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JP5875434B2 - 3d画像表示用光学フィルム、3d画像表示装置及び3d画像表示システム - Google Patents

3d画像表示用光学フィルム、3d画像表示装置及び3d画像表示システム Download PDF

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Description

本発明は、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で輝度低下率などの表示性能や耐光性が改善された3D画像表示用光学フィルム、3D画像表示装置及び3D画像表示システムに関する。
立体画像を表示する3D画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。例えば、かかる光学部材には、遅相軸やレターデーション等が互いに異なる領域が規則的に面内に配置されたパターン位相差膜が利用されている。
従来、液晶化合物を利用して形成されるパターン光学補償膜等が提案されている(例えば特許文献1及び2)。これらは液晶セルの内部に配置される、いわゆるインセルタイプの光学補償膜等であり、液晶セルを正確に補償するための部材である。したがって、利用する液晶化合物の配向形態も光学補償に適する形態であり、3D画像表示装置の上記光学部材に用いるのに適するものではない。
また、特許文献3には、パターン化位相差板を有する2D/3D切替型液晶表示装置が開示され、パターン化位相差板の材料としてUV硬化型液晶溶液を利用することが開示されている。しかし、その液晶材料の詳細については記載がなく、ディスコティック液晶を利用することについては開示されていない。また、特許文献3では、パターン化位相差板は視差バリア手段として利用されているのであって、右眼用及び左眼用円偏光画像等を形成するための上記光学部材として用いられているのではない。また、特許文献4には、配向規制力が異なる第1及び第2配向膜を利用して形成された光学異方性層を有する液晶装置が開示されている。前記光学異方性層の形成に液晶高分子材料を利用することについて開示されているが、その詳細については記載されておらず、ディスコティック液晶を利用することについては開示されていない。また、特許文献5には、立体画像表示装置用の光学フィルタの光配向膜を利用する製造方法が提案されている。実施例では、棒状液晶を利用して当該製造方法を実施している。
特開2006−276849号公報 特開2007−71952号公報 特開2004−302409号公報 特開2007−163722号公報 WO2010/090429号A2公報
しかし、液晶材料を利用して作製されたパターン位相差板を実際に3D画像表示装置に利用すると、斜め方向の輝度が低下する、即ち視野角特性が低下することがわかった。
本発明は、3D画像表示装置の視野角特性の改善に寄与する新規な3D画像表示装置用光学フィルム、及びそれを利用した3D画像表示装置、及び3D画像表示システムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層を少なくとも含み、前記光学異方性層が、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする3D画像表示装置用光学フィルム。
[2] 前記ディスコティック液晶が、垂直配向状態に固定されている[1]の光学フィルム。
[3] 偏光膜をさらに有し、前記第1及び第2位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光膜の吸収軸とがそれぞれ±45°の角度をなす[1]又は[2]の光学フィルム。
[4] 前記偏光膜の一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmである[1]〜[3]のいずれかの光学フィルム。
[5] 前記偏光膜の一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−140〜140nmである[3]又は[4]の光学フィルム。
[6] 前記光学異方性層、及び該光学異方性層の前記偏光膜が配置されている表面と反対の表面上に配置されている全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−104〜104nmである[3]又は[4]の光学フィルム。
[7] 前記光学異方性層の表面上に、紫外線吸収剤を含有する透明支持体を有する[1]〜[6]のいずれかの光学フィルム。
[8] ハードコート層をさらに有する[1]〜[7]のいずれかの光学フィルム。
[9] 前記ハードコート層が、紫外線吸収剤を含有する[8]の光学フィルム。
[10] 反射防止層をさらに有する[1]〜[9]のいずれかの光学フィルム。
[11] 防眩層をさらに有する[1]〜[10]のいずれかの光学フィルム。
[12] 画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、前記表示パネルの視認側に配置される[1]〜[11]のいずれかの光学フィルムとを少なくとも有する3D画像表示装置。
[13] 前記表示パネルが液晶セルを有する[12]の3D画像表示装置。
[14] [5]の光学フィルムを有し、前記液晶セルが、TNモードである[13]の3D用画像表示装置。
[15] [6]の光学フィルムを有し、前記液晶セルが、VAモード又はIPSモードである[13]の3D用画像表示装置。
[16] [12]〜[15]のいずれかの3D用画像表示装置と、該3D用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる3D画像表示システム。
本発明によれば、3D画像表示装置の視野角特性の改善に寄与する新規な3D画像表示装置用光学フィルム、及びそれを利用した3D画像表示装置、及び3D画像表示システムを提供することができる。
本発明の3D画像表示装置用光学フィルムの一例の断面模式図である。 偏光膜と光学異方性層との関係の一例の概略図である。 偏光膜と光学異方性層との関係の一例の概略図である。 本発明に係わるパターン光学異方性層の一例の上面模式図である。 本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図である。 本発明の3D画像表示装置の構成例の一例の断面模式図である。 パターン形成に用いられるフレキソ版の断面の一例を示す概略図である。 フレキソ印刷の方法の一例を示す概略図である。 実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。 露光マスクの一例を示した模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルタをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005875434
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
1.3D画像表示装置用光学フィルム
本発明は、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層を少なくとも含み、
前記光学異方性層が、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする3D画像表示装置用光学フィルムに関する。
液晶組成物を利用して形成されるパターン光学異方性層は、通常、それを支持するポリマーフィルム等の支持体や、またそれを保護する保護フィルム等と積層した状態で使用されるのが一般的である。支持体として利用されるポリマーフィルム等にもある程度のレターデーションがあり、積層体全体として、円偏光画像等を形成するための適切なReに調整する必要がある。ところで、Reが発現された光学異方性層やポリマーフィルム等について、Rthを完全にゼロにするのは困難であり、ある程度のRthを有するのが一般的である。液晶組成物からなる光学異方性層にも、及びそれに積層されるポリマーフィルムにもRthがあり、積層体全体としてRthが大きくなってしまう場合もある。従来の液晶組成物を利用したパターン位相差板を実際に利用すると、斜め方向において輝度が低下し、視野角特性の点で問題があったのは、このRthが一因であると言える。例えば特許文献5で利用されている様な棒状液晶は正の複屈折性を示す液晶であり、円偏光画像等を形成するために必要なReが発現された光学異方性層を形成すると、当該光学異方性層のRthは正になり、積層されるポリマーフィルム等のRthが加算され、積層体全体のRthの合計は大きくなり、視野角特性の低下、即ち斜め方向の輝度低下の一因になる。積層させるポリマーフィルム等の部材の数を減少することで、Rthを軽減することができるが、パターン位相差板は、表示パネルの視認側面外側に配置される部材であり、外光に曝されることによる劣化を防止するための保護部材や、又は外光が映り込むことを防止するための反射防止部材等を配置する必要があり、ポリマーフィルムの積層は避けられないのが実情である。
本発明では、パターン光学異方性層の形成にディスコティック液晶を利用することで、この問題を解決している。ディスコティック液晶は負の複屈折性を示す液晶であり、円偏光画像等を形成するために必要なReを発現しつつ、Rthが負の光学異方性層を形成することは容易である。ディスコティック液晶組成物からなる光学異方性層のRthにより、それに積層されるポリマーフィルム等の部材の正のRthを相殺することができ、積層体全体としてのRthを、視野角特性に影響を与えない程度まで軽減することができる。
本発明の3D画像装置用光学フィルムは偏光膜とともに表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に偏光膜を有する場合には、表示パネルの視認側偏光膜のさらに外側)に配置され、当該光学フィルムの第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、またそれぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
本発明の3D画像装置用光学フィルムの一例の断面模式図を図1に示す。図1に示す光学フィルム10は、偏光膜16、透明支持体14、及び光学異方性層12を有し、光学異方性層12は、画像表示装置内に、第1及び第2位相差領域12a及び12bが、均等且つ対称に配置されたパターン光学異方性層である。一例は、第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内レターデーションがそれぞれλ/4程度であり、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有する光学異方性層である。この例では、図2及び図3に示す通り、光学異方性層12を、第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内遅相軸a及びbをそれぞれ、偏光膜16の吸収軸Pと±45°にして配置する。この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができる。また、λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。
第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4である光学異方性層を利用しても同様に円偏光画像を分離することができる。また、第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4である光学異方性層を利用することで、右眼用及び左眼用の直線偏光画像を分離してもよい。
さらに、第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/2であり、且つ他方の面内レターデーションが0である光学異方性層を利用し、これを面内レターデーションがλ/4の支持体と各々の遅相軸を平行又は直交して積層しても同様に円偏光画像を分離することができる。
また、第1及び第2位相差領域12a及び12bの形状及び配置パターンは、図2及び3に示すストライプ状のパターンを交互に配置した態様に限定されるものではない。図4に示す様に、矩形状のパターンを格子状に配置してもよい。
また、光学フィルムは他の部材を含んでいてもよく、図1に示す例では、透明支持体14と光学異方性層12との間に配向膜を有していてもよいし、光学異方性層12のさらに外側に反射防止層を含む表面フィルムを配置してもよい。また、透明支持体14と偏光膜16との間に、偏光膜16の保護フィルムが配置されていてもよい。また、偏光膜16の裏面に、保護フィルムがさらに配置されていてもよい。また、上記した通り、表示パネルが視認側表面に偏光膜を有する場合は、本発明の光学フィルムは偏光膜を有さず、表示パネルの偏光膜と組み合わされることで、円偏光画像等の分離機能を示す態様であってもよい。使用可能なこれらの部材の詳細については、後述する。図5(a)〜(e)に、本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図を示す。
光学異方性層12は、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成され、ディスコティック液晶は、垂直配向させるのが好ましい。なお、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85〜90度が好ましく、87〜90度がより好ましく、88〜90度がさらに好ましく、89〜90度が最も好ましい。また、前記組成物としては、ディスコティック液晶の配向を制御する配向制御剤を含有していてもよい。ディスコティック液晶及び配向制御剤の詳細については後述する。
第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内レターデーションがそれぞれλ/4程度である態様では、面内遅相軸a及びbは、偏光膜の吸収軸とそれぞれ±45°の角度をなすことが好ましい。本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1及び第2位相差領域12a及び12bのいずれか一方については、40〜50°であることが好ましく、他方は、−50〜−40°であることが好ましい。
なお、光学異方性層12のReが単独でλ/4である必要はなく、偏光膜16の一方の表面上に配置される光学異方性層12を含む全ての部材のReの総和、例えば、図6(a)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのReの総和、図6(b)の態様では、偏光膜保護フィルム、光学異方性層、及び支持体のReの総和が、図6(c)の態様では、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのReの総和、図6(d)の態様では、光学異方性層、及び支持体のReの総和が、図6(e)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、及び光学異方性層のReの総和が、110〜160nmであるのが好ましく、120〜150nmであるのがより好ましく、125〜145nmであることが特に好ましい。ここで、「全てのReの総和」とは、該当する層をまとめて一度に測定したときのReのことである。
一方、光学フィルムを表示パネルに配置した場合に、偏光膜より視認側外側に配置される部材のRthは、視野角特性に影響するので、その絶対値が小さいほうが好ましく、具体的には、Rthは−140nm〜140nmが好ましく、−100nm〜100nmであるのがより好ましく、−60〜60nmであるのがさらに好ましく、−60〜20nmであるのが特に好ましい。前記光学フィルムの一例は、Rthが−140nm〜140nm(但し−100nm〜100nmの範囲を除く)である。また、他の例は、Rthが−140nm〜140nm(但し−20nm〜20nmの範囲を除く)である。また、他の例は、Rthが−100nm〜100nm(但し−20nm〜20nmの範囲を除く)である。但し、本発明者が鋭意検討した結果、偏光膜の吸収軸方向によって、同一の部材が配置され、同一のRthであっても、視野角特性に影響する程度が異なることがわかった。具体的には、図2に示す態様、即ち、偏光膜の吸収軸方向が、表示面左右方向を0°とした場合に、45°又は135°方向である態様では、偏光膜より視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響するが、一方で、図3に示す態様、即ち、偏光膜の吸収軸方向が、表示面左右方向を0°とした場合に、0°又は90°方向である態様では、偏光膜と光学異方性層との間に配置される部材のRthはほとんど影響せず、光学異方性層及びさらにその視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響することがわかった。
図6(a)〜(e)の態様を例に挙げれば、図2の配置において、図6(a)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和が、図6(b)の態様では、偏光膜保護フィルム、光学異方性層及び支持体全てのRthの総和が、図6(c)の態様では、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和が、図6(d)の態様では、光学異方性層及び支持体の全てのRthの総和が、図6(e)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、及び光学異方性層の全てのRthの総和が、−104nm〜104nmが好ましく、−100nm〜100nmがより好ましく、−60〜60nmであるのがさらに好ましく、−60〜20nmであるのが特に好ましく(一例は、前記Rthの総和が−104nm〜104nm(但し−100nm〜100nmの範囲を除く)の光学フィルム;他の例は、前記Rthの総和が−104nm〜104nm(但し−20nm〜20nmの範囲を除く)の光学フィルム;また他の例は、前記Rthの総和が−100nm〜100nm(但し−20nm〜20nmの範囲を除く)の光学フィルムある);図3の配置において、図6(a)及び(c)の態様では、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和、図6(b)及び(d)の態様では、光学異方性層及び支持体のRthの総和が、図6(e)の態様では、光学異方性層のRthが、−104nm〜104nmが好ましく、−100nm〜100nmであるのがより好ましく、−60〜60nmであるのがより好ましく、−60〜20nmであるのが特に好ましい(一例は、前記Rthの総和が−104nm〜104nm(但し−100nm〜100nmの範囲を除く)の光学フィルム;他の例は、前記Rthの総和が−104nm〜104nm(但し−20nm〜20nmの範囲を除く)の光学フィルム;また他の例は、前記Rthの総和が−100nm〜100nm(但し−20nm〜20nmの範囲を除く)の光学フィルムある)。ここで、「全てのRthの総和」とは、該当する層をまとめて一度に測定したときのRthのことである。
2.3D画像表示装置及び3D画像表示システム
