以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は第1の実施の形態に適用される建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に設けられた上部旋回体4と、後述の作業装置10、油圧ホース群39等により構成されている。ここで、第1の実施の形態による油圧ショベル1には、上部旋回体4の前側に上,下方向ないし前,後方向にのみ俯仰動する作業装置10が装備されている。
上部旋回体4は、後述の旋回フレーム12を有し、この旋回フレーム12上には、図1、図2に示すように、左前側に位置してオペレータが搭乗するキャブ5と、後側に位置して油圧ポンプ6を駆動するエンジン7と、該エンジン7の後側に位置して作業装置10との重量バランスをとるカウンタウエイト8と、前記エンジン7、油圧ポンプ6等を覆う外装カバー9と、後述のコントロールバルブ38等とが設けられている。
10は上部旋回体4の前側に設けられた作業装置を示している(図1参照)。この作業装置10は、後述する支持ブラケット30の各側板32,33に連結ピン11を中心にして俯仰動可能に取付けられたブーム10Aと、該ブーム10Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム10Bと、該アーム10Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット10Cとによって構成されている。一方、後述のシリンダ取付ブラケット35とブーム10Aとの間にはブームシリンダ10Dが設けられ、ブーム10Aとアーム10Bとの間にはアームシリンダ10Eが設けられ、アーム10Bとバケット10Cとの間にはバケットシリンダ10Fが設けられている。これらのシリンダ10D,10E,10Fは、作業装置10を作動させる油圧アクチュエータを構成している。
さらに、作業装置10には、ブーム10Aの背面に沿って延びアームシリンダ10E、バケットシリンダ10Fに接続された複数本の油圧配管からなる油圧配管群10Gが設けられている。該油圧配管群10Gの基端側には、後述の油圧ホース群39が接続されている。
12は下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回フレームを示している。この旋回フレーム12は、上部旋回体4の支持構造体を構成している。旋回フレーム12は、図3、図4に示すように、後述のセンタフレーム13、左サイドフレーム19、右サイドフレーム20、フロア支持フレーム23、連結板24、前下板26、前上板27等により構成されている。
13は旋回フレーム12の左,右方向の中央部分を構成するセンタフレームである。このセンタフレーム13は、平板状の板材により形成され、前,後方向に延びた強度部材となる底板14と、後述の左縦板15、右縦板16、仕切板17、後縦板18により構成されている。
旋回フレーム12のベースをなす底板14は、前,後方向に長尺で厚肉な長方形状の鋼板により形成されている。底板14は、長さ方向(前,後方向)の中央部位が下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に取付けられている。さらに、底板14の前端部位14Aには、左,右方向の中央に位置して後述する前下板26が溶接等の固着手段を用いて一体的に取付けられている(図7、図8参照)。
15は底板14の上面側に立設され、底板14の前,後方向に延びる左縦板を示している。この左縦板15は、図3、図4に示すように、底板14上の左側に片寄せて配置され、該底板14の上面から上向きに立設されている。左縦板15は、長尺な長方形状の板体を前側寄り位置で折曲げることにより形成されている。即ち、左縦板15は、底板14の前,後方向の中間位置から前端部位14Aまで右側に傾斜して直線状に延びた傾斜部位15Aと、該傾斜部位15Aの前端の折曲位置15Bと、該折曲位置15B(傾斜部位15Aの前端)から底板14を越えて前側に突出して延びた突出部位15Cとにより構成されている。左縦板15は、傾斜部位15Aの下端縁が底板14の上面に溶接手段を用いて固着されている。
さらに、突出部位15Cには、前,後方向の後側寄り(折曲位置15B側)に位置して後述のホース用開口37が設けられている。そして、突出部位15Cの左側面となる外側面15C1には、ホース用開口37を覆う位置に後述のカバー部材40が取付けられている(図1参照)。
ここで、左縦板15の折曲位置15Bは、底板14の前端部位14Aと前,後方向でほぼ同じ位置に配置されている。これにより、突出部位15Cは、ほぼ全体が底板14の前端部位14Aから突出した状態となっている。なお、折曲位置15Bは、底板14の前端部位14Aの他に、後述する左サイドフレーム19の左横フレーム部19Aやフロア支持フレーム23とも前,後方向でほぼ同じ位置に配置されている。
