JP5892366B2 - 画像消去装置及び画像消去方法 - Google Patents
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Description
本発明の画像消去装置は、断面がライン状のレーザ光を射出する光源と、光学系と、走査手段とを少なくとも備え、更に必要に応じて、照射エネルギー量制御手段と、その他の手段とを備える。
本発明の画像消去方法は、変換する工程と、走査する工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の画像消去装置及び画像消去方法においては、前記光源から射出された断面がライン状のレーザ光を幅方向に収束する収束光に変換し、該収束光に変換されたレーザ光を幅方向に偏向して熱可逆記録媒体上で走査することにより、該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する。
本発明の画像消去方法は、本発明の画像消去装置により好適に実施することができ、前記変換する工程は前記光学系により行うことができ、前記走査する工程は前記走査手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
前記光源は、一例として、一軸方向に並べて配置された(1次元配列された)複数の半導体レーザを含む1次元レーザアレイであり、断面がライン状のレーザ光を射出する。
前記1次元レーザアレイは、3個〜300個の半導体レーザを含んでいることが好ましく、10個〜100個がより好ましい。
前記半導体レーザの数が少ないと、照射パワーを上げることができないことがあり、多すぎると、1次元レーザアレイを冷却するための大規模の冷却装置が必要となることがある。
前記1次元レーザアレイの発光部の長手方向の長さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm〜50mmであることが好ましく、3mm〜15mmであることがより好ましい。前記1次元レーザアレイの発光部の長手方向の長さが、1mm未満であると、照射パワーを上げることができなくなることがあり、50mmを超えると、1次元レーザアレイを冷却するための大規模な冷却装置が必要となり、装置コストが上がることがある。
ここで、前記1次元レーザアレイの発光部とは、1次元レーザアレイにおいて有効かつ実際に発光している部分を意味する。
なお、前記光源は、断面がライン状のレーザ光を射出するものであれば、例えば2次元配列された複数の半導体レーザを含む2次元レーザアレイであっても良い。
また、前記光源は、半導体レーザに代えて、固体レーザ、ファイバーレーザ、CO2レーザなどを含んでいても良い。
前記レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では熱可逆記録媒体の画像記録時のコントラストが低下したり、熱可逆記録媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、熱可逆記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また、熱可逆記録媒体に添加される光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度が必要とされ、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。このため、レーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
前記変換する工程は、前記1次元レーザアレイから射出されたライン状のレーザ光(以下、ライン状ビームと称する)を、幅方向(短手方向)に収束する収束光に変換する工程であり、前記光学系により実施することができる。なお、「幅方向」は、複数の半導体レーザの配列方向に直交する方向に平行な方向である。
前記光学系は、少なくとも幅方向収束手段を有し、更に必要に応じて、幅方向平行化手段、長さ方向光分布均一化手段及び長さ方向平行化手段の少なくとも1つを有する。
すなわち、少なくとも1つのシリンドリカルレンズが、前記走査手段に向けて射出されるライン状ビームが幅方向に収束するように配置される。この場合、その少なくとも1つのシリンドリカルレンズの位置は、その焦点距離に応じて決定される。
前記幅方向平行化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1枚の片面凸型のシリンドリカルレンズ、複数の凸型シリンドリカルレンズ、凹型シリンドリカルレンズの組み合わせなどが挙げられる。
前記1次元レーザアレイからのライン状ビームは長さ方向(長手方向)に比べて幅方向の拡散角が大きいため、前記幅方向平行化手段が前記1次元レーザアレイの射出面に近接して配置されていることが好ましい。この場合、ライン状ビームの幅方向の広がりを極力抑制できるとともに、レンズを極力小さくすることができる。なお、「長さ方向」は、複数の半導体レーザの配列方向に平行な方向である。
前記長さ方向光分布均一化手段は、前記幅方向平行化手段と前記幅方向収束手段との間のライン状ビームの光路上に配置されることが好ましい。
前記長さ方向光分布均一化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球面レンズ、非球面シリンドリカルレンズの組合せで実現可能である。前記非球面シリンドリカルレンズ(長さ方向)としては、例えば、マイクロレンズアレイ、凸型レンズアレイ、凹レンズアレイ、フレネルレンズなどが挙げられる。前記のレンズアレイとは、長さ方向に凸型又は、凹型のレンズが複数並んだレンズを示す。前記非球面シリンドリカルレンズにより前記ライン状ビームを長さ方向に拡散することで均一な光分布を得ることが可能となる。
前記長さ方向平行化手段は、前記長さ方向光分布均一化手段と前記走査手段との間の前記ライン状ビームの光路上に配置されることが好ましい。
前記長さ方向平行化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球面レンズで実現可能である。