本発明は、本発明の光学フィルムを有する3D画像表示装置及び3D画像表示システムにも関する。本発明の光学フィルムは、表示パネルの視認側に配置され、表示パネルが表示する画像を右眼用及び左眼用の円偏光画像又は直線偏光画像等の偏光画像に変換する機能を有する。観察者は、これらの画像を円偏光又は直線偏光眼鏡等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
本発明では、表示パネルについてはなんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、透過モードの液晶パネル等は、視認側表面に画像表示のための偏光膜を有する態様では、本発明の光学フィルムは、当該偏光膜との組み合わせによって、上記機能を達成してもよい。勿論、本発明の光学フィルムは、液晶パネルとは別に偏光膜を有していてもよいが、その場合は、光学フィルムの偏光膜の吸収軸と、液晶パネルの偏光膜の吸収軸とを一致させて配置する。
図6(a)〜(e)に、図5(a)〜(e)に示す本発明の光学フィルムと、表示パネルとして液晶パネルとを有する3D画像表示装置の構成例を断面模式図として示すが、これらの構成に限定されるものではない。なお、図中、各層の厚みの相対的関係は、実際の液晶表示装置の各層の厚みの相対的関係と必ずしも一致しているものではない。図6(a)〜(e)に示す態様では、液晶セルの後方には、バックライトが配置され、バックライトと液晶セルとの間に偏光膜が配置された、透過モードとして構成されている。
液晶セルの構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セルは、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。TNモードでは、一般的に、偏光膜の吸収軸は、表示面左右方向0°に対して45°又は135°に配置されるので、TNモード液晶パネルとは、図2に示す態様の光学フィルムと組み合わせるのが好ましい。また、VAモード及びIPSモードでは、一般的に、偏光膜の吸収軸は、表示面左右方向0°に対して0°又は90°に配置されるので、VAモード及びIPSモード液晶パネルとは、図3に示す態様の光学フィルムと組み合わせるのが好ましい。
以下、本発明の3D画像表示装置用光学フィルムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
光学異方性層:
本発明における光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層である。一例は、第1及び第2位相差領域がそれぞれλ/4程度のReを有し、且つ面内遅相軸が互いに直交している光学異方性層である。このような光学異方性層の形成には種々の方法があるが、本発明では、重合性基を有するディスコティック液晶を垂直配向させた状態で重合させ、固定化して形成することが好ましい。なお、前記光学異方性層は単層構造であっても、積層構造であってもよい。2以上の層からなる積層構造の態様では、少なくとも一つの層が、ディスコティック液晶を含有する組成物の配向を固定してなる光学異方性層であれば、本発明の効果を得られる。前記積層構造の光学異方性層の一例は、非パターン化(以下「一様な」という場合もある)の光学異方性層と、パターン化光学異方性層との積層体である。前記積層構造の例において、ディスコティック液晶を含有する組成物からなる光学異方性層は、前記非パターン化光学異方性層及び前記パターン化光学異方性層のいずれであってもよいし、双方であってもよい。前記積層構造の例が、ディスコティック液晶を含有する組成物からなる光学異方性層以外の光学異方性層を含む場合、その例には、棒状液晶を含有する組成物からなる光学異方性層、及び複屈折高分子フィルムが含まれる。前記積層構造の例では、第1及び第2の位相差領域のいずれか一方は、2以上の光学異方性層のReが互いに加算されて所定のReを示し(例えばRe=λ/2)、他方は、2以上の光学異方性層のReが互いに軽減し合い所定のRe(例えばRe=0)を示す。
光学異方性層は単独でReがλ/4程度であってもよく、その場合はRe(550)が、110〜165nmであることが好ましく、120〜150nmであることがより好ましく、125〜145nmであることが特に好ましい。前記光学異方性層のRth(550)は負であるのが好ましく、−80〜−50nmであることが好ましく、−75〜−60nmであることがより好ましい。光学異方性層のRth(550)が負であると、他の部材の正のRthを相殺することができ、斜め方向の輝度低下を抑制することができる。
[重合性基を有するディスコティック液晶化合物]
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶としては、前記のとおり重合性基を有する化合物が好ましい。
前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I): D(−L−H−Q)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Hは二価の芳香族環又は複素環であり、Qは重合性基であり、nは3〜12の整数を表す。
円盤状コア(D)は、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、アントラキノン環、トルキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましく、ベンゼン環、トリフェニレン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が特に好ましい。
Lは、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基が好ましく、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基であることが特に好ましい。ここで、*は一般式(I)中のDに結合する位置を表す。
Hは、芳香族環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましく、ピリジン環が特に好ましい。Hは、芳香族環が特に好ましい。
重合性基Qの重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリレート基、エポキシ基が好ましい。
前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶は、下記一般式(II)又は(III)
で表されるディスコティック液晶であることが特に好ましい。
Figure 0005875434
式中、L、H、Qは、前記一般式(I)におけるL、H、Qとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
Figure 0005875434
式中、Y1、Y2、及びY3は、後述する一般式(IV)におけるY11、Y12、及びY13
同義であり、その好ましい範囲も同一である。また、L1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、及びR3も、後述する一般式(IV)におけるL1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、R3と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
後述するように、一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表されるように、分子
内に複数個の芳香環を有しているディスコティック液晶は、配向制御剤として用いられるピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物等のオニウム塩との間に分子間π−π相互作用が起こるため、垂直配向を実現できる。特に、例えば、一般式(II)において、Lが、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基である場合、及び、一般式(III)において、複数個の芳香環及び複素環が単結合で
連結される場合は、該連結基により結合の自由回転が強く束縛されることにより分子の直線性が保持されるため、液晶性が向上すると共に、より強い分子間π−π相互作用が起こり安定な垂直配向が実現できる。
前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005875434
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表し;R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す;
Figure 0005875434
一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(IV)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(IV)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
Figure 0005875434
一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(IV)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(IV)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(I−R)中、*は、一般式(IV)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す;L21は単結合又は二価の連結基を表す;Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0〜4の整数を表す;L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表す;L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Q1は重合性基又は水素原子を表す。
前記式(IV)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶性化合物の各符号の好ましい範囲、及び前記式(IV)の化合物の具体例については、特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0077]記載を参照することができる。但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物は、前記式(IV)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶性化合物に限定されるものではない。
トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、後述する、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる。特に、一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、複数個の芳香環が単結合で連結されているため、分子の回転自由度が束縛された直線性の高い分子構造を有しているため、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間により強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させ垂直配向状態が実現できる。
本発明では、ディスコティック液晶を垂直配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85〜90度が好ましく、87〜90度がより好ましく、88〜90度がさらに好ましく、89〜90度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の垂直配向を促進する添加剤を添加していることが好ましく、該添加剤の例には、特開2009−223001号公報の[0055]〜[0063]に記載の化合物が含まれる。
なお、液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学異方性層のもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADH及びKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP−100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
[オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)]
本発明では、前述のように、重合性基を有するディスコティック液晶の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。
オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
Z−(Y−L−)nCy+・X‐
式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、Z、Xは、後述する一般式(2a)及び(2b)におけるL23、L24、Y22、Y23、Z21、Xに同義であり、その好ましい範囲も同一であり、nは2以上の整数を表す。
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。さらに、オニウム塩化合物は、温度T1℃では配向膜材料との親和性が高く、一方、温度T2℃では、親和性が低下しているのが好ましい。水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温〜150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合による親和性を利用するのが好ましい。但し、この例に限定されるものではない。
例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Journal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、Angewante Chemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
例えば、イミダゾリウム環の窒素原子ように、5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子を含有していることも好ましい。
nは、2〜5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を有しているため、前記ディスコティック液晶と強い分子間π−π相互作用が働くため、該ディスコティック液晶の垂直配向、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。
前記一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、前記一般式(I)〜(IV)で表されるディスコティック液晶の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
Figure 0005875434
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
24は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。
22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。
22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R22は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R22が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
pは、1〜10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。Cp2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。Cp2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH2p−)であることが好ましい。
式(2b)中、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。
前記式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b’)
で表される化合物が好ましい。
Figure 0005875434
式(2a’)及び(2b’)中、式(2a)及び(2b)中のそれぞれと同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、且つL25が−CO−O−であるのが好ましい。
23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
30は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報の明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X-)は省略した。
Figure 0005875434
式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1〜2質量%程度であるのが好ましい。
前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
さらに、前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、ある温度を超えて加熱することで、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進することができる。これは、加熱による熱エネルギーでポリビニルアルコールとの水素結合が切断され、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
[フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)]
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶、主に、前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶、の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004−333852号、同2004−333861号、同2005−134884号、同2005−179636号、及び同2005−181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005−179636号、及び同2005−181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1〜1質量%程度であるのが好ましい。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