16は底板14の上面側に立設され、底板14の前,後方向に延びる右縦板を示している。この右縦板16は、図3、図4に示すように、左縦板15と左,右方向で対面するように底板14上の右側に片寄せて配置され、底板14の上面から上向きに立設されている。右縦板16は、左縦板15と同様に、長尺な長方形状の板体を前側寄り位置で折曲げることにより形成されている。即ち、右縦板16は、底板14の前,後方向の中間位置から前端部位14Aまで左側に傾斜して直線状に延びた傾斜部位16Aと、該傾斜部位16Aの前端の折曲位置16Bと、該折曲位置16B(傾斜部位16Aの前端)から底板14を越えて前側に突出して延びた突出部位16Cとにより構成されている。右縦板16は、傾斜部位16Aの下端縁が底板14の上面に溶接手段を用いて固着されている。
ここで、右縦板16の折曲位置16Bは、左縦板15の折曲位置15Bと前,後方向でほぼ同じ位置に配置されている。これにより、右縦板16の突出部位16Cは、ほぼ全体が底板14の前端部位14Aから突出した状態となっている。
これにより、左縦板15の突出部位15Cと右縦板16の突出部位16Cとは、後述する前下板26と前上板27との間に左,右方向に間隔をもって平行に配置されている。この突出部位15C,16Cは、後述する角筒構造体28の左,右の側面を構成するものである。
17は左縦板15および右縦板16の後端に位置して底板14上に左,右方向に延びて立設された仕切板である。この仕切板17は、底板14の上面と左縦板15の傾斜部位15A後端と右縦板16の傾斜部位15A後端とにそれぞれ溶接手段を用いて接合されている。
18は仕切板17の後側で底板14上に立設された後縦板である。この後縦板18は、前側に向けて開口するC字形状ないしU字形状に折曲げて形成され、仕切板17の後面と底板14の上面に溶接によって固着されている。後縦板18は、エンジン7を搭載するための台座、カウンタウエイト8を取付けるためのブラケット等を兼ねている。
19は底板14の左側に配設された左サイドフレームで、該左サイドフレーム19は、例えば横断面がD字状、四角形状、三角形状、円形状または楕円形状をなす筒状の中空フレーム材を、旋回中心を基準とした円弧状に曲げることにより形成されている。左サイドフレーム19は、底板14の前端部位14Aから左,右方向の左側に延びた左横フレーム部19Aと、該左横フレーム部19Aの左端から前,後方向の後側に延びた左縦フレーム部19Bとにより形成されている。ここで、左横フレーム部19Aは、旋回フレーム12の本体部分の最前部を形成するもので、この左横フレーム部19Aから左縦板15の突出部位15C、右縦板16の突出部位16C、前下板26、前上板27がさらに前方に突出している。
一方、20は底板14の右側に配設された右サイドフレームで、該右サイドフレーム20は、左サイドフレーム19とほぼ同様に、例えば横断面がD字状等の中空フレーム材を、旋回中心を基準とした円弧状に曲げ加工することにより形成されている。右サイドフレーム20は、底板14の前端部位14Aから右,右方向の右側に延びた右横フレーム部20Aと、該右横フレーム部20Aの右端から前,後方向の後側に延びた右縦フレーム部20Bとにより形成されている。ここで、右横フレーム部20Aは、前述した左横フレーム部19Aと同様に、旋回フレーム12の本体部分の最前部を形成するものである。
21は左サイドフレーム19の左縦フレーム部19Bをセンタフレーム13に連結する左張出しビームである。この左張出しビーム21は、基端側(左,右方向の内側)がセンタフレーム13の底板14等に接合され、先端側(左,右方向の外側)が左縦フレーム部19Bに接合されている。
22は右サイドフレーム20の右縦フレーム部20Bをセンタフレーム13に連結する右張出しビームである。この右張出しビーム22は、基端側がセンタフレーム13の底板14等に接合され、先端側が右縦フレーム部20Bに接合されている。
23は左サイドフレーム19の左横フレーム部19Aの上方に位置して設けられたフロア支持フレームである。このフロア支持フレーム23は、左,右方向の内側に位置する一端が後述する前上板27の水平部位27Aに取付けられ、他端が支柱23Aを介して左サイドフレーム19上に取付けられている。フロア支持フレーム23は、オペレータが搭乗するキャブ5のフロア部材(図示せず)の前側を支持するもので、前述した左横フレーム部19Aと同様に、旋回フレーム12の本体部分の最前部を形成している。