すなわち、この球面レンズが、前記走査手段に向けて射出されるライン状ビームを長さ方向に平行化するように配置される。この場合、球面レンズの位置は、その焦点距離に応じて決定される。
前記ライン状ビームの長さは、前記1次元レーザアレイの発光部の長手方向の長さよりも2倍以上長いことが好ましく、3倍以上長いことがより好ましい。前記ライン状ビームの長さが前記1次元レーザアレイの発光部の長手方向の長さよりも短いと、長い消去領域を確保するには1次元レーザアレイの光源を長くする必要があり、装置のコスト及び装置サイズが大きくなることがある。
前記走査手段としては、ライン状ビームを幅方向(一軸方向)に偏向することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば一軸のガルバノミラー、ポリゴンミラー、ステッピングモータミラーなどが挙げられる。
前記一軸のガルバノミラーやステッピングモータミラーでは速度調整を細かく制御することが可能であり、前記ステッピングモータミラーは前記一軸のガルバノミラーに比べて低価格であり、前記ポリゴンミラーでは速度調整は困難であるが低価格である。
前記容器としては、例えばダンボール、プラスチックコンテナ、箱などが挙げられる。
ここで、熱可逆記録媒体に入射する直前のビーム幅をW1、熱可逆記録媒体上でのビーム幅をW1(θ)とすると、W1(θ)=W1/cosθである。
この場合、W1はθが大きくなるほど大きくなり、cosθはθの減少関数である。
すなわち、熱可逆記録媒体上でのビーム幅は、上記光路長が長くなるほど(θが大きくなるほど)、著しく大きくなる。すなわち、ライン状ビームの入射角度の変化による熱可逆記録媒体上でのビーム幅の変化が著しく大きい。
ここで、熱可逆記録媒体に入射する直前のビーム幅をW2、熱可逆記録媒体上でのビーム幅をW2(θ)とすると、W2(θ)=W2/cosθである。
この場合、W2は、一定であり、cosθはθの減少関数である。
すなわち、熱可逆記録媒体上でのビーム幅は、上記光路長が長くなるほど(θが大きくなるほど)、大きくなる。すなわち、ライン状ビームの入射角度の変化による熱可逆記録媒体上でのビーム幅の変化が大きい。
ここで、熱可逆記録媒体に入射する直前のビーム幅をW3、熱可逆記録媒体上でのビーム幅をW3(θ)とすると、W3(θ)=W3/cosθである。
この場合、W3はθが大きくなるほど小さくなり、cosθはθの減少関数である。
すなわち、熱可逆記録媒体上でのビーム幅は、上記光路長の変化による変化(θの変化による変化)が小さい。すなわち、ライン状ビームの入射角度の変化による熱可逆記録媒体上でのビーム幅の変化が小さい。
この場合、熱可逆記録媒体上でのライン状ビームの照射面積(ビーム幅×ビーム長)、すなわち照射エネルギー密度がライン状ビームの入射角度の変化によって変化してしまう。
従って、熱可逆記録媒体の全面に対して、より一層均一な消去を行うためには、前記走査手段に入射させるライン状ビームを長さ方向に平行化することが望ましい。
前記照射エネルギー量制御手段としては、前記熱可逆記録媒体又はその周囲の温度を計測する温度センサと、該温度センサの計測値に基づいて前記1次元レーザアレイの出力を調整する出力調整装置とを有するものが挙げられる。なお、前記照射エネルギー量制御手段は、前記出力調整装置に代えて、例えば前記温度センサの計測値に基づいて前記熱可逆記録媒体の加熱時間を調整する加熱時間調整装置を有していても良い。
この場合、前記熱可逆記録媒体の温度に関わらず、画像の消去により適した大きさの照射エネルギーを該熱可逆記録媒体に照射することができる。
この場合、前記熱可逆記録媒体と前記走査手段との距離に応じて該熱可逆記録媒体上でのビーム幅が変化するので、このビーム幅の変化を考慮して照射エネルギー量を制御でき、この結果、熱可逆記録媒体と前記走査手段との距離に関わらず、該熱可逆記録媒体に画像の消去により適した大きさの照射エネルギーを照射することができる。
なお、照射エネルギー量制御手段は、前記温度センサ及び前記距離センサを有していても良い。この場合、前記温度センサ及び前記距離センサの計測値に基づいて前記出力調整装置により前記1次元レーザアレイの出力を調整することとしても良いし、前記温度センサ及び前記距離センサの計測値に基づいて前記加熱時間度調整装置により前記熱可逆記録媒体の加熱時間を調整することとしても良い。
これにより、仮にライン状ビームの入射角度の変化により熱可逆記録媒体上でのビーム照射面積が変化したとしても、該ライン状ビームの走査位置に関わらず該熱可逆記録媒体上における照射エネルギー密度を均一化することができる。この結果、熱可逆記録媒体の全面に対して均一な消去を行うことができる。
なお、前記照射エネルギー量制御手段は、前記出力装置に代えて、前記ライン状ビームの入射角度に応じて前記熱可逆記録媒体の加熱時間を調整する加熱時間調整装置を有していても良い。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば制御工程などが挙げられる。
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
前記熱可逆記録媒体は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化するものである。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダー層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。熱可逆記録層に光熱変換材料を添加することで、光熱変換層を省略して第1及び第2の熱可逆記録層を1つにすることも可能である。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、前記光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
また、図1(B)に示されるように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有する態様がある。
