JP5809895B2 - ポリフェニレンサルファイド発泡体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの分野においては、機器の軽量化が重要な課題となっており、その構成部品である樹脂成形品に対しても、樹脂が本来有する優れた特性を損なうことなく軽量化することを求められる場合が増えている。
例えば、特許文献1では、結晶化度が20%以上で、発泡倍率が2倍以上のポリアリーレンスルフィド発泡体(ポリフェニレンサルファイド発泡体)およびその製造方法が開示されており、かかる技術によって耐熱性や低誘電率性、機械的強度、軽量性という特性を向上させている。
この点、本発明者が検討したところ、発泡体を2次成形しにくいのは、結晶化度が20%以上と高いことに起因することが判明した。
したがって、本発明の主な目的は、耐熱性や低誘電率性、機械的強度といった基本的な特性は維持しつつ、2次成形性に優れるポリフェニレンサルファイド発泡体およびその製造方法を提供することにある。
一般式(a)で示される繰り返し単位を有するポリフェニレンサルファイド樹脂から構成され、結晶化度が20%未満であるポリフェニレンサルファイド発泡体であって、
前記ポリフェニレンサルファイド樹脂には架橋剤が添加され、
前記ポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して、前記架橋剤の添加量が1.0〜10質量部であるポリフェニレンサルファイド発泡体が提供される。
−(Ar−S)− … (a)
一般式(a)中、「Ar」はアリール基である。
一般式(a)で示される繰り返し単位を有するポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して、1.0〜10質量部の架橋剤を添加する工程と、
前記ポリフェニレンサルファイド樹脂と前記架橋剤との混合物を、不活性ガスにより加圧した雰囲気で保持し、前記混合物に前記不活性ガスを含有させる工程と、
前記不活性ガスを含有させた前記混合物を、常圧下でかつ60〜120℃の温度で加熱して発泡させる工程と、
を備えるポリフェニレンサルファイド発泡体の製造方法が提供される。
−(Ar−S)− … (a)
[一般式(a)中、「Ar」はアリール基である。]
かかる本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体からなる2次成形品は成形自由度に優れ、かつ、耐熱性や低誘電率性、機械的強度、軽量性といった観点で優れた樹脂発泡成形体である。これらの特性を活かして、本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体(2次成形品)を、モーターなどの電子・電気部品の断熱材、粘着テープ、パッキンなどのシール材、コンデンサーなどの電気特性を有する素材、食器、容器、自動車部品などの成形体として好適に使用することができる。
(1.1)ポリフェニレンサルファイド樹脂
本発明にかかるポリフェニレンサルファイド発泡体は、主に、ポリフェニレンサルファイド樹脂から構成されている。
ポリフェニレンサルファイド樹脂は、一般式(a)で示される繰り返し単位を有している。
−(Ar−S)− … (a)
一般式(a)中、「Ar」はアリール基である。
ポリフェニレンサルファイド樹脂は、一般式(a)で示される繰り返し単位を有し、結晶性を示すものであれば特に限定されない。
ポリフェニレンサルファイド樹脂の代表例は、一般式(a)で示される繰り返し単位中のアリール基(Ar)がフェニル基であるポリフェニレンスルフィド(以下「PPS」という。)である。
発泡の形態(発泡方法)としては、射出発泡法、バッチ発泡法、押出発泡法などの方法がある。発泡の形態は、空孔が発泡体シート内に存在していれば、特に限定されるものではない。
得られた発泡後のポリフェニレンサルファイド樹脂に、上記添加剤を含有する樹脂を積層しても良いし、上記添加剤を含有する塗料をコーティングしても良い。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)を構成する全ての単位を100モル%とした場合に、ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)は、好ましくは構造式(I)で示される繰り返し単位を70モル%以上100モル%以下含有する。
ポリフェニレンサルファイド発泡体は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)以外の成分として、必要に応じて、ポリフェニレンサルファイド樹脂以外の樹脂や無機充填剤などの各種添加剤を含有することができる。
本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体は、発泡体を構成する全ての成分合計100質量%において、より好ましくはポリフェニレンサルファイド樹脂(A)を80質量%以上99.99質量%以下含有する。
条件1:50,000≦重量平均分子量(Mw)≦120,000
