JP5815233B2 - 制振材用エマルション樹脂組成物及び制振材 - Google Patents
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Description
以下に本発明を詳述する。
本発明の制振材用エマルション樹脂組成物は、重合体(B)を少なくとも1種含んでいればよく、2種以上含んでいてもよい。
なお、制振材用エマルション樹脂組成物が含む重合体全体は、重合体(A)と重合体(B)とから構成されるため、重合体全体から重合体(A)の含有割合を除いた残りが重合体(B)の含有割合である。
なお、本発明において、制振材用エマルション樹脂組成物が3種以上の重合体を含む場合、いずれの重合体が重合体(A)に該当し、いずれの重合体が重合体(B)に該当するかは、樹脂組成物中に含まれる重合体の種類、形態、重合体全体に対する各重合体の含有割合によって決まることになる。
なお、ここでいう固形分は、制振材用エマルション樹脂組成物に含まれる水性媒体以外の成分を意味する。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、後述する単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式(1)より算出することができる。
なお、重量平均分子量(Mw)は、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
なお、本発明の制振材用エマルション樹脂組成物に含有される重合体が、後述するコア部とシェル部とを有する形態のものである場合、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体は、エマルションのコア部を形成する単量体成分、シェル部を形成する単量体成分のいずれに含まれていてもよく、これらの両方に用いられるものであってもよい。
これらの中でも、(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
すなわち、主成分となる重合体がアクリル系重合体であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
より好ましくは、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体を0.5〜3質量%、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を99.5〜97質量%含んでなることである。
その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体には、後述する(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体、窒素原子を有する不飽和単量体、芳香環を有する不飽和化合物、(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能なその他の単量体が含まれる。
また、(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート等の他、これらの塩やエステル化物等の1種又は2種以上を使用することが好適である。
すなわち、主成分となる重合体が、スチレンを含む単量体成分から得られたアクリルスチレン系重合体であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
極性基含有単量体の含有割合は、単量体成分100質量%に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜4質量%であり、更に好ましくは、0.5〜3質量%である。
このような重合体は、上記主成分となる重合体の最低造膜温度を5℃以上下げることができるものであることが好ましい。すなわち、本発明の制振材用エマルション樹脂組成物が高分子可塑剤としてはたらき、上記主成分となる重合体の最低造膜温度を5℃以上下げる重合体を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
重合体のガラス転移温度は、上述したものと同様の方法により求めることができる。
ただし、後述するように、重合体(A)と重合体(B)のいずれか一方のみがコア部とシェル部とを有するエマルションである場合、当該コア部を形成する重合体のTgとシェル部を形成する重合体のTgとに10℃以上の充分な差があり、それによって幅広い温度領域下で高い制振性を発現することができるものとなっている場合には、当該コア・シェルエマルションを形成する重合体全体のTgと、コア・シェルエマルションではないもう一方の重合体のTgとの差は寧ろ小さいほうが好ましく、10℃以下であることが好ましい。
重合体の重量平均分子量は、上述したものと同様の方法により測定することができる。
なお、アクリル系重合体以外の重合体とは、実質的にアクリル系単量体を含まない単量体成分から得られたものであればよく、単量体成分全体に対してアクリル系単量体の含有量が30質量%以下であれる単量体成分から得られた重合体であればよい。
ここで、ウレタン樹脂としては、構造中にウレタン結合を少なくとも1つ有するものであればよいが、ウレタン樹脂の原料となった単量体成分に含まれる単量体の50質量%以上がウレタン結合によって他の単量体との間に結合を形成したものが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、構造中にエステル結合を少なくとも1つ有するものであればよいが、ポリエステル樹脂の原料となった単量体成分に含まれる単量体の50質量%以上がエステル結合によって他の単量体との間に結合を形成したものが好ましい。
また、エポキシ樹脂としては、構造中にエポキシ基を少なくとも1つ有するものであればよいが、単量体成分に含まれるエポキシ基を有する単量体と、該エポキシ基を有する単量体と結合を形成する単量体との合計割合が単量体成分全体に対して50質量%以上である単量体成分から得られた樹脂が好ましい。