また、図1(C)に示されるように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、紫外線吸収層107と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有してなり、支持体101の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層108を有する態様がある。
なお、図示を省略しているが、図1(A)の第2の熱可逆記録層104上、図1(B)の第2の酸素バリア層106上、図1(C)の第2の酸素バリア層106上の最表層に保護層を形成してもよい。
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)は、いずれも電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可逆記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量としては、特に制限はないが、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記熱可逆記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記熱可逆記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
なお、前記熱可逆記録層に光熱変換材料を添加することも可能であり、その場合、光熱変換層、バリア層を省略でき、前記第1及び第2の熱可逆記録層を1つにすることも可能である。
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。また熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性のよい層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nmの波長範囲内に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系化合物などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系化合物が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜20μmであることが好ましい。
第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層(以下、単に酸素バリア層と称することがある)としては、熱可逆記録層に酸素が進入することを防ぐことにより、前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止する目的で、第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層の上下に酸素バリア層を設けることが好ましい。即ち、支持体と第1の熱可逆記録層との間に第1の酸素バリア層を設け、第2の熱可逆記録層上に第2の酸素バリア層を設けることが好ましい。
前記酸素バリア層の具体例としては、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが好ましい。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
前記酸素バリア層は前記熱可逆記録層の下側又は支持体の裏面など、前記酸素バリア層で熱可逆記録層を挟み込むように設けることもできる。これにより、熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光劣化をより少なくすることができる。
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の厚みは、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。これより薄いと酸素バリアが不完全であり、厚いと透明性が低下するので好ましくない。
前記酸素バリア層と下層の間には、接着層を設けてもよい。前記接着層の形成方法は、特に制限なく通常のコーティング法、ラミネート法等を挙げることができる。接着層の厚みは特に制限ないが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記熱可逆記録層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
本発明の熱可逆記録媒体には、前記熱可逆記録層を保護する目的で該熱可逆記録層上に保護層を設けることが好ましい。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
前記保護層は、バインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量としては、特に制限はないが、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
前記光源としては、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
なお、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
前記熱硬化性樹脂は架橋されていることが好ましい。従って熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像記録・消去を行っても熱可逆記録媒体の劣化が抑えることができる。
前記硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、前記熱可逆記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが特に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像記録と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
