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JP5817971B2 - 湿式排煙脱硫装置及び湿式排煙脱硫方法 - Google Patents

湿式排煙脱硫装置及び湿式排煙脱硫方法 Download PDF

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Description

本発明は、火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼設備から排出される排ガス中の有害成分である硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫装置に係わり、特に、浮遊粒子状物質のうち2.5μm以下の煤塵も除去可能な煤塵除去機能を備えた湿式排煙脱硫装置及び湿式排煙脱硫方法に関する。
火力発電設備における一般的な湿式排煙脱硫装置の側面図を図12に示す。
この湿式排煙脱硫装置は、主に排ガス中の有害成分である硫黄酸化物を吸収・除去する吸収塔1と、吸収塔1の排ガス入口ダクト2と、吸収塔1の排ガス出口ダクト3と、排ガスに吸収液を噴霧するスプレノズル13を備えたスプレヘッダ12と、吸収塔1内の吸収液の循環ポンプ4と、吸収塔1内の吸収液を貯留する循環タンク6と、循環タンク6内の吸収液を攪拌する攪拌機7と、循環タンク6内の吸収液に酸化用空気を吹き込むための空気吹込み管8と、排ガスに同伴される液滴径の小さいミストを捕集するミストエリミネータ9と、循環タンク6内の吸収液の抜出し管10と、循環タンク6内の吸収液をスプレヘッダ12に送る循環配管11等から構成される。
火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から排出される硫黄酸化物を含む排ガスは、図示していない脱硫ファンにより入口ダクト2から吸収塔1にほぼ水平方向に導入され、上方に流れて吸収塔1の塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。
吸収塔1では、スプレノズル13から微細な液滴として噴霧される石灰石または石灰を含むスラリなどの吸収剤の液滴と排ガスとを気液接触させることで、排ガス中のばいじんや塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)等の酸性ガスと共に、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)はスプレノズル13の吸収液滴表面で化学的に吸収、除去される。
SO2を吸収した吸収液は、一旦循環タンク6に溜まり、酸化用攪拌機7によって攪拌されながら、空気吹込み管8から供給される空気中の酸素により酸化され硫酸カルシウム(石膏)を生成する。
循環タンク6にあるスラリ状の吸収液5は、吸収液循環ポンプ4により昇圧され、吸収液循環配管11を経由して、吸収塔1内の上部のスプレヘッダ12に供給される。
炭酸カルシウム及び石膏が共存する循環タンク6内の吸収液5の一部は、吸収液循環ポンプ4によって再びスプレノズル13に送られ、一部は吸収液抜き出し管10より図示していない廃液処理・石膏回収系へと送られる。また、スプレノズル13からの噴霧によって微粒化された吸収液5の中で、液滴径が微小なミストは排ガスに同伴されるが、出口ダクト3側に設けられたミストエリミネータ9によって捕集・除去される。
湿式脱硫装置の排ガス流れの上流には図示していない集塵装置が設置され、ボイラから排出されるほとんどの灰は除去されるが、微細な灰は集塵装置でも除去されず、排ガスに同伴されながら湿式脱硫装置に流入する。しかし、湿式脱硫装置の吸収塔1内ではスプレノズル13から噴霧された多量の吸収液5の液滴が落下しているため、微細な灰のほとんどはこの液滴との慣性衝突により除去される。
しかし、スプレノズル13から噴霧される液滴で除去できる灰の大きさには限界があり、浮遊粒子状物質のうち2.5μm以下のものを対象とするような1μm以下のサブミクロン領域の灰は除去されずに、そのまま吸収塔1から排出される。
一方、吸収塔1には90〜160℃程度の排ガスが導入されるため、この排ガスと接触する吸収液5が蒸発して、その蒸発水は図示しない煙突から排出される。したがって、吸収塔1には蒸発した分に見合うだけの補給水として、工業用水を補給水供給ライン15から連続的に供給している。