酢酸ビニル系樹脂は、構造中に酢酸ビニル由来の構造を少なくとも1つ有するものであればよいが、単量体成分に含まれる酢酸ビニルの割合が50質量%以上である単量体成分から得られた樹脂が好ましい。
塩化ビニル系樹脂は、構造中に塩化ビニル由来の構造を少なくとも1つ有するものであればよいが、単量体成分に含まれる塩化ビニルの割合が50質量%以上である単量体成分から得られた樹脂が好ましい。
また、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び、塩化ビニル系樹脂は、実質的にアクリル系重合体に該当しないものであることが好ましく、その原料となる単量体成分中のアクリル系単量体の含有割合が30質量%以下である単量体成分から得られたものであることが好ましい。
上記重合体(A)に重合体(B)を吸収させて得られる形態のものは、重合体(A)を合成した後、重合体(A)に、重合体(B)として液状の重合体を吸収させることにより得ることができる。このように重合体(A)に重合体(B)を吸収させると、重合体(A)と重合体(B)とが均一に混ざり合った重合体とすることができる。
すなわち、本発明の制振材用エマルション樹脂組成物においては、以下の4つの形態がある。本発明の制振材用エマルション樹脂組成物が、複合化していない重合体のみを含む場合には、下記(I)の形態に該当することになり、複合化した重合体と、複合化していない重合体とを含む場合、下記(II)又は(III)の形態に該当することになる。複合化した重合体を1つ(例えば、後述するコア部とシェル部とを有するエマルションを1つ)のみ有する場合、下記(IV)の形態に該当することになる。
(I)複合化していない重合体(A)と複合化していない重合体(B)とを混合した形態。
(II)複合化した重合体(A)と複合化していない重合体(B)とを混合した形態。
(III)複合化していない重合体(A)と複合化した重合体(B)とを混合した形態。
(IV)重合体(A)と重合体(B)とが複合化した形態。
このような、制振材用エマルション樹脂組成物がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子を含み、該コア部とシェル部とを有するエマルション粒子は、主成分となる重合体によってコア部が、該主成分となる重合体とは異なる重合体によってシェル部が形成されたものであることは本発明の好適な実施形態の1つである。
コア部又はシェル部のいずれか一方にウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び、塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むエマルションを製造する場合、コア部又はシェル部を形成する重合反応に用いる単量体成分として、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び、塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むものを用いればよい。
なお、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び、塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む単量体成分におけるこれらの樹脂以外の成分としては、特に制限されないが、上述した不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なエチレン系不飽和単量体が好ましい。
コア・シェル複合構造を有するエマルションは、実用温度範囲内の幅広い範囲における制振性に優れる。特に高温域においても、他の形態の制振材配合物と比較して優れた制振性を発揮し、その結果、実用温度範囲内において、常温から高温域まで幅広い範囲に渡って制振性能を発揮することができる。
なお、上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
また、コア部とシェル部とを合わせたトータルのTgは、−20〜40℃であることが好ましい。より好ましくは、−10〜30℃である。
上記コア部とシェル部とを有するエマルション粒子は、後述する乳化重合法(多段重合)を用いて得ることができる。
平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、制振材に要求される加熱乾燥性、塗工性等の基本性能を充分なものとしたうえで、制振性をより優れたものとすることができる。上記上限は、400nmであることがより好ましい。更に好ましくは、350nmである。エマルション粒子の平均粒子径がこのような範囲であると、本発明の制振材用エマルション樹脂組成物の作用効果がより効果的に発揮されることになる。
平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)で測定することにより求めることができる。
本明細書中、pHは、pHメーターにより測定することができる。例えば、pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)を用いて25℃での値を測定することが好ましい。
なお、粘度は、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定することができる。
乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の各種界面活性剤、及び、高分子界面活性剤の1種又は2種以上を用いることができる。
また、これらのノニオンタイプに相当する界面活性剤も使用することができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルS−120、S−120A、S−180及びS−180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS−2(商品名、三洋化成工業社製)、アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30(ADEKA社製)等が挙げられる。
アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
更に、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製「エレミノールRS−30」、日本乳化剤社製「アントックスMS−60」等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネー卜塩(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンKH−10」等)等のアリル基を有する硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、花王社製「ラテムルPD−104」等)等も用いることができる。
炭素数3〜5の脂肪族不飽和カルボン酸のスルホアルキル(炭素数1〜4)エステル塩型界面活性剤、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートアンモニウム塩等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩型界面活性剤;スルホプロピルマレイン酸アルキルエステルナトリウム塩、スルホプロピルマレイン酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩、スルホエチルフマル酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩等の脂肪族不飽和ジカルボン酸アルキルスルホアルキルジエステル塩型界面活性剤。
上記界面活性剤の使用量としては、用いる界面活性剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部である。更に好ましくは、1〜3重量部である。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜1重量部である。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部であることが好ましい。
また単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
なお、上記沸点は、常圧での沸点である。
このような、本発明の制振材配合物を用いて得られる制振材もまた、本発明の1つである。
上記制振材配合物としては、例えば、制振材配合物の総量100質量%に対し、固形分を40〜90質量%含有してなることが好適であり、より好ましくは、50〜90質量%であり、更に好ましくは、60〜90質量%である。また、制振材配合物のpHは、7〜11とすることが好ましく、より好ましくは、7〜9である。
上記制振材配合物における制振材用エマルション樹脂組成物の配合量としては、例えば、制振材配合物の固形分100質量%に対し、制振材用エマルション樹脂組成物の固形分が10〜60質量%となるように設定することが好ましく、より好ましくは、15〜60質量%である。
制振材配合物の粘度は、上述したものと同様の方法により測定することができる。
上記発泡剤の配合量としては、制振材用エマルション樹脂組成物100重量部に対し、0.5〜5.0重量部とすることが好ましい。より好ましくは、1.0〜3.0重量部である。
なお、上記他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、上記制振材用エマルション樹脂組成物等と混合され得る。
上記制振材用エマルション樹脂組成物又は配合物に架橋剤を混合することにより、樹脂の強靱性が向上し、その結果、高温領域で充分な高制振性が発現する。中でもオキサゾリン化合物を用いることが好ましい。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤及びポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記防錆顔料としては、例えば、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
上記多価金属化合物の形態としては、例えば、粉体、水分散体や乳化分散体等であってよい。中でも、制振材配合物中への分散性が向上することから、水分散体又は乳化分散体の形態で使用することが好ましく、より好ましくは乳化分散体の形態で使用することである。また、多価金属化合物の使用量は、制振材配合物中の固形分100重量部に対して、0.05〜5.0重量部とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜3.5重量部である。
上記制振材配合物の塗布量は、用途や所望する性能等により適宜設定すればよいが、充分な制振性を発揮させるため、乾燥時の塗膜の膜厚が、1.5mm以上となるようにすることが好ましい。より好ましくは、3.0mm以上である。また、塗膜の乾燥性の点から8.0mm以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは、6.0mmである。
また、乾燥時(後)の塗膜の面密度が1.0〜7.0kg/m2となるように塗布することも好ましい。より好ましくは、2.0〜6.0kg/m2である。なお、本発明の制振材配合物を使用することにより、乾燥時に膨張やクラックが生じにくく、しかも傾斜面の塗料のずり落ちも発生しにくい塗膜を得ることが可能となる。
このように、乾燥時の塗膜の膜厚が、1.5〜8.0mmとなるように塗工し、乾燥する制振材配合物の塗工方法や、乾燥後の塗膜の面密度が2.0〜6.0kg/m2となるように塗工し、乾燥する制振材配合物の塗工方法もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。
損失係数は、通常ηで表され、制振材に対して与えた振動がどの程度減衰したかを示すものである。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示す。上記損失係数の測定方法としては、共振周波数付近で測定する共振法が一般的であり、半値幅法、減衰率法、機械インピーダンス法がある。本発明の制振材配合物において、制振材配合物から形成される膜の損失係数としては、片持ち梁法を用いた共振法(3dB法)により測定することが好適である。片持ち梁法を用いる測定は、例えば、株式会社小野測機製のCF−5200型FFTアナライザーを用いて行うことができる。