24は左サイドフレーム19を形成する左縦フレーム部19Bの上方に位置して設けられた連結板である(図3参照)。この連結板24は、フロア支持フレーム23の外側(左側)の端部から後側に延びている。連結板24は、フロア支持フレーム23の支柱23Aと仕切板17から左側に延びた支持板25の上部とを連結して設けられている。さらに、連結板24は、左縦フレーム部19Bと共に旋回フレーム12の本体部分の左端部を形成するものである。
26は左,右の縦板15,16の突出部位15C,16Cの下部に前,後方向に延びて設けられた前下板である。この前下板26は、底板14の前端部位14Aから前方に突出する略長方形状の板体として形成されている。一方、図7に示すように、前下板26は、上面の側方部位が左,右の縦板15,16の下端縁に溶接手段を用いて固着され、後側部位が溶接手段を用いて底板14の前端部位14Aに固着されている。さらに、前下板26の後側は、斜め下向きに傾斜した傾斜板部26Aとなり、この傾斜板部26Aの前側近傍位置に後述する補強用隔壁29の下端縁29Dが溶接手段を用いて接合される。
27は前下板26の上方に対面するように左,右の縦板15,16の突出部位15C,16Cの上部に設けられた前上板である。この前上板27は、図8に示すように、略長方形状の板体の前側部分をL字形状をなすように下向きに折り曲げることにより形成されている。即ち、前上板27は、水平方向に延びる水平部位27Aと、該水平部位27Aの前端から垂直方向の下向きに延びる垂直部位27Bとにより構成されている。図7に示すように、水平部位27Aの後側は、左,右の縦板15,16の傾斜部位15A,16Aに対応し、後側に向けて広幅に形成されている。一方、垂直部位27Bには、後述する油圧ホース群39、電気配線(図示せず)を通すための開口27C,27Dが形成されている。
前上板27は、水平部位27Aの下面の側方部位が左,右の縦板15,16の上端縁に溶接手段を用いて固着され、垂直部位27Bの後面が左,右の縦板15,16(突出部位15C,16C)の前端に溶接手段を用いて固着されている。
ここで、左縦板15の突出部位15C、右縦板16の突出部位16C、前下板26および前上板27は、溶接手段を用いて一体的に組立てることにより、前,後方向に延びる角筒構造体28を構成している。この角筒構造体28は、前側に後述の支持ブラケット30を介して作業装置10を支持するものであるから、作業装置10を作動させたときに生じる大きな曲げ荷重、ねじり荷重等に耐える強度が必要になる。このために、角筒構造体28の内部には、曲げ荷重、ねじり荷重等による変形を抑制するための補強用隔壁29が設けられている。
29は角筒構造体28内に設けられた補強用隔壁を示している。この補強用隔壁29は、角筒構造体28の後側位置を閉塞するように配置されている。補強用隔壁29は、図8に示すように、左,右方向に長尺となる矩形状の板体からなり、左側部位が後側に傾斜した傾斜部29Aとなっている。このように、補強用隔壁29の左側を傾斜部29Aとすることにより、補強用隔壁29の左端縁29Bの位置を後側に移動させることができ、後述のホース用開口37を左縦板15の突出部位15Cの後側に配置することができる。
そして、補強用隔壁29は、左端縁29Bが左縦板15の突出部位15Cに、右端縁29Cが右縦板16の突出部位16Cに、下端縁29Dが前下板26に、上端縁29Eが前上板27の水平部位27Aにそれぞれ溶接手段を用いて接続(固着)されている。従って、補強用隔壁29は、油圧ホース群39を通す構造とはしていないため、切欠きや開口が無い高強度な板体として形成することができる。これにより、補強用隔壁29は、作業装置10からの曲げ荷重、ねじり荷重等に耐え得る強度を角筒構造体28に持たせることができ、曲げ荷重、ねじり荷重等によって角筒構造体28が変形するのを抑制することができる。
30は左縦板15、右縦板16、前下板26および前上板27、即ち、角筒構造体28の前側に固着して設けられ、作業装置10を支持する支持ブラケットである。この支持ブラケット30は、作業装置10を前,後方向ないし上,下方向にのみ俯仰動可能に支持するものである。
支持ブラケット30は、水平方向に配置されて左,右方向に延びる長方形状の平板からなり後端縁が前上板27の垂直部位27Bの下部に溶接された前閉塞下板31と、上,下方向となる垂直方向に配置された平板からなり前閉塞下板31の左端部と前上板27の左前側とに溶接された左側板32と、該左側板32と左,右方向で対をなすように前閉塞下板31の右端部と前上板27の右前側とに溶接された右側板33と、前記左側板32と右側板33との間に位置して前閉塞下板31から上側に延びると共に後側に向けて屈曲した屈曲板34と、該屈曲板34の前側に設けられた一対のシリンダ取付ブラケット35と、前記屈曲板34の後側に位置して前記左側板32と右側板33と前上板27の水平部位27Aと屈曲板34とに接合された補強板36とにより構成されている。