[溶媒]
光学異方性層の形成に利用する、前記組成物は塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
[重合開始剤]
前記の重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を紫外線照射により固定する。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
[増感剤]
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
[その他の添加剤]
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0〜20質量%程度であるのが好ましい。
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
透明支持体:
本発明の光学フィルムは、前記光学異方性層を支持する透明支持体を有する。透明支持体としては、正のRthを示すポリマーフィルムを用いるのが好ましい。また透明支持体として、低Re及び低Rthのポリマーフィルムを用いるのも好ましい。
本発明に使用可能な透明支持体を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
また、前記透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
また、前記透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
[紫外線吸収剤]
上記セルロースアシレートフィルム等の透明支持体には、フィルム自身の耐光性向上、或いは偏光板、液晶表示装置の液晶化合物等の画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、前記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に溶解してから添加してもよいし、また直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースアシレート中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
本発明において紫外線吸収剤の使用量は、セルロースアシレート100質量部に対し0.1〜5.0質量部、好ましくは0.5〜2.0質量部、より好ましくは0.8〜2.0質量部である。
配向膜:
光学異方性層及び透明支持体との間にパターン光学異方性層を実現できる配向膜を形成してもよい。配向膜としては、ラビング配向膜を利用するのが好ましい。
本発明に利用可能な「ラビング配向膜」とは、ラビングによって、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。ラビング配向膜には、液晶分子を配向規制する配向軸があり、当該配向軸に従って、液晶分子は配向する。液晶分子は、配向膜への紫外線照射部分でラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行になるように配向し、未照射部分で液晶分子の遅相軸がラビング方向に対して直交配向するように、配向膜の材料、酸発生剤、液晶、及び配向制御剤を選択する。
ラビング配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85〜99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行、特許第3907735号公報の段落番号[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。ラビング配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
長尺状の偏光膜であって、吸収軸が長手方向の偏光膜と貼り合わせるには、長尺のポリマーフィルムからなる支持体上に配向膜を形成し、長手方向に対して45°の方向に連続的にラビング処理して、ラビング配向膜を形成するのが好ましい。
可能であれば、光配向膜を利用してもよい。
また、配向膜は、少なくとも一種の光酸発生剤を含有していてもよい。光酸発生剤とは、紫外線等の光照射により分解し酸性化合物を発生する化合物である。前記光酸発生剤が、光照射により分解して酸性化合物を発生すると、配向膜の配向制御能に変化が生じる。ここでいう配向制御能の変化は、配向膜単独の配向制御能の変化として特定されるものであっても、配向膜とその上に配置される光学異方性層形成用組成物中に含まれる添加剤等とによって達成される配向制御能の変化として特定されるものであってもよいし、またこれらの組み合わせとして特定されるものであってもよい。
ディスコティック液晶は、オニウム塩を添加することで、直交垂直配向状態になる場合がある。分解により発生した酸と、該オニウム塩とが、アニオン交換すると、該オニウム塩の配向膜界面における偏在性が低下し、直交垂直配向効果を低下させ、平行垂直配向状態を形成させてもよい。また、例えば、配向膜がポリビニルアルコール系配向膜である場合には、そのエステル部分が発生した酸により分解し、その結果、前記オニウム塩の配向膜界面偏在性を変化させてもよい。
前記光学異方性層は、配向膜を利用した種々の方法で形成でき、その製法については特に制限はない。
第1の態様は、ディスコティック液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、ディスコティック液晶を所定の配向状態とし、それを固定して一方の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他方の位相差領域を形成する。例えば、前記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特願2010−141346号明細書(特開2012−008170号公報)に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1及び第2の位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特願2010−173077号明細書(特開2012−032661号公報)に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
また、第1及び第2の態様を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog.Polym.Sci.,23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
さらに、第3の態様として、重合性が互いに異なる重合性基(例えば、オキセタニル基及び重合性エチレン性不飽和基)を有するディスコティック液晶を利用する方法がある。この態様では、ディスコティック液晶を所定の配向状態にした後、一方の重合性基のみの重合反応が進行する条件で、光照射等を行い、プレ光学異方性層を形成する。次に、他方の重合性基の重合を可能にする条件で(例えば他方の重合性基の重合を開始させる重合開始剤の存在下で)、マスク露光を行う。露光部の配向状態は完全に固定され、所定のReを有する一方の位相差領域が形成される。未露光領域は、一方の反応性基の反応が進行しているものの、他方の反応性基は未反応のままとなっている。よって、等方相温度を超え、他方の反応性基の反応が進行可能な温度まで加熱すると、未露光領域は、等方相状態に固定され、即ち、Reが0nmになる。
偏光膜:
偏光膜は、一般的な偏光膜を用いることができる。例えば、ヨウ素や二色性色素によって染色されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子膜を用いることができる。
粘着層:
光学異方性層と偏光膜との間には、粘着層が配置されていてもよい。光学異方性層と偏光膜との積層のために用いられる粘着層とは、例えば、動的粘弾性測定装置で測定したG’とG”との比(tanδ=G”/G’)が0.001〜1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。粘着剤については特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いることができる。
光学フィルムの層構成:
本発明の光学フィルムは、目的に応じて必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。好ましい態様としては、光学異方性層の上にハードコート層が積層された態様、光学異方性層の上に反射防止層が積層された態様、光学異方性層の上にハードコート層が積層され、その上に更に反射防止層が積層された態様、光学異方性層の上に防眩層が積層された態様等が挙げられる。該反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して設計された、少なくとも一層以上の層からなる層である。
反射防止層は、最も単純な構成では、フィルムの最表面に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
ハードコート層や反射防止層を有す本発明の光学フィルムの具体的な層構成の例を下記に示す。
支持体/光学異方性層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層
支持体/光学異方性層/支持体/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/防眩層
支持体/光学異方性層/支持体/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層
光学異方性層/支持体/支持体/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/防眩層
光学異方性層/支持体/支持体/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/防眩層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層
光学異方性層/支持体/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/防眩層
光学異方性層/支持体/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
光学異方性層/支持体/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層
支持体/光学異方性層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/防眩層
支持体/光学異方性層/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/防眩層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
支持体/光学異方性層/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
上記の各構成において、光学異方性層の上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の機能層を直接形成することが好ましい。また、光学異方性層を含む光学フィルムと、別途、支持体上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の層を設けた光学フィルムとを積層して製造してもよい。
本発明の光学フィルムの好ましい態様の一つは、光学異方性層側から順に、中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層が積層された反射防止層を有する態様である。該中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60〜1.65であり、該中屈折率層の厚さが50.0nm〜70.0nmであり、該高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70〜1.74であり、該高屈折率層の厚さが90.0nm〜115.0nmであり、該低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33〜1.38であり、該低屈折率層の厚さが85.0nm〜95.0nmであることが好ましい。
上記構成の中でも、以下に示す構成(1)又は構成(2)が、特に好ましい。
構成(1):中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60〜1.64であり、中屈折率層の厚さが55.0nm〜65.0nmであり、高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70〜1.74であり、高屈折率層の厚さが105.0nm〜115.0nmであり、低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33〜1.38であり、低屈折率層の厚さが85.0nm〜95.0nmを有する低屈折率層である反射防止フィルム。
構成(2):中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60〜1.65であり、中屈折率層の厚さが55.0nm〜65.0nmであり、高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70〜1.74であり、高屈折率層の厚さが90.0nm〜100.0nmであり、低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33〜1.38であり、低屈折率層の厚さが85.0nm〜95.0nmである反射防止フィルム。
各層の屈折率と厚みを上記範囲内とすることで反射色の変動をより小さくできる。構成(1)は反射色の変動を小さく抑えつつ、反射率を特に低くすることができる構成であり、特に好ましい。また、構成(2)は反射率の変動が構成(1)よりも更に小さく抑えられる構成であり、膜厚変動に対するロバスト性に優れるため、特に好ましい。
そして、本発明においては、設計波長λ(=550nm:視感度が最も高い波長域の代表)に対して、上記中屈折率層が下式(I)を、上記高屈折率層が下式(II)を、上記低屈折率層が下式(III)をそれぞれ満足することが好ましい。
式(I) λ/4×0.68<n11<λ/4×0.74
式(II) λ/2×0.66<n22<λ/2×0.72
式(III) λ/4×0.84<n33<λ/4×0.92

式中、n1は中屈折率層の屈折率であり、d1は中屈折率層の層厚(nm)であり、n2は高屈折率層の屈折率であり、d2は高屈折率層の層厚(nm)であり、n3は低屈折率層の屈折率であり、d3は低屈折率層の層厚(nm)であり、n3<n1<n2である。
上記式(I)、式(II)、式(III)を満足する場合には、反射率が低くなり、かつ反射色の変化を抑制することができるために好ましい。また、これにより、指紋や皮脂等の油脂成分が付着した際に色味の変化が少ないために汚れが視認されにくくなるために好ましい。
波長380nmから780nmの領域におけるCIE標準光源D65の5度入射光に対する正反射光の色味が、CIE1976L*a*b*色空間のa*、b*値がそれぞれ0≦a*≦8、かつ、−10≦b*≦0の範囲内にすること、更には上記の色味変動範囲内で、各層のうち任意の層の層厚が2.5%変動したときの色差ΔEを下記式(5)の範囲にすることで、反射色のニュートラル性が良好で、製品ごとに反射色に差がなく、かつ、指紋や皮脂等の油脂成分が表面に付着した際に汚れが目立たなくなるため好ましい。重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤、及び含フッ素多官能アクリレートを含有した低屈折率層と上記層構成とを組み合わせて用いることで、多層干渉膜構成にしてもマジックや指紋、皮脂等の油脂成分が付着しにくく、付着しても拭き取りやすくかつ目立たなくすることが可能となる。
式(5):
ΔE={(L*−L*')2+(a*−a*')2+(b*−b*')21/2≦3
(L*'、a*'、b*'は設計膜厚時の反射光の色味)
また、画像表示装置の表面に設置した場合、鏡面反射率の平均値を0.5%以下とすることにより、映り込みを著しく低減することができ、好ましい。
鏡面反射率及び色味の測定は、分光光度計"V−550"(日本分光(株)製)にアダプター"ARV−474"を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角θ(θ=5〜45°、5°間隔)における出射角−θの鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価することができる。更に、測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の各入射角の入射光に対する正反射光の色味を表すCIE1976L*a*b*色間のL*値、a*値、b*値を算出し、反射光の色味を評価することができる。
各層の屈折率の測定は、各層の塗布液を3〜5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)にて測定することができる。本明細書では、「DR−M2,M4用干渉フィルタ 546(e)nm 部品番号:RE−3523」のフィルタを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。各層の膜厚は光の干渉を利用した反射分光膜厚計"FE−3000"(大塚電子(株)製)や、TEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察により測定することができる。反射分光膜厚計でも膜厚と同時に屈折率の測定も可能であるが、膜厚の測定精度を上げるために、別手段で測定した各層の屈折率を用いることが望ましい。各層の屈折率が測定できない場合は、TEMによる膜厚測定が望ましい。その場合は、10箇所以上測定し、平均した値を用いることが望ましい。
本発明の光学フィルムは、製造時の形態がフィルムをロール状に巻き取った形態をしているのが好ましい。その場合に、反射色の色味のニュートラリティーを得るためには、任意の1000m長の範囲の層厚の平均値d(平均値)、最小値d(最小値)、及び最大値d(最大値)をパラメーターとする下記式(6)で算出される層厚分布の値が、薄膜層の各層につき、5%以下であるのが好ましく、より好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下、より更に好ましくは2.5%以下、2%以下が特に好ましい。
式(6):(最大値d−最小値d)×100/平均値d
(ハードコート層)
本発明の光学フィルムは、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を設けることができる。本発明においては、ハードコート層を設けなくてもよいが、ハードコート層を設けた方が鉛筆引掻き試験などの耐擦傷性面が強くなり、好ましい。
好ましくは、ハードコート層上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
ハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.70である。ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層ある態様では、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、更に好ましくは5μm〜20μmである。
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、各種屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
ハードコート層は、前記無機化合物の粒子など以外に紫外線吸収剤などを添加することができる。
(紫外線吸収剤)
前記ハードコート層等、パターン光学異方性層のさらに外側に配置される層中に、紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。使用可能な紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できるもので、公知のものがいずれも使用できる。そのような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、電子画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得るためにベンゾトリアゾール系又はヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ter―ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C 7〜9−ブランチ直鎖アルキルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5,5′−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、求める紫外線透過率や紫外線吸収剤の吸光度にもよるが、ハードコート層形成用組成物(但し塗布液として調製される場合は溶媒を除いた固形分)100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは1〜20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が20質量部よりも多い場合には、硬化性組成物の紫外線による硬化性が低下する傾向があると共に、ハードコート層の可視光線透過率が低下するおそれもある。一方、1質量部より少ない場合には、ハードコート層の紫外線吸収性を十分に発揮することができなくなる。
(防眩層)
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくはフィルムの硬度、耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
防眩層については特開2009−98658号公報の段落[0178]〜[0189]に記載されており、本発明においても同様である。
(高屈折率層及び中屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、1.70〜1.74であることが好ましく、1.71〜1.73であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.60〜1.64であることが好ましく、1.61〜1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
上記中屈折率層は、上記高屈折率層と屈折率を異ならせた以外は同様の材料を用いて同様に調整できるので、以下、特に高屈折率層について説明する。
上記高屈折率層は、無機微粒子、3官能以上の重合性基を有する硬化性化合物(以下、「バインダー」と称する場合もある)、溶媒及び重合開始剤を含有する塗布組成物を塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱、電離放射線照射あるいは両手段の併用により硬化して形成されたものであるのが好ましい。硬化性化合物や開始剤を用いる場合は、塗布後に熱及び/又は電離放射線による重合反応により硬化性化合物を硬化させることで、耐傷性や密着性に優れる中屈折率層や高屈折率層が形成できる。
[無機微粒子]
上記無機微粒子としては、金属の酸化物を含有する無機微粒子が好ましく、Ti、Zr、In、Zn、Sn、Al及びSbから選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物を含有する無機微粒子がより好ましい。また、中屈折率層及び高屈折率層のうち少なくともいずれかが、導電性の無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、屈折率の観点から、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。また、導電性の観点からは、Sb、In、Snのうちの少なくとも1種類の金属の酸化物を主成分とする無機微粒子を用いることが好ましい。導電性の無機微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化レニウム、酸化銀、酸化ニッケル及び酸化銅からなる群から少なくとも一つ選択される金属酸化物が更に好ましい。
無機微粒子の量を変化させることで所定の屈折率に調整することができる。層中の無機微粒子の平均粒径は、酸化ジルコニウムを主成分として用いた場合、1〜120nmであることが好ましく、更に好ましくは1〜60nm、2〜40nmが更に好ましい。この範囲内で、ヘイズを抑え、分散安定性、表面の適度の凹凸による上層との密着性が良好となり、好ましい。
酸化ジルコニウムを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.00〜2.40であることが更に好ましく、2.00〜2.20であることが最も好ましい。
無機微粒子の添加量は、添加する層により異なり、中屈折率層では中屈折率層全体の固形分に対し、20〜60質量%が好ましく、25〜55質量%がより好ましく、30〜50質量%が更に好ましい。高屈折率層では高屈折率層全体の固形分に対し、40〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましく、60〜80質量%が更に好ましい。
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。無機微粒子の化学的表面処理剤、溶媒、触媒、及び分散物の安定剤は特開2006−17870号公報の[0058]〜[0083]に記載されている。
無機微粒子の分散は、分散機を用いて分散することができる。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は10〜120nmである。好ましくは20〜100nmであり、更に好ましくは30〜90nm、特に好ましくは30〜80nmである。無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層及び中屈折率層を形成できる。
[硬化性化合物]
硬化性化合物としては、重合性化合物が好ましく、重合性化合物としては電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーが好ましく用いられる。これらの化合物中の官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、硬化性化合物、重合開始剤、光増感剤など)以外に、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
本発明に用いる高屈折率層及び中屈折率層は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、更にマトリックス形成に必要なバインダー前駆体である硬化性化合物(例えば、前述の電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、硬化性化合物の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
更に、高屈折率層及び中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時又は塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。このようにして作製した高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率層及び中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
高屈折率層の形成において、硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。高屈折率層を酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性、更には、高屈折率層と高屈折率層と隣接する層との接着性を改良することができる。好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で硬化性樹脂の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
上述したように、中屈折率層は、高屈折率層と同様の材料を用いかつ同様にして得ることができる。
具体的には、中屈折率層、高屈折率層が前記式(I)、式(II)の膜厚と屈折率を満足するように微粒子の種類、樹脂の種類を選択すると共にその配合比率を決め、主な組成を決定することが一例として挙げられる。
(低屈折率層)
本発明における低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.47であることが好ましい。多層薄膜干渉型の反射防止フィルム(中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)の場合の低屈折率層の屈折率は1.33〜1.38であることが望ましく、更に望ましくは1.35〜1.37が望ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
低屈折率層まで形成した反射防止フィルムの強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が95゜以上であることが好ましい。更に好ましくは102゜以上である。特に、接触角が105°以上であると、指紋に対する防汚性能が著しく良化するため、特に好ましい。また、水の接触角が102°以上で、かつ、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であることがより好ましく、23dyne/cm以下であることが特に好ましく、20dyne/cm以下であることが更に好ましい。最も好ましくは、水の接触角が105°以上で、かつ、表面自由エネルギーが20dyne/cm以下である。
[低屈折率層の形成]
低屈折率層は、重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤、重合性不飽和基を有する含フッ素共重合体、無機微粒子、その他所望により含有される任意成分を溶解あるいは分散させた塗布組成物を塗布と同時、又は塗布・乾燥後に電離放射線照射(例えば光照射、電子線ビーム照射等が挙げられる。)や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により硬化して、形成することが好ましい。
特に、低屈折率層が電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が1体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度、耐薬品性に優れた層を得ることができる。
好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下であり、更に好ましくは酸素濃度が0.1体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が0.05体積%以下、最も好ましくは0.02体積%以下である。
酸素濃度を1体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
上記全ての層を形成するための塗布組成物には、低屈折率層用組成物と同様の溶剤を用いることができる。
[粘着剤層]
各層の貼り合わせに用いる接着剤としては、粘着剤でもUV接着剤でもよく、粘着剤層や接着剤層などを介して貼り合わせてもよく、特に限定されない。粘着剤は、例えば、透明支持体上にパターン光学異方性層を形成した積層体と、支持体上に上記ハードコート層等を形成した積層体とを貼合するために用いられる。接着剤は、例えば、パターン光学異方性層面と、前記ハードコート層等の支持体の裏面とを接着するために用いてもよいし、また前記2つの積層体の支持体のそれぞれ裏面を接着するために用いてもよい。
なお、パターン光学異方性層の表面、又は該パターン光学異方性層を支持する透明支持体の裏面に、前記ハードコート層形成用塗布組成物を塗布して、直接形成してもよく、その場合は、接着剤は不要である。
粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
粘着剤層には、例えば、ベースモノマー、共重合モノマーの種類、その配合割合、架橋剤の種類、その配合量、添加剤の種類、その配合量等を制御することにより行うことができる。例えば、粘着剤ベースポリマーの分子量を調整したり、ガラス転移温度や凝集性などが異なるモノマーを共重合したり、架橋剤の添加量による架橋度を制御することなどが効果的に適用される。
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。特に、アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含む粘着剤により形成されているものを好適に用いることができる。
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜20のものを例示できる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソミリスチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
前記アクリル系ポリマーのなかでも、平衡水分率を低く制御する観点から、疎水性の高い(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリルポリマーをベースポリマーとすることが好ましい。一般に(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、前記の光学透明性、適度な濡れ性と凝集力、接着力、耐候性や耐熱性などの点から、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数3〜9のもの、好ましくは4〜8のものが実用上好ましく用いられる。これらアルキル基のなかでも、アルキル基の炭素数が大きい程、疎水性が高くなり、当該平衡水分率を低くするうえで好ましい。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチルがあげられる。これらのなかでも疎水性が高い(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましい。
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例としてあげられる。
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、全構成モノマーの重量比率において、0〜30%程度、さらには0.1〜15%程度であるのが好ましい。
これら共重合モノマーの中でも、光学フィルム用途として液晶セルへの接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマーが好ましく用いられる。これらモノマーは、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物モノマーなどは分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。例えば、ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いるよりも、好ましくは(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルのように、ヒドロキシアルキル基のアルキル基の大きいものを用いるのが好ましい。共重合モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーを用いる場合、その割合は全構成モノマーの重量比率において、0.01〜5%、さらには0.01〜3%であるのが好ましい。また、共重合モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを用いる場合、その割合は全構成モノマーの重量比率において、0.01〜10%、さらには0.01〜7%であるのが好ましい。
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、10万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
また前記粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とするのが好ましい。粘着剤に配合できる多官能化合物としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートがあげられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、などがあげられる。これら架橋剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。有機系架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤は過酸化物系架橋剤と組み合わせて好適に用いられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
アクリル系ポリマー等のベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.001〜20重量部程度が好ましく、さらには0.01〜15重量部程度が好ましい。前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が好ましい。過酸化物系架橋剤は、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、0.01〜3重量部程度が好ましく、0.02〜2.5重量部程度が好ましく、さらには0.05〜2.0重量部程度が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、0.001〜2重量部程度が好ましく、さらには0.01〜1.5重量部程度が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤および過酸化物系架橋剤は、前記範囲で用いることができる他、これらを併用して好ましく用いることができる。
