JP5896511B2 - 標的物質と相互作用するタンパク質の検出方法 - Google Patents
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Description
(1)候補タンパク質をコードするcDNAライブラリーを逆転写してmRNAライブラリーを調製する転写工程、
(2)前記転写工程で調製されたmRNAライブラリーからmRNA-タンパク質対応付け分子ライブラリーを調製する対応付け工程、
(3)前記対応付け工程で調製されたmRNA-タンパク質対応付け分子ライブラリーから、標的物質と相互作用するmRNA-タンパク質対応付け分子を選択する選択工程、及び、
(4)前記選択工程で選択されたmRNA-タンパク質対応付け分子のmRNA部分に基づく核酸増幅により、候補タンパク質をコードするcDNAライブラリーを調製する増幅工程、
(5)増幅工程で調製されたcDNAライブラリーを用いて工程(1)〜(4)を繰り返すことを含む、標的物質と相互作用するタンパク質の検出方法であって、
(a)最初のcDNAライブラリーの調製及び繰返しの増幅工程におけるcDNAライブラリーの調製のうち複数回のcDNAライブリーの調製において、その調製回に特異的な配列を有するプライマーを用いて前記cDNAライブラリーを調製し、
(b)前記調製回に特異的な配列を有するプライマーを用いて調製された複数回分のcDNAライブラリーを混合し、混合されたcDNAライブラリーについて配列決定を行い、
(c)決定された配列を用いて、前記調製回に特異的な配列に基づいて、調製回毎における、同一候補タンパク質をコードする分子の数を測定し、
(d)前記調製回に応じて有意に増加している分子にコードされる候補タンパク質を、前記標的物質と相互作用するタンパク質として検出する
ことを含む前記方法。
調製回に特異的な配列の長さは通常には4〜10塩基長である。
前記プライマーは、通常には、調製回に特異的な配列を5'末端に有する。
工程(b)で混合するcDNAライブラリーの数は通常には3以上である。
工程(b)で混合するcDNAライブラリーが最初のcDNAライブラリーを含んでもよい。
工程(d)において分子の増加を統計学的方法により評価することが好ましい。
標的物質は、例えば、タンパク質である。タンパク質の場合は、タンパク質間相互作用を検出できる。
以下、工程毎に説明する。
本工程は、候補タンパク質をコードするcDNAライブラリーを逆転写してmRNAライブラリーを調製する転写工程である。
本工程は、転写工程で調製されたmRNAライブラリーからmRNA-タンパク質対応付け分子ライブラリーを調製する対応付け工程である。この工程は、特許文献2又は特許文献3に記載の方法により行なうことができる。以下、具体例を説明する。
本明細書において、対応付け分子(IVVと同義である)とは、表現型と遺伝子型と対応付ける分子を意味する。対応付け分子は、遺伝子型を反映する塩基配列を有する核酸を含む
遺伝子型分子と、表現型の発現に関与するタンパク質を含む表現型分子とが結合してなる。遺伝子型分子は、遺伝子型を反映する塩基配列を、その塩基配列が翻訳され得るような形態で有するコード分子と、スペーサー部とが結合してなる。このような対応付け分子は、例えば、特許文献2に記載されているので特許文献2を参照して説明する。
スペーサー分子は、核酸の3'末端に結合できるドナー領域と、ドナー領域に結合した、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域と、PEG領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを含む。
Liu, R., Barrick, E., Szostak, J.W., Roberts, R.W. (2000) Methods in Enzymology,
vol. 318, 268-293)、分子量1,000以上、より好ましくは2,000以上のPEGを用いると、対応付け翻訳のみで高効率の対応付けができるため、翻訳の後処理が必要なくなる。また、ポリエチレングリコールの分子量が増えると、遺伝子型分子の安定性が増す傾向があり、特に分子量1,000以上で良好であり、分子量400以下ではDNAスペーサーと性質がそれほどかわらず不安定となることがある。
コード分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5'非翻訳領域と、5'非翻訳領域の3'側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3'側に結合した、ポリA配列及び、必要によりその5'側に翻訳増強配列(例えば制限酵素XhoIが認識する配列)を含む3'末端領域を含む核酸である。コード分子は、前記転写工程で調製されたmRNAライブラリーを構成する。