左側板32、右側板33の上部は、作業装置10のブーム10Aを連結ピン11を介して取付けるためのブーム取付部32A,33Aとなっている。一方、シリンダ取付ブラケット35には、作業装置10のブームシリンダ10Dが取付けられている。
次に、油圧ホース群39を通すために左縦板15に設けられるホース用開口37について説明する。
即ち、37は左縦板15の突出部位15Cに設けられたホース用開口を示している。このホース用開口37は、後述するコントロールバルブ38と作業装置10の各シリンダ10D,10E,10Fとを接続する複数本の油圧ホース39の通り道として設けられている。ホース用開口37は、例えば長方形状の開口として形成され、突出部位15Cの後側寄りに配置されている。
ここで、ホース用開口37の配置位置について詳しく述べる。図5、図7等に示すように、ホース用開口37は、補強用隔壁29の左端縁29B(傾斜部29A)よりも前側に配置されている。一方、ホース用開口37は、左サイドフレーム19の左横フレーム部19Aおよびフロア支持フレーム23よりも前側に配置されている。さらに、ホース用開口37は、突出部位15Cの後側寄りの部位のうち、補強用隔壁29の左端縁29Bの直前位置(前側近傍)に配置されている。
このように構成されたホース用開口37は、図5、図6に示すように、油圧ホース群39を通すことにより、該油圧ホース群39をコントロールバルブ38と作業装置10の各シリンダ10D,10E,10Fとに接続させることができる。この場合、ホース用開口37は、補強用隔壁29よりも前側に配置しているから、補強用隔壁29には、油圧ホース群39を通すための切欠や開口を設ける必要がない。従って、補強用隔壁29に補強部材として十分な強度を発揮させることができる。
しかも、ホース用開口37を通して油圧ホース群39を角筒構造体28の内部に収めることにより、作業時に岩石や周囲の障害物から油圧ホース群39を保護することができる。一方、ホース用開口37は、左サイドフレーム19の左横フレーム部19Aおよびフロア支持フレーム23よりも前側に配置したことで、上部旋回体4の外部に露出した位置に設けることができ、油圧ホース群39を容易に通すことができる。さらに、ホース用開口37は、補強用隔壁29の直前位置に配置したことにより、油圧ホース群39が外部に露出する部分を少なくすることができる。
38は旋回フレーム12上に設けられたコントロールバルブである。このコントロールバルブ38は、旋回フレーム12の左縦板15と左サイドフレーム19の左縦フレーム部19B(連結板24)との間に配置されている。一方、油圧回路においてコントロールバルブ38は、油圧ポンプ6からの主管路の途中に設けられ、下部走行体2、旋回装置3、作業装置10に対する圧油の給排を制御するものである。コントロールバルブ38には、例えば作業装置10の各シリンダ10D,10E,10Fに圧油を給排するための油圧ホース群39が接続されている。
39は複数本の油圧ホース(全体をまとめて油圧ホース群39という)である。この油圧ホース群39は、例えばブームシリンダ10Dに対して圧油を給排する2本の油圧ホースと、アームシリンダ10Eに対して圧油を給排する2本の油圧ホースと、バケットシリンダ10Fに対して圧油を給排する2本の油圧ホースとによって構成されている。油圧ホース群39は、長さ方向の一端側が上部旋回体4に搭載されたコントロールバルブ38に接続され、他端側が作業装置10のブームシリンダ10D、油圧配管群10G(アームシリンダ10E、バケットシリンダ10F)に接続されている。
ここで、コントロールバルブ38と作業装置10の各シリンダ10D,10E,10Fとを接続する油圧ホース群39の取回し経路について述べる。コントロールバルブ38に接続された油圧ホース群39は、左縦板15の左側面に沿って前側に延びつつ、外部に露出して直ちにホース用開口37を通して角筒構造体28内に入り込む。さらに、油圧ホース群39は、前上板27の垂直部位27Bに設けた開口27C,27Dに通され、そのうちの2本の油圧ホース39がブームシリンダ10Dに接続され、残りの油圧ホース39が油圧配管群10Gを介してアームシリンダ10Eとバケットシリンダ10Fに接続される。
40は旋回フレーム12の左縦板15の突出部位15Cに取付けられたカバー部材である(図1参照)。このカバー部材40は、ホース用開口37および該ホース用開口37を通る油圧ホース群39を覆い隠すもので、突出部位15Cの外側面15C1にねじ止めされている。
なお、41は旋回フレーム12の各縦板15,16間に位置して底板14に設けられた旋回モータで、該旋回モータ41は、旋回装置3の動力源を構成している。一方、42は下部走行体2の前側に設けられた排土板を示している。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
