[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP5869361B2 - Ito粉末の製造方法及びitoスパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

Ito粉末の製造方法及びitoスパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5869361B2
JP5869361B2 JP2012029655A JP2012029655A JP5869361B2 JP 5869361 B2 JP5869361 B2 JP 5869361B2 JP 2012029655 A JP2012029655 A JP 2012029655A JP 2012029655 A JP2012029655 A JP 2012029655A JP 5869361 B2 JP5869361 B2 JP 5869361B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tin
indium
nitric acid
precipitate
ito
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012029655A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013166661A (ja
Inventor
明 吉岡
明 吉岡
直人 鈴江
直人 鈴江
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ulvac Inc
Original Assignee
Ulvac Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ulvac Inc filed Critical Ulvac Inc
Priority to JP2012029655A priority Critical patent/JP5869361B2/ja
Publication of JP2013166661A publication Critical patent/JP2013166661A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5869361B2 publication Critical patent/JP5869361B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

本発明は、共沈法を用いたITO粉末の製造方法及びITOスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
酸化インジウム−酸化スズ(ITO)薄膜は、液晶ディスプレイ等に使用される透明導電膜として多く利用されている。ITO薄膜は、一般に、ITO粉末を成形、焼結して製造されたITO焼結体ターゲットをスパッタリングすることによって形成される。高密度で表面にノジュール等のない高品質なITO焼結体ターゲットを得るためには、均一性の高いITO粉末を用いる必要がある。
特許文献1には、加熱された硝酸インジウム水溶液にアルカリ水溶液を添加して針状水酸化インジウムを生成し、これを焼成することで凝集性の弱い酸化インジウム粉末を製造する方法が記載されている。一方、特許文献2には、酸化スズ粉末の表面にインジウム−錫複合水酸化物等の被覆層を形成させることにより、焼結時の酸化スズの分解、蒸発が防止され、焼結性のよい酸化インジウム複合酸化錫粉末を製造する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、酸化スズ粉末を別途製造し、それを酸化インジウム粉末と混合する必要があり、これらの粉末を混合する際、酸化スズ粉末の分散状態を均一にすることが難しかった。また、特許文献2に記載の方法では、核となる酸化スズが凝集し、やはりスズの分散状態を均一にすることが難しかった。
一方、高い均一性を有するITO粉末を製造する方法として、共沈法が知られている。共沈法とは、2種類以上の金属イオン等を含む溶液から複数種類の難溶性塩を同時に沈殿させることで、粉末を調製する方法である。特許文献3には、インジウム塩とスズ塩の混合水溶液と、アンモニア等の沈殿生成剤とを混合して得られたインジウム−スズ含有沈殿から、ITO粉末を製造する方法について記載されている。また、特許文献4には、スズと硝酸とを反応させることにより難溶性のβ−錫酸(メタスズ酸)を生成し、このメタスズ酸が分散したインジウム−スズ水溶液を中和することで得られるインジウム−スズ含有沈殿から、ITO粉末を製造する方法について記載されている。
特開平4−325415号公報 特開平10−59719号公報 特開昭62−7627号公報 特開2001−172018号公報
しかしながら、特許文献3に係る方法によって得られたインジウム−スズ含有沈殿は、メタスズ酸が凝集しており均一性に乏しかった。また、当該沈殿から製造されたITO粉末についても酸化スズの分散状態が悪く、高密度なITO焼結体が製造できなかった。一方、特許文献4については、スズと硝酸との反応の制御が難しく、インジウム−スズ水溶液中にメタスズ酸の沈殿物が生成しやすいことから、共沈法を適用し得るインジウム−スズ水溶液を生成するのが困難であった。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、均一性の高いITO粉末を容易に製造することが可能なITO粉末の製造方法及びITOスパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るITO粉末の製造方法は、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液を生成する工程を含む。
添加量を規制しつつ上記硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加していくことで、インジウムとスズとが含まれる沈殿物が析出される。
上記沈殿物が酸素雰囲気下で焼成される。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るITOスパッタリングターゲットの製造方法は、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液を生成する工程を含む。
添加量を規制しつつ上記硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加していくことで、インジウムとスズとが含まれる沈殿物が析出される。
