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JP5848166B2 - 食酢の製造方法、食酢のおり抑制方法 - Google Patents

食酢の製造方法、食酢のおり抑制方法 Download PDF

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Description

本発明は、おりの発生を効果的に抑制することができる食酢の製造方法、食酢のおり抑制方法に関するものである。
従来から、微生物や酵素による発酵を利用した各種の液状醸造食品が知られており、なかでも、清酒、みりん、ワイン、醤油、食酢等がよく知られている。例えば、液状醸造食品の代表例である清酒は、一般的に原料を仕込んで醪を造り、糖化発酵及びアルコール発酵を行った後に醪を圧搾して固液分離し、得られた発酵液を火入れして精製することで製造され、最終的にこれを容器に充填したものが最終製品とされる。また、みりんは、一般的に原料を仕込んで醪を造り、糖化発酵及び熟成を行った後に醪を圧搾して固液分離し、得られた発酵液を火入れして精製することで製造され、最終的にこれを容器に充填したものが最終製品とされる。
ところで、液状醸造食品は、農産物を原料として各種微生物等による発酵を経て製造されるものであるため、微生物の増殖・発酵、あるいは原料に起因して、保存期間中に「おり」と呼ばれる不溶性の析出物が発生することがある。このような「おり」が発生すると、発酵液が濁ることで商品価値が損なわれるため、何らかの対策が必要になる。このような事情から、液状醸造食品を製造する場合には、発酵終了後から容器に詰めるまでの過程で、通常は清澄化(あるいは「おり下げ」と称する)工程が設けられている。
従来における清澄化工程の具体例としては、ゼラチン、アルギン酸、シリカゾル、柿渋、ベントナイトなどといった清澄剤(凝集剤)を発酵液に添加・懸濁し、一定時間放置して、おりを凝集させた後、濾過液あるいは上澄み液を得るというものがよく知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。そして、このような清澄化工程を経ることで、おりの発生原因となる物質の含有量が低減される結果、おりが抑制されるようになっている。
ただし、清澄剤の添加によるおり下げ工程の効果は完全なものであるとは言えず、保存期間中に突発的におりが発生することがしばしばあった。この場合、清澄剤の添加量を増やす、処理時間を増やす等といった対策も考えられるが、期待するほどおり下げの効果が向上するわけではなく、かえってコスト性や生産性が低下するという欠点があった。
そこで、より効果的におりの発生を抑制するための方策として、例えば、発酵液に高周波を処理する工程を設けることが従来提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2001−352966号公報 特開2005−73679号公報 特開平7−255458号公報 特開平8−322546号公報
しかしながら、高周波処理によるおり下げを行う従来方法は、数ある液状醸造食品のうち一部のもの(例えば清酒などの酒類)については確かに有効かもしれないが、全てのものについてまで有効であるとは言い難い。ちなみに、本願発明者らが行った確認試験では、液状醸造食品のうち食酢については高周波処理によるおり下げが有効でないという結果を得ている。このような結果となった理由は現段階では明らかではないが、清酒などの酒類と食酢とでは異なる発酵反応を経て発酵液が得られることから、pHや酸度などが大きく相違し、これがおりの発生・抑制に関して何らかの相違をもたらしているものと考えられる。従って、食酢に関しては、上記従来方法とは異なる、別の有効なおり下げ方法が望まれる。
また、高周波処理によるおり下げを行う従来方法では、発酵液の種類を問わず、処理時間が長くなると発酵液の温度が上昇する傾向があり、このことは品質維持の観点から好ましくない。従って、品質を損なうリスクの小さいおり下げ方法が望まれる。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、品質を損なわず、おりの発生を効果的に抑制することができる食酢の製造方法、食酢のおり抑制方法を提供することにある。