下記特許文献1には、吸収塔内に吸収液を噴霧するスプレノズルを複数段設置し、ガス流れ方向に対して最上流のスプレ段よりも下流側のスプレ段の内、少なくとも一段以上に、最上流のスプレ段から噴霧される液滴よりも微粒な液滴を噴霧するスプレノズルを有する微粒液滴スプレ段を設け、サブミクロン単位のダスト粒子の捕集効率を向上させた湿式排煙脱硫装置が開示されている。
また、下記特許文献2には、排ガスの処理温度よりも冷たい微粒液滴を排ガスに噴霧してダストを肥大化させることで捕集効率を高めた脱硫装置が開示されている。
更に、下記特許文献3には、脱硫塔内に水蒸気を吹き込む水蒸気管を設けることで、水蒸気がダストを核として肥大化することで排ガス中の粒子を捕集する脱硫装置が開示されている。
特開平9−173764号公報 特開2000−325742号公報 特開平7−178314号公報
特許文献1〜3に記載の構成によれば、排ガスに微粒な液滴や水蒸気を吹き込むことで、ダスト粒子などの捕集効率を高めている。
しかし、このように排ガスに噴霧したり、吹き込んだりするための液滴や水蒸気等には多量の水が必要となる。また、そのための設備や動力も必要となることから、設備の大型化や費用の増大などの問題が生じる。例えば、特許文献2に記載の構成では、噴霧液の冷却装置、特許文献3に記載の構成では、100度以上の水蒸気の供給装置などが必要となる。
更に、近年、浮遊粒子状物質のうち2.5μm以下の煤塵等の規制が強化されつつあり、このような粒径の煤塵の除去性能の向上が、より一層求められている。
特許文献1に記載の構成では、1000μm以下の微粒液滴を噴霧しているが、この程度の大きさでは効率良くサブミクロン単位の煤塵を除去することは難しい。また、特許文献2に記載の構成では、排ガスの処理温度よりも冷たい微粒液滴を噴霧後、回収してリサイクルしており、このように循環使用した場合は捕集した煤塵が蓄積してしまう。
本発明の課題は、簡素な構成で、設備の大型化や費用の増大を抑えた煤塵除去性能の高い湿式排煙脱硫装置を提供することである。
上記課題は、排ガス流れの最下流のスプレ部とミストエリミネータとの間に、スプレ部のスプレノズルから噴霧される液滴よりも径の小さい微粒液滴を排ガス流れに対して向流噴霧する複数の二流体スプレノズルからなる除塵用の微粒スプレ部を設け、湿式排煙脱硫装置内の蒸発などによる損失分を補うための補給水を微粒スプレ部から排ガスに噴霧することにより達成される。
また、上記本発明の課題は、下記の構成を採用することにより達成できる。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスに吸収液を噴霧する複数のスプレノズルを有するスプレ部と該スプレ部の排ガス流路の下流側に設けられ、排ガス流れに同伴されるミストを捕集するミストエリミネータとを有し、排ガス中の硫黄酸化物を吸収、除去する吸収塔を備えた湿式排煙脱硫装置において、前記吸収塔に補給水を供給する補給水供給部を設け、前記スプレ部と前記ミストエリミネータとの間に、前記補給水供給部により供給される水を前記スプレ部のスプレノズルから噴霧される液滴よりも微粒液滴にして排ガス流れに対して向流噴霧する複数の二流体スプレノズルからなる除塵用の微粒スプレ部を設け、前記吸収塔内の下方から上方に向かって順に、前記スプレ部、微粒スプレ部、ミストエリミネータが設けられている湿式排煙脱硫装置である。
請求項2記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを吸収塔に導入して、吸収塔内に設けたスプレ部の複数のスプレノズルから吸収液を噴霧して、前記排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収、除去し、吸収塔内の排ガス流れに同伴されるミストをスプレ部より排ガス流路の下流側に設けたミストエリミネータにより捕集する排煙脱硫方法において、前記吸収塔内の下方から上方に向かって順に、前記スプレ部、ミストエリミネータが設けられ、前記スプレ部と前記ミストエリミネータとの間の排ガスに、前記吸収塔に供給する補給水に気体を混合して微粒化することで前記スプレノズルから噴霧される液滴よりも微粒液滴にして、排ガス流れに対して向流噴霧する湿式排煙脱硫方法である。
(作用)
排ガスに微粒な液滴や水蒸気を吹き込む場合は、多量の水が必要となり、そのための設備や動力も必要となるが、本発明によれば、除塵用の微粒スプレ部から噴霧する水として湿式排煙脱硫装置内の蒸発などによる損失分を補うための補給水を利用する。したがって、微粒スプレ部の水には新たな水を必要とせず、ユーティリティが増加することもなく、排煙脱硫装置内の水バランス(水の蒸発量と補給量)が崩れることもない。