条件2:2.6≦分子量分布(Mw/Mn)≦5.5
本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体を構成するポリフェニレンサルファイド樹脂(A)の重量平均分子量Mwは、特に制限はないが、好ましくは50,000〜120,000(測定方法:GPC)である。
重量平均分子量Mwが50,000以上であると、成形性が良好であり、特に成形絞り比が大きな型に対する成形が可能となり好ましい。
他方、重量平均分子量Mwが120,000以下であると、発泡倍率を上げやすく密度を下げ、軽量化を図ることができるため好ましい。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)の重量平均分子量Mwは、さらに好ましくは、60,000〜100,000である。
分子量分布Mw/Mnが2.6以上であると、成形条件幅が広くなり、特に成形絞り比が大きな型に対する成形が可能となり好ましい。
他方、分子量分布Mw/Mnが5.5以下であると、均一な発泡が起こり、安定生産ができる点と、発泡体の表面外観が良好になる点から好ましい。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、さらに好ましくは3.0〜4.5である。
たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物、N−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を、段階的に200〜290℃範囲まで昇温させ、通常0.5〜50時間程度加熱重合した後、220℃以下に冷却して得られたポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂以外の副生成物、水、ハロゲン化アルカリ金属塩、有機極性溶媒の重合反応後混合液から、ふるい等の目を用いてポリフェニレンサルファイド樹脂を回収して得ることができる。その際、架橋助剤等を使用して、枝状に重合させるような手法を実施してもよい。
上記のとおり、重合・回収されたポリフェニレンサルファイド樹脂には、低分子量のポリフェニレンサルファイド樹脂や副生成物、不純物が混在している可能性が高い。そのため、重合・回収後のポリフェニレンサルファイド樹脂には、熱水処理または有機溶媒処理(有機溶媒による洗浄)が施されてもよい。
重合・回収後のポリフェニレンサルファイド樹脂に対しこれら後処理が施される場合があることは、公知事実として知られている。
熱水処理に用いる熱水は特に制限はないが、洗浄効果の点から、好ましくは、使用する水を蒸留水または脱イオン水とする。
熱水温度は好ましくは90℃以上である。
有機溶媒処理に用いる有機溶媒は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば、特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ピペラジノン類の窒素原子含有の極性溶媒、塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン原子含有の極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドンまたはアセトンまたはクロロホルムなどを使用するのが特に好ましい。
これらの有機溶媒は、1種類で使用されてもよいし、2種類以上を混合して使用されてもよい。
洗浄効果の点から、洗浄温度は好ましくは常温〜200℃である。
ここでいうアルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のことを指し、特に限定されるものではないが、ポリフェニレンサルファイド樹脂の重合工程において、硫化ナトリウムが好適に用いられる。
ここでいうアルカリ土塁金属とは、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、バリウム等のことを指し、特に限定されるものではないが、ポリフェニレンサルファイド樹脂の洗浄工程において、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が好適に用いられる。
ここでいうハロゲンとは、フッ素、臭素、ヨウ素のことを指すが、ポリフェニレンサルファイド樹脂の重合工程において、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o―ジクロロベンゼン等を用いる場合が多い。
アルカリ金属、アルカリ土塁金属、ハロゲン等の中でも、アルカリ土塁金属を含有することが好ましく、本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体は、発泡体100質量%に対し、カルシウム成分を30〜2000ppm(質量基準)含有していることが好ましい。
本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体がカルシウム成分を含有するためには、ポリフェニレンサルファイド発泡体中に、カルシウム成分を含有するカルボン酸塩、水酸化カルシウムなどを含有させればよい。