からなる5'UTR、および、ポリA配列を含む3'末端領域の組み合わせがある。3'末端領域のポリA配列の効果は通常には10残基以下で発揮される。5'UTRの転写プロモーターはT7/T3あるいはSP6などが利用でき、特に制限はない。好ましくはSP6であり、特に、翻訳のエンハンサー配列としてオメガ配列やオメガ配列の一部を含む配列(Ω様配列)を利用する場合はSP6を用いることが特に好ましい。翻訳エンハンサーは好ましくはオメガ配列の一部であり、オメガ配列の一部としては、TMVのオメガ配列(Gallie D.R., Walbot V. (1992)
Nucleic Acids Res., vol. 20, 4631-4638)の一部(O29)を含んだものが好ましい。
上記の翻訳効率に関し効果のある構成は、対応付け効率にも有効である。
遺伝子型分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5'非翻訳領域と、5'非翻訳領域の3'側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3'側に結合した、ポリA配列を含む3'末端領域を含む核酸であるコード分子の3'末端と、スペーサー分子のドナー領域とが結合してなる。
す。アクセプターにあたるコード部の3'末端領域において、少なくとも2残基以上、好ましくは3残基以上、さらに好ましくは6〜8残基以上のDNAあるいは/またはRNAのポリA配列があること、さらに、5'UTRの翻訳エンハンサーとしては、オメガ配列の部分配列(O29;
特許文献2図10)が好ましく、スペーサー部のドナー領域としては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)あるいは2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。このことによって、RNAリガーゼを用いることでDNAリガーゼのもつ問題点を回避し、かつ効率を60〜80%に保つことができる。
mRNA-タンパク質対応付け分子は、上記の遺伝子型分子を、ペプチド転移反応で、遺伝子型分子内のORF領域によりコードされたタンパク質である表現型分子と連結してなるものである。
405; Roberts R.W, Szostak J.W. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297)では
安定に確認されており、さらに小麦胚芽の系(WO 02/46395)ではより安定に確認されている。
本工程は、対応付け工程で調製されたmRNA-タンパク質対応付け分子ライブラリーから、標的物質と相互作用するmRNA-タンパク質対応付け分子を選択する選択工程である。
本工程は、選択工程で選択されたmRNA-タンパク質対応付け分子のmRNA部分に基づく核酸増幅により、候補タンパク質をコードするcDNAライブラリーを調製する増幅工程である。増幅の方法は、対応付け分子のmRNA部分に基づく核酸増幅が可能な限り特に限定されず、公知の方法に従って行うことができる。例えば、RT-PCRにより逆転写及び増幅をする方法が挙げられる。
本発明では、調製回に特異的な配列を有するプライマーを用いて調製されたcDNAライブラリーを混合し、混合されたcDNAライブラリーの配列決定を行う。
とが好ましい。すなわち、cDNAのライブラリーを混合する量比において、早い調製回の量を次の調製回の量以上とすることが好ましい。調整回ごとのプレイの濃縮率は通常10〜100倍程度の範囲に収まるため、通常は配列決定を行う規模の大きさを考慮しながら、先の調製回の量を次の調製回の量の1〜100倍とすることが好ましい。このようにすることにより解析を効率的に行うことができる。
IVV法によるセレクション過程を4ラウンド繰り返し、Irf7(Interferon regulatory factor 7)と相互作用するタンパク質をマウスの脾臓由来のランダムフラグメントライブラリから抽出する試みを行った。
・プレイライブラリーの準備
mRNAディスプレイに用いるRNAライブラリーは、以前に報告された方法 (Miyamoto-Sato, E., et al. (2005) Genome Res, 15, 710-717.; Miyamoto-Sato, E., et al. (2003) Nucleic Acids Res, 31, e78.)に従って、C57BL/6マウスから抽出したpoly(A)+ mRNAから作成した。まず、poly(A)+mRNAのランダムプライミングを行い、ライゲーションを介した増幅、そしてin vitro発現を行うためのマルチステップPCRを行った。結果のPCR産物(SP6-Ω-T7-Flagment-Kpn1-FLAG-A[8])は QIAquick PCR Purification Kit (Qiagen)で精製し、m7G(5')ppp(5')G RNA Capping Analog (Ambion)と共に RiboMAX Large Scale RNA Production System-SP6 (Promega)を用いて転写した。RNeasy96BioRobot8000Kit (Qiagen)を用いてmRNAの精製を行った後、PEG-Puroスペーサーを、T4RNAリガーゼ(Promega)を用いてmRNAの3'末端にライゲーションし、再び精製した。
