JP5824965B2 - 無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題はエアコンや冷蔵庫などのコンプレッサーモータ、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動モータおよび発電機など、主に高速回転域で使用される高効率モータ鉄心に使用することが好適な、高周波鉄損が低く、磁束密度が高い無方向性電磁鋼板を提供することにある。
S+As+Nb+Ti+V+Zr+N≦0.018 (1)
(ここで、式中の各元素記号は鋼中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。)
(A)上述の化学組成を有するスラブに、仕上温度:700℃以上および巻取温度:300℃以上の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)上記熱延圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗および熱延板焼鈍を施して熱延焼鈍板とする酸洗・熱延板焼鈍工程;
(C)上記酸洗・熱延板焼鈍工程により得られた熱延焼鈍板に圧下率85%以上の冷間圧延を施して板厚0.10mm以上0.33mm以下の冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(D)上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に仕上焼鈍を施す仕上焼鈍工程
まず、本発明の無方向性電磁鋼板における各構成について説明する。
1.化学組成
はじめに、鋼板の化学組成の限定理由について説明する。なお、各元素の含有量を示す「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味するものである。
S+As+Nb+Ti+V+Zr+N≦0.018 (1)
S+As+Nb+Ti+V+Zr+N≦0.016 (2)
S+As+Nb+Ti+V+Zr+N≦0.014 (3)
ここで、式中の各元素記号は鋼中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
結晶粒径は、大き過ぎても小さ過ぎても鉄損が劣化する。したがって、平均結晶粒径は60μm以上180μm以下とする。
なお、平均結晶粒径は、縦断面組織写真において、板厚方向および圧延方向について切断法により測定した結晶粒径の平均値を用いればよい。この縦断面組織写真としては光学顕微鏡写真を用いることができ、例えば50倍の倍率で撮影した写真を用いればよい。
高速回転域で使用される頻度が高いモータの鉄心材料としては、高周波鉄損が低い無方向性電磁鋼板が好適である。したがって、周波数800Hz、磁束密度1.0Tで磁化した際の鉄損W10/800を50W/kg以下とする。好ましくは、46W/kg以下である。
エアコンや冷蔵庫などのコンプレッサーモータ、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動モータおよび発電機はインバータ制御により、幅広い回転速度領域で使用されるが、鉄損がきわめて大きくなる高速回転域の使用頻度が高いため、鉄心材料である無方向性電磁鋼板は高周波域での鉄損が低いものが望ましい。鉄損は、板厚が薄いほど低減されるため、板厚は0.33mm以下とする。好ましくは0.30mm以下である。一方、過度の薄肉化は鋼板やモータの生産性を著しく低下させる。したがって、板厚は0.10mm以上とする。好ましくは0.15mm以上である。
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、下記工程(A)〜(D)を有することを特徴とする。
(A)上述の化学組成を有するスラブに、仕上温度:700℃以上および巻取温度:300℃以上の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)上記熱延圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗および熱延板焼鈍を施して熱延焼鈍板とする酸洗・熱延板焼鈍工程;
(C)上記酸洗・熱延板焼鈍工程により得られた熱延焼鈍板に圧下率85%以上の冷間圧延を施して板厚0.10mm以上0.33mm以下の冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(D)上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に仕上焼鈍を施す仕上焼鈍工程
以下、本発明に係る無方向性電磁鋼板の製造方法における各工程について説明する。
熱間圧延工程における仕上温度は700℃以上、巻取温度は300℃以上とする。仕上温度が700℃未満であったり、巻取温度が300℃未満であったりすると、所望のP添加によるB50の向上効果を得ることができない場合がある。仕上温度および巻取温度の上限は、磁気特性の観点からは特に規定する必要はないが、スケールロスによる歩留り低下を抑制する観点から、仕上温度は1000℃以下とすることが好ましく、巻取温度は800℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延工程における他の条件は特に規定されるものではない。