上記沈殿物を酸素雰囲気下で焼成することでITO粉末が生成される。
上記ITO粉末が所定形状に焼結される。
本発明の一実施形態に係るITO粉末及びITOスパッタリングターゲットの製造方法を示す工程フローである。 本発明の一実施形態に係る実施例によって得られた沈殿物を乾燥させた粉末についての粉末X線回折パターンを示すグラフであり、横軸は入射角、縦軸は回折強度を示す。 本発明の一実施形態に係る比較例1によって得られた沈殿物を乾燥させた粉末についての粉末X線回折パターンを示すグラフであり、横軸は入射角、縦軸は回折強度を示す。 本発明の一実施形態に係る比較例2によって得られた沈殿物を乾燥させた粉末についての粉末X線回折パターンを示すグラフであり、横軸は入射角、縦軸は回折強度を示す。 本発明の一実施形態に係る比較例3によって得られた沈殿物を乾燥させた粉末についての粉末X線回折パターンを示すグラフであり、横軸は入射角、縦軸は回折強度を示す。 本発明の一実施形態に係る比較例4によって得られた沈殿物を乾燥させた粉末についての粉末X線回折パターンを示すグラフであり、横軸は入射角、縦軸は回折強度を示す。 本発明の一実施形態に係る比較例5によって得られた沈殿物を乾燥させた粉末についての粉末X線回折パターンを示すグラフであり、横軸は入射角、縦軸は回折強度を示す。
本発明の一実施形態に係るITO粉末の製造方法は、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液を生成する工程を含む。
添加量を規制しつつ上記硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加していくことで、インジウムとスズとが含まれる沈殿物が析出される。
上記沈殿物が酸素雰囲気下で焼成される。
上記製造方法では、添加量を規制しつつ、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加する。これにより、アルカリ性溶液に対しこれらのイオンの濃度が希薄に維持され、スズイオン及びインジウムイオンと水酸化物イオンとがそれぞれ反応し、難溶性の水酸化スズと水酸化インジウムとがほぼ同時に生成される。したがって、水酸化スズが変化したメタスズ酸と、水酸化インジウムとが混合した沈殿物を得ることができ、均一性の高いITO粉末が製造される。
上記硝酸溶液の生成工程は、インジウム−スズ合金を硝酸に溶解させる工程を含んでもよい。
インジウム−スズ合金を用いることで、スズと硝酸との反応が穏やかに進行し、難溶性のメタスズ酸の生成を抑制することが可能となる。
上記アルカリ性溶液は、アンモニア水であってもよい。
これにより、沈殿物の析出反応で生成する廃液の処理が容易となり、環境への負荷も低減される。
上記沈殿物は、硝酸アンモニウムを含んでもよい。
これにより、沈殿物を焼成する工程において、硝酸アンモニウムが熱分解除去されることで沈殿物も粉砕され、より微細なITO粉末を容易に製造することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るITOスパッタリングターゲットの製造方法は、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液を生成する工程を含む。
添加量を規制しつつ上記硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加していくことで、インジウムとスズとが含まれる沈殿物が析出される。
上記沈殿物を酸素雰囲気下で焼成することでITO粉末が生成される。
上記ITO粉末が所定形状に焼結される。
上記製造方法によって、均一性の高いITO粉末が製造されることから、そのITO粉末を所定形状に焼結することで、密度が高く表面にノジュール等のない高品質なITOスパッタリングターゲットが製造される。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明者らが検討した従来の共沈法によるITO粉末の製造における問題点について説明する。
[ITO粉末の製造方法についての予備検討]
共沈法は、一般に、酸性溶液に複数種の金属を溶解し、その酸性溶液とアルカリ性溶液とを混合することで、これらの金属を含む難溶性の沈殿物を得る方法である。例えば、ITO粉末を共沈法によって製造する場合は、金属としてインジウムとスズとを用い、難溶性の水酸化インジウムと水酸化スズとを沈殿させる。さらに、その沈殿物を乾燥、焼成することによって、ITO粉末が製造される。
一般に、共沈法に用いられる酸性溶液としては塩酸が挙げられるが、スズは塩酸に対する溶解速度が遅いため、生産性の点で問題があった。また、アルカリ性溶液との反応後の上澄み液(廃液)中に大量の塩化物塩が残り、廃液処理の点からも不利であった。
一方、スズとの反応性が高い酸性溶液として、硝酸が挙げられる。硝酸を用いることで、迅速に酸性溶液の調製が可能となり、生産性の点からも非常に有利であるが、以下のような問題点があった。すなわち、1点目は、硝酸溶液の調製時に沈殿が析出しやすい点である。2点目は、析出させた沈殿物の分散状態が悪い点である。以下、これらの問題点について説明する。
まず1点目について検討する。金属スズと硝酸との反応性は非常に高い一方で、沈殿物が析出しやすい。以下に、金属スズと硝酸との反応の化学式を示す。
Sn+2HNO→HSnO+NO+NO・・・(1)
Sn+8HNO→Sn(NO+4NO+4HO・・・(2)
(1)式は、難溶性のメタスズ酸(HSnO)が生成する場合の反応式であり、スズと硝酸とを反応させた場合の一般的な反応を示す。(2)式は、スズイオン(IV)(Sn4+、以下単に「スズイオン」とする)が生成される場合の反応式である。硝酸との反応時に析出する沈殿物は、(1)式の反応時に生成される難溶性のメタスズ酸であると推認される。一方、(2)式の反応は、比較的穏やかに進行するが、加熱、攪拌等することによって(1)式の反応も進行し、制御が難しい。
共沈法は、酸性溶液に含まれる金属イオンから難溶性の塩を生成し沈殿させるため、酸性溶液中に既に沈殿物が析出している場合には、適用が困難となる。このことから、金属スズと硝酸とを反応させる場合には、(1)式の反応を抑制し、(2)式の反応が優位となるような方法を採用すべきである。
次に2点目として、析出させた沈殿物の分散状態が悪い点について検討する。一般に、共沈法で沈殿物を生成する際は、金属イオンを含む酸性溶液に、アンモニア水等のアルカリ性溶液を添加する方法が採用されている(特許文献3(第3頁左上欄6、7行)、特許文献4(段落[0033]、[0035])参照)。これにより、酸性溶液中のインジウムイオンとスズイオンとが水酸化物イオンとそれぞれ反応し、水酸化インジウムと、水酸化スズ(IV)(以下単に「水酸化スズ」とする)との沈殿物が生成される。水酸化スズは、溶液中で徐々にメタスズ酸に変化し、最終的な沈殿物には、水酸化インジウムとメタスズ酸とが含まれる。
