JP5822296B2 - 銀イオン抗菌液の生成方法、その方法で生成される銀イオン抗菌液、又は銀イオン抗菌粉末の生成方法、その方法で生成される銀イオン抗菌粉末 - Google Patents
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Description
例えば、イオン交換可能なイオンの一部又は全部を亜鉛イオン、アンモニウムイオン及び銀イオンの金属イオンでイオン交換した抗菌性ゼオライトと、シリコーンを含有した防臭化粧料が提案されており、該防臭化粧料の抗菌性ゼオライト((株)シナネンゼオミック製ゼオミックAJ10N、平均粒径約2.5μm)(銀ゼオライトの銀イオンを担持する重量;2.2重量%)をエアゾールタイプとして用いることが記載されている(特許文献1参照)。また、上記銀イオンの抗菌作用の喪失を抑制する試みとして、例えば、ゼオライトをアンモニウムイオン及び銀イオンで置換した銀ゼオライトに、シリコーンを配合することで耐変色性に優れた防臭化粧料が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記銀ゼオライトは、水中に存在するカチオンとのイオン交換による銀イオンの溶出を利用しているために、徐々に溶出した銀イオンが細菌を殺菌するので長い時間がかかる。即ち細菌を短時間に殺菌する即効性能がないことが問題として指摘されている(非特許文献1参照)。
以上のように、特許文献4には、クエン酸水溶液中に銀電極を備える電気分解装置によってクエン酸銀錯体が生成できることが開示されている。
すなわち本発明の銀イオン抗菌液の生成方法は、以下の通りのものである。
請求項1に係る発明の銀イオン抗菌液の生成方法は、銀ゼオライトから溶出する銀イオンを含有する銀イオン抗菌液の生成方法であって、前記銀ゼオライトがA型又はX型の銀ゼオライトであり、該銀ゼオライトを0.1〜20.0重量%の範囲の配合量となるように秤量し、クエン酸を該銀ゼオライトの配合量に対する配合比率が1.2以上の配合量となるように秤量して精製水に配合する処理と、上記精製水に配合した上記銀ゼオライトおよびクエン酸を撹拌し混合して、少なくともクエン酸銀錯体及びシリカ水和物を含む混合液を調製する処理と、前記混合液中に生成されるシリカ水和物を除去する処理とからなることを特徴とする。
請求項2に係る発明の銀イオン抗菌液の生成方法は、前記銀ゼオライトの銀担持量が0.5〜5.0重量%であることを特徴とする。
請求項3に係る発明の銀イオン抗菌粉末の生成方法は、請求項1に記載の銀イオン抗菌液の生成方法のシリカ水和物を除去する処理の後に、上記シリカ水和物を除去した混合液を、凍結乾燥又は噴霧乾燥して銀イオン抗菌粉末を生成する処理とからなることを特徴とする。
請求項4に係る発明の銀イオン抗菌粉末の生成方法は、前記銀ゼオライトの銀担持量が0.5〜5.0重量%であることを特徴とする。
また、本発明の銀イオン抗菌液の生成方法は、銀ゼオライトの配合量が決まれば、クエン酸の配合量を配合比率1.2以上の量として簡単に決められ、また、銀イオン抗菌液を生成する処理は秤量、配合、撹拌混合、シリカ水和物を除去して銀イオン抗菌液を回収する処理からなるので、簡単な処理操作である。
本発明の銀イオン抗菌液は、その用途に応じて、その銀イオン濃度を銀ゼオライトの配合量と銀担持量で任意に調製することができ、また、安価であるから普及品として一般の人が利用でき、更に、例えばスキンケア用の抗菌剤としてパラベンフリー、アルコールフリーで誰もが安心して使用できる。
また、本発明の銀イオン抗菌液は、従来の銀担持ゼオライトのイオン交換作用では不可能であった、細菌を短時間に殺菌する即効性を発揮する。
本発明の銀イオン抗菌粉末の生成方法は、銀イオン抗菌液を粉末状にすることで、貯蔵空間が少なくてすみ、軽量化により大量に運搬することができる。