さらに粘着剤には、必要に応じて、シランカップリング剤、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、透明微粒子等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。
添加剤としては、シランカップリング剤が好適であり、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、シランカップリング剤(固形分)0.001〜10重量部程度が好ましく、さらには0.005〜5重量部程度を配合するのが好ましい。シランカップリング剤としては、従来から知られているものを特に制限なく使用できる。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤を例示できる。
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン−イソプレン−スチレン系ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム等があげられる。シリコーン系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等があげられ、これらベースポリマーもカルボキシル基等の官能基が導入されたものを使用することができる。
また上記に挙げた以外でも、UV硬化型粘着剤など特定の官能基により硬化させるタイプの粘着剤および接着剤でも本発明おいては使用できる。
前記基材フィルム(支持体)は、光学異方性層の透明支持体を兼ねていてもよい。基材フィルムとして利用可能なポリマーフィルムの例については、前記光学異方性層の透明支持体の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
液晶セル:
本発明の3D用画像表示システムに用いられる3D用画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
3D画像表示システム用偏光板:
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、偏光板を通して画像を認識する。偏光板の一態様は、偏光眼鏡である。前記位相差板によって右眼用及び左眼用の円偏光画像を形成する態様では、円偏光眼鏡が用いられ、直線偏光画像を形成する態様では、直線眼鏡が用いられる。光学異方性層の前記第1及び第2の位相差領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され、前記第1及び第2位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前記偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
偏光眼鏡を含め、本発明の3D用画像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、位相差板は、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第1位相差領域と前記第2位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
円偏光を利用する場合、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は−45度)に近いほど好ましい。
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004−170693号公報に開示がある。
偏光眼鏡の例としては、特開2004−170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM−M220Wの付属品を挙げることができる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
<透明支持体Aの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
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セルロースアシレート溶液Aの組成
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置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
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別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
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添加剤溶液Bの組成
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下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部
下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
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Figure 0005875434
<<セルロースアセテート透明支持体の作製>>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルム(透明支持体A)を作製した。透明支持体Aは紫外線吸収剤を含有しておらず、Re(550)は0nmであり、Rth(550)は12.3nmであった。
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアセテート透明支持体Aを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体Aを作製した。
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アルカリ溶液の組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。次に、透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスクをラビング配向膜上に配置し、室温空気下にて、UV−C領域における照度2.5mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を4秒間照射して、光酸発生剤を分解し酸性化合物を発生させることにより第1位相差領域用配向層を形成した。その後に、ストライプマスクのストライプに対して45°の角度を保持して500rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであった。
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配向膜形成用塗布液の組成
────────────────────────────────────
配向膜用ポリマー材料 3.9質量部
(PVA103、クラレ(株)製ポリビニルアルコール)
光酸発生剤(S−2) 0.1質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
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Figure 0005875434
<パターン化された光学異方性層Aの作製>
下記の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。次いで、膜面温度110℃で2分間加熱熟成した後、80℃まで冷却し空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を20秒間照射して、その配向状態を固定化することによりパターン光学異方性層Aを形成した。マスク露光部分(第1位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶が垂直配向しており、未露光部分(第2位相差領域)は直交に垂直配向していた。なお、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
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光学異方性層用塗布液の組成
────────────────────────────────────
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────
Figure 0005875434
形成されたパターン光学異方性層Aの第1位相差領域及び第2位相差領域をそれぞれTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、第1位相差領域と第2位相差領域では、対応する配向層中における光酸発生剤S−2の存在比が8対92であり、第1位相差領域ではS−2がほとんど分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1位相差領域の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤S−2から発生した酸HBF4のアニオンBF4 -が存在していることが確認された。第2位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは93対7、BF4 -は90対10であった。このことから、第2位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、及び第1位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
パターン化された光学異方性層Aを、第1位相差領域又は第2位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。図9に示す観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第2位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は白色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体から剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、遅相軸の方向、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<表面フィルムAの作製>
<<反射防止膜の作製>>
[ハードコート層用塗布液Aの調製]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Aとした。
メチルエチルケトン900質量部に対して、シクロヘキサノン100質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)750質量部、シリカゾル(MIBK−ST、日産化学工業(株)製)200質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50質量部、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
[中屈折率層用塗布液Aの調製]
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])5.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.05質量部、メチルエチルケトン66.6質量部、メチルイソブチルケトン7.7質量部及びシクロヘキサノン19.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
[中屈折率層用塗布液Bの調製]
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)4.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.14質量部、メチルエチルケトン66.5質量部、メチルイソブチルケトン9.5質量部及びシクロヘキサノン19.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して中屈折率層用塗布液Bを調製した。
屈折率1.36、膜厚90μmとなるように、中屈折率用塗布液Aと中屈折率用塗布液Bとを適量混合し、中屈折率塗布液を調製した。
[高屈折率層用塗布液の調製]
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、光重合開始剤含有、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])14.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)0.75質量部、メチルエチルケトン62.0質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して高屈折率層用塗布液Cを調製した。
[低屈折率層用塗布液の調製]
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
Figure 0005875434
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった。
[中空シリカ粒子分散液Aの調製]
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
[低屈折率層用塗布液Aの調製]
各成分を下記のように混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分濃度5質量%の低屈折率層用塗布液Aを作製した。下記各成分の質量%は、塗布液の全固形分に対する、各成分の固形分の比率である。
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・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1) 15質量%
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製) 7質量%
・MF1:国際公開第2003/022906号パンフレットの実施例記載の下記含フッ素不飽和化合物(重量平均分子量1600) 5質量%
・M−1:日本化薬(株)製KAYARAD DPHA 20質量%
・分散液A:前記中空シリカ粒子分散液A(アクリロイルオキシプロピルトリメ
トキシシランで表面修飾した中空シリカ粒子ゾル、固形分濃度18.2%) 50質量%
・Irg127:光重合開始剤イルガキュア127(チバ・スペシャルティ
・ケミカルズ(株)製) 3質量%
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Figure 0005875434
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を表面フィルム用支持体Aとして使用し、表面フィルム用支持体A上に、前記組成のハードコート層用塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布した。なお、TD80ULは、紫外線吸収剤を含んでいる。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層Aを形成した。
更に中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布した。中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。このようにして、表面フィルムAを作製した。
<光学フィルムAの作製>
上記作製した表面フィルムAのTD80UL面とパターン化された光学異方性層Aの光学異方性層面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムAを作製した。
<偏光板Aの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を偏光板A用保護フィルムAとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULと、同様のアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)を、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜の間に挟んで貼り合せ、TD80ULとVA用位相差フィルムが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Aを作製した。このとき位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が垂直になるようにした。
<光学フィルムA付偏光板Aの作製>
上記作製した光学フィルムAの透明支持体A面と偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムA付偏光板Aを作製した。このときパターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Aの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した
光学フィルムA付偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(a)の構成の立体表示装置Aを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは、図3と同様である。
(実施例2)
<透明支持体B>
TD80UL(富士フイルム社製)を用意し、透明支持体Bとして使用した。また、TD80ULの膜厚は80μm、面内レターデーションRe(550)は2nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は40nmであった。
<パターン化された光学異方性層Bの作製>
透明支持体Aを上記透明支持体Bに変更し、ラビング配向膜塗布液を下記組成に変更した以外は実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Bの作製を行った。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
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配向層用組成
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配向膜用ポリマー材料 3.9質量部