しかしながら、上記方法によって得られた沈殿物を焼成したITO粉末と、当該粉末から製造されたITOスパッタリングターゲットとについて、それぞれの表面をEPMA(Electron Probe Micro Analysis)によって分析してみると、いずれもスズの凝集している領域が示された。このようなITOスパッタリングターゲットを用いてスパッタを行った場合、ターゲット表面にノジュールが多量に発生し、ターゲットの寿命が短くなる等の問題が生じる可能性がある。
この原因について検討する。まず、沈殿物の析出には、溶液中に含まれる難溶性の塩の濃度が溶解度積以上となることを要する。ここで、室温(20〜25℃)において、水酸化インジウムの溶解度積は、pKsp=32.9であり、水酸化スズの溶解度積は、pKsp=56.0、である。すなわち、水酸化スズの方が水酸化インジウムよりも溶解度積が低く、沈殿しやすい。
このことから、スズイオンとインジウムイオンとが比較的高い濃度で含まれる硝酸溶液に、アルカリ性溶液を添加した場合には、以下の現象が起こると考えられる。まず、溶解度積の低い水酸化スズが先に沈殿して徐々にメタスズ酸に変化し、これらが凝集することで、巨大な凝集粒子を形成する。その後、溶解度積の大きい水酸化インジウムが析出し、メタスズ酸の凝集粒子の周囲に凝集する。これにより、最終的にスズの分散状態が悪い沈殿物が生成されると推認される。
したがって、比較的高い濃度で含まれるスズイオンとインジウムイオンとを含む酸性溶液に対してアルカリ性溶液を添加することによって、スズの凝集した沈殿物が生成され、この沈殿物から製造されたターゲットにも、スズの凝集領域が形成されたと推測される。
[予備検討結果の考察]
以上の検討により、1点目の問題については、上記(2)式の反応を進めるため、スズと硝酸とを穏やかに反応させる方法を採用する必要がある。そこで本発明者らは、インジウム−スズ合金を、加熱を伴わずに濃硝酸に反応させることで、メタスズ酸の沈殿物を析出させることなく溶解できることを見出した。
2点目の問題については、水酸化スズと水酸化インジウムとの溶解度積の差に起因して起こると考えられる。このことから、溶解度積の差にかかわらず、スズイオンとインジウムイオンとがほぼ同時に水酸化物イオンと反応することができるように、これらのイオンの濃度を希薄に維持しつつ酸塩基反応を行う方法を採用する必要がある。そこで本発明者らは、アルカリ性溶液に硝酸溶液を規制しつつ添加することで、反応溶液中のスズイオンとインジウムイオンとの濃度を希薄に維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本実施形態に係るITO粉末及びITOスパッタリングターゲットの製造方法について説明する。
[ITO粉末及びITOスパッタリングターゲットの製造方法の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るITO粉末及びITOスパッタリングターゲットの製造方法を示す工程フローである。本実施形態に係るITO粉末の製造方法は、インジウム−スズ合金の製造工程(ステップS1)と、硝酸溶液の生成工程(ステップS2)と、沈殿物の析出工程(ステップS3)と、焼成工程(ステップS4)とを有する。また、ITOスパッタリングターゲットの製造工程は、ステップS1〜ステップS4の4工程に加えて、焼結工程(ステップS5)を有する。以下、ITO粉末の製造方法に係る各工程から説明する。
[ITO粉末の製造方法]
(インジウム−スズ合金の製造工程)
まず、インジウム−スズ合金を製造する(ステップS1)。ここでは、最終的に必要とされるITOスパッタリングターゲットの組成比率から割り出される比率で金属インジウムと金属スズとを秤量し、これらの合金を製造する。例えば、10%SnO−ITOであれば、金属インジウム:金属スズ=90.43:9.57の割合とすることができる。使用する金属は、いずれも99.99%以上の高純度品を用いることができる。
秤量した金属インジウムと金属スズとを、例えばカーボンるつぼ等に入れて約300℃で溶融し、攪拌する。この際、不活性ガスによりるつぼ内の溶融中の金属の上部をシールすることで、金属の酸化を防止することができる。
金属が十分溶融し合金が得られたら、これを冷却する。冷却方法は特に限られないが、本実施形態において、融体を液滴状またはシャワー状に水中に投入することで、合金を小粒または線状に固化させる。このような形状の合金は、体積当たりの表面積を大きくすることができるため、次工程における硝酸への溶解を効率的に行うことができる。
(硝酸溶液の生成工程)
次に、上記合金を硝酸に溶解し、硝酸溶液を生成する(ステップS2)。まず、最終的に製造するITOスパッタリングターゲットの質量から上記合金の使用量を割り出し秤量する。秤量された合金は反応槽等に収容され、硝酸が添加される。使用する硝酸の濃度は、本実施形態において、50%以上のものが用いられ、例えば60%の濃硝酸を用いることができる。硝酸の添加量としては、例えば、合金中のインジウムに対する6倍mol当量と、スズに対する8倍mol当量とを合計した量に、さらに1.0〜1.5倍を乗じて得られた量とすることができる。硝酸の添加速度は、特に制限されない。
本工程で用いる反応槽は特に制限されないが、酸に対して耐性があり、密閉することが可能なものを用いることができる。また、反応槽に排気ダクトを設けることで、発生する二酸化窒素等の窒素酸化物を除去することが可能となる。さらに、排気ダクトと接続されるガス洗浄塔等を設けることにより、発生する窒素酸化物を硝酸等として回収することができる。これにより、硝酸をリサイクルして用いることができ、コストを低減させることが可能となる。
本実施形態に係る溶解方法により、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液が生成される。この反応では、突沸等は起こらず、比較的穏やかな反応となり、上記(2)式の反応が進み、(1)式で示されるメタスズ酸の生成反応は抑制される。また、攪拌および加熱等によって反応速度を高めると、メタスズ酸の沈殿が発生するため、本実施形態において、これらの処置は行わない。なお、反応が終了した際、白色の硝酸塩沈殿等が見られた場合には、例えば溶液とほぼ同量の純水を加えて攪拌することによって、直ちに溶解させることができる。
(沈殿物の析出工程)