発泡体100質量%に対してカルシウム成分が30ppm(質量基準)より少ない場合は、黄色度が低くかつ白色度が高い良質な発泡体を得ることが困難となる可能性がある。
他方、発泡体100質量%に対してカルシウム成分が2000ppm(質量基準)より多い場合は、成形品の強度が低下したり、成形品の外観が低減したりする可能性がある。
カルシウム成分を含有するカルボン酸塩としては、例えば、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、フマル酸カルシウム、マレイン酸カルシウムなどが挙げられる。
生産性を考慮した場合、カルシウム成分を含有するカルボン酸塩は、好ましくは酢酸カルシウムである。
これらのカルシウム成分を含有するカルボン酸と水酸化カルシウムを2種併用することも可能である。
後者の方法で使用されるカルシウム成分は、特に制限されないが、好ましくは水酸化カルシウム、酢酸カルシウムなどである。
白金皿を純水で洗浄後、700℃で1時間焼成しデシケータ内で乾燥する。白金皿の質量を、0.1mgまで精秤した値を「A(g)」とする。
次に、本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体を白金皿の中に約5(g)採取して、白金皿と試料の合計量を化学天秤で0.1(mg)まで精秤した値を「B(g)」とする。
その後、ステンレスバットに発泡体の入った白金皿を乗せ、440℃にセットされた高温オーブン内に入れ5時間焼成し、その後オーブン内の温度を500℃に上昇させ、さらに5時間焼成を行う。
焼成の処理を行った後、300℃以下まで冷却した後、白金皿をデシケータ内で12時間保管する。
処理後、白金皿をマッフル炉から取り出し、試料中に黒色炭化物が完全になくなっていることを確認する。
なお、僅かでも黒色炭化物の存在が認められる場合、焼成をさらに実施する。
焼成終了後、マッフル炉から白金皿を取り出し、デシケータ内で30分冷却する。
その後、ホットプレートを用いて、1:1で純水と塩酸とが入った白金皿を、溶液の沸騰が確認される程度まで加熱する。蒸発乾固する手前で加熱を止め、白金皿を室温に冷却する。
その後、白金皿の内容物をイオン交換水で洗浄しながら数回に分け、50mlメスフラスコに入れ、メスフラスコの50ml標線に合わせる。
なお、濃度の値を判定する方法は、分析するカルシウム成分を含む標準液を用いて作成した検量線により、カルシウム成分濃度を算出する。もし、測定値が検量線を外れる場合は、試料液を「X(ml)」採取し、イオン交換水で希釈して「Y(ml)」にし、検量線の範囲に来るように濃度調整を行う。このように調整した試料液を用いて測定した値を「C(ppm)」とする。
以上の数値を用いて、カルシウム成分濃度(ppm)を算出する。
カルシウム成分濃度[ppm]=C(ppm)/(B−A)×50×Y/X
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂には、好ましくは架橋剤が添加される。
本発明で用いる架橋剤は、ポリフェニレンサルファイド樹脂同士を架橋できるものであれば特に制限されず、ここでいう架橋剤には疑似架橋的な機能を有する鎖延長剤も含まれる。
架橋剤としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂(熱可塑性樹脂)の官能基と当該架橋剤とが反応して、熱可塑性樹脂の網目構造が形成されるものが好ましいが、網目構造を分子間力等で疑似的に架橋していても良い。
例えば、架橋剤としてスチレン系オキサゾリン基含有ポリマー等を用いることができる。
架橋剤の添加量は、ポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して、0.5〜15質量部である。
架橋剤の添加量が少なすぎると気泡を微細化する効果が低く、逆に架橋剤の添加量が多すぎると均一に架橋させることが難しくなり、気泡が粗大となる。
気泡微細化効果と架橋の均一性を考慮すると、架橋剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0〜10質量部である。
(2.1)結晶化度
ポリフェニレンサルファイド樹脂は通常結晶化度が20%以上で使用される。
結晶化度が20%未満であると、耐熱性が低くなるためである。特に、回路基板としての用途では、発泡体の結晶化度が低いと、通常260℃程度の半田浴に浸漬する工程において変形が生じて使用できなくなる。したがって、発泡体の結晶化度は好ましくは20〜40%であることが好ましい。
これに対し、本発明にかかるポリフェニレンサルファイド発泡体は、2次成形(後述参照)前の発泡体の結晶化度が0%以上20%未満であり、このような特性を具備させることにより2次成形性を向上させている。
本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体を用いて得られた2次成形後の発泡体は、その2次成形時の熱や延伸配向によって結晶化度が20%以上となり、通常のポリフェニレンサルファイド発泡体と同様に、耐熱性などを兼ねそなえたポリフェニレンサルファイド発泡体となり好ましい。