本発明に用いる銀ゼオライトは、A型又はX型銀ゼオライトである(以下、これらの銀ゼオライトを単に「銀ゼオライト」という。)。X型銀ゼオライトは高価なのでA型銀ゼオライトを用いることが好ましい。このA型又はX型銀ゼオライトは酸により溶解されるので、本発明がこの両ゼオライトを用いる理由である。しかし、Y型銀ゼオライトやモルデナイト型銀ゼオライトは酸に溶解しないので使用できない。銀ゼオライトの構造式は下記の通りである。
(αNa2 βAg2)O・Al2O3‐2SiO2nH2O (α+β=1 n=5:110℃乾燥品)
上記銀ゼオライトのイオン交換サイトを形成する結晶構造は、Si-O-Al-O-Siの構造を三次元的に結合した結晶構造中のAl部分に、銀イオンが静電気的に結合した構造を有しており、イオン交換作用により上記結晶構造中の銀イオンが溶出して細菌を殺菌するといわれている。
銀担持量0.5、2.5、5.0重量%の3種類の銀ゼオライトの製造方法を説明する。
一例としてA型ゼオライトで説明するが、材料としてX型ゼオライトもA型ゼオライトの製造の手順と同じである。なお、以下に説明する銀ゼオライトの製造方法は、普通に用いられている製造方法である。
1.銀担持量0.5重量%の銀ゼオライト
(1)材料
A型ゼオライト(110℃乾燥品):1000g
硝酸銀(AgNO3):7.9g
10Lポリ容器に水4.0Lを入れ、撹拌する。そこへ少しずつA型ゼオライト(Na型)を入れて懸濁液を作る。3時間ほど連続して撹拌し、固体内の空気を出す。
所定時間経過後pHを確認する。pH5〜7になるよう、希硝酸(6倍希釈)を少量ずつ添加し、pH試験紙にて大まかなpH変化を確認する。
別途、硝酸銀を水3.0Lに混合しておき、それをA型ゼオライトスラリーに撹拌下少しずつ投入する。その後一晩撹拌放置する。
ヌッチェに磁性ロートを設置し、標準濾紙を敷き、そこへ前記銀ゼオライトスラリーを静かに注ぐ。
吸引工程の液切れ前に5L水量で洗浄する。
その後110℃で一晩乾燥し、冷却後乳鉢で粉砕する。平均粒径が2〜2.5μmの粉末状のA型銀ゼオライトができる。
(1)材料
A型ゼオライト(110℃乾燥品):1000g
硝酸銀(AgNO3):39.7g
(2)製造の手順は上記手順と同様である。
3.銀担持量5.0重量%の銀ゼオライト
(1)材料
材料A型ゼオライト(110℃乾燥品):1000g
硝酸銀(AgNO3):79.5g
(2)製造の手順は上記手順と同様である。
本発明の銀イオン抗菌液の生成方法は、最初に、銀ゼオライトの0.1〜20.0重量%の範囲の配合量を秤量し、その銀ゼオライトに対するクエン酸の配合比率が1.2以上の配合量を秤量して精製水に配合する処理と、次に、その精製水に配合した上記銀ゼオライトおよびクエン酸を撹拌し混合して、少なくともクエン酸銀錯体及びシリカ水和物を含む混合液を調製する処理と、最後に、その混合液中に生成されるシリカ水和物を除去する処理とからなり、その除去処理により少なくとも上記クエン酸銀錯体を含有する銀イオン抗菌液を得ることができる。上記クエン酸は、市販品のクエン酸一水和物である。上記配合比率は、銀ゼオライトの配合量(重量%)に対するクエン酸の配合量(重量%)の割合、即ち「クエン酸の重量%/銀ゼオライトの重量%」の比率を意味しており、その比率を「配合比率」と定義して以下に用いる。
(精製水に配合する処理)