続いて、添加量を規制しつつ硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加していくことで、インジウムとスズとが含まれる沈殿物を析出させる(ステップS3)。すなわち、中和反応によって、難溶性塩である水酸化インジウムと水酸化インジウムとを沈殿させる。
本実施形態において、本工程には、上記反応槽とは別の反応槽(以下、中和槽とする)を用いる。予め、中和槽にはアルカリ性溶液が収容され、例えば攪拌機等によって攪拌される。アルカリ性溶液は特に制限されないが、本実施形態において、高純度のアンモニア水が用いられる。アンモニア水の濃度は特に制限されず、10〜15%のものを用いることができる。アンモニア水の量は特に制限されず、上記硝酸溶液と反応させ、所望の沈殿物を析出させる量を算出し、用いることができる。
中和層内のアンモニア水に、上記硝酸溶液を規制しつつ添加する。これにより、硝酸溶液中に含まれるインジウムイオンとスズイオンとが、水酸化物イオンと反応し、難溶性の水酸化インジウムと水酸化スズとが生成される。また、水酸化スズは徐々に難溶性のメタスズ酸へと変化する。
ここで、「規制」とは、上記硝酸溶液の添加量の規制を意味し、例えば、毎分10ml/mol−ITO以上100ml/mol−ITO(生産されるITO当りの液量)以下に設定され、本実施形態では、硝酸溶液を連続的に毎分約80ml程度で添加する。この際、アンモニア水は、1箇所から添加することに限られず、数箇所から同時に添加することも可能であり、霧状または液滴状に添加することも可能である。これにより、反応溶液中のスズイオン及びインジウムイオンの濃度を希薄に維持することができる。
上記操作により、水酸化スズ及び水酸化インジウムの溶解度積の差にかかわらず、添加されたスズイオンとインジウムイオンとから、直ちに水酸化スズと水酸化インジウムとがそれぞれ生成される。このことから、メタスズ酸と水酸化インジウムとが相互に凝集した沈殿物を析出させることができる。上記反応の中和終了点は、酸性溶液とアンモニア水との濃度に依存するが、pH5〜9程度であればよく、例えばpH6〜8とすることができる。
その後、上記沈殿物に含まれる不純物を除去する作業を行う。上記沈殿物は比重が大きく沈みやすい。本実施形態では、この性質を利用して、いわゆるデカンテーションを2,3回程度繰り返すことで、反応溶液中に含まれる硝酸イオン及びアンモニウムイオン等を除去する。具体的には、沈殿物の上澄液を排水し、同程度の量の純水を加えて攪拌する。
さらに、沈殿物の脱水と洗浄とを実施する。この操作には、一般的な固液分離機である遠心分離機や、フィルタープレス等を用いることができる。本実施形態において、沈殿物の洗浄は、ろ液の導電率が10〜100mS/cmとなるまで行う。これは、沈殿物中に導電性の硝酸アンモニウム塩をわずかに残すことにより、後の焼成工程で硝酸アンモニウムが熱分解除去され、その際に沈殿物自体も粉砕される効果が期待されるためである。
上記導電率となるまで洗浄した後、脱水して沈殿物を取り出し、105〜120℃で乾燥する。これにより、メタスズ酸と水酸化インジウムとを含み、わずかに硝酸塩を含む沈殿物を得ることができる。乾燥した沈殿物は、解砕機等で容易に粉状になる。
(焼成工程)
さらに、上記沈殿物を酸素雰囲気下で焼成する(ステップS4)。具体的には、粉状にされた沈殿物を焼成鞘等に収容し、例えば600〜1000℃で焼成する。焼成鞘と、焼成炉とは、特に限定されず、焼成鞘として、例えばアルミナ焼成鞘等を用いることができる。また、焼成の際、酸素ガス等を流入することで、メタスズ酸と水酸化インジウムとをそれぞれ酸化する。酸素ガス等の流入量は特に限られない。
また、本工程において、わずかな硝酸アンモニウムが沈殿物に含まれることによって、焼成鞘内が約210℃に達した際、硝酸アンモニウムの分解に伴い沈殿物自体も粉砕させる。これにより、微細な粉末を製造することができる。以上のように、メタスズ酸と水酸化インジウムとから、それぞれ酸化スズと、酸化インジウムとが生成され、ITO粉末が製造される。
上記ITO粉末は、酸化スズの凝集性が低く、酸化スズと酸化インジウムとの組成の均一性が高い。これは、沈殿物の析出工程において、硝酸溶液を規制しつつアルカリ性溶液に添加していくことで、水酸化スズと水酸化インジウムとをほぼ同時に沈殿させ、これらが混在した凝集粒子を形成させることができるためである。
また、硝酸溶液の生成工程において、インジウム−スズ合金を濃硝酸に溶解させることにより、メタスズ酸の生成を抑制し、共沈法を適用し得る硝酸溶液を容易に調製することができる。
さらに、アルカリ性溶液としてアンモニア水を用いることによって、沈殿物の析出工程で生成される硝酸塩とアンモニウム塩とが含まれる上澄液を有効利用することができる。例えば、この上澄液を廃液として処理する際に、pH制御しながら硝酸アンモニウムを析出させ、肥料等としてリサイクルすることができる(特開2010−120815参照)。これにより、コストを抑制することができる。
また、硝酸溶液の生成工程で合金と硝酸との反応時に生じる窒素酸化物ガスも、除去回収できる装置が知られている(特開平6−114237参照)。これらのことから、本実施形態においては、公知の技術により窒化物の処理が可能となり、環境負荷を低減させることができる。さらに、硝酸アンモニウムのリサイクルによって、コストも抑制することができる。
[ITOスパッタリングターゲットの製造方法]
図1を参照し、本実施形態に係るITOスパッタリングターゲットは、上記ITO粉末を所定形状に焼結することで製造される(ステップS5)。本工程における焼結方法として、例えば冷間等方圧プレス法によってITO粉末を所定形状に成形した後、焼結炉等に収容し、焼結を行う方法を採用することができる(CIP and sinter)。また、上記方法の他、熱間等方圧プレス法(HIP:Hot Isostatic Pressing)、ホットプレス法(HP:Hot Pressing)、スリップキャスト法(Slip casting and sinter)等の方法を採用することができる。
ここで、「所定形状」とは、例えば円形状、矩形状等を意味し、成形可能なターゲット形状であれば特に限られない。また、焼結温度、焼結時間等も適宜設定可能であり、例えば焼結温度は約1600℃、焼結時間は約2〜8時間とすることができる。焼結終了後、必要に応じて切削等により形状を整え、本実施形態に係るITOスパッタリングターゲットが製造される。
以上のように製造されたITOスパッタリングターゲットは、スズの分散性が高いITO粉末から製造されているため、スズとインジウムとの分布の均一性が高く、密度も高い。このことから、本実施形態に係る製造方法により、ノジュール等の発生が少なく、スパッタリング効率の高いITOスパッタリングターゲットを製造することができ、高品質なITO薄膜の製造にも寄与することができる。