また、上記損失係数は、冷間圧延鋼板(SPCC−SD:長さ250mm×幅10mm×厚み1.6mm)上に長さ200mm×幅10mm×厚み3.0mmの塗膜容量で塗布し、95℃×30分乾燥後、130℃×60分焼付け乾燥することで被膜を形成して測定することが好ましい。損失係数の測定は、例えば、20℃、30℃、40℃、50℃及び60℃の各温度における損失係数を共振法(3dB法)により測定し、その中のピーク値により評価するのが好ましい。また、制振材配合物から形成される膜の実用温度範囲が通常では20〜60℃であるので、20〜60℃の各温度における損失係数を合計した値で制振性能を評価してもよく、制振材配合物から形成される膜が、20℃、40℃及び60℃における損失係数を合計した総損失係数が0.300以上である制振材配合物もまた、本発明の1つである。そのような制振材配合物である場合に、制振材配合物から形成される膜の実用温度範囲である20〜60℃において充分な制振性を発揮しているということができる。
<ガラス転移温度(Tg)>
各段で用いた単量体組成から、下記計算式(1)を用いて算出した。
上記計算式(1)により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(St):100℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AA):95℃
得られた水性樹脂分散体約1gを秤量、熱風乾燥機で110℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した。
動的光散乱法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)を用い、体積平均粒子径を測定した。
また、標準偏差をその体積平均粒子径で割った値(標準偏差/体積平均粒子径×100)を粒度分布として算出した。
<重量平均分子量>
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定した。
上記制振材配合物を冷間圧延鋼板(SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0kg/m2の制振材被膜を形成した。制振性の測定は、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)をもちいて、それぞれの温度(20℃、40℃、60℃)における損失係数を共振法(3dB法)により測定した。また、制振性の評価は、総損失係数(20℃、40℃、60℃での損失係数の合計)により行い、総損失係数の値が大きいほど制振性に優れるものとした。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水300部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン200部、メチルメタクリレート105部、2−エチルへキシルアクリレート190部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン2.0部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。
次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの8部、5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにスチレン105部、メチルメタクリレート100部、ブチルアクリレート290部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン2.0部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ90.0部及び脱イオン水97部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、ジグリコールアミン12部を添加し、不揮発分55%、pH8.0、粘度420mPa・s、粒子径230nm、粒度分布22%、重量平均分子量65,000、1段目のTg10℃、2段目のTg−10℃、トータルTg0℃のエマルション1を得た。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水300部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン305部、メチルメタクリレート205部、2−エチルへキシルアクリレート190部、ブチルアクリレート290部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン4.0部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)180.0部及び脱イオン水194部からなる単量体乳化物を仕込んだ。
次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの8部、5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液100部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液100部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、ジグリコールアミン12部を添加し、不揮発分55%、pH8.0、粘度320mPa・s、粒子径220nm、粒度分布24%、重量平均分子量61,000、Tg0℃のエマルション2を得た。
製造例1のエマルション100部に対して、水分散ウレタン樹脂「スーパーフレックス150」(第一工業製薬社製、不揮発分30%)を10部添加した樹脂組成物Aを得た。