そして、除塵用の微粒スプレ部には、液体と気体を混合させることで微細な液体の粒子を作り出す二流体スプレノズルを使用することで、スプレ部から噴霧される吸収液の液滴よりも微細な液滴を噴霧することが可能となり、より小さな煤塵をも除去することが可能となる。
すなわち、請求項1又は請求項記載の発明によれば、スプレ部とミストエリミネータとの間に、スプレ部のスプレノズルよりも液滴径の小さい液滴を排ガス流れに対して向流噴霧する複数の二流体スプレノズルからなる除塵用の微粒スプレ部を設けることで、スプレ部で除去できない粒径のより小さい煤塵を除去することが可能となる。
また、除塵用の微粒スプレ部に補給水を利用することで、簡素な構成となり、設備の大型化や費用の増大を抑えることができる。
更に、ミストエリミネータよりも排ガス流れの上流側で連続的に補給水を噴霧することで、ミストエリミネータの洗浄効果も期待できると共に、ミストエリミネータの洗浄水量及び洗浄頻度を低減することも可能である。
また、排ガス中に微粒液滴を噴霧して煤塵を捕集する際、排ガス中の煤塵と液滴との慣性衝突の作用で除去できる煤塵の大きさには限界がある。従来技術における脱硫装置では、スプレノズルから噴霧される液滴の大きさが2000〜3000μmと比較的大きく、微粒子の除去に関して十分配慮されていなかった。
排ガス中の煤塵と液滴との慣性衝突で除去される煤塵の大きさは液滴の大きさに依存し、液滴を小さくすることで除去可能な煤塵の限界粒径を小さくすることができる。また、その煤塵の除去に要する液量を低減することも可能となる。
そこで、一定の大きさの煤塵を所定割合以上除去可能な排ガスと噴霧液量(微粒スプレ部のみの液量)との液ガス比(L/G)と微粒スプレ部の複数の二流体スプレノズルから噴霧される液滴の平均径との関係(すなわち、液ガス比と液滴の平均径との関係)を予め求めておき、吸収塔に必要な補給水供給量を液ガス比に換算して、この液ガス比と前記液ガス比と液滴の平均径との関係から微粒スプレ部の液滴の平均径を求める。そして、この求められた平均径の液滴を微粒スプレ部から排ガスに噴霧すれば、補給水供給量で微粒スプレ部に必要な水量を賄うことができる。なお、液ガス比とは、単位排ガス量当たりに噴霧する液量であり、L/Gと表す場合がある。
例えば、1μmの煤塵を90%除去するために必要な前記液ガス比(L/G)と微粒スプレ部の複数の二流体スプレノズルから噴霧される液滴の平均径とには後述する図2に示すような関係がある。そこで、吸収塔に必要な補給水供給量を液ガス比に換算して、この液ガス比と前記液ガス比と液滴の平均径との関係から微粒スプレ部の液滴の平均径を求めることで、より効果的にサブミクロン単位の煤塵を除去できる。
図2によれば、微粒スプレ部の複数の二流体スプレノズルから噴霧される液滴の平均径を130μm以下にすることで、より少ない液量で1μm以下の小さな煤塵も除去することが可能になる。
一方、除塵用の微粒スプレ部から噴霧する液滴の径を小さくすると、排ガス流れに対して向流噴霧された液滴も排ガスにあおられて反転し、排ガス流れに同伴されるようになる。その同伴流では効果的にサブミクロン単位の煤塵を除去できないため、微粒スプレ部のいずれの領域も液滴と排ガスが向流接触するように、二流体スプレノズルの間隔に配慮する必要がある。
微粒スプレ部の複数の二流体スプレノズルを略水平方向に設置する場合、微粒スプレ部の二流体スプレノズルの間隔は、液滴が下方に噴霧されてから上昇する排ガス流れにより反転して液滴が上昇するまでの液滴の水平方向の移動距離を基準に設定すれば良い。二流体スプレノズルからは液滴が霧状に噴霧されるため、この噴霧領域の外周部をなす、すなわち二流体スプレノズルの中心から遠くに飛散する液滴の水平方向の移動距離を基準にすれば良い。
この水平方向の移動距離は、上昇する排ガスの流速と微粒スプレ部の二流体スプレノズルから下方に噴霧される液滴のうち噴霧領域の外周部をなす液滴の噴射速度とその液滴の排ガス流れに対する噴射角度から定まる。
例えば、全てのスプレノズルの噴霧条件が同じである場合は、微粒スプレ部の複数の二流体スプレノズル同士の間隔を、前記水平方向の移動距離の2倍以内にすれば良い。
なお、この間隔の基準は、各スプレノズルの中心間の距離とすれば良い。