以下、本実施形態に係る実施例と比較例とを挙げ、本実施形態についてより詳細に説明する。
(実施例)
以下の実施例によって、10%SnOを含むITO粉末を製造した。まず、金属インジウム(純度99.99%)を90.43g、金属スズ(純度99.99%)を9.57gそれぞれ秤量し、これらをカーボンるつぼに収容した。このカーボンるつぼを加熱炉内に収容し、約300℃の窒素雰囲気下でそれぞれの金属を溶融させた。これらが十分に溶融して合金となったものを攪拌し、この合金を加熱されたカーボンノズル付のカーボン容器に移し入れて、ノズルより融体を水槽内の冷却水中へ流し込んだ。これにより、合金は、水中で小粒または線状の形状となり、固化した。この合金を水中より取り出し、約105℃で24時間乾燥させた。
次に、反応槽に合金を収容し、500mlの60%硝酸を少量ずつ添加した。この際加熱はせず、合金と硝酸とを穏やかに反応させた。反応中に二酸化窒素ガスが発生したため、反応槽に接続された排気ダクトを介してガス回収塔へ導入し、回収した。反応は開始から6時間以内に終了し、白色沈殿物が認められたが、500mlの純水を加えることにより当該沈殿物は溶解し、透明な硝酸溶液が得られた。
続いて、中和槽に、260mlの特級28%アンモニア水と、同量の純水とを収容した。これらを攪拌機によって60rmpの回転数で攪拌しながら、上記硝酸溶液を規制しつつ添加した。具体的には、中和槽の4箇所から、それぞれ毎分20ml、計毎分80mlの速度で添加した。添加終了時の溶液は、pH9.4であったので、希硝酸を少量添加し、pH8.0に調整した。
上記反応溶液に対して純水で3回のデカンテーションを繰り返し実施した後、小型遠心分離機を用いてろ過しつつ、純水による洗浄を行った。ろ液の導電率が30mS/cmとなったところで洗浄を停止した。次に脱水を行い、十分脱水されたところで少量のエタノールを沈殿物に噴霧して脱水を停止し、脱滓した。これにより得られた沈殿物は、約105℃で24時間乾燥され、白色粉末状の沈殿物が得られた。
乾燥後の沈殿物は、指で崩れる程度の解砕しやすい状態であり、解砕機で解砕して粉状にした。これをアルミナ焼成鞘に収容し、焼成鞘を焼成炉内で焼成した。焼成炉へは毎分5Lの酸素ガスを導入した。焼成炉内の温度は毎分10℃ずつ上昇させ、最高温度800℃で30分間保持した。その後、焼成を停止し焼成炉内を降温させ、焼成鞘内の粉末を冷却し、実施例に係るITO粉末を製造した。
さらに、ITO粉末を冷間等方圧プレスによって成形した後、1600℃で4時間程度焼結した。これにより、ITOスパッタリングターゲットを製造した。なお、焼結工程は、実施例のみ行った。
(比較例1)
合金の製造工程、硝酸溶液の生成工程及び焼成工程については実施例と同様の操作によって行ったが、沈殿物の析出工程のみ異なる操作で行った。すなわち、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液を中和槽に収容し、攪拌機によって60rmpの回転数で攪拌しながら、14%アンモニア水を規制しつつ添加した。アンモニア水は、具体的には、中和槽の4箇所から、それぞれ毎分20ml、計毎分80mlの速度で添加した。中和終了点はpH7.5であった。さらに、得られた沈殿物に対して実施例と同様に乾燥、焼成を行い、ITO粉末を製造した。
(比較例2)
合金の製造工程については実施例と同様の操作によって行ったが、硝酸溶液の生成工程及び沈殿物の析出工程を異なる操作で行った。硝酸溶液の生成工程では、インジウム−スズ合金を溶解する際に、使用する酸を60%硝酸(濃硝酸)ではなく、10%硝酸(希硝酸)を用いた。これにより生成した硝酸溶液は、メタスズ酸の沈殿物が一部生成し、白濁していた。沈殿物の析出工程は、比較例1と同様の操作で、白濁した硝酸溶液にアンモニアを添加することによって行った。なお、比較例2は、沈殿物についての検討を目的として行った例であり、焼成工程は行っていない。
(比較例3)
合金の製造工程と硝酸溶液の生成工程とを行わず、以下の操作を行った。すなわち、金属インジウムを50%の硝酸に溶解し、一方で金属スズを35%の塩酸に溶解し、それぞれの酸性溶液を混合して酸性溶液を調製した。この方法によれば、メタスズ酸の沈殿を生じさせずに、インジウムイオンとスズイオンとを含む酸性溶液を調製することが可能であった。沈殿物の析出工程については、実施例と同様の操作を行った。なお、比較例3は、沈殿物についての検討を目的として行った例であり、焼成工程は行っていない。
(比較例4)
比較例3と同様に調製された酸性溶液について、沈殿物の析出工程を比較例1と同様の操作で行った。すなわち、インジウムイオンとスズイオンとを含む酸性溶液を中和槽に収容し、攪拌しながら14%アンモニア水を規制しつつ添加した。なお、比較例4は、沈殿物についての検討を目的として行った例であり、焼成工程は行っていない。
(比較例5)
合金の製造工程及び沈殿物の析出工程については実施例と同様の操作によって行ったが、硝酸溶液の生成工程のみ異なる操作で行った。すなわち、インジウム−スズ合金を、80℃に加熱した35%の熱濃塩酸に溶解させることが可能であったため、この熱濃塩酸を用いてインジウムイオンとスズイオンとを含む塩酸溶液を調製した。そして、実施例と同様に、アンモニア水に当該塩酸溶液を規制しつつ添加することで、沈殿物を析出させた。なお、比較例5は、沈殿物についての検討を目的として行った例であり、焼成工程は行っていない。
図2〜7は、上記実施例及び比較例1〜5によって得られた沈殿物を乾燥させた粉末についての粉末X線回折パターンをそれぞれ示すグラフであり、横軸は入射角、縦軸は回折強度を示す。図中の白丸印で示したピークは、水酸化インジウムに固有のピークを示し、黒三角印で示したピークは、メタスズ酸に固有のピークを示している。
図2は、実施例の粉末X線回折パターンを示すグラフである。このグラフから、水酸化インジウムとメタスズ酸とのピークのいずれもが検出される。このことから、実施例に係る沈殿物の粉末は、水酸化インジウムとメタスズ酸とのいずれもが表面に存在しており、メタスズ酸が分散した均一性の高い凝集粒子となっていることが示唆される。
図3は、比較例1の粉末X線回折パターンを示すグラフである。このグラフからは、メタスズ酸のピークが水酸化インジウムのピークと比較して弱い。このことから、比較例1に係る沈殿物の粉末は、水酸化インジウムが多く表面に存在し、メタスズ酸はほぼ表面に存在していないことが示唆される。したがって、中心部がメタスズ酸、表層部が水酸化インジウムで構成された凝集粒子であることが推測される。また、沈殿物におけるスズの分散性が良好でないと考えられるため、このような沈殿物から製造された焼結体には、島状に酸化スズが凝集した領域が現れると考えられる。