本願発明者らは、上記の課題を解決するための手段として、高周波処理以外の物理的処理を行うことを着想し、その着想に基づき鋭意研究を行ったところ、例えば食酢に対する超音波処理やオゾン処理は、高周波処理と同様に液温上昇や品質劣化等の不具合を引き起こしやすく、おり発生抑制処理としても有効ではないという知見を得た。その一方で、酢酸発酵終了後に所定の強度で食酢に直流電流を通電する処理を行うことが、意外にもおりの発生抑制にとって非常に有効であることを新規に知見した。そこで、本願発明者らは、この知見をさらに発展させることで、最終的に下記の課題解決手段を完成させるに至ったのである。
なお、液状食品の製造分野において、通電処理(ただし高電圧・極短時間での交流通電処理)を殺菌に利用することは、従来から行われていた(例えば、特許第4516860号、特許第4495647号、特許第4606961号など)。しかし、食酢に対する直流通電処理が食酢中のおりの発生を抑制する効果があることは、従来全く知られていなかった。そもそも、食酢はそれ自体に殺菌・抗菌作用を有することが従来知られているので、殺菌目的で通電処理する必要性は全くなかった。以上の事実からしても、今回の知見は新規なものであるということができる。
上記の課題を解決するための手段[1]〜[5]を以下に列挙する。
[1]食酢に発生するおりを抑制するためのおり抑制工程を含む食酢の製造方法であって、前記おり抑制工程では、酢酸発酵終了後の発酵液に対し、単位体積あたりの電気エネルギー量が0.1ジュール/立方センチメートル以上10ジュール/立方センチメートル以下となる条件かつ非加熱条件下で直流電流を通電することを特徴とする食酢の製造方法。
[2]単位体積あたりの電気エネルギー量が、0.5ジュール/立方センチメートル以上2ジュール/立方センチメートル以下となる条件で前記直流電流を通電することを特徴とする手段1に記載の食酢の製造方法。
[3]前記おり抑制工程は、容器充填工程よりも前の段階で行われることを特徴とする手段1または2に記載の食酢の製造方法。
[4]清澄剤の添加によるおり下げ工程をさらに含むことを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の食酢の製造方法。
[5]食酢に発生するおりを抑制するためのおり抑制方法であって、酢酸発酵終了後の発酵液に対し、単位体積あたりの電気エネルギー量が0.1ジュール/立方センチメートル以上10ジュール/立方センチメートル以下となる条件かつ非加熱条件下で直流電流を通電することを特徴とする食酢のおり抑制方法。
従って、請求項1〜4に記載の発明によれば、品質を損なわず、おりの発生を効果的に抑制することができる食酢の製造方法を提供することにある。また、請求項5に記載の発明によれば、品質を損なわず、おりの発生を効果的に抑制することができる食酢のおり抑制方法を提供することができる。
以下、本発明の食酢の製造方法、食酢のおり抑制方法について詳細に説明する。
本発明において「食酢」とは特に限定されず、リンゴ酢、ワイン酢、米酢、玄米酢、粕酢、穀物酢などを広く指すものである。これらの食酢は、例えば、原料を仕込んで醪を造り、糖化・酒精発酵及び酢酸発酵を行った後に醪を圧搾して固液分離し、得られた酢酸発酵液の除菌、濾過、酸度調整及び加熱殺菌等の諸工程を順次行うことにより製造され、その後容器に充填されて最終製品となる。
本発明では、酢酸発酵液に対して直流電流の通電を行う「おり抑制工程」を必須としている。おり抑制工程は、酢酸発酵終了後の段階であればどの段階で行ってもよい。ここで、本発明において「酢酸発酵終了」とは、単位時間当たりの酢酸生産量(酢酸生産速度)が0.1g/L/hr以下(数値はマイナスでも可)である状態を意味する。この状態は、発酵液中に酢酸菌が存在する状態であってもよいし、酢酸菌を濾過・遠心分離などの方法で、発酵液中から強制的に取り除くことによっても達成可能である。前者の状態について補足説明をする。発酵液中の酢酸濃度が上昇すると、それに従い酢酸の毒性に起因して酢酸生産速度が低下することが知られている。従って、酢酸菌の種類・原料と発酵方法(静置法、通気法など)との組み合わせにより、上記の酢酸生産速度の条件に至る、発酵液中の酢酸濃度が規定されることになる。また、「酢酸生産速度がマイナス」とは、蒸散・揮発などにより発酵液中から失われる酢酸が、酢酸菌の酸化で生み出される酢酸の量を上回った状態を意味する。
例えば、上記の食酢の製造プロセスにおいて、直流電流の通電処理によるおり抑制工程は、1)除菌工程前、2)除菌工程後かつ濾過工程前、3)濾過工程後かつ酸度調整工程前、4)酸度調整工程後かつ加熱殺菌工程前、5)加熱殺菌工程後かつ容器充填工程前、あるいは、6)容器充填工程後、のいずれの段階にて実施しても有効である。なお、おり抑制工程は、7)除菌工程時、8)濾過工程時、9)酸度調整工程時、10)加熱殺菌工程時、あるいは、11)容器充填工程時に併せて実施してもよい。