前記熱可逆記録媒体としては、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の紫外線による着色及び光劣化による消え残りを防止する目的で、紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。紫外線吸収層は390nm以下の紫外線を吸収するように、紫外線吸収層の厚みを適宜選択することが好ましい。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。従って紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、前記熱可逆記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による熱可逆記録層の変質防止、保護層中の添加剤の熱可逆記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と熱可逆記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層としては、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有するものが挙げられる。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば10質量%〜80質量%が好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記熱可逆記録層、又は前記紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが特に好ましい。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、カール及び帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層としては、特に制限はなく、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有するものが挙げられる。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、又は前記保護層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
前記支持体の前記記録層形成面の反対面に、接着層又は粘着層を設けることにより、前記熱可逆記録媒体を、熱可逆記録ラベルの態様で得ることができる。
前記接着層及び前記粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて一般的に使われているものの中から適宜選択することができる。
このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手のカードにも好適である。
前記熱可逆記録媒体には、視認性を向上させる目的で、前記支持体と前記記録層との間に着色層を設けてもよい。
前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し乾燥する、あるいは単に、着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられる。
前記樹脂バインダーとしては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂などが挙げられる。
前記カラー印刷層の厚みとしては、特に制限はなく、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
また、前記熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部若しくは全面、又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ等によって任意の絵柄などを形成した着色層を設けてもよく、更に前記着色層上の一部分又は全面に、硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。
前記絵柄としては、例えば、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。
また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のために、レリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。
また、カード状に加工されたものについては、プリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカード等へ応用することができる。
更に、カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは、値札等に利用することができ、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは、工程管理や出荷指示書、チケット等に使用することができる。
ラベル状のものは、貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは、記録する範囲が広くなるため、一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
前記熱可逆記録部材は、可逆表示可能な前記可逆性感熱記録層(記録層)と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を前記記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えたときには、熱可逆記録部の表示を書き換えることで、前記熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