図3の結果は、以下のように考えられる。すなわち、比較例1に係る沈殿物の析出工程においては、インジウムイオン及びスズイオンがある程度の濃度で存在している硝酸溶液中に、アンモニア水を添加している。このことから、溶解度積が小さい水酸化スズが先に生成され、これが変化したメタスズ酸同士が凝集し、その後に生成された水酸化インジウムが沈殿し、メタスズ酸の周囲に凝集したものと考えられる。
図4は、比較例2の粉末X線回折パターンを示すグラフである。このグラフからは、比較例1とほぼ同様のパターンが示された。これにより、比較例2に係る沈殿物の粉末は、中心部がメタスズ酸、表層部が水酸化インジウムで構成された凝集粒子であることが推測される。
図4の結果は、以下のように考えられる。すなわち、沈殿物の析出工程において、既に硝酸溶液中にメタスズ酸の沈殿が析出されている。この硝酸溶液中にアンモニア水を添加した際は、溶解度積の小さい水酸化スズが先に沈殿し、メタスズ酸に変化する。この新たに生成されたメタスズ酸と、もとの硝酸溶液中に存在したメタスズ酸とが凝集し、その後に生成された水酸化インジウムがメタスズ酸の周囲に凝集したと考えられる。
図5は、比較例3の粉末X線回折パターンを示すグラフである。このグラフからは、比較例2と同様に、水酸化インジウムのピークが強く、メタスズ酸のピークが弱いことが示された。したがって、沈殿物は、中心部がメタスズ酸、表層部が後に析出した水酸化インジウムで構成された凝集粒子であることが推測される。
図5の結果は、以下のように考えられる。すなわち、硝酸溶液と塩酸溶液からなる酸性溶液中には、多量の塩素イオンが存在する。塩素イオンはインジウムイオンと結合しやすく、安定な塩化インジウムが形成されやすい。これにより、アンモニア水に酸性溶液を添加していく場合であっても、インジウムイオンが塩化物イオンと結合するため、水酸化インジウムが形成されない。その結果、スズが先に消費され、メタスズ酸が沈殿して凝集し、その後に、メタスズ酸凝集粒子の周囲に水酸化インジウムが析出すると考えられる。
図6は、比較例4の粉末X線回折パターンを示すグラフである。このグラフからは、比較例1とほぼ同様のパターンが示された。これにより、比較例4に係る沈殿物の粉末は、中心部がメタスズ酸、表層部が水酸化インジウムで構成された凝集粒子であることが推測される。このことから、塩化物イオンを含む酸性溶液にアンモニア水を添加する場合は、比較例1と同様に、溶解度積が小さい水酸化スズが先に生成され、これが変化したメタスズ酸同士が凝集し、その周囲に後から生成された水酸化インジウムが凝集したと考えられる。
図7は、比較例5の粉末X線回折パターンを示すグラフである。このグラフで示されるパターンは、上記図2〜6に示されたパターンとは異なり、全体的にX線回折強度が小さく、なだらかなピークを有する。これは沈殿物に塩化物イオン由来の錯塩等が含まれた構造となり、水酸化インジウム及びメタスズ酸の結晶化度が低いためと考えられる。
ここで、インジウム−スズ合金を塩酸に溶解した場合、スズは4価のスズイオンでなく、2価のスズイオン(II)となっている。したがって、酸塩基反応により沈殿する形態は水酸化スズ(II)であり、その溶解度積はpKsp=27.7と水酸化インジウムのpKsp=32.9より大きい。このことから、水酸化インジウムが先に沈殿し、凝集体を形成するようにも考えられるが、溶液内に多量の塩化物イオンが存在するため、結合力の強い塩化インジウム錯イオン等が形成されて、水酸化インジウムの沈殿形成を弱めていると考えられる。
なお、比較例5については、焼成工程を行っていないが、同工程を行った場合には塩化物塩等の不純物が除去されないことが予想される。すなわち、実施例に係る沈殿物に含まれる少量の塩である硝酸アンモニウムの分解温度は210℃であるのに対し、比較例5の沈殿物に含まれる可能性がある塩化アンモニウムの分解温度は338℃である。これにより、焼成工程において不純物を除去するには実施例(約300℃)よりも高い温度が必要となり、除去が困難となる。また、焼成の過程で仮に塩化インジウムが生成された場合は、この分解温度は586℃となるため、所望のITO粉末が製造できないことが懸念される。
以上の結果より、実施例に係る沈殿物は、水酸化インジウムとメタスズ酸とが沈殿粒子の表面にいずれも存在する均一な分布であることが示唆された。一方で、比較例1〜4に係る沈殿物の組成は、表面にはほぼ水酸化インジウムのみが存在し、中心部にメタスズ酸が凝集している不均一な分布であることが示唆された。また、比較例5については、水酸化インジウム及びメタスズ酸のいずれの結晶化度も低く、純度の高い所望のITO粉末を製造することができないことが示唆された。
さらに、発明者らは、焼成工程まで行った実施例及び比較例1について、それぞれ製造されたITO粉末のEPMA測定を行った(図示せず)。この結果によっても、実施例のスズ領域の分散性は良好であり、比較例1ではスズ領域が凝集して見られることから、本実施形態に係る製造方法によって均一性の高いITO粉末が製造できることが確認された。
また、焼結工程まで行った実施例に係るITOスパッタリングターゲットと、従来より行われている、酸化インジウム粉末及び酸化スズ粉末を粉砕し混合する方法で得られたITO粉末を用いて製造されたITOスパッタリングターゲットとの表面のEPMA測定を行った(図示せず)。この結果について、実施例では、従来の製造方法によるものと比較してスズ領域が細かく分布し、スズの凝集領域はほぼ見られなかった。これによって、本実施形態に係る製造方法によって、スズとインジウムとの分布の均一性が高く、高品質なITOスパッタリングターゲットが製造できることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
以上の実施形態において、インジウム−スズ合金を硝酸溶液に溶解させると説明したが、インジウムイオンとスズイオンとを含む硝酸溶液が生成されればこれに限られない。例えば、金属インジウムと金属スズとをそれぞれ硝酸溶液に反応させることも可能である。ただしこの場合は、メタスズ酸の沈殿が生成されないよう、十分注意する必要がある。
また、沈殿物の析出工程におけるアルカリ性溶液の添加方法については、特に限られない。例えば、連続的ではなく、断続的に添加することも可能である。また、中和槽の上部から霧状に添加すること等も可能である。
また、以上の実施形態において、アルカリ性溶液はアンモニア水であると説明したが、これに限られない。例えば、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム等を用いることも可能である。
S1・・・合金の製造工程
S2・・・硝酸溶液の生成工程
S3・・・沈殿物の析出工程
S4・・・焼成工程
S5・・・焼結工程