微粒スプレ部の二流体スプレノズルから噴霧される液滴はスプレノズルの中心を頂点とした円錐状に噴霧されるため、前記水平方向の移動距離は、外周部の液滴の噴霧されてから反転するまでの移動距離を円錐の側面長さ(母線の長さ)とした場合の底面の円の半径Rとなる。この円錐で囲まれる範囲が、液滴と排ガスが向流接触可能な範囲となり、すなわち、除塵に効果的な範囲である。そして、この半径Rを有効半径Rといい、平面視ではスプレノズルの中心を中心とした半径Rの円で囲まれる範囲がスプレノズルから噴霧される液滴と排ガスが向流接触可能な範囲となる。また円錐状とは、概ね円錐形状であれば良く、シャワー状、傘状、釣り鐘状などの形状も含む意である。
そして、微粒スプレ部の二流体スプレノズルから噴霧される液滴と排ガスが向流接触可能な範囲は、排ガスの流速よりも液滴の噴射速度と噴射角度に大きく影響を受ける。例えば、微粒スプレ部の液滴の噴射速度及び噴射角度と有効半径Rには、後述する図9に示すような関係がある。微粒スプレ部の二流体スプレノズルから噴霧される液滴は下降するが、それに抗する排ガス流れにより反転して上昇する。
したがって、微粒スプレ部の二流体スプレノズルの間隔Pをスプレノズルの噴霧条件である噴射角度(排ガス流に対する液滴の噴射角度)と噴射速度の関係で一義的に決まるように定義づけすると良い。
そして、図9に示す関係から液滴の噴射速度Vp(m/s)と噴射角度θ(deg)との関係を整理すると、下記式(1)で表すことができる。
R(m)=[(−1.2×10-5) θ2+(1.5×10-3)θ−8.5×10-3]×Vp0.5(1)
例えば、微粒スプレ部の各二流体スプレノズルから同じ噴霧条件で噴霧される場合は、スプレノズルの間隔P(m)を式(1)の有効半径R(m)の2倍以内にすると良い。
本発明によれば、簡素な構成で、設備の大型化や費用の増大を抑えて煤塵の除去性能を高めることができる。具体的には、以下の効果を奏する。
請求項1又は請求項記載の発明によれば、スプレ部のスプレノズルよりも液滴径の小さい液滴を除塵用の微粒スプレ部の複数の二流体スプレノズルから排ガス流れに対して向流に噴霧することで、スプレ部で除去できない粒径のより小さい煤塵を除去することが可能となる。また、微粒スプレ部に補給水を利用することで、新たな水を必要とせず、ユーティリティが増加することもなく、排煙脱硫装置内の水バランス(水の蒸発量と補給量)が崩れることもない。
更に、ミストエリミネータよりも排ガス流れの上流側で連続的に補給水を噴霧することで、ミストエリミネータの洗浄効果も期待でき、ミストエリミネータの洗浄水量及び洗浄頻度を低減できる。
本発明の一実施例である湿式排煙脱硫装置の側面図である。 図1の湿式排煙脱硫装置において、1μmの煤塵を90%除去するのに必要な液ガス比(L/G)と除塵用スプレノズルから噴霧される液滴の平均径との関係を示した図である。 排ガスの流速を4m/sとした場合の除塵用スプレノズルから噴霧された液滴の飛跡を計算した結果を示した図である。 排ガスの流速を2m/sとした場合(比較的低負荷時)の除塵用スプレノズルから噴霧された液滴の飛跡を計算した結果を示した図である。 排ガスの流速を1m/sとした場合(低負荷時)の除塵用スプレノズルから噴霧された液滴の飛跡を計算した結果を示した図である。 除塵用スプレノズルから噴霧される液滴の噴射方向を示した図である。 除塵用スプレノズルから噴霧される液滴の噴射方向を示した図である。 除塵用スプレノズルから噴霧される液滴の噴射速度Vpと有効半径Rとの関係を示した図である。 除塵用スプレノズルから噴霧される液滴の噴射速度Vpと噴射角度θと有効半径Rとの関係を示した図である。 図9に示した除塵用スプレノズルから噴霧される液滴の噴射角度θと比例乗数αとの関係を示した図である。 本発明の他の実施例である湿式排煙脱硫装置の側面図である。 従来の湿式排煙脱硫装置の側面図である。
以下に、本発明の実施の形態を示す。
図1には、本発明の一実施例である湿式排煙脱硫装置の側面図を示す。なお、図1の湿式排煙脱硫装置において、図12の湿式排煙脱硫装置と同じ符号の部材の説明は一部省略している。
この湿式排煙脱硫装置は、主に排ガス中の有害成分である硫黄酸化物を吸収・除去する吸収塔1と、吸収塔1の排ガス入口ダクト2と、吸収塔1の排ガス出口ダクト3と、排ガスに吸収液を噴霧するスプレノズル13を備えたスプレヘッダ12と、吸収塔1内の吸収液の循環ポンプ4と、吸収塔1内の吸収液を貯留する循環タンク6と、循環タンク6内の吸収液を攪拌する攪拌機7と、循環タンク6内の吸収液に酸化用空気を吹き込むための空気吹込み管8と、排ガスに同伴される液滴径の小さいミストを捕集するミストエリミネータ9と、循環タンク6内の吸収液の抜出し管10と、循環タンク6内の吸収液をスプレヘッダ12に送る循環配管11等から構成される。