ただし、本発明の直流通電処理によるおり抑制工程は、容器充填工程よりも前の段階で行われることが好ましい。その理由は、ガラス瓶等の容器に充填した状態で直流電流の通電を行おうとしても、容器内に電極を配置することができずこれを行うためには外部からの通電が可能な特殊な容器を採用する必要性が生じ、コスト高となるからである。
本発明の直流通電処理によるおり抑制工程では、前記おり抑制工程では、酢酸発酵終了後の発酵液に対し、単位体積あたりの電気エネルギー量が0.1ジュール/立方センチメートル以上10ジュール/立方センチメートル以下となる条件かつ非加熱条件下で直流電流を通電する。このように適度な条件を設定して直流通電処理を行うことにより、食酢の品質を損なわず、おりの発生を効果的に抑制することができる。なお、本発明においては、電気エネルギー量を「ジュール/立方センチメートル(J/cm)」という単位で規定している。即ち、所定のおり抑制効果を得るためには、発酵液が単位体積あたりでどれだけの量の電気エネルギー量を受け取ったかが重要なファクターとなるからである。そして本発明では、単位体積あたりの電気エネルギー量が上記好適範囲となるように、電圧、電流、通電時間、処理量等の条件を適宜調整するようにしている。
ここで、単位体積あたりの電気エネルギー量が0.1ジュール/立方センチメートル未満であると、食酢に対する通電の影響が小さくなりすぎてしまい、おりの発生を十分に抑制できなくなるおそれがある。また、当該エネルギー量の平均値が10ジュール/立方センチメートル超であると、食酢に対する通電の影響が大きくなりすぎてしまい、おりの発生が抑制される以前に食酢の品質(味、色、香り等)が損なわれるおそれがある。なお、当該電気エネルギー量は、0.5ジュール/立方センチメートル以上2ジュール/立方センチメートル以下であることが、より好ましい。
本発明のおり抑制工程は、発酵液に対して直流電流を通電できる機能を有する装置であれば任意のものを使用することができるが、例えば、発酵液を一時的に溜めておくための処理槽と、一対の電極と、直流電源とを備える装置などの使用が好適である。直流電源は通電処理の時間中に一定の電圧で一定の電流を供給するものであることが好ましい。電極の材質は特に限定されず、導電性金属であれば広く使用可能であるが、液中への金属イオンの溶出が起こりにくいものを選択することが望ましい。本発明において具体的には、Pt系合金製の陽極とTi系合金製の陰極とを組み合わせて用いている。電極の形状も特に限定されず、例えば、棒状、板状、メッシュ状などから任意に選択可能であるが、本発明において具体的には、陽極及び陰極の両方について平板状のものを用い、これらを所定間隔を隔てて対向配置させている。なお、当該通電処理装置は、電圧設定手段、電流設定手段及び通電時間設定手段を備えていることが望ましい。また、特にこれら3つの設定手段による電圧、電流及び通電時間の設定値に基づいて、そのときの電気エネルギー量(J/cm)の値を算出し、その値を電圧、電流及び通電時間の値とともにディスプレイに表示させる制御を行う表示制御手段を備えていてもよい。また、当該通電処理装置は、電圧、電流及び通電時間の設定値の組み合わせをあらかじめ複数種記憶しておく設定値組合せ記憶手段と、その設定値組合せ記憶手段から特定の設定値組合せを選択してくる選択手段と、その選択手段が選択した特定の設定値組合せに基づいて所定電圧・電流で所定時間通電を行う通電制御手段とを備えていてもよい。
おり抑制工程用の通電処理装置は、通電処理中に発酵液を撹拌するための撹拌装置を備えていることがよく、これによる撹拌を行うことで処理を効率よくかつ均一に行うことができる。また、当該通電処理装置は、液温を測定するための温度センサと、温度センサから出力された測定結果をディスプレイに表示させる処理を行う表示制御手段とを備えていてもよい。さらに、当該通電処理装置は、処理槽内に所定量の発酵液を溜めて通電処理を行う方式(バッチ式)であってもよいほか、処理槽内に一定量の発酵液を流しつつ連続的に通電処理を行う方式(連続式)であってもよい。