本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体の発泡倍率は2倍以上である。
発泡倍率を2倍以上と規定したのは、発泡倍率が2倍未満では軽量化が実現できないためである。発泡倍率が2倍未満であると、特に、電気・電子部品で使用する場合に重要となる電気特性、誘電特性が悪くなる可能性がある。
さらに発泡体の発泡倍率が2倍以上であると、誘電率εは約1.8以下となり、ポリフェニレンサルファイド発泡体を回路基板としても実用化できる。
発泡倍率は好ましくは3倍以上である。
また、上限は特に限定するものではないが、特に問題なく製造可能な15倍程度が好ましい。
発泡体の気泡径に関しては、機械的強度および外観の点で、切断面の平均気泡径が100μm以下であることが好ましい。
平均気泡径が100μmを超えると機械的強度が低下するだけでなく、表面の凹凸が大きくなって外観が悪くなる可能性がある。
さらに、機械的強度の観点からは、平均気泡径は好ましくは20μm以下である。
下限は特に限定するものではないが、特に問題なく製造可能な平均気泡径として1μm程度が好ましい。
本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体を製造する方法は特に限定されないが、例えば以下のような方法を用いることが好ましい。
まず、始めに、ポリフェニレンサルファイド樹脂をシート状に成形し、結晶化度が10%未満の樹脂成形体を作製する。
その方法としては、樹脂を押出成形する際にダイス出口で樹脂成形体(例えばシート)の温度をTg(約80℃)以下に急冷する方法、樹脂をTg以下の温度に設定された金型に射出して、板状に射出成形する方法などが挙げられる。
発泡前の樹脂成形体の結晶化度を10%未満と規定したのは、結晶化度が10%を超えると、気泡となるガスを浸透させる工程(後述参照)においてガスの浸透量が不十分になり、発泡体が十分に膨らまないためである。
シート成形工程では、好ましくは、樹脂成形体の作製時に、架橋剤(B)をポリフェニレンサルファイド樹脂(A)に混練して分散させ、その後にTダイ押出時に強い剪断をかけ架橋剤の分散を促進させる(微細にする)。
次に、ポリフェニレンサルファイド樹脂(A)(またはポリフェニレンサルファイド樹脂(A)と架橋剤(B)との混合物)からなるシート状の樹脂成形体を、セパレータとを重ねて巻くことによりロール形成する。
その後、このロールを、不活性ガスで加圧した雰囲気中に保持してシート状の樹脂成形体に不活性ガスを含有(浸透)させ、その後不活性ガスの加圧雰囲気の圧力を開放してから、不活性ガスを含有させた当該樹脂成形体を、常圧下でかつ60〜120℃(60℃以上で120℃以下)で加熱して発泡させる。
加熱発泡時の加熱時間は60秒程度が適当である。
以上の工程の処理により、ポリフェニレンサルファイド発泡体を製造することができる。
しかし、微細な結晶化を実現させるためには高温で発泡させる必要があるが、発泡温度が高いと得られる発泡体の結晶化度は高くなる。
ポリフェニレンサルファイド樹脂はガス浸透時には結晶化せず、気泡核が生成されない。そのため、発泡温度が低いと発泡時に結晶化が起こらず、結晶化度は低いが、気泡が粗大化したシート状の樹脂成形体となってしまう。気泡が粗大になり過ぎると、気泡がクラックとなり、2次成形工程(後述参照)時に割れやすい。
架橋剤(B)を添加すれば、発泡温度が低くてもシート状の樹脂成形体中に架橋剤が微分散していることにより、結晶化が起こらなくても、架橋剤(B)が気泡の成長を妨げる。そのため、架橋剤(B)を添加すれば、平均気泡径が10μm以下の微細な気泡を有しかつ結晶化度が10%未満の発泡体を得ることができる。
一般的に、結晶化度が高いと2次成形工程時の伸びが低減し、結果として割れが発生するなど、2次成形性が低減する可能性がある。これに対し、架橋剤(B)を添加すれば、それにより得られる発泡体は、結晶化度が低く、気泡が微細であるため、結晶化度が10%未満の2次成形性に優れた発泡体となる。
ガス浸透工程で使用可能な不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴン、水素、メタン、フロン系ガスが挙げられる。
ガス浸透性(速度、溶解度)を考慮すると、当該不活性ガスは好ましくは二酸化炭素である。
ガスを浸透させる工程における圧力と時間は、例えば圧力が60kg/cm2程度であれば、8時間以上が好ましい。
樹脂成形体が飽和状態になるまでの不活性ガスの浸透時間および不活性ガス浸透量は、発泡させる樹脂の種類、不活性ガスの種類、浸透圧力およびシートの厚さによって異なる。
なお、この方法では、シート状の樹脂成形体とセパレータとからなるロールを、不活性ガスで加圧した雰囲気中に保持して当該樹脂成形体に不活性ガスを含有させる前に、樹脂成形体を有機溶剤に含有させてもよい。