火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から排出される硫黄酸化物を含む排ガスは、図示していない脱硫ファンにより入口ダクト2から吸収塔1にほぼ水平方向に導入され、上方に流れて吸収塔1の塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。
吸収塔1では、スプレノズル13から微細な液滴として噴霧される石灰石または石灰を含むスラリなどの吸収剤の液滴と排ガスとを気液接触させることで、排ガス中のばいじんや塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)等の酸性ガスと共に、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)はスプレノズル13の吸収液滴表面で化学的に吸収、除去される。
SO2を吸収した吸収液は、一旦循環タンク6に溜まり、酸化用攪拌機7によって攪拌されながら、空気吹込み管8から供給される空気中の酸素により酸化され硫酸カルシウム(石膏)を生成する。
循環タンク6にあるスラリ状の吸収液5は、吸収液循環ポンプ4により昇圧され、吸収液循環配管11を経由して、吸収塔1内の上部のスプレヘッダ12に供給される。
炭酸カルシウム及び石膏が共存する循環タンク6内の吸収液5の一部は、吸収液循環ポンプ4によって再びスプレノズル13に送られ、一部は吸収液抜き出し管10より図示していない廃液処理・石膏回収系へと送られる。また、スプレノズル13からの噴霧によって微粒化された吸収液5の中で、液滴径が微小なミストは排ガスに同伴されるが、出口ダクト3側に設けられたミストエリミネータ9によって捕集・除去される。
湿式脱硫装置の排ガス流れの上流には図示していない集塵装置が設置され、ボイラから排出されるほとんどの灰は除去されるが、微細な灰は集塵装置でも除去されず、排ガスに同伴されながら湿式脱硫装置に流入する。しかし、湿式脱硫装置の吸収塔1内ではスプレノズル13から噴霧された多量の吸収液5の液滴が落下しているため、微細な灰のほとんどはこの液滴との慣性衝突により除去される。
図1に示す湿式排煙脱硫装置は、最上段のスプレノズル13とミストエリミネータ9との間に二流体方式の除塵用スプレノズル14を複数配置した除塵用スプレヘッダ17を備え、この除塵用スプレヘッダ17に補給水供給ライン15を設け、除塵用スプレノズル14から補給水として工業用水を噴霧する点で図12に示す従来の湿式排煙脱硫装置と異なる。
従来の湿式排煙脱硫装置では、スプレノズル13から噴霧される液滴で除去できる灰の大きさには限界があり、浮遊粒子状物質のうち2.5μm以下のものを対象とするような1μm以下のサブミクロン領域の灰は除去されずに、そのまま吸収塔1から排出されていた。
排ガス中の煤塵とスプレノズル13から噴霧される吸収液5の液滴との慣性衝突で除去される煤塵の大きさは噴霧される液滴の大きさに依存し、排ガスに噴霧される液滴を小さくすることで除去可能な煤塵の限界粒径を小さくすることができる。また、その煤塵の除去に要する液量を低減することも可能となる。
本実施例によれば、ミストエリミネータ9の上流側に小容量の除塵用スプレノズル14として二流体スプレノズルを複数配置しており、除塵用スプレノズル14から微粒液滴が円錐状に噴霧される。二流体スプレノズルによれば、圧縮空気供給管16から圧縮空気を除塵用スプレノズル14に送り、除塵用スプレノズル14の内部で水に気体を混合させるため、高速気流によって液体が粉砕して微粒化する。このように、液体と気体を混合させることで微細な液体の粒子を作り出し、スプレノズル13から噴霧される吸収液5の液滴よりも微細な液滴を噴霧することが可能となり、より小さな煤塵をも除去することが可能となる。なお、除塵用スプレヘッダ17を複数段備えても良い。
また、吸収塔1には90〜160℃程度の排ガスが導入されるため、この排ガスと接触する吸収液5が蒸発して、その蒸発水は図示しない煙突から排出される。したがって、吸収塔1には蒸発した分に見合うだけの補給水として工業用水を連続的に供給する必要がある。