生成する銀イオン抗菌液の所望量に基づいて、A型又はX型の銀ゼオライト(以下、「銀ゼオライト」という。)、クエン酸及び精製水の各配合量を決めておく。銀ゼオライトの0.1〜20.0重量%の範囲の配合量を秤量し、その秤量した上記銀ゼオライトに対するクエン酸の配合比率が1.2以上の配合量を秤量し、常温(28℃)で上記配合量が決められた精製水に両材料を配合して配合液を調製する。その両材料を配合した配合液の外観は、白濁である。その白濁から透明になるまで撹拌し混合して混合液を生成する。混合液は少なくとも2分間撹拌し混合すると透明になる。又は、常温で精製水に銀ゼオライトを配合して配合液を調製し、同様に常温で精製水にクエン酸を配合して配合液を調製した後に、両液を混合し撹拌して混合液を生成する。混合液は少なくとも2分間撹拌し混合すると透明になる。何れの生成方法であっても良い。
一方、市販品の銀担持量2.2重量%のゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製)を用いて、上記生成方法と同様の方法で銀イオン抗菌液を生成できる。
次に、混合液を調製する処理において生成される生成物を説明する。
精製水に配合した銀ゼオライト((αNa2 βAg2)O・Al2O3‐2SiO2nH2O(α+β=1 n=5:110℃乾燥品))とクエン酸(C6H8O7)を撹拌し混合した混合液は、両者の化学式からみて、クエン酸銀錯体、クエン酸アルミニウム錯体、ナトリウムイオン(Na+)、シリカ水和物を含んでいる。
銀ゼオライトとクエン酸の混合により、最初に、クエン酸のプロトン(H+)が銀ゼオライトのSi-O-Al-O-Siの構造中のAl-O部分をアタックして切断し、その結果ゼオライト骨格を崩壊し、イオン交換吸着サイトが失われるので銀イオンが混合液中に溶出する。
その銀イオンはクエン酸と反応して多くの銀イオンがクエン酸銀錯体を生成し、同時にごく僅かな銀イオンを生成する。一方、アルミニウムはクエン酸と反応してクエン酸アルミニウム錯体を生成し、その他には、シリカ水和物及びナトリウムイオンを生成すると推測される。
上記クエン酸銀錯体の構造式を以下に示す。
yは1及び/又は2であり、yが3であると難溶性で水に溶けなくなる。銀イオンとクエン酸の反応で生成されるクエン酸銀錯体は、殆どがクエン酸1銀のものであるから、yが1でxが2の錯体である。
ところで、本発明の課題は、市販品のTINOSAN SDC(商品名)と同様のクエン酸銀錯体を含有する銀イオン抗菌液を安価に生成できる、銀イオン抗菌液の生成方法、その方法で生成される銀イオン抗菌液等を提供することにある。上記混合液を調製する処理において生成される生成物には、クエン酸銀錯体以外にシリカ水和物、クエン酸アルミニウム錯体等が生成される。そのクエン酸アルミニウム錯体を粉末化したクエン酸アルミニウムは制汗剤として化粧用に利用されるが、上記シリカ水和物はその表面に水酸化銀が吸着してシリカ水和物水酸化銀を生成して凝集し、その凝集生成物に光が照射されると酸化銀(黒褐色)となる恐れがあるので、混合液中から少なくともシリカ水和物は除去する必要がある。
(1)デカンテーションで除去する処理
化学反応は常温で通常24時間で平衡状態になるので、上記混合液を生成してから平衡状態になる24時間後の混合液は、シリカ水和物の表面に水酸化銀が吸着したシリカ水和物水酸化銀が凝集されて沈殿物が生成されるので、デカンテーションで銀イオン抗菌液を回収する。
上記デカンテーションは24時間に限定されるものではなく、常温から温度を高く、例えば70℃にすれば7時間で上記混合液中に上記シリカ水和物水酸化銀が凝集して沈殿するので、温度を任意に変えることで短時間にデカンテーションで銀イオン抗菌液を回収できる。
常温の28℃では、24時間で上記混合液中に凝集シリカ水和物水酸化銀が沈殿するので、濾過はWatman CF/C 濾紙でこの凝集シリカ水和物水酸化銀を分離して銀イオン抗菌液を回収することで、(1)の処理より銀イオン抗菌液の収率を向上できる。
上記したように、温度を高く、例えば70℃にすれば7時間で上記混合液中に凝集シリカ水和物水酸化銀が沈殿するので、上記濾紙で凝集シリカ水和物水酸化銀を分離して銀イオン抗菌液を、(1)の処理より収率よく回収できる。