ベイト用のDNAは、以前の報告に従い準備した(Miyamoto-Sato, E., et al. (2005) Genome Res, 15, 710-717.; Miyamoto-Sato, E., et al. (2003) Nucleic Acids Res, 31, e78.)。マルチステップPCRによって 作成されたcDNAコンストラクトの構造 (SP6-(O')-T7-Irf7-CBP-zz-His) には、マウスのIrf7のコード領域全体が含まれている。QIAquick PCR Purification Kit (Qiagen) を用いて生成されたPCR産物は、RiboMax Large Scale RNA Production System-SP6 (Promega)を用いて m7G(5')ppp(5')G RNA Capping Analogと共にmRNAに転写され、RNeasy96BioRobot8000Kit (Qiagen) を用いて精製された。
プレイmRNAライブラリーとベイトのIrf7のmRNAは、小麦胚芽抽出 (Promega) を用いて無細胞翻訳系にて共翻訳した。このとき、mRNAの3’末端に付加してあるPuromycinは、mRNAから翻訳されたタンパク質のC末端と共有結合で連結され、IVV分子が完成する。その後、タグ付けされたベイトタンパク質を用いた1段階(4ラウンド目のみ2段階)の精製(Rigaut, G., et al. (1999) Nat Biotechnol, 17, 1030-1032.)を行った。各セレクションラウンドの後、プレイのmRNAはRT-PCRによって増幅され、その後転写・翻訳反応が行われ、次のラウンドのセレクションが再び行われる。ネガティブコントロール実験は、ベイトタンパク質が不在であること以外は同様の条件で行われた。
454 GS FLXによるシーケンシングの後に配列の由来ラウンドを見分けるために、初期〜4thラウンドのmRNAライブラリーのRT-PCRによる増幅においては、次の表1のように4塩基のユニーク配列を持つバーコードプライマーを使用した。
454(Roche) シーケンサーにかけ、配列決定を行った。
63,306、イニシャルライブラリにいて102,092リードがゲノムに適正にヒットすることが確認され、それらを続くインシリコ解析に用いることとした。
・ゲノムへのマッピングによる領域のカウントと統計解析
最初に、cDNA配列の端に存在するラウンド特異的な4塩基の部位のデコードを行い、各リードがどのラウンド由来のものであるのかを判定した。その後、処理されたリードはマスクされたゲノム配列 に対してBLATを用いて次の条件の下でマッピングを行った: match length ≧30bp and identity ≧95%。マップされたリードのそれぞれのセレクションラウンドにおける頻度は、ゲノム上の各塩基ポジションについて計算され、初期ライブラリーとネガティブコントロールの結果に対して比較が行われた。さらに、初期ライブラリーおよびネガティブコントロールよりも高い頻度を示したポジションについては、統計的検定が行われたFisherの正確確率検定)。統計的に有意性(p<0.001)のある差が、初期ライブラリーとネガティブコントロールと比べて認められた場合、その領域をベイト特異的に濃縮された領域とみなした。有意な濃縮を示した領域のうち、連続しているものは一つに統合され、一つの相互作用領域(Interaction region; IR)とみなした。
本手法の定量性能を確認するために、複数のラウンドでリードが得られており、RefSeq領域との重なりが認められた21個の領域をランダムに抽出し、下記のようにリアルタイムPCRアッセイを行った。まず、ゲノム上でのリードの頻度がセレクションラウンドごとに計算された。これらの頻度はゲノム配列にマッピングされたリードの数に基づく。図2は、シーケンサー (図2(左)) およびリアルタイムPCRで定量された分子数 (図2(右)) の間の比較の例を示している。目視においては、本手法によるデータはリアルタイムPCRによる定量結果とよく符合した結果を見せたが、さらなる確証を得るために、それらの二つのデータの間の相関係数を計算し (図3)、それが統計的に有意に高いことを確認した (Pearson's correlation coefficient = 0.92)。また、本手法で陽性と判定されたもののうち、87.5%(7/8)がリアルタイムPCRでも陽性と判定され、リアルタイムPCRで偽陽性と判定されたもののうち、本手法で陽性であると判定されたものは、8%(1/12)のみであることを確認した。