当該有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、ギ酸エチル、アセトン 、酢酸、ジオキサン、m−クレゾール、アニリン、アクリロニトリル、フタル酸ジメチル 、ニトロエタン、ニトロメタン、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
これらのうちでも、取り扱い性および経済性の観点から、当該有機溶媒は好ましくはアセトンである。
ポリフェニレンサルファイド発泡体は、発泡工程後に必要に応じて所定の温度で冷却してもよい。
ポリフェニレンサルファイド発泡体は2次成形に供される。
かかる場合、2次成形の種類は特に限定されないが、例えば、絞り加工、プレス成形、真空成形、圧空成形等が挙げられる。
本発明に係る発泡体の形状、構造に限定はなく、使用目的などに応じて適宜設定することができ、例えば、平面視円形、平面視楕円形、平面視角形等の種々形状のカップ状、表面に複数の突起を設けた平板状、表面に複数の窪みを設けた平板状、波板状等に2次成形することができる。
本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体は、2次成形前の結晶化度が20%未満であるため、伸びが良く、2次成形性に優れている。
さらに、本発明のポリフェニレンサルファイド発泡体では、気泡径が細かいことから、粗大気泡時のような、気泡がクラックの要因とならず、2次成形性はさらに良くなる。
2次成形性が良くなると、形状の自由度が高まるだけでなく、深絞りの自由度が増したりするなどの、メリットが多くなる。
本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(1.1)実施例1
重量平均分子量78,400、分子量分布Mw/Mn4.0のポリフェニレンサルファイド樹脂(東レ製PY10)100質量部に対して、スチレン系オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒株式会社製エポクロスRPS−1005)を3.0質量部加え、215〜295℃に設定された同方向二軸押出機(テクノベル製KZW15−30MG)で溶融混錬した。なお各成分は、最終的に得られる発泡体100質量%に対してカルシウム成分150ppm(質量基準)を含有するように調整した。
その後、混錬したシートを幅120mmのTダイから押し出し、室温程度に設定されたロールで引き取り、母板となるシートを得た。
その後、前述の母板シートを圧力容器内に静置し、温度17℃のもと、容器内に5.5MPaの圧力で炭酸ガスを満たして48時間放置した。
所定時間経過後、母板シートを圧力容器から取り出し、80℃の温度に設定した恒温槽内で母板シートを1分間加熱して発泡させ、発泡体を得た。
なお、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnは、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて求めた。
装置名:SSC−7100(センシュー化学製)
カラム名:GPC3506(センシュー化学製)
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃ (検出器温度も210℃)
流量:1.0(ml/min)
実施例1のサンプル作製において恒温槽の温度を60℃に設定した。
それ以外は実施例1と同様にしてサンプル作製した。
(1.3)実施例3
実施例1のサンプル作製において恒温槽の温度を120℃に設定した。
それ以外は実施例1と同様にサンプル作製した。
実施例1のサンプル作製において、架橋剤としてのスチレン系オキサゾリン基含有ポリマーを添加しなかった。
それ以外は、実施例1と同様にサンプル作製した。
(1.5)実施例5
実施例1のサンプル作製において、架橋剤としてのスチレン系オキサゾリン基含有ポリマーの添加量を1%(質量部)にした。
それ以外は実施例1と同様にサンプル作製した。
(1.6)実施例6
実施例1のサンプル作製において、架橋剤としてのスチレン系オキサゾリン基含有ポリマーの添加量を10%(質量部)にした。
それ以外は実施例1と同様にサンプル作製した。
(1.7)参考例7
実施例1のサンプル作製において、架橋剤としてのスチレン系オキサゾリン基含有ポリマーの添加量を20%(質量部)にした。
それ以外は実施例1と同様にサンプル作製した。
実施例1のサンプル作製において、添加剤を、スチレン系オキサゾリン基含有ポリマーに代えて、変性ポリエチレン(BF、商品名:ボンドファースト7Mグレード、住友化学製)に変更した。
それ以外は実施例1と同様にサンプル作製した。
(1.9)実施例9
実施例1のサンプル作製において、添加剤を、スチレン系オキサゾリン基含有ポリマーに代えて、変性ポリエチレン(BF、商品名:ボンドファースト7Mグレード、住友化学製)に変更するとともに、その添加量を10%(質量部)にした。
それ以外は実施例1と同様にサンプル作製した。
実施例1のサンプル作製において恒温槽の温度を150℃に設定した。
それ以外は実施例1と同様にしてサンプル作製した。