(3)シリカ水和物の凝集前にフィルタで除去する処理
常温の28℃では10分間で上記混合液中にシリカ水和物が生成されるので、フィルタで上記シリカ水和物を分離して銀イオン抗菌液を回収する。
精製水に銀ゼオライト、クエン酸を配合する際に、クエン酸亜鉛又はクエン酸カルシウムを添加して亜鉛イオン又はカルシウムイオンをシリカ水和物に結合させ沈殿させて、フィルタで亜鉛イオン又はカルシウムイオンが結合したシリカ水和物を分離して銀イオン抗菌液を回収する。又は、亜鉛イオン又はカルシウムイオンが結合したシリカ水和物を、デカンテーションで分離して銀イオン抗菌液を回収しても良い。
シリカ水和物を除去する処理は、上記(1)〜(4)の処理に限定されるものではなく、上記(1)〜(4)の処理を適宜組み合わせて用いても良い。例えば、本発明の銀イオン抗菌液の用途に応じて、(3)の処理で回収した銀イオン抗菌液中に、シリカ水和物が極わずかながらでも含まれていると問題を生じる恐れがあれば、(3)の処理の後に(4)の処理を加えてシリカ水和物を除去することが好ましく、その(3)と(4)の処理の組合せで銀イオン抗菌液を回収しても良い。
次に、回収された銀イオン抗菌液を粉末状にする銀イオン抗菌粉末の生成方法を説明する。上記銀イオン抗菌液の生成方法のシリカ水和物を除去する処理の後に、そのシリカ水和物を除去した混合液を減圧凍結乾燥機で凍結乾燥、又は減圧噴霧乾燥機で噴霧乾燥することでその混合液を粉末状にすることができる。例えば、銀ゼオライト(銀担持量2.5重量%、110℃乾燥品)11.0gとクエン酸一水和物13.2gを使用すると、上記シリカ水和物を除去した混合液を減圧凍結乾燥機で処理することにより18gの銀イオン抗菌粉末が生成できる。
このようにして得られた銀イオン抗菌粉末1.0gを水1000gに溶解させると完全に溶解し、その時の銀イオン濃度は15.2ppmであった。
銀ゼオライトの一例として、上記銀ゼオライトの製造方法で製造したA型銀ゼオライトと市販品であるゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製、銀担持量2.2重量%)を試料として用いた。
A型銀ゼオライトは、0.1重量%又は0.5重量%の配合量の異なる2種類を秤量し、合計12個の試料を調製した。また、ゼオミックAJ10Nも上記の配合量の異なる2種類を秤量し、合計12個の試料を調製した。
上記0.1重量%又は0.5重量%の配合量が同じである各6個の試料に対して、表1の配合比率の欄に示すように、試料No.1及び7に対して0.9、試料No.2及び8に対して1.1、試料No.3及び9に対して1.2、試料No.4及び10に対して1.3、試料No.5及び11に対して1.5、試料No.6及び12に対して1.7を秤量した。この秤量した銀ゼオライトとクエン酸の粉末を精製水に配合して200gの配合液を調製し、2分後、10分後、30分後にその混合液のpHをpHメーターにより測定した。上記混合液の外観観察は目視により、白濁、半透明、透明の3段階で判定した。
なお、表1に示すNo.1〜12のpHの値は、試料数をN=3としてその算術平均で求めた。また、以下の表に示す値は、表1に示す試料数と同様に試料数をN=3としてその算術平均で求めたものである。
以上のことから、クエン酸の配合比率を、上記銀ゼオライトの配合量(重量%)に対して1.2以上とすることで、混合液が2分後に透明になることから、クエン酸が銀ゼオライトのイオン交換サイトを形成する結晶構造を崩壊して、銀ゼオライトが含有していた全ての銀イオンを溶出するものと推測される。
続いて、第2の実験の実験例について説明する。