(PVA103、クラレ(株)製ポリビニルアルコール)
光酸発生剤(I−33) 0.1質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
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Figure 0005875434
形成されたパターン光学異方性層Bの第1位相差領域及び第2位相差領域をそれぞれTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIM
S V)により分析したところ、第1位相差領域と第2位相差領域では、対応する配向層中における光酸発生剤I−33の存在比が10対90であり、第1位相差領域ではI−33がほとんど分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1位相差領域の空気界面に、配向膜界面配向剤(II−1)のカチオン及び光酸発生剤I−33から発生した酸HBF4のアニオンBF4 -が存在していることが確認された。第2位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは93対7、BF4 -は90対10であった。このことから、第2位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、及び第1位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
(光学異方性層Bの評価)
作製した光学異方性層Bを透明支持体Bから剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<光学フィルムBの作製>
パターン化された光学異方性層BのTD80ULの表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムBを作製した。
<光学フィルムB付偏光板Bの作製>
上記作製した光学フィルムBのパターン化された光学異方性層B面と実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムB付偏光板Bを作製した。このときパターン化された光学異方性層Bの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Bの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した
光学フィルムB付偏光板BのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(b)の構成の立体表示装置Bを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(実施例3)
<透明支持体Cの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
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セルロースアセテート溶液の組成
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酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
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別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤(A)16質量部、メチレンクロライド92質量部及びメタノール8質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、6.0質量部であった。
Figure 0005875434
得られたドープを、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムを140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%の透明支持体Cを作製した。
得られた透明支持体Cの厚さは80μmであった。また、面内レターデーション(Re)は8nm、厚み方向のレターデーション(Rth)は78nmであった。
<パターン化された光学異方性層Cの作製>
透明支持体Aを上記透明支持体Cに変更し、光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外は実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Cの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
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光学異方性層塗布液の組成
────────────────────────────────────────
ディスコティック液晶E−2 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────────
Figure 0005875434
形成されたパターン化された光学異方性層Cの第1位相差領域及び第2位相差領域をそれぞれTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、第1位相差領域と第2位相差領域では、対応する配向層中における光酸発生剤S−1の存在比が8対92であり、第1位相差領域ではS−1がほとんど分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1位相差領域の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤S−1から発生した酸HBF4のアニオンBF4 -が存在していることが確認された。第2位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、配向膜界面配向剤(II−1)のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは93対7、BF4 -は90対10であった。このことから、第2位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、及び第1位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体から剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<偏光板Cの作製>
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。実施例1と同様の方法にてアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)及び透明支持体Cを、偏光膜の間に挟んで接着剤で貼り合せ、VA用位相差フィルムと透明支持体Cが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Cを作製した。このとき位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が垂直になるようにした。パターン化された光学異方性層Cの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<表面フィルムA付偏光板Cの作製>
実施例1で作製した表面フィルムAのTD80UL面と上記偏光板Cのパターン化された光学異方性層C面を接着剤で貼り合せ、表面フィルムA付偏光板Cを作製した。
<立体表示装置Cの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した表面フィルムA付偏光板CのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(c)の構成の立体表示装置Cを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(実施例4)
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
実施例1で作製した透明支持体Bの、鹸化処理を施した面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。その後に、400rpmで一方向に1往復ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。
<パターン化された光学異方性層Dの作製>
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液として用いる。該塗布液を塗布、膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。次に、ストライプマスクのストライプが上記ラビング方向に対して平行になるように保持して、透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスクを光学異方性層用塗布液を塗布した上に配置し、空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を5秒間照射して、その配向状態を固定化することにより第1位相差領域を形成した。続いて、膜面温度140℃まで昇温し、一旦等方相にした後、100℃まで降温し、その温度で1分間加熱して均一配向させた。室温まで冷却した後、20mW/cm2で20秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより第2位相差領域を形成した。第1位相差領域と第2位相差領域の遅相軸は直交しており、膜厚は、0.9μmであった。
────────────────────────────────────────
光学異方性層用組成物
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ディスコティック液晶E−2 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────────
Figure 0005875434
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体Bから剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<光学フィルムDの作製>
パターン化された光学異方性層Dの透明支持体Bの表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムDを作製した。
<偏光板Dの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を偏光板D用保護フィルムDとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULの鹸化した面と同様にアルカリ鹸化処理したWV−EA(富士フイルム社製)の支持体面とを、偏光膜の間に挟んで貼り合せ、偏光板Dを作製した。
<光学フィルムD付偏光板Dの作製>
上記作製した光学フィルムDのパターン化された光学異方性層D面と偏光板DのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムD付偏光板Dを作製した。このときパターン化された光学異方性層Dの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Dの作製>
円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製、TNモード)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合し、図6(b)の構成の立体表示装置Dを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図2と同様であった。
(実施例5)
<パターン化された光学異方性層Eの作製>
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例4と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Eを作製した。光学異方性層の膜厚は、1.6μmであった。
────────────────────────────────────────
光学異方性層用組成
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ディスコティック液晶E−3 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────────
Figure 0005875434
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体Bから剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<光学フィルムEの作製>
パターン化された光学異方性層Eの透明支持体Bの表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムEを作製した。
<光学フィルムE付偏光板Eの作製>
上記作製した光学フィルムEのパターン化された光学異方性層E面と実施例4で作製した偏光板DのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムE付偏光板Eを作製した。このときパターン化された光学異方性層Eの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Eの作製>
円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製、TNモード)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板Eを貼合し、図6(b)の構成の立体表示装置Eを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図2と同様であった。
(実施例6)
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
(1)平行配向膜(第一の配向膜)の作製
実施例2で作製した透明支持体Bの、鹸化処理を施した面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水/メタノール溶液(PVA103(4.0g)を水72g及びメタノール24gに溶解させた、粘度4.35cp、表面張力44.8dyne)を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。
(2)パターニング直交配向膜(第二の配向膜)の作製
和光純薬製ポリアクリル酸(Mw25000)2.0gをトリエチルアミン2.52g/水1.12g/プロパノール5.09g/3−メトキシ−1−ブタノール5.09gに溶解させ、塗布液を調製した。
次に、フレキソ版として、図7に示す形状の凹凸を有する合成ゴム状フレキソ版を作製した。
図8に記載のフレキソ印刷装置として、フレキシプルーフ100(RK Print Coat Instruments Ltd. UK)を使用した。アニロックスローラはセル400線/cm(容積3cm3/m2)を使用した。上記フレキソ版をフレキシプルーフ100の圧胴に感圧テープをつけて貼り合わせた。印圧ローラに前記平行配向膜を貼り付けた後、前記パターニング直交配向膜用塗布液をドクターブレードに入れ、印刷速度30m/minで直交配向膜を平行配向膜の上にパターン印刷した。
(3)ラビング配向層の作製
80℃で5分間乾燥させた後に、パターンのストライプラインに対して平行方向に、1000rpmで1往復ラビング処理を行い、ラビング配向層を作製した。
<パターン化された光学異方性層Fの作製>
実施例4で作製した光学異方性用塗布液を塗布、膜面温度110℃で1分間乾燥して液晶相状態とした後、80℃まで冷却して、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、パターン化された光学異方性層Fの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体Bから剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜(第一の配向膜)/ポリアクリル酸系ラビング配向膜(第二の配向膜)上で配向させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<光学フィルムFの作製>
パターン化された光学異方性層Fの透明支持体Bの表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムFを作製した。
<光学フィルムF付偏光板Fの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を偏光板F用保護フィルムFとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜をえた。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULを、鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜の片面に貼り合せ、さらにもう片面には、光学フィルムFのパターン化された光学異方性層F面を接着剤を介して貼り合せた。このようにして、TD80ULと光学フィルムFが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Fを作製した。このときパターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Fの作製>
円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製、TNモード)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合し、図6(d)の構成の立体表示装置Fを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図2と同様であった。
(実施例7)
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
Re(550)が138nm、Rth(550)が69nmの帝人化成社製ピュアエースフィルムの表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。その後に、ピュアエースの遅相軸と平行方向に400rpmで1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。配向膜の厚みは0.5μmであった。
<パターン化された光学異方性層Gの作製>
