JP5883326B2 - 印刷用非塗工紙およびその製造方法 - Google Patents
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また、特許文献3には、トランスファー型ロールコーターを用いて、エーテル化澱粉糊液からなるサイズプレス液をサイズすることが開示されているが、特許文献3では、高粘度なエーテル化澱粉を微量塗抹することにより、コーターストリークやスーパーダスティングを減少させている。
本発明の印刷用非塗工紙は、原紙の片面または両面に、特定の粘度特定を有する澱粉系高分子を含むクリア塗工液を塗布し、クリア(透明)塗工層を有する。本発明においてクリア塗工とは、例えば、ポンド式2ロールサイズプレス、フィルム転写方式としてゲートロールコータやロッドメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。
澱粉系高分子化合物を、クリア塗工液に含有させる場合は、高分子化合物を溶解させるための加熱を必要とする。よって、一定条件で蒸煮した後のスラリーの粘度が重要となる。
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、蒸煮した後のスラリーの粘度が低いため、スラリーを高濃度化することができる。
また、例えばα化澱粉などに代表される、冷水可溶澱粉もスラリー粘度は低いが、それらの冷水可溶澱粉は、冷水に溶けるように処理されており、デキストリンなどの方が表面強度の発現性が高く有利である。
本発明の粘度を満足する澱粉系高分子としては、例えば、低粘度のヒドロキシエチル澱粉(HES)、酸化アセチル化タピオカ澱粉、デキストリンなどがある。これらの澱粉系高分子は、低粘度で粘度安定性があり、強度も優れている。
デキストリンとは、澱粉を加水分解して得られる澱粉系高分子であり、α-グルコースがグリコシド結合によって重合しており、糊精(こせい)とも呼ばれる。通常の澱粉は分子量が大きいが、デキストリンは澱粉の加水分解の工程で生ずる中間性生物であり、オリゴマー(グルコースが数個〜20個程度が結合したもの)程度の分子量しかないとされている。白色デキストリンをさらに加水分解するといわゆる黄色デキストリンとなるが、黄色デキストリンだと安定性が低く、クリア塗工層が着色するおそれがあるため、本発明においては白色デキストリンの使用が好ましい。
[原料パルプ]
本発明で製造される印刷用非塗工紙のパルプ原料としては、特に限定されるものではなく、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、一般的に抄紙原料として使用されているものであればよい。
本発明の紙に使用される填料は、紙中灰分が紙の絶乾重量に対し、10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上となるように添加することが好ましい。また、本願によれば、澱粉系高分子の塗工量を多くすることができるため、紙中灰分が20重量%以上、さらには25重量%以上でも効果を発揮する。灰分の上限は特にないが、紙の強度や操業性を考慮すると、40重量%以下であることが好ましい。一般に灰分は、紙に含まれる無機物の量を示すため、基本的に紙中に含まれる填料の量を反映する。紙の灰分は、紙料に添加されるフレッシュな填料に由来するものと、DIP(古紙パルプ、脱墨パルプ)などのパルプ原料によって持ち込まれるもので構成される。DIPによって持ち込まれる灰分としては、炭酸カルシウムが比較的多いが、炭酸カルシウム以外の無機成分も含まれ、炭酸カルシウムと他の無機成分との割合は、新聞古紙や雑誌古紙などの古紙の種類や回収状況などによって異なる。本発明において灰分は、JIS P 8251に規定される紙および板紙の灰分試験方法に準拠し、燃焼温度を525±25℃に設定した方法で測定される。原紙に添加する填料としては、例えば、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイトなどの無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料;を単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。
本発明においては、内添用として、公知の製紙用添加剤を使用することができる。製紙用薬品は、特に制限されず、種々の薬品を単独または組み合わせて用いることができる。例えば、例えば、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、填料、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの製紙用薬品を用いることができる。中でも、短時間で紙料との混合ができるという本発明の効果を大きく享受できる点で、製紙用薬品として歩留剤を添加することが特に好ましい。歩留剤の他、本発明の製紙用薬品として好適に使用できるものとしては、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添乾燥紙力増強剤;ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などの内添湿潤紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;などを挙げることができる。
上記のようにして製紙用薬品を混合された紙料は、ヘッドボックスに送られ、ヘッドボックスからワイヤーに噴射されて抄紙される。本発明は、種々の抄紙機や抄紙法に適用することができる。抄紙機としては例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できるが、特に地合が悪化しやすいツインワイヤー抄紙機でも、本発明の効果を有意に発揮させることができる。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。
本発明の抄紙系は、特に制限されず、中性紙でも酸性紙でもよいが、本発明の紙が炭酸カルシウムを比較的多く含有する場合、中性紙であることが好ましい。具体的には、本発明においては、紙面pHが6.0〜9.0であることが好ましく、6.8〜8.0であることがより好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
本発明の原紙の坪量は特に限定されないが、41g/m2を超えることが好ましい。原紙の坪量の上限は特に制限されないが、例えば、220g/m2とすることができる。さらに、本発明においては、抄造した原紙に種々の表面処理を施すことができる。
本発明の印刷用非塗工紙の紙質は、下記に規定される方法に準じて測定した。
(1)澱粉粘度測定方法
ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA、型式RVA-4、New Port Scientific社製)を用いて、濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮した際の粘度変化を測定した。蒸煮16分後の粘度を測定し、RVA粘度とした。また、上記蒸煮条件で蒸煮した際の澱粉系高分子スラリーの粘度変化を図1および図2に示す。ただし、Ethylex 2035(比較例1〜5、8、9)は蒸煮時のピーク粘度が高すぎて、スラリー濃度が35重量%における測定が困難だったため、澱粉スラリーの濃度を30重量%にして粘度曲線を測定した。
(2)坪量:ISO536
(3)紙中灰分:ISO1762
(4)内部結合強度
L&W ZD Tensile Tester(Lorentxen&Wettre社製)を用いて測定した。
(5)ワックスピック
「JIS P 8129 紙及び板紙−紙むけ試験方法−ワックスを用いる方法」に基づいて、測定した。ワックスピックは、数値が大きい程、表面強度が強いことを示している。
(6)操業性
コーターで塗工中にボイリング、ミストの発生状況を目視にて次の基準により3段階で評価した。○:良好、△:やや悪い、×:悪い
(7)乾燥負荷
サイズ液塗工後の乾燥に必要な蒸気量を乾燥負荷として評価した。○:蒸気使用量が少ない、△:通常、×:蒸気使用量が多い