第2の実験は、上記銀ゼオライトの製造方法で製造した、銀担持量の異なる3種類(0.5、2.5及び5.0重量%)と、市販品であるゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製、銀担持量2.2重量%、平均粒径約2.5μm)を試料として用いた。そして、上記銀ゼオライトの配合量に対して、クエン酸は、配合比率を試料No.1〜3に対して0.6、試料No.4〜6に対して0.9、試料No.7〜9に対して1.1、試料No.10〜12に対して1.2、試料No.13〜15に対して1.4の配合量を秤量した。そして、精製水に秤量した銀ゼオライトを配合して調製した配合液100gと、精製水に秤量したクエン酸を配合して調製した配合液100gとを、混合して混合液を生成した。
一方、比較例のNo.16として、精製水に銀ゼオライトを配合した配合液100gと生理食塩液(塩化ナトリウム0.8重量%)100gを混合した混合液200gを調製して、溶出する銀イオン濃度の測定を行った。その濃度は450〜590ppbであった。なお、この比較例のNo.16は、発汗(塩化ナトリウム0.9重量%)した状態の体に、特許文献1に記載のエアゾールタイプの防臭化粧料の銀ゼオライト(銀担持量が2.2重量%)を噴霧した条件と同じ場合を想定して、銀イオン濃度を測定したものである。
表2及び図5から、試料No.1〜4は、銀ゼオライトとクエン酸の配合比率が1.2以上であれば銀ゼオライトは完全に溶解して、混合液の性状が液状で透明であるが、試料No.5は銀ゼオライトの一部が沈殿するために完全に溶解できない。また、混合した後3時間までは、混合液の性状が液状で透明であるが、24時間後には、試料No.1及び2はシリカ水和物の凝集が進み系全体がゲル化してしまい、この状態ではデカンテーション又はフィルタで上記シリカ水和物を除去することができない。しかしながら、混合した後3時間まではその性状が液状で透明であるので、フィルタで上記シリカ水和物を除去することができる。従って、銀ゼオライトの配合量は最大で20.0重量%が望ましい。
次に、銀担持量の異なる3種類の銀ゼオライトの第2の実験結果である表3−1〜表3−3に基づいて、横軸に銀ゼオライトの配合量の3種類の値(0.1、0.5、1.0重量%)を描画し、縦軸にその値に対する銀イオン濃度の3種類の値を描画して、配合比率の異なる5種類の溶出銀イオン濃度のグラフを作成した。図1は銀担持量0.5重量%の銀ゼオライトの配合量と銀イオン濃度の相関を示す近似直線のグラフである。図2は銀担持量2.5重量%の銀ゼオライトの配合量と銀イオン濃度の相関を示す近似直線のグラフである。図3は銀担持量5.0重量%の銀ゼオライトの配合量と銀イオン濃度の相関を示す近似直線のグラフである。●印はNo.13〜15の試料の近似直線であり、▲印はNo.10〜12の試料の近似直線であり、△印はNo.7〜9の試料の近似直線であり、○印はNo.4〜6の試料の近似直線であり、◇印はNo.1〜3の試料の近似直線のグラフである。
そこで、表3−1〜表3−3のNo.10〜12及びNo.13〜15の銀ゼオライト配合量と銀イオン濃度のデータだけを摘出して表4を作成した。そして、その表4のデータに基づいて銀ゼオライト配合量と銀イオン濃度の関係を示す図4を作成した。
そこで、生成された銀イオン抗菌液を粉末にして、NMR(核磁気共鳴スペクトル)によるスペクトル分析を行った。
(実施例)
実施例1は、2.5重量%銀担持のA型銀ゼオライト1gと、その配合比率1.2のクエン酸1.2gを精製水に配合し100gの水溶液にして混合して常温で2時間撹拌した後に、80℃で1時間処理してシリカ成分を凝集させて、2日静置して沈澱させて濾過液を減圧凍結乾燥機により粉末(銀18.8mg/1.2g)にして試料とした。
(比較例)
比較例1は、TINOSAN SDCを凍結乾燥機により粉末にして試料とした。
比較例2は、試薬のクエン酸を試料とした。