下記組成の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、1/2波長用塗布液として用いた。該塗布液を塗布、膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。次に、横ストライプ幅285μmのマスクを1/2波長層用塗布液を塗布した基板上に配置し、空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫
外線を5秒間照射して、その配向状態を固定化することにより第1位相差領域を形成した。続いて、膜面温度140℃まで昇温し、一旦等方相にした後、20mW/cm2で20秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより第2位相差領域を形成した。この様にしてパターニング1/2波長層を作製した。膜厚は、3.2μmであり、チルト角は、ほぼ90°であることを確認した。別途ガラス基板上に同様の光学異方性層を形成し、測定波長550nmにおけるReを測定したところ、第1位相差領域のReは275nmであり、遅相軸はピュアエースの遅相軸と平行であり、第2位相差領域のReは0nmであった。パターン化された光学異方性層Gの第1位相差領域のReと透明支持体のReとの合計値は413nm、第2位相差領域のReと透明支持体のReとの合計値は138nmであり、第1位相差領域と第2位相差領域の遅相軸は平行であった。
────────────────────────────────────────
光学異方性層形成用組成物
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ディスコティック液晶E−4 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────────
Figure 0005875434
<光学フィルムGの作製>
表面フィルムAのTD80UL面とパターン化された光学異方性層Gの光学異方性層面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムGを作製した。
<偏光板Gの作製>
WV‐EA(富士フイルム社製)の支持体面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。前記のアルカリ鹸化処理したWV‐EAの鹸化した支持体面が偏光膜側となるようしてポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として偏光膜の片面に貼り合せ、さらにもう片面には、光学フィルムGの支持体面を接着剤を介して貼り合せた。このようにして、WV‐EAと光学フィルムGが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Gを作製した。このときパターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が45度になるようにした。
<立体表示装置Gの作製>
円偏光眼鏡方式の3DモニターW220S(Hyundai製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合し、図6(c)の構成の立体表示装置Gを作製した。
(実施例8)
<パターン化された光学異方性層Jの作製>
パターン化された光学異方性層Gの作製において、パターンに対する光学異方性層の遅相軸の方向が45度となるようにラビング角度を調整し、さらに、支持体フィルム(帝人製のピュアエース)との貼合角度がパターン化された光学異方性層Gの場合から45度変更した以外は、パターン化された光学異方性層Gの作製と同様の方法で、パターン化された光学異方性層Jを作製した。
<光学フィルムJの作製>
表面フィルムAのTD80UL面とパターン化された光学異方性層Jの光学異方性層面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムJを作製した。
<偏光板Jの作製>
偏光板Gの作製において、光学フィルムGの代わりに光学フィルムJを使用し、さらにWV‐EA(富士フイルム社製)の代わりにVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)を使用した以外は、偏光板Gの作製と同様にして、偏光板Jを作製した。
<立体表示装置Jの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した偏光板JのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(c)の構成の立体表示装置Jを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(実施例9)
<ハードコート層用塗布液Bの調製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Bとした。メチルエチルケトン900質量部に対して、シクロヘキサノン100質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)750質量部、シリカゾル(MIBK−ST、日産化学工業(株)製)200質量部、光重合開始剤(イルガキュア819、チバ・ジャパン(株)製)50質量部、下記のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN 384−2、チバ・ジャパン(株)製)100質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過してハードコート層用の塗布液Bを調製した。
Figure 0005875434
<低屈折率層用塗布液Bの調製>
各成分を下記のように混合し、MEKに溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を作製した。
低屈折率層塗布液Bの組成
下記のパーフルオロオレフィン共重合体 15質量部
DPHA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製) 7質量部
ディフェンサMCF−323(フッ素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製)
5質量部
下記の含フッ素重合性化合物 20質量部
中空シリカ粒子分散液A(固形分濃度18.2質量%) 50質量部
イルガキュア127(光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製) 3質量部
Figure 0005875434
Figure 0005875434
<ハードコート層の形成>
上記実施例2で作製した光学異方性層Bの光学異方性層面の上に、上記ハードコート層用塗布液Bをグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層Bを形成した。
<低屈折率層の形成>
ハードコート層Bの上に、上記の低屈折率層用塗布液Bをグラビアコーターを用いて塗布した。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.36、膜厚は90nmであった。
以上のようにして、光学異方性層Bの上にハードコート層B及び低屈折率層を積層した光学フィルムKを作製した。
<光学フィルムK付偏光板Kの作製>
上記作製した光学フィルムKの透明支持体Bと実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムK付偏光板Kを作製した。このときパターン化された光学異方性層Bの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Kの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムK付偏光板KのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(e)の構成の立体表示装置Kを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(実施例10)
<表面フィルムの作製>
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
(防眩層用塗布液Eの調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET−30、日本化薬(株)製)31gをメチルイソブチルケトン38gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を1.5g添加し、混合攪拌した。続いてフッ素系表面改質剤(FP−149)0.04g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を6.2gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.520であった。最後に、この溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子(共重合組成比=50/50、屈折率1.540)の30%シクロヘキサノン分散液を39.0g加え、完成液とした。前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用塗布液Eを調製した。
Figure 0005875434
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
ポリシロキサンおよび水酸基を含有する屈折率1.44の熱架橋性含フッ素ポリマー(JTA113、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、コロイダルシリカ分散液MEK−ST−L(商品名、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.3g、前記ゾル液a0.6g、およびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層塗布液Aを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.45であった。
(1)防眩層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製、Re/Rth=2/40)をロール形態で巻き出して、特開2007−41495号公報の[0172]に記載の装置構成および塗布条件で示されるダイコート法によって防眩層用塗布液Eを塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの防眩性を有する防眩層を形成した。
(2)低屈折率層の塗設
上記防眩層用塗布液Eを塗布して防眩層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、前記低屈折率層用塗布液Aを特開2007−41495号公報の[0172]に記載の基本条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージにより酸素濃度0.1体積%の雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、表面フイルムを得た。
上記実施例1で作製した光学異方性層の表面(パターン光学異方性層が形成されている側の面)と、上記で作製した表面フィルムの裏面(防眩層及び低屈折率層が形成されていない側の面)とを、光学的に等方性の粘着剤(綜研化学株式会社製SK-2057)により貼合した。以上のようにして、光学異方性層Aの上に粘着剤、支持体、防眩層及び低屈折率層を積層した光学フィルムLを作製した。
<偏光板Lの作製>
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。実施例1と同様の方法にてアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)及び光学フィルムLの透明支持体A面を、偏光膜の間に挟んで接着剤で貼り合せ、VA用位相差フィルムと光学フィルムLの透明支持体Aが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Lを作製した。このとき位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が45度になるようにした。
<立体表示装置Lの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した偏光板LのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(c)の構成の立体表示装置Lを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(実施例11)
<防眩層付光学異方性層の形成>
上記実施例10の防眩層用塗布液Eを、上記実施例2で作製した光学異方性層Bの透明支持体Bの上に、グラビアコーターを用いて塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの防眩性を有する光学異方性層を作製した。
<低屈折率層の形成>
上記防眩層付光学異方性層の上に、上記の低屈折率層用塗布液Bをグラビアコーターを用いて塗布した。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.36、膜厚は90nmであった。
以上のようにして、光学異方性層Bの透明支持体上に防眩層及び低屈折率層を積層した光学フィルムMを作製した。
<光学フィルムM付偏光板Mの作製>
上記作製した光学フィルムMのパターン化された光学異方性層Bと実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムM付偏光板Mを作製した。このときパターン化された光学異方性層Bの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Mの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムM付偏光板MのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(b)の構成の立体表示装置Mを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(実施例12)
実施例1の透明支持体Aの代わりにZEONOR−ZF14(日本ゼオン(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムNを作製した。ZEONOR−ZF14の膜厚は100μm、面内レターデーションRe(550)は2nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は8nmであった。
<光学フィルムN付偏光板Nの作製>
上記作製した光学フィルムNの透明支持体と実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムN付偏光板Nを作製した。このときパターン化された光学異方性層Aの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Nの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムN付偏光板NのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(e)の構成の立体表示装置Nを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(比較例1)
<光配向膜付透明支持体Aの作製>
国際公開2010/090429号パンフレットに記載の棒状液晶及び配向膜を使用して立体表示装置Hを作製した。
実施例1で作製した透明支持体Aの鹸化処理を施した面に、下記構造の光配向材料E−1 1%水溶液を塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を図10(a)に示すように、方向1にセットして、さらにマスクA(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。その後、図10(b)に示すように、ワイヤーグリッド偏光子を方向2にセットして、さらにマスクB(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定した。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm2とした。
Figure 0005875434
<パターン化された光学異方性層Hの作製>
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。光配向膜付透明支持体A上に該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、パターン化された光学異方性層Gの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
────────────────────────────────────────
光学異方性層用組成
────────────────────────────────────────
棒状液晶(LC242、BASF(株)製) 100質量部
水平配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
────────────────────────────────────────
Figure 0005875434
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体Aから剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜の露光方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、棒状液晶を光配向膜上で配向させて露光することによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<光学フィルムHの作製>
パターン化された光学異方性層Hの透明支持体Aの表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムHを作製した。
<光学フィルムH付偏光板Aの作製>
上記作製した光学フィルムHのパターン化された光学異方性層H面と実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムH付偏光板Aを作製した。このときパターン化された光学異方性層Hの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Hの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムH付偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(b)の構成の立体表示装置Kを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(比較例2)
<光配向膜付透明支持体Bの作製>
透明支持体Bの、鹸化処理を施した面に、比較例1と同様の方法にて光配向膜付透明支持体Bを作製した。
<パターン化された光学異方性層Iの作製>
