JP5897961B2 - すべり軸受 - Google Patents
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Description
そこで本発明は固体潤滑剤を樹脂で保持した樹脂被覆層の耐熱性を向上し、耐焼付性に優れたすべり軸受を提供することを目的とする。
<1> 裏金鋼と前記裏金鋼上に設けられた軸受合金層とを有するすべり軸受基材上に、樹脂被覆層が設けられたすべり軸受であって、
前記樹脂被覆層は、バインダー樹脂、固体潤滑剤、ワックス、及び酸化防止剤を含むすべり軸受。
<2> 前記樹脂被覆層の厚さが3〜20μmである上記<1>に記載のすべり軸受。
<3> 前記固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、グラファイト、及びフッ素化合物からなる群より選択される1種以上を含む、上記<1>または<2>に記載のすべり軸受。
<4> 前記樹脂被覆層におけるワックス含有量がバインダー樹脂100重量部に対して0.1〜15重量部である、上記<1>〜<3>のいずれか1に記載のすべり軸受。
<5> 前記樹脂被覆層における酸化防止剤含有量がバインダー樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である、上記<1>〜<4>のいずれか1に記載のすべり軸受。
<6> 前記樹脂被覆層が二層構造であり、上層の樹脂被覆層は前記ワックス及び酸化防止剤を含み、下層の樹脂被覆層はワックスを含まない、上記<1>〜<5>のいずれか1に記載のすべり軸受。
<7> 前記下層の樹脂被覆層の厚さが0.1μm以上である上記<6>に記載のすべり軸受。
本発明にかかるすべり軸受は、裏金鋼と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層とを有するすべり軸受基材上に、樹脂被覆層を設けたすべり軸受である。
特に合成石油系のポリエチレンワックスや、ポリプロピレンワックスが、耐熱性の観点から好ましく用いられる。
なお、ワックスは1種で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系酸化防止剤としては、「Sumilizer MDP−S2」(商品名)(住友化学工業、2’−Methylenebis(6−tert−butyl−4−methylphenol))、「Sumilizer BBM−S」(商品名)(住友化学工業、4,4’−Butylidenebis(6−tert−butyl−3−methylphenol))、「Sumilizer WX−R WX−RA WX−RC」(商品名)(住友化学工業、4,4’−Thiobis(6−tert−butyl−3−methylphenol))、「Sumilizer NW(N)」(商品名)(住友化学工業、Alkylated bisphenol)、「Sumilizer GA−80」(商品名)(住友化学工業、3,9−Bis[2−〔3−(3−tert−butyl−4−hydroxy−5−methylphenyl)propionyloxy〕−1,1−dimethylethyl]−2,4,8,10−tetraoxaspiro[5・5]undecane)、「IRGANOX」(商品名)(BASF)、「IRGAMOD」(商品名)(BASF)等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、「Sumilizer 9A」(商品名)(住友化学工業、Alkylated diphenylamine)等が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、「Sumilizer MB」(商品名)(住友化学工業、2−Mercaptobenzimidazole)等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は1種で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
二層構造の場合は、上層(表面層)はワックス及び酸化防止剤を含み、下層(中間層)はワックスを含まないことが好ましい。ワックスは多量に添加すると、軸受合金層への密着性が低下するおそれがある。そのため、ワックスを含む上層を設けることにより耐熱性を向上しつつ、ワックスを含まない下層部を設けることにより、樹脂被覆層の軸受合金層への密着性を高めることができる。
また、バインダー樹脂及び固体潤滑剤は、上層と下層のいずれにも含まれることが好ましい。
上記樹脂被覆層は裏金鋼と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層とを有する軸受基材上に設けられる。ここで裏金鋼と軸受合金層には、当該分野において従来用いられる種々のものを、種々の条件で用いることができる。