各試料10mgを0.8gの重水に溶かして、600MHzH NMR(核磁気共鳴スペクトル)によるスペクトル分析を行った。
実施例、比較例1及び比較例2のシグナルからクエン酸銀錯体のシグナルを同定することはできなかった。
(混合液に含有の生成物)
上記したように、銀ゼオライトの構造式は下記の通りである。
(αNa2 βAg2)O・Al2O3‐2SiO2nH2O (α+β=1 n=5:110℃乾燥品)
上記銀ゼオライトのイオン交換サイトを形成する結晶構造は、Si-O-Al-O-Siの構造を三次元的に結合した結晶構造中のAl部分に、銀イオンが静電気的に結合した構造を有しており、イオン交換作用により上記結晶構造中の銀イオンが溶出して細菌を殺菌するといわれている。換言すれば、A型銀ゼオライトは、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)からなるアルミノケイ酸塩で、その骨格が(AlO4)−四面体および(SiO4)−四面体が三次元的に結合した結晶構造中のAl部分に、静電気的に銀イオンが吸着された構造を有している。
1.クエン酸のプロトン(陽子)がA型銀ゼオライトの(AlO4)−四面体の負の電荷部位に存在するナトリウムイオンとイオン交換する。(銀イオンに比べてナトリウムイオンの選択係数が小さいため)
2.過剰のプロトンが骨格中のAl-O結合部分に作用してその結合を切断する。
3.Al-O結合部分の切断による骨格構造の崩壊で、銀ゼオライトに吸着していた銀イオン、ナトリウムイオンなどが溶液中に放出される。
4.放出された銀イオンはクエン酸と反応してクエン酸銀錯体となる。
5.アルミニウムもクエン酸のC6H5O7 3-と反応し、クエン酸アルミニウム錯体となる。
6.クエン酸銀錯体は水中で一部解離し、極少量の銀イオンも存在する。
7.ナトリウムはイオンの形態で水中に存在する。
8.ケイ素はシリカゲルの形態で懸濁あるいは沈殿する。この時表面には少量の銀イオンが吸着されている。
従って、本発明の銀イオン抗菌液の生成方法で生成された銀イオン抗菌液は、シリカ水和物が当然ながら除去されている。
本発明の銀イオン抗菌液の生成方法で、銀ゼオライトに対するクエン酸の配合比率が1.2以上であることが解明された意義は大きい。今後、クエン酸銀錯体を含有する銀イオン抗菌液を調製する時に、銀ゼオライトに対して上記配合比率が1.2以上のクエン酸を配合すれば、製造最適条件および経済性が得られることを意味している。
Claims (4)
- 銀ゼオライトから溶出する銀イオンを含有する銀イオン抗菌液の生成方法であって、
前記銀ゼオライトがA型又はX型の銀ゼオライトであり、該銀ゼオライトを0.1〜20.0重量%の範囲の配合量となるように秤量し、クエン酸を該銀ゼオライトの配合量に対する配合比率が1.2以上の配合量となるように秤量して精製水に配合する処理と、
上記精製水に配合した上記銀ゼオライトおよびクエン酸を撹拌し混合して、少なくともクエン酸銀錯体及びシリカ水和物を含む混合液を調製する処理と、
上記混合液中に生成されるシリカ水和物を除去する処理とからなることを特徴とする銀イオン抗菌液の生成方法。 - 前記銀ゼオライトの銀担持量が0.5〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の銀イオン抗菌液の生成方法。
- 請求項1に記載の銀イオン抗菌液の生成方法のシリカ水和物を除去する処理の後に、上記シリカ水和物を除去した混合液を、凍結乾燥又は噴霧乾燥して銀イオン抗菌粉末を生成する処理とからなることを特徴とする銀イオン抗菌粉末の生成方法。
- 前記銀ゼオライトの銀担持量が0.5〜5.0重量%であることを特徴とする請求項3に記載の銀イオン抗菌粉末の生成方法。
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