なお、前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RF−IDタグなどが好適に挙げられる。工程管理、物品管理等に使用する場合には、RF−IDタグが特に好適に使用可能である。
なお、前記RF−IDタグは、ICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
図8は、RF−IDタグの概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85は、ICチップ81と、該ICチップ81に接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は、記憶部、電源調整部、送信部、及び受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグ85と、リーダライタとのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−ID85のアンテナが、リーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式との2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ85内のICチップ81が起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグ85から信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
前記RF−IDタグと前記熱可逆記録媒体とを貼り合わせるためには、公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
納品された原材料が入っているコンテナが搬送される工程ラインには、搬送されながら表示部に可視画像を非接触で書き込む手段と、非接触で消去する手段とが備えられ、更に、電磁波の発信によりコンテナに備えられたRF−IDの情報の読み取り、書き換えを非接触で行うためのリーダライタが備えられている。また、更に、この工程ラインには、コンテナが搬送されながら非接触にて読み書きされるその個別情報を利用して、物流ライン上で自動的に分岐や計量、管理などを行う制御手段が備えられている。
このコンテナに添付されたRF−ID付き熱可逆記録媒体に対して、物品名と数量などの情報を該熱可逆記録媒体と該RF−IDタグとに記録し、検品が実施される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに情報が記録され、加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに記録され、商品出荷後に回収したコンテナから出荷情報を読み取り、再度納品用のコンテナとRF−ID付き熱可逆記録媒体として使用される。
このとき、レーザを用いた前記熱可逆記録媒体への非接触記録であるため、コンテナ等から前記熱可逆記録媒体を剥がすことなく情報の消去記録を行うことができ、更に前記RF−IDタグにも非接触で情報を記録することができるため、工程をリアルタイムで管理することができ、また前記RF−IDタグ内の情報を前記熱可逆記録媒体に同時に表示することが可能となる。
前記画像記録及び画像消去のメカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図2(A)に、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図2(B)に、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図2(A)に示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に図2(A)において、前記記録層を溶融温度T1以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図2(A)の前記溶融温度T1と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
本実施形態の画像消去装置1000は、図3(A)及び図3(B)に示されるように、LDアレイ1と、幅方向平行化手段2と、長さ方向光分布均一化手段7と、長さ方向平行化手段4と、幅方向収束手段9と、走査手段5と、照射エネルギー量制御手段17とを有している。
LDアレイ1としては、複数のLD(半導体レーザ)が一軸方向(α軸方向)に並んだLDアレイが用いられている。
幅方向平行化手段2としては、LDアレイ1から射出されたライン状のレーザ光(ライン状ビーム)を幅方向に収束させる光学レンズが用いられている。
長さ方向光分布均一化手段7は、幅方向平行化手段2を介したライン状ビームを長さ方向(α軸方向)に均一に拡散して該ライン状ビームの長さ方向の光分布を均一にする機能を有している。
長さ方向平行化手段4としては、長さ方向光分布抑制手段7を介したライン状ビームを長さ方向に平行化する光学レンズが用いられている。
幅方向収束手段9としては、長さ方向平行化手段4を介したライン状ビームを幅方向に収束する収束光に変換する光学レンズが用いられている。
また、走査手段5による偏向に加えて、熱可逆記録媒体を移動させることもできる。実施方法としては、(1)熱可逆記録媒体をステージで移動させる、(2)コンベアで熱可逆記録媒体(媒体は箱に貼り付けて、コンベアで箱を移動させる)を移動させる。
これにより、熱可逆記録媒体10の温度、及び熱可逆記録媒体10と走査手段5との距離に関わらず、画像の消去に適した照射エネルギーを熱可逆記録媒体10に照射することができる。
この場合、出力調整装置PAは、前述した熱可逆記録媒体の発色−消色特性を考慮して、温度センサTS及び距離センサDSの計測値に基づいてLDアレイ1の出力を調整する。
