香族炭化水素環基を表す。〕
  2. 下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
    〔一般式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R9は置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表す。但し、R1〜R8のうち少なくとも1つは下記一般式(2−2)又は(2−3)で表される。〕
    〔一般式(2−2)及び(2−3)中、L2及びL3は各々独立に単結合又は1つのヘテロアリーレン基を表す。但し、L2及びL3で表される1つのヘテロアリーレン基は、N、S又はOのいずれかの原子を有するヘテロアリーレン基を表す。〕
  3. 前記一般式(1)が下記一般式(4)又は(5)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
    〔一般式(4)及び(5)中、R41〜R44及びR51〜R54は水素原子又は置換基を表す。R49及びR59は置換基を表す〕
  4. 一対の電極と、
    前記一対の電極の間に設けられ、発光層を含む有機層と、を備え、
    前記有機層のうち少なくとも一層に請求項1〜3の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が含有されている有機層が発光層又は正孔輸送層であることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項4又は5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
    前記有機層のうち少なくとも一層ウェットプロセスで形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
  7. 請求項4又は5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする表示装置。
  8. 請求項4又は5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする照明装置。
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