まず、オペレータは、キャブ5に乗込んで運転席(図示せず)に着座する。この状態で、オペレータは、走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。一方、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、旋回装置3によって上部旋回体4を旋回動作したり、作業装置10によって土砂の掘削作業等を行うことができる。
ここで、作業装置10によって土砂の掘削作業等を行うときには、掘削反力によって角筒構造体28等に大きな負荷(曲げ荷重、ねじり荷重等)が作用する。この場合、角筒構造体28内には、補強用隔壁29を設けているから、負荷に対する角筒構造体28の強度を高めることができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、左縦板15の突出部位15Cには、補強用隔壁29よりも前側に位置してホース用開口37を設ける構成としている。従って、油圧ホース群39は、ホース用開口37に通すことにより、補強用隔壁29を避けた状態で、コントロールバルブ38と作業装置10の各シリンダ10D,10E,10Fとの間を接続することができる。従って、補強用隔壁29には、油圧ホース群39を通すための切欠や開口を設ける必要が無いから、該補強用隔壁29は補強部材として十分な強度を発揮することができる。
この結果、支持ブラケット30を介して作業装置10を支持している角筒構造体28(左縦板15、右縦板16、前下板26および前上板27)の強度を補強用隔壁29によって効果的に高めることができ、作業時の負荷に対する耐久性を向上することができる。しかも、油圧ホース群39は、ホース用開口37から角筒構造体28の内部に収めることができるから、岩石や周囲の障害物から油圧ホース群39を保護することができ、該油圧ホース群39の耐久性を向上することができる。
一方、ホース用開口37は、旋回フレーム12の本体部分の最前部を形成する左サイドフレーム19の左横フレーム部19A、フロア支持フレーム23よりも前側、即ち、上部旋回体4の外部に露出した位置で左縦板15に設けている。これにより、油圧ホース群39をホース用開口37に容易に通すことができ、油圧ホース群39の組付け作業、油圧ホース群39の交換作業等を容易に行うことができる。
旋回フレーム12の左縦板15と左サイドフレーム19の左縦フレーム部19Bとの間に配置されたコントロールバルブ38から延びる油圧ホース群39は、ホース用開口37を通すことにより、作業装置10の各シリンダ10D,10E,10Fに接続することができる。
ホース用開口37は、左縦板15の突出部位15Cの後側寄りに位置して補強用隔壁29の直前位置に配置しているから、油圧ホース群39が外部に露出する部分を少なくすることができる。これにより、岩石等から油圧ホース群39を保護することができる。
さらに、旋回フレーム12の左縦板15には、ホース用開口37および該ホース用開口37を通る油圧ホース群39を覆うカバー部材40を設けているから、該カバー部材40によって岩石や周囲の障害物から油圧ホース群39を保護することができる。しかも、ホース用開口37から土砂や雨水が入り込むのを防ぐことができる。
次に、図9ないし図12は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、上部旋回体の前側に左,右方向に揺動可能かつ俯仰動可能な作業装置を設けたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図9において、51は第2の実施の形態に適用される建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルを示している。この油圧ショベル51は、上部旋回体52の前側に左,右方向に揺動するスイング式と呼ばれる作業装置53を備えている。
作業装置53は、上部旋回体52の前側に設けられている。この作業装置53は、第1の実施の形態による作業装置10とは異なり、左,右方向に揺動するスイング式の作業装置として構成されている。即ち、作業装置53は、後述する旋回フレーム56の支持ブラケット74に連結ピン(図示せず)を中心にして左,右に揺動可能に取付けられたスイングポスト53Aと、該スイングポスト53Aに俯仰動可能に取付けられたブーム53Bと、該ブーム53Bの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム53Cと、該アーム53Cの先端部に回動可能に取付けられたバケット53Dとによって構成されている。