製紙用原料パルプとしてLBKP(濾水度400ml、CSF)のスラリーに、パルプ固形分に対し液体硫酸バンドを0.5重量%(有姿)添加し、製品灰分が17%になるように填料として軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)を添加し、対パルプ固形分350ppmの歩留まり向上剤を添加した後、ツインワイヤー型抄紙機を用いて抄紙速度1000m/分で坪量59g/m2となるように抄紙し、オンマシンの2ロールサイズプレスを用いて、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2005 蒸煮後粘度1500mPa・s)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に合計5.0g/m2塗工し、マシンカレンダーにて密度が0.84g/cm3となるように処理し、印刷用非塗工紙を得た。得られた非塗工紙について、前述の方法で、内部結合強度およびワックスピックによる表面強度を測定した。
原紙坪量を60.0g/m2とし、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉の塗工量を4.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
原紙坪量を61.0g/m2とし、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉の塗工量を3.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
原紙坪量を62.0g/m2とし、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉の塗工量を2.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
原紙坪量を63.0g/m2とし、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉の塗工量を1.0g/m2に変えた以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[実施例6]
オンマシンのゲートロールコーターを用いた以外は、実施例2と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
オンマシンのゲートロールコーターを用いた以外は、実施例3と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
オンマシンのゲートロールコーターを用いた以外は、実施例4と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
オンマシンの2ロールサイズプレスの代わりにゲートロールコーターを用いた以外は、実施例5と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[実施例10]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、焙焼デキストリン(Roquette社製StabilysA40 蒸煮後粘度100mPa・s)に代えた以外は、実施例7と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[実施例11]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、低粘度尿素燐酸エステル化澱粉(日本食品加工社製MS4600 蒸煮後粘度2000mPa・s)に代えた以外は、実施例7と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[実施例12]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、低粘度酸化澱粉(敷島スターチ社製マーメイド210 蒸煮後粘度2500mPa・s)に代えた以外は、実施例7と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[実施例13]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、低粘度酸化アセチル化タピオカ澱粉(サンガンウォンス社製OXCEL−0610 蒸煮後粘度500mPa・s)に代えた以外は、実施例7と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[実施例14]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2015 蒸煮後粘度2600mPa・s)に代えた以外は、実施例7と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[比較例1]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035 蒸煮後粘度8000mPa・s以上)に代えた以外は、実施例2と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[比較例2]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035 蒸煮後粘度8000mPa・s以上)に代えた以外は、実施例3と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[比較例3]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035 蒸煮後粘度8000mPa・s以上)に代えた以外は、実施例4と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[比較例4]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035 蒸煮後粘度8000mPa・s以上)に代えた以外は、実施例7と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[比較例5]
低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035 蒸煮後粘度8000mPa・s以上)に代えた以外は、実施例8と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[比較例6]
原紙坪量を63.0g/m2とし、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉を、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035 蒸煮後粘度8000mPa・s以上)としてその塗工量を1.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
[比較例7]
オンマシンの2ロールサイズプレスの代わりにゲートロールコーターを用いた以外は、比較例6と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。
Claims (6)
- 澱粉系高分子を含むクリア塗工層を原紙上に有する、坪量が43g/m 2 以上の印刷用非塗工紙であって、
澱粉系高分子が、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が1500mPa・s以下である、上記印刷用非塗工紙。 - 前記澱粉系高分子を、原紙上に両面合計で2.0g/m2以上塗工した、請求項1に記載の印刷用非塗工紙。
- 紙中灰分が10重量%以上である、請求項1または2のいずれかに記載の印刷用非塗工紙。
- 前記澱粉系高分子が白色デキストリンである、請求項1〜3のいずれかに記載の印刷用非塗工紙。
- オフセット印刷用、グラビア印刷用または凸版印刷用である、請求項1〜4のいずれかに記載の印刷用非塗工紙。
- フィルム転写方式で澱粉系高分子を原紙上に塗工してクリア塗工層を設けることを含む、坪量が43g/m 2 以上の印刷用非塗工紙の製造方法であって、
澱粉系高分子が、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が1500mPa・s以下である、上記方法。
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