本実施例によれば、除塵用スプレノズル14から噴霧する水に補給水を利用することで、新たな水を必要とせず、ユーティリティが増加することもなく、水バランスが崩れることもない。また、ミストエリミネータ9よりも排ガス流れの上流側で連続的に補給水を噴霧することで、ミストエリミネータ9の洗浄効果も期待できると共に、ミストエリミネータの洗浄水量及び洗浄頻度を低減することも可能である。
図2には、図1の湿式排煙脱硫装置において、1μmの煤塵を90%除去するのに必要な液ガス比(L/G)と除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の平均径との関係を示す。吸収塔1に導入される排ガス流速を4m/sとし、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴径を、レーザー位相ドップラー計測器により測定した。なお、スプレノズル13から噴霧される液滴は、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴に比べて大きいため、サブミクロン単位の煤塵を除去できない。したがって、スプレノズル13からの噴霧滴量は考慮する必要はない。
図2からも分かるように、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴を小さくすることで、より少ないL/Gで微粒の煤塵を除去できることが分かる。
したがって、除塵に効果的な液ガス比(L/G)と除塵用スプレノズル14の液滴の平均径との関係を予め求めておき、吸収塔1に必要な補給水供給量を液ガス比に換算して、この液ガス比と前記液ガス比と液滴の平均径との関係から除塵用スプレノズル14により噴霧する液滴の平均径を求めることで、より効果的にサブミクロン単位の煤塵を除去できる。
例えば、一般的な湿式排煙脱硫装置の補給水供給量をL/Gに換算すると0.05L/m3Nであり、除塵用スプレノズル14から噴霧する水を補給水だけで賄うためには、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の径を130μm以下にすればよいことが分かる。ここで、一般的な湿式排煙脱硫装置とは、排ガス流路の上流側に冷却塔やガスクーラが設置されていない入口ガス温度として130〜160℃の脱硫装置であり、その補給水供給量とは1000MWのボイラの場合で125〜160t/h程度である。1000MWの排ガス量を300万m3N/hとすれば、L/G=(125〜160)×1000/300万≒0.05リットル/m3Nとなる。
そして、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の径を130μm以下にすることで、より少ない液量で1μm以下の小さな煤塵も除去することが可能になる。
一方、除塵用スプレノズル14から噴霧する液滴の径を小さくすると、排ガスに対して向流噴霧された液滴も排ガスにあおられて反転し、排ガス流れに同伴されるようになる。その同伴流では効果的にサブミクロン単位の煤塵を除去できないため、除塵用スプレノズル14を設置したいずれの領域も液滴と排ガスが向流接触するように、除塵用スプレノズル14の間隔に配慮する必要がある。
図3には、排ガスの流速を4m/sとした場合の除塵用スプレノズル14から噴霧された液滴の飛跡を計算した結果を示し、図4には、排ガスの流速を2m/sとした場合(比較的低負荷時)の除塵用スプレノズルから噴霧された液滴の飛跡を計算した結果を示し、図5には、排ガスの流速を1m/sとした場合(低負荷時)の除塵用スプレノズルから噴霧された液滴の飛跡を計算した結果を示す。この液滴は、円錐状(シャワー状)に噴霧する場合の一番外側(噴霧領域の外周をなす)の液滴であり、霧状に噴霧される液滴のうちの一滴(代表的な液滴)を指している。また、図3〜図5のx軸、y軸の基準点(ゼロ点)は除塵用スプレノズル14の中心である。
図3の計算条件として、ガス流速を4m/s、液滴径を130μm、噴射角度を45度、液滴の噴射速度Vpを50〜400m/s(5段階の速度)とした。また、図4及び図5には、低負荷(低ボイラ出力)時を想定したガス流速2m/s及び1m/sの場合の液滴の飛跡を計算した結果を示す。図4及び図5の計算条件としては、ガス流速以外は図3の計算条件と同様とした。
除塵用スプレノズル14から下方に噴射された液滴は吸収塔1内を上昇する排ガスに抗して下方に飛散するが、液滴が有する運動エネルギーは排ガスに抗して下方に飛散する際に、排ガスによる抵抗力によって失われ、除塵用スプレノズル14から或る距離で排ガスにあおられて反転し、排ガス流れに同伴されて上昇する。したがって、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴は、Uターンの飛跡を描く。