本発明のおり抑制工程では、電圧はそれほど高い値に設定される必要はなく、例えば20ボルト以下がよく、10ボルト以下がよりよく、5ボルト以下が特によい。その理由としては、設定電圧値を高くしすぎると液温の上昇が懸念され、電流値や通電時間を抑えないと品質の劣化等につながるリスクが高くなると考えられるからである。電流についても同様にそれほど高い値に設定される必要はなく、例えば10アンペア以下がよく、2アンペア以下がよりよく、1アンペア以下が特によい。その理由としては、設定電流値を高くしすぎると液温の上昇が懸念され、電圧値や通電時間を抑えないと品質の劣化等につながるリスクが高くなると考えられるからである。通電時間については、生産性向上の観点から比較的短時間であることが望ましいが、1秒を切るような極短時間に設定することはあまり好ましくない。その理由としては、上記のような極短時間に設定した場合、電気エネルギー量の値にばらつきが生じやすくなり、正確な処理が行えなくなるおそれがあるからである。逆に通電時間が1時間を超えるようになると、生産性が著しく低下するため、好ましくない。よって、通電時間は、例えば3000秒以下がよく、さらには10秒以上かつ1000秒以下がよりよく、特に100秒以上かつ400秒以下が最もよい。以上の事情を総合して、本発明では、低電圧・低電流・短時間の直流通電処理とするべく、電圧を5ボルト以下に設定し、電流を1アンペア以下に設定し、通電時間を100秒以上かつ400秒以下に設定することが好適であるとしている。
また、本発明のおり抑制工程において直流通電処理の際の温度条件は特に限定されないが、品質の劣化等につながるリスクを減らすため、できれば非加熱条件下(常温条件下、20℃〜30℃程度)で行うことが好ましい。もっとも、発酵液に対する直流通電処理を短時間行っただけでは、高周波処理や超音波処理を行ったときのような液温の上昇は伴わない。また、本発明のおり抑制工程において、発酵液は特に加圧される必要はなく、常圧にて通電処理されることがよい。発酵液を加圧するとなると、装置が複雑になり、コスト高を招聘するおそれがあるからである。
本発明の食酢の製造方法は、直流通電処理によるおり抑制工程を含むばかりでなく、清澄剤の添加による通常のおり下げ工程(清澄化工程)をさらに含むことが好ましい。その理由としては、食酢の場合おりの発生原因となる物質は複数あると考えられ、いずれかの工程を単独で実施するよりも、両者を併用したほうがおりの発生抑制に関してより効果的だからである。また、おりの発生抑制に関して同じ効果を得るに際しても、清澄剤の添加量や処理時間を減らすことができ、トータルでコスト性や生産性の向上につながる可能性が大となる。なお、通常のおり下げ工程を実施する場合、直流電流の通電によるおり抑制工程はその前後を問わず実施してもよく、あるいは同時に実施してもよい。
ここで、清澄剤の添加による通常のおり下げ工程とは、具体的には、清澄剤(凝集剤)を発酵液に添加・懸濁し、一定時間放置して、おりを凝集させた後、ろ過液あるいは上澄み液を得る工程などのことを指すものである。即ち、当該工程は、いわば清澄剤の添加により、おりを事前にかつ積極的に発生させることで、最終製品として出荷する前におりの原因物質の濃度を下げておく工程であると把握することができる。清澄剤としては、液状醸造食品の製造時によく使用されるものであれば、特に限定されず任意に使用することができる。具体的には、活性グルテン、ゼラチン、卵白、アルギン酸、カラギーナン、シリカゾル、シリカゲル、ケイ藻土、プロテアーゼ、柿渋、ベントナイト、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。ここに列挙した清澄剤は1種類のみ単独で使用すればよいが、複数種類を組合せて使用することも可能である。本発明において「清澄剤の添加」といった場合には、粉末状や液体状の清澄剤を発酵液に添加して懸濁する場合を含むほか、懸濁しない固体状の清澄剤を発酵液に添加するような場合や、清澄剤をカラムに詰めてそこに発酵液を通じるような場合も含むものとする。さらに、清澄剤の添加による通常のおり下げ工程を行う際、凝集したおりと発酵液とを効率よく分離するために、遠心分離処理などを併せて行ってもよい。
以下、本発明の食酢の製造方法、食酢のおり抑制方法をよりいっそう具体化した実施例を紹介する。
(試験例1)
試験例1では、試験対象となる食酢として玄米黒酢発酵液を選択し、この玄米黒酢発酵液に対して下記の条件で直流通電処理によるおり抑制工程を実施した。
玄米黒酢発酵液については、以下の手順で製造した。まず、玄米を原材料として用い、常法に従って酒精発酵及び酢酸発酵を行った後に醪を圧搾して固液分離し、得られた酢酸発酵液を濾紙で濾過して酢酸菌を取り除く除菌工程を行った。さらに、除菌後の酢酸発酵液につき、次いで清澄剤の添加・懸濁による通常の清澄化工程を必要に応じて行い、さらに精密濾過工程、酸度調整工程及び加熱殺菌工程を順次行い、最終的にガラス瓶に詰めて栓をする容器充填工程を行った。なお、上記の酸度調整工程では、製造基準で定めた範囲内に酢酸濃度やその他の成分の含有量の値が入るように、所定の調整作業を行った。具体的にいうと、ここでは酸度を約5.0%に調整した。また、加熱殺菌工程では75℃の温度で30秒間保持する殺菌を行った。