なお、照射エネルギー量制御手段は、温度センサTS又は距離センサDSを有していなくても良い。すなわち、出力調整装置は、温度センサTS又は距離センサDSの計測値に基づいてLDアレイ1の出力を調整しても良い。
また、照射エネルギー量制御手段は、出力調整装置の代わりに、温度センサTS及び距離センサDSの少なくとも一方の計測値に基づいて熱可逆記録媒体10の加熱時間を調整する加熱時間調整装置を有していても良い。
なお、ライン状ビームを幅方向に偏向(走査)して消去する場合には、加熱時間は、ビーム幅Wと走査速度Vを用いて、W/Vで表すことができ、均一な消去を実現するためには、W/Vが極力一定であることが望ましい。
しかしながら、Vをライン状ビームの進行方向に応じて制御するのは装置コストの面で難しいことから、Wをライン状ビームの進行方向に応じて制御することが望ましい。具体的には、例えば、Vを一定にしつつWを極力一定に制御すれば良い。
本実施形態の画像消去装置2000は、47個のLDがα軸方向に並んだLDアレイを使用しており、1番目から47番目までのLDアレイ1の発光部の長手方向の長さは例えば10mmである。
LDアレイ1から射出されたライン状のレーザ光(ライン状ビーム)を、幅方向平行化手段としてのシリンドリカルレンズ2により幅方向に僅かに収束させて球面レンズ6に入射させ、該球面レンズ6によりレンズ15に集光させる。
レンズ15は、レーザ光を拡散することで均一化して長さ及び幅を拡大する機能を有するレンズ(例えば、マイクロレンズアレイ、凹又は凸のレンズアレイ、フレネルレンズ、本実施形態ではLIMO社製のマイクロレンズアレイTEL−150/500が用いられている)で構成されている。
レンズ15を介したライン状ビームは、シリンドリカルレンズ3で幅方向に収束される。
シリンドリカルレンズ2から射出されたライン状ビームは、複数の光源(半導体レーザ)から出た光の合成なので、その光分布が均一でなく、均一化するために、上記のような光学系を組む必要がある。
具体的には、球面レンズ6として焦点距離70mmの片面凸レンズ、シリンドリカルレンズ3として片面凹レンズでビーム幅に応じて焦点距離の異なるレンズを配置して、−1000mm、−400mm、−200mmを用いていることで実施例のビーム幅を実現した。凸のレンズアレイは40μmの周期で長さ方向に段差を持たしている。
シリンドリカルレンズ3を介したライン状ビームは、長さ方向平行化手段としての球面レンズ4で長さ方向に平行化される。球面レンズ4としては、焦点距離200mmの片面凸レンズが用いられている。
球面レンズ4を介したライン状ビームは、シリンドリカルレンズ8で幅方向に収束される。シリンドリカルレンズ8としては、焦点距離200mmの片面凸レンズが用いられている。
シリンドリカルレンズ8を介したライン状ビームは、走査手段5により幅方向に偏向されて熱可逆記録媒体10上で走査される。走査手段5としては、一軸のガルバノミラーが用いられているが、これに代えて、ステッピングモータミラー、ポリゴンミラーなどが用いられても良い。ガルバノミラーは、α軸方向に延びる軸5a周りに揺動可能となっている。
本実施形態では、照射エネルギー量制御手段19は、走査手段5の動作状態、すなわち上記ガルバノミラーの揺動角度を検出する角度センサASと、該角度センサASからの検出情報に基づいてLDアレイ1の出力を調整する出力調整装置PAとを有している。
出力調整装置PAは、走査手段5により走査されるライン状ビームの走査位置に関わらず、熱可逆記録媒体10に照射される該ライン状ビームのエネルギー密度が一定になるように、LDアレイ1の出力を調整する。
具体的には、出力調整装置PAは、ライン状ビームの進行方向(熱可逆記録媒体10への入射角度)から該進行方向におけるビーム幅(照射面積)をリアルタイムで算出し、算出されたビーム幅に応じた出力のレーザ光を照射する。なお、出力調整装置PAは、入射角度ごとのビーム幅のデータを予めメモリに格納しておき、ライン状ビームの進行方向に応じて対応するデータをリアルタイムで取り出すようにしても良い。
なお、照射エネルギー量制御手段は、出力調整装置PAの代わりに、角度センサASからの検出情報に基づいて熱可逆記録媒体10の加熱時間を調整する加熱時間調整装置を有していても良い。
そこで、本実施形態では、θに関わらずW3(θ)が極力一定となるように、シリンドリカルレンズ3、8の焦点位置及び位置が設定されている。この結果、ライン状ビームの走査位置に関わらず該ライン状ビームの熱可逆記録媒体上でのビーム幅を極力一定にできる。
また、前記ラベルが貼付されたダンボールやプラスチックコンテナは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び記録を行うことができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<熱可逆記録媒体の製造>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
ウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部を加え、よく攪拌して酸素バリア層用塗布液を調製した。
次に、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、酸素透過度:0.5ml/m2/day/MPa)上に、前記酸素バリア層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した。この酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを前記支持体上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第1の酸素バリア層を形成した。
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記第1の酸素バリア層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第1の熱可逆記録層を形成した。
フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR915、吸収ピーク波長:956nm)1質量%溶液を4質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン20質量部、架橋剤としてイソシアネート(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)5質量部をよく攪拌し、光熱変換層塗布液を調製した。得られた光熱変換層用塗布液を、前記第1の熱可逆記録層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み3μmの光熱変換層を形成した。
前記第1の熱可逆記録層と同じ熱可逆記録層用組成物を、前記光熱変換層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第2の熱可逆記録層を形成した。
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G300)10質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記第2の熱可逆記録層上に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み1μmの紫外線吸収層を形成した。
前記第1の酸素バリア層と同じ酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを、前記紫外線吸収層上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第2の酸素バリア層を形成した。
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体の前記第1の熱可逆記録層等が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1における熱可逆記録媒体を製造した。
<熱可逆記録媒体の製造>
製造例1において、熱可逆記録層用塗布液に光熱変換材料であるホウ化ランタンを製造例1と同じ感度になるように添加して、厚み12μmの第1熱可逆記録層を形成し、第2熱可逆記録層、光熱変換層、バリア層は形成しない以外は、製造例1と同様にして、製造例2の熱可逆記録媒体を作製した。
実施例1として、図4(A)及び図4(B)に示される本発明の画像消去装置(LDアレイを用いた消去装置)によるライン状ビームを用いて、製造例2の熱可逆記録媒体に記録されたベタ画像に対して、走査方向における中央位置付近でビーム幅を変更したときの消去エネルギー及び消去幅を、以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
画像記録方法として、Oclaro社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のBMU25-975−01−R(中心波長:976nm)からレーザ光を照射して、集光レンズ系(2枚の固定レンズと1枚の稼動型レンズとで形成され、ガルバノスキャナーの角度により稼動型レンズ位置を調整することで、ガルバノスキャナーの角度に依存せず同一ワーク間距離で集光する)で集光させながら、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、熱可逆記録媒体上で集光するLDマーカー装置で画像記録を行った。
画像消去方法としては、本発明の画像消去装置のライン状ビームによる消去として、図4(A)及び図4(B)において、LDアレイ1及びレンズ2としてイエナオプティックス社製LDバー光源のコリメータレンズ付きLD光源JOLD−108−CPFN−1L−976(中心波長976nm、出力:108W)、レンズ6として焦点距離70mmの球面レンズ、レンズ15としてLIMO社製マイクロレンズアレイTEL−150/500、レンズ3としてシリンドリカルレンズ、レンズ4として焦点距離250mmの球面レンズ、レンズ8に焦点距離300mmのシリンドリカルレンズ、走査ミラー5としてガルバノミラーCambridge社製ガルバノスキャナー6230Hを用いて光学系を組み、熱可逆記録媒体上で、長さを46mmとし、幅をレンズ3の焦点距離、設置位置を変更することで調整したライン状ビームを、走査線速度45mm/sで中央領域10mmを走査させて消去した。
ベタ画像印字した熱可逆媒体に対して、5℃環境下で照射パワーを変更しながら消去して、地肌濃度との差が0.03以内となる消去エネルギー及び消去幅を求めた。
なお、「消去エネルギー」は、ベタ画像を消去した後の地肌濃度が該ベタ画像を形成する前の地肌濃度に対して+0.03以下になるときのレーザ光の照射エネルギーである消去可能エネルギーの最大値と最小値との平均値と定義される。また、「消去幅」は、消去可能エネルギーの最大値及び最小値を用いて、(最大値−最小値)/(最大値+最小値)と定義される。なお、濃度測定は、反射濃度計(X−rite社製、939Spectro−Densido−meter)で測定した。
実施例1では、LDアレイ1及びレンズ2と、レンズ6との距離を75mm、レンズ6とレンズ15との距離を70mm、レンズ15とレンズ3との距離を175mm、レンズ3とレンズ4の距離を70mm、レンズ4とレンズ8の距離を55mm、レンズ8と走査ミラー5の距離を40mm、走査ミラー5と熱可逆記録媒体10との距離を160mmに設定している。
図4(A)及び図4(B)に示される光学系において、実施例1では、レンズ3、8(シリンドリカルレンズ)の設置位置、及び走査ミラー5と熱可逆記録媒体10との距離を調整することで、熱可逆記録媒体10に入射するライン状ビームの収束度合いを調整し、熱可逆記録媒体上でのビーム幅、すなわち図10のW3(θ)をθに関わらずほぼ一定にしている。ここで、熱可逆記録媒体10に入射するライン状ビームは、長さ方向にコリメート(平行化)されている。
一方、比較例では、走査ミラー5と熱可逆記録媒体10との距離によらずライン状ビームの幅が一定になるようにレンズ3、8(シリンドリカルレンズ)の設置位置、及び走査ミラー5と熱可逆記録媒体10の距離を設定した。走査中央位置でのビーム幅は、実施例1及び比較例1ともに0.5mmで設定している。