実施例、参考例および比較例の各サンプルについて、下記の評価を行った。
各試験とその評価は以下の方法で行った。
発泡体の結晶化度を、示差走査熱量計を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、その熱分析結果に基づいて、以下の式により決定した。
なお、当該工程において測定対象とした発泡体は2次成形前の発泡体である。
χc={(ΔHm−ΔHc)/ΔH0}×100
ここで、χc:結晶化度[%]
ΔHm:結晶融解ピークの熱量[J/g]
ΔHc:結晶成長時の発熱ピーク[J/g]
H0:100%結晶の融解吸熱ピークの熱量(=146.2*)[J/g]
(*)Maemura E.et al.,Polym.Eng.Sci.,29(2),140(1989)
水中置換法により測定されたシート状の発泡体の比重(ρf)と、発泡前の樹脂の比重(ρs)との比ρs/ρfを算出して、これを発泡倍率とした。
ASTM D3576−77に準じて求めた。
具体的には、シート状の発泡体の断面のSEM写真を撮影し、SEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、直線が横切る気泡の弦の長さtを平均した。
写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求めた。
d=t/(0.616×M)
発泡体を、赤外線ヒータを用いて軟化する温度まで加熱した後、円形状の金型を用いてプレス成形し、平面視円形のカップ状光反射用成形体を得た。
その後、カップ状成形体の状態(外観)を観察し、下記の基準で評価した。
「◎」:非常に良好(カップの底面から側面にかけてのエッジ(稜線)がシャープであり、カップには割れもない)
「○」:良好(カップの底面から側面にかけてのエッジが多少丸みを帯びているものの、カップに割れはない)
「△」:実用上問題ない(カップの底面から側面にかけてのエッジが丸みを帯びているか、またはカップの底面にシワがある)
「×」:不良(カップの底面に割れがある)
表1に示すとおり、実施例1のサンプルは、発泡後の結晶化度が10%で、発泡倍率が2.5倍であり、平均気泡径が3μmであった。実施例1のサンプルでは、2次成形後の発泡体(2次成形体)には割れなどの発生もなく、2次成形性は非常に良好であった。実施例1のサンプルでは、2次成形体の結晶化度も25%であった。
実施例2〜3、5〜6、8〜9および参考例4、7のサンプルでも、発泡後の結晶化度が20%未満であり、2次成形性に優れていた。
これに対し、比較例1のサンプルでは、発泡後の結晶化度が22%と2次成形前の結晶化度が高く、伸びが優れずに2次成形性に劣り、割れが発生した。
以上から、発泡後でかつ2次成形前のポリフェニルサルファイド発泡体において、結晶化度を20%未満とすることは、2次成形性を向上させる上で有用であることがわかる。
Claims (6)
- 一般式(a)で示される繰り返し単位を有するポリフェニレンサルファイド樹脂から構成され、結晶化度が20%未満であるポリフェニレンサルファイド発泡体であって、
前記ポリフェニレンサルファイド樹脂には架橋剤が添加され、
前記ポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して、前記架橋剤の添加量が1.0〜10質量部であるポリフェニレンサルファイド発泡体。
−(Ar−S)− … (a)
[一般式(a)中、「Ar」はアリール基である。] - 請求項1に記載のポリフェニレンサルファイド発泡体において、
前記架橋剤がスチレン系オキサゾリン基含有ポリマーまたは変性ポリエチレンであるポリフェニレンサルファイド発泡体。 - 請求項1または2に記載のポリフェニレンサルファイド発泡体において、
発泡倍率が2倍以上であるポリフェニレンサルファイド発泡体。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリフェニレンサルファイド発泡体において、
平均気泡径が20μm以下であるポリフェニレンサルファイド発泡体。 - 一般式(a)で示される繰り返し単位を有するポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して、1.0〜10質量部の架橋剤を添加する工程と、
前記ポリフェニレンサルファイド樹脂と前記架橋剤との混合物を、不活性ガスにより加圧した雰囲気で保持し、前記混合物に前記不活性ガスを含有させる工程と、
前記不活性ガスを含有させた前記混合物を、常圧下でかつ60〜120℃の温度で加熱して発泡させる工程と、
を備えるポリフェニレンサルファイド発泡体の製造方法。
−(Ar−S)− … (a)
[一般式(a)中、「Ar」はアリール基である。] - 請求項5に記載のポリフェニレンサルファイド発泡体の製造方法において、
前記架橋剤がスチレン系オキサゾリン基含有ポリマーまたは変性ポリエチレンであるポリフェニレンサルファイド発泡体の製造方法。
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