Claims (5)

  1. インジウムイオンとスズイオンとを含む、硝酸の濃度が50%以上の硝酸溶液を生成し、
    生産されるITO当りの液量が毎分10ml/mol以上100ml/mol以下となるように添加量を規制しつつ前記硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加していくことで、インジウムとスズとが含まれる沈殿物を析出させ、
    前記沈殿物を酸素雰囲気下で焼成する
    ITO粉末の製造方法。
  2. 請求項1に記載のITO粉末の製造方法であって、
    前記硝酸溶液の生成工程は、インジウム−スズ合金を硝酸に溶解させる工程を含む
    ITO粉末の製造方法。
  3. 請求項1に記載のITO粉末の製造方法であって、
    前記アルカリ性溶液は、アンモニア水である
    ITO粉末の製造方法。
  4. 請求項3に記載のITO粉末の製造方法であって、
    前記沈殿物は、硝酸アンモニウムを含む
    ITO粉末の製造方法。
  5. インジウムイオンとスズイオンとを含む、硝酸の濃度が50%以上の硝酸溶液を生成し、
    生産されるITO当りの液量が毎分10ml/mol以上100ml/mol以下となるように添加量を規制しつつ前記硝酸溶液をアルカリ性溶液に添加していくことで、インジウムとスズとが含まれる沈殿物を析出させ、
    前記沈殿物を酸素雰囲気下で焼成することでITO粉末を生成し、
    前記ITO粉末を所定形状に焼結する
    ITOスパッタリングターゲットの製造方法。
JP2012029655A 2012-02-14 2012-02-14 Ito粉末の製造方法及びitoスパッタリングターゲットの製造方法 Active JP5869361B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012029655A JP5869361B2 (ja) 2012-02-14 2012-02-14 Ito粉末の製造方法及びitoスパッタリングターゲットの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012029655A JP5869361B2 (ja) 2012-02-14 2012-02-14 Ito粉末の製造方法及びitoスパッタリングターゲットの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013166661A JP2013166661A (ja) 2013-08-29
JP5869361B2 true JP5869361B2 (ja) 2016-02-24