製造例1のエマルション100部に対して、水分散ポリエステル樹脂「バイロナールMD−1480」(東洋紡社製、不揮発分25%)を10部添加した樹脂組成物Bを得た。
製造例1のエマルション100部に対して、水性ポリエステル樹脂「ハリディップWH−1188」(ハリマ化成社製、不揮発分65%)を5部添加した樹脂組成物Cを得た。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水300部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン200部、メチルメタクリレート105部、2−エチルヘキシルアクリレート190部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン2.0部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。
次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの8部、5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。
同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにスチレン105部、メチルメタクリレート84部、ブチルアクリレート274部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン2.0部、水性ポリエステル樹脂「ハリディップWH−1188」(ハリマ化成社製、不揮発分65%)50部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ90.0部及び脱イオン水79部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、ジグリコールアミン12部を添加し、不揮発分55%、pH8.5、粘度480mPa・s、粒子径210nm、粒度分布25%、重量平均分子量63,000、1段目のTg10℃、2段目のTg−10℃、トータルTg0℃の樹脂組成物Dを得た。
製造例1のエマルション100部に対して、酢酸ビニル「ポリゾール接着用−1000J」(昭和電工社製、不揮発分51%)を5部添加した樹脂組成物Eを得た。
実施例1〜5の樹脂組成物A〜E、及び、製造例1又は2で得られたエマルション1又は2をそれぞれ下記の通り配合し、制振材配合物として制振材塗膜を作製し、制振性を評価した。結果を表1に示す。
樹脂組成物A〜E、又は、製造例1又は2で得られたエマルション1又は2 359部
炭酸カルシウム(NN#200*1) 620部
分散剤(アクアリックDL−40S*2) 6部
増粘剤(アクリセットWR−650*3) 4部
消泡剤(ノプコ8034L*4) 1部
発泡剤(F−30*5) 6部
*1:日東粉化工業社製 充填剤
*2:日本触媒社製 ポリカルボン酸系分散剤(有効成分44%)
*3:日本触媒社製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
*4:サンノプコ社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
*5:松本油脂社製 発泡剤
Claims (7)
- 単量体成分を重合してなる重合体を含有する制振材用エマルション樹脂組成物であって、
該制振材用エマルション樹脂組成物は、主成分となる重合体、及び、該主成分となる重合体とは異なる重合体を少なくとも1種含み、
該制振材用エマルション樹脂組成物が含む重合体全体に対する該主成分となる重合体の含有割合が80〜99質量%であり、
該制振材用エマルション樹脂組成物が含む重合体全体に対する主成分となる重合体とは異なる重合体の含有割合が1〜20質量%であり、
該主成分となる重合体は、アクリル系重合体であり、
該アクリル系重合体の原料となる単量体成分は、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体を0.1〜20質量%、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を99.9〜80質量%含み、
該その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体及び芳香環を有する不飽和化合物を含み、
該(メタ)アクリル系単量体の含有量が、全単量体成分100質量%に対して、20質量%以上であり、
該主成分となる重合体とは異なる重合体は、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び、塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含み、重量平均分子量が500〜20万であることを特徴とする制振材用エマルション樹脂組成物。 - 前記主成分となる重合体は、ガラス転移温度が−20〜40℃であることを特徴とする請求項1に記載の制振材用エマルション樹脂組成物。
- 前記主成分となる重合体は、重量平均分子量が2万〜40万であることを特徴とする請求項2に記載の制振材用エマルション樹脂組成物。
- 前記主成分となる重合体は、アクリル系重合体であることを特徴とする請求項2又は3に記載の制振材用エマルション樹脂組成物。
- 前記制振材用エマルション樹脂組成物は、前記主成分となる重合体とは異なる重合体としてガラス転移温度が−20〜40℃の重合体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制振材用エマルション樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の制振材用エマルション樹脂組成物、顔料、発泡剤及び増粘剤を必須成分とすることを特徴とする制振材配合物。
- 請求項6に記載の制振材配合物を用いて得られることを特徴とする制振材。
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