NET消去エネルギー幅は、走査方向の中央部と縁部とで同等の消去性になることで向上することができ、実際に運用する上で、消去エネルギーが変動する可能性があることからNET消去エネルギー幅をできるだけ広く確保することが重要となる。
実施例1において、5℃環境下で、ライン状ビームの走査位置に応じてレーザ照射パワーを調整することでエネルギーを調整して消去を行い、NET消去エネルギー幅を求めた。結果を表2に示す。
実施例1において、5℃環境下で、ライン状ビームの走査位置に応じて走査速度を調整することでエネルギーを調整して消去を行い、NET消去エネルギー幅を求めた。結果を表2に示す。
実施例1において、図4(A)及び図4(B)に示される本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーの代わりにステッピングモータミラーを取り付けて、走査線速度45mm/sで走査させるようにステッピングモータミラーを走査制御した以外は、実施例1と同様にして、ベタ画像印字を行い消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった。)。
実施例1において、図4(A)及び図4(B)に示される本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーの代わりにポリゴンミラーを取り付けて、走査線速度45mm/sで走査させるようにポリゴンミラーの回転数を調整した以外は、実施例1と同様にして、ベタ画像印字を行い消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった。)。
実施例1において、図4(A)及び図4(B)に示される本発明の画像消去装置における、ガルバノミラーを外して、製造例1の熱可逆記録媒体に対してベタ画像印字を実施例2と同様に行い、該熱可逆記録媒体をプラスチックの箱に貼り付けコンベアに載せて箱が20mm/sの搬送速度(1.2m/分)で移動させながら消去したところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった。)。
実施例1において、図4(A)及び図4(B)に示される本発明の画像消去装置における、製造例1の熱可逆記録媒体に対してベタ画像印字、消去を実施例2と同様に行ったところ、ベタ画像を完全に消去することができた(消去部と地肌部との濃度差は0.00であった。)。
実施例1において、図4(A)及び図4(B)に示される本発明の画像消去装置に環境温度センサを取り付けて、環境温度が1℃上がると照射パワーを1.1%上げる補正を行う機能が有る実施例8、機能がない実施例9に対して、25℃環境下で合わせた照射パワーで25℃、5℃環境下で消去を行い、消え残り濃度を測定した。結果を表3に示す。
実施例1において、図4(A)及び図4(B)に示される本発明の画像消去装置に装置と熱可逆媒体間の距離を計測する変位センサを取り付けて、ワーク間距離に依存せず走査距離が同じになるように走査ミラーを制御する補正を行う機能が有る実施例10、機能がない実施例11に対して、走査ミラーから熱可逆媒体までの距離が160mmと170mmで消去を行い、消え残り濃度を測定した。結果を表4に示す。
Claims (9)
- 画像が記録されている熱可逆記録媒体上でレーザ光を走査して前記画像を消去する画像消去装置であって、
断面がライン状のレーザ光を射出する光源と、
前記光源から射出された前記レーザ光を、幅方向に収束させ、かつ、長さ方向に平行化して射出する光学系と、
前記光学系から射出された前記レーザ光を幅方向に偏向して前記熱可逆記録媒体上で走査する走査手段と、を備える画像消去装置。 - 前記光学系は、前記走査手段により走査される前記レーザ光の走査位置に関わらず該レーザ光の前記熱可逆記録媒体上における幅が一定になるように配置されている少なくとも1つの集光素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像消去装置。
- 前記集光素子は、シリンドリカルレンズであることを特徴とする請求項2に記載の画像消去装置。
- 前記光学系は、更に、前記光源から射出された前記レーザ光を、長さ方向の光分布を均一化して射出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像消去装置。
- 前記走査手段により走査される前記レーザ光の走査位置に応じて、前記熱可逆記録媒体に照射される前記レーザ光のエネルギー量を制御する照射エネルギー量制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像消去装置。
- 前記熱可逆記録媒体又はその周囲の温度を計測して、計測された温度に基づいて、前記熱可逆記録媒体に照射される前記レーザ光のエネルギー量を制御する照射エネルギー量制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像消去装置。
- 前記熱可逆記録媒体と前記走査手段との距離を計測して、計測された距離に基づいて、前記熱可逆記録媒体に照射される前記レーザ光のエネルギー量を制御する照射エネルギー量制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像消去装置。
- 前記光源は、1次元配列された複数の半導体レーザを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像消去装置。
- 画像が記録されている熱可逆記録媒体をレーザ光で走査して前記画像を消去する画像消去方法であって、
断面がライン状のレーザ光を幅方向に収束させ、かつ、長さ方向に平行化する工程と、
幅方向に収束され、かつ、長さ方向に平行化された前記レーザ光を幅方向に偏向して前記熱可逆記録媒体上で走査する工程と、を含む画像消去方法。
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