酸洗・熱延板焼鈍工程における諸条件は特に規定されるものではないが、再結晶を促進して優れた磁気特性を確保する観点から、焼鈍温度は730℃以上とすることが好ましく、焼鈍時間は1時間以上とすることが好ましい。焼鈍時間は3時間以上とすることがさらに好ましい。一方、設備への負荷や製造コストの観点から、焼鈍温度は850℃以下とすることが好ましく、焼鈍時間は50時間以下とすることが好ましい。焼鈍温度は810℃以下とすることがさらに好ましく、790℃以下とすることが特に好ましい。焼鈍時間は40時間以下とすることがさらに好ましい。
酸洗および熱延板焼鈍は順不同であり、酸洗後に熱延板焼鈍を施してもよく、熱延板焼鈍後に酸洗を施してもよい。
冷間圧延工程における圧下率は85%以上とする。圧下率が85%未満であると、所望のP添加によるB50の向上効果を得ることができない場合がある。
冷間圧延工程における他の条件は特に規定されるものではない。
仕上焼鈍工程における諸条件は特に規定されるものではないが、十分な粒成長を促して優れた磁気特性を確保する観点から、焼鈍温度は900℃以上とすることが好ましく、焼鈍時間は1秒間以上とすることが好ましい。一方、設備への負荷や製造コストの観点から、焼鈍温度は1180℃以下とすることが好ましく、焼鈍時間は300秒間以下とすることが好ましい。
下記表1に示す化学組成を有するスラブに、仕上温度800℃、巻取温度500℃の熱間圧延を施して板厚2.0mmの熱延鋼板とし、酸洗を施した。これらの酸洗鋼板に790℃で10〜20時間保持する熱延板焼鈍を施して、平均結晶粒径を100μmに揃えた。これらの熱延焼鈍板に、圧下率87.5%の冷間圧延を施して仕上板厚0.25mmの冷延鋼板とした。このとき、一部は冷間圧延にて破断した。破断が生じなかった冷延鋼板に1100℃で10秒間保持する仕上焼鈍を施して、平均結晶粒径97〜134μmの無方向性電磁鋼板を得た。
X=ΔB50−0.4×(P−0.01) (4)
(ここで、式中のPは鋼中のP含有量(単位:質量%)を示す。)
平均結晶粒径と磁気測定の結果を併せて表1に示す。
鋼板No.2はS含有量が低かったため、鋼板No.5はS、As、Nb、Ti、V、ZrおよびNの合計含有量が高いため、鋼板No.6はTiおよびNの含有量が高かったため、鋼板No.7はNbおよびV含有量が高かったため、鋼板No.8はZrおよびN含有量が高かったため、鋼板No.9はAsおよびTi含有量が高かったために、X<0となり、所望のP添加によるB50の向上効果を得られなかった。また、鋼板No.12はP含有量が多かったために、冷間圧延にて破断した。
下記表2に示す化学組成を有するスラブに、仕上温度750〜900℃、巻取温度500〜600℃とした熱間圧延を施して板厚1.6〜2.5mmの熱延鋼板とし、酸洗を施した。これらの酸洗鋼板に750〜790℃で5〜15時間保持する熱延板焼鈍を施した。これらの焼鈍板に冷間圧延を施して仕上板厚0.20〜0.30mmの冷延鋼板とした。これらの冷延鋼板に950〜1130℃で20〜90秒間保持する仕上焼鈍を施して、平均結晶粒径75〜156μmの無方向性電磁鋼板を得た。
表3に、製造条件、平均結晶粒径、および磁気測定の結果を示す。
下記表4に示す化学組成のスラブを、仕上温度650〜900℃、巻取温度250〜600℃とした熱間圧延にて1.8〜2.4mmの熱延鋼板とした。これらの熱延鋼板を酸洗後、圧下率84.2〜86.4%の冷間圧延を施して仕上板厚0.25〜0.35mmの冷延鋼板とした。これらの冷延鋼板に1100℃で5秒間保持する仕上焼鈍を施して平均結晶粒径99〜121μmの無方向性電磁鋼板を得た。
表5に、製造条件、平均結晶粒径、および磁気測定の結果を示す。
Claims (1)
- 下記工程(A)〜(D)を有することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法:
(A)質量%で、Si:1.8%以上3.0%以下、sol.Al:0.1%以上3.0%以下、Mn:0.05%以上3.0%以下、P:0.03%以上0.10%以下、S:0.0010%以上0.0050%以下、C:0.0050%以下、As:0.0050%以下、Nb:0.0030%以下、Ti:0.0030%以下、V:0.0030%以下、Zr:0.0030%以下およびN:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに、下記式(1)を満足する化学組成を有するスラブに、仕上温度:700℃以上および巻取温度:300℃以上の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗ならびに焼鈍温度:730℃以上および焼鈍時間:1時間以上の熱延板焼鈍を施して熱延焼鈍板とする酸洗・熱延板焼鈍工程;
(C)前記酸洗・熱延板焼鈍工程により得られた熱延焼鈍板に圧下率85%以上の冷間圧延を施して板厚0.10mm以上0.33mm以下の冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(D)前記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に焼鈍温度:900℃以上および焼鈍時間:1秒間以上の仕上焼鈍を施す仕上焼鈍工程。
S+As+Nb+Ti+V+Zr+N≦0.018 (1)
(ここで、式中の各元素記号は鋼中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。)
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