リアルタイムPCRアッセイは7300 Real-Time PCR System (Applied Biosystems)を用い、標準プロトコルに従って行った。その際、プレイライブラリー由来の5ngのDNAテンプレート、10μM・0.5μlのプライマー(フォワード側、リバース側それぞれ)、12.5μlのPower SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems) を含む25μlのリアクションmixが使用された。サンプルの測定は2回ずつ行われ、その数値の平均を採用した。
上に示したように、本手法で得られたリード数とリアルタイムPCRで計られた分子数の間に有意な相関が確認された。したがって、本手法の定量性能を生かして、システマティックに統計的に有意な濃縮領域を決定した。濃縮の統計的な有意性は2×2分割表に対するFisherの正確確率検定を用いて行った。それぞれの分割表は、ある領域についてのあるセレクションラウンドにおけるベイト(+)、ベイト(-)実験で得られたリード数、および各実験でよって得られた総リード数から成り立っている。加えて、イニシャルライブラリとあるラウンドとの比較も同様の方法で行われた。結果として、p-value<0.001の条件でゲノム上の466個のプレイ領域が決定された。
・偽陽性の軽減効果
上記のランダムに選択した領域(ただし、複数のラウンドでリードが得られていて、RefSeq領域にプライマーの設計が可能という条件付き)のリアルタイムPCRの判定結果に基づけば、42.9%(9/21)がライブラリーにおける陽性となる領域の割合と考えることができ、ラウンド毎のシーケンスの結果をリアルタイムPCRで判定する場合(従来法)の結果として考えることが出来る。本実施例では、本発明方法(IVV-HiTSeq法)を介して陽性と判断されたもののうち、定量リアルタイムPCRでも陽性と判断されたものの割合は87.5% (=7/8) であった。したがって、IVV-HiTSeq法を用いることで従来法と比較して、高い信頼性を持って相互作用分子を特定することができると考えられる。
Irf7をベイトとして同一ライブラリーに対して、ラウンド毎の増幅物を用いる配列決定法で決定した740配列のうち、640配列(86.5%)がIVV-HiTSeq法によっても得られていたことから、従来法による結果の殆どを包含していることが示された(表2、図4)。
に高くなっていることを示している。
Claims (8)
- (1)候補タンパク質をコードするcDNAライブラリーを逆転写してmRNAライブラリーを調製する転写工程、
(2)前記転写工程で調製されたmRNAライブラリーからmRNA-タンパク質対応付け分子ライブラリーを調製する対応付け工程、
(3)前記対応付け工程で調製されたmRNA-タンパク質対応付け分子ライブラリーから、標的物質と相互作用するmRNA-タンパク質対応付け分子を選択する選択工程、及び、
(4)前記選択工程で選択されたmRNA-タンパク質対応付け分子のmRNA部分に基づく核酸増幅により、候補タンパク質をコードするcDNAライブラリーを調製する増幅工程、
(5)増幅工程で調製されたcDNAライブラリーを用いて工程(1)〜(4)を繰り返すことを含む、標的物質と相互作用するタンパク質の検出方法であって、
(a)最初のcDNAライブラリーの調製及び繰返しの増幅工程におけるcDNAライブラリーの調製のうち複数回のcDNAライブリーの調製において、その調製回に特異的な配列を有するプライマーを用いて前記cDNAライブラリーを調製し、
(b)前記調製回に特異的な配列を有するプライマーを用いて調製された複数回分のcDNAライブラリーを混合し、混合されたcDNAライブラリーについて配列決定を行い、
(c)決定された配列を用いて、前記調製回に特異的な配列に基づいて、調製回毎における、同一候補タンパク質をコードする分子の数を測定し、
(d)前記調製回に応じて有意に増加している分子にコードされる候補タンパク質を、前記標的物質と相互作用するタンパク質として検出する
ことを含む前記方法。 - 工程(b)におけるcDNAライブラリーの混合比において、早い調製回の量を次の調製回の量以上とする請求項1に記載の方法。
- 前記調製回に特異的な配列の長さが4〜10塩基長である請求項1又は2に記載の方法。
- 前記プライマーが前記調製回に特異的な配列を5'末端に有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(b)で混合するcDNAライブラリーの数が3以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(b)で混合するcDNAライブラリーが最初のcDNAライブラリーを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(d)において分子の増加を統計学的方法により評価することを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法
- 前記標的物質がタンパク質である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
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