そして、この液滴が反転する除塵用スプレノズル14からの距離(噴霧されてから反転するまでの液滴の移動距離)は図3から図5に示される通り、排ガスのガス流速Ugと噴射速度Vp、更には噴射角度θによっても変わってくるが、液滴が排ガス流れと同伴流になるとサブミクロン単位の煤塵粒子を除去することは難しくなるため、液滴と排ガスが向流接触する微粒子を効果的に除去可能な範囲は液滴が噴射されてから反転するまでと考えられる。
したがって、除塵用スプレノズル14同士の間隔を、各除塵用スプレノズル14の噴霧領域の外周部をなす液滴の噴霧されてから反転するまでの水平方向の移動距離に基づいて設定することで、除塵用スプレノズル14を設置したいずれの領域も液滴と排ガスの向流接触が可能となり、効果的に煤塵を除去できる。
例えば、図6に示すように、各除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の噴射速度や噴射角度などの噴射条件がほぼ同じであれば(噴射方向を実線で示す)、除塵用スプレノズル14同士の間隔をこの液滴の水平方向の移動距離h1の2倍と同じ間隔又はそれ以内にすれば良い。
また、図7に示すように、各除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の噴射条件が異なる場合は、隣接する除塵用スプレノズル14の互いに向かい合う方向に噴霧される各液滴の水平方向の移動距離を足した距離(h2+h3)と同じ又はそれ以内の距離を、これら除塵用スプレノズル14同士の間隔とすれば良い。
除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴は除塵用スプレノズル14の中心を頂点とした円錐状に噴霧されるため、前記水平方向の移動距離は、外周部の液滴の噴霧されてから反転するまでの移動距離(除塵用スプレノズル14の中心からの移動距離)を円錐の側面長さ(母線の長さ)とした場合の底面の円の半径Rとなる。この円錐で囲まれる範囲が、液滴と排ガスが向流接触可能な範囲となり、すなわち、除塵に効果的な範囲である。そして、この半径Rを有効半径Rといい、平面視では除塵用スプレノズル14の中心を中心とした半径Rの円で囲まれる範囲が除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴と排ガスが向流接触可能な範囲となる。
図8には、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の噴射速度Vpと有効半径Rとの関係を示し、図9には、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の噴射角度θを変えた場合の噴射速度Vpと有効半径Rとの関係を示す。なお、図8の数値は図3〜図5の計算結果から求めた。
図8からも分かるように、排ガスの流速、すなわち負荷(ボイラ出力)が変化しても、通常想定される排ガスの流速の範囲(ここでは1〜4m/s)では、有効半径Rにはほとんど影響しないことが分かる。むしろ低負荷(排ガスの流速が遅い)になると有効半径Rは若干大きくなる傾向があり、除塵用スプレノズル14同士の間隔Pを定格負荷時の有効半径Rに合わせて設定しておけば、低負荷時においてもサブミクロン領域の煤塵の除去性能が低下することはない。
そして、この有効半径Rは、上述の排ガスの流速に比べて液滴の噴射速度と噴射角度に大きく影響を受ける。図9に示すように、液滴の噴射速度Vp(図中ではx軸)と有効半径R(図中ではy軸)の関係は、それぞれ図中の式で表され、Vpの約0.5乗に比例することが分かる。噴射角度θによって比例乗数αが変化するため、液滴の噴射角度θと比例乗数αの関係を整理すると図10のようになる。
図10には、図9に示した除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴の噴射角度θと比例乗数αとの関係を示す。このθとαの関係は図中に示したような二次関数で表されるため、有効半径Rは、下記式(1)で表すことができる。
R=[(−1.2×10-5) θ2+(1.5×10-3)θ−8.5×10-3]×Vp0.5(1)