前者の群の元素は主として強度及び耐摩耗性を付与し、後者の群の元素は主としてなじみ性を付与し、添加する元素の種類と量により軸受特性を発揮する。
また、アルミ合金鋳物であるAC8A、AC9Bなどの高Si−Al合金からなるピストンのスカート部を下地として、本発明の樹脂被覆層を使用し、その耐摩耗性を向上することもできる。
これらの元素において、軟質金属であるBiはなじみ性を発揮し、青銅の基本成分であるSnは高強度性と耐摩耗性を発揮し、その他の成分は補助的に特性を向上する。特に、Pは脱酸素、焼結促進、強化などに有効であり、Agは潤滑油又は銅中の不純物成分Sとの反応でしゅう動特性向上に有効な化合物を形成し、Inは耐食性と潤滑油の濡れ性を向上し、NiやAlは銅を強化する等の作用がある。
(a)裏金鋼に軸受合金層を形成する工程、
(b)切出しやプレス等で成形し、円筒状又は半割状のすべり軸受基材を作製する工程、
(c)すべり軸受基材の軸受合金層表面に、当該基材と樹脂被覆層との密着性を確保するための処理を施す工程、
(d)すべり軸受基材の軸受合金層上に、樹脂被覆層を塗布する工程、
(e)樹脂被覆層を乾燥する工程、
(f)樹脂被覆層を焼成する工程。
上記工程は順序が入れ替わったり、間に他の工程が入ってもよい。
また、厚さが不足する場合には、希釈剤中の固体潤滑剤とバインダー樹脂の濃度を高くするのではなく、複数回に渡って重ね塗りをする方法が好ましく用いられる。
この工程中、温度は上記範囲内で一定であっても昇温変化させてもよいが、ワックス等の添加成分の酸化を防ぐために、窒素ガスのような不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
また、下層塗布(d−1)後の乾燥工程(e−1)後、一度焼成工程(f−1)を経た後に、上層を塗布し(d−2)、乾燥工程(e−2)、焼成工程(f−2)を経てもよい。
ポリアミドイミド樹脂、固体潤滑剤、ワックス、及び酸化防止剤を表1に記載の組成比で混合し、十分に攪拌した。その後、N−メチル−2ピロリドン(NMP)を希釈剤として樹脂組成物の塗布液を調製した。
<バインダー樹脂>
ポリアミドイミド樹脂:HR−13NX(商品名)、東洋紡株式会社
<固体潤滑剤>
MoS2:M−5パウダー(商品名)(ダイゾー社)
グラファイト:CSSP(商品名)(セントラル硝子社)
フッ素化合物:フッ化黒鉛(セフボンCMA(商品名))(セントラル硝子社)
<ワックス>
分解型ポリプロピレンワックス:ハイワックスNP805(商品名)(三井化学社)
<酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤:IRGANOX 1330(商品名)(BASF社)
裏金鋼にアルミニウム系半割軸受合金を圧接し、切出しにより半割状の軸受基材を製造した。このとき、軸受基材全体の厚さは1.5mm、アルミニウム軸受合金層の厚さは0.3mmであった。軸受基材と樹脂被覆層との密着性を確保するため、軸受基材の油分を洗浄剤で脱脂後、軸受合金層表面を粗面化処理した。
その後軸受合金層上にエアスプレーにて樹脂被覆層の塗布液を塗布した。その後120℃で30分乾燥し、窒素ガス雰囲気で200℃で0.5時間焼成することにより、樹脂被覆層を形成した。焼成後の樹脂被覆層の厚さは10μmであった。
焼付試験は軸受焼付試験機を用いて以下の条件で行った。
回転数:10000rpm
潤滑油:0W−20
給油温度:140℃
荷重:3分毎に3kNずつ荷重漸増
また、ワックスの配合量がポリアミドイミド樹脂(PAI)100重量部に対して2重量部と少量であっても、焼付面圧の顕著な向上が認められた(実施例1、比較例1)。高温となる焼成工程においてもワックスが分解しなかったことを意味するものであり、酸化防止剤の添加による効果であるものと考えられる。
以上から、本発明において固体潤滑剤とバインダー樹脂を含む被覆層に、ワックスと酸化防止剤を添加することにより、耐焼付性が著しく向上することが確認された。
Claims (3)
- 裏金鋼と前記裏金鋼上に設けられた軸受合金層とを有するすべり軸受基材上に、樹脂被覆層が設けられたすべり軸受であって、
前記樹脂被覆層は、バインダー樹脂、固体潤滑剤、ワックス、及び酸化防止剤を含み、
前記樹脂被覆層が二層構造であり、上層の樹脂被覆層は前記ワックス及び酸化防止剤を含み、下層の樹脂被覆層はワックスを含まないすべり軸受。 - 前記樹脂被覆層の厚さが3〜20μmである請求項1に記載のすべり軸受。
- 前記下層の樹脂被覆層の厚さが0.1μm以上である請求項1または2に記載のすべり軸受。
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