ここで、スイングポスト53Aは、図11、図12に示すように、後側に位置して上,下方向に同軸に配置され、それぞれ上,下方向に間隔をもった2枚の板部からなる2対のピン支持部53A1,53A2と、該各ピン支持部53A1,53A2を左,右方向から挟むように上側および前側に延びた左,右の側面板53A3と、該各側面板53A3の上側に設けられ連結ピン54を介してブーム53Bが取付けられるブーム取付部53A4と、前記各側面板53A3の前側に設けられ後述のブームシリンダ53Eが取付けられるシリンダ取付部53A5と、右側の側面板53A3から右側に延びたシリンダブラケット53A6とにより構成されている。このシリンダブラケット53A6にはスイングシリンダ55が取付けられている。
一方、図9に示すように、スイングポスト53Aのシリンダ取付部53A5とブーム53Bとの間にはブームシリンダ53Eが設けられ、ブーム53Bとアーム53Cとの間にはアームシリンダ53Fが設けられ、アーム53Cとバケット53Dとの間にはバケットシリンダ53Gが設けられている。これらのシリンダ53E,53F,53Gは、油圧アクチュエータを構成している。
さらに、作業装置53には、ブーム53Bの背面に沿って延びアームシリンダ53F、バケットシリンダ53Gに接続された複数本の油圧配管からなる油圧配管群53Hが設けられている。この油圧配管群53Hの基端側には、油圧ホース群39が接続されている。
56は第2の実施の形態による旋回フレームを示している。この旋回フレーム56は、図10に示すように、後述のセンタフレーム57、左サイドフレーム63、右サイドフレーム64、フロア支持フレーム67、連結板68、前下板70、前上板71、支持ブラケット74等により構成されている。
57は旋回フレーム56の左,右方向の中央部分を構成する第2の実施の形態によるセンタフレームである。このセンタフレーム57は、第1の実施の形態によるセンタフレーム13とほぼ同様に、底板58、左縦板59、右縦板60、仕切板61、後縦板62を含んで構成されている。
底板58は、前,後方向に長尺で厚肉な長方形状の鋼板により形成され、この底板58の前端部位58Aには、左,右方向の中央に位置して後述の前下板70が溶接等の固着手段を用いて一体的に取付けられている(図10参照)。
左縦板59は、底板58上の左側に片寄せて立設され、該底板58に溶接手段を用いて固着されている。左縦板59は、底板58上を前側から後側に向けて左側に傾斜して真直ぐに延びている。一方、左縦板59の前側は、底板58の前端部位58Aを越えて前側に突出して延びた突出部位59Aとなっている。この突出部位59Aには、前,後方向の後側寄り(前端部位58A側)に位置して後述のホース用開口75が設けられている。
右縦板60は、底板58上の右側に片寄せて立設され、該底板58に溶接手段を用いて固着されている。右縦板60は、左縦板59とV字形状をなすように、底板58上を前側から後側に向けて右側に傾斜して真直ぐに延びている。一方、右縦板60の前側は、左縦板59の前側とほぼ同様に、底板58の前端部位58Aを越えて前側に突出して延びた突出部位60Aとなっている。
仕切板61は、左縦板59および右縦板60の後端に位置して底板58上に左,右方向に延びて立設されている。この仕切板61は、底板58の上面と左縦板59の後端と右縦板60の後端とにそれぞれ溶接手段を用いて接合されている。
後縦板62は、仕切板61の後側で底板58上に立設されている。この後縦板62は、第1の実施の形態による後縦板18とほぼ同様に、前側に向けて開口するC字形状ないしU字形状に折曲げて形成され、仕切板61の後面と底板58の上面に溶接によって固着されている。
63は底板58の左側に配設された左サイドフレームで、該左サイドフレーム63は、第1の実施の形態による左サイドフレーム19とほぼ同様に、例えば横断面がD字状等の中空フレーム材を、旋回中心を基準とした円弧状に曲げることにより形成されている。左サイドフレーム63は、底板58の前端部位58Aから左,右方向の左側に延びた左横フレーム部63Aと、該左横フレーム部63Aの左端から前,後方向の後側に延びた左縦フレーム部63Bとにより形成されている。ここで、左横フレーム部63Aは、旋回フレーム56の本体部分の最前部を形成するもので、この左横フレーム部63Aから左縦板59の突出部位59A、右縦板60の突出部位60A、前下板70、前上板71がさらに前方に突出している。
一方、64は底板58の右側に配設された右サイドフレームで、該右サイドフレーム64は、第1の実施の形態による右サイドフレーム20とほぼ同様に、例えば横断面がD字状等の中空フレーム材を、旋回中心を基準とした円弧状に曲げ加工することにより形成されている。右サイドフレーム64は、底板58の前端部位58Aから右,右方向の右側に延びた右横フレーム部64Aと、該右横フレーム部64Aの右端から前,後方向の後側に延びた右縦フレーム部64Bとにより形成されている。ここで、右横フレーム部64Aは、前述した左横フレーム部63Aと同様に、旋回フレーム56の本体部分の最前部を形成している。