そしてこの試験例では、除菌工程後(あるいは除菌工程及び清澄化工程の後)かつ精密濾過工程前の段階で、直流通電処理によるおり抑制工程を実施した。これを行うための通電処理装置としては、上述したように、処理槽(1000mL)、一対の電極(陽極:Pt合金、陰極:Ti合金)と、直流電源と、撹拌手段とを備えるバッチ式の装置を使用した。そして、前記電極に対して5ボルト、1アンペアの直流電流を通電するようにした。
この試験例においては、除菌工程後の玄米黒酢発酵液を処理槽内に入れ、この状態で通電時間を複数通り設定して(100秒,200秒,300秒,400秒)、直流通電処理を行った。なお、0秒処理区(無処理区)はコントロールと位置づけた。直流通電処理によるおり抑制工程の際には、とりわけ液の加熱を行うことなく、液温を約25℃(常温)に設定した。また、おりの発生状況を短期間で観察するため、容器充填後の玄米黒酢発酵液を温度60℃の恒温槽にて静置保存する、加速試験の系を採用して実施した。そして、この通電処理装置では、通電時間(秒)、電圧(ボルト)、電流(アンペア)、処理量(mL)の値に基づき、それぞれ単位体積あたりの電気エネルギー量(J/cm)を計算した。
そして、保管を開始してからの発酵液の外観上の変化を経時的に目視観察することで、おりの発生状況を調査した。その結果を表1に示す。
また、品質劣化の程度を調査するため、上記のおり発生状況調査用のサンプルとは別のサンプルを用意し、容器充填工程直後に官能評価(パネラー数:20名)を行い、香味の評価を行った。その結果も併せて表1に示す。
Figure 0005848166
表1から明らかなように、コントロールでは、保存開始後8日目に液に「潤み(僅かな透明感の喪失)」が認められ、保存開始後10日目におりの発生が認められた。そして、保存開始後14日目には、誰が見ても明らかなフロック状のおりが発生していた。これに対し、100秒処理区(0.5J/cm)、200秒処理区(1.0J/cm)、300秒処理区(1.5J/cm)及び400秒処理区(2.0J/cm)では、保存開始後14日目に至っても液の濁り及びおりの発生は認められなかった。よって、明らかにおり発生抑制効果があることが確認された。
香味の評価に関して言えば、100秒処理区、200秒処理区、300秒処理区及び400秒処理区については、コントロールと比較して香味に特に差が認められなかった。よって、これらの試験区では、いずれも香味が劣化していないことがわかった。
その他、コントロールを除く上記5つの試験区について、直流電流通電によるおり抑制工程の前後で液温を測定したところ、いずれも液温の上昇は全く認められなかったため、その分だけ品質を損なうリスクが小さいと結論付けられた。
また、上記の試験区について当該おり抑制工程の有無で発酵液の成分分析を行って比較したところ、直流通電処理の時間が長くなるほど、アミノ酸量が減少する傾向が認められた。また、TA(全酸度)値、BX値、GC値については、アミノ酸量ほどではないが、若干減少する傾向が認められるものの、照射時間の長短による差は明確ではなかった。これに対し、pH値については特に変化は認められなかった。ただし、以上のような変化は、成分の劣化という程のものではなく、むしろおりの原因物質となる成分が低減されたと解すべきものであった。
ちなみに、具体的なデータは省略するが、通電時間を極めて短く(例えば0.1秒、0.5秒)設定した場合には、おりの発生状況に関してコントロールと殆ど差が無くなる傾向があった。また、逆に通電時間をかなり長く(例えば1時間超)設定した場合には、おり発生抑制効果は一応認められるものの、上記の成分変化の傾向からして、成分劣化が起こっている可能性が高いと推測された。
(試験例2)
試験例2では、試験対象となる食酢として米酢発酵液を選択し、基本的には試験例1に準じた方法で、除菌工程、清澄化工程、精密濾過工程、酸度調整工程を順次行い、最終的にガラス瓶に詰めて栓をする容器充填工程を行った。その際、発酵終了後におけるいくつかの異なる段階で直流通電処理によるおり抑制工程を実施した。具体的には、除菌工程前の段階(表2に示す「通電a」)、除菌工程後(あるいは除菌工程及び清澄化工程の後)かつ精密濾過工程前の段階(表2に示す「通電b」)、及び、酸度調整工程後かつ容器充填工程前の段階(表2に示す「通電c」)で、直流通電処理によるおり抑制工程を実施し、各々その有効性について調査した。ここでは、単位体積あたりの紫外線照射エネルギー量を1J/cmとするべく、通電処理装置の電極に対して、5ボルト、1アンペアの直流電流を200秒通電するようにした。そして、容器充填後の米酢発酵液を14日間保存するとともに、おりの発生状況を目視にて観察調査した。その結果を表2に示す。なお、官能評価により香味の評価を行った結果も併せて表2に示す。