Family

ID=49177409

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012029655A Active JP5869361B2 (ja) 2012-02-14 2012-02-14 Ito粉末の製造方法及びitoスパッタリングターゲットの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5869361B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107021521A (zh) * 2017-03-09 2017-08-08 郑州大学 一种氧化铟镓锌复合粉末的制备方法
JP6721799B2 (ja) * 2017-03-15 2020-07-15 ユミコア 遷移金属水酸化物前駆体を製造するための硝酸塩プロセス
CN106865725A (zh) * 2017-04-13 2017-06-20 合肥茂腾环保科技有限公司 一种ito刻蚀废液的处理工艺及处理设备

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3862385B2 (ja) * 1996-11-08 2006-12-27 Dowaホールディングス株式会社 酸化スズ含有酸化インジウム粉及び焼結体の製造方法
JP2001172018A (ja) * 1999-12-16 2001-06-26 Sumitomo Chem Co Ltd 酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法
US6929772B2 (en) * 2001-03-28 2005-08-16 Nikko Materials Co., Ltd. Manufacturing method of ito powder with tin dissolved in indium oxide, and manufacturing method of ito target
JP2003040620A (ja) * 2001-07-25 2003-02-13 Kisan Kinzoku Kk Ito粉末の製造法
JP2009179515A (ja) * 2008-01-30 2009-08-13 Idemitsu Kosan Co Ltd In4Sn3O12多結晶粉末及びその焼結体、並びにそれらの製造方法
JP2010126376A (ja) * 2008-11-25 2010-06-10 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd 金属又は半金属酸化物微粒子の製造方法
JP5618229B2 (ja) * 2009-12-18 2014-11-05 国立大学法人東北大学 Ito粉末、ito粒子の製造方法、透明導電材用塗料並びに透明導電膜
GB2482544A (en) * 2010-08-06 2012-02-08 Advanced Tech Materials Making high density indium tin oxide sputtering targets
JP5754580B2 (ja) * 2010-10-26 2015-07-29 三菱マテリアル電子化成株式会社 インジウム錫酸化物粉末

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013166661A (ja) 2013-08-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6393974B2 (ja) 固体電解質前駆体、その製造方法、固体電解質の製造方法、及び固体電解質−電極活物質複合体の製造方法
JP3862385B2 (ja) 酸化スズ含有酸化インジウム粉及び焼結体の製造方法
JP4992003B2 (ja) 金属酸化物微粒子の製造方法
Huang et al. Low temperature molten salt preparation of molybdenum nanoparticles
KR101774319B1 (ko) 티타늄 분말 제조방법
JP5869361B2 (ja) Ito粉末の製造方法及びitoスパッタリングターゲットの製造方法
JP6159306B2 (ja) 酸化ニッケル粉末
CN107900373B (zh) 超细W-Cu复合粉末及其制备方法
KR101494340B1 (ko) 타이타늄 카바이드 분말의 제조방법
CN104884193B (zh) 不含溶剂的银合成及由此制备的银产物
JP5733101B2 (ja) 酸化ニッケル粉末の製造方法
Xu et al. Synergetic recovery of rutile and preparation of iron phosphate from titanium-extraction tailings by a co-leaching process
KR20150110458A (ko) 은의 저-온 분산-계 합성법 및 이에 의해 생산된 은 생산물
JP6224601B2 (ja) WC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴、並びにタングステン、コバルトの分離回収方法
WO2017073392A1 (ja) コバルト粉の種結晶の製造方法
JP2011157247A (ja) 酸化ニッケル微粉末及びその製造方法
JP4701480B2 (ja) 酸化錫粉末および酸化錫粉末の製造方法
JPH01136910A (ja) 粒状微細金属粉末の製造方法
JP5790292B2 (ja) 酸化ニッケル粉末の製造方法
JP5994524B2 (ja) 金属水酸化物粉末の製造方法
JP5987778B2 (ja) 希土類酸化物粉末の製造方法
JP3878867B2 (ja) インジウム水酸化物及び酸化物
JP4552324B2 (ja) 中和法による酸化コバルト粒子の製造方法
CN112725640B (zh) 一种从四氯化钛制备低氧钛粉的方法
CN111889692B (zh) 一种单分散超细铜粉及其制备方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150123

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20151002

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151013

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151116

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151215

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160107

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5869361

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250