したがって、除塵用スプレノズル14から噴霧される液滴が円錐状に噴霧される場合、隣り合うスプレノズルからは互いに向かい合う方向に液滴が噴霧されるため、隣り合う除塵用スプレノズル14同士の間隔Pをこの有効半径R1(一方のスプレノズルの有効半径)とR2(他方のスプレノズルの有効半径)の加算値(R1+R2)以内にしておけば、除塵用スプレノズル14を設置したいずれの領域も液滴と排ガスの向流接触が可能となり、サブミクロン単位のダスト粒子を除去することが可能となる。
また、全ての除塵用スプレノズル14の噴射条件が同じである場合は、全ての除塵用スプレノズル14の設置間隔を有効半径Rの2倍以内にすることで、除塵用スプレノズル14の間隔設定が容易になる。
図11には、本発明の他の実施例である湿式排煙脱硫装置の側面図を示す。
この実施例2の湿式排煙脱硫装置は実施例1(図1)の湿式排煙脱硫装置とは、補給水に海水を利用した点で異なる。補給水に海水を利用することで海水中の塩類が濃縮され、吸収液5中の塩濃度が増大することになるが、補給水として使用される工業用水の量を低減することができ、節水が求められる地域の湿式排煙脱硫装置として適用することが可能となる。
また、本実施例特有の効果としては、吸収液5中の塩濃度が増大することで、吸収液中の水銀(排ガス中の水銀を吸収したもの)が安定化し、吸収塔1からの再放出を抑制できる。排ガス中の水銀は、吸収液中の塩類と錯体を形成するため安定化する。
補給水に海水を使用する本実施例の場合でも、図2のような関係と吸収塔1に必要な補給水供給量を液ガス比に換算した値とから求められる平均径の液滴を除塵用スプレノズル14により噴霧しても良い。この場合は、より少ない液量で1μm以下の小さな煤塵も除去することが可能になる。
また、除塵用スプレノズル14同士の間隔を、各除塵用スプレノズル14の噴霧領域の外周部をなす液滴の噴霧されてから反転するまでの水平方向の移動距離に基づいて設定したり、上記式(1)の有効半径Rに基づいて設定することで、より効果的にサブミクロン単位の煤塵を除去できる。
湿式排煙脱硫装置などにおいて、補給水量を低減可能な技術として利用可能性がある。
1 吸収塔 2 排ガス入口ダクト
3 排ガス出口ダクト 4 循環ポンプ
5 吸収液 6 循環タンク
7 攪拌機 8 空気吹込み管
9 ミストエリミネータ 10 抜出し管
11 循環配管 12 スプレヘッダ
13 スプレノズル 14 除塵用スプレノズル
15 補給水供給ライン 16 圧縮空気供給管
17 除塵用スプレヘッダ

Claims (2)

  1. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスに吸収液を噴霧する複数のスプレノズルを有するスプレ部と該スプレ部の排ガス流路の下流側に設けられ、排ガス流れに同伴されるミストを捕集するミストエリミネータとを有し、排ガス中の硫黄酸化物を吸収、除去する吸収塔を備えた湿式排煙脱硫装置において、
    前記吸収塔に補給水を供給する補給水供給部を設け、
    前記スプレ部と前記ミストエリミネータとの間に、前記補給水供給部により供給される水を前記スプレ部のスプレノズルから噴霧される液滴よりも微粒液滴にして排ガス流れに対して向流噴霧する複数の二流体スプレノズルからなる除塵用の微粒スプレ部を設け
    前記吸収塔内の下方から上方に向かって順に、前記スプレ部、微粒スプレ部、ミストエリミネータが設けられていることを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
  2. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを吸収塔に導入して、吸収塔内に設けたスプレ部の複数のスプレノズルから吸収液を噴霧して、前記排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収、除去し、吸収塔内の排ガス流れに同伴されるミストをスプレ部より排ガス流路の下流側に設けたミストエリミネータにより捕集する排煙脱硫方法において、
    前記吸収塔内の下方から上方に向かって順に、前記スプレ部、ミストエリミネータが設けられ、
    前記スプレ部と前記ミストエリミネータとの間の排ガスに、前記吸収塔に供給する補給水に気体を混合して微粒化することで前記スプレノズルから噴霧される液滴よりも微粒液滴にして、排ガス流れに対して向流噴霧することを特徴とする湿式排煙脱硫方法
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