Figure 0005848166
表2から明らかなように、直流通電処理によるおり抑制工程は、上記のどの段階で実施しても、米酢発酵液におけるおりの発生抑制に関して有効であることがわかった。また、香味の評価に関して言えば、各試験区について香味に特に差が認められず、いずれも香味が劣化していないことがわかった。
以上説明したように、本実施形態の食酢の製造方法では、酢酸発酵終了後の発酵液に対し、単位体積あたりの電気エネルギー量が0.1J/cm〜10J/cm、好ましくは0.5J/cm〜2J/cmとなる条件かつ非加熱条件下で直流電流を通電するおり抑制工程を実施している。従って、本実施形態によれば、酒類等よりもpHが低く(例えばpH4.0以下)かつ酸度が高い(例えば酸度3.0%以上)食酢について、香味などの品質を損なわず、おりの発生を効果的に抑制することができる。それゆえ、食酢の商品価値を好適に維持することができる。
以下、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり下げ工程は常温下で行われること。
(2)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり下げ工程は常圧下(非加圧条件下)で行われること。
(3)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり抑制工程では、電圧を5ボルト以下に設定すること。
(4)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり抑制工程では、電流を1アンペア以下に設定すること。
(5)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり抑制工程では、通電時間を400秒以下に設定すること。
(6)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり抑制工程では、電圧を5ボルト以下、電流を1アンペア以下かつ通電時間を400秒以下に設定すること。
(7)手段1乃至5のいずれか1項において、前記食酢は、酢酸発酵終了後に、除菌工程、清澄剤の添加によるおり下げ工程、精密濾過工程、酸度調整工程及び容器充填工程を順次行うことで製造されること。
(8)手段1乃至5のいずれか1項において、前記食酢は、リンゴ酢、ワイン酢、米酢、玄米酢、粕酢及び穀物酢から選択されるいずれかであること。
(9)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり下げ工程は、酸度が3.0%以上(特には3.5%以上)の前記発酵液に対して実施されること。
(10)手段1乃至5のいずれか1項において、前記おり下げ工程は、pHが4.0以下の前記発酵液に対して実施されること。

Claims (5)

  1. 食酢に発生するおりを抑制するためのおり抑制工程を含む食酢の製造方法であって、
    前記おり抑制工程では、酢酸発酵終了後の発酵液に対し、単位体積あたりの電気エネルギー量が0.1ジュール/立方センチメートル以上10ジュール/立方センチメートル以下となる条件かつ非加熱条件下で直流電流を通電することを特徴とする食酢の製造方法。
  2. 単位体積あたりの電気エネルギー量が、0.5ジュール/立方センチメートル以上2ジュール/立方センチメートル以下となる条件で前記直流電流を通電することを特徴とする請求項1に記載の食酢の製造方法。
  3. 前記おり抑制工程は、容器充填工程よりも前の段階で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の食酢の製造方法。
  4. 清澄剤の添加によるおり下げ工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の食酢の製造方法。
  5. 食酢に発生するおりを抑制するためのおり抑制方法であって、酢酸発酵終了後の発酵液に対し、単位体積あたりの電気エネルギー量が0.1ジュール/立方センチメートル以上10ジュール/立方センチメートル以下となる条件かつ非加熱条件下で直流電流を通電することを特徴とする食酢のおり抑制方法。
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