パターン化された光学異方性層Hの作製において、マスク露光時に、パターン化された光学異方性層Hの作製の場合とは45度だけ角度が異なるワイヤーグリッド偏光子を使用した以外は、パターン化された光学異方性層Hと同様の方法にて、透明支持体B上にパターン化された光学異方性層Iの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
<光学フィルムIの作製>
実施例1で作製した表面フィルムAのTD80UL面とパターン化された光学異方性層Iの光学異方性層面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムIを作製した。
<偏光板Iの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)とWV‐EA(富士フイルム社製)を偏光板I用保護フィルムIとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULと支持体面に前記のアルカリ鹸化処理を施したWV‐EAとを、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜の間に挟んで貼り合せ、TD80ULとWV‐EAが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Iを作製した。
<光学フィルムI付偏光板Iの作製>
上記作製した光学フィルムIの透明支持体B面と偏光板IのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムI付偏光板Iを作製した。このときパターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Iの作製>
円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製、TNモード)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板Iを貼合し、図6(a)の構成の立体表示装置Iを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図2と同様であった。
(実施例13)
<一様な光学異方性層Oの形成>
(アルカリ鹸化処理)
透明支持体Bを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテートフィルムを作製した。
(アルカリ溶液組成)
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
(配向膜の形成)
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0005875434
(ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成)
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む光学異方性層塗布液Oを上記作製した配向膜上にワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し厚さ1.6μmの光学異方性層を形成し、一様な光学異方性層Oを得た。
光学異方性層塗布液(O)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ディスコティック液晶化合物E−4 91質量部
下記アクリレートモノマー 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 0.5質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
メチルエチルケトン 189質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
アクリレートモノマー:
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製)
Figure 0005875434
作製した一様な光学異方性層Oの遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
<パターン化された光学異方性層Oの作製>
パターン化された光学異方性層Hと同様の棒状液晶及び配向膜を使用してパターン化された光学異方性層Oを作製した。
ガラス基板を用意して、パターン化された光学異方性層Hと同様の光配向材料E−1 1%水溶液を塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射した。
このとき、まず、図10(a)に示す配置で、マスク(透過部の横ストライプ幅530μm、遮蔽部の横ストライプ幅530μmのストライプマスク)をセットして、非偏光露光を行った。その後、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を図10(b)に示すように、方向2にセットして、さらにマスク(透過部の横ストライプ幅530μm、遮蔽部の横ストライプ幅530μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定した。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm2とした。
パターン化された光学異方性層Hと同様の下記光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。光配向膜付透明支持体上に該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、パターン化された光学異方性層Oの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、2.3μmであった。
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光学異方性層用組成
────────────────────────────────────────
棒状液晶(LC242、BASF(株)製) 100質量部
水平配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
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(光学異方性層の評価)
表1に、パターン化された光学異方性層Oの遅相軸と配向膜の露光方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、棒状液晶を光配向膜上で配向させて露光することによって、棒状液晶が水平配向した第2の位相差領域と、位相差のない第1の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<一様な光学異方性層O付偏光板Oの作製>
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
SHARP製LC−46XF3の視認側偏光板から剥離したVA用位相差フィルムと、上記作製した一様な光学異方性層Oとで偏光膜を挟んで貼り合せ、一様な光学異方性層O付偏光板Oを作製した。このとき、一様な光学異方性層Oの光学異方性層面が偏光膜側になるように、接着剤を用いて偏光膜と貼合した。一様な光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が45度になるようにした。
<立体表示装置Oの作製>
SHARP製LC−46XF3の視認側の偏光板をはがし、上記作製した一様な光学異方性層O付偏光板OのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。さらに、光学異方性層O付偏光板Oの一様な光学異方性層Oに、パターン化された光学異方性層Oをガラス基板が視認側となるように貼り合せ、立体表示装置Oを作製した。ここで、一様な光学異方性層Oの遅相軸とパターン化された光学異方性層Oの第2位相差領域の遅相軸とが直交するように貼合した。偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(比較例3)
<パターン化された光学異方性層Pの形成>
パターン化された光学異方性層Hの作製において、透明支持体Aを透明支持体Bに変更した以外は同様の方法で、パターン化された光学異方性層Pを作製した。
<光学フィルムPの作製>
パターン化された光学異方性層Pの透明支持体Bの表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムPを作製した。
<光学フィルムP付偏光板Pの作製>
上記作製した光学フィルムPのパターン化された光学異方性層P面と実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムP付偏光板Pを作製した。このときパターン化された光学異方性層Pの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
<立体表示装置Pの作製>
立体表示装置Hの作製において、光学フィルムH付偏光板Aを光学フィルムP付偏光板Pに変更した以外は、立体表示装置Hの作製と同様の方法で立体表示装置Pを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
(比較例4)
<一様な光学異方性層Qの形成>
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)を、温度156℃にて、延伸倍率43%で自由端一軸延伸を行いうことで、一様な光学異方性層Qを作製した。一様な光学異方性層PのRe(550)は125nm、Rth(550)は66nmであった。
<一様な光学異方性層Q付偏光板Qの作製>
一様な光学異方性層O付偏光板Oの作製において、一様な光学異方性層Oを一様な光学異方性層Qに変更した以外は一様な光学異方性層O付偏光板Oの作製と同様の方法で、一様な光学異方性層Q付偏光板Qを作製した。一様な光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が45度になるようにした。
<立体表示装置Qの作製>
立体表示装置Oの作製において、一様な光学異方性層O付偏光板Oを一様な光学異方性層O付偏光板Qに変更した以外は立体表示装置Oの作製を同様の方法で立体表示装置Qを作製した。
表1に、実施例1〜13及び比較例1〜4のパターン化された光学異方性層の物性値(実施例13は、パターン光学異方性層が、ディスコティック液晶E−4の垂直配向の非パターン化光学異方性層と、棒状液晶LC242の水平配向のパターン化光学異方性層との積層体であり、棒状液晶LC242の水平配向のパターン化光学異方性層の物性値を示す)、表2に偏光膜よりも視認側に配置された部材のレターデーションをまとめた。
Figure 0005875434
Figure 0005875434
(評価)
<立体表示装置の評価>
作製した各立体表示装置について、VA型液晶表示装置についてはGD-463D10(JVC製)に付属の3Dメガネを、TN型液晶表示装置についてはW220S(Hyundai製)に付属の3Dメガネを用いて以下の評価を行った。評価は3Dメガネの左目側と右目側の両方で行い、平均値をもとに、以下の評価を行った。なお、基準形態については、VA型液晶表示装置の実施例1〜3、8〜12では比較例3の立体表示装置Pとし、実施例13では比較例4の立体表示装置Qとし、TN型液晶表示装置では比較例2の立体表示装置Iとした。結果を表3に示す。
(1)正面輝度比および正面平均輝度比の測定
上下方向に白と黒が交互に並んだストライプ画像を表示した液晶表示装置の正面に3Dメガネと測定器(BM−5A トプコン製)を配置し、白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて白表示における正面輝度Aを測定した。続いて、白と黒の位置を入れ替えたストライプ画像を表示し、同様に白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて正面輝度Bを測定し、正面輝度Aと正面輝度Bの平均値を立体表示装置の正面輝度とした。
(1−a)正面輝度比
正面輝度比は3Dメガネと地面が平行の場合の正面輝度の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の正面輝度比(%)=各立体表示装置の正面輝度/基準形態の正面輝度(1−b)正面平均輝度比
正面平均輝度比は3Dメガネを回転させたときの正面輝度平均値の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の正面平均輝度比(%)
=各立体表示装置の正面輝度平均値/基準形態の正面輝度平均値
(2)視野角輝度比および視野角平均輝度比の測定
上下方向に白と黒が交互に並んだストライプ画像を表示した液晶表示装置の対し、方位角0度の極角60度に3Dメガネと測定器(BM−5A トプコン製)を配置し、白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて白表示における視野角輝度Cを測定した。続いて、白と黒の位置を入れ替えたストライプ画像を表示し、同様に白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて視野角輝度Dを測定した。さらに、液晶表示装置に対して方位角180度の極角60度に3Dメガネと測定器を配置した場合についても同様の方法で視野角輝度E、視野角輝度Fを測定し、視野角輝度C〜Fの平均値を立体表示装置の視野角輝度とした。
(2−a)視野角輝度比
視野角輝度比は3Dメガネと地面が平行の場合の視野角輝度の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の視野角輝度比(%)
=各立体表示装置の視野角輝度/基準形態の視野角輝度
(2−b)視野角平均輝度比
視野角平均輝度比は3Dメガネを回転させたときの視野角輝度平均値の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の視野角平均輝度比(%)
=各立体表示装置の視野角輝度平均値/基準形態の視野角輝度平均値
(3)耐光性
耐光性試験装置(スーパーキセノンウェザーメーターSX120型(ロングライフキセノンランプ)、スガ試験機(株)製)を用い、放射照度100±25W/m2(波長310nm〜400nm)、試験槽内温度35±5℃、ブラックパネル温度50±5℃、相対湿度65±15%の条件で、JIS K 5600−7−5に準じて耐光性試験25hrを実施した前後に、偏光板の偏光度の変化を調べた。変化率が10%以内である場合を○、それより大きい場合を×とした。
Figure 0005875434
上記表から、棒状液晶を使用した比較例1、比較例3及び比較例2(特に、比較例2)はRthの合計値が大きく視野角における輝度低下が実施例と比較して大きいことがわかる。また、上記表に記載した輝度比が大きいほど、左右方向のクロストークが低くなり、3D視認性に優れていた。
また、紫外線吸収剤を含有するTD80ULなどが偏光膜より視認側に位置した立体表示装置である実施例1〜13及び比較例2〜4は偏光膜の耐光性がよいが、比較例1では、透明支持体Aが紫外線吸収剤を含有しないため耐光性が悪い。すなわち、棒状液晶は、Rthが大きいため、表示性能と耐光性の両立が困難であることがわかる。
10 位相差板
12 パターン光学異方性層
12a 第1の位相差領域
12b 第2の位相差領域
a 面内遅相軸
b 面内遅相軸
14 透明支持体
16 偏光膜
31 フレキソ板
32 平行配向膜(または直交配向膜)
33 パターン印刷用直交配向膜液(またはパターン印刷用平行配向膜液)
40 フレキソ印刷装置
41 圧胴
42 印圧ローラ
43 アニックスローラ
44 ドクターブレード

Claims (11)

  1. 画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、前記表示パネルの視認側に配置される光学フィルムとを少なくとも有する3D画像表示装置であって、
    前記光学フィルムは、重合性基を有するディスコティック液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層を少なくとも含み、
    前記光学異方性層が、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であり、
    前記表示パネルが液晶セルを有し、
    前記3D画像表示装置は、前記液晶セルを挟んで視認側と光源側に一対の偏光膜をさらに有し、
    前記視認側偏光膜より視認側外側に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmであり、
    下記の(i)又は(ii)の何れかを満たすことを特徴とする3D画像表示装置
    (i)前記視認側偏光膜より視認側外側に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−140〜140nmである;
    (ii)前記光学異方性層、及び該光学異方性層の前記視認側偏光膜が配置されている表面と反対の表面上に配置されている全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−104〜104nmである。
  2. 前記ディスコティック液晶が、垂直配向状態に固定されている請求項1に記載の3D画像表示装置
  3. 前記第1及び第2位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光膜の吸収軸とがそれぞれ±45°の角度をなす請求項1又は2に記載の3D画像表示装置
  4. 前記光学異方性層の表面上に、紫外線吸収剤を含有する透明支持体を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の3D画像表示装置
  5. 前記光学フィルムがハードコート層をさらに有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の3D画像表示装置
  6. 前記ハードコート層が、紫外線吸収剤を含有する請求項5に記載の3D画像表示装置
  7. 前記光学フィルムが反射防止層をさらに有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の3D画像表示装置
  8. 前記光学フィルムが防眩層をさらに有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の3D画像表示装置
  9. 前記(i)を満たす光学フィルムを有し、前記液晶セルが、TNモードである請求項1〜8のいずれか1項に記載の3D用画像表示装置。
  10. 前記(ii)を満たす光学フィルムを有し、前記液晶セルが、VAモード又はIPSモードである請求項1〜8のいずれか1項に記載の3D用画像表示装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の3D用画像表示装置と、該3D用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる3D画像表示システム。
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