65は左サイドフレーム63の左縦フレーム部63Bをセンタフレーム57に連結する左張出しビームである。66は右サイドフレーム64の右縦フレーム部64Bをセンタフレーム57に連結する右張出しビームである。
67は左サイドフレーム63の左横フレーム部63Aの上方に位置して設けられたフロア支持フレームである。このフロア支持フレーム67は、第1の実施の形態によるフロア支持フレーム23とほぼ同様に、左,右方向の内側に位置する一端が後述する前上板71に取付けられ、他端が支柱67Aを介して左サイドフレーム63上に取付けられている。フロア支持フレーム67は、オペレータが搭乗するキャブ5のフロア部材(図示せず)の前側を支持するもので、旋回フレーム56の本体部分の最前部を形成している。
68は左サイドフレーム63を形成する左縦フレーム部63Bの上方に位置して設けられた連結板である。この連結板68は、第1の実施の形態による連結板24とほぼ同様に、フロア支持フレーム67の左側の端部から後側に延びることにより、フロア支持フレーム67の支柱67Aと仕切板61から左側に延びた支持板69の上部とを連結して設けられている。
70は左,右の縦板59,60の突出部位59A,60Aの下部に前,後方向に延びて設けられた前下板である。この前下板70は、底板58の前端部位58Aから前方に突出する略三角形状の板体として形成されている。一方、前下板70は、上面の側方部位が左,右の縦板59,60の下端縁に溶接手段を用いて固着され、後側部位が斜め下向きに傾斜した傾斜板部70Aとなって底板58に溶接されている。
71は前下板70の上方に対面するように左,右の縦板59,60の突出部位59A,60Aの上部に設けられた前上板である。この前上板71は、左,右の縦板59,60の傾斜に対応し、前方に向けて狭幅となる略三角形状の板体として形成されている。前上板71は、左,右の縦板59,60の上端縁に溶接手段を用いて固着されている。
ここで、左縦板59の突出部位59A、右縦板60の突出部位60A、前下板70および前上板71は、溶接手段を用いて一体的に組立てることにより、前,後方向に延びる角筒構造体72を構成している。この角筒構造体72は、前側に後述の支持ブラケット74を介して作業装置53を支持するものであるから、作業装置53を作動させたときに生じる大きな曲げ荷重、ねじり荷重等に耐える必要がある。このために、角筒構造体72の内部には、曲げ荷重、ねじり荷重等による変形を抑制する後述の補強用隔壁73が設けられている。
73は角筒構造体72内に設けられた補強用隔壁を示している。この補強用隔壁73は、第1の実施の形態による補強用隔壁29とほぼ同様に、矩形状の板体からなり、角筒構造体72の後側位置を閉塞するように配置されている。補強用隔壁73は、底板58の前端部位58A、各サイドフレーム63,64の横フレーム部63A,64A、フロア支持フレーム67と前,後方向でほぼ同じ位置に配置されている。
そして、補強用隔壁73は、左端縁73Aが左縦板59の突出部位59Aに、右端縁73Bが右縦板60の突出部位60Aに、下端縁73Cが前下板70に、上端縁73Dが前上板71にそれぞれ溶接手段を用いて接続(固着)されている。従って、補強用隔壁73は、作業装置53からの曲げ荷重、ねじり荷重等に耐え得る強度を角筒構造体72に持たせることができる。これにより、補強用隔壁73は、曲げ荷重、ねじり荷重等によって角筒構造体72が変形するのを抑制することができる。
74は左縦板59、右縦板60、前下板70および前上板71、即ち、角筒構造体72の前側に固着して設けられ、作業装置53を支持する支持ブラケットである。この支持ブラケット74は、作業装置53を左,右方向に揺動可能に支持するものである。
支持ブラケット74は、上,下方向に間隔をもって同軸に配置された2つの円筒体74A,74Bにより構成されている。下側の円筒体74Aは、前下板70の前側に上,下方向を軸線として設けられ、その後側部位には左,右の縦板59,60の前端下部が溶接されている。一方、上側の円筒体74Bは、前上板71の前側に上,下方向を軸線として設けられ、その後側部位には左,右の縦板59,60の前端上部が溶接されている。
図12に示すように、下側の円筒体74Aには、作業装置53を構成するスイングポスト53Aのピン支持部53A1が連結ピン(図示せず)を介して取付けられている。一方、上側の円筒体74Bには、スイングポスト53Aのピン支持部53A2が連結ピン(図示せず)を介して取付けられている。
次に、油圧ホース群39を通すために左縦板59に設けられるホース用開口75について説明する。
即ち、75は左縦板59の突出部位59Aに設けられたホース用開口を示している。このホース用開口75は、コントロールバルブ38と作業装置53の各シリンダ53E,53F,53Gとを接続する油圧ホース群39の通り道として設けられている。ホース用開口75は、例えば長方形状の開口として形成され、突出部位59Aの後側寄りに配置されている。
ここで、ホース用開口75の配置位置について詳しく述べる。図11等に示すように、ホース用開口75は、補強用隔壁73よりも前側に配置されている。一方、ホース用開口75は、左サイドフレーム63の左横フレーム部63Aおよびフロア支持フレーム67よりも前側に配置されている。さらに、ホース用開口75は、突出部位59Aの後側寄りの部位のうち、補強用隔壁73の直前位置(前側近傍)に配置されている。
このように構成されたホース用開口75は、図11、図12に示すように、油圧ホース群39を通すことにより、該油圧ホース群39をコントロールバルブ38と作業装置53の各シリンダ53E,53F,53Gとに接続させることができる。この場合、ホース用開口75は、補強用隔壁73よりも前側に配置しているから、補強用隔壁73には、油圧ホース群39を通すための切欠や開口を設ける必要がない。従って、補強用隔壁73に補強部材として十分な強度を発揮させることができる。
しかも、ホース用開口75を通して油圧ホース群39を角筒構造体72の内部に収めることにより、作業時に岩石や周囲の障害物から油圧ホース群39を保護することができる。一方、ホース用開口75は、左サイドフレーム63の左横フレーム部63Aおよびフロア支持フレーム67よりも前側に配置したことで、上部旋回体52の外部に露出した位置に設けることができ、油圧ホース群39を容易に通すことができる。さらに、ホース用開口75は、補強用隔壁73の直前位置に配置したことにより、油圧ホース群39が外部に露出する部分を少なくすることができる。
ここで、ホース用開口75を用いた油圧ホース群39の取回し経路について述べる。油圧ホース群39は、左縦板59の左側面に沿って前側に延びつつ、外部に露出して直ちにホース用開口75を通して角筒構造体72内に入り込む。さらに、油圧ホース群39は、作業装置53のスイングポスト53A内を上側に通され、そのうちの2本の油圧ホース39がブームシリンダ53Eに接続され、残りの油圧ホース39が油圧配管群53Hを介してアームシリンダ53Fとバケットシリンダ53Gに接続される。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、スイング式と呼ばれる作業装置53を備えた油圧ショベル51においても、この作業装置53の支持強度を高めることができ、耐久性を向上することができる。しかも、油圧ホース群39は、ホース用開口75から角筒構造体72の内部に収めることができるから、岩石や周囲の障害物から油圧ホース群39を保護することができる。
なお、第1の実施の形態では、ホース用開口37を覆う位置にカバー部材40を設ける構成としている。一方、第2の実施の形態では、ホース用開口75を覆うカバー部材は設けないものとして説明した。しかし、本発明はこれに限らず、第1の実施の形態からカバー部材40を廃止してもよい。一方、第2の実施の形態にホース用開口75を覆うカバー部材を設ける構成としてもよい。
第1の実施の形態では、左縦板15の左側にコントロールバルブ38を配置し、左縦板15にホース用開口37を設けることにより、コントロールバルブ38から延びる油圧ホース群39をホース用開口37を通して角筒構造体28内に導く構成としている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、右縦板16の右側にコントロールバルブ38を配置した場合には、右縦板16にホース用開口を設け、コントロールバルブ38から延びる油圧ホース群39をホース用開口を通して角筒構造体28内に導く構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
第1の実施の形態では、旋回フレーム12の左前にオペレータが搭乗するキャブ5が設けられたキャブ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば旋回フレーム上に運転席の上側を覆うキャノピが設けられたキャノピ式の油圧ショベルに適用してもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
さらに、各実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば上部旋回体の前側に作業装置を備えた種々の建設機械に適用してもよい。